説明

二軸延伸ポリエステルフィルム及びその製造方法

【課題】優れた耐湿性、印刷適性、衝撃強度、耐ピンホール性、形状加工性及び低温成形性を有し、包装用フィルムとして有用な二軸延伸ポリエステルフィルム、及びその製造方法の提供。
【解決手段】1,3−プロパンジオールを主成分として含むグリコール成分とテレフタル酸又はジメチルテレフタレートを主成分として含む酸成分とを重合して得られたポリエステル樹脂から製造され、単位衝撃吸収エネルギーが1.0以上である、二軸延伸ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装用フィルムとして有用な二軸延伸ポリエステルフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品及びその他の製品用包装材は高い衝撃強度が要求される。このような目的のため、二軸延伸ナイロン、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート及び二軸延伸ポリプロピレンが用いられてきた。二軸延伸ナイロンフィルムは低温衝撃強度及び耐ピンホール性が優れる反面、吸湿性が高いので長期間保管しにくく、フィルム膜厚の不均一性のために、印刷適性が良くないという短所を有する。また、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム及び二軸延伸ポリプロピレンフィルムは印刷適性、耐熱性及び寸法安定性は優秀であるが、衝撃強度及び耐ピンホール性において劣るという短所を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の主な目的は、優れた耐湿性、印刷適性、衝撃強度、耐ピンホール性、形状加工性及び低温成形性を有し、包装用フィルムとして有用な二軸延伸ポリエステルフィルム、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するために、本発明は1,3−プロパンジオールを主成分として含むグリコール成分とテレフタル酸又はジメチルテレフタレートを主成分として含む酸成分を重合して得られたポリエステル樹脂から製造され、単位衝撃吸収エネルギーが1.0以上である、二軸延伸ポリエステルフィルムを提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは機械的強度、寸法安定性及び印刷適性において優れているだけでなく耐湿性、衝撃強度、成形性、形状包装性及び柔軟性が優秀であるので、包装用フィルムとして有用である。また、本発明のフィルムはその上面に少なくとも一つの高分子層/金属層が積層された形態の包装材として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明による二軸延伸ポリエステルフィルムはグリコール成分と酸成分とを重合することによって製造される。好ましくは、前記グリコール成分の50モル%以上が1,3−プロパンジオールである。また、前記酸成分の85モル%以上がテレフタル酸又はジメチルテレフタレートであり、前記酸成分の15モル%以下が2個以上の炭素を有する直鎖状脂肪族二塩基酸であることが好ましい。
【0007】
本発明の好適な実施態様によれば、前記二軸延伸ポリエステルフィルムは下記工程によって製造され得る。まず、前述した成分組成条件を満たすフィルム組成物を製造する。次いで、このように製造された組成物を溶融押出した後、急冷させてキャストシートを得る。前記キャストシートを縦方向に2〜4の比率、横方向に3〜5の比率で延伸した後、180〜225℃の温度範囲で熱固定させる。
【0008】
本発明による二軸延伸ポリエステルフィルムに用いられるグリコール成分は50モル%以上、好ましくは70モル%以上の1,3−プロパンジオールを含む。総グリコール成分のうち1,3−プロパンジオールの量が50モル%未満である場合には生成されたフィルムの目標衝撃強度及び耐ピンホール性に及ばない。
【0009】
本発明によるポリエステルフィルムに用いられるグリコール成分の50モル%以下、好ましくは30モル%以下は2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール(PEG)及びこれらの混合物からなる群から選択される。2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール又は1,2−プロパンジオールの量が総グリコール成分の50モル%を超えると、フィルムの結晶化が不十分になってフィルム形成工程に問題が生じ、また、フィルムの寸法安定性及び耐熱性を低下させる。1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及びポリエチレングリコール(PEG)のような4個以上の炭素を有する直鎖状グリコール成分の量が50モル%を超えると、フィルムの柔軟性は向上する反面、フィルムの熱的特性が低下する。また、エチレングリコールの量が総グリコール成分の50モル%を超えると、フィルムの衝撃強度及び柔軟性が低下する。
