説明

二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料

【課題】塗膜の光沢性および膜厚の均一性、に優れた二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料を提供する。
【解決手段】水性ポリオール組成物(A)と水性ポリイソシアネート(B)とからなる二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料であって、ゴルフボール本体の最外層を構成する樹脂成分に対する接触角が45°以下であり、塗膜物性が、20°入射角における反射率が70%以上であることを特徴とする二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボール本体表面には、通常、塗膜が設けられている。ゴルフボールの塗膜は、ゴルフボール本体が、太陽光線や風雨にさらされて劣化するのを保護するとともに、ゴルフボール本体に光沢などを付与して外観を向上するために設けられている。このような塗膜を形成するための塗料が種々開発されている。例えば、特許文献1には、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させて得られる水酸基価100〜300の水溶性ウレタンポリオールと、親水性基含有ポリイソシアネートとからなることを特徴とするゴルフボール用水系塗料組成物が開示されている。特許文献2には、水性ポリオールの水性液とポリイソシアネートとを含み、前記水性ポリオールの水酸基価は、50以上100mgKOH/g未満であって、かつ、その重量平均分子量は4000〜20000であることを特徴とするゴルフボール用塗料が開示されている。
【0003】
ゴルフボールは繰返し打撃されて使用されることから、ゴルフボールの塗膜には、衝撃に対する密着性が要求される。特に、ゴルフボールを打撃する際には、ゴルフボール本体が変形するので、ゴルフボール本体を被覆する塗膜がこのような変形に追随できない場合には、塗膜が剥離する傾向がある。また、打撃時におけるクラブとの摩擦や、着地時におけるバンカーの砂やラフなどの地面との摩擦などを受けて、塗膜が剥離する場合がある。
【0004】
ゴルフボール本体表面と塗膜との密着性を高める方法として、例えば、特許文献3には、ゴルフボール本体表面にマークを形成し、塗膜を形成する水性塗料として、主剤と硬化剤と溶剤とを含有する二液硬化型水性塗料を使用するとともに、マークを形成する樹脂成分を、前記水性塗料中に含まれる硬化剤を用いて硬化させることを特徴とするゴルフボールの製造方法が開示されている。
【0005】
ゴルフボール本体表面と塗膜との密着性を高めたゴルフボールとして、例えば、特許文献4には、ゴルフボール本体と、前記ゴルフボール本体を被覆する塗膜とを有するゴルフボールであって、前記塗膜は、水性塗料から得られる塗膜であって、破断伸度が80%以上であり、最大応力が170kgf/cm(16.7MPa)以上であることを特徴とするゴルフボールが開示されている。また、特許文献5には、ゴルフボール本体と、前記ゴルフボール本体を被覆する塗膜とを有するゴルフボールであって、前記塗膜は、カルボキシル基を有する水性ポリオールと水性ポリイソシアネートと水性ポリカルボジイミドとを含有する塗料用組成物を硬化させてなることを特徴とするゴルフボールが開示されている。
【特許文献1】特開2001−271027号公報
【特許文献2】特開2004−187829号公報
【特許文献3】特開2006−557号公報
【特許文献4】特開2006−556号公報
【特許文献5】特開2006−218046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
二液硬化型ウレタン系水性塗料は、溶媒の主成分が水であり塗工作業時に溶媒が揮発し難い。そのため、ゴルフボール本体表面に塗着した塗料は、溶媒を多く含み垂れを生じやすい。従って、二液硬化型ウレタン系水性塗料をゴルフボール本体表面に塗布した場合、ゴルフボール本体表面のディンプルなどの形状が特殊なため、形成される塗膜の膜厚を均一にすることが困難であった。このような問題は、塗料にチクソ性付与剤を添加しても大きな改善効果は得られない。また、塗料中の含有水分量を低下(固形分割合を上昇)させる方法では、塗料のポットライフが短くなる、粘度が高くなり塗装が困難になるといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、塗膜の光沢性および膜厚の均一性、に優れた二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料を提供することを目的とする。本発明は、ゴルフボール本体表面に対する密着性に優れた二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料を提供することを更なる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することができた本発明の二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料は、水性ポリオール組成物(A)と水性ポリイソシアネート(B)とからなる二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料であって、ゴルフボール本体の最外層を構成する樹脂成分に対する接触角が45°以下であり、塗膜物性が、20°入射角における反射率が70%以上であることを特徴とする。
【0009】
すなわち、塗料のゴルフボール本体の最外層を構成する樹脂成分に対する接触角を45°以下とすることにより、ゴルフボール本体表面に対する塗料の濡れ性が良く、塗料のレベリングが向上し、塗料の垂れが抑制される。また、塗膜の20°入射角における反射率を70%以上とすることにより、光沢性が良好となる。その結果、本発明の二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料を用いることにより、膜厚の均一性に優れ、かつ、光沢性に優れた塗膜が得られる。
【0010】
前記塗料の粘度は、50mPa・s〜350mPa・sであることが好ましい。前記塗料の塗膜物性は、10%応力が2.0MPa〜35MPa、最大応力が10.0MPa〜50MPa、破断伸び率が85%〜300%であることが好ましい。塗膜の10%応力、最大応力および破断伸び率が上記範囲内であれば、打撃時のゴルフボール本体の変形に塗膜が追随しやすくなる。これにより、本発明の二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料は、ゴルフボール本体に対する密着性に優れた塗膜が得られる。
【0011】
前記水性ポリオール組成物(A)が有する水酸基(OH基)と前記水性ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基(NCO基)のモル比(NCO基/OH基)は、1.25〜2.50であることが好ましい。また、前記水性ポリオール組成物(A)は、水性アクリルポリオール(a−1)、水性ウレタンポリオール(a−2)および水性ウレタン樹脂(a−3)を含有し、前記水性ポリオール組成物(A)中の水性ウレタン樹脂(a−3)の含有率が、20質量%〜80質量%であることが好ましい。
【0012】
前記水性アクリルポリオール(a−1)の水酸基価は50mgKOH/g〜150mgKOH/gであることが好ましい。前記水性ポリオール組成物(A)中の水性アクリルポリオール(a−1)と水性ウレタンポリオール(a−2)との配合比率(合計100質量%)は、水性アクリルポリオール(a−1)/水性ウレタンポリオール(a−2)=40質量%〜90質量%/60質量%〜10質量%であることが好ましい。
【0013】
前記水性ポリイソシアネート(B)は、ヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体(b−1)、ならびに、イソホロンジイソシアネートおよび/またはその誘導体(b−2)を含有することが好ましく、前記水性ポリイソシアネート(B)中のヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体(b−1)とイソホロンジイソシアネートおよび/またはその誘導体(b−2)との配合比率(合計100質量%)は、(ヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体(b−1))/(イソホロンジイソシアネートおよび/またはその誘導体(b−2))=50質量%〜99質量%/50質量%〜1質量%であることが好ましい。
【0014】
前記ゴルフボール本体の最外層を構成する樹脂成分としては、アイオノマー樹脂またはゴム組成物が好ましい。これにより、アイオノマー樹脂を樹脂成分の主成分とするカバー用組成物から形成されたカバーを有するゴルフボール、または、ゴム成分を主成分とするカバー用組成物から形成されたカバーを有するゴルフボールおよびゴム組成物から形成されるワンピースゴルフボールに対して、膜厚の均一性に優れ、かつ、光沢性に優れた塗膜が得られる。
【0015】
本発明には、ゴルフボール本体と、前記ゴルフボール本体に形成された塗膜とを有する塗装ゴルフボールであって、前記塗膜が前記二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料から形成されている塗装ゴルフボールも含まれる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、塗膜の光沢性および膜厚の均一性に優れた二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料が得られる。またさらに、本発明によれば、ゴルフボール本体表面に対する密着性に優れた二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料は、水性ポリオール組成物(A)と水性ポリイソシアネート(B)とからなる二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料であって、ゴルフボール本体の最外層を構成する樹脂成分に対する接触角が45°以下であり、塗膜物性が、20°入射角における反射率が70%以上であることを特徴とする。
【0018】
前記塗料のゴルフボール本体の最外層を構成する樹脂成分に対する接触角が45°以下であれば、ゴルフボール本体表面上でのレベリングが良く、得られる塗装ゴルフボールの外観が良好となり、塗膜の膜厚の均一性が向上する。前記接触角は43°以下が好ましく、より好ましくは40°以下である。なお、前記接触角の下限値は特に限定されるものではないが、通常35°である。
【0019】
