説明

二酸化炭素の回収方法及び回収装置

【課題】 回収ガスからの熱回収効率が良く、費用削減が容易な二酸化炭素の回収方法及び装置を提供する。
【解決手段】 吸収塔10において二酸化炭素を含有するガスを吸収液に接触させて、吸収液に二酸化炭素を吸収させ、吸収塔で二酸化炭素を吸収した吸収液を再生塔20で加熱して二酸化炭素を吸収液から放出させて吸収液を再生する。再生塔から排出される水蒸気及び二酸化炭素を含んだ回収ガスをそのまま圧縮器30で圧縮して、圧縮によって発生する熱及び水蒸気の凝縮熱を熱交換器31で回収して再生塔へ供給する。回収される熱は、ガス圧縮熱及び水の凝縮熱を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼ガスなどの二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離回収し、清浄なガスを大気に還元するための二酸化炭素の回収方法及び二酸化炭素の回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所や製鉄所、ボイラーなどの設備では、石炭、重油、超重質油などの燃料を多量に使用しており、燃料の燃焼によって排出される硫黄酸化物、窒素酸化物及び二酸化炭素は、大気汚染防止や地球環境保全の見地から放出に関する量的及び濃度的制限が必要とされている。近年、二酸化炭素は地球温暖化の主原因として問題視され、世界的にも排出を抑制する動きが活発化している。このため、燃焼排ガスやプロセス排ガスの二酸化炭素を大気中に放出せずに回収・貯蔵を可能とするために、様々な研究が精力的に進められ、二酸化炭素の回収方法として、例えば、PSA(圧力スウィング)法、膜分離濃縮法や、塩基性化合物による反応吸収を利用する化学吸収法などが知られている。
【0003】
化学吸収法においては、主にアルカノールアミン系の塩基性化合物を吸収剤として用い、その処理プロセスでは、概して、吸収剤を含む水性液を吸収液として、ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収工程と、吸収された二酸化炭素を吸収液から放出させて吸収液を再生する再生工程とを交互に繰り返すように吸収液を循環させる(例えば、下記特許文献1参照)。再生工程においては、二酸化炭素を放出させるための加熱が必要であり、また、再生後の吸収液を吸収工程において再使用するために、吸収液の冷却が必要であるので、二酸化炭素回収の操業費用を削減するには、加熱/冷却に要するエネルギーを低減することが重要となる。
【0004】
下記特許文献1では、再生工程から回収されるガスの流路に設けられる圧縮器及び熱交換器を用いて回収ガスから熱エネルギーを回収し、再生工程に供給するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−62165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1においては、再生工程後の回収ガスに一旦凝縮処理を施した後に、回収ガスからの熱エネルギーの回収を行っており、放出されたガスの熱エネルギーの一部は、凝縮時に冷却水等を通じて系外に除去されるので、熱エネルギーの回収は十分とは言えない。
【0007】
本発明の課題は、上記課題を解決し、回収ガスに含まれる熱エネルギーの回収効率を改善して、効率的に回収熱エネルギーを再生工程で利用できる二酸化炭素の回収方法を提供することである。
【0008】
また、本発明の他の課題は、回収ガスからのエネルギー回収効率が良く、操業費用の削減が容易な二酸化炭素の回収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、再生工程後の回収ガスの流路における圧縮器及び熱交換器の配置を考慮することによって、より効率的に熱エネルギーの回収が可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の一態様によれば、二酸化炭素の回収装置は、二酸化炭素を含有するガスを吸収液に接触させて、前記吸収液に二酸化炭素を吸収させる吸収塔と、前記吸収塔で二酸化炭素を吸収した前記吸収液を加熱して二酸化炭素を前記吸収液から放出させて吸収液を再生する再生塔と、前記再生塔から排出される水蒸気及び二酸化炭素を含んだ回収ガスをそのまま圧縮する圧縮器と、前記圧縮によって発生する熱を回収して前記再生塔へ供給する熱回収システムとを有することを要旨とする。
