説明

二重構造煙突の解体方法及びその解体装置

【課題】
作業者の安全を確保し、内筒の解体作業用足場を設置する必要がなく、風荷重を受けずに解体作業を行うことができる二重構造煙突の解体方法及びその解体装置を提供するものである。
【解決手段】
多数のマストブロック16を連結してその長さを可変できる吊下げ用マスト44の下部と内筒14の上部とを固定し、内筒14の上方に備えた吊下げ移動手段34で吊下げ用マスト44を保持する。内筒14の下部を切断してその破壊した部材を除去し、吊下げ移動手段34で吊下げ用マスト44と内筒14とを下降させて内筒14の下端を地上に置き、吊下げ用マスト44にマストブロック16を追加して吊下げ用マスト44の長さを長くし、吊下げ移動手段34で吊下げ用マスト44の保持位置を変える。これによって、内筒14を外筒12の内部で下部から切断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内筒と外筒とから成る二重構造煙突を解体するための解体方法及びその解体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、煙突を解体する方法には各種の解体方法が知られている。特に、高さの高い煙突では、解体方法も限られてくる。高い煙突を解体する方法には、煙突の周囲と高さ全体に足場を組み、その足場において作業員が煙突を切断し(切断した1個のピースの重量は例えば10トン〜20トン)、煙突の近傍に配置した大型のクレーンで、切断したピースを吊り上げて煙突の外部の地上に降ろす方法が知られている。煙突の周囲と高さ全体に組む足場は、特許文献1に示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−183450号
【0004】
煙突が100メートル程度の高さのものになると、切断したピースを下に降ろすためのクレーンは、大型のものが必要となる。しかし、例えば100メートルの高さの大型クレーンを組み立てるとなると、少なくとも70〜80メートルの直線距離のあるスペースが必要となる。更に、100メートルの高さのクレーンは、煙突から30メートル程度離れた場所に配置しなければならない。このため、高い煙突の付近に住宅や工場等の建物が密集している場合には、大型のクレーンを煙突の近傍に配置できないという不具合があった。
【0005】
従来から、煙突には、煙を上部に導くための鋼製の内筒と、その内筒を外部から保護するコンクリート製の外筒とから成る二重構造のものがある。その二重構造煙突でも、外筒の内側に備えられる内筒が、1個のものから複数個のものまである。従来の二重構造の煙突を解体する方法としては、外筒と内筒とを同じ高さ箇所で切断し、切断したピースを大型クレーンを使用して地上に降ろす。この手順を繰り返し行うことによって、二重構造煙突を解体していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
内筒と外筒とから成る二重構造煙突を解体する場合において、外筒の解体作業用の足場は外筒の外側に備えるが、内筒は外筒と離れているために、内筒の解体作業においては外筒の解体作業用足場を利用することができなかった。このため、内筒の解体作業を行う場合に、内筒解体用足場を内筒と外筒の間に設置する必要があった。内筒解体用足場の設置方法として、枠組みや単管で組立解体するのが一般的に行われているが、内筒と外筒の間の空間には、高さ20mの程度毎の鋼製の床や階段等の内部設備が設けられているため、内筒解体用足場の組立解体作業には通常の2〜3倍の時間と手間を要するものであった。また、100m程度の高い煙突となると、風荷重は、地上部で10m/秒程度であっても、100m地点では20m/秒を超えていたり、突風時には30m/秒を超えていたりする。大型クレーンで煙突を解体する場合、100mの煙突の場合で、タワークレーンの大きさとしては、500t程度が必要になり、許容荷重は10〜20tである。その場合の内筒の切断大きさは、一般に直径が3mの場合、長さが9m程度となり、風の受圧面積が鋼材等を吊る場合と比較して非常に大きくなるために、大変大きな風荷重を受けてしまう。そのため、風に対しては非常に注意する必要があり、作業できる時間が限られてしまう。特に、冬場等は月のうち半分程度しか作業できない場合がある。