説明

二段スイッチ装置

【課題】アナログ信号とデジタル信号を生成可能な簡易な構造を持つニ段スイッチ装置を提供する。
【解決手段】第一電極21および第二電極22を有する印刷回路基板2と、印刷回路基板2上に配置される導電性ドーム3と、第三電極42および第四電極43を形成した絶縁性フィルム4と、絶縁性フィルム4側に配置されるボタンアクチュエータ5とを備え、ボタンアクチュエータ5には、第三電極42および第四電極43の両方に相当する位置に、絶縁性フィルム4側に突出する導電性弾性体6を備え、ボタンアクチュエータ5を押し込む距離に応じて導電性弾性体6が第三電極42および第四電極43の両方に接触する面積が増加して、電気抵抗が小さくなるようにアナログポーションを形成し、ボタンアクチュエータ5を押し込んで導電性ドーム3をへこませることで、導電性ドーム3と第二電極22との間でデジタルポーションを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ装置に関し、特に、二段スイッチ構造を有するデュアルファンクションスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
ある装置に対して典型的なオン・オフデジタルスイッチに加え、さらなる入力を提供できる単一のボタンアクチュエータは、当該装置に様々な利益を提供し得る。例えば、オーディオ機器のパネルに二段スイッチの機能を持つキーを備えると、多数のスイッチを備える必要がなくなる。この結果、パネル表面のデザインがシンプルになると共に、ユーザは、迷うことなく、所望のキーを簡単に選択することができる。
【0003】
さらに、フォーカス機能とシャッター機能を併せ持つ単一の二段スイッチが多くのカメラに搭載されていることは、良く知られている。そのニ段スイッチを操作する際には、フォーカスを実行するためにスイッチの一段目を押し込み、シャッターをオンにするためにさらに二段目を押し込むことができる。このようなニ段スイッチの構造の一例は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,217,893号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されるニ段スイッチは、銀ペーストを蒸着した印刷回路基板(PCB)と、メタルドームと、一対のスルーホールを持ったフィルムと、それらスルーホールを通過する下方に伸びる導電ブロックを持つフレキシブルコンタクトボディと、上記メタルドームの外表面中央を押すコンタクトピンを持つボタン体とを、下から順に配置した構造を有する。ボタン体を押すと、最初に導電ブロックがメタルドームに接する。さらにボタンを押し続けると、メタルドームが押されて、PCB上の2つの電極が互いに電気的に接続される。上記構造を持つニ段スイッチは、フレキシブルコンタクトボディの弾性が経年劣化することに起因して、誤作動を生じ得る。さらに、その二段スイッチは、一段目のスイッチと二段目のスイッチが互いに離れた場所でオンになる構造を有しているため、スイッチ全体の面積が大きくなる。かかる理由から、よりシンプルで、かつより小さな構造が望まれる。さらに、そのニ段スイッチは、オン・オフのデジタル信号を生じるものであり、応用には限界がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みて、本発明者らは、アナログ信号とデジタル信号を生成可能なシンプルな構造を持つニ段スイッチ装置を提供する。当該二段スイッチ装置は、印刷回路基板(PCB)と、導電性ドーム(例えば、メタルドーム)と、絶縁性フィルムと、ボタンアクチュエータとを順に配置した構造を有する二段スイッチを備える。
【0007】
PCBの表面には、接点用の第一電極および第二電極が互いに分離して形成される。導電性ドームは、第一電極に電気的に接続され、第二電極と絶縁された状態にてPCB上に配置される。例えば、第一電極を導電性ドームの縁に接するようにPCB上に形成し、第二電極を導電性ドームの実質的に中央に相当するPCB上に形成しても良い。絶縁性フィルムは、PCBとは反対側の導電性ドームの表面を覆う薄い絶縁層である。絶縁性フィルムには、接点用の第三電極および第四電極が互いに分離した状態にて、導電性ドームの上方に相当するその外側表面に形成される。この観点から、絶縁性フィルムは、フィルム状のPCBと称しても良い。
