説明

二酸化塩素溶液の生成方法

【課題】二酸化塩素溶液の生成にかかわる方法は、即効性を保証するために大規模な設備を導入するか、安全性を保つために即効性を犠牲にするかの二者択一であった。この問題は、二酸化塩素溶液を生成するにあたって、安全性に乏しい強酸などを使うしか短時間に任意の濃度を得られなかったからであり、一方、小規模な施設では安全な作業性を確保するためクエン酸などを用いて二酸化塩素溶液を生成したため、必要な濃度を得るのに長い時間を必要とした。
【解決手段】人体に安全でありながら、二酸化塩素を効率よく生成させる事が出来るコハク酸を活性剤として用いる事により、安全でありながら短時間で任意の濃度の二酸化塩素溶液を得る事が出来る。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、消毒・消臭用途において有用な二酸化塩素溶液について機械的な装置を必要とせず、短時間かつ安全に任意の濃度の溶液を生成する事を可能にする生成方法ならびに生成剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2000−343087号公報
【特許文献2】特開2004−10451号公報
【特許文献3】特開H7−45368号公報
【特許文献4】カナダ特許959238

二酸化塩素溶液は紙、綿、パルプ、及びその他繊維材料中における自然色素の酸化による漂白剤として、また、殺菌剤、殺ウイルス剤、殺藻剤として上下水道の殺菌、スイミングプールの殺菌・濁度の改善、観賞用池水における殺藻処理など広汎な用途で利用されてきた。しかし、このように有用な二酸化塩素は実用的な側面において問題があった。
【0003】
それは、二酸化塩素はその物性において爆発性、毒性、光・熱に対する分解性を有するためガス状で運搬出来ない点である。また安定性の増す二酸化塩素溶液についても本来の物性による不可避的な問題として濃度の維持が難しく、ガス状の二酸化塩素と同様、運搬による使用には難点があった。
【0004】
その結果、現場で容易に生成出来る二酸化塩素溶液生成装置が求められ、「特許文献1」や「特許文献2」他多くの知見が示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二酸化塩素溶液を現場で日常的な作業に支障をきたさない30分以内に任意の濃度を生成するためには、従来は取扱いの上で危険な塩素や塩酸、硫酸といった強酸を用いる必要があり、その結果、前記のように安全性を保つため次亜塩素酸や亜塩素酸など二酸化塩素溶液の生成に必要な液剤を処理水系に分注する装置が利用されてきた。
【0006】
しかし、この方法では設備導入にかかる経済的な負担が多大であり、また、薬剤による設備への悪影響が問題であった。
【0007】
一方、まったく化学的な素養のない一般の使用を前提として、二酸化塩素溶液を提供する場合、二酸化塩素発生剤と比較的安全性の高い有機酸、代表的にはクエン酸などを用いて両液を混合する事により二酸化塩素溶液を供給する方法が取られている。
【0008】
しかしこのような方法では30分以内で実用的な濃度を生成する事は事実上不可能であり。およそ12時間〜24時間かかる事が常であった。
【0009】
つまり、従来は短時間で実用的な二酸化塩素溶液を得るには極めて危険な薬剤を用いるか、大規模な機械装置を必要とし、安全な薬剤を用いると到底実用的な作業時間内で二酸化塩素溶液を得る事は出来なかった。
【0010】
例えば、「特許文献3」「特許文献4」のように亜塩素酸と酸を反応させる一般的な方法の理解や広いpHにおける有効性、さらにはゲルなどに吸着させる事による応用的な使用法などを示す情報はあっても、前記の諸問題を根本的に解決する知見は存在しない。従って、本発明はこの二律背反的な事象に整合性をもたらし、安全な薬剤を用いて短時間の作業性を実現する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題の解決にあたり、本発明者は鋭意研究を重ねた結果、二酸化塩素発生剤にコハク酸を含有する活性剤を用いる事により、目的を達成出来る事を知見し、本発明を完成した。
【0012】
本発明の請求項2は産業的な実用性の観点から20℃〜45℃の水温、0.5t〜800t程度の水量を所与の外的条件とした上で、コハク酸の有効な含有率を算出している。
具体的には、公衆浴場など42℃前後の水温に設定されている場合を想定しており、当然に水温が高いほど反応が速く短時間に二酸化塩素の濃度が高くなる。
【0013】
一方プールなどでは、水温の設定がおよそ30℃〜35℃に設定されている。また、およそ水の水温が20℃前後である事を鑑み、本発明では実用的な水温として20℃以上を採用した。