なお、塗料のゴルフボール本体の最外層を構成する樹脂成分に対する接触角は、後述する水性ポリオール組成物(A)および水性ポリイソシアネート(B)の種類や配合量、ならびに、レベリング剤などの添加剤の種類や配合量を適宜変更することにより調整することができる。
【0020】
ここで、ゴルフボール本体の最外層を構成する樹脂成分とは、単層からなるワンピースゴルフボールにおいては、当該ワンピースゴルフボール本体を構成する樹脂成分および/またはゴム組成物を指し、コアと、該コアを被覆するカバーとを有するマルチピースゴルフボールにおいては、カバーを構成する樹脂成分および/またはゴム組成物を指す。
【0021】
また、前記ゴルフボール本体の最外層を構成する樹脂成分としては、アイオノマー樹脂またはゴム組成物が好ましい。すなわち、本発明の二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料は、アイオノマー樹脂またはゴム組成物に対する接触角が45°以下であることが好ましい。なお、本発明の二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料は、アイオノマー樹脂またはゴム組成物のどちらか一方に対して45°以下であることが好ましいが、アイオノマー樹脂およびゴム組成物の両方に対して45°以下であることがより好ましい。
【0022】
本発明の二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料が、接触角45°以下を満足するアイオノマー樹脂は、特に限定されるものではない。本発明の二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料は、エチレンと(メタ)アクリル酸との二元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの三元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、または、これらの混合物からなるアイオノマー樹脂に対して、接触角45°以下を満足することがより好ましい。なお、上記において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を示す。
【0023】
前記エチレンと(メタ)アクリル酸共重合体との二元共重合体や、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価のアルカリ金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられるが、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属イオンが好ましく、亜鉛がより好ましい。
【0024】
また、本発明の二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料が、接触角45°以下を満足するゴム組成物は、特に限定されるものではない。本発明の二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料は、基材ゴムとしてのジエン系ゴム、共架橋剤および架橋開始剤を含むゴム組成物の硬化物に対して接触角45°以下を満足することがより好ましく、特に、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などを基材ゴムとして50質量%以上含有するゴム組成物に対して接触角45°以下を満足することが好ましい。
【0025】
前記塗膜の20°入射角における反射率が70%以上であれば、得られる塗装ゴルフボールの外観が良好となる。前記反射率は75%以上が好ましく、より好ましくは80%以上である。なお、前記反射率の上限値は特に限定されるものではないが、通常80%である。なお、塗膜の20°入射角における反射率は、後述する水性ポリオール組成物(A)および水性ポリイソシアネート(B)の種類や配合量、ならびに、レベリング剤などの添加剤の種類や配合量を適宜変更することにより調整することができる。
【0026】
前記塗膜の10%応力は2.0MPa以上が好ましく、より好ましくは2.5MPa以上、さらに好ましくは3.0MPa以上であり、35MPa以下が好ましく、より好ましくは30MPa以下、さらに好ましくは25MPa以下である。前記10%応力が2.0MPa以上であれば、塗膜が柔らかすぎず、ゴルフボール本体表面に対する密着性がより良好となり、35MPa以下であれば、塗膜が硬すぎず、塗装ゴルフボールを打撃した際に塗膜にひび割れが生じにくい、すなわち、ゴルフボール本体表面に対する密着性がより良好となる。ここで、10%応力とは、伸び率10%における応力であり、測定条件は後述する。
【0027】
前記塗膜の最大応力は10.0MPa以上が好ましく、より好ましくは12.0MPa以上、さらに好ましくは14.5MPa以上であり、50MPa以下が好ましく、より好ましくは45MPa以下、さらに好ましくは40MPa以下である。前記最大応力が10.0MPa以上であれば、塗膜が柔らかすぎず、ゴルフボール本体表面に対する密着性がより良好となり、50MPa以下であれば、塗膜が硬すぎず、塗装ゴルフボールを打撃した際に塗膜にひび割れが生じにくい、すなわち、ゴルフボール本体表面に対する密着性がより良好となる。ここで、最大応力とは、引張試験により測定した際に得られる応力−ひずみ曲線における最大応力である。なお、最大応力は前記応力−ひずみ曲線における最大応力であれば良く、例えば、応力−ひずみ曲線の降伏点における応力が最大のときには降伏応力であり、塗膜が破断する際の応力が最大のときには破断時の応力である。なお、引張試験の測定条件については後述する。
【0028】
前記塗膜の破断伸び率は85%以上が好ましく、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上であり、300%以下が好ましく、より好ましくは290%以下、さらに好ましくは280%以下である。前記破断伸び率が85%以上であれば、塗膜が硬すぎず、塗装ゴルフボールを打撃した際に塗膜にひび割れが生じにくい、すなわち、ゴルフボール本体表面に対する密着性がより良好となり、300%以下であれば、塗膜が柔らかすぎず、ゴルフボール本体表面に対する密着性がより良好となる。ここで、破断伸び率とは、塗膜を引き伸ばした際に、塗膜が破断した瞬間の伸び率である。
【0029】
前記塗料の粘度は50mPa・s以上が好ましく、より好ましくは60mPa・s以上、さらに好ましくは70mPa・s以上であり、350mPa・s以下が好ましく、より好ましくは340mPa・s以下、さらに好ましくは330mPa・s以下である。前記塗料の粘度が50mPa・s以上であれば、塗装時に、ゴルフボール本体表面に塗布された塗料が垂れることがなく、より膜厚均一性の高い塗膜が形成でき、350mPa・s以下であれば、霧化性が良好であり、エアーガンを用いて塗装した場合、得られる塗装ゴルフボールの外観(光沢性)がより良好となる。
【0030】
なお、塗料のアイオノマー樹脂に対する接触角および粘度、ならびに、前記塗膜の20°入射角における反射率、10%応力、最大応力および破断伸び率の測定方法については、後述する。
【0031】
以下、本発明の二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料を構成する各成分について説明する。本発明の二液硬化型ウレタン系水性塗料は、水性ポリオール組成物(A)と、水性ポリイソシアネート(B)とが硬化反応をして、ポリウレタンを生成することによって塗膜を形成するものである。なお、本発明において、単に「水性」という場合には、「水溶性」と「水分散性」のいずれの場合も含まれる。
【0032】
前記水性ポリオール組成物(A)は、水性アクリルポリオール(a−1)、水性ウレタンポリオール(a−2)および水性ウレタン樹脂(a−3)を含有することが好ましい。
【0033】
前記水性アクリルポリオール(a−1)とは、アクリルポリオールであって、水性化されているものをいう。
【0034】
前記アクリルポリオールは、特に限定されず、例えば、水酸基を有するアクリル系単量体および水酸基を有さないアクリル系単量体を共重合して得られる、一分子中に水酸基を2つ以上有するものが挙げられる。
【0035】
前記水酸基を有するアクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。これらの水酸基を有するアクリル系単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記水酸基を有さないアクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸などのアクリル系不飽和カルボン酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロへキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシルなどの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミドなどのその他アクリル系単量体;などが挙げられる。これらの水酸基を有さないアクリル系単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0037】
また、前記アクリルポリオールは、本発明の効果を損なわない程度に、アクリル系単量体以外の水酸基を有する他の単量体成分および/または水酸基を有さない他の単量体成分を含有してもよい。前記水酸基を有する他の単量体成分としては、例えば、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、2−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−1−オール、アリルアルコールなどの不飽和アルコールが挙げられる。前記水酸基を有さない他の単量体成分としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;マレイン酸、イタコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸;などが挙げられる。これらの他の単量体成分は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記アクリルポリオールを水性化する方法は、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸などのカルボキシル基を有する単量体を共重合して、カルボキシル基を塩基で中和して水性化する方法;前記水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体を乳化剤の存在下で乳化重合する方法;が挙げられる。
【0039】