【0010】
フィルムの特性を阻害しない限度内で、フィルムはグリコール成分としてジエチレングリコール、トリエチレングリコール又は1,4−シクロヘキサンジメタノールをさらに含み得る。
【0011】
また、本発明による二軸延伸ポリエステルフィルムを重合するのに必要となる酸成分の85モル%以上、好ましくは90モル%以上がテレフタル酸又はジメチルテレフタレートである。15モル%以下、好ましくは10モル%以下の残りの酸成分が2個以上の炭素を有する直鎖状脂肪族二塩基酸である。
【0012】
2個以上の炭素を有する直鎖状脂肪族二塩基酸の添加はフィルムの柔軟性を向上させてフィルムの衝撃強度、耐ピンホール性及び成形性を増加させる。しかし、この量が酸成分の15モル%を超えると、熱的特性が劣化してフィルム延伸性が低下する。このような脂肪族二塩基酸としては、例えば、コハク酸(succinic acid)、グルタル酸(glutaric acid)、アジピン酸(adipic acid)、スベリン酸(suberic acid)、アゼライン酸(azelaic acid)、セバシン酸(sebacic acid)及びこれらのエステル誘導体が挙げられる。
【0013】
また、フィルムの特性を阻害しない限度内で、本発明のフィルムは、ナフタレンジカルボン酸又はイソフタル酸を酸成分としてさらに含み得る。
【0014】
前記ポリエステルフィルム組成物はモノマー成分を共重合するか、或いは複数のポリマーを混合することによって得ることができる。
【0015】
本発明のフィルムは潤滑性向上剤(滑剤)として無機粒子を含むことができるが、例えば、特定な光学的特性を有する0.1〜10.0μmの平均粒径を有する炭酸カルシウム、アルミナ又はシリカゲル粒子を適量含み得る。
【0016】
本発明による二軸延伸ポリエステルフィルムは次のように製造することができる。まず、所望する組成のポリエステル樹脂を溶融押出した後、急冷させてキャストシートを得る。前記キャストシートを縦方向に2〜4の比率、好ましくは2.5〜3.5の比率で、横方向に3〜5の比率、好ましくは3.4〜3.9の比率で延伸する。縦方向及び横方向への延伸は1段階又は2段階工程を用いて行われ得る。縦方向又は横方向の延伸比がそれぞれ2又は3より小さいと、フィルムの衝撃強度及び膜厚の均一性が低下する。一方、縦方向又は横方向の延伸比がそれぞれ4又は5より大きいとフィルムの成形性及び衝撃強度が低下する。
【0017】
十分な寸法安定性を達成するため、縦方向及び横方向の両方に延伸されたフィルムを180〜225℃、好ましくは185〜215℃範囲の温度で熱固定した後で冷却する。180℃未満でフィルムを熱固定する場合には所望する寸法安定性が得られない。また、225℃を超える温度でフィルムを熱固定する場合には衝撃強度が低下する。
【0018】
通常のポリエチレンテレフタレート又はこれを主成分として含むフィルムを製造する場合には、延伸直後に熱固定を行った後、緩和のための冷却処理を行う。しかし、本願発明のようにポリトリメチレンテレフタレートをフィルムの主成分として用いる場合には延伸工程の間に高いレベルの収縮応力が形成され、このような収縮応力は熱固定の際にフィルムの破断を誘発する。従って、延伸工程の間に形成された収縮応力を熱処理に先立って緩和させ、緩和工程以後に熱固定を行うことが好ましい。即ち、ポリトリメチレンテレフタレートをフィルムの主成分として用いる場合には延伸後直ちに緩和工程を行う。緩和工程は140〜180℃の温度範囲で7〜14%の緩和率で行うことができる。
【0019】
熱固定後、フィルムを50℃未満の温度で直ちに冷却させるか、或いは必要によってはさらに緩和させてもよい。例えば、延伸直後の過度な緩和は最終フィルムの縦方向物性を低下させ得るので、延伸直後1次緩和率を下げ、熱固定後の冷却時に2次緩和工程を行うなど、緩和を2段階に行うことで、フィルムの縦方向物性の低下を最小化させることができる。前記2次緩和工程は1次緩和時と同様に140〜180℃の温度範囲で7〜14%の緩和率で行うことができる。
【0020】
このように製造された本発明のポリトリメチレンテレフタレート系二軸延伸ポリエステルフィルムは7〜30μmの膜厚を有するが、これに限定されない。
【0021】
