説明

二次電池及びその製造方法

【課題】 容易に積層できるセパレータと電極の積層構造を有する二次電池及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 集電体1の両面に電極活物質2を塗布してなる正負の電極シートを多孔質のセパレータ5を介して積層した二次電池の製造方法であり、帯状の集電体1の片方の側端部で帯状の非塗工領域3を設け残部に電極活物質2を連続的に塗布して帯状電極シートを作製し電極リールにする工程と、正負いずれか一方の電極の電極リール41から電極シートを引き出し、その両面の電極活物質2を覆うようにロール状セパレータ51から引き出した多孔質のセパレータ5を重ね合わせて帯状の積層配置シートを作製する工程と、その積層配置シートをヒーター付き打ち抜き刃7を使用した裁断機構8により多孔質のセパレータ5の裁断部が電極シートの裁断部に溶着するように裁断する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極シート及びセパレータを用いた二次電池及びその製造方法に関し、特に、安定で高速に簡易な方法により作製可能な二次電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型電話機などの電子機器類において、主電源の高性能化及び高容量化を図れるリチウムイオン二次電池は、有望な電池として知られている。一般的に、このタイプの密閉型二次電池は、シート状の正極及び負極の間に、セパレータを介挿させて、捲回もしくは積層して電極群を形成し、この電極群を電池外装容器内に封装して作製される。
【0003】
シート状の両電極は、アルミ又は銅製の10〜20μmのシート状の集電体に電極活物質を塗布し、密度の向上を図るための圧延処理を施し、所要の寸法・形状に裁断もしくは打ち抜きをして、分離することで作製される。なお、電極活物質の塗布では、電極群を形成する際に必要なリード箔を溶着するための電極活物質の非塗工領域が設けられる。この非塗工領域は、電極の幅寸法以下で十分であり、不要部は、排除しても構わないものである。
【0004】
セパレータは微細な孔のあいたポリエチレンやポリプロピレンの20〜30μm程度のフイルムから形成されており、それを正極シートと負極シート間に挟み、電池内部が過熱されると、セパレータに設けられた孔が溶融して孔が閉塞される。
【0005】
図3は、上記従来技術によるリチウムイオン二次電池用の電極積層体を示し、図3(a)はその平面図であり、図3(b)はその模式的断面図である。
【0006】
図3(a)に示すように、非塗工領域3に形成されるリード部が、電極の積層部38から引き出される。また、図3(b)に電極の積層状態を示すように、集電体1の表裏面に電極活物質2を、リードに相当する非塗工領域3を除き塗布し、圧縮する。電極シートを電池形状に裁断した後、負極電極シート・正極電極シートを交互に積層し、正極・負極電極間には電池形状に裁断したセパレータ5を介挿させる。なお、図3(b)では同極の裁断された電極シート6を等しい高さで表示した。
【0007】
この積層の際、セパレータ5は20〜30μmのポリエチレンやポリプロピレン製であり非常に薄いため剛性がなく、取り扱いが困難となる。
【0008】
上記問題に対しては、電極シートに塗工方法・ラミネート方法・転写方法又は熱溶着によりセパレータを一体化させ、取り扱いを容易にする方法が、特許文献1及び特許文献2に開示されている。しかしながら、多孔質であるセパレータを、塗工法、ラミネート法もしくは転写法により形成すること(特許文献1)、又は熱溶着により電極面に貼り付けること(特許文献2)は、セパレータの多孔質の特性を失わせるため、現実的には困難な方法である。
【0009】
【特許文献1】特開平10−50348号公報
【特許文献2】特開2000−285955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来例では、正極電極、負極電極及びセパレータを積層する際、20〜30μmのポリエチレンやポリプロピレン製の剛性のないセパレータシートを単独で取り扱うので、取り扱いが非常に困難となる。
【0011】
本発明は、このような問題点を解決すべくなされたもので、その技術課題は、薄いセパレータを使用する二次電池において、容易に積層できるセパレータと電極の積層構造を有する二次電池及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、上記課題を解決するために、セパレータと電極を積層する際、セパレータの一部を電極に溶着させることにより、セパレータの取り扱いを容易にするものである。その手段として、電極裁断装置において、帯状の電極の表裏にセパレータを重ね合わせた後、ヒーター付き裁断機構によりセパレータ及び帯状の電極を裁断し、セパレータを電極端部に溶着する。
【0013】
すなわち、本発明の二次電池は、薄板状の集電体に電極活物質が塗布されてなる正負の電極が多孔質セパレータを介して積層された二次電池であって、前記電極活物質は前記集電体の両面に塗布され、前記電極活物質を覆うように多孔質セパレータが重ね合わされ、前記電極及び前記多孔質セパレータは裁断された端部を有し、前記多孔質セパレータの裁断端部は前記電極のうち正負いずれか一方の電極の裁断端部に溶着していることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の二次電池の製造方法は、集電体の両面に電極活物質を塗布してなる正負の電極シートを多孔質セパレータを介して積層した二次電池の製造方法であって、帯状集電体の片方の側端部で帯状の部分を露出させ残部に電極活物質を連続的に塗布して帯状電極シートを作製する工程と、正負いずれか一方の帯状電極シートの両面に前記電極活物質を覆うように多孔質セパレータを重ね合わせて帯状の積層配置シートを作製する工程と、前記積層配置シートをヒーター付き打ち抜き刃を使用した裁断機構により前記多孔質セパレータの裁断部が前記電極シートの裁断部に溶着するように裁断する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
