説明

二軸式破砕機

【課題】 二軸式破砕機について、破砕作業に伴う回転刃の摩耗に対応して、低コストで容易に剪断力を回復できるようにする。
【解決手段】 複数の回転刃3aまたは4aが軸方向に連設された二本の回転軸3,4が互いに逆向き且つ平行に配設され、対向する回転刃3a,4a端面の刃先面を互いに重ね合わせて所定の動力で回転させ、挟み込んだ対象物を剪断して破砕する二軸式破砕機1Aにおいて、剪断方式を回転刃の一方の端面のみを用いる片サイド剪断とするとともに、回転軸3の一方の軸端側にその軸方向の位置調整を行うための軸位置調整手段30を設けこれを操作して回転軸3を軸方向にスライドさせるものとし、その回転刃3aの刃先面を対向する回転刃4aの刃先面に押圧した状態にして両回転軸3,4を回転させることにより、その刃先が自己研磨されるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二本の回転刃にそれぞれ設けた刃部材の剪断力により廃棄物等を破砕する二軸式破砕機に関し、殊に、刃部が摩耗して剪断力が低下した場合でもこれを回復させることのできる二軸式破砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
破砕機は、産業廃棄物等を所定サイズ以下の切片に破砕することにより減容積や再利用をはかるために用いられ、これには破砕用の回転刃が一軸式のものと二軸式のものとが知られている。一軸式破砕機は、図3に示すように一本の回転刃5上に所定間隔で連設した複数の回転板4aにそれぞれ設けた刃部40と本体側に設けた固定刃41との剪断力で対象物を破砕するものである。
【0003】
一方、二軸式破砕機は、図4に示すように、二本の回転刃3,4に所定間隔でそれぞれ連設した複数の刃部3a,4aの刃先が交互に噛み合うように水平に設けられ、噛み合う刃先同士の剪断力で対象物を破砕するものとした二軸式破砕機1Bが知られている。また、剪断は回転する刃部3a,4aにおける両サイドの刃を使用するものと一方のサイドの刃のみを使用する方式とがあるが、この二軸式破砕機1Bは、一方のサイドの刃のみを使用する片サイド剪断方式を採用したものである。
【0004】
このような二軸式破砕機は、所定期間使用することにより刃部がしだいに摩耗して刃先を形成する角が丸くなるとともに、噛み合う刃先同士の隙間が増して剪断力がしだいに低下してくる。この現象は、特に両サイド剪断式のもので顕著であるとされているが、摩耗した刃部を交換する場合は、一軸式・二軸式ともに取り外し・取付け作業に多大な手間を要するとともに、新しい回転刃の入手に要するコストが問題となりやすい。
【0005】
また、刃部の刃先を研磨して対処する場合は、取り外し・取付け作業に加え各刃先の研磨作業に手間と時間を要するとともに、その作業の間は破砕機を駆動できないことから作業効率の低下を招き、さらに、刃先を研磨することで噛み合う刃先同士の隙間が拡大して、剪断力の確保が一層困難となりやすい。
【0006】
このような問題に対し、特開平6−296891号公報には作動油を圧入することでキャップと回転刃を構成する回転軸との密着を緩め、回転軸回りの回転刃を容易に横滑りさせて回転刃の新旧更新作業を簡易化したものが提示されている。しかし、斯かる技術においても、刃部を摩耗の度に交換することによるランニングコストの高騰の問題は解決されていない。
【0007】
これに対し、特開平8−323233号公報や特開平10−137613号公報には、刃部材を刃台部と刃先(刃片)部とに分割して、刃先部のみを着脱可能として刃先が摩耗した場合に刃先部のみを交換して剪断力を回復させるものとした技術が提示されている。これにより、回転刃全体を交換する場合のように回転軸を取り外す手間のないものとなり作業が容易化するとともにランニングコストも比較的低く抑えることができる。また、回転刃を研磨する場合のように噛み合う刃先の隙間が拡大する心配もないものとなる。
【0008】
しかしながら、これら二つの技術においても、交換する刃先部の数が多数となることにより、多数の刃先部を入手するためのコストが必要となるため、ランニングコストの低減化は充分ではない。また、総ての刃先部の交換には比較的長時間を要すことになるが、破砕機を停止する期間が長期化して破砕作業全体としての作業効率を低下させることになる。
【特許文献1】特開平6−296891号公報
【特許文献2】特開平8−323233号公報
