説明

二酸化炭素の還元方法および還元力供与システム

【課題】 大気中の二酸化炭素や燃焼排ガス中の二酸化炭素を資源として有効利用するため、水と二酸化炭素から、ホルムアルデヒドなどの有用な有機化合物を生成する方法を提供する。あるいは植物が行う光合成の明反応類似の効果を発現するシステムを提案する。
【解決手段】 水蒸気と二酸化炭素を含む混合気体中に、酸化能力に優れる光触媒と還元能力に優れる光触媒からなる一体化物を電気伝導性物質上に散布した構成体を配置し、一体化物に紫外光を照射する。酸化性能に優れる光触媒が、二酸化チタンと(酸化第二鉄及び酸化コバルトの少なくとも一種からなる金属酸化物)の一体化物であり、還元性能に優れる光触媒が、二酸化チタンとアルカリ金属化合物との複合体または、(二酸化チタンや二酸化チタンとアルカリ金属化合物との複合体)に白金を担持したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒を用いることにより紫外線照射の下で水と二酸化炭素からホルムアルデヒド等の有用な有機化合物を常温で生成する技術に関する。さらに、植物が行う光合成の明反応類似の作用を実現する還元力供与体(つまり電子供与体)の技術にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気中の二酸化炭素濃度の増加により大気の温暖化が進み、異常気象が頻発して地球規模での大きな社会問題になっている。そこで、排気ガス中の二酸化炭素を回収処理する研究が行なわれており、また。この二酸化炭素を資源として有用な有機化合物に変換する研究が行われている。
【0003】
それらの中で、光触媒を用いて二酸化炭素分子を構成する炭素を低分子量有機物として固定化する試みは1970年代の後半にすでに報告されていたが有機化合物の生成効率が低く、実用には至っていなかった。近年、光触媒と二酸化炭素還元触媒を複合化して二酸化炭素と水を原料として太陽光の照射下でメタノールを含む低分子量の有機化合物を製造する提案がなされている。(特許文献1および2参照)
【0004】
しかし特許文献1、2共に、光触媒にて水から水素イオンを生成し、二酸化炭素を供給して二酸化炭素還元触媒の作用によりメタノール等の有機化合物を生成させる技術であり、二酸化炭素還元触媒を有効に機能させるためには、二酸化炭素還元触媒の近傍を比較的高温の環境にする必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開2003−275599号公報(第1〜6頁)
【特許文献2】 特開2004−59507号公報(第1〜7頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は光触媒を用いて、水と大気中および排気ガス中の二酸化酸素から、ホルムアルデヒド等の有用な有機化合物(主に炭素1分子からなるC1化合物)を常温で生成するための方法を提供することを目的とするものである。また、緑色植物が行っている光合成反応のうちの明反応類似の作用を光触媒によって実現する還元力供与体(つまり電子供与体)を提供することを目指すものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
光触媒は、その物質特有のバンドギャップエネルギーに相当する波長よりも短波長(高エネルギー)の光を受けると、価電子帯の電子が伝導帯へ励起され還元能を有する電子が生成し、価電子帯には高い酸化能を有する正孔が生じる。光照射で生成する電子と正孔は通常は大部分が再結合して熱として失活するが、一部は拡散し表面に達し、酸化反応や還元反応を起こす。
【0008】