前記水性アクリルポリオール(a−1)の水酸基価は50mgKOH/g以上が好ましく、より好ましくは60mgKOH/g以上、さらに好ましくは70mgKOH/g以上であり、150mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは140mgKOH/g以下、さらに好ましくは130mgKOH/g以下である。水性アクリルポリオール(a−1)の水酸基価が上記範囲内であれば、塗膜の光沢性をより向上させることができ、さらに、塗膜の硬度および耐水性を向上させることができる。なお、本発明において、水酸基価はJIS K 1557−1に準じて、例えば、アセチル化法によって測定することができる。
【0040】
前記水性アクリルポリオール(a−1)のガラス転移温度は20℃以上が好ましく、より好ましくは22℃以上、さらに好ましくは25℃以上であり、60℃以下が好ましく、より好ましくは57℃以下、さらに好ましくは55℃以下である。水性アクリルポリオール(a−1)のガラス転移温度が上記範囲内であれば、水性塗料の製造が容易となり、さらに、塗膜の耐衝撃性を向上させることができる。
【0041】
前記水性アクリルポリオール(a−1)の重量平均分子量は、3000以上が好ましく、より好ましくは5000以上、さらに好ましくは8000以上であり、50000以下が好ましく、より好ましくは45000以下、さらに好ましくは40000以下である。水性アクリルポリオール(a−1)の重量平均分子量が上記範囲内であれば、塗膜の耐水性および耐衝撃性を向上させることができる。なお、水性アクリルポリオール(a−1)の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準物質としてポリスチレン、溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとして有機溶媒系GPC用カラム(例えば、昭和電工社製「Shodex(登録商標) KFシリーズ」など)を用いて測定すればよい。
【0042】
また、前記水性アクリルポリオール(a−1)が一分子中に有する水酸基の個数の平均(平均水酸基数)は、5個以上であることが好ましく、より好ましくは10個以上、さらに好ましくは20個以上であり、100個以下であることが好ましく、より好ましくは50個以下、さらに好ましくは40個以下である。水性アクリルポリオール(a−1)の平均水酸基数が5個以上であれば、水性ポリイソシアネート(B)との反応性がよく、強靭な塗膜を形成でき、ゴルフボール本体表面との密着性がより良好となり、また100個以下であれば、形成される塗膜の耐水性が良好となる。なお、水性アクリルポリオール(a−1)の平均水酸基数は、上記水酸基価および重量平均分子量から計算により求めることができる。
【0043】
前記水性アクリルポリオール(a−1)は、水に溶解もしくは分散させた水性液の態様で使用することが好ましい。例えば、水性アクリルポリオール(a−1)を水に分散させた水性液の態様で使用する場合、当該水性液中の水性アクリルポリオール(a−1)成分の含有量(不揮発分)は、20質量%以上が好ましく、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、70質量%以下が好ましく、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。水性液中の水性アクリルポリオール(a−1)成分の含有量が上記範囲内であれば、水性ウレタンポリオール(a−2)などと混合しやすく、水性ポリオール組成物(A)の調製が容易となる。なお、不揮発分の測定方法については後述する。
【0044】
前記水性アクリルポリオール(a−1)の具体例を商品名で例示すると、例えば、神東塗料社製水性アクリルポリオール(水酸基価108mgKOH/g;ガラス転移温度46℃)、住化バイエルウレタン社製の「バイヒドロール(Bayhydrol)(登録商標) VPLS2058」、「バイヒドロール VPLS2235」、「バイヒドロール XP2470」などが挙げられる。
【0045】
次に、前記水性ポリオール組成物(A)に含有される水性ウレタンポリオール(a−2)について説明する。
【0046】
前記水性ウレタンポリオール(a−2)とは、分子内にウレタン結合を複数有し、一分子中に水酸基を2以上有する水性化合物である。前記水性ウレタンポリオール(a−2)としては、例えば、水性ポリエステルポリオール、水性ポリエーテルポリオールなどの水性ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを、水性ポリオール成分の水酸基がポリイソシアネート成分のイソシアネート基に対して過剰になるような条件で反応させて得られる、水酸基末端ウレタンプレポリマーを挙げることができる。
【0047】
前記水性ウレタンポリオール(a−2)を構成し得る水性ポリエステルポリオールは、水溶性ポリエステルポリオールまたは水分散性ポリエステルポリオールのいずれであってもよく、例えば、カルボキシル基を有するポリエステルポリオールやスルホン酸基を有するポリエステルポリオールなどが挙げられる。前記水性ポリエステルポリオールとして特に好ましいのは、カルボキシル基を有する水性ポリエステルポリオールであり、かかるカルボキシル基を塩基で中和して水性化することができる。
【0048】
前記カルボキシル基を有する水性ポリエステルポリオールは、ポリエステルポリオールを合成する公知の方法により合成することができ、例えば、低分子量ポリオールと多塩基酸とを重縮合させて得ることができる。また、前記ポリエステルポリオールを水性化するためのカルボキシル基は、低分子量ポリオールまたは多塩基酸のいずれからも導入することができる。
【0049】
前記低分子量ポリオールとしては、ポリエステルポリオールの合成に公知のものを挙げることができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAなどのジオール;トリメチロールプロパン、グリセリンなどのトリオール;などを挙げることができる。ポリエステルポリオールにカルボキシル基を導入する低分子量ポリオールとしては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシコハク酸などが挙げられる。これらの低分子量ポリオールは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
前記多塩基酸としては、ポリエステルポリオールの合成に用いられる公知の多塩基酸を挙げることができ、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸などの二塩基酸が挙げられる。ポリエステルポリオールにカルボキシル基を導入できる多塩基酸としては、例えば、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などを挙げることができる。これらの多塩基酸は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
前記水性ウレタンポリオール(a−2)を構成し得る水性ポリエーテルポリオール成分としては、例えば、ポリエチレングリコールを挙げることができる。水性ポリエーテルポリオールは、単に水と混合して、撹拌することにより水性化することができる。また、必要に応じて加熱しながら溶解してもよい。
【0052】
前記水性ウレタンポリオール(a−2)を構成し得るポリイソシアネート成分としては、イソシアネート基を2以上有するものであれば特に限定されず、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)などの芳香族ポリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(HXDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)などの脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。これらのポリイソシアネートは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
前記水性ウレタンポリオール(a−2)の水酸基価は50mgKOH/g以上が好ましく、より好ましくは60mgKOH/g以上、さらに好ましくは70mgKOH/g以上であり、500mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは450mgKOH/g以下、さらに好ましくは400mgKOH/g以下である。水性ウレタンポリオール(a−2)が上記範囲内であれば、塗膜のゴルフボール本体表面に対する密着性をより向上させることができる。
【0054】
前記水性ウレタンポリオール(a−2)の重量平均分子量は、200以上が好ましく、より好ましくは250以上、さらに好ましくは300以上であり、50000以下が好ましく、より好ましくは45000以下、さらに好ましくは40000以下である。水性ウレタンポリオール(a−2)の重量平均分子量が上記範囲内であれば、塗膜の耐水性および耐衝撃性を向上させることができる。なお、水性ウレタンポリオール(a−2)の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準物質としてポリスチレン、溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとして有機溶媒系GPC用カラム(例えば、昭和電工社製「Shodex(登録商標) KFシリーズ」など)を用いて測定すればよい。
【0055】
また、前記水性ウレタンポリオール(a−2)が一分子中に有する水酸基の個数の平均(平均水酸基数)は、1.0個以上であることが好ましく、より好ましくは1.5個以上、さらに好ましくは2個以上であり、50個以下であることが好ましく、より好ましくは45個以下、さらに好ましくは40個以下である。水性ウレタンポリオール(a−2)の前記平均水酸基数が1.0個以上であれば、水性ポリイソシアネート(B)との反応性がよく、強靭な塗膜を形成でき、ゴルフボール本体表面との密着性がより良好となり、また50個以下であれば、形成される塗膜の耐水性が良好となる。なお、水性ウレタンポリオール(a−2)の平均水酸基数は、上記水酸基価および重量平均分子量から計算により求めることができる。
【0056】
前記水性ウレタンポリオール(a−2)は、水に溶解もしくは分散させた水性液の態様で使用することが好ましい。例えば、水性ウレタンポリオール(a−2)を水に分散させた水性液の態様で使用する場合、当該水性液中の水性ウレタンポリオール(a−2)成分の含有量(不揮発分)は、20質量%以上が好ましく、より好ましくは23質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上であり、95質量%以下が好ましく、より好ましくは93質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。水性液中の水性ウレタンポリオール(a−2)成分の含有量が上記範囲内であれば、水性アクリルポリオール(a−1)などと混合しやすく、水性ポリオール組成物(A)の調製が容易となる。なお、不揮発分の測定方法については後述する。
