説明

二酸化炭素濃度制御方法及び換気制御システム

【課題】 閉鎖環境における二酸化炭素濃度の上昇を抑制して、換気量を抑制する。
【解決手段】 二酸化炭素固定能力を増大させた植物を、二酸化炭素発生源が存在する閉鎖空間に備え、該閉鎖空間内の二酸化炭素濃度をモニタリングして得た測定値が既定値を超えた際に、二酸化炭素濃度を既定値以下になるまで閉鎖空間外の大気と閉鎖空間内の大気とを循環させることを特徴とする、当該閉鎖空間における二酸化炭素濃度制御方法及び二酸化炭素濃度制御システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素固定手段を用いた閉鎖空間の二酸化炭素濃度制御方法及び換気制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年地球環境の破壊が進み、地球温暖化が懸念されている。地球温暖化の原因の一つである化石燃料の燃焼時に生ずる二酸化炭素の排出量を制限すべく、京都議定書が制定され、2008年から二酸化炭素の排出の規制が一層厳しいものとなる。
一方、現在の日本においては、ビルなどの密閉空間においては、二酸化炭素と一酸化炭素の大気中での濃度に応じて、換気を義務づけられている。夏期や冬季の換気は、冷暖房効率に極めて大きな影響を及ぼしており、その換気による消費電力を二酸化炭素排出量に換算すると、ビル衛生管理法に対象最低面積と定められている3000m2のオフィスビル1棟において、夏季1日あたりであっても0.37tが換気の熱交換を行うために、大気中に放出されていると試算される。効率良い換気を実現するために、熱交換効率の優れた換気装置や熱交換機、熱回収システムなども開発されてきた(特許文献1〜3など)。
しかし、換気そのものの回数を減少するためのシステムが開発されていないため、大幅な使用エネルギーの低減に伴う二酸化炭素排出量低減には寄与していない。
【0003】
【特許文献1】特開2003−148892
【特許文献2】特開2003−247763
【特許文献3】特開2004−69239
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
閉鎖空間の換気回数を減少させる手段の開発が遅れており、その結果、換気を行うことに必要とされるエネルギー浪費の削減が行えないこととなっており、換気回数自体を減少させる手段、システムの開発が大いに期待されていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意検討を行った結果、驚くべきことに二酸化炭素固定能力を増強させた植物を用いることで、閉鎖空間の大気中二酸化炭素濃度を制御することが可能であることを見いだし、さらにこのような植物を用いることで、閉鎖空間に義務づけられる換気回数を大幅に低減させることに成功し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0006】
(1)二酸化炭素固定能力を増大させた植物を、二酸化炭素発生源が存在する閉鎖空間に備えることを特徴とする、当該閉鎖空間における二酸化炭素濃度制御方法。
(2)植物が組換遺伝子を含むことを特徴とする(1)記載の二酸化炭素濃度制御方法。
(3)組換遺伝子が、熱ショックタンパク質、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ、セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼ、NADP−リンゴ酸酵素、ピルビン酸リン酸ジキナーゼ、カーボニックアンヒドラーゼ、及びピルビン酸リン酸ジキナーゼからなる群から選択される一以上の遺伝子であることを特徴とする請求項2記載の二酸化炭素濃度制御方法。
(4)植物が、リュウゼツラン科、サトイモ科、ヤシ科、ウコギ科、クワ科、ガガイモ科、キツネノマゴ科、キョウチクトウ科、クズウコン科、ヒノキ科、ミカン科、パンヤ科、タコノキ科、バショウ科、トウダイグサ科、モクセイ科、ツユクサ科、パイナップル科、ベンケイソウ科、リュウケツジュ科、ヤナギ科及びシダ植物からなる群から選択される一以上の植物であることを特徴とする(1)乃至(3)何れか記載の二酸化炭素濃度制御方法。
