説明

二段燃焼方法と該二段燃焼方法を用いるボイラ

【課題】NOx濃度の排出量が少ない二段燃焼方法と二段燃焼ボイラを提供すること。
【解決手段】ボイラ火炉1の1つの壁面の上下方向に複数段、幅方向に複数列配したバーナ2と火炉1のいずれかの壁面にバーナ2よりも上方に設けられ、バーナ2からの燃焼ガスを完全燃焼させるための二段燃焼用ガスを投入するAAP3,4を備えた二段燃焼式ボイラにおいて、バーナ2に対向する火炉壁面の上下方向であって、バーナ2とAAP3,4の間に還元剤投入口5を設け、還元剤投入口5の火炉壁面上下方向の位置をバーナ2のうち最も上方に配置されたバーナ2と該バーナ2と対向する壁面の最も下方に配置されたAAP3,4の火炉上下方向の距離をLとしたときに最も上方に配置されたバーナ2の上方1/3L〜2/3Lとして、バ−ナ領域で高濃度に発生したNOxを効果的に還元する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に火力発電プラント向けのボイラに係わり、ボイラから排出されるNOx濃度を低減するのに好適な二段燃焼方法と該二段燃焼方法を用いるボイラを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
火力発電プラント向けのボイラにおいては、従来より窒素酸化物(以下、NOxと称す)の発生量を低減するために、バ−ナでは燃料に対して理論空気比よりも少ない空気量を投入して還元雰囲気として排ガス中のNOx濃度の低減を図り(これを低NOx化ということがある)、CO等の未燃分を燃焼するために、下流のアフターエアポート(以下、AAPと称す)から追加空気を投入する二段燃焼方式が採用されている。
【0003】
最終的には火炉出口で燃料を完全燃焼させるため、燃焼装置全体で供給される空気量は、理論空気比の1.0よりも多い1.2程度になるように過剰に供給している。燃焼排ガス中の低NOx化の観点からは、バーナとAAP間の距離を大きくすることが望ましいが、ボイラ高さを大きくすることになるので、既設のボイラをそのように改造するのは難しく、新規にボイラを製造する場合は大型化に伴う設備費の増大につながる。
【0004】
一方、燃料の燃焼によって発生したNOxを火炉に還元剤を吹き込むことによって還元して、排出される排ガス中のNOx濃度を低減しようとする無触媒脱硝技術が数多く公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-64291号公報
【特許文献2】特開2009-103381号公報
【特許文献3】米国特許第6213032号
【特許文献4】特開2003-232503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1〜3記載の二段燃焼方式を採用していないボイラや二段燃焼方式を採用しているボイラにおいて、AAPからの追加空気噴流の影響を受ける火炉内の領域から下流側の領域は、酸素の残存した酸化雰囲気となっている。この場合、火炉に供給した還元剤が窒素(N)を含むアンモニア水や尿素水であると、酸素と反応してNOxを生成してしまい、NOx濃度増加のおそれがある。
【0007】
また、一般に火力発電用に用いられる微粉炭焚きボイラでは、AAP以降の伝熱管と熱交換することで、雰囲気温度が徐々に低下して後部伝熱管部では、1,000℃以下になる。この領域は、燃焼ガスの流れが伝熱管によって整流されて均一化されているため、均一に分散したNOxと還元剤とを反応させるためには、広大なガス流路の全面に還元剤が行き渡るように多数の投入口を設けるか、多量の還元剤を投入してNOxと還元剤との混合を促進する必要がある。NOxと還元剤の混合が悪い場合には、未反応の還元剤がそのままボイラ系外に排出され、リ−クアンモニア等の増大につながる可能性がある。
【0008】
従来技術では、還元剤を投入する領域での残存する酸素濃度や投入した還元剤とNOxとの混合(反応のし易さ)について考慮されておらず、還元剤の投入法あるいは投入位置を誤ると、NOx濃度の増加あるいはリ−クアンモニア等の増大が生ずるといった問題が残る。
【0009】
また、上記の特許文献4記載の微粉炭燃焼用バーナ又はAAPから含酸素有機化合物を火炉内に供給して燃焼ガス中のNOを酸化してNOとし、NOより活性が高いNOが燃焼ガス中の炭化水素類、CO、H、シアン、アンモニアなどを窒素に還元することで排ガス中のNOx濃度を低減するというものである。
【0010】