光触媒を用いて水と二酸化炭素からホルムアルデヒド等の有用な低分子有機化合物を生成する場合には、光触媒がまず水分子に作用して、水素イオン(H)と水酸化物イオン(OH)を生成し、次いで2個の水素イオンが二酸化炭素に結合してホルムアルデヒドを生成すると思われる。水酸化物イオンを構成する−2価の酸素は正孔の強い酸化作用により容易に酸素分子(O)が生成すると予想されるが、特に気相の場合には酸素分子は容易に生成せず、水酸化物イオンが残留するために新たな水分子の分解が進まない。また光触媒作用によって生成した電子と正孔のうち、電子が還元反応により消費された後に残った正孔を電気的に消去する工程が無いため正孔が過多になり、引き続いて起こる光触媒作用により生成した電子が残っている正孔と再結合して消滅してしまい電子の供給(還元作用)が顕著に減少してしまう。
【0009】
緑色植物は、色素とタンパク質の複合体が可視光を吸収して励起電子と正孔が生成すると直ちに電子を移動させて電荷分離を行い、同時にマンガン化合物の触媒作用により水酸化イオンを酸化して酸素分子として放出することで水酸化物イオンと正孔を共に消費することによって連続して色素とタンパク質の複合体が可視光を吸収して励起電子と正孔が生成することを可能にしている。さらに電子を再度光エネルギーにより励起してより高い還元能を与え適度な還元能を有する還元性化合物を生成(明反応)して次の工程である二酸化炭素の固定化(暗反応)に利用している。
【0010】
そこで本発明者は、すでに出願している酸化能に優れる光触媒(特開2009−006322および特開2009−006323)と新たに考案した還元能に優れる光触媒を一体化し高い電気伝導性を有する板状体上に散布する形態の複合構成体を考案し、水が分解して生成する水酸化イオンを酸化能に優れる光触媒により酸化して消費し、同時に還元能に優れる光触媒によって近傍にある物質に電子を供給して還元するシステムを発案し、この複合構成体が二酸化炭素を還元してホルムアルデヒドを生成することを確認して本発明を完成するに至った。
【0011】
つまり、本発明は、以下の内容をその要旨とするものである。
(1)水蒸気と二酸化炭素を含む混合気体中に、
酸化能力に優れる光触媒と還元能力に優れる光触媒からなる一体化物を電気伝導性物質上に散布した構成体を配置し、
一体化物に紫外光を照射して、
有機化合物を生成させることを特徴とする二酸化炭素の還元方法。
(2)酸化性能に優れる光触媒が、二酸化チタンと(酸化第二鉄及び酸化コバルトの少なくとも一種からなる金属酸化物)の一体化物である(1)に記載の二酸化炭素の還元方法。
(3)還元性能に優れる光触媒が、二酸化チタンとアルカリ金属化合物との複合体であることを特徴とする(1)に記載の二酸化炭素の還元方法。
(4)還元性能に優れる光触媒が、二酸化チタンに白金を担持したものであることを特徴とする(1)に記載の二酸化炭素の還元方法。
(5)還元性能に優れる光触媒が、二酸化チタンとアルカリ金属化合物との複合体に白金を担持したものであることを特徴とする(1)に記載の二酸化炭素の還元方法。
(6)電気伝導性の板が、銅板である(1)に記載の二酸化炭素の還元方法。
(7)二酸化チタンがアナターゼ型であることを特徴とする(1)〜(5)に記載の二酸化炭素の還元方法。
(8)水蒸気を含む気体中に、酸化能力に優れる光触媒と還元能力に優れる光触媒からなる一体化物を電気伝導性物質上に散布した構成体を配置し、一体化物に紫外光を照射することを特徴とする還元力供与システム
である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の二酸化炭素の還元方法を用いることにより、紫外光や太陽光の照射により、水と二酸化炭素を原料として、ホルムアルデヒド等の有用な低分子量の有機化合物を生成することが可能となる。ホルムアルデヒドは、より付加価値の高い有機化合物の原料となる。
【0013】
また、本発明によって発現する還元力(すなわち電子供与能)は、植物が行う光合成の明反応と類似の作用あるいはより高い還元エネルギーの供与作用によって強力な還元作用を提供することができる。
【0014】