(5)閉鎖空間における二酸化炭素濃度の測定手段と、前期測定手段による前記閉鎖空間内における二酸化炭素濃度の測定値が既定値を超えた際に、当該規定値以下となるまで前記閉鎖空間内の大気と前記閉鎖空間外の大気とを入れ替える換気手段と、当該閉鎖空間内に設置された二酸化炭素固定手段とを含む、換気制御システム。
(6)二酸化炭素固定手段が、二酸化炭素固定手段を増強した植物であることを特徴とする(5)記載の換気制御システム。
(7)二酸化炭素固定能力を増大させた植物が、組換遺伝子を含むことを特徴とする(6)記載の換気制御システム。
(8)組換遺伝子が熱ショックタンパク質、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ、セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼ、シトクロムP450、NADP−リンゴ酸酵素、ピルビン酸リン酸ジキナーゼ、カーボニックアンヒドラーゼ、及びピルビン酸リン酸ジキナーゼからなる群から選択される一以上の遺伝子であることを特徴とする(7)記載の換気制御システム。
(9)植物が、リュウゼツラン科、サトイモ科、ヤシ科、ウコギ科、クワ科、ガガイモ科、キツネノマゴ科、キョウチクトウ科、クズウコン科、ヒノキ科、ミカン科、パンヤ科、タコノキ科、バショウ科、トウダイグサ科、モクセイ科、ツユクサ科、パイナップル科、ベンケイソウ科、リュウケツジュ科、ヤナギ科及びシダ植物からなる群から選択される一以上の植物であることを特徴とする(6)乃至(8)何れか記載の換気制御システム。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、閉鎖空間内の換気回数を大幅に減少させることができ、省エネルギー、二酸化炭素排出量の大幅削減に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、発明を実施するための最良の形態により本発明を詳説する。
(1)本発明制御方法
本発明制御方法は、二酸化炭素固定能力を増大させた植物を、二酸化炭素発生源が存在する閉鎖空間に備え、該閉鎖空間内の二酸化炭素濃度をモニタリングして得た測定値が既定値を超えた際に、二酸化炭素濃度を既定値以下になるまで閉鎖空間を換気することを特徴とする、当該閉鎖空間における二酸化炭素濃度制御方法である。
【0009】
本発明制御方法における「二酸化炭素固定能力」とは、大気中の二酸化炭素を有機物に固定する能力を指称し、例えば光合成による二酸化炭素と水を用いた糖への変換能力が好適には挙げられる。
【0010】
本発明制御方法における「二酸化炭素固定能力の増大」とは、何ら処置を施さない植物と比して、同一品種の植物において二酸化炭素固定能力が向上していることを指称する。かかる処置とは、例えば低周波による植物体の二酸化炭素固定能力の亢進(例えば特開2004−89031号等)、酸化チタンを用いた二酸化炭素固定能力の亢進(特開2003−335610号等)、光合成又は成長促進に関する酵素の遺伝子の導入(例えば特開2002−300821号、特表2001−515846等:更にC3植物に対して、C4植物の暗反応酵素を導入(特開2001−299118、特開平11−341928、WO98/35030等))が例示される。かかる処置の中でも、殊に光合成又は成長促進に関する遺伝子(熱ショックタンパク質、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ、セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼ、NADP−リンゴ酸酵素、ピルビン酸リン酸ジキナーゼ、カーボニックアンヒドラーゼ、及びピルビン酸リン酸ジキナーゼからなる群から選択される一以上の遺伝子)の導入が好ましい。かかる処置は、植物における二酸化炭素固定能力を増大させる限りにおいて特に限定はされない。
【0011】
このような処置を行う対照の植物は、特に限定はされないが、その中でも特にリュウゼツラン科、サトイモ科、ヤシ科、ウコギ科、クワ科、ガガイモ科、キツネノマゴ科、キョウチクトウ科、クズウコン科、ヒノキ科、ミカン科、パンヤ科、タコノキ科、バショウ科、トウダイグサ科、モクセイ科、ツユクサ科、パイナップル科、ベンケイソウ科、リュウケツジュ科、ヤナギ科及びシダ植物が好ましい。