この特許文献4記載の発明は還元剤である含酸素有機化合物を酸化剤である燃焼用空気に混入して、あるいは燃焼用空気に囲まれたノズルから供給するため、周囲の酸化剤である空気と還元剤との反応が促進されてNOx濃度が増加する可能性があることが問題である。
【0011】
本発明の課題は、NOx濃度の排出量が少ない二段燃焼法と二段燃焼ボイラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記本発明の課題は、次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明(フロントファイアリング形式のボイラに対応する)は、水平断面が矩形の縦型火炉と、燃料とその搬送ガスとの混合流体を噴出させる燃料ノズルと該燃料を理論空気比以下の酸素で燃焼させるための燃焼用ガスを噴出させる燃焼用ガスノズルを有するバーナを前記火炉の1つの壁面の上下方向に複数段、幅方向に複数列配したバーナ群と、前記火炉のいずれかの壁面に前記バーナ群よりも該火炉の上方に設けられ、前記バーナ群からの燃焼ガスを完全燃焼させるための二段燃焼用ガスを投入する二段燃焼用ガス投入口を備えた二段燃焼式ボイラにおいて、前記バーナ群に対向する火炉壁面の火炉上下方向であって、前記バーナ群と前記二段燃焼用ガス投入口の間に還元剤投入口を設けたことを特徴とする二段燃焼式ボイラである。
【0013】
請求項2記載の発明(対向燃焼式のボイラに対応する)は、水平断面が矩形の縦型火炉と、燃料とその搬送ガスとの混合流体を噴出させる燃料ノズルと該燃料を理論空気比以下の酸素で燃焼させるための燃焼用ガスを噴出させる燃焼用ガスノズルを有するバーナを前記火炉の対向する2つの壁面の上下方向に複数段、左右方向に複数列それぞれ配したバーナ群と、前記火炉のいずれかの壁面に前記バーナ群よりも該火炉の上方に設けられ、前記バーナ群からの燃焼ガスを完全燃焼させるための二段燃焼用ガスを投入する二段燃焼用ガス投入口を備えた二段燃焼式ボイラにおいて、前記バーナ群に対向する火炉壁面及び/又は該壁面に隣接する壁面(側壁)の火炉上下方向であって、前記バーナ群と前記二段燃焼用ガス投入口の間に還元剤投入口を設けたことを特徴とする二段燃焼式ボイラである。
【0014】
請求項3記載の発明は、前記還元剤投入口から投入される還元剤の噴出方向が火炉上下方向及び/又は左右方向に可変となっていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の二段燃焼式ボイラである。
【0015】
請求項4記載の発明は、前記バーナ群のうち最も上方に配置されたバーナと該バーナと対向する壁面に設けられた前記二段燃焼用ガス投入口のうち最も下方に配置された前記二段燃焼用ガス投入口の火炉上下方向の距離をLとしたときに前記最も上方に配置されたバーナの上方1/3L〜2/3Lの火炉壁面に前記還元剤投入口を配置したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の二段燃焼式ボイラである。
【0016】
請求項5記載の発明は、燃料を理論空気比以下の酸素と共に縦型火炉の一以上のバーナから火炉内に噴出して火炉内で不完全燃焼させ、次いで火炉内の前記不完全燃焼領域の後流側の火炉壁に設けた一以上の二段燃焼用ガス投入口から燃焼用ガスを噴出させて燃料を完全燃焼させる二段燃焼方法において、最も上方に配置されたバーナと該バーナと対向する壁面に設けられた前記二段燃焼用ガス投入口のうち最も下方に配置された前記二段燃焼用ガス投入口の火炉上下方向の距離をLとしたときに前記最も上方に配置されたバーナの上方1/3L〜2/3Lの火炉壁から還元剤を火炉内に投入する二段燃焼方法である。
【0017】
請求項6記載の発明は、前記還元剤投入口から還元剤の噴出方向を火炉内の上下方向及び/又は左右方向に変ボイラ火炉更して投入することを特徴とする請求項5記載の二段燃焼方法である。
【0018】
(作用)
二段燃焼方法を採用したボイラでは、バ−ナは理論空気比よりも少ない空気量を投入して還元雰囲気で燃焼が進むため、AAP上流(ボイラ火炉上下方向では最下段AAPの下側)では残存する酸素濃度は極めて少ない。このため、この領域に還元剤を供給すると、バ−ナ部で発生したNOxと還元剤が反応して、無害な窒素ガスになる。例えば、一酸化窒素(NO)とアンモニア(NH)との反応は、1,500℃近傍の高温下では下記式(1)の等モル反応で進行する。
【0019】
4NO+4NH → 4N+4HO+2H (1)
