説明

二次電池用活物質及び二次電池用活物質用電極、並びに、それを用いた二次電池

【課題】高率充電性能に優れた二次電池とすることのできる正極活物質及びそれを用いた二次電池を提供する。
【解決手段】ナシコン構造のリン酸バナジウムリチウムを含有する二次電池用活物質であって、前記リン酸バナジウムリチウムは、バナジウムの一部がマンガンにより置換されたリン酸バナジウムマンガンリチウムであり、かつ、前記二次電池用活物質は、リチウム、バナジウム、マンガン、リン及び酸素の各原子を含み、バナジウムに対するマンガンの原子数の比率が、0.5%以上8%以下である二次電池用活物質とすることにより、高率充電性能に優れる。従って、この二次電池用活物質を含有する二次電池用電極からなる二次電池の高率充電性能を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用活物質及び二次電池用活物質用電極、並びに、それを用いた二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノートパソコン等の携帯機器用、電気自動車用などの電源としてエネルギー密度が高く、かつ自己放電が少なくてサイクル性能の良いリチウム二次電池が注目されている。
【0003】
最近、熱的安定性が優れるポリアニオン系正極活物質が注目を集めている。このポリアニオン系正極活物質は、酸素が遷移金属以外の元素と共有結合することで固定化されているために、高温においても酸素を放出することが無く、正極活物質として使用することでリチウム二次電池の安全性を飛躍的に高めることができると考えられる。
【0004】
このようなポリアニオン系正極活物質として、オリビン構造を有するリン酸鉄リチウム(LiFePO)の研究が盛んに行われている。しかし、リン酸鉄リチウムは3.4V(vs.Li/Li)の卑な電位でリチウムの挿入脱離が行われることに加えて、その結晶構造特有の電気伝導性やリチウムイオン伝導性の低さに由来する活物質の利用率及び高率充放電性能の低さのため、従来のリチウム含有遷移金属化合物に比べて入出力性能が低下する。そこで、約4V(vs.Li/Li)付近に可逆電位を有するリン酸バナジウムリチウム(Li(PO)の検討が行われている。リン酸バナジウムリチウムの可逆電位は約3.5V(vs.Li/Li)以上であり、リン酸鉄リチウムよりも高いことに加えて、リン酸鉄リチウムよりも電子電導性、イオン伝導性に優れることから高い安全性と優れた出力性能を合わせ持つ正極活物質として期待されている。
【0005】
しかしながら、ハイブリッド自動車(HEV)用電池など、効率よく回生エネルギーを回収する必要がある用途では、優れた高率充電性能が要求されているものの、現在の正極活物質の仕様では必ずしも充分であるとは言えない。
【0006】
特許文献1には、「名目上の一般式、Li3-xM’yM”2-y(PO43(ここでM’およびM”は同じあるいは相互に異なり、少なくともM’およびM”の一つは、複数の酸化状態を有し、0≦y≦2)で示される電極活性物質を含む第1の電極;インターカレーション活性物質を含む第2の対向電極および電解質を含み、第1の条件においてはx=0で、第2の条件においては0<x≦3であり、M’およびM”はそれぞれ、金属あるいは半金属であり、少なくともM’およびM”の一つは、第1の条件における酸化状態よりも大きな酸化状態を有するリチウム二次電池。」(請求項1)の発明が開示されている。特許文献1によれば、「リチウム金属リン酸塩は、名目上の一般式Li3M’M”(PO43で表されることが望ましい。ある態様においては金属M’およびM”は同一であり、また、別の態様においては金属M’およびM”は互いに異なる。望ましくは、リン酸塩は、化合物Li32(PO43(ただし、Mは遷移金属であり、V、Fe、Sr、Mnであることが最も望ましい)である。」との記載がある。特許文献の実施例には、Li3M’M”(PO43型の電極組成として、Li(POが例示されている。
【0007】
特許文献2には、「第1の状態が公称一般式Li3-xM’yM”2-y(PO43で、x=0、0≦y≦2であり、そして第2の状態が公称一般式Li3-xM’yM”2-y(PO43で、0<x≦3であり;M”が遷移金属であり、そしてM’が金属及びメタロイドからなる群から選択される非遷移金属元素である活性物質を有する第1の電極;前記第1の電極に対する対電極である第2の電極;並びに前記両電極間の電解質を含む、リチウムイオン電池。」(請求項1)の発明が開示されている。特許文献2によれば、「リチウム金属リン酸塩は、好ましくは公称一般式Li3M’M”(PO43によって示される。一つの側面において、金属M’及びM”は、同一であり、そしてもう一つの側面において、金属M’及びM”は、異なっている。好ましくは、リン酸塩は、化合物Li32(PO43であり、ここでMは、遷移金属であり、そしてMは、最も好ましくはV、Fe、Cr、Ni、Co、及びMnである。リチウム金属リン酸塩は、好ましくは公称一般式Li3-x2(PO43によって示される化合物であり、好ましい組成及びそのリチウムをデインターカレートする能力を示す。本発明は、慣用的なカソード活性物質により提起された容量の問題を解決する。」(段落0014)との記載がある。特許文献2の実施例には、Li3V2(PO4)3、Li3MnZr(PO4)3、Li3MnTi(PO4)3、Li3BMn(PO4)3等が例示されている。
