説明

二酸化塩素ガス発生消臭剤

【課題】二酸化塩素ガスを安定的かつ持続的に発生し、二酸化塩素ガスの有する消臭効果を長期間持続させ、かつ保存性に優れた二酸化塩素ガス発生消臭剤を提供すること。
【解決手段】本発明の二酸化塩素ガス発生消臭剤は、固体の亜塩素酸塩および固体のリンゴ酸を含有する。好ましくは、亜塩素酸塩1mmolに対して前記リンゴ酸を0.01〜5mmolの割合で含有する。好ましくは、さらに硫酸マグネシウムを含有する。本発明のバッグ剤は、二酸化塩素ガス発生消臭剤を含み、亜塩素酸塩とリンゴ酸とがバッグ剤内のそれぞれ異なる室に収容されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化塩素ガス発生消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化塩素は、常温ではガス状の物質であって、強い酸化力と殺菌力とを備えるため、消臭剤、防カビ剤、漂白剤など種々の用途で使用されている。しかし、二酸化塩素ガスは、爆発性、毒性、および光や熱による分解性を有するため、ガスとしてそのまま運搬できない。そこで、実際に使用する場所で二酸化塩素ガスを発生させる方法がとられている。
【0003】
特許文献1には、亜塩素酸塩と有機酸とを含む水溶液に蒸散芯を浸漬し、該芯を加熱して二酸化塩素ガスを放出させる方法が記載されている。特許文献2には、亜塩素酸塩水溶液に、活性化剤と吸水性樹脂と保水剤とを添加し、ゲル化させて得られるゲル状組成物から二酸化塩素ガスを持続的に発生させる方法が記載されている。特許文献3には、水に亜塩素酸塩および粒子径を制御した無水コハク酸などを溶解させることで二酸化塩素の発生を制御する方法が記載されている。これらの文献に記載の方法は、亜塩素酸塩の水溶液を用いる。しかし、水溶液中では、亜塩素酸塩と有機酸などの活性化剤との反応性が高く、二酸化塩素ガスの発生量を制御することは困難であった。すなわち、二酸化塩素ガスの発生の初期においては反応が急激に進み、多量のガスが発生するが、数日経過すると二酸化塩素ガスがわずかしか発生しなくなり、二酸化塩素ガスの消臭効果や防カビ効果などが長期にわたって持続しない。そこで、二酸化塩素ガスの発生量を制御するために、固形物を用いる方法が提案されている。
【0004】
特許文献4には、乾燥した金属亜塩素酸塩と乾燥した固体親水性材料である有機酸無水物などとを混合し、この混合物を、水蒸気を含有する雰囲気に暴露して、約0.001〜1000ppmの二酸化塩素ガスを生成および放出させる方法が記載されている。特許文献5には、固形の亜塩素酸塩、固形の酸、および水分徐放固形剤を含む二酸化塩素発生組成物が記載されている。しかし、二酸化塩素ガスを安定的かつ持続的に発生し、二酸化塩素ガスの有する消臭効果を長期間持続させ、かつ保存性に優れた二酸化塩素ガス発生消臭剤についてはまだ報告がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−290717号公報
【特許文献2】特開2007−1807号公報
【特許文献3】特開2009−249274号公報
【特許文献4】特許第4014230号公報
【特許文献5】特開2007−217239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、二酸化塩素ガスを安定的かつ持続的に発生し、二酸化塩素ガスの有する消臭効果を長期間持続させ、かつ保存性に優れた二酸化塩素ガス発生消臭剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、亜塩素酸塩とリンゴ酸とを反応させることにより、二酸化塩素ガスを安定的かつ持続的に発生させることが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明の二酸化塩素ガス発生消臭剤は、固体の亜塩素酸塩および固体のリンゴ酸を含有する。
【0009】
1つの実施態様では、上記亜塩素酸塩1mmolに対して上記リンゴ酸を0.01〜5mmolの割合で含有する。