また、特に微粉炭焚きボイラでは、バ−ナ部で発生した高濃度のNOxは、バ−ナからの火炎あるいは燃焼ガス噴流に乗って対向壁あるいはバーナ設置火炉壁に隣接する側壁に沿って上昇する。このため、AAP上流の火炎あるいは燃焼ガス噴流が延びた先でバーナから噴出した空気が消費され尽くす領域に近いバ−ナの対向壁あるいは側壁から還元剤を局部的に投入することにより、燃焼ガスと還元剤との特別な混合促進手段なしに少ない還元剤で効果的にNOxを還元することができる。AAPからの追加空気噴流の影響を受ける領域よりも下方(上流側)に還元剤を吹き込むことが重要である。
【発明の効果】
【0020】
本発明になる微粉炭焚きボイラでは、最上段バ−ナとAAPとの間の還元領域にNOx還元剤を投入することにより、ボイラから排出される排ガス中のNOx濃度を低減するものであるため、ボイラ下流に設置した脱硝装置に供給する還元剤(アンモニア等)の量を低減できるとともに、本発明により大幅なNOx濃度の低減を図ることができ、脱硝装置の削除といったコスト低減が可能となる。
【0021】
更に、本発明による燃焼排ガス中のNOx濃度低減で、NOx濃度に余裕が生じた分、還元領域を小さくできるため、最上段バ−ナとAAPとの距離を小さくし、火炉を小型化することができる。このことからも、低コスト化を図ることができる。
【0022】
また、燃焼性の良い微粉炭の場合は還元剤投入口から下向きに、一方、燃焼性の悪い微粉炭の場合は還元剤投入口から上向きに噴出し、効果的にNOxを低減するものである。また、火炉内での燃焼ガス流れの偏流にも対応できるように火炉内の左右方向にも噴出方向を変更して、効果的にNOxを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明になるフロントファイアリングでの微粉炭焚きボイラ火炉の縦断面図(図1(a))と側面図(図1(b))である。
【図2】本発明になる試験炉を用いた還元剤投入口の位置によるNOx低減効果を示す図である。
【図3】本発明になるフロントファイアリングでの還元剤投入口を複数段を備えた微粉炭焚きボイラ火炉の縦断面図である。
【図4】本発明になるフロントファイアリングでの上下左右に還元剤の噴出方向を変化できる還元剤投入機を設置した微粉炭焚きボイラ火炉の縦断面図(図4(a))と側面図(図4(b))である。
【図5】本発明になるボイラ火炉の還元剤投入機から還元剤の噴出方向を上下に振った場合の試験炉によるNOx濃度の変化を示す図である。
【図6】本発明になるボイラ火炉の前後壁にバーナを設置した対向燃焼用ボイラで還元剤投入位置を高さ方向で変化させた場合の試験炉によるNOx濃度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
本発明者らの研究の結果、主に微粉炭を燃料とするボイラ火炉においては、単に還元剤を火炉内に投入するだけでは、燃焼排ガス中のNOx濃度を低減することができないことが明らかになった。
【0025】
即ち、微粉炭焚ボイラにおいては、高速(例えば15〜28m/s)の搬送ガスで燃料を搬送して高速の燃焼用空気(例えば30〜50m/s)とともに火炉壁面に設けられたバーナから噴出させて着火・火炎を形成するため、火炉水平方向の速度成分が大きい(例えば、バーナ部において15〜70m/s)燃焼ガスの噴流を伴う。
【0026】
また、AAP領域においても、AAPからは高速の燃焼用空気(例えば、30〜60m/s)が噴出して、上記バ−ナ部で生成した上流からの燃焼排ガスと混合し、完全燃焼域を形成するため、火炉水平方向の速度成分が大きい(例えば、AAP部において30〜80m/s)噴流を伴う。
【0027】
このため、火炉空間にNOxの濃度分布が生じるので、燃焼ガスの噴流に対する還元剤投入の位置や向き、燃焼反応の進展に対する投入のタイミングが重要であり、適切な範囲を外れると、NOx低減効果が得られないばかりか、却ってNOx濃度が増大する結果を招くのである。
【0028】
図1に本発明になるフロントファイアリング方式の微粉炭焚きボイラの実施例を示す。図1に示すボイラ火炉1は水平断面が矩形の火炉の前壁1面のみにバーナ2が複数段配置されている例である。
【0029】
なお、本発明の説明において、縦型火炉の水平断面を矩形と表現しているが、バーナ2が配置される高さにおいて、火炉壁の相対向する二つの側壁面が、ほぼ平行な四つの側壁面を有する火炉を形成しているものであれば良く、一部または全部の側壁の角部が微小な壁面となっているような、水平断面が多角形(例えば八角形)状のものも範疇に含む。