【0008】
特許文献3には、「下記一般式(1)で表される燐酸リチウム・バナジウム複合化合物。
Liy(V1-xx2(PO43 (1)
ここに、Mはアルミニウム、チタニウム及びジルコニウムから選ばれた2価以上の陽イオンのうち少なくとも1種類であり、0<x≦0.2であり、yはMがアルミニウムの場合はyは3、Mがチタニウムあるいはジルコニウムの場合はyは3−2xである。」(請求項1)の発明が開示されている。特許文献3によれば、「本発明の燐酸リチウム・バナジウム複合化合物は、バナジウムの一部をZr,Ti及び/またはAlで置換することにより、従来高温で安定な高温相が室温においても安定化され、従って室温において安定化された高温相によりその正極特性が著しく向上する。即ち、本願発明では、イオン伝導性及びイオン拡散性の高い高温相を室温下で安定化することによってLi32(PO43及びLi3Fe2(PO43の欠点である低充放電容量を向上させている。」(段落0009)との記載がある。特許文献3の実施例には、バナジウムの一部(5、10、15、20mol%)をAl、Ti、Zrで置換した燐酸リチウム・バナジウム複合化合物が例示されている。
【0009】
特許文献4には、「以下の工程
−溶質として、Li含有橄欖石又はNASICON先駆化合物を1種以上、及びカーボン含有モノマー化合物を1種以上含む水溶液を製造すること、
−一工程において、前記Li含有橄欖石又はNASICON先駆化合物を沈殿させ、かつ前記モノマー化合物を重合すること、
−Li含有橄欖石又はNASICON結晶相が形成され、かつポリマーがカーボンへ分解されるように、得られた沈殿物を中性又は還元環境で熱処理すること、
からなるカーボン被覆Li含有橄欖石又はNASICON粉末の製造方法。」(請求項1)及び「前記結晶相がLiuv(XO4w[式中、u=1、2又は3、v=1又は2、w=1又は3、Mは、TiabCrcMndFeeCofNigSchNbi(式中、a+b+c+d+e+f+g+h+i=1)を表わし、Xは、Px-1x(0≦x≦1)を表わす。]である請求項1記載の方法。」(請求項2)の発明が開示されている。特許文献4によれば、「本発明は、伝導性のカーボン層で有効に被覆された微細な粒状の粒子の製造を保証する改善された溶液方法を提供する。得られた粉末は、従来技術の粉末と比較して、Li−イオン電池中に使用した場合、非常に優れた性能を示す。本発明は、同様の電極容量及び放電速度のために電極中にはるかにより少量の全カーボンを必要とする粉末を提供する。同様に、本発明は、電極中に同量の全カーボンを使用した場合、より高い容量及び放電速度を提供する粉末を提供する。」(段落0009)との記載がある。特許文献4の実施例には、クエン酸とエチレングリコールの二種のカーボン含有モノマーを含む溶液から合成したリン酸鉄リチウムが例示されている。
【0010】
特許文献5には、「陰極材料であって、オリビン構造及びNASICON構造のうちの1つを有し且つ粒径範囲が10乃至500nmの金属化合物の結晶構造のナノメータサイズの一次粒子群と、粒径範囲が1乃至50μmのミクロンサイズの二次粒子群と、からなることを特徴とし、前記ミクロンサイズの二次粒子群の各々は前記結晶構造のナノメータサイズの一次粒子群からなることを特徴とする陰極材料。」(請求項1)及び「前記金属化合物はA3xM2y(PO43の組成式を有し、ここにおいてAはIA、IIA及びIIIA族、並びにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの第1金属成分を表わしており、MはIIA及びIIIA族、遷移元素、並びにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの第2金属成分を表わしており、0<x≦1.2、0<y≦1.6であることを特徴とする請求項1に記載の陰極材料。」(請求項5)の発明が開示されている。特許文献5によれば、「従来の陰極材料と比較すると、各々が金属化合物の結晶構造のナノメータサイズの一次粒子群からなる粒径範囲が1乃至50μmのミクロンサイズの二次粒子群を含んだ本発明の陰極材料は改良された比表面積及び容量を有している。」(段落0033)との記載がある。特許文献5の実施例には、LiFePO4、LiFe0.98Mg0.01Al0.01PO4等が例示されている。
【0011】
【特許文献1】特許4292317号公報
【特許文献2】特表2002−530835号公報
【特許文献3】特許2949229号公報
【特許文献4】特表2005−530676号公報
【特許文献5】特開2007−294461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1には、NASICON型の結晶構造を有するリン酸バナジウムリチウムのバナジウムの一部あるいはその全てがマンガンであっても良いことが記載されているが、本願発明のように、リン酸バナジウムリチウムにマンガンを含有させることにより高率充電性能が向上することは記載されていないし、リン酸バナジウムリチウムに含有させる最適なマンガン量についても記述が見あたらない。