【0057】
前記水性ウレタンポリオール(a−2)の水性液の具体例を商品名で例示すると、例えば、キング インダストリーズ社製の「FLEXOREZ(登録商標) UD−350W」、「FLEXOREZ UD−320」、住化バイエルウレタン社製の「バイヒドロール(Bayhydrol)(登録商標) VPLS2056」が挙げられる。
【0058】
次に、前記水性ポリオール組成物(A)に含有される水性ウレタン樹脂(a−3)について説明する。
【0059】
前記水性ウレタン樹脂(a−3)とは、ポリウレタン樹脂を水性化したものである。
【0060】
前記ポリウレタン樹脂は、分子内にウレタン結合を複数有するものであれば、特に限定されず、例えば、ポリイソシアネート成分と高分子量ポリオール成分とを反応させることによって、ウレタン結合が分子内に形成された生成物であり、必要に応じて、さらに低分子量のポリオールや低分子量のポリアミンなどにより鎖長延長反応させることにより得られるものである。
【0061】
前記ポリウレタン樹脂を構成し得るポリイソシアネート成分としては、前記ウレタンポリオール(a−2)に用いられるものとして例示したポリイソシアネートが挙げられる。
【0062】
前記ポリウレタン樹脂を構成するポリオール成分としては、水酸基を複数有するものであれば特に限定されず、例えば、分子量が500未満の低分子量のポリオールや分子量が500以上の高分子量のポリオールなどを使用することができる。
【0063】
前記低分子量のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールなどのジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのトリオールが挙げられる。前記高分子量のポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)などのポリエーテルポリオール;ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)などの縮合系ポリエステルポリオール;ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)などのラクトン系ポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートなどのポリカーボネートポリオール;およびアクリルポリオールなどが挙げられる。以上のようなポリオールのうち、重量平均分子量50〜2,000を有するもの、特に100〜1,000程度のポリオールが好ましく用いられる。これらのポリオールは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
また、必要に応じて前記ポリウレタン樹脂を構成し得るポリアミン成分は、少なくとも2以上のアミノ基を有するものであれば特に限定されない。前記ポリアミン成分としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン;トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ポリアミン;ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、イソホロンジアミンなどの脂環式ポリアミン;ヒドラジン、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジドなどのヒドラジン類などを挙げることができる。また、前記ポリアミン若しくは低分子量のポリオール成分として、ジエタノールアミン、モノエタノールアミンなどのアルカノールアミンを使用することもできる。
【0065】
前記ポリウレタン樹脂の構成態様としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリイソシアネート成分と高分子量ポリオール成分によって構成されている態様;ポリイソシアネート成分と高分子量ポリオール成分と低分子量ポリオール成分によって構成されている態様;ポリイソシアネート成分と高分子量ポリオール成分と低分子量ポリオール成分とポリアミン成分とによって構成されている態様;ポリイソシアネート成分と高分子量ポリオール成分とポリアミン成分とによって構成されている態様などを挙げることができる。
【0066】
前記ポリウレタン樹脂を水性化する方法としては、例えば、アイオノマー型自己乳化法やプレポリマー乳化型強制乳化法などが挙げられる。
【0067】
アイオノマー型自己乳化法は、ポリウレタン樹脂の分子中にイオン性基を導入して、乳化剤などを用いることなく、水中に溶解あるいは分散させる方法である。ここで、イオン性基とは、カルボキシル基やアミノ基などのイオン化可能な官能基、およびこれらのイオン化可能な官能基が無機金属化合物やアミン類などによって中和されイオン化された官能基を意味する。
【0068】
前記ポリウレタン樹脂の分子中にイオン性基を導入する方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、前記ポリオール成分の一部としてイオン性基を有するポリオールを使用する態様、または前記鎖長延長剤成分の一部または全部としてイオン性基を有する鎖長延長剤を使用する態様、前記ポリオール成分の一部および前記鎖長延長剤成分の一部または全部にイオン性基を有するポリオールおよび鎖長延長剤を使用する態様が挙げられる。
【0069】
前記イオン性基を有するポリオールとしては、例えば、前記水性ウレタンポリオール(a−2)に用いられるものとして例示した、カルボキシル基を有するポリエステルポリオールやスルホン酸基を有するポリエステルポリオールなどが挙げられる。前記イオン性基を有する鎖長延長剤としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシコハク酸などの低分子量ポリオールが挙げられる。
【0070】
プレポリマー乳化型強制乳化法は、比較的低分子量のウレタンプレポリマーを非イオン性の乳化剤の存在下で、高せん断力で強制的に乳化分散させた後、ポリオール成分や低分子量ポリアミン成分などにより鎖長延長反応させる方法である。
【0071】
水性ウレタン樹脂(a−3)と水性ウレタンポリオール(a−2)は、どちらも分子内にウレタン結合を複数有するものであるが、水性ウレタンポリオール(a−2)が一分子中に水酸基を2つ以上有するのに対して、水性ウレタン樹脂(a−3)は実質的に水酸基を有さない。すなわち、水性ウレタン樹脂(a−3)の水酸基価は5mgKOH/g以下である。
【0072】
前記水性ウレタン樹脂(a−3)のガラス転移温度は、20℃以下が好ましく、より好ましくは15℃以下、さらに好ましくは10℃以下である。水性ウレタン樹脂(a−3)のガラス転移温度が20℃以下であれば、水性ウレタン樹脂の伸び率が大きくなり、塗膜の引張物性が向上する。前記水性ウレタン樹脂(a−3)のガラス転移温度の下限値は、特に限定されないが、−50℃である。なお、水性ウレタン樹脂(a−3)のガラス転移温度は、例えば、動的粘弾性測定装置により測定することができる。
【0073】
前記水性ウレタン樹脂(a−3)の伸び率は、100%以上が好ましく、より好ましくは150%以上、さらに好ましくは200%以上であり、2000%以下が好ましく、より好ましくは1900%以下、さらに好ましくは1800%以下である。水性ウレタン樹脂(a−3)の伸び率が上記範囲内であれば、塗膜のゴルフボール本体表面に対する密着性をより向上させることができる。前記水性ウレタン樹脂(a−3)の伸び率の上限値は、特に限定されないが、2500%である。なお、水性ウレタン樹脂(a−3)の伸び率は、例えば、島津製作所製のオートグラフにより測定することができる。
【0074】
なお、本発明において、水性ウレタン樹脂(a−3)のガラス転移温度および伸び率とは、水性ウレタン樹脂(a−3)より得られるフィルムの物性値であり、測定方法については後述する。
【0075】
前記水性ウレタン樹脂(a−3)として、水分散性のウレタン樹脂を使用する場合には、当該ウレタン樹脂の体積平均粒子径は50nm以上が好ましく、より好ましくは55nm以上、さらに好ましくは60nm以上であり、300nm以下が好ましく、より好ましくは250nm以下、さらに好ましくは200nm以下である。分散されるウレタン樹脂の体積平均粒子径が上記範囲内であれば、塗膜の光沢性をより向上させることができる。なお、水に分散されるウレタン樹脂の体積平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置により測定することができる。
【0076】
前記水性ウレタン樹脂(a−3)は、水に溶解もしくは分散させた水性液の態様で使用することが好ましい。例えば、水性ウレタン樹脂(a−3)を水に分散させた水性液の態様で使用する場合、当該水性液中の水性ウレタン樹脂(a−3)成分の含有量(不揮発分)は、10質量%以上が好ましく、より好ましくは12質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、50質量%以下が好ましく、より好ましくは47質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下である。水性液中の水性ウレタン樹脂(a−3)成分の含有量が上記範囲内であれば、水性アクリルポリオール(a−1)などと混合しやすく、水性ポリオール組成物(A)の調製が容易となる。なお、不揮発分の測定方法については後述する。
【0077】
前記水性ポリウレタン樹脂(a−3)の具体例を商品名で例示すると、例えば、第一工業製薬社製の「スーパーフレックス(登録商標) 300」、「スーパーフレックス 500H」、住化バイエルウレタン社製の「バイヒドロール(Bayhydrol)(登録商標) 124」などを挙げることができる。
【0078】
水性ポリオール組成物(A)中の水性ウレタン樹脂(a−3)の含有率は、20質量%以上が好ましく、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、80質量%以下が好ましく、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。水性ポリオール組成物(A)中の水性ウレタン樹脂(a−3)の含有率が上記範囲内であれば、塗膜のゴルフボール本体表面に対する密着性をより向上させることができる。
【0079】