【0008】
ボタンアクチュエータは、絶縁性フィルムのPCBとは反対側に配置され、その絶縁性フィルムの方向に押すことのできる部材である。ボタンアクチュエータは、絶縁性フィルム側の面であって第三電極および第四電極の両方に相当する位置に、絶縁性フィルム側に突出する導電性弾性体を備える。導電性弾性体と、第三電極および第四電極とは、1つのアナログポーションを形成する。この結果、ボタンアクチュエータをPCBに向かって押し込むと、その押し込む距離に応じて、導電性弾性体が第三電極および第四電極の両方に接触する面積が増加し、その面積の増加に伴い、第三電極と第四電極間の電気抵抗が小さくなる。
【0009】
さらに、導電性ドームと第二電極とは、1つのデジタルポーションを形成する。この結果、ボタンアクチュエータをPCBに向かって押し込んで導電性ドームをへこませると、その導電性ドームは、第二電極と電気的に接続することができる。
【0010】
本発明の一形態では、ボタンアクチュエータが押されていないデフォルトの状態では、導電性弾性体と絶縁性フィルムとの間に空間を存在させても良い。この空間は、ボタンアクチュエータが押されていないデフォルトの状態では、アナログポーションをオープンにし得る。この結果、消費電力をセーブすることができる。
【0011】
本発明の別の形態では、導電性弾性体は、絶縁性フィルムに向かって水平断面の面積を小さくする形状を有していても良い。例えば、導電性弾性体の形状は、絶縁性フィルムの方向の表面が球面となる半球形状、あるいはその方向の表面が尖塔となる円錐形状であっても良い。ただし、導電性ドームはボタンアクチュエータの方向に突出する球面形状を有するため、導電性弾性体の形状が平板形状であっても、アナログポーションを形成可能である。
【0012】
本発明のさらなる別の形態では、二段スイッチ装置は、さらに、アナログポーションおよびデジタルポーションからのそれぞれの電気抵抗の変化を検知する検知装置を備える。その検知装置は、アナログポーションからの電気抵抗の変化若しくはその電気抵抗の変化に伴う電圧の変化が所定の閾値を超えたかどうかを決定し、当該変化がその閾値を超えた場合には、アナログポーションが入力(または作動)されたものと決定することができる。当該閾値は、RAMあるいはROM等のメモリに記録でき、当該検知装置は、そのメモリから上記閾値を読み出して、アナログポーションの入力(または作動)を決定する。
【0013】
本発明のさらなる別の形態では、上記検知装置は、デジタルポーションにおけるスイッチの入力を検知する前に、アナログポーションの入力を決定しても良い。例えば、より低い弾性率を有する導電性弾性体あるいは高い剛性を有する導電性ドームを用いて、ボタンアクチュエータがPCBに向けて押し込まれると、最初にアナログポーションが入力され、次に、導電性ドームがへこんでデジタルポーションが入力される。逆に、高い弾性率を有する導電性弾性体あるいは低い剛性を有する導電性ドームを用いて、ボタンアクチュエータがPCBに向けて押し込まれると、最初に導電性ドームがへこんでデジタルポーションが入力され、次に、導電性弾性体がつぶれてアナログポーションが入力される。
【0014】
さらに、本発明の別の形態では、PCBは、アナログポーションを含むアナログ回路とデジタルポーションを含むデジタル回路を電気的に組み合わせた複合回路を備えても良い。検知装置は、その複合回路からの単一の出力電圧に基づき、アナログポーションの入力およびデジタルポーションの入力を検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、一実施形態に係る例示的な二段スイッチ装置の分解斜視図である。
【図2】図2は、図1の例示的な二段スイッチ装置の側断面図である。
【図3】図3は、図1の例示的な二段スイッチ装置のフィルムを備えるPCBの平面図である。
【図4】図4は、図1の例示的な二段スイッチ装置が第一段階まで押し込まれた際の側断面図である。