特許文献2には、リン酸バナジウムリチウムのバナジウムのサイトに、多種多様な元素を採用した化合物が例示されている。しかしながら、リン酸バナジウムリチウムのバナジウムの一部をマンガンにより置換した実施例は記載されていないことに加えて、例示されている化合物全てが、バナジウムのサイトにおいて1:1のモル数比である。上記文献において、リン酸バナジウムリチウムにマンガンを含有させると高率充電性能が向上すること及び、リン酸バナジウムリチウムに含有させる最適なマンガン量については記載されておらず、また、そのような技術思想も見あたらない。
また、特許文献3には、リン酸バナジウムリチウムのバナジウムの一部をジルコニウム、チタン、アルミにより置換することにより、イオン伝導性及びイオン拡散性の高い高温相が室温下で安定化すること、それによって、リン酸バナジウムリチウムの放電容量が向上すること、が記載されている。しかしながら、リン酸バナジウムリチウムにマンガンを含有させることは記載されていない。
特許文献4は、カーボン被覆NASICON粉末の製造方法であり、NASICON結晶相を有する化合物としてはLiFe(POについての記載はあるものの、リン酸バナジウムリチウムについての具体的な記載は皆無である。また、NASICON結晶相を有する化合物の元素置換に関する知見も記載されていない。
特許文献5は、一般式上の記載はあるものの、リン酸バナジウムリチウムや、リン酸バナジウムリチウムにマンガンを含有させることについての具体的な記載は皆無である。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高率放電性能に優れた二次電池を提供することのできる二次電池用活物質及びそれを用いた二次電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の構成及び作用効果は以下の通りである。但し、本明細書中に記載する作用機構には推定が含まれており、その正否は本発明を何ら制限するものではない。
【0015】
本発明は、ナシコン構造のリン酸バナジウムリチウムを含有する二次電池用活物質であって、前記リン酸バナジウムリチウムは、バナジウムの一部がマンガンにより置換されたリン酸バナジウムリチウムであり、かつ、前記二次電池用活物質は、リチウム、バナジウム、マンガン、リン及び酸素の各原子を含み、バナジウムに対するマンガンの原子数の比率が、0.5%以上8%以下であることを特徴とする二次電池用活物質である。
このように、ナシコン構造のリン酸バナジウムリチウムを含有する二次電池用活物質中に含まれるバナジウムとマンガンの原子数の比率を、バナジウムに対するマンガンの比率が、0.5%以上8%以下とすることにより、二次電池用活物質の高率充電性能が向上する。
ここで、ナシコン構造のリン酸バナジウムリチウムとしては、一般的に単斜晶(空間群P2/n)の結晶構造を有するものが知られているが、製造方法により菱面体晶の結晶構造を取ることもある。また、バナジウムの一部を特定の元素により置換することで、斜方晶や菱面体晶の結晶構造となることも知られている。本発明におけるリン酸バナジウムリチウムは、単斜晶の結晶構造を有するものである。
【0016】
本発明は、前記リン酸バナジウムリチウムが、一般式Li2−yMn(PO(0≦x≦5、0.01≦y≦0.16)で表されることを特徴とする二次電池用活物質である。
このように、リン酸バナジウムリチウムのバナジウムの一部をマンガンで置換することにより、二次電池用活物質の高率充電性能が向上する。
【0017】
また、本発明は、前記リン酸バナジウムリチウムが、一般式Li2−yMn(PO(0≦x≦5、0.01≦y≦0.10)で表されることを特徴とする二次電池用活物質である。
このように、リン酸バナジウムリチウムのバナジウムの一部をマンガンで置換することにより、二次電池用活物質の高率充電性能が向上する。
【0018】
さらに、本発明の二次電池用活物質は、前記リン酸バナジウムリチウムとは異なる結晶構造を有するマンガン化合物を含有することを特徴とする二次電池用活物質である。
ここで、前記リン酸バナジウムリチウムと前記マンガン化合物は、前記二次電池用活物質の二次粒子内に共存している。
【0019】
また、本発明の二次電池用活物質は、その活物質粒子の表面又は内部に炭素質化合物を備えていることを特徴とする二次電池用活物質である。
前記二次電池用活物質の活物質粒子とは、一次粒子、二次粒子、あるいは、より高次の粒子を指すものであり、それらの粒子の表面又は内部にカーボンなどの炭素質化合物が付着、被覆等の形態で備えられている。
【0020】
また、本発明は、前記の二次電池用活物質を含有する二次電池用電極である。
【0021】
さらに、本発明は、前記二次電池用電極と、その電極と対を成す対極と、電解質とを備えた二次電池である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高率充電性能に優れた二次電池用活物質及びその二次電池用活物質を含有する二次電池用電極、並びに、それらを用いた高率充電性能に優れた二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係るナシコン構造のリン酸バナジウムリチウムを含有する二次電池用活物質は、前記リン酸バナジウムリチウムのバナジウムの一部がマンガンにより置換されている。このようなマンガン置換されたリン酸バナジウムリチウムは、マンガンを置換しないリン酸バナジウムリチウムよりも高率充電性能が向上するために、二次電池用活物質の高率充電性能を優れたものとすることが可能となる。また、二次電池用活物質中に含まれるバナジウムに対するマンガンの原子数の比率が、0.5%以上であれば本発明の効果が発現するので好ましい。また、当該原子数の比率が8%を超えると二次電池用活物質の充放電容量が顕著に低下することから、当該比率は8%以下であることが好ましい。