その上、100メートル程度の高い煙突となると、外筒と内筒を大型クレーンで解体した場合、その解体した部材は、外筒の外側の地上に降ろすため、地上の作業員は危険に晒されていた。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、作業者の安全を確保し、内筒の解体作業用足場を設置する必要がなく、風荷重を受けずに解体作業を行うことができる二重構造煙突の解体方法及びその解体装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の二重構造の煙突の解体方法は、内筒とそれを囲む外筒とから成る二重構造煙突を解体するための解体方法であって、多数のマストブロックを連結または除去してその長さを可変できる吊下げ用マストの下部と前記内筒の上部とを固定し、前記内筒の上方に備えられる吊下げ移動手段で前記吊下げ用マスト及び前記内筒を吊下げ、前記吊下げ移動手段で吊下げられた状態で前記内筒の下部を切断し、その切断したものをその位置から除去し、前記吊下げ移動手段によって前記吊下げ用マストと前記内筒とを下降させて前記内筒の下端を地上に置き、前記吊下げ用マストに新たなマストブロックを追加してその吊下げ用マストの長さを長くすることと前記吊下げ移動手段における前記吊下げ用マストへの保持位置を変えて前記吊下げ用マストを吊下げることとを順不同で行い、その後、前記内筒の下部を切断することから、前記吊下げ用マストに新たなマストブロックを追加することと前記吊下げ移動手段が保持位置を変えて前記吊下げ用マストを吊下げることとを順不同で行うことまでの手順を繰り返すことを特徴とするものである。本発明は、前記外筒の下部側面に開口部を形成し、前記内筒の下部の切断したものを前記開口部から外部に搬出することを特徴とするものである。本発明は、前記外筒の外部に小型クレーンを設置し、前記小型クレーンで前記吊下げ用マストのマストブロックを前記外筒の外部の地上から吊り上げたり前記外筒の外部の地上に降ろしたりすることを特徴とするものである。本発明は、前記内筒を解体する前に、前記内筒の内部を洗浄する洗浄装置を前記内筒の上方から内部に挿入して、前記洗浄装置を昇降手段で昇降させることを特徴とするものである。本発明は、前記内筒を解体した後に、前記外筒の内部の地上で前記吊下げ用マストの下端に内部作業用足場を取付け、前記吊下げ用マストから順にマストブロックを取り外すことで前記内部作業用足場を上昇させ、その上昇の際に前記外筒の内壁に固定した床や階段等の内部設備を除去することを特徴とするものである。本発明は、前記内筒を解体した後に、前記外筒を解体するためのものであって前記外筒の最小内径より横方向の短い長さの破砕機を前記外筒の内部の地上に導入し、吊下げ手段で前記破砕機を吊下げて前記外筒の上端より上位に持ち上げ、前記破砕機に連結材を固定して前記連結材を固定した前記破砕機の長さを前記外筒の外径より大きくし、前記連結材を固定した前記破砕機を前記外筒の上に載せ、その後、前記破砕機で前記外筒を上から下に向けて破壊することを特徴とするものである。本発明は、前記破砕機で破壊した前記外筒の破壊物を前記外筒の内部に落下させ、その破壊物を前記外筒の下部側面に形成した開口部から外部に搬出することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の二重構造煙突の解体装置は、内筒とそれを囲む外筒とから成る二重構造煙突のうち前記内筒を解体するための解体装置であって、前記内筒の上方に備えられて前記内筒と固定するものであって多数のマストブロックを連結または除去してその長さを可変できる吊下げ用マストと、前記内筒の上方において地上と固定状態に支持されるものであって前記吊下げ用マストを保持してそれを上下方向に移動させることができると共に前記吊下げ用マストへの保持位置を変えることができる吊下げ移動手段とを有することを特徴とするものである。本発明は、前記吊下げ移動手段が、前記内筒の上方において地上と固定状態に支持される支持梁と、前記支持梁に下方に向けて固定されるものであってシリンダロッドを備えた少なくとも2個の油圧シリンダと、前記シリンダロッド同士の先端に着脱自在に取付けられるものであって前記吊下げ用マストを支持するための連結部材と、前記吊下げ用マストの保持と保持解除とを行うための保持手段とから成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係わる塔状構造物の解体方法によれば、内筒を上から吊下げた状態で内筒の下部を順次切断し、その切断したものをその位置から除去し、その後、外筒の開口部から外部に順次搬出する。