説明

二重殻タンクの建設方法

【課題】二重殻タンクの建設方法において、工期の長期化を抑制しつつ、屋根の検査作業を効率化する。
【解決手段】内槽屋根の検査が全領域で完了するのを待つことなく、内槽屋根第2領域にて検査を行っている際に先に検査の完了した内槽屋根第1領域に被さる領域で外槽屋根を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重殻タンクの建設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LNG(Liquefied Natural Gas)やLPG(Liquefied Petroleum Gas)等の液化ガスを低温にて貯蔵するタンクとして、特許文献1に示すように、液化ガスを貯留する内槽と当該内槽を囲う外槽とを有する二重殻タンクが用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された二重殻タンクは、内槽屋根と外槽屋根とが鉄鋼(金属)によって形成されており、いわゆるエアレイジング工法によって建設されている。
より詳細には、外槽側壁を形成し、外槽側壁内で内槽屋根及び外槽屋根を重ねて一体化して形成する。その後、エアレイジングによって屋根を上昇させてから外槽屋根を外槽側壁に固定し、さらに内槽屋根に接続される内槽側壁を形成することで二重殻タンクの建設を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−327100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、内槽屋根や外槽屋根は、複数の鉄鋼材料を溶接することによって形成されている。このため、通常は、内槽屋根及び外槽屋根に対しては、エアレイジングにて浮上させるよりも先に、浸透探傷検査(PT検査)やX線検査透過検査(RT検査)等の検査が行われる。
【0006】
しかしながら、内槽屋根と外槽屋根とは1m程度しか離間されておらず、また内槽屋根と外槽屋根との隙間は非常に暗い。現在であっても上述の検査を行うことは可能であるが、より効率的に内槽屋根の検査作業を行うためには、明るくかつ広い環境で検査を行うことが望ましい。
【0007】
このような問題を解消するためには、例えば、内槽屋根を形成した後、内槽屋根の検査を行った後に外槽屋根の形成に取り掛かることが考えられる。
しかしながら、このような場合には、内槽屋根の検査が完了するまで外槽の形成を待つ必要があり、工期が長期化する原因となる。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、二重殻タンクの建設方法において、工期の長期化を抑制しつつ、屋根の検査作業を効率化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0010】
第1の発明は、外槽側壁を形成する外槽側壁形成工程と、上記外槽側壁内で内槽屋根及び外槽屋根を重ねて一体化して形成する屋根形成工程と、上記内槽屋根及び上記外槽屋根を上昇させて上記外槽側壁に固定する屋根上昇工程と、上記屋根上昇工程で上昇された上記内槽屋根に接続して内槽側壁を形成する内槽側壁形成工程とを有する二重殻タンクの建設方法であって、上記屋根形成工程が、上記外槽屋根よりも先に形成された上記内槽屋根の一部領域である内槽屋根第1領域の検査を行う内槽屋根第1領域検査工程と、当該内槽屋根第1領域検査工程が完了した上記内槽屋根第1領域に重なる上記外槽屋根の領域である外槽屋根第1領域を形成する外槽屋根第1領域形成工程と、当該外槽屋根第1領域形成工程と同時に行われると共に、上記内槽屋根第1領域検査工程にて検査が完了していない上記内槽屋根の残存領域である内槽屋根第2領域の検査を行う内槽屋根第2領域検査工程と、当該内槽屋根第2領域検査工程が完了した上記内槽屋根第2領域に重なる上記外槽屋根の領域である外槽屋根第2領域を形成する外槽屋根第2領域形成工程とを有するという構成を採用する。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記内槽屋根第1領域が上記内槽屋根の中央領域であり、上記内槽屋根第2領域が上記内槽屋根の外周領域であるという構成を採用する。
【0012】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記屋根形成工程にて、上記内槽屋根の全領域を形成してから上記内槽屋根第1領域検査工程を行うという構成を採用する。
【0013】