本発明によるポリエステルフィルムは1.0以上の単位衝撃吸収エネルギーを有し、好ましくは室温で繰り返し応力を受けた後、発生するピンホールの数が25個以下になる。単位衝撃吸収エネルギーが1.0より小さいフィルムは500g以上の内容物を収容する高容量の小袋として用いることができない。また、テストでピンホール発生数が25個を超える場合、フィルムは搬送する間に実際に容易にピンホールが発生するおそれがある。また、150℃の熱風循環炉内で30分間熱処理する場合、本発明のフィルムは縦方向と横方向のいずれか一方向に8%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下の熱収縮率を示す。フィルムの熱収縮率が8%を超える場合には印刷、ラミネーション及び熱接合工程の際に問題が発生する。
【0022】
最も重要なことは、縦方向及び横方向延伸後(但し、熱固定の前である)緩和を行ってフィルムを製造した場合、180℃で2秒間加熱した際、縦方向及び横方向への伸度が30%以下、好ましくは20%以下に低下する。従って、このようなフィルム素材を包装用袋として用いた場合には熱接合部位と非熱接合部位との境界でピンホール発生を最小化し得る。従って、優れた落下衝撃強度と共に優れた密封性が得られることができる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。但し、これらの実施例は本発明を制限しない。
【0024】
製造例
本発明の製造例では、200rpmで作動する攪拌器及び反応流出物から1,3−プロパンジオールと水とを分離するための充填分離塔が設けられたエステル化反応器を、10〜50rpmで作動するインバータ型の攪拌器、流出物を凝縮するためのコンデンサー、及び真空ポンプを有する重合反応器が設けられた別途の反応器と一緒に使用した。
【0025】
製造例で製造されたポリマーの物性は次のように測定した。
【0026】
(1)固有粘度
オルトクロロフェノールに溶解したポリエチレンテレフタレートを用いて30℃の温度で通常の固有粘度測定法によって固有粘度を測定した。
【0027】
(2)組成
日本電子株式会社製のJSM−LA300タイプ1H−NMRを用いて、重水素置換したクロロホルムとトリフルオロ酢酸との4:1混合物に溶解したポリマー試料をNMRによる定量分析を行った。得られた特性ピークの相対面積をモル%に換算した。一部の組成は理論値と相異なる値を提供したが、これは構成成分のポリマーの不均質な混合に起因するものと判断された。
【0028】
(3)融点
パーキンエルマー(Perkin−Elmer)社製の示差走査熱量計(DSC)を用いて昇温速度10℃/分で分析を行った。吸熱曲線の最初のピークからガラス転移温度(Tg、℃)を決定した。次に現れるピークは結晶化温度(Tc、℃)、及び三番目の吸熱ピークは融点(Tm、℃)に該当する。
【0029】
製造例1:ポリトリメチレンテレフタレート(ポリマーA)
テレフタル酸100モルに対し、1,3−プロパンジオール130モルを触媒と共にエステル化反応器に投入した。前記触媒としてチタン酸トリブチレンをテレフタル酸に対し0.07重量%の量で用いた。反応器を約1.3kg/cm2に加圧し、260℃まで昇温してその温度で約4時間の間エステル化反応を行った。次いで、安定剤としてのリン酸トリメチルをテレフタル酸に対して0.06重量%の量で前記エステル化反応物と混合した。さらに、これに、スリップ剤として平均粒径が2.5μmであるシリカ粉末をテレフタル酸に対し0.07重量%の量で添加した。この混合物を5分間攪拌した後、重合反応器に移送した。重合反応器を265℃に保持させて徐々に排気して真空にした。攪拌器のモーターが一定量の電力を用いるまで重合反応し続けた。ポリマー生成物をペレット状で得た(固有粘度:0.86)。
【0030】
製造例2:アジピン酸コポリマー(ポリマーB)
下記表1に示すように、テレフタル酸(TPA)とアジピン酸(AA)との総和100モルに対して1,3−プロパンジオール130モルを触媒と共にエステル化反応器に投入した。前記触媒としてチタン酸トリブチレンをテレフタル酸に対し0.07重量%の量で用いた。反応器を約1.2kg/cm2に加圧し、260℃まで昇温してその温度で約4時間の間エステル化反応を行った。次いで、安定剤としてのリン酸トリメチルをテレフタル酸に対し0.06重量%の量で前記エステル化反応物と混合した。さらに、これに、スリップ剤として平均粒径が2.5μmであるシリカ粉末をテレフタル酸に対し0.07重量%の量で添加した。この混合物を5分間攪拌した後、重合反応器に移送した。重合反応器を250℃に保持させて徐々に排気して真空にした。攪拌器のモーターが一定量の電力を用いるまで重合反応を続けた。ポリマー生成物をペレット状で得た。このようにして得たペレットの特性を下記表1に示す。
【表1】

【0031】
製造例3:ポリブチレンテレフタレート(ポリマーC)
ポリブチレンテレフタレートとしてLG化学製LUPOX HV−1010(登録商標)を用いた。