【0010】
他の実施態様では、さらに固体の硫酸マグネシウムを含有する。
【0011】
本発明はまた、上記二酸化塩素ガス発生消臭剤を含むバッグ剤を提供し、該バッグ剤は、上記亜塩素酸塩と上記リンゴ酸とが該バッグ剤内のそれぞれ異なる室に収容されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、二酸化塩素ガスを安定的かつ持続的に発生し、二酸化塩素ガスの有する消臭効果を長期間持続させ、かつ保存性に優れた二酸化塩素ガス発生消臭剤を提供することができる。本発明の二酸化塩素ガス発生消臭剤は、ガス発生量を調節でき、急激なガスの発生を抑えることができる。また、包装容器内で亜塩素酸塩とリンゴ酸とを分離保存し、包装容器内で用時混合して二酸化塩素ガスを発生させるので、使用者が安全かつ容易に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の二酸化塩素ガス発生消臭剤を含むバッグ剤の一実施態様を示す図面である。
【図2】本発明の二酸化塩素ガス発生消臭剤を含むバッグ剤の他の実施態様を示す図面である。
【図3】実施例1において発生させた二酸化塩素ガスの濃度(ppm)の経時変化を示すグラフである。
【図4】実施例2において発生させた二酸化塩素ガスの濃度(ppm)の経時変化を示すグラフである。
【図5】実施例4において発生させた二酸化塩素ガスの濃度(ppm)の経時変化を示すグラフである。
【図6】実施例5において発生させた二酸化塩素ガスの濃度(ppm)の経時変化を示すグラフである。
【図7】実施例6において二酸化塩素ガスを発生させた後の、悪臭ガスの濃度(ppm)の経時変化を示すグラフである。
【図8】実施例7において、亜塩素酸ナトリウム(a)、DL−リンゴ酸(b)または硫酸マグネシウム無水物(c)の粒子径を変えて発生させた二酸化塩素ガスの濃度(ppm)の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の二酸化塩素ガス発生消臭剤は、固体の亜塩素酸塩および固体のリンゴ酸を含有する。
【0015】
亜塩素酸塩は、塩素原子1個と酸素原子2個とからなる亜塩素酸イオン(ClO-)を有する塩である。塩としては、例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が挙げられる。
【0016】
本発明の消臭剤に含有される亜塩素酸塩は固体である。固体の形状としては、例えば、粒状、粉状(粉末)が挙げられる。粒子径は、特に限定されないが、通常、1〜180μmである。
【0017】
リンゴ酸は、2−ヒドロキシブタン二酸とも呼ばれる2価の有機酸である。2位に光学中心を有し、光学異性体が存在する。本発明の消臭剤に含有されるリンゴ酸は、D体、L体またはDL体(ラセミ体)のいずれであってもよい。
【0018】
本発明の消臭剤に含有されるリンゴ酸は固体である。固体の形状としては、例えば、粒状、粉状(粉末)が挙げられる。粒子径は、亜塩素酸塩と混合した場合に二酸化塩素ガスの発生を促進する観点から、1〜500μmであり、好ましくは5〜75μmである。
【0019】
本発明の消臭剤に含有される亜塩素酸塩とリンゴ酸との割合は、亜塩素酸塩1mmolに対してリンゴ酸が0.01〜5mmolであり、好ましくは0.025〜0.5mmolである。
【0020】
本発明の消臭剤は、好ましくは硫酸マグネシウムを含有する。硫酸マグネシウムは、本発明の消臭剤が大気中から取り込む水分量を調整するための乾燥剤として用いられる。硫酸マグネシウムは、天然には7水和物として存在し、無色粉末である。硫酸マグネシウムの無水物は吸湿性のある白色結晶性粉末である。本発明の消臭剤に含有される硫酸マグネシウムは、特に限定されないが、好ましくは硫酸マグネシウム無水物である。
【0021】
本発明の消臭剤に含有される硫酸マグネシウムは固体である。固体の形状としては、例えば、粒状、粉状(粉末)が挙げられる。粒子径は、特に限定されないが、通常、75〜500μmである。
【0022】