また、前記水性ポリオール組成物(A)中の水性アクリルポリオール(a−1)と水性ウレタンポリオール(a−2)との配合比率(合計100質量%としたとき)は、水性アクリルポリオール(a−1)/水性ウレタンポリオール(a−2)=40質量%〜90質量%/60質量%〜10質量%が好ましく、より好ましくは45質量%〜85質量%/55質量%〜15質量%であり、さらに好ましくは50質量%〜80質量%/50質量%〜20質量%である。配合比率((a−1)/(a−2))が上記範囲内であれば、本発明の二液硬化型ウレタン系水性塗料から得られる塗膜の光沢性、ゴルフボール本体に対する密着性、および耐久性をより向上させることができる。
【0080】
前記水性ポリオール組成物(A)は、分散媒として水を含有することが好ましい。この場合、水性ポリオール組成物(A)中の不揮発分は、20質量%以上が好ましく、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、85質量%以下が好ましく、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下である。水性ポリオール組成物(A)中の不揮発分が、20質量%以上であれば、水性ポリオール組成物(A)と後述する水性ポリイソシアネート(B)との反応速度が良好となる。また、水性ポリオール組成物(A)中の不揮発分が、85質量%以下であれば、粘度が高くなり過ぎず、塗工性が良好となる。なお、不揮発分の測定方法については後述する。
【0081】
水性ポリイソシアネート(B)について説明する。前記水性ポリイソシアネート(B)とは、ポリイソシアネート成分を水性化(水溶性もしくは水分散性にした)した変性体であれば特に限定されず、例えば、ポリオキシアルキレンエーテルアルコールで変性した水性ポリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0082】
前記水性ポリイソシアネートのポリイソシアネート成分としては、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)などの芳香族ポリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(HXDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などの脂環式ポリイソシアネートまたは脂肪族ポリイソシアネート;およびこれらのポリイソシアネートの誘導体が挙げられる。
【0083】
前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、ジイソシアネートのイソシアヌレート体;ジイソシアネートとトリメチロールプロパンあるいはグリセリンなどの低分子量トリオールとを反応させて得られるアダクト体(好ましくは、遊離ジイソシアネートが除去されている);アロハネート変性体;ビュレット変性体などを挙げることができる。前記アロハネート変性体とは、例えば、ジイソシアネートと低分子量ジオールとを反応させて形成されるウレタン結合にさらにジイソシアネートが反応して得られる3官能ポリイソシアネートであり、前記ビュレット変性体とは、例えば、ジイソシアネートと低分子量ジアミンとを反応させて形成されるウレア結合にさらにジイソシアネートが反応して得られる3官能ポリイソシアネートである。これらのポリイソシアネートおよびその誘導体は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
前記水性ポリイソシアネート(B)は、ポリイソシアネート成分として、ヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体(b−1)、ならびに、イソホロンジイソシアネートおよび/またはその誘導体(b−2)を含有することが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体(b−1)、ならびに、イソホロンジイソシアネートおよび/またはその誘導体(b−2)のみを含有する態様がより好ましい。これにより、本発明の二液硬化型ウレタン系水性塗料から得られる塗膜の耐候性が向上する。
【0085】
前記ヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体(b−1)としては、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体が好適である。また、前記イソホロンジイソシアネートおよび/またはその誘導体(b−2)としては、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体が好適である。
【0086】
前記水性ポリイソシアネート(B)中のヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体(b−1)とイソホロンジイソシアネートおよび/またはその誘導体(b−2)との配合比率(合計100質量%としたとき)は、(ヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体(b−1))/(イソホロンジイソシアネートおよび/またはその誘導体(b−2))=50質量%〜99質量%/50質量%〜1質量%が好ましく、より好ましくは55質量%〜95質量%/45質量%〜5質量%、さらに好ましくは60質量%〜90質量%/40質量%〜10質量%である。配合比率((b−1)/(b−2))を上記範囲とすることにより、本発明の二液硬化型ウレタン系水性塗料から得られる塗膜のゴルフボール本体に対する密着性、および耐久性をより向上させることができる。
【0087】
前記水性ポリイソシアネート(B)の具体例を商品名で例示すると、例えば、DIC社製の「CR−60N」、日本ポリウレタン社製の「コロネート(登録商標)C3062、C3053」、住化バイエルウレタン社製の「バイヒジュール(Bayhydur)(登録商標)3100」、「バイヒジュール401−70」、神東塗料社製の「I−3」、和薬ペイント社製の「WG−6B」などを挙げることができる。
【0088】
本発明の二液硬化型ウレタン系水性塗料は、前記水性ポリオール組成物(A)が有する水酸基(OH基)と前記水性ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基(NCO基)のモル比(NCO基/OH基)を1.25以上とすることが好ましく、より好ましくは1.30以上であり、2.50以下とすることが好ましく、より好ましくは2.4以下である。前記モル比(NCO基/OH基)が、1.25未満では、イソシアネート基量が少なく、レベリング効果が得られないため、得られる塗膜の外観が悪くなるおそれがある。また、前記モル比(NCO基/OH基)が2.50を超えると、イソシアネート基量が過剰となり、得られる塗膜が硬く脆くなる上に、外観も悪くなるおそれがある。なお、得られる塗膜の外観が悪くなる理由は、塗料中のイソシアネート基量が過剰となると、水分とイソシアネート基との反応が多くなり、炭酸ガスが多量に発生するためと考えられる。
【0089】
本発明の二液硬化型ウレタン系水性塗料は、上記成分の他、さらに必要に応じて、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、ブロッキング防止剤、レベリング剤、スリップ剤、粘度調整剤などの、一般にゴルフボール用塗料に含有され得る添加剤を含有していてもよい。
【0090】
前記レベリング剤としては、通常、水性塗料に用いられるものであれば特に限定されない。前記レベリング剤としては、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、アクリル系レベリング剤などを用いることができ、これらの中でもシリコーン系レベリング剤が好適である。
【0091】
前記レベリング剤の具体例を表品名で例示すると、例えば、ビッグケミー社から商品名「BYK(登録商標)−307」、「BYK−333」で市販されているポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン;ビッグケミー社から商品名「BYK−345」、「BYK−346」、「BYK−347」、「BYK−348」で市販されているポリエーテル変性シロキサン;サンノプコ社から商品名「SNウェット125」、「SNウェット126」で市販されているシリコーン系レベリング剤;共栄社化学社から商品名「ポリフローKL−245」、「ポリフローKL−260」で市販されている変性シリコーン;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から商品名「EFKA(登録商標)3522」、「EFKA3523」、「EFKA3580」で市販されている変性ポリシロキサン;などが挙げられる。
【0092】
前記レベリング剤を用いる場合、二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料(溶媒含む)中の前記レベリング剤の添加量は、0.05質量%以上が好ましく、より好ましくは0.10質量%以上、さらに好ましくは0.15質量%以上であり、3質量%以下が好ましく、より好ましくは2.5質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下である。前記レベリング剤の添加量が、0.05質量%以上であれば、乾燥塗膜が平滑となり、得られる塗装ゴルフボールの外観がより良好となる。また、前記レベリング剤の添加量が3質量%以下であれば、乾燥塗膜にハジキなどの異常が生じにくくなり、得られる塗装ゴルフボールの概観がより良好となる。
【0093】
本発明の二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料の塗布方法は特に限定されず、二液混合型塗料の塗布方法として公知の方法を採用することができる。例えば、水性ポリオール組成物の水性液などの主剤と水性ポリイソシアネートなどの硬化剤とを混合した後、エアーガン、静電塗装などを使用してゴルフボールに塗布することができる。また、ゴルフボールの表面は、洗浄やサンドブラストなどの表面処理を予め施しておいてもよい。エアーガンで塗装する場合には、水性ポリオールの水性液などの主剤と水性ポリイソシアネートなどの硬化剤とを少量ずつ混合して使用してもよいし、2液定比率ポンプを使ってエアーガン直前の塗料輸送経路でスタティックミキサーのようなラインミキサーを通して連続的に二液を定比率で混合してもよいし、混合比制御機構を備えたエアースプレーシステムを用いることもできる。
【0094】
また、エアーガンを用いて塗布する場合、(1)ゴルフボール本体表面を加熱した後に塗料を塗布する態様;(2)1回の塗料の塗着量を少量にして、複数回重ね塗り、所望の厚みとなるように塗膜を形成する態様;も好ましい態様である。