被還元剤として二酸化炭素を選択する場合は、空気中に微量に含まれる二酸化炭素でもよいし、二酸化炭素をより多く含む燃焼排ガスでも良いので、近年注目されている二酸化炭素の排出量削減ならびに再資源化となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、水蒸気と二酸化炭素を含む混合気体中に、酸化能力に優れる光触媒と還元能力に優れる光触媒からなる一体化物を電気伝導性物質上に散布した構成体を配置し、一体化物に紫外光を含む光を照射する。
【0016】
例えば、光が透過する袋状、箱状または管状容器の底部に、酸化能力に優れる光触媒と還元能力に優れる光触媒からなる一体化物を電気伝導性の板または箔上に散布した構成体を配置し、二酸化炭素ガスと水蒸気を含む混合気体を容器内に導入し、上部から紫外光を含む光を照射すれば良い。光源は容器の外側でも良いし、内部に設置しても良い。混合気体は一定時間ごとに交換しても良いし連続で流しても良い。
【0017】
本発明に用いる二酸化チタンとしては粒径の小さなものほど表面積が大きいので好ましいが粒状であれば市販の材料でも良い。二酸化チタンを用いる場合は、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型を用いる事が出来るがアナターゼ型が特に好ましい。粒径は小さいほど単位重量当たりの表面積が大きくなるので好ましく、100nm以下が好ましく特に10nm以下が好ましい。
【0018】
酸化能力に優れる光触媒としては、本発明者が先に提案(特開2009−006322および特開2009−006323)した二酸化チタンと酸化第二鉄および/または酸化コバルトとの一体化物が好ましい。ここで酸化第二鉄および酸化コバルトの少なくとも一種の配合量は、二酸化チタン100重量部に対し3〜75重量部が好ましく、特に10〜60重量部が好ましい。ここで一体化とは、二酸化チタン、酸化第二鉄および酸化コバルトが化学反応しない状態で接合した状態を言う。
【0019】
還元能力に優れる光触媒としては、市販の二酸化チタンを用いてもよいが、二酸化チタンとアルカリ性金属化合物との複合体が好ましく特に二酸化チタンと水酸化カリウムの複合体が好ましい。
ここでアルカリ性金属化合物の配合量は、二酸化チタンに対し2〜20モル%が好ましく、特に4〜10モル%が好ましい。
ここで複合体とは、二酸化チタンにアルカリ性金属化合物の水溶液を含浸、乾燥、焼成したものを言う。
【0020】
さらに本発明の還元能力に優れる光触媒に、還元能の増大のために一般的に用いられる白金担持をしても良い。白金触媒の担持方法としては水溶性白金化合物を溶解した水溶液中に二酸化チタンや二酸化チタン複合体を分散させ、紫外光を照射して二酸化チタンや二酸化チタン複合体表面に白金を沈殿させる光デポジション法が好適である。
【0021】
次に、本発明の構成成分である、酸化能力に優れる光触媒と還元性能に優れる光触媒の調製方法について述べる。
【0022】
まず、酸化能力に優れる光触媒の調製方法は、乳鉢に二酸化チタンと酸化第二鉄および/または酸化コバルトを取り、混合するか、さらに700℃以下で焼成、粉砕すればよい。混合する場合には、乳鉢で混合しても良いし、各種のボールミルで摩砕・接合しても良い。
【0023】
還元能力に優れる光触媒としては、微粒子アナターゼ型二酸化チタンをそのまま用いても良いし、微粒子アナターゼ型二酸化チタンに白金を光デポジション法によって担持したものを用いても良い。また、二酸化チタンに水溶性アルカリ化合物を含浸、乾燥、焼成し粉砕したもの(二酸化チタン・アルカリ化合物複合体)を用いても良いし、二酸化チタン・アルカリ化合物複合体に白金を光デポジション法によって担持したものを用いても良い。
【0024】
二酸化チタン・アルカリ化合物複合体の調製方法は、二酸化チタンに水溶性アルカリ化合物の水溶液を含浸し、80〜120℃で乾燥したのち300〜700℃で焼成し粉砕すれば良い。
【0025】