このように本発明では、外筒の内部において、内筒を下側から所定の高さで順次切断するようにしたものである。この結果、本発明は、従来のような大型クレーンを使用して破壊した箇所を持ち上げて外部の地上に降ろす場合と比べて、大型クレーンを必要としないため費用が安価で済む。また、従来のものは大型クレーンを使用するため、塔状構造物の付近に大型クレーンを立てるための長い距離のスペースが必要であったが、本発明では、そのような長い距離のスペースが必要としないため、解体する塔状構造物の周囲にスペースが無くても解体が可能である。本発明は更に、内筒の解体作業は、外筒の内部で内筒の下部を切断し、切断したものをその位置から除去排出するので、内筒を切断したものを上方から外筒の外部の地上に降ろす場合と比べて、作業者が安全に作業を行うことができる。また、内筒の解体作業時に特別な足場を設置する必要がなく、解体作業コストを低減することができる。更に、内筒の解体作業時に風荷重を受けないので、風の強い時でも常時作業を行うことができる。
【0011】
本発明に係わる塔状構造物の解体装置によれば、内筒とその内筒の上部に固定した吊下げ用マストとを、吊下げ移動手段によって上方から吊下げるものである。吊下げ用マストはマストブロックを連結することで下方に長さを伸ばすことができ、吊下げ移動手段は上下方向に長さを伸縮させると共に吊下げ用マストの保持位置を変えることができる。これによって、内筒を上から吊下げた状態で内筒の下部の切断が可能となる。更に、マストブロックを連結して長くした吊下げ用マストを下方に伸張させて、内筒が切断されてその長さが短くなっても、内筒の下端を地上におくことができ、内筒を地上に設置した状態で内筒の下部の切断を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に本発明を図面に基づいて説明する。図1は本発明で使用する足場とクレーンとを塔状構造物の周囲の上方に持ち上げる状態を示す正面図である。本発明に係る二重構造煙突10は、鉄筋コンクリート製の外筒12とその内部に備えられる複数の鋼製の内筒14とから成る。なお、内筒14は1個の場合もあり得る。煙突10の外部の周囲に多数のマストブロック16を連結して成る昇降手段としてのマスト18を複数個配置し、それら複数個のマスト18の上に基台19を載せ、その基台19の上に足場20を備える。基台19の上には、多数のマストブロック16を連結して成る例えば2個の上部マスト21を備える。この上部マスト21の高さは足場20より高いものとする。なお、上部マスト21は、マスト18とは別体としたが、マスト18と一体に形成しても良い。複数の各マスト18の下部には、各マスト18を同時に高くするためのマスト高さ調節装置22が備えられている。複数のマスト18にマストブロック16を順に連結することによって、足場20は煙突10の上部に移動させられる。
【0013】
足場20を支持上昇させるためのマスト18とは別に、上端にクライミングクレーン等の小型クレーン24を備えた1本のクレーン用マスト26を煙突10の外部に備え、クレーン用マスト26にマストブロック16を順に連結することによって、小型クレーン24を煙突10に沿って上方に移動させる。この際、小型クレーン24は煙突10の上端よりも充分上方に位置させるのが望ましい。図1の状態から、足場20と小型クレーン24とを煙突10の上部に移動した状態を図2に示す。図2に示すように、足場20は煙突10の上端付近に位置させ、小型クレーン24は煙突10の上端よりも充分上方に位置させる。
【0014】
図2の状態において、小型クレーン24で梁23を地上から持ち上げ、その梁23を図3に示すように外筒12の上に井桁状に組む。井桁状に組んだ梁23の上に2個の支持用マスト36を取付ける。2個の支持用マスト36の高さは内筒14の高さよりも高くする。その後、図4に示すように、小型クレーン24(図2)で支持用マスト36の上に支持梁38を載せてその支持梁38を支持用マスト36の上に固定する。更に、小型クレーン24で支持梁38の上に、滑車25と昇降手段としてのウインチ27と洗浄装置30とを載せ、支持梁38に滑車25とウインチ27とを固定する。なお、支持梁38は、梁23の上に固定した複数本の支持用マスト36で支持するとしたが、前述の上部マスト21等、地上から固定状態にあるものによって支持されても良い。ウインチ27からワイヤ29の先端を引き出し、そのワイヤ29を滑車25から洗浄装置30の2個の滑車30aに巻き掛け、ワイヤ29の先端を支持梁38に取付けた固定具31に固定する。