なお、本発明の二次電池用活物質には、リン酸バナジウムリチウムとは異なる結晶構造を有するマンガン化合物が存在しうる。このマンガン化合物は、マンガンの前記原子数の比率が高いほど存在量が多くなる傾向が見られる。前記マンガン化合物は実施例に後述するように、斜方晶の結晶構造を有するリン酸マンガンリチウムであると考えられる。このリン酸マンガンリチウムは、後述の実施例のように、正極の充電電位を4.3V(vs.Li/Li)とした場合、リン酸バナジウムリチウムよりも大きな理論容量を有していることから、二次電池用活物質の充放電容量を高めることが期待できるので好ましい。
【0024】
本発明に係る二次電池用活物質に含有されるリン酸バナジウムリチウムは、一般式Li2−yMn(PO(0≦x≦5、0.01≦y≦0.16)で表される。ここで、yの値を0.01以上とすることで、本発明の効果が発現するので好ましい。一方、マンガンの置換量が多すぎると、このリン酸バナジウムリチウムを含有する二次電池用活物質の充放電容量が低下することから、yは0.16以下であることが好ましい。また、yが0.01≦y≦0.10の範囲である場合、放電容量が比較的維持されていることからより好ましい。さらに、0.02≦y≦0.08の範囲である場合、このリン酸バナジウムリチウムを含有する二次電池用活物質は、高率充放電性能に優れると共に、高い充放電容量を維持していることから特に好ましい。
【0025】
本発明に係るナシコン構造のリン酸バナジウムリチウムを含有する二次電池用活物質の合成方法については、特に限定されるものではない。具体的には、固相法、液相法、ゾル−ゲル法、水熱法等が挙げられるが、中でも液相法やゾル−ゲル法が好ましい。例えば、リチウム、バナジウム、マンガン、リン及び酸素を含有する原料を溶媒に溶解させて沈殿物の無い前駆体溶液を作製し、その前駆体溶液を乾燥させて前駆体粉末を得た後、所定の温度において不活性雰囲気或いは還元性雰囲気中において焼成することにより製造されるものが好ましい。
上記前駆体溶液にはカーボン源を共存させておくことが好ましい。カーボン源が共存することにより、合成後の二次電池用活物質やそこに含有されるリン酸バナジウムリチウムの粒子の表面又は内部に導電性の炭素質化合物を備えることが可能となる。前駆体溶液に共存させるカーボン源としては、前駆体溶液と同じ溶媒に可溶であれば特に限定されることは無く、クエン酸、ショ糖、ラクトース一水和物、マルトース一水和物、アスコルビン酸、エチレングリコール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
上記前駆体溶液の乾燥方法についても、特に限定されるものではないが、スラリードライヤー、スプレードライヤー等の既存の乾燥装置を用いることができる。また、前駆体溶液をビーカーなどの容器中で攪拌・加熱を行いながら、溶媒を蒸発除去することで前駆体粉末を得ることもできる。
上記焼成温度としては、リン酸バナジウムリチウムが生成すると共に、カーボン源が熱分解により炭化する温度が求められるが、温度が低すぎるとナシコン構造とは異なるLiVOPO等の化合物が生成すること、温度が高すぎると二次電池溶活物質の性能が低下することから、上記焼成温度は600℃〜950℃が好ましい。より好ましくは650℃〜850℃である。
【0026】
本発明に係る二次電池用活物質を合成する際のカーボン源は、焼成工程においてバナジウムの還元反応のために消費されるカーボンよりも多くすると共に、二次電池用活物質全体の質量に対して0.5質量%以上のカーボンが含まれるようにすることが好ましい。また、二次電池用活物質に含まれるカーボンが多すぎるとタップ密度の低下に繋がるため、二次電池用活物質に含まれるカーボン量は、二次電池用活物質全体の質量に対して5質量%以下であることが好ましい。
【0027】
上記リン酸バナジウムリチウムを含有する二次電池用活物質において、リチウム、バナジウム、マンガン、リン、酸素の一部が他の元素で置換されていることを妨げるものではない。置換する他の元素としては例えば、リチウムの場合は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属が、バナジウム又は/及びマンガンの場合は、スカンジウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、インジウム、アルミニウム等の金属が、リンの場合は、ケイ素、ホウ素、硫黄等が、酸素の場合はフッ素、塩素等が挙げられる。また、リン酸バナジウムリチウムを含有する二次電池用活物質の性能の向上等を目的として、本発明の効果を損なわない範囲において、意図的に不純物を共存させても良く、更に、合成工程などにおいて、意図せず不純物が混入されても構わない。
【0028】