また、燃料として専ら微粉炭を燃焼させるボイラに限定されるものでなく、微粉炭以外の燃料を用いるもの、微粉炭と他の燃料とを混焼させるボイラであっても良い。
【0030】
図1では、ボイラ火炉1の前壁に3段4列の微粉炭バ−ナ2を設置し、最上段バ−ナ2の下流(上方)の前後壁に4列のAAP3、4が設置されている。
還元剤投入口5は最上段バ−ナ2とAAP4との間でバーナ2に対向する後壁に4列設置されている。燃焼ガス温度としては1,000℃以上であり、局部的に1,500℃に達する領域である。
【0031】
還元剤投入の手段としては、火炉壁面に設けたノズルから液体の還元剤を噴射することが考えられる。極度な高温に曝されるため、焼損対策が必要であり、設備費の大幅な増加につながらぬように設置場所を最適化して、必要最小限の個数を設けることが望ましい。
【0032】
ここで、使用する燃料の特性、例えば燃料比(=固定炭素/揮発分)によって燃焼速度が異なるので、燃焼排ガス中のNOx濃度の低減効果と還元剤投入口5の設置位置や向き、燃焼反応の進展に対する投入のタイミングも使用する燃料の種類によって異なってくるが、できるだけボイラで使用される複数の燃料に共通してNOx低減効果が得られることが望ましい。
【0033】
図2には、図1に示す実施例について試験炉で最上段バ−ナ2からAAP3,4までの距離をLとして、対向する火炉壁面に設けた還元剤投入口5の位置を高さ方向で変化させた時の炉出口における排ガス中のNOx濃度の変化を示す。ここでは、還元剤として尿素水を用い、還元剤の投入量は投入領域のNOx量のモル比で1.5倍とした。
【0034】
この結果、還元剤を投入しない場合(100%)と比較して、燃料比(=固定炭素/揮発分)の異なる2種類の炭種で、最もNOx濃度の低減する還元剤投入位置は少し異なるものの、NOx濃度の低減効果の得られる還元剤投入位置は最上段バ−ナから1/3L〜2/3Lの位置に存在することが分かった。
還元剤投入位置によっては、却って排ガス中のNOx濃度が増大する結果を招くことが明らかになった。
【0035】
この結果から、還元剤投入口5は、最上段バ−ナ2からAAP3,4までの1/3〜2/3の位置の火炉壁に設置することが望ましい。還元剤投入口5から投入される還元剤はAAP3,4からの空気噴流と接触するまでの滞留時間をできるだけ十分に取れるようにすることが必要である。これにより、少ない設置数で高いNOx濃度の低減効果が得られるので、設備費の増加を最小限に留めることができる。
【0036】
図3には、図1に示す火炉1において還元剤投入口5を複数段にしたこと特徴とする実施例を示す。還元剤投入口5を複数段にした理由は、上記図2の結果から微粉炭の場合に使用する炭種あるいは粒度によって、燃焼性が異なり、最適還元剤投入位置が異なるためである。すなわち、高揮発分炭や微粒子炭は燃焼速度が速く、一方、低揮発分炭や粗粒子は燃焼速度が遅く、高NOx濃度領域および低酸素領域が異なるためである。
【0037】
高揮発分炭や微粒子を用いた場合には、より上流の還元剤投入口5−1を用い、燃焼性の悪い微粉炭の場合は、より下流の還元剤投入口5−3を用いる。ここでも、上流側還元剤投入口5−1は最上段バ−ナ2から1/3Lの位置に、下流側投入口5−3は最上段バ−ナ2から2/3Lの位置に設置することが望ましい。
【0038】
図4には、上下左右に還元剤の噴出方向を変化できる還元剤投入機5aを設置した実施例を示す。この実施例は、図2に示した複数段の還元剤投入口5の設置と同様に、微粉炭の燃焼性に対応して、噴出方向を変化させるものである。すなわち、燃焼性の良い微粉炭の場合は還元剤投入機5aから下向きに、一方、燃焼性の悪い微粉炭の場合は還元剤投入機5aから上向きに噴出し、効果的にNOxを低減するものである。また、還元剤投入機5aは試運転時等にNOx濃度の低減効果を確認した上で、流れの偏流にも対応できるように火炉内の左右にも噴出方向を変更できるようになっている。
【0039】
なお、図3および図4における実施例は、ボイラの運用条件変更に対しても適用できるものである。すなわち、バ−ナ空気比を下げた条件あるいは低負荷運用時には、バ−ナ2に供給する空気量が少なく、上昇流の流速が小さくなるため、燃焼領域が上流側に移行する。このため、還元剤はより上流側に供給することが望まれる。
【0040】
また、ボイラ火炉1の還元剤投入機5aから上向き、下向き又は左右に向きを代えた場合のNOx濃度の低減効果の実証データを図5に示す。
【0041】