本発明の消臭剤に含有される硫酸マグネシウムの割合は、亜塩素酸塩1mmolに対して0.1〜50mmolであり、好ましくは0.5〜10mmolである。
【0023】
本発明の消臭剤は、二酸化塩素ガスを発生することが可能である限り、他の成分を含有してもよい。他の成分としては、乾燥剤、調湿剤などが挙げられる。本発明に含有される他の成分は固体である。
【0024】
本発明の消臭剤は、使用前には、亜塩素酸塩とリンゴ酸とが混合しないように包装容器に収容されている。硫酸マグネシウムは、亜塩素酸塩またはリンゴ酸のいずれかと混合された状態で収容されていてもよいし、好ましくは亜塩素酸塩と混合された状態で収容されている。好ましくは、包装容器には隔壁が設けられ、包装容器内で亜塩素酸塩とリンゴ酸とが混合しない構成となっている。
【0025】
包装容器としては、特に限定されないが、例えば、紙製、布製、不織布製、プラスチック製などのバッグ、合成樹脂製、金属製、ガラス製などの硬質容器が挙げられる。
【0026】
本発明の消臭剤は、消臭対象とする空間の大きさに応じて、亜塩素酸塩およびリンゴ酸の含有量を設定することができる。空間容積15000L(4畳程度の部屋)に対して、通常、亜塩素酸塩を1〜40mmol用い、好ましくは5〜20mmol用いる。
【0027】
本発明の消臭剤は、使用時に、亜塩素酸塩とリンゴ酸とを混合することにより、二酸化塩素ガスを発生する。混合方法は特に限定されない。包装容器内で混合してもよいし、包装容器から出して、別の容器内で混合してもよい。本発明の消臭剤を含有する包装容器が紙や布や不織布などの軟らかい材質の場合、包装容器の外から手で揉んで混合してもよいし、合成樹脂や金属などの硬い材質の場合、包装容器を手で持って振って混合してもよい。あるいは、スターラーバーなどの攪拌具を用いて混合してもよい。
【0028】
図1に、本発明の消臭剤を含むバッグ剤の一実施態様を示す。図1のバッグ剤は、例えば、不織布製である。使用前、第1薬剤室(11)および第2薬剤室(13)が弱シール部(12)により隔離され、使用の際に、弱シール部(12)が剥がされ、第1薬剤室(11)と第2薬剤室(13)とを連通させる。図2に、本発明の消臭剤を含むバッグ剤の他の実施態様を示す。図2のバッグ剤は、例えば、ポリオレフィン製である。弱シール部(22)で隔離された第1薬剤室(21)および第2薬剤室(23)を備えるポリオレフィンバッグの上から第1薬剤室(21)を覆うように、不織布のオーバーバッグ(24)を被せて弱シール部(22)で溶着して製造する。使用の際に、オーバーバッグ(24)で被覆されていない側の第2薬剤室(23)を押すことにより、弱シール部(22)が剥がされ、第1薬剤室(21)と第2薬剤室(23)とを連通させる。
【0029】
図1および図2のバッグ剤の大きさは、2〜15cm(横)×3〜25cm(縦)である。第1薬剤室には、例えば、亜塩素酸塩および硫酸マグネシウムを充填し、第2薬剤室には、例えば、リンゴ酸を充填する。充填量は、亜塩素酸塩が0.1〜4.5g、硫酸マグネシウムが0.1〜240g、およびリンゴ酸が0.1〜25gである。使用前には、弱シール部により、第1薬剤室と第2薬剤室とは隔離され、亜塩素酸塩および硫酸マグネシウムとリンゴ酸とは混合しないため、二酸化塩素ガスは発生しない。使用の際には、手で弱シール部を剥がし、第1薬剤室と第2薬剤室とを連通させ、バッグの中の亜塩素酸塩および硫酸マグネシウムとリンゴ酸とをバッグの外から手でよく混合する。すぐに二酸化塩素ガスが発生するので、バッグ剤を適当な場所に静置する。
【0030】
本発明の消臭剤を用いる空間の湿度は、通常30〜80%RHであり、好ましくは40〜60%RHである。80%RHを超えると、二酸化塩素ガスが急激に発生するため、持続的な発生ができなくなる。30%RH未満では、二酸化塩素ガスの発生量が少なくなる。
【0031】
発生する二酸化塩素のガスは、ClOの組成式で表される塩素の酸化物であり、常温、常圧では刺激臭があり、橙色を呈し、空気より重い。
【0032】