本発明においては、酸化能力に優れる光触媒と還元能力に優れる光触媒を一体化して用いるが、一体化は両者がほぼ均一に混合され化学結合のない状態で接合していれば良く、乳鉢で軽くすりつぶす程度でよい。
【0026】
酸化能力に優れる光触媒と還元能力に優れる光触媒の混合比率は、重量比で2/8から8/2が好ましい。
【0027】
次いで、上記の酸化能力に優れる光触媒と還元能力に優れる光触媒の一体化物を、電気伝導性物質(例えば銅板)上に散布するが、散布方法は、単に上部から電気伝導性物質上に平面的に均一に落下させてもよく、落下させた後に金属板やプラスチック板で軽くこすってさらに均一に分布させても良い。
【0028】
さらに、本発明の他の構成成分について述べる。
【0029】
本発明に使用する水は、純水、ミネラルウォーターを含む天然水、水道水、工業用水等を用いる事ができる。
【0030】
本発明に使用する二酸化炭素は、大気中の二酸化炭素、燃焼排ガス中の二酸化炭素等を用いる事ができる。燃焼排ガス中の二酸化炭素濃度は、大気中の二酸化炭素濃度よりも格段に高いので、光触媒との接触頻度が増して有用な有機物の生成に有利である。なお、実施例においてはドライアイスを用いて二酸化炭素濃度を調製した。
【0031】
本発明に使用する電気伝導性物質は、電気伝導度の高い物質なら種類を選ばないが、銅やアルミニウムなどの金属の板状または箔状のものが好ましく、特に銅板が好ましい。
【0032】
本発明に使用する紫外線を含む光源は、紫外線ランプ、ブラックライト等の紫外線を含む光源でも良いし、太陽光でも良い。
【0033】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。また、実施例中の「%」および「部」は特に別途注記しない限り重量基準である。
【実施例1】
【0034】
1.1 本発明の酸化能力に優れる光触媒と還元能力に優れる光触媒からなる一体化物の調整
1.1.1 酸化能力に優れる光触媒の調製
乳鉢にテイカ株式会社製アナターゼ型の結晶構造を有する白色の二酸化チタンAMT−100(粒径6nm 比表面積260m/g)の3.0gと株式会社クサカベ製の酸化第二鉄の3.0gを取り混合したものを、アルミナルツボに入れ600℃3時間焼成し冷却後粉砕して二酸化チタン/酸化第二鉄が重量比で5/5の一体化物を調製した。
1.1.2 還元能力に優れる光触媒の調製
内径93mmのガラス製シャーレにテイカ株式会社製アナターゼ型の結晶構造を有する白色の二酸化チタンAMT−100の1.0gを取り、純水30mlを加えて攪拌し1%塩化白金酸水溶液0.3mgを加えて攪拌し、試薬特級エタノール0.1gを加えて攪拌し20Wブラックライト直下10cmに置きブラックライトを20時間照射した後、120℃1時間乾燥して、白金担持二酸化チタンを調製した。
1.1.3 本発明の一体化物の調製および試験体の作成
内径68mmのガラス製シャーレに銅板を敷き1.1.1で得られた酸化能力に優れる光触媒と1.1.2で得られた還元能力に優れる光触媒を乳鉢に3:7の比率で計0.3g取り軽くかき混ぜたもののうちの0.2gを銅板上に散布してガスバリア袋(大倉工業株式会社製、OE−4)に入れ、別のガラス製シャーレに濾紙を敷き純水0.5gを滴下して同じガスバリア袋に入れ、さらに別のシャーレにドライアイス0.2gを入れて同じガスバリア袋に入れすばやく入り口を熱シールする。ガスバリア袋に1cm角のウレタンテープを貼り、袋内の空気が約1000mlになるように注射器で空気を注入する。このガスバリア袋をブラックライト(東芝ライテック社製ブラックライト蛍光ランプ FL20S−BLB−A(20W))直下10cmの位置に設置し、ブラックライトを1時間照射する。照射後、袋内のホルムアルデヒドガス濃度を北川式ガス検知管No171SAを用いて測定し、光触媒1gで1時間照射あたりのホルムアルデヒドガスのμmol数を算出(ガス濃度(ppm)×1000ml/(光触媒重量(g)×22400))した。ガスバリア袋の周囲の温度は約20℃であり、測定結果は表1の通りであった。