さらに、水平断面が矩形のボイラ火炉の前壁と後壁2面にバーナが配置されている対向燃焼用ボイラにおいては、還元剤投入口を、最上段バ−ナとAAPとの間の前壁にも設置することができる。また、前壁と後壁からの火炎(または燃焼ガス噴流)が衝突して側壁へ伸びるため、これに対応するため、最上段バ−ナとAAPとの間の側壁中央部近傍に還元剤投入口を設置することもできる。
【0042】
また、水平断面が矩形のボイラ火炉の前壁と後壁2面にバーナが配置されている対向燃焼用ボイラにおける実証データを図6に示す。
【0043】
還元剤としては、尿素水、アンモニアガス、アンモニア水、一酸化炭素ガスなどNOxに対して還元作用を有する物質を用いることができる。また、還元剤の投入量は投入領域のNOx量のモル比以上とし、下流に設置したAAPからの空気によって、還元剤が酸化してNOxを再生成しないように、2倍のモル比以下にすることが望ましい。
【符号の説明】
【0044】
1 ボイラ火炉
2 バーナ
3、4 AAP
5 還元剤投入口
5a 還元剤投入機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平断面が矩形の縦型火炉と、燃料とその搬送ガスとの混合流体を噴出させる燃料ノズルと該燃料を理論空気比以下の酸素で燃焼させるための燃焼用ガスを噴出させる燃焼用ガスノズルを有するバーナを前記火炉の1つの壁面の上下方向に複数段、幅方向に複数列配したバーナ群と、前記火炉のいずれかの壁面に前記バーナ群よりも該火炉の上方に設けられ、前記バーナ群からの燃焼ガスを完全燃焼させるための二段燃焼用ガスを投入する二段燃焼用ガス投入口を備えた二段燃焼式ボイラにおいて、
前記バーナ群に対向する火炉壁面の火炉上下方向であって、前記バーナ群と前記二段燃焼用ガス投入口の間に還元剤投入口を設けたことを特徴とする二段燃焼式ボイラ。
【請求項2】
水平断面が矩形の縦型火炉と、燃料とその搬送ガスとの混合流体を噴出させる燃料ノズルと該燃料を理論空気比以下の酸素で燃焼させるための燃焼用ガスを噴出させる燃焼用ガスノズルを有するバーナを前記火炉の対向する2つの壁面の上下方向に複数段、左右方向に複数列それぞれ配したバーナ群と、前記火炉のいずれかの壁面に前記バーナ群よりも該火炉の上方に設けられ、前記バーナ群からの燃焼ガスを完全燃焼させるための二段燃焼用ガスを投入する二段燃焼用ガス投入口を備えた二段燃焼式ボイラにおいて、
前記バーナ群に対向する火炉壁面及び/又は該壁面に隣接する壁面(側壁)の火炉上下方向であって、前記バーナ群と前記二段燃焼用ガス投入口の間に還元剤投入口を設けたことを特徴とする二段燃焼式ボイラ。
【請求項3】
前記還元剤投入口から投入される還元剤の噴出方向が火炉上下方向及び/又は左右方向に可変となっていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の二段燃焼式ボイラ。
【請求項4】
前記バーナ群のうち最も上方に配置されたバーナと該バーナと対向する壁面に設けられた前記二段燃焼用ガス投入口のうち最も下方に配置された前記二段燃焼用ガス投入口の火炉上下方向の距離をLとしたときに前記最も上方に配置されたバーナの上方1/3L〜2/3Lの火炉壁面に前記還元剤投入口を配置したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の二段燃焼式ボイラ。
【請求項5】
燃料を理論空気比以下の酸素と共に縦型火炉の一以上のバーナから火炉内に噴出して火炉内で不完全燃焼させ、次いで火炉内の前記不完全燃焼領域の後流側の火炉壁に設けた一以上の二段燃焼用ガス投入口から燃焼用ガスを噴出させて燃料を完全燃焼させる二段燃焼方法において、
最も上方に配置されたバーナと該バーナと対向する壁面に設けられた前記二段燃焼用ガス投入口のうち最も下方に配置された前記二段燃焼用ガス投入口の火炉上下方向の距離をLとしたときに前記最も上方に配置されたバーナの上方1/3L〜2/3Lの火炉壁から還元剤を火炉内に投入する二段燃焼方法。
【請求項6】
前記還元剤投入口から還元剤の噴出方向を火炉内の上下方向及び/又は左右方向に変更して投入することを特徴とする請求項5記載の二段燃焼方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−229891(P2012−229891A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99521(P2011−99521)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】