前記(1)の態様において、塗料を塗布する際のゴルフボール本体表面の温度は、35℃以上が好ましく、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは45℃以上であり、90℃以下が好ましく、より好ましくは85℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。なお、ゴルフボール本体の温度を上記範囲に調節する方法は、特に限定されず、例えば、所定の温度に設定したオーブンに入れる、あるいはマイクロ波を照射する、赤外線を照射するなどが挙げられる。また、ゴルフボール本体表面の温度は、例えば、接触式温度計(三和計器製作所製、「ERK−2000・K」)、赤外線サーモグラフィー装置(NEC Avio赤外線テクノロジー社製、「サーモトレーサー(登録商標)TH9100MV/WV」)などを用いて測定すればよい。
【0095】
前記(2)の態様において、1回の塗装操作における塗料の塗着量は、不揮発分換算で、ゴルフボール1個に対して50mg以上とすることが好ましく、より好ましくは60mg以上、さらに好ましくは70mg以上であり、160mg以下が好ましく、より好ましくは150mg以下、さらに好ましくは140mg以下である。また、塗料を重ね塗りする回数は、2回以上であれば特に限定されず、所望とする膜厚に応じて適宜変更すればよい。例えば、所望とする膜厚が10μmであれば、重ね塗りする回数は2回が特に好ましい。
【0096】
次いで、ゴルフボール本体に塗布された二液硬化型ウレタン系水性塗料は、例えば、30℃〜70℃の温度で1時間〜24時間乾燥することにより塗膜を形成することができる。
【0097】
乾燥後の塗膜の膜厚は、特に限定されないが4μm以上が好ましく、より好ましくは5μm以上、50μm以下が好ましく、より好ましくは40μm以下である。膜厚が4μm未満では、継続的な使用により塗膜が摩耗消失しやすくなる傾向があり、膜厚が50μmを超えるとディンプルの効果が低下してゴルフボールの飛行性能が低下するおそれがある。また前記塗膜は、好ましくは単層構造を有する。単層構造であれば、塗装工程を簡略化でき、本発明における塗膜は、単層構造であっても優れた塗膜物性を発現するからである。また、前記塗膜は最外層のクリアーペイント層であることが好適である。
【0098】
次に、本発明の塗装ゴルフボールについて説明する。
【0099】
本発明の塗装ゴルフボールは、ゴルフボール本体と、前記ゴルフボール本体に形成された塗膜とを有する塗装ゴルフボールであって、前記塗膜が前記二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料から形成されていることを特徴とする。
【0100】
前記ゴルフボール本体の構造は、特に限定されず、ワンピースゴルフボール、ツーピースゴルフボール、スリーピースゴルフボール以上のマルチピースゴルフボール、あるいは、糸巻きゴルフボールであってもよい。いずれの場合であっても、本発明を好適に適用できるからである。これらの中でも、ゴルフボール本体がゴム成分を主成分とするゴム組成物から形成されたワンピースゴルフボール;ツーピースゴルフボール、マルチピースゴルフボールまたは糸巻きゴルフボールのように、コアと前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記カバーが、アイオノマー樹脂を主成分とする樹脂組成物またはゴム成分を主成分とするゴム組成物から形成されたものが好ましい。
【0101】
前記ワンピースゴルフボール本体、ならびに、糸巻きゴルフボール、ツーピースゴルフボールおよびマルチピースゴルフボールに用いられるコアには、従来公知のゴム組成物(以下、単に「ゴム組成物」という場合がある)を用いることができ、例えば、基材ゴムとしてのジエン系ゴム、共架橋剤および架橋開始剤を含むゴム組成物を加熱プレスして成形することができる。
【0102】
前記ゴム組成物は、ゴム成分を主成分とすることが好ましい。すなわち、前記ゴム組成物中の基材ゴム含有量を50質量%以上とすることが好ましい。前記基材ゴムとしては、天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することができ、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などを使用できる。これらの中でも、特に、反発に有利なシス結合が40質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上のハイシスポリブタジエンを用いることが好ましい。
【0103】
前記共架橋剤は、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸またはその金属塩、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸の金属塩が用いられ、金属としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムが好ましく用いられ、より好ましくは亜鉛が用いられる。このような共架橋剤の使用量は、基材ゴム100質量部に対して20質量部以上50質量部以下が好ましい。また、架橋開始剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。有機過酸化物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、1.5質量部以下が好ましく、より好ましくは1.0質量部以下である。また、前記ゴム組成物は、さらに、有機硫黄化合物を含有してもよい。前記有機硫黄化合物としては、ジフェニルジスルフィド類を好適に使用することができる。有機硫黄化合物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下である。
【0104】
前記ゴム組成物には、基材ゴム、共架橋剤、架橋開始剤、ジフェニルジスルフィド類に加えて、さらに、酸化亜鉛や硫酸バリウムなどの比重調整剤、老化防止剤、色粉などを適宜配合することができる。前記ゴム組成物の加熱プレス成型条件は、ゴム組成に応じて適宜設定すればよいが、通常、130℃〜200℃で10分間〜60分間加熱するか、あるいは130℃〜150℃で20分間〜40分間加熱した後、160℃〜180℃で5分間〜15分間と2段階加熱することが好ましい。
【0105】
糸巻きゴルフボール、ツーピースゴルフボールおよびマルチピースゴルフボールにおけるカバーについて説明する。
【0106】
前記カバーを形成するカバー用組成物としては、例えば、前記ワンピースゴルフボールに用いられるようなゴム組成物、または、樹脂成分を含有する樹脂組成物が挙げられる。
【0107】
前記樹脂成分としては、アイオノマー樹脂のほか、ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂若しくは二液硬化型ウレタン樹脂などのウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などの各種樹脂、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(登録商標)(例えば、「エラストランXNY97A」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリスチレンエラストマーまたは商品名「プリマロイ」で市販されている熱可塑性ポリエステル系エラストマーなどを挙げることができる。これらの中でも樹脂成分の主成分をアイオノマー樹脂とすることが好ましい、すなわち、樹脂成分中のアイオノマー樹脂の含有率を50質量%以上とすることが好ましい。特に樹脂成分としてアイオノマー樹脂のみを含有することが好ましい。
【0108】
前記アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1702(Zn)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM7311(Mg)、ハイミランAM7318(Na)、ハイミランAM7329(Zn)、ハイミラン1856(Na)、ハイミラン1855(Zn)など)」が挙げられる。
【0109】
さらにデュポン社から市販されているアイオノマー樹脂としては、「サーリン(Surlyn)(登録商標)(例えば、サーリン8945(Na)、サーリン9945(Zn)、サーリン8140(Na)、サーリン8150(Na)、サーリン9120(Zn)、サーリン9150(Zn)、サーリン6910(Mg)、サーリン6120(Mg)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、サーリンAD8546(Li)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、サーリン6320(Mg)、サーリン8120(Na)、サーリン8320(Na)、サーリン9320(Zn)、サーリン9320W(Zn)など)」、「HPF 1000(Mg)、HPF 2000(Mg)」が挙げられる。
【0110】
またエクソンモービル化学(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、「アイオテック(Iotek)(登録商標)(例えば、アイオテック8000(Na)、アイオテック8030(Na)、アイオテック7010(Zn)、アイオテック7030(Zn)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、アイオテック7510(Zn)、アイオテック7520(Zn)など)」が挙げられる。
【0111】
なお、前記アイオノマー樹脂の商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。
【0112】
前記カバーを形成するカバー用組成物としては、ゴム成分を主成分とするゴム組成物;樹脂成分の主成分がアイオノマー樹脂である樹脂組成物が好適である。
【0113】
本発明におけるカバーは、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの比重調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0114】
カバー用組成物を用いてカバーを成形する態様は、特に限定されないが、カバー用組成物をコア上に直接射出成形する態様、あるいは、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する態様(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)を挙げることができる。
【0115】
カバー用組成物をコア上に射出成形してカバーを成形する場合、カバー成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形によるカバーの成形は、上記ホールドピンを突き出し、コアを投入してホールドさせた後、加熱溶融されたカバー用組成物を注入して、冷却することによりカバーを成形することができ、例えば、980kPa〜1,500kPaの圧力で型締めした金型内に、150℃〜230℃に加熱溶融したカバー用組成物を0.1秒〜1秒で注入し、15秒〜60秒間冷却して型開きすることにより行う。