【図5】図5は、図1の例示的な二段スイッチ装置が第二段階まで押し込まれた際の側断面図である。
【図6】図6中のAおよびBは、それぞれ、アナログポーションとデジタルポーションを分離して備える各例示的な回路を示す電気回路図である。
【図7】図7は、アナログポーションとデジタルポーションをそれぞれ並列して備える例示的な一つの回路を示す電気回路図である。
【図8】図8は、アナログポーションとデジタルポーションを含む多数並列ポーションを備える例示的な一つの回路を示す電気回路図である。
【図9】図9は、一実施形態に係る別の例示的な二段スイッチ装置の押し込まれていないときに導電弾性部材がフィルムから離れている状態の側断面図である。
【図10】図10は、図9に示す二段スイッチ装置のPCB上のアナログポーションとデジタルポーションを並列に備える例示的な一つの回路を示す電気回路図である。
【図11】図11は、一実施形態に係る例示的な二段スイッチ装置によるスイッチ検出のプロセスを示すフローチャートである。
【図12】図12は、図11に示すフローチャートを実行するためのマイクロプロセッサ、メモリ、アナログポーションおよびデジタルポーションを含む電気回路の例示的な構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好適であるもののこれに限定されない実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1および図2に示すように、本発明の一実施形態において、二段スイッチ装置1は、印刷回路基板(以後、単に、PCBと称する)2、導電性ドーム(好適には、メタルドーム)3、絶縁性フィルム4およびボタンアクチュエータ5を備える。導電性ドーム3は、PCB2の上に配置され、絶縁性フィルム4は、導電性ドーム3の上に配置される。ボタンアクチュエータ5は、その一部が絶縁フィルム4と接触できるように、導電性ドーム3の上方に配置される。
【0018】
PCB2の表面には、導電性の配線(好ましくは、銅、銀、金、若しくはタングステンの配線)によって1若しくは2以上の回路が形成されている。その回路の一部には、図1に示すように、接点用の第一電極21と第二電極22とが互いに分離して形成されている。この実施の形態では、第一電極21は実質的に円形に形成され、第二電極22はドット形状に形成され第一電極21の実質的に中央に配置されているが、第一電極21および第二電極22の形状、配置される位置は、これに限定されない。
【0019】
実質的に円形の導電性ドーム3は、わずかに突出している中央部分を有する。導電性ドーム3は、優れた導電性を有し、例えば、ステンレススチール、あるいはステンレススチールの表面に銀をコートした材料のような容易に弾性変形可能な材料から成る。導電性ドーム3は、それが第一電極21に電気的に接続され、かつ第二電極22と絶縁されるように、上記突出する部分の裏側31がPCB2側に向いた状態にて、PCB2上に配置される。この結果、PCB2側に向かって導電性ドーム3の突出する中央部に圧力が加えられていないときには、第一電極21と第二電極22とは互いに電気的に接続されない。
【0020】
絶縁性フィルム4は、絶縁性と可撓性に共に優れる薄い樹脂若しくはエラストマーから構成される。PCB2と同様、絶縁性フィルム4は、その表面に導電性の配線から構成される電子回路を有する。その電子回路には、接点用の第三電極42および第四電極43が互いに分離して形成される。第三電極42および第四電極43は、実質的に同じ形状を有する櫛歯状の電極であり、互いの櫛歯の隙間に挿入され、決して接触しない状態で配置される。第三電極42と第四電極43は、接点用電極41を構成する。その接点用電極41は、導電性ドーム3の面積と同一若しくはそれより小さい大きさで、絶縁性フィルム4上に形成することができる。ただし、接点用電極41が導電性ドーム3より大きくても良い。第三電極42および第四電極43の形状は、いくつかの歯を備える形状に限定されず、例えば、半円形のような他の形状であっても良い。絶縁性フィルム4は、接点用電極41を形成される表面が導電性ドーム3と反対側になる状態で、導電性ドーム3上に配置される。絶縁性フィルム4上の電子回路は、PCB2上の電子回路と結合し、それによって1つ若しくは2以上の電子回路を構成することができる。