【0011】
又、本発明の一態様によれば、二酸化炭素の回収方法は、二酸化炭素を含有するガスを吸収液に接触させて、前記吸収液に二酸化炭素を吸収させる吸収工程と、二酸化炭素を吸収した前記吸収液を加熱して二酸化炭素を前記吸収液から放出させて吸収液を再生する再生工程と、前記吸収液から放出される水蒸気及び二酸化炭素を含んだ回収ガスをそのまま圧縮する圧縮工程と、前記圧縮によって発生する熱を回収して前記再生工程へ供給する熱回収工程とを有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ガスに含まれる二酸化炭素を回収するプロセスにおいて、回収ガスに含まれる熱エネルギーの回収効率を改善してより多くの熱を再生工程へ供給可能であるので、操業に要する費用を削減でき、省エネルギー及び環境保護に貢献可能な二酸化炭素の回収装置を提供できる。特殊な装備や高価な装置を必要とせず、一般的な設備を利用して簡易に実施できるので、経済的に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る二酸化炭素の回収装置を示す概略構成図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る二酸化炭素の回収装置を示す概略構成図。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る二酸化炭素の回収装置を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の二酸化炭素の回収方法及び回収装置について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の二酸化炭素の回収方法及びそれを実施する回収装置の第1の実施形態を示す。回収装置1は、二酸化炭素を含有するガスGを吸収液に接触させて、吸収液に二酸化炭素を吸収させる吸収塔10と、二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱し、二酸化炭素を吸収液から放出させて吸収液を再生する再生塔20とを有する。吸収塔10及び再生塔20は、各々、向流型気液接触装置として構成され、接触面積を大きくするための充填材11,21を各々内部に保持している。充填材11,12は、概して、ステンレス鋼、炭素鋼等の鉄系金属材料製のものが用いられるが、特に限定されず、処理温度における耐久性及び耐腐食性を有する素材で、所望の接触面積を提供し得る形状のものを適宜選択するとよい。吸収液として、アルカノールアミン類等の二酸化炭素に親和性を有する化合物を吸収剤として含有する水性液が用いられる。
【0016】
二酸化炭素を含んだガスGは、吸収塔10の下部から供給され、吸収液は、吸収塔10の上部から供給され、ガスG及び吸収液が充填材11を通過する間に気液接触してガスG中の二酸化炭素が吸収液に吸収される。吸収塔10に供給されるガスGについて、特に制限はなく、燃焼排ガスやプロセス排ガスなどの様々なガスの取扱いが可能であるが、二酸化炭素の吸収に適した低温であることが好ましく、必要に応じてガス冷却用の前処理設備を付設するとよい。
【0017】
二酸化炭素を吸収した吸収液A1は、吸収塔10底部に貯溜され、ポンプ12によって、吸収塔10底部と再生塔20上部とを接続する流路27から再生塔20へ供給される。二酸化炭素が除去されたガスG’は、吸収塔10頂部から排出される。吸収液が二酸化炭素を吸収することによって発熱して液温が上昇するので、必要に応じて、ガスG’に含まれ得る水蒸気等を除去するための冷却凝縮部を吸収塔10頂部に設けてもよい。
【0018】
吸収塔10の吸収液A1は、再生塔20の上部に供給され、充填材21を通過して底部に貯溜される。再生塔20の底部には、リボイラーが付設される。即ち、吸収液を塔外に循環させる循環路と、吸収液を加熱するためのスチームヒーター22が付設され、塔底部の吸収液A2の一部が循環路を通してスチームヒーター22に供給され、高温蒸気との熱交換によって加熱された後に塔内へ還流される。この加熱によって、底部の吸収液から二酸化炭素が放出され、又、間接的に加熱される充填材21上での気液接触間にも吸収液から二酸化炭素が放出される。
【0019】