また、上記リン酸バナジウムリチウムを含有する二次電池用活物質が、リチウム原子、バナジウム原子、マンガン原子、リン原子などを含んでいること及びその量は、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析により確認することができる。また、金属原子が互いに固溶していること及びその結晶構造については、粉末X線回折分析(XRD)により確認することができる。他にも透過型電子顕微鏡観察(TEM)、エネルギー分散X線分光法(EDX)、走査電顕X線分析(EPMA)、高分解能電子顕微鏡分析(HRAEM)及び電子エネルギー損失分光法(EELS)などの分析機器を併用することにより、詳細な分析を行うことが可能である。
【0029】
本発明において、上記リン酸バナジウムリチウムを含有する二次電池用活物質は、二次粒子の平均粒子サイズ100μm以下の粉体として用いることが好ましい。特に、二次粒子の平均粒子径は0.1〜50μmがより好ましく、前記二次粒子を構成する一次粒子の粒径は1〜500nmであることが好ましい。また、粉体粒子の流動法窒素ガス吸着法によるBET比表面積は電極の高率充放電性能を向上させるためにある程度大きい方が良く、1〜100m/gが好ましい。より好ましくは5〜50m/gである。粉体を所定の形状で得るため、粉砕機や分級機を用いることができる。例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミルや篩等を用いることができる。粉砕時には水、あるいはアルコール、ヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いても良い。分級方法としては、特に限定はなく、必要に応じて篩や風力分級機などを用いることができる。
【0030】
本発明のリン酸バナジウムリチウムを含有する二次電池活物質を用いてリチウム二次電池用電極を作製するに当たり、前記リン酸バナジウムリチウムを含有する二次電池用活物質の他に、ポリフッ化ビニリデン、シリコンブタジエンゴム、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシメチルセルロース等の周知の結着剤や、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノファイバー等の周知の導電剤を周知の処方で用いることができる。仮に、本発明の二次電池用活物質を用いた二次電池用電極に上記アセチレンブラック等が混在している場合であっても、本発明の二次電池用活物質が備える繊維状カーボンと、上記アセチレンブラック等のカーボンとは、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡観察(TEM)、収束イオンビーム(FIB)、走査イオン顕微鏡(SIM)、エネルギー分散X線分光法(EDX)を併用することにより、判別が可能である。
【0031】
本発明のリン酸バナジウムリチウムを含有する二次電池用活物質を非水電解質中で用いる場合には、電極中に含まれる水分量は少ない方が好ましく、具体的には1000ppm未満であることが好ましい。水分量を減少させる手段としては、高温・減圧環境において電極を乾燥する方法や、電極に含まれる水分を電気化学的に分解する方法が適している。
【0032】
また、電極合材層の厚さは電池のエネルギー密度との兼ね合いから本発明を適用する電極合材層の厚みは10〜500μmであることが好ましい。
【0033】
本発明電池の対極は、何ら限定されるものではなく、リチウム金属、リチウム合金(リチウム―アルミニウム、リチウム―鉛、リチウム―錫、リチウム―アルミニウム―錫、リチウム―ガリウム、およびウッド合金等のリチウム金属含有合金)の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えばグラファイト、ハードカーボン、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)、金属酸化物、リチウム金属酸化物(LiTi12等)、ポリリン酸化合物、ポリアニオン化合物、リチウム遷移金属複合酸化物等が挙げられる。これらを、二次電池に用いる電解質の種類に応じて使用することができる。
【0034】
一般的に、二次電池の形態としては、正極、負極、電解質塩が溶媒に含有された電解質から構成され、一般的には、正極と負極との間に、セパレータとこれらを包装する外装体が設けられる。
【0035】
溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等の環状炭酸エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネ−ト等の鎖状カーボネート類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状エステル類;テトラヒドロフランまたはその誘導体;1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジブトキシエタン、メチルジグライム等のエ−テル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジオキソランまたはその誘導体;エチレンスルフィド、スルホラン、スルトンまたはその誘導体等の単独またはそれら2種以上の混合物等からなる非水溶媒や水を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