【0032】
製造例4:ポリエチレンテレフタレート(ポリマーD)
テレフタル酸100モルに対してエチレングリコール130モルをエステル化反応器に投入した。反応器を約1.2kg/cm2に加圧し、260℃まで昇温させてその温度で約4時間の間エステル化反応を行った。前記エステル化反応物に、重合触媒としての三酸化アンチモン及び安定剤としてのリン酸トリメチルをテレフタル酸に対し450ppm及び400ppmの量でそれぞれ添加して混合した。さらに、これに、スリップ剤として平均粒径が2.5μmであるシリカ粉末をテレフタル酸に対し0.07重量%の量で添加した。この混合物を5分間攪拌した後、重合反応器に移送した。重合反応器を289℃に保持させて徐々に排気して真空にした。重合反応を3時間20分間行った。ポリマー生成物の固有粘度は0.64であった。
【0033】
製造例5:2−メチル−1,3−プロパンジオール共重合体(ポリマーE)
「1,3−プロパンジオール130モル」の代りに「1,3−プロパンジオール80モル及び2−メチル−1,3−プロパンジオール50モル」を用いることを除いては前記製造例2と同一な工程を行った。ポリマー生成物をペレット状で得た(固有粘度:0.84)。
【0034】
製造例6:2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール共重合体(ポリマーF)
「1,3−プロパンジオール130モル」の代りに「1,3−プロパンジオール80モル及び2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール50モル」を用いることを除いては前記製造例2と同一な工程を行った。ポリマー生成物をペレット状で得た(固有粘度:0.76)。
【0035】
製造例7:1,2−プロパンジオール共重合体(ポリマーG)
「1,3−プロパンジオール130モル」の代りに「1,3−プロパンジオール80モル及び1,2−プロパンジオール50モル」を用いることを除いては前記製造例2と同一な工程を行った。ポリマー生成物をペレット状で得た(固有粘度:0.81)。
【0036】
試験例
前記製造例で製造されたポリマーを用いて実施例及び比較例に示した工程によってフィルムを製造した。フィルム試料が平滑でないか破断を起こす場合を除いては、製造されたフィルムの物性を次のように測定した。
【0037】
(1)単位衝撃吸収エネルギー
東陽精機製作所製のフィルム衝撃試験機(Film Impact Tester)を用いてASTM D3420によって単位衝撃吸収エネルギーを測定した。この際用いられた振子チップ(Pendulum tip)は1インチの直径を有する半球状であった。試料フィルムを直径50mmの円形孔を有する試料固定物上に装着した。このように測定した衝撃吸収エネルギー(kgf−cm)を試料フィルムの厚さ(μm)で割って単位衝撃吸収エネルギー(kgf−cm/μm)を決定した。各試料ごとに10回測定して、その平均値を求めた。
【0038】
(2)耐ピンホール性
米国のゲルボ(Gelbo)社製のゲルボフレックス(Gelbo Flex)を用いて、試料フィルムを420度の角度で2700回(約60分間)回転させた。次いで、試料フィルムを白紙上に平らに位置させ、その上にドクターブレード法を用いて油性インクを塗布した。白紙上に現われるインク点の数を数えて、ピンホール個数として表した。各試料ごとに3回測定してその平均値を求めた。
【0039】
(3)延伸性
延伸フィルムの厚さ及び破断を下記基準によって評価した。
○良好:均一に延伸が行われて膜厚のバラツキが平均±5%未満の場合
△比較的良好:比較的均一に延伸が行われて膜厚のバラツキが平均±10%未満の場合
×不良:膜厚のバラツキが平均±10%以上であるか延伸中に破断が発生する場合。
【0040】
(4)熱収縮率
長さ200mm及び幅15mmの大きさを有する試料を熱風循環炉内で150℃で30分間保持させた後、フィルム長さの変化を測定した。下記の式を用いて縦方向及び横方向の収縮率を計算した。
収縮率(%)=(熱処理前の長さ−熱処理後の長さ)/熱処理前の長さ×100。
【0041】
(5)強伸度
インストロン(Instron)社製の万能試験機(UTM 4206−001)を用いて、長さ100mm及び幅15mmの大きさを有するフィルム試料の強伸度をASTM D 288によって測定した。チャック(chuck)間の間隔を50mmに、伸長速度を200mm/分に設定した。100%伸長時の強度をF−100(kg/mm2)で表した。破断時の伸長率を破断伸度(%)値で、破断時の強度を破断強度(kg/mm2)で表した。
【0042】
(6)自由落下破裂テスト