【0012】
二酸化炭素固定能力が増大しているか否かは、例えば処置を施した植物と対照の植物とを、同条件で一定時間生育させ、葉の単位面積あたりの乾燥重量の増加率を比較することで確認することができる。本発明制御方法における二酸化炭素固定能力の増大とは、1000ルクスにおいて水が充分に存在する条件下で3時間生育させ、その後前述の方法により測定した乾燥重量の増加率が、対照と比して1.5倍以上、好ましくは1.8倍以上であり、2倍以上であることが最も好ましい。
【0013】
本発明制御方法における「二酸化炭素発生源」とは、例えば生物(特に動物、ヒト)、焼却炉等が挙げられる。また、閉鎖空間とは、必ずしも外気との流動がない空間である密閉空間及び大気が外気と連続してはいるが自由な流通が妨げられている空間の両者を包含する概念の空間である。すなわち、本発明制御方法における閉鎖空間とは、外気との大気の自由な流通が何らかの形で妨げられている空間である限りにおいて限定はされない。 すなわち、本発明制御方法における「二酸化炭素発生源が存在する閉鎖空間」とは常に二酸化炭素が発生している必要はなく、ビル、家屋、倉庫などの建造物におけるヒト・動物が居住する居室、家畜等の飼育小屋、焼却炉などを備えた焼却施設等が例示される。
【0014】
本発明制御方法における「モニタリング」とは、「継続的な測定を行うこと」を指称する。「継続的な測定」とは、必ずしも連続である必要はなく、例えば一定時間毎に定期的に測定を行う概念も包含する。この場合、定期的な測定はその密閉空間内における二酸化炭素濃度の増加率に応じて二酸化炭素濃度の測定間隔を変更して行うこともできる。例えば密閉空間内の二酸化炭素濃度と密閉空間外の二酸化炭素濃度との差が1ppm未満の際は30分ごとにモニタリングを行い、1ppm以上となった際に10分ごとのモニタリングに切り替える方法などが挙げられるが、かかるモニタリング間隔の調整も当業者であれば適当な間隔を適宜選択して行うことが可能である。
【0015】
本発明制御方法における二酸化炭素濃度のモニタリングは、大気中の二酸化炭素濃度を定量することができる手段である限りにおいて特に限定はされないが、例えば既存の二酸化炭素濃度測定装置と同様、二酸化炭素の拡散原理を用いたパッシブサンプラー等を用いることが可能である。
【0016】
本発明制御方法における「二酸化炭素濃度の規定値」とは、300ppm〜2000ppm程度の値で設定することが好ましく、更に350ppm〜1600ppmが好ましくはあげられるが、必ずしもこの数値範囲に限定はされない。当業者であれば、かかる規定値は適宜設定することが可能である。
【0017】
本発明制御方法における「換気」とは、空気を入れ替えることを意味する。従って、必ずしも密閉空間から密閉空間外に排気した大気(二酸化炭素濃度の高い大気)に対して二酸化炭素除去処理を施して再度密閉空間内に戻す方法のみではなく、密閉空間内から排気した大気を建造物外に排気し、建造物外から二酸化炭素濃度の低い新鮮な大気を密閉空間内に取り込む方法を用いることも可能である。このような換気は電気的・機械的に制御された方法により行われ、例えば上記モニタリングを行う測定装置と連動した換気扇、換気口、換気機能付きエアーコンディショナーによって行うことができる。
【0018】
(2)本発明制御システム
本発明制御システムは、閉鎖空間における二酸化炭素濃度の測定手段と、前記測定手段による前期閉鎖空間内における二酸化炭素濃度の測定値が既定値を超えた際に、当該規定値以下となるまで前記閉鎖空間内の大気と前記閉鎖空間外の大気とを入れ替える換気手段と、当該閉鎖空間内に設置された二酸化炭素固定手段とを含むことを特徴とする換気制御システムである。
【0019】
本発明制御システムにおける「閉鎖空間」とは、本発明制御方法と同様である。
本発明制御システムにおける「二酸化炭素濃度の測定手段」とは、大気中の二酸化炭素濃度をモニタリング、定量することができる手段である限りにおいて特に限定はされないが、例えば既存の二酸化炭素濃度測定装置と同様、二酸化炭素の拡散原理を用いたパッシブサンプラー等を用いることが可能である。