再生塔20で二酸化炭素を放出して再生された吸収液A2は、再生塔20底部と吸収塔10上部とを接続する流路28を通じてポンプ23によって吸収塔10に還流され、その間に、熱交換器24において、吸収塔10から再生塔20に供給される吸収液A1との間で熱交換して冷却され、更に、冷却水を用いた冷却器25によって、二酸化炭素の吸収に適した温度まで充分に冷却される。
【0020】
再生塔20における加熱で放出される二酸化炭素を含むガスは、回収ガスとして、再生塔20上部の凝縮部26を通って頂部から排出され、凝縮部26は、回収ガスに含まれる水蒸気が過度に放出されるのを抑制し、また、吸収剤の放出も抑制する。
【0021】
本発明においては、再生塔20から排出される回収ガスから熱を回収して再利用するための熱回収システムを有し、熱回収効率を高めるために、再生塔20から排出される回収ガスは、冷却による水蒸気の凝縮分離を経ることなく、そのまま圧縮する。この圧縮によって発生するガス圧縮熱及び水の凝縮熱の両方を纏めて回収して再利用する。詳細には、再生塔20に直接接続される圧縮器30と、再生塔20底部の吸収液の一部を分流して再生塔外との間を循環させる循環路40と、圧縮器30によって圧縮した回収ガスと前記循環路40の吸収液との間で熱交換を行う熱交換器31とを有し、熱交換において、回収ガスに含まれる水蒸気が冷却凝縮して凝縮熱を放出するので、圧縮熱と共に水の凝縮熱も回収される。この実施形態では、複数組の圧縮器及び熱交換器を備えており、熱交換器31による熱回収を経た回収ガスは、2組目の圧縮器32及び熱交換器33によって再度圧縮及び熱交換が施され、熱回収量が増加する。必要に応じて、3組以上の圧縮器及び熱交換器を適宜設置して多段階の圧縮及び熱交換を繰り返すことができる。尚、この実施形態では、吸収液は、熱交換器31,33において並列に熱交換するように構成されているが、吸収液の流れが熱交換器33から熱交換器31へ向かうように直列に構成してもよい。熱交換後の吸収液は再生塔20の底部に還流されるので、回収ガスから回収した熱は再生塔20へ供給される。この実施形態では、熱交換後の吸収液を直接再生塔20に還流しているが、スチームヒーター22を介して還流するように構成してもよい。
【0022】
熱回収システムによる熱回収を経た回収ガスは、冷却水を用いた冷却器34によって充分に冷却されて、含まれる水蒸気を可能な限り凝縮した後、気液分離器35によって凝縮水を除去した後に、回収二酸化炭素Cを含むガスとして回収される。回収された二酸化炭素は、例えば、地中又は油田中に注入することによって、地中での炭酸ガス固定及び再有機化が可能である。
【0023】
気液分離器35において分離された凝縮水は、加えられた圧力を開放して適切な圧力に減圧調整され、供給路41を通じて再生塔20上部に還流される。還流された凝縮水は、凝縮部26を冷却して吸収剤等の放出を抑制するのに有用であり、塔内の吸収液の組成変動を補整できる。或いは、後述の図3の回収装置のように、再生塔20から吸収塔10へ還流する吸収液に凝縮水を供給するように変更して、吸収塔10へ供給する吸収液の組成変動の補整に用いても良い。凝縮水の圧力開放には、例えば圧力調整弁(減圧弁)等を使用可能であるが、この実施形態では、膨張器36を用いて凝縮水の圧力を調整しており、膨張器36と圧縮器30,32とが同軸ロータで協働駆動するヒートポンプとして構成する(図示省略)ことによって作動効率が向上し、又、膨張時の温度降下によって凝縮部26の冷却効果が向上する。或いは、エジェクタを利用して流動凝縮水を減圧したり、タービン等を用いて加圧凝縮水の流動圧から動力エネルギーを回収して圧縮器の駆動等に利用するように構成してもエネルギー効率を改善できる。
【0024】
図1の回収装置において実施される回収方法について説明する。
【0025】