試料フィルムの片面上に、厚さ12μmの通常のPETフィルムと厚さ9±1μmの通常のラミネート用アルミニウム層とをラミネートした。また、他面上にはキャストポリプロピレンをラミネートした。次いで、キャストポリプロピレンがラミネートされた面が小袋(pouch)の内部になるように1300ml容量の小袋を製作した。前記小袋は内容物充填時に自立可能になるように底紙を含んでいる。小袋に1000mlの水を入れ、加熱によって小袋を密封した。次いで、小袋を5℃に保持される冷蔵室に2日間保管した。厚さ約5mmの通常の段ボールからなる箱にこのような小袋を10個ずつ入れ、この箱をエポキシが塗布されたコンクリート床上に自由落下させた。このような実験を10回ずつ繰り返して小袋の平均状態を下記基準によって評価した。
○良好:4個未満が破裂した場合
△比較的良好:4個以上及び7個未満が破裂した場合
×不良:7個以上が破裂した場合。
【0043】
(7)形状加工性
約190μmの厚さを有する低密度ポリエチレン(LDPE)を試料フィルムと共に押出ラミネートした。ラミネートされたフィルムが200mm×150mmの大きさの包装材の形態になるように3つの縁を加熱密封した。LDPEラミネートされた面が包装材の内部になるように前記工程を行った。この包装材の中に50mm×50mm×15mmの大きさの木製の六面体を入れ、排気速度が約10L/分である内蔵型真空ポンプを有する小型真空密封機を用いて包装材を20秒間減圧して加熱密封した。次いで、包装材を室温で1時間放置した後、包装材と木製の六面体との間の空間を測定し、下記基準によって評価した。
○良好:空間が3mm未満の場合
△比較的良好:空間が3mm以上及び7mm未満の場合
×不良:空間が7mm以上の場合。
【0044】
(8)伸度低下率
試料フィルムを日本テスター産業株式会社製(Tester Sangyo Co.)の熱接合試験機(モデル名TP701S)を用いて0.2MPaの圧力下で2秒間180℃で加熱した。次いで、インストロン社製の万能試験機(UTM 4206−001)を用いてASTM D882の規定によって試料を200mm/分の速度で伸長して伸度を測定した。下記式を用いて縦方向及び横方向の伸度低下率を算出した。各試料ごとに5回測定し、その平均値を求めた。本来の測定誤差が±5%の範囲内であるため、伸度低下率が5%未満の場合には伸度低下がないと認めた。
伸度低下率(%)=(加熱前の伸度−加熱後の伸度)/加熱前の伸度×100。
【0045】
(9)製膜性
延伸フィルムの破断性及び平滑度を下記基準に基づいて評価した。
○良好:破断がなく、延伸性に優れ、平滑な最終フィルムが得られた場合
△比較的良好:破断はないが、最終フィルムに応力が存在する場合
×不良:破断によって連続生産が困難な場合。
【0046】
実施例1〜16及び比較例1〜9
表2に示すような多様な組成及び工程条件によってポリエステルフィルムを製造した。これらの物性を表3に示す。
【表2】

【表3】

【0047】
前記表2及び3の結果から、実施例で製造された本発明のフィルムは機械的特性、衝撃吸収エネルギー、耐ピンホール性、熱収縮性、自由落下破裂性及び形状加工性の側面で比較例のフィルムに比べて明白に優れていることが分かる。
【0048】
実施例17〜23
縦方向及び横方向に延伸した後、熱固定するに先立って、150℃でフィルムを緩和したことを除いては実施例1と同一な工程を行うことで表4に示すような厚さ15μmのフィルムを得た。該当の条件と得られた物性を下記表4及び表5に示す。
【表4】

【表5】

【0049】
前記表4及び表5から、熱固定の前に緩和を行った本発明のフィルムは加熱する間に縦方向及び横方向の伸度低下率が小さいことが分かる。
【0050】
前述のように、本発明を前記具体的な実施例と関連して説明したが、添付された特許請求の範囲によって定義された本発明の要旨を逸脱しない範囲内で当該技術分野における熟練者が本発明を多様に変形及び変化させ得ることは明かである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,3−プロパンジオールを主成分として含むグリコール成分とテレフタル酸又はジメチルテレフタレートを主成分として含む酸成分とを重合して得られたポリエステル樹脂から製造され、単位衝撃吸収エネルギーが1.0以上であることを特徴とする、二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記グリコール成分の50モル%以上が1,3−プロパンジオールであることを特徴とする、請求項1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記酸成分の85モル%以上がテレフタル酸又はジメチルテレフタレートであることを特徴とする、請求項1