【0021】
図2に示すように、ボタンアクチュエータ5は、平板状の部材51,52を互いに貼り合わせたものである。平板状の部材51,52は、樹脂、弾性体、金属、ガラス、セラミックス等の如何なる材料で構成することもできる。平板状の部材51,52は、接合表面の間に接着剤若しくは両面テープを介在させ、あるいは接合表面に形成された凹凸部分を嵌めこんで一体化しても良い。さらには、ボタンアクチュエータ5は、一体物であっても良い。平板状の部材52は、凸部52aを備える。凸部52aには、導電性弾性体6が固定されている。
【0022】
導電性弾性体6は、例えば、合成ゴム、熱可塑性エラストマー、天然ゴムのような柔軟性に富む材料から構成される。導電性弾性体6の内部に導電性材料が練り込まれているため、導電性弾性体6も、また、高い導電性を有する弾性体である。導電性材料の好適な例は、カーボンあるいは金属を含む。導電性材料は、粒子、平板、ウィスカー、ストランド、繊維等の様々な形状から構成できる。導電性弾性体6は、実質的に円柱形状にて形成される。導電性弾性体6の一方の端面は曲面形状であり、もう一方の端面は実質的に平面形状である。導電性弾性体6は、また、その中央に非貫通の穴(凹部)を有する。導電性弾性体6の単位面積当たりの電気抵抗は、好ましくは、約10〜100Ω/インチの範囲内にある。ある応用例では、導電性弾性体6が1kgfのロードにて押圧されると、導電性弾性体6は、約100〜10000Ωの範囲内、より好ましくは、約170〜1700Ωの範囲内の電気抵抗を有する。
【0023】
導電性弾性体6の曲面形状を持つ端面は、曲面以外に、その先端に向かうにつれて水平断面積が小さくなる形状(例えば、円錐、角錐、円錐若しくは角錐の先端を平面にした形状)を有していても良い。導電性弾性体6は、穴にボタンアクチュエータ5の凸部52aを嵌め込むことにより、ボタンアクチュエータ5に固定することができる。導電性弾性体6が固定されるボタンアクチュエータ5は、その導電性弾性体6の曲面部分が接点用電極41の実質的に中央に接触する状態となるように、PCB2の上方に配置される。ボタンアクチュエータ5および導電性弾性体6の複合構造あるいは機能は、弾性的に変形可能な導電性アクチュエータと称される。
【0024】
図3に示すように、導電性弾性体6が接点用電極41の実質的に中央部分に接触する面積が初期のSからLに増大すると、第三電極42と第四電極43間の電気抵抗は、その面積の増大に依存して小さくなる。換言すれば、第三電極42と第四電極43との間の電気抵抗は、ボタンアクチュエータ5によって接触した第三電極42と第四電極43の各表面積に比例して変化する。この観点で、導電性弾性体6は可変抵抗として機能するとともに、アナログポーション6a(図4参照)は、第三電極42、第四電極43および導電性弾性体6によって形成される。
【0025】
図4に示す状態は、第一ステージである。第一ステージでは、導電性ドーム3が押圧に対してへこまない。したがって、PCB2上の第一電極21と第二電極22は互いに電気的に接続されていない。図4では、物理的なギャップ”d1”は、第一ステージにおいて、ボタンアクチュエータ5を押圧していない状態と、押圧した状態との間の距離である。図5に示すように、その状態からさらにボタンアクチュエータ5が押圧されると、導電性ドーム3が下方にへこむ。この結果、PCB2上の第一電極21と第二電極22とが互いに電気的に接続する。
【0026】
図5に示す状態は、第二ステージである。この観点で、導電性ドーム3はデジタルスイッチとして機能するとともに、デジタルポーション3aは、第一電極21、第二電極22および導電性ドーム3によって形成される。図5では、物理的なギャップ”d2”は、第一ステージにおけるボタンアクチュエータ5を押圧している状態と、第二ステージにおけるボタンアクチュエータ5を押圧している状態との間の距離である。
【0027】