二酸化塩素ガスは、悪臭ガスを酸化分解して消臭効果を発揮する。悪臭ガスは特に限定されない。例えば、アンモニア、トリメチルアミン、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸が挙げられる。
【0033】
二酸化塩素ガスの濃度(ppm)は、ガス検知管を用いて測定することができる。あるいは、ガス採取管を用いてガスを採取した後、装置を用いて測定することができる。
【0034】
本発明の消臭剤から発生する二酸化塩素ガスの濃度(ppm)は、通常、12L空間内で1〜200ppm程度であり、好ましくは5〜25ppmである。居住空間内で1000ppmを超えると、使用者の健康に害を及ぼす可能性があり、0.001ppm未満では、消臭効果が得られない。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例1:有機酸による二酸化塩素ガスの発生)
(条件)
亜塩素酸ナトリウム(関東化学株式会社、鹿特級、純度80.5%):2mmol(225mg)
有機酸:0.05mmol
無水クエン酸(ナカライテスク株式会社、1級):10mg
DL−リンゴ酸(関東化学株式会社、鹿特級):7mg
コハク酸(ナカライテスク株式会社、特級):6mg
無水コハク酸(関東化学株式会社、鹿特級):5mg
マロン酸(関東化学株式会社、鹿1級):5mg
スルファミン酸(ナカライテスク株式会社、特級):5mg
密閉容器:テドラーバッグ(アズワン株式会社、ポリフッ化ビニル製、5L、2つ口コック付き)
湿度:50%RH(臭化ナトリウム飽和水溶液で調湿)
参考品:ASEPTROL CSR 1.05 SACHET 10−Gram(エンゲルハード社製)
【0037】
(試験)
テドラーバッグの側面に10cm程度の長さの直線状の切れ目を入れ、そこから臭化ナトリウム(和光純薬工業株式会社、特級)の飽和水溶液入りのビーカー、および温湿度計を中に入れた。次いで、このテドラーバッグ、別の臭化ナトリウムの飽和水溶液入りのビーカー、および別の温湿度計をグローブボックス(アズワン株式会社、商品名:グローブボックス、型番:AS-600P、サイズ:762×450×478(mm))内に入れた。
【0038】
グローブボックス内の湿度が室温下50%RHになったのを確認した後、乳鉢にてすりつぶして粉末とした亜塩素酸ナトリウム2mmol(225mg)および有機酸0.05mmolをそれぞれ接触させないようにシャーレに入れ、このシャーレをテドラーバッグの切れ目から中に入れた。
【0039】
テドラーバッグの切れ目をテープで塞ぎ、テドラーバッグのコックから中にグローブボックス内の大気を入れて満たした。テドラーバッグ内のシャーレ上の亜塩素酸ナトリウムと有機酸とを、グローブを用いて手で混合し、二酸化塩素ガスを発生させた。
【0040】
経時的に、テドラーバッグのコックからガス採取器(株式会社ガステック製GV−100S)にてテドラーバッグ内のガスを採取し、ガス検知管(株式会社ガステック製No.23M、測定範囲:0.1〜10ppm)を用いて、採取ガス中の二酸化塩素ガス濃度(ppm)を測定した。二酸化塩素ガス濃度が検知管の測定上限値(10ppm)を超える場合、テドラーバッグ内のガスを一部ディスポーザブルシリンジ(株式会社ジェイ・エム・エス製、100mL)に取った後、適宜希釈し、ガス採取器にてシリンジ内のガスを採取し、ガス検知管を用いて、採取ガス中の二酸化塩素ガス濃度(ppm)を測定した。この測定値に希釈倍率を掛けた値をテドラーバッグ内の二酸化塩素ガス濃度(ppm)とした。結果を図3に示す。
【0041】
図3から明らかなように、有機酸としてリンゴ酸を用いると、二酸化塩素ガスの発生量が多いことがわかった。
【0042】
(実施例2:二酸化塩素ガスの発生に及ぼす湿度の影響)
(条件)
亜塩素酸ナトリウム:2mmol(225mg)
DL−リンゴ酸:0.05mmol(7mg)
密閉容器:テドラーバッグ(アズワン株式会社、ポリフッ化ビニル製、5L、2つ口コック付き)
湿度:30、40、50、60および80%RH
【0043】
(試験)