吸収塔10において、燃焼排ガスやプロセス排ガスなどの二酸化炭素を含有するガスGを底部から供給し、吸収液を上部から供給すると、充填材11上でガスGと吸収液とが気液接触し、吸収液に二酸化炭素が吸収される。二酸化炭素は、低温において良好に吸収されるので、概して50℃程度以下、好ましくは40℃以下となるように吸収液の液温又は吸収塔10(特に充填材11)の温度を調整する。吸収液は二酸化炭素の吸収によって発熱するので、これによる液温上昇を考慮し、液温が60℃を超えないように配慮することが望ましい。吸収塔10に供給されるガスGについても、必要に応じてガス冷却用前処理を施して適正な温度に調整するとよい。吸収液として、二酸化炭素に親和性を有する化合物を吸収剤として含有する水性液が用いられる。吸収剤としては、アルカノールアミン類やアルコール性水酸基を有するヒンダードアミン類などが挙げられ、具体的には、アルカノールアミンとして、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジグリコールアミン等を例示することができ、アルコール性水酸基を有するヒンダードアミンとしては、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、2−(エチルアミノ)エタノール(EAE)、2−(メチルアミノ)エタノール(MAE)等を例示できる。通常、モノエタノールアミン(MEA)の使用が好まれる。吸収液の吸収剤濃度は、処理対象とするガスに含まれる二酸化炭素量や処理速度等に応じて適宜設定することができ、吸収液の流動性や消耗損失抑制などの点を考慮すると、概して、10〜50質量%程度の濃度が適用され、例えば、二酸化炭素含有量20%程度のガスGの処理に対して、濃度30質量%程度の吸収液が好適に使用される。ガスG及び吸収液の供給速度は、ガスに含まれる二酸化炭素量及び気液接触効率等に応じて、吸収が充分に進行するように適宜設定される。
【0026】
二酸化炭素を吸収した吸収液A1は、再生塔20に供給されると、沸点近辺の高温度に加熱されるが、再生塔20に供給される前に熱交換器24において、再生塔20から還流する吸収液A2と熱交換されるので、吸収液A1は、再生塔20での加熱温度に近い温度に昇温されて二酸化炭素が放出され易い状態で再生塔20に投入される。更に、充填材21上での気液接触によって二酸化炭素の放出が促進されると共に、再生塔20底部の加熱によって更に昇温及び二酸化炭素の放出が進行する。再生塔20底部に貯留される吸収液A2は、部分循環加熱によって二酸化炭素を充分に放出し、再生される。吸収液A2の沸点は組成(吸収剤濃度)に依存するので、液温の上限は使用する吸収液によって異なる。
【0027】
吸収液は、吸収塔10と再生塔20との間で循環し、吸収工程と再生工程とが交互に繰り返され、再生塔20から還流する吸収液A2は、熱交換器24において低温の吸収液A1と熱交換されるので、吸収塔10の温度近くまで降温され、更に、冷却器25において冷却水で充分に冷却されて二酸化炭素を吸収し易い状態で吸収塔10に投入される。
【0028】
再生塔20において、吸収液から放出される二酸化炭素を含んだ回収ガスは水蒸気を含み、その温度は、概して80〜120℃程度となる。これを直接圧縮すると、ガス温度が上昇し、熱回収工程において、回収ガスに含まれる水蒸気が凝縮して水の凝縮熱も放出する。水蒸気の凝縮は、最初の圧縮行程後において最も容易であり、多段階の圧縮では後段になるに従って高圧が必要となり、熱回収効率は低下する。効率的に熱回収するには、圧縮後の温度が120〜500℃程度(吸収液の沸点より5℃程度高い温度)となるように圧力を調節すると好ましく、回収ガスに含まれる水蒸気量によっても異なるが、概して、1段目の圧縮工程による圧力は、0.3〜1.0MPa程度、2段目の圧縮行程では0.5〜1.5MPa程度、3段目の圧縮行程では1.0〜2.0MPa程度に設定すると好ましい。
【0029】
圧縮によって発生する圧縮熱及び水の凝縮熱は、熱交換器31,33における熱交換によって、再生塔20から分流される一部の吸収液A2に回収され、再生塔20に還流されて再生塔20の吸収液に供給される。これにより、再生塔20での吸収液A2の加熱に要するスチームヒーター22の熱エネルギーが削減できる。熱回収工程後の回収ガスから凝縮し気液分離器35において分離した凝縮水は、再生塔20に戻される。
【0030】
図2は、本発明の二酸化炭素の回収方法及びそれを実施する回収装置の第2の実施形態を示す。この回収装置2は、圧縮後の回収ガスと熱交換する吸収液の流路が第1の実施形態とは異なり、回収される熱の一部が、吸収塔10から再生塔20に投入される前の吸収液A1に供給される。
【0031】