図6は、二段スイッチ装置1に備えられる二段スイッチ検出回路の部分を例示する電気回路図であり、一段目のスイッチ検出回路(A)および二段目のスイッチ検出回路(B)が別々に構成される例を示す。図6のAに示すように、一段目のスイッチ検出回路は、導電性弾性体6と接点用電極41との接触面積が増大するに従い第三電極42と第四電極43との間の抵抗が少しずつ減少する、いわゆるアナログ回路7である。一方、図6のBに示すように、二段目のスイッチ検出回路は、導電性ドーム3が第一電極21と第二電極22に接触する際に、第一電極21と第二電極22間の抵抗が急激に低下する、いわゆるデジタル回路8である。アナログ回路7は、接点用電極41に対する導電性弾性体6の接触部分(アナログポーション)6aによって形成される可変抵抗71と、基準抵抗72とを備える。アナログ回路7に基準抵抗72を備えることにより、出力電圧(VOut)の計測から可変抵抗71の値を求めることができる。ボタンアクチュエータ5にタッチすること(接触すること)により一段目のスイッチの入力が検出される場合、タッチ(接触)前後における上記出力電圧の比(若しくは差)が予め設定しておいた閾値を越えたときに、一段目のスイッチの入力を検知するように構成することができる。
【0028】
一方、デジタル回路8は、抵抗81と、導電性ドーム3、第一電極21および第二電極22との間で構成されるデジタルスイッチ82とを備える。導電性ドーム3が第一電極21および第二電極22と電気的に接続されたときのみ、スイッチの入力が検知できる。
【0029】
図7は、二段スイッチ装置1に備えられる二段スイッチ検出回路の部分を例示的に示す電気回路図であり、一段目のスイッチ検出回路と二段目のスイッチ検出回路とが複合される例を示す。図7に示すように、複合回路9は、一段目のスイッチ検出回路と二段目のスイッチ検出回路とが組み合わされた回路である。複合回路9では、アナログポーション6aによって形成される可変抵抗91と、デジタルポーション3aによって形成されるオン・オフ式のスイッチ93とが並列的に配置され、基準抵抗92は可変抵抗91およびオン・オフ式のスイッチ93と直列に接続されている。図6に示す別々の回路に比べて、複合回路9は、簡単な構成にて二段スイッチの検出を可能にする点に優位性を有する。スイッチの入力は、単一の出力電圧(VOut)を計測することにより判断できる。複合回路9においても、基準抵抗92を備えることにより、上述と同様の理由から、一段目のスイッチの検出を正確に計測できる。さらに、スイッチ93がオンになると、出力電圧(VOut)は急激に低下する。この結果、二段目のスイッチの入力を検知することができる。
【0030】
図8は、複数の複合回路を備える多重回路10の例を示す図である。複数の二段スイッチ装置1が存在する場合には、図8に示す多重回路10を形成しても良い。多重回路10は、各並列回路101に電圧を供給するスイッチ切換部103を備え、基準抵抗102を並列回路101に共通の抵抗として備える。多重回路10は、基準抵抗102と並列回路101との交差点で1つの出力電圧(VOut)を検出する。その出力電圧は、スイッチ切換部103と同期して検出され、電圧が供給されている並列回路101を認識することができる。そのような多重回路10を構成すると、多くのニ段スイッチが存在する場合でも、資源とスペースを低減でき、かつ各ステージにおける複数の二段スイッチ装置1の入力を検出することができる。
【0031】
図9は、ボタンアクチュエータ5を押していないデフォルトの状態のときに、導電性弾性体6が絶縁性フィルム4上の接点用電極41に接触しておらず、導電性弾性体6と接点用電極41との間に物理的なギャップ”d3”が存在する別の二段スイッチ装置1の断面図である。
【0032】
図10は、図9に示す二段スイッチ装置1に備えられる二段スイッチ検出回路の部分を例示的に示す電気回路図であり、一段目のスイッチ検出回路と二段目のスイッチ検出回路とが複合される例を示す。図10に示す複合回路11は、オン・オフ式のスイッチ114が図7に示す複合回路9の構成に加えられた回路である。スイッチ114は、可変抵抗111とスイッチ113とから構成される並列回路と、基準抵抗112との間に配置される。出力電圧(VOut)は、スイッチ114と基準抵抗112との間で計測される。
【0033】