有機酸としてDL−リンゴ酸を用い、臭化ナトリウムの飽和水溶液の代わりに塩化マグネシウム(30%RH)(和光純薬工業株式会社、メーカー規格適合品)、炭酸カリウム(40%RH)(関東化学株式会社、特級)、臭化ナトリウム(50%RH)(和光純薬工業株式会社、特級)、塩化ナトリウム(60%RH)(関東化学株式会社、特級)および硫酸カリウム(80%RH)(関東化学株式会社、特級)の各飽和水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、二酸化塩素ガスを発生させ、テドラーバッグ内の二酸化塩素ガス濃度(ppm)を経時的に測定した。結果を図4に示す。
【0044】
図4から明らかなように、二酸化塩素ガスは、80%RHでは急激に発生した後すぐに発生量が減少し、30%RHでは徐々に発生し、40〜60%RHでは安定的かつ持続的に発生することがわかった。
【0045】
(実施例3:二酸化塩素ガスによる消臭効果1)
(条件)
亜塩素酸ナトリウム:2mmol(216mg)
DL−リンゴ酸:0.05mmol(6.7mg)
密閉容器:デシケーター(12L)
【0046】
(試験)
乳鉢にてすりつぶして粉末とした亜塩素酸ナトリウム2mmol(216mg)およびDL−リンゴ酸0.05mmol(6.7mg)をそれぞれ接触させないようにビーカーに入れ、さらにスターラーバーを入れ、このビーカーをデシケーター内に入れた。
【0047】
デシケーター内に悪臭ガス(アンモニア80ppm、トリメチルアミン6ppmおよび硫化水素20ppm)を入れて満たし、悪臭ガス濃度(ppm)を測定した。デシケーター内のビーカー内の亜塩素酸ナトリウムとDL−リンゴ酸とを、スターラーバーを用いて攪拌して混合し、二酸化塩素ガスを発生させた。
【0048】
30分後のデシケーター内の悪臭ガス濃度(ppm)を測定した。結果を表1に示す。なお、悪臭ガス濃度(ppm)の測定は、環境衛生薬品株式会社生活圏環境衛生研究所に委託して行った。
【0049】
【表1】

【0050】
表1から明らかなように、いずれの悪臭ガスも二酸化塩素ガス発生から30分後には70%以上が分解を受け消失した。したがって、本実施例の条件では、消臭効果が十分得られる量の二酸化塩素ガスが発生していることがわかった。
【0051】
(実施例4:二酸化塩素ガスの発生持続性)
(条件)
亜塩素酸ナトリウム:2mmol(225mg)
DL−リンゴ酸:0.05mmol(7mg)
密閉容器:デシケーター(12L)
湿度:40〜60%RH(臭化ナトリウム飽和水溶液で調湿)
【0052】
(試験)
臭化ナトリウムの飽和水溶液入りのビーカー、および温湿度計をデシケーター内に入れた。
【0053】
デシケーター内の湿度が室温下40〜60%RHになったのを確認した後、乳鉢にてすりつぶして粉末とした亜塩素酸ナトリウム2mmol(225mg)およびDL−リンゴ酸0.05mmol(7mg)をそれぞれ接触させないようにビーカーに入れ、さらにスターラーバーを入れ、このビーカーをデシケーター内に入れた。
【0054】
デシケーター内のビーカー内の亜塩素酸ナトリウムとDL−リンゴ酸とを、スターラーバーを用いて攪拌して混合し、二酸化塩素ガスを発生させた。
【0055】
経時的に、デシケーターのコックからガス採取器(株式会社ガステック製GV−100S)にてデシケーター内のガスを採取し、ガス検知管(株式会社ガステック製No.23M、測定範囲:0.1〜10ppm)を用いて、採取ガス中の二酸化塩素ガス濃度(ppm)を測定した。二酸化塩素ガス濃度が検知管の測定上限値(10ppm)を超える場合、デシケーター内のガスを一部ディスポーザブルシリンジ(株式会社ジェイ・エム・エス製、100mL)に取った後、適宜希釈し、ガス採取器にてシリンジ内のガスを採取し、ガス検知管を用いて、採取ガス中の二酸化塩素ガス濃度(ppm)を測定した。この測定値に希釈倍率を掛けた値をデシケーター内の二酸化塩素ガス濃度(ppm)とした。結果を図5に示す。
【0056】
図5から明らかなように、二酸化塩素ガス濃度は、ガス発生開始から約60分後に、ピークに達し、その後数時間で急激に減少し、その後は徐々に減少し、24時間後には10ppm以下になることがわかった。