本発明制御システムにおける「二酸化炭素濃度の規定値」とは、300ppm〜2000ppm程度の値が例示され、350ppm〜1600ppm程度が好ましくは例示される。しかし、必ずしもこの数値範囲に限定はされない。当業者であれば、かかる規定値は適宜設定することが可能である。
【0020】
本発明制御システムにおける「換気手段」とは、大気を入れ替えることができる手段を意味する。従って、必ずしも閉鎖空間から閉鎖空間外に排気した大気(二酸化炭素濃度の高い大気)に対して二酸化炭素除去処理を施して再度閉鎖空間内に戻す手段のみではなく、閉鎖空間内から排気した大気を建造物外に排気し、建造物外から二酸化炭素濃度の低い新鮮な大気を閉鎖空間内に取り込む手段を用いることも可能である。このような換気手段は電気的・機械的に制御された方法により行われ、例えば上記モニタリングを行う測定装置と連動した換気扇、換気口、換気機能付きエアーコンディショナーによって行うことができる。換気速度は1時間程度で閉鎖空間の大気を入れ替える程度の速度であることが好ましいが、当業者であれば適宜調整することが可能である。また、かかる換気速度は上記モニタリングにより得られた測定値と連動するように設定し、例えば段階的な設定値を予め設け、閉鎖空間内の二酸化炭素濃度がかかる設定値を超える毎に換気速度を段階的に上げることも可能である。
【0021】
本発明制御システムにおける「二酸化炭素固定手段」とは、大気中に二酸化炭素を有機物に変換して大気中から除去する手段である限りにおいて特に限定はされないが、植物又は細菌による光合成、又は化学合成細菌による化学合成が挙げられる。その中でも特に植物による光合成が好ましい。
【0022】
かかる植物は特に限定はされないが、例えばリュウゼツラン科、サトイモ科、ヤシ科、ウコギ科、クワ科、ガガイモ科、キツネノマゴ科、キョウチクトウ科、クズウコン科、ヒノキ科、ミカン科、パンヤ科、タコノキ科、バショウ科、トウダイグサ科、モクセイ科、ツユクサ科、パイナップル科、ベンケイソウ科、リュウケツジュ科、ヤナギ科及びシダ植物が挙げられる。
【0023】
このような植物は、光合成能力を亢進する処置が施された植物であることが好ましい。具体的には、かかる処置とは、例えば低周波による植物体の二酸化炭素固定能力の亢進(例えば特開2004−89031号等)、酸化チタンを用いた二酸化炭素固定能力の亢進(特開2003−335610号等)、光合成又は成長促進に関する酵素の遺伝子の導入(例えば特開2002−300821号、特表2001−515846等:更にC3植物に対して、C4植物の暗反応酵素を導入(特開2001−299118、特開平11−341928、WO98/35030等))が例示される。かかる処置の中でも、遺伝子組換処置が好ましく、殊に光合成又は成長促進に関する遺伝子(熱ショックタンパク質、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ、セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼ、NADP−リンゴ酸酵素、ピルビン酸リン酸ジキナーゼ、カーボニックアンヒドラーゼ、及びピルビン酸リン酸ジキナーゼからなる群から選択される一以上の遺伝子)の導入が好ましい。かかる処置は、植物における二酸化炭素固定能力を増大させる限りにおいて特に限定はされない。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
(1)組換植物の二酸化炭素吸収能力の測定方法
新鮮重0.5gの葉を2mlの抽出バッファー(15mmol/LのMgCl2、1mmol/LのEDTA、2/5mmol/Lのジチオスレイトール、及び0.1%トライトンX(商標名)-100を含む50mmol/LのMOPS-NaOH(pH.7.5)緩衝液)中でホモジナイズした。10,000×gで遠心分離し、上清をセファデックス25(商標名:ファルマシア社製)で透析した。
【0025】