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記グリコール成分の50モル%以下が2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記酸成分の15モル%以下が2個以上の炭素を有する直鎖状脂肪族二塩基酸であることを特徴とする、請求項1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記脂肪族二塩基酸がコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸及びこれらのエステル誘導体からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項7】
室温で繰り返し応力を受けた後のピンホールの発生が25個以下であることを特徴とする、請求項1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項8】
熱風循環炉内で150℃で30分間熱処理する場合の縦方向及び横方向の熱収縮率が両方とも8%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項9】
180℃で2秒間加熱時の縦方向及び横方向への伸度低下が両方とも30%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項10】
1,3−プロパンジオールを主成分として含むグリコール成分とテレフタル酸又はジメチルテレフタレートを主成分として含む酸成分を用いて重合したポリエステル樹脂の未延伸シートを縦方向に2〜4の比率で、横方向に3〜5の比率で延伸する工程;及び前記延伸シートを180〜225℃の温度範囲で熱固定させる工程を含む、請求項1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記グリコール成分の50モル%以上が1,3−プロパンジオールであることを特徴とする、請求項10に記載の二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項12】
前記酸成分の85モル%以上がテレフタル酸又はジメチルテレフタレートであることを特徴とする、請求項10に記載の二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項13】
前記グリコール成分の50モル%以下が2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項14】
前記酸成分の15モル%以下が2個以上の炭素を有する直鎖状脂肪族二塩基酸であることを特徴とする、請求項10に記載の二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項15】
前記脂肪族二塩基酸がコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸及びこれらのエステル誘導体からなる群から選択されることを特徴とする、請求項14に記載の二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項16】
延伸工程と熱固定工程との間に緩和工程をさらに行うことを特徴とする、請求項10に記載の二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項17】
前記緩和工程が140〜180℃の温度で7〜14%の緩和率で行われることを特徴とする、請求項16に記載の二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項18】
前記請求項1〜9のいずれか一項に記載の二軸延伸ポリエステルフィルムを含む、包装材。
【請求項19】
基材として前記請求項1〜9のいずれか一項に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム;及び前記基材上に載置された追加の高分子層又は金属層を含む、包装材。

【公表番号】特表2008−511715(P2008−511715A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529661(P2007−529661)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000826
【国際公開番号】WO2006/025636
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(504004533)エスケーシー カンパニー,リミテッド (10)
【Fターム(参考)】