【0116】
圧縮成形法によりカバーを成形する場合、ハーフシェルの成形は、圧縮成形法または射出成形法のいずれの方法によっても行うことができるが、圧縮成形法が好適である。カバー用組成物を圧縮成形してハーフシェルに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、20MPa以下の圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、+70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みをもつハーフシェルを成形できる。ハーフシェルを用いてカバーを成形する方法としては、例えば、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法を挙げることができる。ハーフシェルを圧縮成形してカバーに成形する条件としては、例えば、0.5MPa以上、25MPa以下の成形圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、+70℃以下の成形温度を挙げることができる。上記成形条件とすることによって、均一なカバー厚みを有するゴルフボールカバーを成形できる。
【0117】
なお、前記成形温度とは、型締めから型開きの間に、下型の凹部の表面が到達する最高温度を意味する。またカバー用組成物の流動開始温度は、島津製作所の「FLOWSTER CFT−500」を用いて、ペレット状のカバー用組成物を、プランジャー面積:1cm、DIE LENGTH:1mm、DIE DIA:1mm、荷重:588.399N、開始温度:30℃、昇温速度:3℃/分の条件で測定することができる。
【0118】
カバーを被覆してゴルフボール本体を作製する際には、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。カバーに形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、ディンプルの総数が500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。また、カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、マークを形成することもできる。
【0119】
本発明のゴルフボールが、スリーピース以上のマルチピースゴルフボールである場合には、コアとカバーとの間に設ける中間層としては、例えば、ポリウレタン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂;ポリスチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマーなどの熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。ここで、アイオノマー樹脂としては、例えば、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも1部を金属イオンで中和したもの、またはエチレンとα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したものが挙げられる。前記中間層には、さらに、硫酸バリウム、タングステンなどの比重調整剤、老化防止剤、顔料などが配合されていてもよい。
【実施例】
【0120】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0121】
評価方法
(1)接触角
試験板上に二液硬化型ウレタン系水性塗料0.03mlを滴下し、滴下してから30秒後の液滴の接触角を、自動液晶ガラス処理検査装置(協和界面科学社製、「LCD−400S型」)を用いて測定した。
なお、試験板としては、ゴルフボール本体の最外層を形成する樹脂成分(カバー用組成物の樹脂成分)から形成した板、アイオノマー板、ゴム組成物板を用いた。各試験板は以下のようにして作製した。
ゴルフボール本体の最外層を形成する樹脂成分の板
カバーを形成するカバー用組成物の樹脂成分、または、ゴルフボール本体を形成するゴム組成物を用いてプレス成形にて作製した。
アイオノマー板
デュポン社製の「サーリン(登録商標)8945」と、三井デュポンポリケミカル社製の「ハイミラン(登録商標)AM7329」とを50:50(質量比)となるように、二軸混練型押出機によりミキシングしてペレットを調製し、該ペレットを160℃で溶融させプレス成形にて作製した。
ゴム組成物板
表1に示す配合のゴム組成物を用いて、厚さ2mmの板となるように、170℃で20分、プレス成形を行った。
【0122】
(2)20°入射角における反射率
室温にて、試験板としてのガラス板に、二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料をエアーガン(一次圧:2kgf/m〜3kgf/m)を用いて塗布し、塗料を23℃で24時間乾燥させ、厚み5〜20μmの塗膜を形成させて試験片を作製した。
得られた試験片について、塗膜の20°入射角における反射率(光沢度)を、光沢計(KONICA MINOLTA社製、「MULTI GLOSS 268」)を用いて、JIS K 5600に準じて測定した。
【0123】
(3)10%応力、最大応力、破断伸び
二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料を用いて、膜厚20μm〜30μmのフィルムを作製した。乾燥条件は、40℃×1週間とした。
次いで、得られたフィルムから試験片を打抜き、精密万能試験機(島津製作所製、オートグラフAG−5000A)を用いて、伸び率を測定した。測定条件は、試料長20mm、引張速度50mm/minとした。
【0124】
(4)粘度
二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料の粘度を、単一円筒回転粘度計(リオンテック社製、「ビスコテスター VT−04F」)を用いて測定した。測定は、3号ローターを使用し、ローターの回転数は62.5min−1、測定温度は25℃とした。なお、本発明の二液硬化型ウレタン系水性塗料の粘度は、水性ポリオール組成物(A)と水性ポリイソシアネート(B)とを混合した直後に測定した。
【0125】
(5)水性ウレタン樹脂の伸び率
水性ウレタン樹脂を用いて、膜厚500μmのフィルムを作製した。乾燥条件は、予備乾燥:室温×15時間、本乾燥:80℃×6時間、120℃×20分とした。
次いで、得られたフィルムから試験片を打抜き、テンシロン万能試験機を用いて、伸び率を測定した。測定条件は、試料長30mm、引張速度200mm/minとした。
【0126】
(6)ガラス転移温度
水性アクリルポリオールのガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)(ティー・エイ・インスツルメント社製、「Q200」)を用いて測定した。測定条件は、測定温度範囲−50℃〜200℃、昇温速度20℃/minとした。
水性ウレタン樹脂のガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置(ユービーエム社製、Rheogel−E4000)を用いて測定した。測定条件は、加振振動数10Hz、測定温度範囲−100℃〜200℃、昇温速度2℃/minとした。試験試料には、水性ウレタン樹脂を用いて作製したフィルムを用いた。なお、乾燥条件は、予備乾燥:室温×15時間、本乾燥:80℃×6時間、120℃×20分とした。
【0127】
(7)不揮発分
試料を、アルミ皿に約2gとり、150℃で1時間強制乾燥させ、乾燥前の質量と乾燥後の質量から不揮発分を求めた。
【0128】
(8)塗装ゴルフボール外観
塗装ゴルフボールの外観を目視にて観察し、以下の評価基準にて評価した。
評価基準
◎:表面が非常になめらかで光沢がある状態。
○:表面がなめらかで光沢がある状態。
△:表面に多少の凸凹があり、つや・光沢が少ない状態。
×:表面に凸凹が多く、つや・光沢がない状態。
【0129】
(9)膜厚の均一性
塗装ゴルフボールの表面を一部切り出し、塗膜の膜厚を観察するための試験片(約7mm四方)を作製した。顕微鏡を用いて、ディンプル6個について、ディンプルの底、エッジ、斜面における塗膜の厚みを測定して平均値を求め、以下の評価基準で評価した。
ディンプルの底、エッジ、斜面における測定箇所について、図1を参照して説明する。図1はディンプル10の底Deおよびゴルフボール2の中心を通過する断面の模式図である。ディンプルの底Deとは、ディンプル10の最も深い箇所である。エッジEdは、ディンプル10の両側に共通の接線Tが画かれたときの、ディンプル10と接線Tとの接点である。斜面における測定箇所Sは、ディンプルの底DeとエッジEdとを結ぶ直線の中点から、ディンプル10に向けて垂線を下ろした際、該垂線とディンプルの斜面とが交わる点である。
評価基準
ディンプルの底、エッジ、斜面における膜厚の平均値を、それぞれx、y、zとする。
◎:│x−y│≦1.5μm、かつ、│y−z│≦1.5μm、かつ、│z−x│≦1.5μm
○:│x−y│≦3μm、かつ、│y−z│≦3μm、かつ、│z−x│≦3μm
×:│x−y│>3μm、または、│y−z│>3μm、または、│z−x│>3μm
【0130】
(10)塗膜の密着性
ツルーテンパー社製のスイングロボットにメタルヘッド製ドライバー(1W)を装着し、ヘッドスピード45m/sで塗装後のゴルフボールを50回繰返し打撃した後、塗膜の剥離状態を観察し、下記の評価基準に基づいて評価した。
評価基準
○:塗膜の剥離面積が全塗膜面積の1%以下。
△:塗膜の剥離面積が全塗膜面積の1%超5%以下。
×:塗膜の剥離面積が全塗膜面積の5%超。
【0131】
[ゴルフボール本体Aの作製]
(1)コアの作製
表1に示す配合のゴム組成物を混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で160℃、13分間加熱プレスすることにより直径39.3mmの球状コアを得た。
【0132】
(2)カバー用組成物の調製
表1に示した配合の材料を、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状のカバー用組成物を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で200〜260℃に加熱された
【0133】
【表1】

ポリブタジエンゴム:JSR社製、「BR51」
酸化亜鉛:東邦亜鉛製、「銀嶺(登録商標)R」
メタクリル酸:三菱レイヨン社製メタクリル酸
アクリル酸亜鉛:日本蒸溜工業製、「ZNDA−90S」