電解質塩としては、例えば、LiBF、LiPF、LiClO、LiN(CSO、LiN(CFSO等のイオン性化合物が挙げられ、これらのイオン性化合物を単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。また、リチウム以外の電解質塩を含ませることも可能であり、例えば、NaClO等が挙げられる。電解質における電解質塩の濃度としては、高い電池性能を有する二次電池を確実に得るために、0.5mol/l以上5mol/l以下が好ましく、さらに好ましくは、1mol/l以上2.5mol/l以下である。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例を例示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0038】
(リン酸バナジウムリチウム含有二次電池用活物質の合成)
(実施例1)
まず、イオン交換水にマンガン源として酢酸マンガン四水和物(Mn(CHCOO)・4HO)(ナカライテスク株式会社製)を溶解させて酢酸マンガン水溶液を作製した。これとは別に、リチウム源として水酸化リチウム一水和物(LiOH・HO)(ナカライテスク株式会社製)をイオン交換水に溶解させた。この水酸化リチウム水溶液をスターラーによる攪拌を行いながら、バナジウム源である五酸化バナジウム(V)(太陽鉱工株式会社、VT−2)を加えて溶解させた後、予め作製しておいた酢酸マンガン水溶液を混合した。さらに、カーボン源であるクエン酸一水和物(C・HO)(ナカライテスク株式会社製)を加えて溶解したのを確認した後、リン酸源であるリン酸二水素アンモニウム(NHPO)(ナカライテスク株式会社製)を加えることで前駆体溶液を調製した。前駆体溶液中の各原料のモル比は、LiOH・HO:V:Mn(CHCOO)・4HO:C・HO:NHPO=3.03:0.995:0.01:1.5:3とし、水酸化リチウムの濃度が1mol/lとなるようにした。上記前駆体溶液をマグネチィックスターラー付き150℃のホットプレートで加熱、攪拌しながら蒸発乾固を行った。得られた乾燥前駆体を自動乳鉢で1時間の粉砕を行うことにより前駆体粉末とした。この前駆体粉末をアルミナ製の匣鉢(外形寸法90×90×50mm)に入れ、雰囲気置換式焼成炉(株式会社デンケン製卓上真空ガス置換炉KDF−75、内容積2400cm)を用いて、窒素ガスの流通下(流速1.0 l/min)で仮焼成と焼成を連続して行った。仮焼成温度は350℃とし、仮焼成時間(前記仮焼成温度を維持する時間)は3時間とした。仮焼成の後、炉内の温度を下げることなく、焼成へと移行し、焼成温度850℃、焼成時間(前記焼成温度を維持する時間)6時間の焼成を行った。なお、昇温速度は仮焼成及び焼成を通じて5℃/min、降温は自然放冷とした。なお、焼成物の取り出しは、その酸化を防ぐために、炉内温度が50℃以下の状態で行った。また、窒素ガスは粉末を炉内に導入した後、取り出すまで常に一定の流速で流し続けた。焼成炉から取り出した焼成物を自動乳鉢を用いて1時間粉砕することにより、マンガンを0.5%含有する二次電池用活物質を作製した。これを本発明活物質a1とする。
【0039】
(実施例2)
二次電池用活物質の作製において、前駆体溶液中の各原料のモル比を、LiOH・HO:V:Mn(CHCOO)・4HO:C・HO:NHPO=3.03:0.99:0.02:1.5:3としたことを除いては、実施例1と同様にして、マンガンを1%含有する二次電池用活物質を作製した。これを本発明活物質a2とする。
【0040】
(実施例3)
二次電池用活物質の作製において、前駆体溶液中の各原料のモル比を、LiOH・HO:V:Mn(CHCOO)・4HO:C・HO:NHPO=3.03:0.98:0.04:1.5:3としたことを除いては、実施例1と同様にして、マンガンを2%含有する二次電池用活物質を作製した。これを本発明活物質a3とする。
【0041】
(実施例4)
二次電池用活物質の作製において、前駆体溶液中の各原料のモル比を、LiOH・HO:V:Mn(CHCOO)・4HO:C・HO:NHPO=3.03:0.96:0.08:1.5:3としたことを除いては、実施例1と同様にして、マンガンを4%含有する二次電池用活物質を作製した。これを本発明活物質a4とする。
【0042】
(実施例5)
二次電池用活物質の作製において、前駆体溶液中の各原料のモル比を、LiOH・HO:V:Mn(CHCOO)・4HO:C・HO:NHPO=3.03:0.95:0.10:1.5:3としたことを除いては、実施例1と同様にして、マンガンを5%含有する二次電池用活物質を作製した。これを本発明活物質a5とする。
【0043】
(実施例6)
二次電池用活物質の作製において、前駆体溶液中の各原料のモル比を、LiOH・HO:V:Mn(CHCOO)・4HO:C・HO:NHPO=3.03:0.92:0.16:1.5:3としたことを除いては、実施例1と同様にして、マンガンを8%含有する二次電池用活物質を作製した。これを本発明活物質a6とする。
【0044】
(比較例1)