【実施例2】
【0035】
2.1 本発明の酸化能力に優れる光触媒と還元能力に優れる光触媒からなる一体化物(以下本発明の一体化物と記す)の調整
2.1.1 酸化能力に優れる光触媒の調製
乳鉢にテイカ株式会社製アナターゼ型の結晶構造を有する白色の二酸化チタンAMT−100の3.0gと株式会社クサカベ製の酸化第二鉄の3.0gを取り混合し、二酸化チタン/酸化第二鉄が重量比で5/5の一体化物を調製した。
2.1.2 還元能力に優れる光触媒の調製
ステンレスボールに、テイカ株式会社製アナターゼ型の結晶構造を有する白色の二酸化チタンAMT−100の10.0gと10%水酸化カリウム水溶液5.61g(二酸化チタンに対して水酸化カリウムが8mol%)を取り良くかき混ぜて120℃1時間乾燥し、アルミナルツボに移しマッフル炉で650℃3時間加熱し、冷却後軽く粉砕する。
次いで、内径93mmのガラス製シャーレに粉砕物の1.0gを取り、純水30mlを加えて攪拌し1%塩化白金酸水溶液0.3mgを加えて攪拌し、試薬特級エタノール0.1gを加えて攪拌し20Wブラックライト直下10cmに置きブラックライトを20時間照射した後、120℃1時間乾燥して、白金担持二酸化チタン・水酸化カリウム複合体を調製した。
2.1.3 本発明の一体化物の調製および試験体の作成
内径68mmのガラス製シャーレに銅板を敷き2.1.1で得られた酸化能力に優れる光触媒と2.1.2で得られた還元能力に優れる光触媒を乳鉢に3:7の比率で計0.3g取り軽くかき混ぜたもののうちの0.2gを銅板上に散布してガスバリア袋に入れ、別のガラス製シャーレに濾紙を敷き純水0.5gを滴下して同じガスバリア袋に入れ、さらに別のシャーレにドライアイス0.2gを入れて同じバリア袋に入れすばやく入り口を熱シールする。ガスバリア袋に1cm角のウレタンテープを貼り、袋内の空気が約1000mlになるように注射器で空気を注入する。このガスバリア袋を20Wブラックライト直下10cmの位置に設置し、ブラックライトを1時間照射する。照射後、袋内のホルムアルデヒドガス濃度を北川式ガス検知管No171SAを用いて測定し、光触媒1gで1時間照射あたりのホルムアルデヒドガスのμmol数を算出した。ガスバリア袋の周囲の温度は約20℃であり、測定結果は表1の通りであった。
【実施例3】
【0036】
3.1.1 酸化能力に優れる光触媒の調製
乳鉢にテイカ株式会社製アナターゼ型の結晶構造を有する白色の二酸化チタンAMT−100の3.0gと株式会社クサカベ製の酸化第二鉄の1.5gと関東化学製試薬1級の酸化コバルトの1.5gを取って混合し、二酸化チタン/酸化第二鉄/酸化コバルトが重量比で5/2.5/2.5の一体化物を調製した。
3.1.2 還元能力に優れる光触媒の調製
実施例2で調製した、白金担持二酸化チタン・水酸化カリウム複合体を用いた。
3.1.3 本発明の一体化物の調製および試験体の作成
内径68mmのガラス製シャーレに銅板を敷き3.1.1で得られた酸化能力に優れる光触媒と2.1.2で得られた還元能力に優れる光触媒を乳鉢に3:7の比率で計0.3g取り軽くかき混ぜたもののうちの0.2gを銅板上に散布してガスバリア袋に入れ、別のガラス製シャーレに濾紙を敷き純水0.5gを滴下して同じガスバリア袋に入れ、さらに別のシャーレにドライアイス0.2gを入れて同じガスバリア袋に入れすばやく入り口を熱シールする。ガスバリア袋に1cm角のウレタンテープを貼り、袋内の空気が約1000mlになるように注射器で空気を注入する。このガスバリア袋を20Wブラックライト直下10cmの位置に設置し、ブラックライトを1時間照射する。照射後、袋内のホルムアルデヒドガス濃度を北川式ガス検知管No171SAを用いて測定し、光触媒1gで1時間照射あたりのホルムアルデヒドガスのμmol数を算出した。ガスバリア袋の周囲の温度は約20℃であり、測定結果は表1の通りであった。