【0057】
本実施例とほぼ同様の条件である実施例3では、悪臭ガス濃度は、二酸化塩素ガス発生開始から約30分後に大幅に減少した。図5によると、本実施例では、二酸化塩素ガス濃度は、ガス発生開始から約30分後では10ppmを超えた程度である。したがって、二酸化塩素ガスは10ppm程度で消臭効果が十分得られることがわかった。
【0058】
(実施例5:二酸化塩素ガスの発生持続性に及ぼす乾燥剤の影響)
(条件)
処方1
亜塩素酸ナトリウム:12mmol(1.35g)
DL−リンゴ酸:5mmol(0.648g)
硫酸マグネシウム無水物:50mmol(6g)
処方2
亜塩素酸ナトリウム:36mmol(4.05g)
DL−リンゴ酸:14mmol(1.944g)
硫酸マグネシウム無水物:150mmol(18g)
密閉容器:デシケーター(12L)
湿度:40〜70%RH(塩化ナトリウム飽和水溶液で調湿)
【0059】
(試験)
粉末を増量した処方1として、亜塩素酸ナトリウム12mmol(1.35g)と硫酸マグネシウム無水物(和光純薬株式会社、特級)50mmol(6g)とを混合した粉末およびDL−リンゴ酸5mmol(0.648g)の粉末をそれぞれ接触させないようにビーカーに入れ、さらにスターラーバーを入れ、このビーカーをデシケーター内に入れた。
【0060】
粉末をさらに増量した処方2として、亜塩素酸ナトリウム36mmol(4.05g)と硫酸マグネシウム無水物150mmol(18g)とを混合した粉末およびDL−リンゴ酸14mmol(1.944g)の粉末をそれぞれ接触させないようにビーカーに入れ、さらにスターラーバーを入れ、このビーカーをデシケーター内に入れた。
【0061】
それぞれの処方について、塩化ナトリウムの飽和水溶液入りのビーカー、および温湿度計をデシケーター内に入れた。
【0062】
それぞれの処方について、デシケーター内の湿度が室温下40〜70%RHになったのを確認した後、デシケーター内のビーカー内の亜塩素酸ナトリウムと硫酸マグネシウム無水物とDL−リンゴ酸とを、スターラーバーを用いて攪拌して混合し、二酸化塩素ガスを発生させた。
【0063】
それぞれの処方について、実施例4と同様にして、デシケーター内の二酸化塩素ガス濃度(ppm)を経時的に測定した。結果を図6に示す。
【0064】
図6から明らかなように、二酸化塩素ガスは、いずれの処方においても1月程度持続的に発生することがわかった。しかし、処方2では、1月以上経過した時点で、硫酸マグネシウム無水物によるガス発生制御効果が弱まり、過剰な二酸化塩素ガスの発生が認められた。したがって、安全性およびガス発生の持続性の面から処方2よりも処方1がよいことがわかった。
【0065】
(実施例6:二酸化塩素ガスによる消臭効果2)
(条件)
亜塩素酸ナトリウム:12mmol(1.35g)
DL−リンゴ酸:5mmol(0.648g)
硫酸マグネシウム無水物:50mmol(6g)
密閉容器:デシケーター(12L)
湿度:40〜70%RH(塩化ナトリウム飽和水溶液で調湿)
【0066】
(試験)
亜塩素酸ナトリウム12mmol(1.35g)と硫酸マグネシウム無水物50mmol(6g)とを混合した粉末およびDL−リンゴ酸5mmol(0.648g)の粉末をそれぞれ接触させないようにビーカーに入れ、さらにスターラーバーを入れ、このビーカーをデシケーター内に入れた。
【0067】
塩化ナトリウムの飽和水溶液入りのビーカー、および温湿度計をデシケーター内に入れた。
【0068】
デシケーター内に悪臭ガス(アンモニアおよびトリメチルアミン)を入れて満たし、悪臭ガス濃度(ppm)を測定した。デシケーター内の湿度が室温下40〜60%RHになったのを確認した後、デシケーター内のビーカー内の亜塩素酸ナトリウムと硫酸マグネシウム無水物とDL−リンゴ酸とを、スターラーバーを用いて攪拌して混合し、二酸化塩素ガスを発生させた。
【0069】
デシケーター内の悪臭ガス濃度(ppm)を経時的に測定した。結果を図7に示す。
【0070】