二次電池用活物質の作製において、原料に酢酸マンガン四水和物を使用しなかったこと、即ち、前駆体溶液中の各原料のモル比を、LiOH・HO:V:Mn(CHCOO)・4HO:C・HO:NHPO=3.03:1:0:1.5:3としたことを除いては、実施例1と同様にして、マンガンを含有しない二次電池用活物質を作製した。これを比較活物質b1とする。
【0045】
(XRD測定)
実施例1〜6及び比較例1で得られた二次電池用活物質は、CuKα線源を用いたエックス線回折装置(Rigaku社製、型名:MiniFlex II)を行いてエックス線回折測定を行った。
【0046】
(正極の作製)
実施例1の二次電池用活物質、導電剤であるアセチレンブラック及び結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)を84:8:8の質量比で含有し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶媒とする正極ペーストを調製した。該正極ペーストを、アルミ端子を取り付けたアルミニウムメッシュ集電体上の両面に塗布し、80℃でNMPを除去した後、塗布部分同士を二重に重ね、塗布部分の投影面積が半分になるように折り曲げ、折り曲げた後の厚みが400μmになるようにプレス加工を行い、本発明正極とした。折り曲げた後の塗布面積は2.25cm、塗布質量は約0.074gである。正極は150℃で5時間以上の減圧乾燥を行い、極板中の水分を除去して使用した。
【0047】
(負極の作製)
ステンレス鋼(品名:SUS316)製の端子を取り付けたステンレス鋼(品名:SUS316)製のメッシュ集電体の両面に、厚さ300μmのリチウム金属箔を貼り合わせてプレス加工したものを負極とした。
【0048】
(参照極の作製)
リチウム金属片をステンレス鋼(品名:SUS316)製の集電棒の先端に貼り付けたものを参照極とした。
【0049】
(電解液の調製)
エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比1:1:1の割合で混合した混合溶媒に、含フッ素系電解質塩であるLiPFを1.0mol/lの濃度で溶解させ、非水電解質を作製した。該非水電解質中の水分量は50ppm未満とした。
【0050】
(電池の組み立て)
露点−40℃以下のArボックス中においてガラス製のリチウムイオン二次電池を組み立てた。予め容器の蓋部分に導線部を固定した金メッキクリップに正極と負極と参照極とを各1枚ずつ挟んだ後、正・負極が対向するように固定した。参照極は負極から見て正極の裏側となる位置に固定した。次に、一定量の電解液を入れたポリプロピレン製カップをガラス容器内に設置し、そこに正極、負極及び参照極が浸かるように蓋をすることで電池を組み立てた。この電池を本発明電池A1とする。
【0051】
同様にして、実施例2〜6及び比較例1のそれぞれの二次電池用活物質を用いて正極を作製し、上記の手順にてリチウム二次電池を組み立てた。本発明活物質a2〜a6及び比較活物質b1を用いた正極を使用したリチウム二次電池を、それぞれ本発明電池A2〜A6比較電池B1とする。
【0052】
(初期活性化)
上記のようにして作製した本発明電池A1〜A6及び比較電池B1を温度25℃において、3サイクルの充放電を行う初期活性化工程に供した。充電条件は、電流0.78mA、充電電圧4.3V、15時間の定電流定電圧充電とし、放電条件は、電流0.78mA、放電終止電圧2.7Vの定電流放電とした。なお、電流値0.78mAは二次電池用活物質1gあたりの放電容量を130mAhとした場合の0.1CmAに相当する。
【0053】
(高率充電容量試験)
上記初期活性化工程に続いて、本発明電池A1〜A6及び比較電池B1に対して、温度25℃において、充電電流39mA、充電電圧4.3Vの定電流充電を行った後、放電電流7.8mA、放電終止電圧2.7Vの定電流放電を行った。この高率充電容量試験の充電電流値は、活物質1gあたりの放電容量を130mAhとした場合、5CmAに相当する。
上記初期活性化工程の3サイクル目の放電容量を「0.1CmA放電容量」として記録し、高率充電容量試験時に得られた充電容量の値を「5CmA充電容量」として記録した。その値を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
図1からわかるように、マンガンの含有量が4%の二次電池用活物質a4のXRDプロファイルには、一部のピークにシフトが観察されるものの、マンガンを含有しないb1とほぼ同じプロファイルが得られており、不純物のピークが存在していない。また、この図には示していないが、マンガン含有量が5%以下のa1〜a3及びa5の二次電池用活物質においてもa4と同様のXRDプロファイルが観測されており、不純物ピークの存在は確認されなかった。このことから、a1〜a4の二次電池用活物質は、マンガンがリン酸バナジウムリチウムに固溶している、即ち、リン酸バナジウムリチウムのバナジウムの一部をマンガンが置換しているものと考えられる。一方、マンガンの含有量が8であるa6の二次電池用活物質のXRDプロファイルには、b1のプロファイルには存在しないピークが観察される。このピークを解析すると、リン酸バナジウムリチウムとは異なる結晶構造を有するリン酸マンガンリチウムであることが判明した。従って、a5とa6の二次電池用活物質には、上記リン酸バナジウムリチウムに加えて、不純物としてリン酸マンガンリチウムが含有されていると考えられる。