【比較例1】
【0037】
内径56mmのガラス製シャーレにテイカ株式会社製アナターゼ型の結晶構造を有する白色の二酸化チタンAMT−100の0.2gを散布し、ガスバリア袋に入れ、別のガラス製シャーレに濾紙を敷き純水0.5gを滴下して同じガスバリア袋に入れ入り口を熱シールする。ガスバリア袋に1cm角のウレタンテープを貼り、袋内の空気が約1000mlになるように注射器で空気を注入する。このガスバリア袋を20Wブラックライト直下10cmの位置に設置し、ブラックライトを1時間照射する。照射後、袋内のホルムアルデヒドガス濃度を北川式ガス検知管No171SAを用いて測定したところ検出されなかった。
【0038】
【表1】

【0039】
<実施例1〜3と比較例1の比較>
本発明の実施例1〜3では明らかにホルムアルデヒドガスの生成が認められるのに対して、比較例1(光触媒のみ使用)ではホルムアルデヒドガスが検出されないので、本発明の方法によって二酸化炭素が還元されてホルムアルデヒドが生成したことがわかる。また、本発明のシステムは、二酸化炭素を還元するほどの還元力を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の方法を用いることにより紫外線や紫外線を含む太陽光の照射の下で水と二酸化炭素からホルムアルデヒド等の有用な有機化合物が常温で生成するので、大気中や燃焼排ガス中の二酸化炭素が化学工業資源となりうる。あるいは、本発明のシステムによって得られる還元力を利用して、植物が行う光合成の明反応類似の作用を実現し、人工的な光合成による大気中二酸化炭素の固定化の可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気と二酸化炭素を含む混合気体中に、
酸化能力に優れる光触媒と還元能力に優れる光触媒からなる一体化物を電気伝導性物質上に散布した構成体を配置し、
一体化物に紫外光を照射して、
有機化合物を生成させることを特徴とする二酸化炭素の還元方法
【請求項2】
酸化性能に優れる光触媒が、二酸化チタンと(酸化第二鉄及び酸化コバルトの少なくとも一種からなる金属酸化物)の一体化物である請求項1に記載の二酸化炭素の還元方法
【請求項3】
還元性能に優れる光触媒が、二酸化チタンとアルカリ金属化合物との複合体であることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素の還元方法
【請求項4】
還元性能に優れる光触媒が、二酸化チタンに白金を担持したものであることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素の還元方法
【請求項5】
還元性能に優れる光触媒が、二酸化チタンとアルカリ金属化合物との複合体に白金を担持したものであることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素の還元方法
【請求項6】
電気伝導性の板が、銅板である請求項1に記載の二酸化炭素の還元方法
【請求項7】
二酸化チタンがアナターゼ型であることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素の還元方法
【請求項8】
水蒸気を含む気体中に、
酸化能力に優れる光触媒と還元能力に優れる光触媒からなる一体化物を電気伝導性物質上に散布した構成体を配置し、
一体化物に紫外光を照射することを特徴とする還元力供与システム

【公開番号】特開2009−275033(P2009−275033A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2009−77467(P2009−77467)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(505393614)
【Fターム(参考)】