【0015】
内筒14の内部に洗浄装置30をワイヤ29によって吊下げる。足場20に居る作業者がウインチ27をリモコンで操作することによって、洗浄装置30は内筒14の内部を昇降する。洗浄装置30からの洗浄液等の噴射操作は、ウインチ27とは別の操作手段によって操作されるよう設定する。洗浄装置30による内筒14の洗浄は、内筒14の内部の上部から下部に向けて順に行い、ダイオキシン等が付着している内筒14の内壁を洗浄液等で洗浄する。洗浄装置30は、例えば洗浄液を高圧で内筒14の内壁に噴射させるものが望ましい。その後、水を噴射させるものであっても良い。
【0016】
図2に示すように、外筒12の下側には開口部32を形成しておく。また、洗浄装置30で洗浄を行う内筒14の下側側面に横穴(図示せず)を開けておく。これによって、内筒14の内壁を洗浄して下に流れ落ちる洗浄液や水を、内筒14の横穴と外筒12の開口部32とを経由して、煙突10の外部に排出することができる。外筒12の開口部32は、内筒14の下側を切断するための機械の出し入れや、内筒14の切断した部材の外部への搬出ができる程度の大きさに設定する。洗浄装置30による内筒14の洗浄が終了した後、洗浄装置30や滑車25やウインチ27等は、小型クレーン24によって地上に降ろす。なお、洗浄装置30は、内筒14の内部の地上に降ろしても良い。
【0017】
滑車25やウインチ27等を支持梁38から取り外した後、図5に示すように、支持梁38の下側にシリンダロッド40aを有する例えば6個(複数個)の油圧シリンダ(吊下げ部材)40を固定する。2個で一対のシリンダロッド40aの先端同士に連結部材としてのカンヌキ42を着脱自在とする。前記梁23の上には、後述する吊下げ用マスト44(内筒14の上部に固定する)を一時的に空中で保持するための保持手段43が取付けられている。なお、油圧シリンダ40や、カンヌキ42や、吊下げ用マスト44を構成するマストブロック16や、保持手段43等は、小型クレーン24によって足場20に持ち上げられ、作業員によって組立てられる。
【0018】
吊下げ移動手段34によって、吊下げ用マスト44は上下方向に移動させられると共にその保持位置が変えられる。吊下げ移動手段34は、地上と固定状態に支持されるもの(例えば梁23と、梁23の上に取付けられた複数本の支持用マスト36)と、支持用マスト36の上に支持される支持梁38と、支持梁38に下方に向けて取付けられる複数個の油圧シリンダ(吊下げ部材)40と、油圧シリンダ40のシリンダロッド40aの先端(2個で一対)同士に着脱自在に取付けられる連結部材としてのカンヌキ42とから成るものである。吊下げ移動手段34は、吊下げ用マスト44を一時的に空中で保持するための保持手段43であっても良い。
【0019】
例えば6個の油圧シリンダ40は鉛直方向に向いて配置されており、6個の油圧シリンダ40のほぼ中央の位置に、多数のマストブロック16を連結して成る吊下げ用マスト44が配置される。この吊下げ用マスト44は、例えば6個の油圧シリンダ40と例えば3個のカンヌキ42とで支持する。なお、カンヌキ42を3個としたが、2個以上の偶数個であれば良い。先ず、3個のカンヌキ42を吊下げ用マスト44の所定の位置のマストブロック16に水平方向に挿通し、3個のカンヌキ42の両端を油圧シリンダ40のシリンダロッド40aの先端に固定する。その後、油圧シリンダ40を作動して3個のカンヌキ42を持ち上げ、3個のカンヌキ42で吊下げ用マスト44を支持する。カンヌキ42で吊下げ用マスト44を支持するのは、内筒14の下端が切断された際に、内筒14が下方に移動しないでその位置での内筒14の吊下げ状態を保持するためである。
【0020】
油圧シリンダ40とカンヌキ42によって吊下げ用マスト44を吊下げた状態で、油圧シリンダ40を作動させてシリンダロッド40aを移動させれば、吊下げ用マスト44は上下に移動する。解体しようとする内筒14の上方に、吊下げ移動手段34によって吊下げ用マスト44を吊下げる。この吊下げ用マスト44の下端には固定手段46を備えており、この固定手段46を解体しようとする内筒14の上端に固定する。即ち、解体しようとする内筒14は、吊下げ用マスト44を介して吊下げ移動手段34によって吊下げられた状態となる。