【0056】
また、表1からわかるように、本発明電池A1〜A6は、比較電池B1と比較して、高い高率充電容量が得られている。この電池性能の違いは、正極に含まれる二次電池用活物質に由来するものと考えられる。実施例1〜6の二次電池用活物質にはマンガンが含まれており、前述のように、そのマンガンの全量又は一部は、リン酸バナジウムリチウムのバナジウムの一部をマンガンが置換している。このマンガンによりバナジウムの一部が置換されたリン酸バナジウムリチウムがマンガンを含まないリン酸バナジウムリチウムよりも高率充電性能が優れているものと考えられる。このように、マンガンによりバナジウムの一部が置換されたリン酸バナジウムリチウムの高率充電性能に優れる理由については、定かではないが、バナジウムのサイトの一部がイオン半径の大きなマンガンにより置換されることにより、ある特定の格子面方向に結晶が伸長し、リチウムイオンの拡散経路が広がる、あるいは、リチウムイオンの拡散経路がより直線的に連なるといった、リチウムイオンの拡散係数が改善されることにより本発明の効果が奏されるものと考えられる。
一方、放電容量は、比較電池B1が最大であり、本発明電池A1から順に容量が減少し、本発明電池A6において最小となっている。この結果から、二次電池用活物質中のマンガン含有量が増加するに従って、放電容量が減少傾向にあることが判る。これは、二次電池用活物質に含有されているリン酸バナジウムリチウムのマンガン置換量に関係しているものと考えられる。即ち、リン酸バナジウムリチウムに置換されているマンガンは、リチウムイオンの挿入・脱離反応に関与していないものと推察される。従って、二次電池用活物質中に含有されているマンガンの比率が高いほどリン酸バナジウムリチウムのマンガン置換量が増加するために放電容量が減少するものと考えられる。
これらの結果から、二次電池用活物質中にバナジウムに対するマンガンの原子数の比率が、0.5%以上8%以下の割合で含有されることが好ましい。また、放電容量が比較的維持されていることから、二次電池用活物質中に含有されるバナジウムに対するマンガンの原子数の比率は、0.5%以上5%以下の割合であることがより好ましい。さらに、二次電池用活物質中に含有されるバナジウムに対するマンガンの原子数の比率が、1%以上4%以下であれば、放電容量と高率充電性能ともに優れていることから、特に好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の二次電池用活物質は、高率充電性能に優れるので、高率充電性能及び入力性能に優れた二次電池を提供することができる。本発明の二次電池は、高率充電性能及び入力性能に優れるので、今後の展開が期待されるハイブリッド自動車及び電気自動車等の産業用電池において特に高い回生充電能力が求められる分野への応用に適しており、産業上の利用の可能性は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施例4、6及び比較例1の二次電池用活物質のXRDプロファイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナシコン構造を有するリン酸バナジウムリチウムを含有する二次電池用活物質であって、前記二次電池用活物質は、リチウム、バナジウム、マンガン、リン及び酸素の各原子を含み、バナジウムに対するマンガンの原子数の比率が、0.5%以上8%以下であることを特徴とする二次電池用活物質。
【請求項2】
前記リン酸バナジウムリチウムは、一般式Li2−yMn(PO(0≦x≦5、0.01≦y≦0.16)で表されることを特徴とする請求項1記載の二次電池用活物質。
【請求項3】
前記リン酸バナジウムリチウムは、一般式Li2−yMn(PO(0≦x≦5、0.01≦y≦0.10)で表されることを特徴とする請求項1記載の二次電池用活物質。
【請求項4】
前記二次電池用活物質は、前記リン酸バナジウムリチウムとは異なる結晶構造を有するマンガン化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二次電池用活物質。
【請求項5】
前記二次電池用活物質は、その活物質粒子の表面又は内部に炭素質化合物を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の二次電池用活物質。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の二次電池用活物質を含有する二次電池用電極。
【請求項7】
請求項6記載の二次電池用活物質からなる電極と、その電極と対を成す対極と、電解質とを備えた二次電池。


【図1】
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【公開番号】特開2013−77517(P2013−77517A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218029(P2011−218029)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】