図7から明らかなように、いずれの悪臭ガスも二酸化塩素ガス発生直後から急激に分解を受け、ガス発生から2時間後にはほぼ完全に消失した。本実施例の条件は、実施例6において二酸化塩素ガスの発生持続性が認められた処方1の条件と同じである。したがって、二酸化塩素ガスの発生持続性が認められる条件でも、消臭効果が十分得られることがわかった。
【0071】
(実施例7:二酸化塩素ガスの発生に及ぼす粉末の粒子径の影響)
(条件)
亜塩素酸ナトリウム:12mmol(1.35g)
DL−リンゴ酸:5mmol(0.648g)
硫酸マグネシウム無水物:50mmol(6g)
密閉容器:デシケーター(12L)
湿度:40〜60%RH(塩化ナトリウム飽和水溶液で調湿)
【0072】
(試験)
亜塩素酸ナトリウム、DL−リンゴ酸および硫酸マグネシウム無水物の粉末をそれぞれ篩い分けた。試験毎に3成分のうち1成分のみ篩い分けたものを用いた。
【0073】
各試験において、亜塩素酸ナトリウム12mmol(1.35g)と硫酸マグネシウム無水物50mmol(6g)とを混合した粉末およびDL−リンゴ酸5mmol(0.648g)の粉末をそれぞれ接触させないようにビーカーに入れ、さらにスターラーバーを入れ、このビーカーをデシケーター内に入れた。
【0074】
塩化ナトリウムの飽和水溶液入りのビーカー、および温湿度計をデシケーター内に入れた。
【0075】
デシケーター内の湿度が室温下40〜60%RHになったのを確認した後、デシケーター内のビーカー内の亜塩素酸ナトリウムと硫酸マグネシウム無水物とDL−リンゴ酸とを、スターラーバーを用いて攪拌して混合し、二酸化塩素ガスを発生させた。
【0076】
実施例4と同様にして、デシケーター内の二酸化塩素ガス濃度(ppm)を経時的に測定した。結果を図8に示す。
【0077】
図8から明らかなように、二酸化塩素ガスの発生量は、亜塩素酸ナトリウムおよび硫酸マグネシウム無水物の粉末の粒子径にはほとんど依存しないが、DL−リンゴ酸の粉末の粒子径は小さい方が二酸化塩素ガスの発生量が多いことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の二酸化塩素ガス発生消臭剤は、二酸化塩素ガスを安定的かつ持続的に発生し、二酸化塩素ガスの有する消臭効果を長期間持続させ、かつ保存性に優れている。また、ガス発生量を調節でき、急激なガスの発生を抑えることができる。さらに、包装容器内で亜塩素酸塩とリンゴ酸とを分離保存し、包装容器内で用時混合して二酸化塩素ガスを発生させるので、使用者が安全かつ容易に使用できる。したがって、居住空間や貯蔵庫内など多様な場所の消臭に簡便に利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
11,21 第1薬剤室
12,22 弱シール部
13,23 第2薬剤室
24 オーバーバッグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体の亜塩素酸塩および固体のリンゴ酸を含有する二酸化塩素ガス発生消臭剤。
【請求項2】
前記亜塩素酸塩1mmolに対して前記リンゴ酸を0.01〜5mmolの割合で含有する、請求項1に記載の二酸化塩素ガス発生消臭剤。
【請求項3】
さらに固体の硫酸マグネシウムを含有する、請求項1または2に記載の二酸化塩素ガス発生消臭剤。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかの項に記載の二酸化塩素ガス発生消臭剤を含むバッグ剤であって、前記亜塩素酸塩と前記リンゴ酸とが該バッグ剤内のそれぞれ異なる室に収容されている、バッグ剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−235(P2012−235A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137272(P2010−137272)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】