導電性弾性体6が接点用電極41に接触していない状態は、スイッチ114がオープンになっている状態である。導電性弾性体6が接点用電極41に接触し、第三電極42と第四電極43との間の電気抵抗が低下する状況は、スイッチ114がクローズドになる状態である。導電性弾性体6と接点用電極41とを非接触状態にしておくと、電力消費を低減することができる。
【0034】
図11は、一段目のスイッチの入力を検出するための処理の流れを示すフローチャートである。図12は、図11に示す処理を行うハードウェアの構成を示す図である。
【0035】
PCB2上には、図6を参照して説明したアナログ回路7およびデジタル回路8に電気的に接続されるマイクロプロセッサ12およびメモリ(ランダム・アクセス・メモリ: RAM、リード・オンリー・メモリ: ROM等)13が配置されている。ただし、図7および図8を参照して説明した複合回路9および多重回路10は、マイクロプロセッサ12およびメモリ13に接続されていても良い。マイクロプロセッサ12は、各種演算処理を行う機能を有する。
【0036】
メモリ13は、図11に示す各処理を実行するためのコンピュータ・プログラムを含む各種コンピュータ・プログラムを格納する。マイクロプロセッサ12は、ボタンアクチュエータ5からPCB2の方向への押圧を検知する検知装置である。マイクロプロセッサ12は、メモリ13内に格納されたコンピュータ・プログラムを読み出しながら、アナログ回路7からの電気信号に基づき、スイッチの入力を検出することができる。マイクロプロセッサ12は、アナログ回路7の電気抵抗の変化が所定の閾値を超えたかどうかを決定する。当該変化が所定の閾値を超えていないと判断された場合には、マイクロプロセッサ12は、押圧を検知しない。具体的には、以下の処理が行われる。
【0037】
まず、マイクロプロセッサ12は、アナログ回路7からの出力電圧を監視し、その出力電圧に変化があるかどうかを決定する(ステップST1)。出力電圧に変化があると決定された場合には、マイクロプロセッサ12は、ボタンアクチュエータ5をタッチする前後(検知前後)の出力電圧の比を計算し、あるいは当該出力電圧の比に基づく可変抵抗値の比を計算する(ステップST2)。次に、マイクロプロセッサ12は、上記の比がメモリ13内に格納された閾値を超えたかどうかを決定する(ステップST3)。ステップST3において、上記の比が閾値を超えたと決定された場合には、マイクロプロセッサ12は、一段目のスイッチが押されたものと決定し、押圧信号を出力する(ステップST4)。一方、ステップST3において、上記の比が閾値を超えていないと決定された場合には、マイクロプロセッサ12は、一段目のスイッチが押されていないものと決定し、処理は、ステップST4に進まずにステップST1に戻る。
【0038】
マイクロプロセッサ12は、中央演算装置(CPU)と称しても良い。さらに、ステップST2における出力電圧の比あるいはその比に基づいて得られた可変抵抗値の比に代えて、出力電圧の差又はその差に基づいて得られた可変抵抗値の差を用いても良い。
【0039】
上述のように、電極がボタンアクチュエータ5にタッチする(接触する)前後の相対値に基づいてアナログ回路7におけるスイッチの入力が有るかどうか決定する処理を行うことにより、入力検知の誤動作を効果的に防止することができる。ボタンアクチュエータ5と、二段スイッチ装置1が組み込まれているハウジング(図示していない)との間のクリアランスをゼロあるいは極めて小さくするように、ボタンアクチュエータ5の寸法公差を設定すると、通常、ボタンアクチュエータ5を押していない状態にて、導電性弾性体6は接点用電極41を少し押している状態となり得る。この場合、例えば、出力電圧若しくは可変抵抗の絶対値に基づいてスイッチの入力を検知しようとすると、ボタンアクチュエータ5が押されていないときの最小抵抗値を閾値とせざるを得ない。これは、ボタンアクチュエータ5が押されていないにもかかわらず、スイッチが入力されたものと決定され得るからである。
【0040】
しかし、タッチ(接触)前後の相対値に基づいてスイッチが入力されたかどうかを決定すれば、ボタンアクチュエータ5が押されたときの抵抗値は、どんな値であっても、ボタンアクチュエータ5が押されていない状態における抵抗値よりも常に小さくなる。したがって、誤動作を低減することができる。