詳細には、吸収塔10から送出されて熱交換器24を経た後の吸収液A1は、直接再生塔20に供給されるのではなく、流路27’を通って熱交換器31aにおける熱交換を経た後に再生塔20へ供給されるように構成されている。従って、再生塔20から排出される回収ガスから回収される熱のうち、1段目の圧縮器30での圧縮後に回収される熱は、再生塔20に投入される前の吸収液A1に供給され、2段目の圧縮器32での圧縮後に回収される熱は、再生塔20底部から循環する吸収液A2に供給される。或いは、再生塔20へ供給される前の吸収液A1を熱交換器33aにおいて熱交換し、再生塔20底部から循環する吸収液A2を熱交換器31aにおいて熱交換するように変更してもよい。この実施形態では、熱交換器33aを経て循環する吸収液A2をスチームヒーター22を介して還流するように構成しているが、図1の回収装置と同様に再生塔20に直接供給してもよい。更に、気液分離器35によって分離される凝縮水を、再生塔20から吸収塔10へ還流する吸収液A2に供給するように変更してもよい。
【0032】
図2の回収装置2における熱回収工程では、吸収工程後の吸収液A1を再生工程に供給する前に、圧縮された回収ガスと熱交換しており、この形態は、熱交換器24における熱交換を補う必要がある場合に有用である。
【0033】
図2の実施形態において、上記の点以外は、図1の実施形態と同様に構成されているので、説明は省略する。
【0034】
図3は、本発明の二酸化炭素の回収方法及びそれを実施する回収装置の第3の実施形態を示す。この回収装置3は、図1の回収装置1における1段目の圧縮器30及び熱交換器31と2段目の圧縮器32及び熱交換器33との間に気液分離器37を設けて、回収ガスの熱交換を経る度に凝縮水を分離する様に構成しており、2段目の圧縮器32の効率が向上すると共に、水及び吸収剤の回収効率が向上し、再生塔20外への放出防止の確度が高くなる。従って、吸収液からの水等の気化が激しい場合に有効な形態である。分離した凝縮水は、再生後の吸収液A2に供給するように構成している。つまり、凝縮器37,35によって分離された凝縮水は、供給路41’を通して圧力調整弁又は膨張器36によって圧力を適正に調整した後に、再生塔20から吸収塔10へ還流する吸収液に供給し、吸収塔10へ供給する吸収液の組成変動の補整に用いる。膨張器36を経た凝縮水の温度降下は、還流する吸収液の冷却にも有効である。或いは、図1,2と同様に、分離した凝縮水を再生塔20に供給するように変更してもよい。又、回収ガスから熱を回収する熱回収システムにおいて、再生塔20底部から循環する吸収液A2の流れが熱交換器33から熱交換器31へ向かうように直列に構成したり、熱交換後の吸収液をスチームヒーター22を介して再生塔20に還流するように構成してもよい。図2の回収装置のように変更して、熱交換器31,33において回収される熱を、再生塔20に投入する前の吸収液A1と、再生塔20底部から循環する吸収液A2とに各々供給することも可能である。
【0035】
図3の回収装置においても、上記の点以外は、図1の装置と同様に構成されているので、説明は省略する。
【0036】
吸収液は、吸収工程と再生工程との間で循環して吸収工程と再生工程とが交互に繰り返されるが、吸収液の水は再生工程における加熱によって気化し、吸収剤も伴う場合もあるので、変動する吸収液の組成を補整するために、回収ガスから分離回収される水が使用される。図3においては、再生工程を経て吸収工程へ還流する前の吸収液に回収した凝縮水を供給しており、図1の再生塔20へ供給する形態との何れを採用するかは、再生塔20内の吸収液の組成変動の程度や回収凝縮水の量及び液温を考慮して適宜選択すればよく、吸収剤の消耗・漏洩等によって吸収剤の追加が必要な場合には、図3の形態に従って、吸収工程へ還流する前の吸収液に供給する凝縮水に添加して組成を調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、火力発電所や製鉄所、ボイラーなどの設備から排出される二酸化炭素含有ガスの処理等において利用して、その二酸化炭素放出量や、環境に与える影響などの軽減に有用である。二酸化炭素の回収処理に要する費用が削減され、省エネルギー及び環境保護に貢献可能な二酸化炭素の回収装置を提供できる。
【符号の説明】
【0038】
10:吸収塔、 20:再生塔、
11,21:充填材、 12,23:ポンプ、 22:スチームヒーター、
24,31,31a,33,33a:熱交換器、
25,34:冷却器、 26:凝縮部、27,27’、28:流路、
30,32:圧縮器、 35,37:気液分離器、 36:膨張器
40:循環路、 41,41’:供給路、