【0014】
一般論として、処理対象の水温が高ければ高いほど、反応に要する時間は短くなり、少量の薬剤でもって、必要な濃度を得る事が可能になる。しかし、既に述べたように実際の産業的な利用価値は20℃〜45℃の範囲に収束しており、その範囲を著しく逸脱する条件下での仮定は実用的に無価値であるため本発明ではその仮定を排除した。
【0015】
また、主剤の処理水量に対する含有量を著しく増大させる事によって、二酸化塩素濃度を得る事も考えられるが、未反応の亜塩素酸イオンが多量に残るがごとき状況は安全性、経済性の両面から好ましくないため本発明においてはその仮定を排除した。
【0016】
一方、本発明はその精神において、コハク酸が他の活性剤に対して著しく二酸化塩素を生成する上で有効である事を示す知見であって、他の活性剤の候補となる、クエン酸や乳酸などの混合を排除する物ではない。
【0017】
この発明による二酸化塩素溶液の生成にはコハク酸を固相で用いる事がより望ましく、高い濃度を短時間で得る事が可能になる。
【0018】
固相のコハク酸は必要ならば香料、安定剤、賦形剤等を添加して、円柱状などに調剤する事も可能であるが、二酸化塩素の生成時間に影響を与えるためその点に留意して調剤する事が望ましい。
【0019】
より短時間での濃度の生成を求めるのであれば、コハク酸は微粉末状にする事が最も望ましい。
【0020】
以上のようにコハク酸を用いる事で安全に任意の濃度の二酸化塩素溶液を短時間で生成する事が可能となる。本発明の結果、従来の二律背反の課題は完全に解消され工業的に極めて有効である。
【発明の効果】
【0021】
発明の実施の形態において、述べたように、本発明による二酸化塩素溶液の生成方法を採用する事で、様々な局面において最適な濃度の二酸化塩素溶液を生成する事が可能になり、従来のように長時間待つ必要も、大規模な機械装置も不必要となり、容易に二酸化塩素の優れた特性を享受する事が可能になる。
【発明の実施するための最良の形態】
【0022】
次に具体的実施例に基づいて、本発明による二酸化塩素溶液を使用した消毒処理を詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
水量1t水温42℃の循環式浴槽において、亜塩素酸ナトリウム水溶液(25%)60gとコハク酸9gを同時に同じ箇所から循環式浴槽内に加える。その結果、約20分後浴槽における二酸化塩素濃度は1.49ppmとなり確実な消毒処理が行えた事が認められた。
【実施例2】
【0024】
水量200t水温33℃のスイミング用プールにおいて、亜塩素酸ナトリウム水溶液(25%)10Lとコハク酸1.8kgクエン酸1.2kgを同時に同じ箇所から加えスイミングプール内の水を循環させる。その結果、約20分後プールにおける二酸化塩素濃度は1.2ppmに達し、確実な消毒処理が行えた事が認められた。
【実施例3】
【0025】
500Lの小規模な池の藻を除去するために、10Lの容器に亜塩素酸ナトリウム水溶液(25%)600gとコハク酸90gクエン酸90gを注ぎ15分静置した所、2530ppm.の二酸化塩素溶液を得る事が出来、その溶液を池に注ぐ事で殺藻出来る事が確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】2%の各種活性剤による二酸化塩素生成濃度の比較

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリまたはアルカリ土類亜塩素酸塩による二酸化塩素発生主剤(以下主剤)とカルボン酸またはオキシカルボン酸による有機酸から構成される活性剤(以下活性剤)の混合により消臭または消毒を目的とする水溶液の生成において、当該有機酸にコハク酸を用いる事を特徴とする二酸化塩素溶液の生成方法
【請求項2】
請求項1による二酸化塩素溶液生成方法のうち、コハク酸を主剤及び活性剤の総重量に対して重量比0.5%以上含有する二酸化塩素溶液の生成方法。
【請求項3】
請求項1の二酸化塩素発生剤と活性剤が液剤または粉末を含む固形剤のいずれかで生剤及び活性剤との重量比において0.5%以上をコハク酸とし、互いに分離された形態による二酸化塩素溶液生成剤

【図1】
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【公開番号】特開2006−7190(P2006−7190A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213669(P2004−213669)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(302072147)
【Fターム(参考)】