【0041】
アナログ信号は、ボタンアクチュエータ5に加えられた力に比例するため、所望の力に相当する信号レベルというのは、ボタンアクチュエータ5のデジタルポーション3aが十分に作動される前および/あるいは後のイベントを起動するための閾値として応用可能である。これは、機能上、ボタン入力に似ているが、信号の閾値は、ボタンアクチュエータ5の押圧作動範囲内のある特定範囲におけるアクションを受付若しくは防止するために選択可能である。アナログ信号の閾値は、また、異なる条件に合わせる行動の間、ダイナミックに適応可能にもなる。
【0042】
上述の二段スイッチ装置1は、次の例示的な実施形態に応用可能である。
【0043】
例1:カメラのオートフォーカスおよび画像キャプチュアを制御する応用
デジタルポーション3aを作動するのに必要とされるより小さな押圧力に相当する信号閾値を選択する。このアナログ信号の閾値を超えると、カメラのオートフォーカス機構が作動を維持するようになる。ボタンアクチュエータ5への押圧力が増大して、ボタンアクチュエータ5のデジタルポーション3aが作動すると、カメラの画像キャプチュアが、このイベントに対応して作動する。
【0044】
例2:さらなる入力用のシステムを準備する応用
デジタルポーション3aを作動するのに必要とされるより小さな押圧力に相当する信号閾値を選択する。このアナログ信号の閾値を超えると、そのシステムは、ボタンアクチュエータ5のデジタルポーション3aから入力を受け付けるための準備におけるいくつかのアクションを実行する。アナログ信号のトリガーに対応するシステムアクションは、静止若しくはアイドリング状態からの再起動、ボタン入力を受け付けるためのモードの変更、あるいはボタンアクチュエータ5へのそれに相当する作動押圧が認識されたことをユーザにフィードバックすることを含む。
【0045】
例3:ボタンアクチュエータに加えられた過度の押圧を検知する応用
デジタルポーション3aを作動するのに必要とされるより大きな押圧力に相当する信号閾値を選択する。このアナログ信号の閾値を超えると、そのシステムは、イベントを開始する、および/またはボタンアクチュエータ5へのそれに相当する作動押圧を超えたことをユーザにフィードバックする行動をもたらす。特定の押圧閾値の検出を行うに加え、アナログ信号は、デジタルポーション3aの作動前、作動中あるいは作動後にボタンアクチュエータ5に加えられた押圧力に比例する出力を提供することによって、いくつかの機能を制御するのに使用できる。この出力は、ボタンアクチュエータ5に加えられた押圧力に比例してシステム内のイベントの応答を変化させるのに使用することができる。
【0046】
例4:パワーウィンドウを制御する応用
デジタルポーション3aが作動される前に生成されたアナログ出力信号の範囲は、低い押圧力を低速に対応させ、押圧力を増大すると速度を上昇させるようにして、電気モニタへのスピード制御出力と対応付けられる。ユーザは、ボタンアクチュエータ5に加える押圧力を所望のレベルに調整することによって、ウィンドウを動かすスピードを制御する。デジタルポーション3aを作動すると、ユーザから要求される如何なる入力も無しに、駆動域のエンドまでウィンドウを動かすことになる。一対の二段スイッチ装置1は、上げ動作と下げ動作を別々に制御するために使用でき、また、切替機能は、単一の二段スイッチ装置1に対して逆方向に作動可能とするために使用できる。
【0047】
例5:システム内のリストあるいはシーケンスを操作する応用
デジタルポーション3aが作動される前に生成されたアナログ出力信号の範囲は、低押圧力を低速に対応させ、押圧力を増大すると速度を上昇させるようにして、リストまたはシーケンス内の次のエレメントに移動するためのスピード制御出力と対応付けられる。ユーザは、ボタンアクチュエータ5に加える押圧力を所望のレベルに調整することによって、選択変更のスピードを制御する。デジタルポーション3aを作動すると、リストあるいはシーケンス内の最後のエレメントに進む選択になる。加えて、時間の閾値を、アナログおよびデジタル作動がイベントへのシステムの応答を変えるのに適用しても良い。