【0021】
次に、図5に基づいて内筒14の解体作業について説明する。先ず、吊下げ移動手段34によって吊下げ用マスト44と解体しようとする内筒14とを固定した状態とする。その後、外筒12の下部の開口部32から作業員が外筒12の内部に入り、内筒14の下端とその下端から高さHの位置とを例えばガス切断装置で内筒14を水平方向に切断する。内筒14の下端が切断されても、内筒14は吊下げ移動手段34と吊下げ用マスト44とによって吊下げられているので、内筒14は落下することはない。内筒14の切断した箇所(本発明では「切断」という表現には「破壊」も含むものとする)をその位置から除去し、開口部32から外筒12の外部に搬出する。
【0022】
その後、油圧シリンダ40を作動させて吊下げ用マスト44と内筒14とを下降させ、内筒14の切断によって下端となった箇所を地上(地上と固定状態になっている場所)に置く。その後、吊下げ用マスト44の最上位箇所のマストブロック16に新たなマストブロック16を連結追加する。更に、吊下げ移動手段34において、カンヌキ42を油圧シリンダ40のシリンダロッド40aから外し、油圧シリンダ40のシリンダロッド40aを上方に移動し、吊下げ用マスト44の上位位置のマストブロック16にカンヌキ42を挿通させ、そのカンヌキ42を油圧シリンダ40のシリンダロッド40aに固定する。その後、油圧シリンダ40をやや上昇させてカンヌキ42で吊下げ用マスト44を保持する。これによって、吊下げ用マスト44に対する吊下げ移動手段34の保持位置を変えることができる。このように、1回の内筒14の下部の切断並びに除去と、吊下げ用マスト44への新たなマストブロック16の追加連結と、吊下げ移動手段34による吊下げ用マスト44の保持位置の変更とを行うことによって、吊下げ用マスト44の長さを下方に向けて長くすることができ、内筒14を下降させることができる。
【0023】
その後、吊下げ移動手段34によって吊下げ用マスト44を下降させ、切断した内筒14の下端を地上に置く。内筒14の下端を地上に置いた状態でも、吊下げ移動手段34によって吊下げ用マスト44と内筒14とを吊下げた状態とし、内筒14の下端から上方に高さHの位置で作業者が内筒14を切断し、切断した部材をその位置から除去し、外筒12の開口部32を経て外部に搬出する。その後、再び、吊下げ移動手段34の油圧シリンダ40を作動させて、吊下げ用マスト44と内筒14とを下降させ、内筒14における切断されて下端となった箇所を地上に接触させる。その後、吊下げ用マスト44に新たなマストブロック16を追加すると共に、吊下げ用マスト44へのカンヌキ42の取付け位置を変える。そして、吊下げ移動手段34によって吊下げ用マスト44を吊下げた状態で、内筒14の下端から上方に高さHの位置で作業者が内筒14を切断する。この作業を繰り返すことによって、内筒14は順次切断されて短くなり、吊下げ用マスト44の長さは下方に向かって長くなる。最終的には、内筒14が完全に解体される。なお、吊下げ用マスト44に新たなマストブロック16を連結追加する作業と、吊下げ移動手段34による吊下げ用マスト44への保持位置の変更作業とは、どちらを先に行っても良い。
【0024】
1個目の内筒14を解体した後、同様に2個目や3個目の内筒14を解体する。このように、下部から順に切断された内筒14は、外筒12の下部の開口部32から、切断した箇所毎に外部に搬出できるので、内筒14の解体は外筒12の内部の地上で進めることができ、作業が安全で、外部に悪影響を与えることがない。
【0025】
全ての内筒14を解体した後、吊下げ用マスト44の下端を外筒12の内部の地上付近まで位置させ、吊下げ用マスト44の下端に内部作業用足場48を固定する(図6)。その後、吊下げ移動手段34の油圧シリンダ40を作動させ、吊下げ用マスト44を上昇させる。吊下げ用マスト44のマストブロック16の1個分を上昇させた後、保持手段43で吊下げ用マスト44を支持する。その後、シリンダロッド40aに対してカンヌキ42を脱着させることによって、吊下げ用マスト44へのカンヌキ42による保持位置を変える。更に、マストブロック16の1個の除去を行う。その後、保持手段43による吊下げ用マスト44の支持を外す。その後再び、吊下げ移動手段34の油圧シリンダ40を作動させ、吊下げ用マスト44を上昇させる。この作業を繰り返すことによって、吊下げ用マスト44の長さを短くして、内部作業用足場48を上昇させることができる。