上清40μLに、100mmol/Lフルクトース6リン酸を含む抽出バッファー10μl、400mmol/Lのグルコース6リン酸を含む抽出バッファー10μl、100mmol/Lのウリジン二リン酸-グルコースを含む抽出バッファー10μlを混合し、25℃で15分間インキュベートした。その後、30%KOHを70μl添加し、100℃で10分間煮沸した。その後反応液を氷冷し、0.14%のアンスロン試薬が入った1mlの13.4mol/L硫化水素溶液を添加し、40℃で20分間インキュベートした。この反応液の吸光度(620nm)を測定した。検量線は糖を含む標準溶液を調製して作成した。
【0026】
(2)組換遺伝子と組換植物の調製1
特開2002−300821に従い、pBI101(Methods Enzymol., 118, 6270640(1986)記載)に、トマトrbcSプロモーターとトランジットペプチドのコード領域およびラン藻由来のフルクトース−1,6−ビスホスファターゼ/セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼ( S. 7942 FBP/SBPase )遺伝子 (fbp-I)を連結したプラスミドを構築した。このプラスミドを、アグロバクテリウム ツメファシエンス LBA4404に導入し、ユッカ(Yucca elephantipes Regel )のリーフディスクに感染させることによって、fbp-I をユッカ核遺伝子に導入した。ゲノムDNA を単離した後、PCRおよびイムノブロッティングによりfbp-I の導入を確認し、形質転換株(T2世代)を得た(組換植物1)。組換植物1から葉緑体を単離して、ウエスタンブロッテイングにより、 S. 7942 FBP/SBPase の発現を確認することができた。更に、細胞分画によって、導入タンパク質が葉緑体に局在することを確認した。
【0027】
(1)記載の二酸化炭素吸収能力を測定方法に従い測定したところ、対照である組換処理を行わなかったユッカと比して、二酸化炭素吸収能力が6倍まで亢進していることが明らかとなった。
【0028】
(3)組換遺伝子と組換植物の調製2
特開2001−299118に従い、トウモロコシからPCK遺伝子を単離し、この遺伝子で形質転換したAgrobacterium tumefaciensを得た。これとポトス(Epipremnum aureum (Linden et Andre) Bunt)のカルスと3日間共存培養し8個体の独立した形質転換ポトス個体を得た。
【0029】
得られた8個の形質転換ポトス個体と非形質転換ポトス、およびトウモロコシのPCKの発現レベルを特開2001−299118の記載に従って測定したところ、形質転換ポトス個体におけるPCK遺伝子の発現がトウモロコシと同様に高レベルであることが確認された。
【0030】
(1)記載の二酸化炭素吸収能力を測定方法に従い測定したところ、対照である組換処理を行わなかったポトスと比して、二酸化炭素吸収能力が7倍まで亢進していることが明らかとなった。
【0031】
(4)密閉空間における換気回数の低減効果の確認
40m2、天井高2.5mのオフィス(1人が事務業務を進めている)で、空調設備を一切使用せずに組換植物1(植物丈160cm)を、4本設置した。実験開始前の二酸化炭素濃度は340ppmだった。
【0032】
午前9時から翌日午前9時までの二酸化炭素濃度の変化を測定した。この間、デスクワーク(午前9時から午後5時まで休憩1時間をはさんで8時間、昼12時から午後1時まで部屋から退出)を行った。対象として、組み換えを行わなかった同等の植物を一人あたり4本設置した(対照値)。
【0033】
その結果、デスクワークの間、二酸化炭素濃度の上昇率は、組換植物を使用した際の測定値(サンプル値)が、対照値に比して大幅に低下していた。すなわち、午前9時からデスクワーク終了直後の午後5時までの間に、サンプル値では15ppmの上昇しかみられなかったが(すなわち365ppm)、対照値は945ppm以上の二酸化炭素濃度の増加が観察された(1285ppm)。
【0034】
さらに、サンプル値は、翌日午前9時には前日の朝とほぼ同じ二酸化炭素濃度まで環境が回復していたが(335ppm)、対照値は翌朝9時にはまだ二酸化炭素濃度が実験開始前の値まで回復していなかった(1190ppm)。
【0035】
同様に組換植物2でも同様に二酸化炭素濃度の上昇抑制効果、及び回復効果が観察され、本発明制御方法の有用性が立証された。