例えば、アナログ入力検出のごく短い時間内にデジタルポーション3aが作動された場合、システムは、如何なるアナログ入力をも破棄して、次のエレメントに選択を進めるのではなく、単一のエレメントに進めることができる。一対の二段スイッチ装置1は、前方選択と後方選択の変更を別々に制御するために使用でき、また、切替機能は、単一の二段スイッチ装置1に対して逆方向に作動可能とするために使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点用の第一電極および第二電極が互いに分離してその表面に形成される印刷回路基板と、
上記第一電極に電気的に接続され、上記第二電極とは電気的に接続しないで上記印刷回路基板上に配置される導電性ドームと、
上記導電性ドームの上記印刷回路基板とは反対側の表面を覆う絶縁性フィルムであって、接点用の第三電極および第四電極が互いに分離して上記導電性ドームの上方に相当する上記絶縁性フィルムの外側表面に形成される絶縁性フィルムと、
上記絶縁性フィルムの上記印刷回路基板とは反対側に配置され、上記絶縁性フィルムの方向に押すことのできるボタンアクチュエータとを備え、
上記ボタンアクチュエータは、その上記絶縁性フィルム側の面であって上記第三電極および上記第四電極の両方に相当する位置に、上記絶縁性フィルム側に突出する導電性弾性体を備え、
上記ボタンアクチュエータを押し込む距離に応じて上記導電性弾性体が上記第三電極および上記第四電極の両方に接触する面積が増加し、その面積の増加に伴い上記第三電極と上記第四電極間の電気抵抗が小さくなるように、上記導電性弾性体と、上記第三電極および上記第四電極との間でアナログポーションを形成し、
上記ボタンアクチュエータを押し込んで上記導電性ドームをへこませると、それによって上記導電性ドームが上記第二電極と電気的に接続するように、上記導電性ドームと上記第二電極との間でデジタルポーションを形成することを特徴とする二段スイッチ装置。
【請求項2】
デフォルトの状態において、前記導電性弾性体は、前記絶縁性フィルムとの間に空間を有していることを特徴とする請求項1に記載の二段スイッチ装置。
【請求項3】
前記導電性弾性体は、前記絶縁性フィルムの方向に向かって水平断面の面積を小さくする形状を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の二段スイッチ装置。
【請求項4】
前記アナログポーションおよび前記デジタルポーションからのそれぞれの電気抵抗の変化を検知する検知装置をさらに備え、
その検知装置は、前記アナログポーションからの電気抵抗の変化若しくはその電気抵抗の変化に伴う電圧の変化が所定の閾値を超えたかどうかを決定し、当該変化がその閾値を超えた場合には、前記アナログポーションが入力されたものと決定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の二段スイッチ装置。
【請求項5】
前記アナログポーションおよび前記デジタルポーションからのそれぞれの電気抵抗の変化を検知する検知装置をさらに備え、
その検知装置は、前記デジタルポーションにおけるスイッチの入力を検知する前に、前記アナログポーションの入力を決定する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の二段スイッチ装置。
【請求項6】
前記印刷回路基板は、前記アナログポーションを含むアナログ回路と前記デジタルポーションを含むデジタル回路を電気的に組み合わせた複合回路を備え、
前記検知装置は、その複合回路からの単一の出力電圧により、前記アナログポーションの入力および前記デジタルポーションの入力を検知する請求項4または請求項5に記載の二段スイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−119252(P2011−119252A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259831(P2010−259831)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】