電極シートにセパレータを凝着させ、電極シートと一体化することにより、剛性のないセパレータを単体で扱うことが不要となるため、安定な二次電池の構造が構築され、安価な二次電池及びその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
まず、本発明の実施の形態での二次電池製造工程の概要を説明する。シート状集電体に、リード箔を溶着するための非塗工領域を除き、電極活物質を連続塗布した後、圧延処理を施しリール状にする。正負いずれかの電極シートについて、電極リールから電極シートを引き出し、その表裏に、電極活物質を覆う様セパレータを重ね合わせて配置し、ヒーター付き打ち抜き刃を使用した裁断機構により、セパレータ端部を電極に溶着させ、かつ所定の寸法に裁断・分離する。それを他極の裁断された電極シートと共に積層して本実施の形態の二次電池を得る。
【0017】
次に図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施の形態でのリチウムイオン二次電池の作製方法を示し、図1(a)は電極およびセパレータの積層裁断方法を示す平面図であり、図1(b)はその正面図である。まず、集電体1の表裏面に電極活物質2を、リードに相当する帯状の非塗工領域3を除き、連続塗布した後、加圧し所定の電極厚みまで圧縮し、電極リール41にする。次いで、図1に示すように、電極リール41から引き出した電極シートの表裏に電極活物質2を覆うようにロール状セパレータ51から引き出したセパレータ5を重ね合わせて配置する。次にヒーター付き裁断刃7を装備する裁断機構8により、電極シートはセパレータ5と共に電池形状に裁断され、その際セパレータ5は、ヒーター付き裁断刃7に接触し、接触部が熱溶解する。ヒーター付き裁断刃7は直後に離れ、セパレータ5の熱溶解部は電池形状の電極シート6に凝着し、一体となる。このとき、ヒーター付き裁断刃7の温度は190℃程度にする。
【0018】
図2は、上記方法により作製されたリチウムイオン二次電池積層体の構造を示す図である。図2(a)は全体の平面図であり、28は電極の積層部を示す。図2(b)はその積層状態を示す断面図であり、セパレータ5の端部が、切断のとき熱溶解し、電極シート6の切断端部に凝着している。
【0019】
以上、この発明の実施の形態を説明したが、この発明は、この実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、なしえるであろう各種変形、修正を含むことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態に係るリチウムイオン二次電池の作製方法を示し、図1(a)は電極およびセパレータの積層裁断方法を示す平面図、図1(b)はその正面図。
【図2】本発明の一実施の形態に係るリチウムイオン二次電池積層体の構造を示し、図2(a)は全体の平面図、図2(b)はその積層状態を示す断面図。
【図3】従来例のリチウムイオン二次電池用の電極積層体を示し、図3(a)はその平面図、図3(b)はその模式的断面図。
【符号の説明】
【0021】
1 集電体
2 電極活物質
3 非塗工領域
5 セパレータ
6 電極シート
7 ヒーター付き裁断刃
8 裁断機構
28,38 積層部
41 電極リール
51 ロール状セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状の集電体に電極活物質が塗布されてなる正負の電極が多孔質セパレータを介して積層された二次電池であって、前記電極活物質は前記集電体の両面に塗布され、前記電極活物質を覆うように多孔質セパレータが重ね合わされ、前記電極及び前記多孔質セパレータは裁断された端部を有し、前記多孔質セパレータの裁断端部は前記電極のうち正負いずれか一方の電極の裁断端部に溶着していることを特徴とする二次電池。
【請求項2】
集電体の両面に電極活物質を塗布してなる正負の電極シートを多孔質セパレータを介して積層した二次電池の製造方法であって、帯状集電体の片方の側端部で帯状の部分を露出させ残部に電極活物質を連続的に塗布して帯状電極シートを作製する工程と、正負いずれか一方の帯状電極シートの両面に前記電極活物質を覆うように多孔質セパレータを重ね合わせて帯状の積層配置シートを作製する工程と、前記積層配置シートをヒーター付き打ち抜き刃を使用した裁断機構により前記多孔質セパレータの裁断部が前記電極シートの裁断部に溶着するように裁断する工程とを含むことを特徴とする二次電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−324095(P2006−324095A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145482(P2005−145482)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【出願人】(302005190)NECトーキン富山株式会社 (23)
【Fターム(参考)】