【特許文献3】特開平10−137613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、二軸式破砕機について、破砕作業による刃部の摩耗に対応して低コストで容易に剪断力を回復できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、前記課題を皆生陸奥するため本発明は、複数の刃部が軸方向に連設された二本の回転刃が互いに逆向き且つ平行に配設され、刃部端面の刃先面を互いに重ね合わせて所定の動力で互いに逆方向に回転させ、挟み込んだ対象物を剪断して破砕する二軸式破砕機について、剪断方式を刃部の一方の端面のみを用いる片サイド剪断とし、少なくとも一方の回転刃の軸端側にこの回転刃の軸方向の位置調整を行うための軸位置調整手段を設け、軸位置調整手段を操作してこの回転軸を軸方向にスライドさせるものとして、これに設けた刃部の刃先面を対向する刃部の刃先面に押圧した状態で両回転刃を回転させることにより刃先が自己研磨されるものとした。
【0011】
このような構成とするにより、使用により刃部が摩耗して噛み合う刃先と刃先との間に隙間が生じて剪断力が低下した場合に、刃先面を形成する回転刃の端面外周側同士を密着させるように調整し、刃部を取り外したり多数の刃先を研磨したりする手間や回転刃全体または多数の刃先部を交換するためのコストを要することなく、容易に刃先の隙間を縮小させるとともに、押圧状態で密着した刃部の端面同士が回転軸の回転により自己研磨を行って、容易に剪断力が回復するものとなる。
【0012】
また、その軸位置調整手段は、回転刃の回転を妨げない状態で設けられ、軸部とネジ頭部とを有するネジ状部材およびこれが螺入するネジ孔を有する本体側部材とからなるものとして、本体外部に露出したネジ頭部を回動させて操作することで、回転刃を軸方向にスライドさせて所定位置で固定させるものとした。
【0013】
このような構成としたことにより、二軸式破砕機の構成を複雑化することなくしかも簡易な手順で、刃部同士が自己研磨可能な状態となるように回転刃の位置を調整することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、破砕作業による刃部の摩耗に対応して、破砕作業を継続しながら刃部を自己研磨することができ、低コストで容易に剪断力を回復させることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0016】
図1および図2は、本発明における実施の形態を示す二軸式破砕機1Aの部分横断面図であるが、前記従来例の二軸式破砕機1Bと同様に、それぞれ略円盤状の刃部3a,4aを交互に嵌めた二本の回転刃3,4を、互いの刃部3a,4aの刃先が交互に噛み合うように水平に設けられている。
【0017】
また、二本の回転は3,4の下方には、図示しない篩状のグリルを配置してあり、互いに噛み合う刃部3a,4aの刃先によって破砕された破砕物のうち、グリルを通過せずにグリル表面に残存したものを、刃部3a,4aの外周側に突設させた図示しないフック形状により掬い上げて互いに噛み合う刃部3a,4aの上方に搬送して再破砕を行い、最終的にグリル幅以下の切片を得るものである。
【0018】
そして、本発明においては一方の回転刃3の軸端にその軸方向の位置を調整するための軸位置調整手段30が設けられている点に特徴がある。例えば、回転刃4の図示しない側の一端にモータなどの駆動機構が設けられ駆動軸となっている場合、回転刃3は図示しない側の一端にギア等の動力伝達機構を備えた従動軸となり、軸方向に所定範囲でスライド可能に設けられた回転刃3が、動力伝達機構とは逆側の軸端側に設けた軸位置調整手段30により、その軸方向の位置を調整可能とされたものである。
【0019】
軸位置調整手段30は、本体側に設けられ貫通孔31aの内周において、回転刃3との間にベアリング構造310を持つとともに開口側がネジ孔311とされ、本体側部材として回転刃3の軸端側を回動自在に支持する略円筒状の軸支持部材31と、外周にネジ山321が設けられた軸部32aとネジ頭部32bとを有し中心に貫通孔32cが穿設された中空のネジ状或いはボルト状とされ、軸支持部材31のネジ孔311に外側から螺入され貫通孔32cに回転軸3の最も細い端部を挿入して回転軸3を外側方向にスライド不能として螺設されるネジ状部材32とからなる。尚、ネジ状部材32の締め動作により押圧する回転軸3側との接点にもベアリング構造312が設けられており、この部分が軸回転の抵抗にならないようになっている。
【0020】