すなわち、本発明制御システムによると、オフィス環境における二酸化炭素濃度の増加による換気の必要性が大幅に低減されることが明らかとなった。
【0036】
また、組換植物1(植物丈160cm)を2本設置して、350ppm以上で換気設備が稼働する設定を行い、朝9時から24時間の換気設備の動作時間を測定した(換気速度1時間室内の大気が全て入れ替わる設定となっている)。その結果、サンプルでは換気設備は10時間稼働したが、対照では23時間以上の換気設備の稼働が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素固定能力を増大させた植物を、二酸化炭素発生源が存在する閉鎖空間に備え、該閉鎖空間内の二酸化炭素濃度をモニタリングして得た測定値が既定値を超えた際に、二酸化炭素濃度を既定値以下になるまで閉鎖空間外の大気と閉鎖空間内の大気とを循環させることを特徴とする、当該閉鎖空間における二酸化炭素濃度制御方法。
【請求項2】
植物が組換遺伝子を含むことを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素濃度制御方法。
【請求項3】
組換遺伝子が、熱ショックタンパク質、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ、セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼ、NADP−リンゴ酸酵素、ピルビン酸リン酸ジキナーゼ、カーボニックアンヒドラーゼ、及びピルビン酸リン酸ジキナーゼからなる群から選択される一以上の遺伝子であることを特徴とする請求項2記載の二酸化炭素濃度制御方法。
【請求項4】
植物が、リュウゼツラン科、サトイモ科、ヤシ科、ウコギ科、クワ科、ガガイモ科、キツネノマゴ科、キョウチクトウ科、クズウコン科、ヒノキ科、ミカン科、パンヤ科、タコノキ科、バショウ科、トウダイグサ科、モクセイ科、ツユクサ科、パイナップル科、ベンケイソウ科、リュウケツジュ科、ヤナギ科及びシダ植物からなる群から選択される一以上の植物であることを特徴とする請求項1乃至3何れか一項記載の二酸化炭素濃度制御方法。
【請求項5】
閉鎖空間における二酸化炭素濃度の測定手段と、前記測定手段による前期閉鎖空間内における二酸化炭素濃度の測定値が既定値を超えた際に、当該規定値以下となるまで前記閉鎖空間内の大気と前記閉鎖空間外の大気とを入れ替える換気手段と、当該閉鎖空間内に設置された二酸化炭素固定手段とを含む、換気制御システム。
【請求項6】
二酸化炭素固定手段が、二酸化炭素固定手段を増強した植物であることを特徴とする請求項5記載の換気制御システム。
【請求項7】
二酸化炭素固定能力を増大させた植物が、組換遺伝子を含むことを特徴とする請求項6記載の換気制御システム。
【請求項8】
組換遺伝子が、熱ショックタンパク質、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ、セドヘプツロース−1,7−ビスホスファターゼ、NADP−リンゴ酸酵素、ピルビン酸リン酸ジキナーゼ、カーボニックアンヒドラーゼ、及びピルビン酸リン酸ジキナーゼからなる群から選択される一以上の遺伝子であることを特徴とする請求項7記載の換気制御システム。
【請求項9】
植物が、リュウゼツラン科、サトイモ科、ヤシ科、ウコギ科、クワ科、ガガイモ科、キツネノマゴ科、キョウチクトウ科、クズウコン科、ヒノキ科、ミカン科、パンヤ科、タコノキ科、バショウ科、トウダイグサ科、モクセイ科、ツユクサ科、パイナップル科、ベンケイソウ科、リュウケツジュ科、ヤナギ科及びシダ植物からなる群から選択される一以上の植物であることを特徴とする請求項6乃至8何れか一項記載の換気制御システム。


【公開番号】特開2006−23037(P2006−23037A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202756(P2004−202756)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(504097823)SCIVAX株式会社 (31)
【Fターム(参考)】