G、G’:ガス、 A1,A2:吸収液、 C:回収二酸化炭素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含有するガスを吸収液に接触させて、前記吸収液に二酸化炭素を吸収させる吸収塔と、
前記吸収塔で二酸化炭素を吸収した前記吸収液を加熱して二酸化炭素を前記吸収液から放出させて吸収液を再生する再生塔と、
前記再生塔から排出される水蒸気及び二酸化炭素を含んだ回収ガスをそのまま圧縮する圧縮器と、
前記圧縮によって発生する熱を回収して前記再生塔へ供給する熱回収システムとを有する二酸化炭素の回収装置。
【請求項2】
前記圧縮器は、前記再生塔に直接接続され、前記圧縮器の圧縮によって、ガス圧縮熱及び水の凝縮熱を回収する請求項1記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項3】
前記熱回収システムは、前記再生塔の吸収液を分流して再生塔外との間を循環させる循環路と、前記圧縮器によって圧縮した回収ガスと前記循環路の吸収液との間で熱交換を行う熱交換器とを有する請求項1又は2に記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項4】
前記吸収塔から前記再生塔に吸収液を供給する供給路を有し、前記熱回収システムは、前記圧縮器によって圧縮した回収ガスと、前記供給路の吸収液との間で熱交換を行う熱交換器を有する請求項1又は2に記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項5】
更に、前記熱回収システムによって熱回収された回収ガスから凝縮した水を分離する気液分離器を有する請求項1〜4の何れかに記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項6】
更に、前記気液分離器において分離した水を、前記再生塔に供給する供給路を有する請求項5記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項7】
更に、前記再生塔によって再生された吸収液を前記吸収塔に還流する還流路と、前記気液分離器において分離した水を前記還流路の吸収液に供給する供給路とを有する請求項5記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項8】
二酸化炭素を含有するガスを吸収液に接触させて、前記吸収液に二酸化炭素を吸収させる吸収工程と、
二酸化炭素を吸収した前記吸収液を加熱して二酸化炭素を前記吸収液から放出させて吸収液を再生する再生工程と、
前記吸収液から放出される水蒸気及び二酸化炭素を含んだ回収ガスをそのまま圧縮する圧縮工程と、
前記圧縮によって発生する熱を回収して前記再生工程へ供給する熱回収工程とを有する二酸化炭素の回収方法。
【請求項9】
前記熱回収工程において回収される熱は、ガス圧縮熱及び水の凝縮熱を含む請求項8記載の二酸化炭素の回収方法。
【請求項10】
前記熱回収工程は、前記再生工程における吸収液の一部を分流し、前記圧縮行程によって圧縮された回収ガスと熱交換して前記再生工程に還流する工程を有する請求項8又は9記載の二酸化炭素の回収方法。
【請求項11】
前記熱回収工程は、前記吸収工程後の吸収液を、前記再生工程に供給する前に、前記圧縮行程によって圧縮された回収ガスと熱交換する工程を有する請求項8又は9記載の二酸化炭素の回収方法。
【請求項12】
更に、前記熱回収工程後の回収ガスから凝縮した水を分離する分離工程を有する請求項8〜11の何れかに記載の二酸化炭素の回収方法。
【請求項13】
更に、前記分離工程において分離した水を、前記再生工程に供給する工程を有する請求項12記載の二酸化炭素の回収方法。
【請求項14】
前記吸収液を、前記吸収工程と前記再生工程との間で循環させて、前記吸収工程と前記再生工程とを交互に繰り返し、
更に、前記分離工程において分離した水を、前記再生工程後に前記吸収工程へ還流する前の吸収液に供給する工程を有する請求項12記載の二酸化炭素の回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−538(P2012−538A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135406(P2010−135406)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】