図1に示すように、刃部3aの刃先面とこれに対向する刃部4aの刃先面とが摩耗して互いに隙間が生じており、剪断力が低下した状態となっている。そして、回転軸3の最も細い端部が挿入されたネジ状部材32と軸支持部材31との間には幅αの締め代があり、側面視が六角形等で工具が係合可能な形状とされたネジ頭部32bを所定の工具で回転させて締め込むことにより、回転刃3を図中左方向にスライドさせてその位置で軸方向の動きを固定することができる。
【0021】
そして、図2に示すように、ネジ頭部32bを回転操作することにより、回転刃3に設けられた刃部材3aの端面外周側に形成された刃先面は、これに対向する回転刃4の刃部材4aの刃先面に接した状態で押圧される。この状態で刃先同士の隙間が解消されて剪断力が改善するものであるが、さらに、研磨材などを噛み合わせ部分に付着させる等しながら両回転刃3,4を互いに回転させることで、刃部材3a,4aの刃先面が互いに研磨される自己研磨作用が発揮され、所定時間後には互いに刃先が隙間無く密着して剪断力の回復が一層良好なものとなる。
【0022】
このように、回転刃3,4を取り外す手間を要することなく、軸位置調整手段30を外側から回転操作するだけの簡単な手順で、回転刃3の軸方向の位置を調整して刃先の隙間を解消することができ、これを回転させるだけで自己研磨作用を発揮して、刃部3a,4aまたは刃先部を交換するコストや刃先を研磨する手間を要することなく容易且つ確実に剪断力を回復させることができるものである。さらに、剪断作業中に自己研磨作用を発揮させることができるため、二軸式破砕機の駆動を停止する必要がなく作業効率を低下させる心配のないものとなる。
【0023】
尚、上述した実施の形態において、軸位置調整手段は従動軸において動力伝達機構を配置した側とは反対側に設けた場合を説明したが、動力伝達機構側に配置しても同様であり、或いは駆動軸側に配置しても実施することができる。また、軸位置調整手段は回転軸を押して回転刃同士を押圧させる場合を説明したが、回転刃を引いて回転刃同士を押圧させる構成としてもよいことは言うまでもない。
【0024】
さらに、回転軸に連設された略円盤状の複数の回転刃を、互いに独立して軸方向にスライド可能なものとして軸方向に固定された回転刃または鍔構造等で押して対向する回転刃に押圧されるものとしたり、或いは、軸位置調整手段のネジ状部材と回転軸側との間にコイルバネなどの弾性部材を介装して回転刃同士を弾性的に押圧する構成としたりすることも可能であり、このようにすることで各回転刃の隙間の幅にバラツキがある場合にも対応しやすいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態を示す二軸式破砕機の部分横断面図。
【図2】図1の二軸式破砕機の軸位置調整手段を操作した場合の状態を示す部分横断面図。
【図3】一軸式破砕機を示す縦断面図。
【図4】従来例の二軸式破砕機を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0026】
1A 二軸式破砕機、 3,4 回転刃、 3a,4a 刃部、 30 軸位置調整手段、 31 軸支持部材、 32 ネジ状部材、 32a 軸部、 32b ネジ頭部、 311 ネジ孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の刃部を軸方向に連設した二本の回転刃が、互いに逆向き且つ平行に配設されるとともに対向する前記刃部端面の刃先面を互いに重ね合わせ、前記二本の回転刃が所定の動力で回転することにより挟み込んだ対象物を剪断して破砕する二軸式破砕機において、剪断方式が前記刃部の一方の端面のみを用いる片サイド剪断とされているとともに、少なくとも一方の前記回転刃の軸端側に該回転刃の軸方向の位置調整を行うための軸位置調整手段が設けられており、該軸位置調整手段を操作して前記回転刃を軸方向にスライドさせるものとして、該回転刃に設けた刃部の刃先面を対向する刃部の刃先面に押圧した状態として前記両回転刃を回転させることにより刃先が自己研磨されることを特徴とする二軸式破砕機。
【請求項2】
前記軸位置調整手段は、前記回転刃の回転を妨げない状態で設けられ、軸部とネジ頭部とを有するネジ状部材および該ネジ状部材を螺入するネジ孔を有する本体側部材からなり、本体外部に露出したネジ頭部を回動させて操作することで、前記回転軸を軸方向にスライドさせて所定位置で固定させる請求項1に記載の二軸式破砕機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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