炭酸カルシウム:白石カルシウム製、「BF−300」
ジクミルパーオキサイド:日油製、「パークミル(登録商標)D」
ハイミラン1605:三井デュポンポリケミカル社製のナトリウムイオン中和エチレン− メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
ハイミラン1706:三井デュポンポリケミカル社製の亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
ハイミラン1707:三井デュポンポリケミカル社製のナトリウムイオン中和エチレン− メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
【0134】
(3)ツーピースゴルフボールの作製
上記で得たカバー用組成物を、前述のようにして得たコア上に直接射出成形することによりカバーを形成し、直径42.7mmを有するツーピースゴルフボール本体を作製した。カバー成形用上下金型は、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねている。上記ホールドピンを突き出し、コアを投入後ホールドさせ、80トンの圧力で型締めした金型に210℃に加熱したカバー用組成物を0.3秒で注入し、30秒間冷却して型開きしてゴルフボールを取り出した。なお、ゴルフボールの表面にはディンプルを形成した。
【0135】
[ゴルフボール本体Bの作製]
(1)ワンピースゴルフボールの作製
表1に示す配合のゴム組成物を混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で170℃、17分間加熱プレスすることにより直径42.8mmのワンピースゴルフボールを得た。なお、ゴルフボールの表面にはディンプルを形成した。
【0136】
[マークおよび塗膜の形成]
得られたゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理して、表2に示した二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料をエアーガンで塗布し、40℃のオーブンで塗料を乾燥させ、厚み約10μmの塗膜を形成した。なお、塗料の塗布は、水性ポリオール組成物(A)と水性ポリイソシアネート(B)とを混合した後、速やかに行った。得られた塗装ゴルフボールの外観、および形成された塗膜の膜厚の均一性、密着性について評価した結果を表2に併せて示した。
【0137】
【表2】

水性アクリルポリオール1:神東塗料社製、水性アクリルポリオール(水酸基価108mgKOH/g、平均水酸基数28.8個、ガラス転移温度46℃、不揮発分46質量%、重量平均分子量15000)
水性アクリルポリオール2:住化バイエルウレタン社製、「バイヒドール(登録商標) XP2470」(水酸基価128.7mgKOH/g、平均水酸基数28.9個、ガラス転移温度50℃、不揮発分45質量%、重量平均分子量12600)
水性ウレタンポリオール:キング インダストリーズ社製、「FLEXOREZ(登録商標) UD−350W」(水酸基価325mgKOH/g、平均水酸基数2.3個、不揮発分88質量%、重量平均分子量400)
水性ウレタン樹脂1:第一工業製薬社製、「スーパーフレックス(登録商標) 300」(ガラス転移温度−40℃、不揮発分30質量%、伸び率1500%)
水性ウレタン樹脂2:住化バイエルウレタン社製、「バイヒドロール(登録商標) 124」(ガラス転移温度−56℃、不揮発分35質量%)
HDI誘導体:住化バイエルウレタン社製、「バイヒジュール(登録商標) 305」(イソシアネート基量(NCO%)16.2質量%、無溶媒)
IPDI誘導体:住化バイエルウレタン社製、「バイヒジュール(登録商標) 401−70」(イソシアネート基量(NCO%)9.4質量%、不揮発分70質量%)
レベリング剤:ビックケミー社製、「BYK−333(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)」
【0138】
塗装ゴルフボールNo.1〜13は本発明の実施例に相当する塗料を使用したものである。これらの塗装ゴルフボールは、外観および塗膜の均一性に優れている。これらの中でも、塗装ゴルフボールNo.9は、塗料の粘度が低いため、膜厚の均一性が若干劣る結果となった。また、塗装ゴルフボールNo.12は、塗料の粘度が高いため、外観および塗膜の均一性が若干劣る結果となった。
【0139】
また、上記塗装ゴルフボールNo.1〜15の中でも、塗料の塗膜物性が、10%応力が2.0MPa〜35MPa、最大応力が10.0MPa〜50MPa、破断伸び率が85%〜300%を満足する塗装ゴルフボールNo.1,3,5,6,10,11,13は、塗膜の密着性にも優れていた。
【0140】
塗装ゴルフボールNo.14,16は、塗料のゴルフボール本体の最外層を構成する樹脂成分に対する接触角が45°を超える場合であるが、膜厚の均一性に劣る。塗装ゴルフボールNo.15は、塗料が水性ポリイソシアネート(B)を含有しない場合であるが、塗膜の密着性が劣る。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明は、塗膜の光沢性および膜厚の均一性、ならびに、ゴルフボール本体表面に対する塗膜の密着性に優れた塗装ゴルフボールを得るのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】ゴルフボール表面に形成したディンプルの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0143】
2:ゴルフボール、10:ディンプル、De:ディンプルの最深箇所、Ed:エッジ、T:接線、S:膜厚の測定箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ポリオール組成物(A)と水性ポリイソシアネート(B)とからなる二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料であって、
ゴルフボール本体の最外層を構成する樹脂成分に対する接触角が45°以下であり、
塗膜物性が、20°入射角における反射率が70%以上であることを特徴とする二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料。
【請求項2】
前記塗料の粘度が、50mPa・s〜350mPa・sである請求項1に記載の二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料。
【請求項3】
前記塗料の塗膜物性が、10%応力が2.0MPa〜35MPa、最大応力が10.0MPa〜50MPa、破断伸び率が85%〜300%である請求項1または2に記載の二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料。
【請求項4】
前記水性ポリオール組成物(A)が有する水酸基(OH基)と前記水性ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基(NCO基)のモル比(NCO基/OH基)が1.25〜2.50である請求項1〜3のいずれか一項に記載の二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料。
【請求項5】
前記水性ポリオール組成物(A)が、水性アクリルポリオール(a−1)、水性ウレタンポリオール(a−2)および水性ウレタン樹脂(a−3)を含有し、
前記水性ポリオール組成物(A)中の水性ウレタン樹脂(a−3)の含有率が、20質量%〜80質量%である請求項1〜4のいずれか一項に記載の二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料。
【請求項6】
前記水性アクリルポリオール(a−1)の水酸基価が50mgKOH/g〜150mgKOH/gである請求項1〜5のいずれか一項に記載の二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料。
【請求項7】
前記水性ポリオール組成物(A)中の水性アクリルポリオール(a−1)と水性ウレタンポリオール(a−2)との配合比率(合計100質量%)が、水性アクリルポリオール(a−1)/水性ウレタンポリオール(a−2)=40質量%〜90質量%/60質量%〜10質量%である請求項1〜6のいずれか一項に記載の二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料。
【請求項8】
前記水性ポリイソシアネート(B)が、ヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体(b−1)、ならびに、イソホロンジイソシアネートおよび/またはその誘導体(b−2)を含有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料。
【請求項9】
前記水性ポリイソシアネート(B)中のヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体(b−1)とイソホロンジイソシアネートおよび/またはその誘導体(b−2)との配合比率(合計100質量%)が、(ヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはその誘導体(b−1))/(イソホロンジイソシアネートおよび/またはその誘導体(b−2))=50質量%〜99質量%/50質量%〜1質量%である請求項8に記載の二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料。
【請求項10】
前記ゴルフボール本体の最外層を構成する樹脂成分がアイオノマー樹脂またはゴム組成物である請求項1〜9のいずれか一項に記載の二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料。
【請求項11】
ゴルフボール本体と、前記ゴルフボール本体に形成された塗膜とを有する塗装ゴルフボールであって、
前記塗膜が請求項1〜10のいずれか一項に記載の二液硬化型ウレタン系ゴルフボール用水性塗料から形成されていることを特徴とする塗装ゴルフボール。

【図1】
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【公開番号】特開2010−155927(P2010−155927A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334978(P2008−334978)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(504017809)SRIスポーツ株式会社 (701)
【出願人】(000192844)神東塗料株式会社 (48)
【Fターム(参考)】