【0026】
内部作業用足場48の上昇の際に、内部作業用足場48に乗った作業員が、外筒12の内壁に固定されている階段等の固定部材50を解体する。固定部材50を解体しながら内部作業用足場48が最上位まで上昇した後、支持用マスト36や、支持梁38や、油圧シリンダ40や、カンヌキ42や、吊下げ用マスト44を構成するマストブロック16や、基礎台33等は、小型クレーン24によって地上に降ろす。
【0027】
次に、図7に示すように、例えば2個のマスト21の先端に梁52を掛け渡し固定する。この梁52に複数の支持手段54を固定し、その支持手段54にウインチ56から引き出されたワイヤ58を掛け渡し、そのワイヤ58をウインチ56で操作する。ワイヤ58の途中には、吊下げ部材60が取り付けられ、ウインチ56の作動によって吊下げ部材60は外筒12の内部の中心軸位置において上下させられる。支持手段54とウインチ56とワイヤ58と吊下げ部材60で吊下げ手段を構成し、この吊下げ手段を利用してものを上下させる構成は従来既知であるので、ここではその説明を省略する。
【0028】
外筒12の出入り口32から、外筒12を破壊するための破砕機62を外筒12の内部に導く。破砕機62の下に基礎支持材64を固定する。破砕機62や基礎支持材64の横方向の長さは、外筒12のどの位置の内径よりも小さい長さに設定する。その後、吊下げ部材60を破砕機62に連結してウインチ56を作動させ、破砕機62と基礎支持材64を外筒12の上端より上方に持ち上げる。外筒12の上端より上方において、基礎支持材64に連結材66を連結する。基礎支持材64に連結材66を連結することで、その連結したものの横方向の長さは、外筒12の直径より長くする。横方向の長さが長い破砕機62のアーム68や連結材66等は、小型クレーン24(図6)で持ち上げて、足場20(図5)で破砕機62や基礎支持材64に取付ける。
【0029】
その後、ウインチ56を作動させて吊下げ部材60を下降させることで、破砕機62を外筒12の上に置くことができる(基礎支持材64に連結材66を連結することで、基礎支持材64に連結材66を連結したものの長さを外筒12の外径より長くしてある)。外筒12の上に置かれた破砕機62は、連結材66と接触していない箇所の外筒12の上端を順次破壊し、破壊したものを外筒12の内部に落とし、外筒12の開口部32から外部に搬出する。その後、吊下げ部材60を回転させて、連結材66が外筒12の上に接触する位置を変え、再び破砕機62で回転前に連結材66と接触していなかった箇所の外筒12の上端を破壊する。破壊した箇所は外筒12の内部に落下させる。このように、外筒12の上端に置いた破砕機62によって外筒12の上端を破壊する作業を順次行うことによって、外筒12を上から下に向けて解体することができる。この結果、内筒14と外筒12とを順に解体することができ、しかも解体したものを外筒12の外部に降ろす作業が無いようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の解体方法で使用する足場とクレーンとを二重構造煙突の周囲の上方に持ち上げる状態を示す説明図である。
【図2】内側塔状物より上位位置に小型クレーンで梁を備える状態を示す本発明の説明図である。
【図3】外筒の上に梁とマストを取付けた状態を示す平面図である。
【図4】内側塔状物を洗浄装置で洗浄する状態を示す本発明の説明図である。
【図5】内側塔状物を下側から切断して外部に搬出する状態を示す本発明の説明図である。
【図6】外側塔状物の内部に備えた階段を除去する状態を示す本発明の説明図である。
【図7】外側塔状物の上端に破砕機を載せた状態を示す本発明の説明図である。
【符号の説明】
【0031】
10 煙突
12 外筒
14 内筒
16 マストブロック
18 マスト
21 上部マスト
23 梁
24 小型クレーン
26 クレーン用マスト
32 開口部
34 吊下げ移動手段
38 支持梁
40 油圧シリンダ
40a シリンダロッド
42 連結部材
43 保持手段
44 吊下げ用マスト
48 内部作業用足場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒とそれを囲む外筒とから成る二重構造煙突を解体するための解体方法であって、多数のマストブロックを連結または除去してその長さを可変できる吊下げ用マストの下部と前記内筒の上部とを固定し、前記内筒の上方に備えられる吊下げ移動手段で前記吊下げ用マスト及び前記内筒を吊下げ、前記吊下げ移動手段で吊下げられた状態で前記内筒の下部を切断し、その切断したものをその位置から除去し、前記吊下げ移動手段によって前記吊下げ用マストと前記内筒とを下降させて前記内筒の下端を地上に置き、前記吊下げ用マストに新たなマストブロックを追加してその吊下げ用マストの長さを長くすることと前記吊下げ移動手段における前記吊下げ用マストへの保持位置を変えて前記吊下げ用マストを吊下げることとを順不同で行い、その後、前記内筒の下部を切断することから、前記吊下げ用マストに新たなマストブロックを追加することと前記吊下げ移動手段が保持位置を変えて前記吊下げ用マストを吊下げることとを順不同で行うことまでの手順を繰り返すことを特徴とする二重構造煙突の解体方法。
【請求項2】
前記外筒の下部側面に開口部を形成し、前記内筒の下部の切断したものを前記開口部から外部に搬出することを特徴とする請求項1記載の二重構造煙突の解体方法。
【請求項3】
前記外筒の外部に小型クレーンを設置し、前記小型クレーンで前記吊下げ用マストのマストブロックを前記外筒の外部の地上から吊り上げたり前記外筒の外部の地上に降ろしたりすることを特徴とする請求1記載の二重構造煙突の解体方法。
【請求項4】
前記内筒を解体する前に、前記内筒の内部を洗浄する洗浄装置を前記内筒の上方から内部に挿入して、前記洗浄装置を昇降手段で昇降させることを特徴とする請求項3記載の二重構造煙突の解体方法。
【請求項5】
前記内筒を解体した後に、前記外筒の内部の地上で前記吊下げ用マストの下端に内部作業用足場を取付け、前記吊下げ用マストから順にマストブロックを取り外すことで前記内部作業用足場を上昇させ、その上昇の際に前記外筒の内壁に固定した床や階段等の内部設備を除去することを特徴とする請求項1記載の二重構造煙突の解体方法。
【請求項6】
前記内筒を解体した後に、前記外筒を解体するためのものであって前記外筒の最小内径より横方向の短い長さの破砕機を前記外筒の内部の地上に導入し、吊下げ手段で前記破砕機を吊下げて前記外筒の上端より上位に持ち上げ、前記破砕機に連結材を固定して前記連結材を固定した前記破砕機の長さを前記外筒の外径より大きくし、前記連結材を固定した前記破砕機を前記外筒の上に載せ、その後、前記破砕機で前記外筒を上から下に向けて破壊することを特徴とする請求項1記載の二重構造煙突の解体方法。
【請求項7】
前記破砕機で破壊した前記外筒の破壊物を前記外筒の内部に落下させ、その破壊物を前記外筒の下部側面に形成した開口部から外部に搬出することを特徴とする請求項6記載の二重構造煙突の解体方法。
【請求項8】
内筒とそれを囲む外筒とから成る二重構造煙突のうち前記内筒を解体するための解体装置であって、前記内筒の上方に備えられて前記内筒と固定するものであって多数のマストブロックを連結または除去してその長さを可変できる吊下げ用マストと、前記内筒の上方において地上と固定状態に支持されるものであって前記吊下げ用マストを保持してそれを上下方向に移動させることができると共に前記吊下げ用マストへの保持位置を変えることができる吊下げ移動手段とを有することを特徴とする二重構造煙突の解体装置。
【請求項9】
前記吊下げ移動手段が、前記内筒の上方において地上と固定状態に支持される支持梁と、前記支持梁に下方に向けて固定されるものであってシリンダロッドを備えた少なくとも2個の油圧シリンダと、前記シリンダロッド同士の先端に着脱自在に取付けられるものであって前記吊下げ用マストを支持するための連結部材と、前記吊下げ用マストの保持と保持解除とを行うための保持手段とから成ることを特徴とする請求項8記載の二重構造煙突の解体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−1983(P2009−1983A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161523(P2007−161523)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(595023910)松島工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】