第4の発明は、上記第1または第2の発明において、上記屋根形成工程にて、上記内槽屋根第1領域検査工程及び上記外槽屋根第1領域形成工程との少なくともいずれかと同時に上記内槽屋根第2領域を形成するという構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
以上のような本発明においては、内槽屋根の検査は、内槽屋根第1領域検査工程と内槽屋根第2領域検査工程の2つの工程に分かれて行われる。そして、内槽屋根第1領域検査工程は、内槽屋根第1領域に被さる外槽屋根第1領域が形成される前(すなわち外槽屋根第1領域形成工程よりも前)に行われる。また、内槽屋根第2領域検査工程は、内槽屋根第2領域に被さる外槽屋根第2領域が形成される前(すなわち外槽屋根第2領域形成工程よりも前)に行われる。
つまり、本発明においては、内槽屋根第1領域を検査する際にはその上に被さる外槽屋根第1領域が形成されておらず、内槽屋根第2領域を検査する際にはその上に被さる外槽屋根第2領域が形成されていない。
このため、本発明によれば、内槽屋根の検査を明るくかつ広い環境で行うことができ、検査の作業効率を向上させることができる。
【0015】
また、本発明においては、内槽屋根第1領域検査工程が完了とすると、外槽屋根第1領域形成工程と内槽屋根第2領域検査工程とが同時に行われる。
つまり、本発明においては、内槽屋根の検査が全領域で完了するのを待つことなく、内槽屋根第2領域にて検査を行っている際に内槽屋根第1領域に被さる領域で外槽屋根を形成する。
このため、工期が長期化することを抑制することができる。
【0016】
したがって、本発明によれば、二重殻タンクの建設方法において、工期の長期化を抑制しつつ、屋根の検査作業を効率化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態における二重殻タンクの建設方法によって建設される二重殻タンクの概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態における二重殻タンクの建設方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態における二重殻タンクの建設方法を模式的に示す工程図である。
【図4】本発明の一実施形態における二重殻タンクの建設方法を模式的に示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る二重殻タンクの建設方法の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0019】
図1は、本実施形態の二重殻タンクの建設方法によって建設される二重殻タンク1の概略構成を模式的に示す断面図である。
二重殻タンク1は、LNG(Liquefied Natural Gas)やLPG(Liquefied Petroleum Gas)等の液化ガスXを低温にて貯蔵するタンクであり、内槽2と、外槽3と、連結部材4と、断熱材5とを備えている。
【0020】
内槽2は、液化ガスXを貯留する金属性の容器であり、円板状の内槽床部2aと、円筒状の内槽側壁2bと、椀状の内槽屋根2cとを備えている。
そして、内槽2は、内槽床部2aの縁部に内槽側壁2bが立設され、当該内槽側壁2bの上部に内槽屋根2cが配置されることによって容器形状に形状設定されている。
【0021】
外槽3は、内槽2を囲う容器であり、円板状の外槽床部3aと、円筒状の外槽側壁3bと、椀状の外槽屋根3cとを備えている。
そして、本実施形態において外槽床部3a及び外槽側壁3bとはプレキャストコンクリートによって形成され、外槽屋根3cは金属によって形成されている。
そして、外槽3は、外槽床部3aの縁部に外槽側壁3bが立設され、当該外槽側壁3bの上部に外槽屋根3cが配置されることによって容器形状に形状設定されている。
【0022】
連結部材4は、内槽屋根2cと外槽屋根3cとを上下に連結するものであり、内槽屋根2cと外槽屋根3cとの間に複数設けられている。
なお、連結部材4は、内槽屋根2cが当該連結部材4のみで支えられている状態であっても、内槽屋根2cの落下を防止できる強度にて内槽屋根2cと外槽屋根3cとを連結している。
また、連結部材4は、二重殻タンク1を建設する際に用いられる仮設部材である。このため、内槽屋根2cが内槽側壁2bと接続された後に、切断されて撤去される。
【0023】
断熱材5は、外部から液化ガスXへの入熱を抑止するためのものであり、図1に示すように、内槽2と外槽3との間の隙間を埋めるように配置されている。
なお、より詳細には、断熱材5は、内槽側壁2bと外槽側壁3bとの間の隙間に充填されて配置されている。また、断熱材5は、内槽床部2aと外槽床部3aとの間にも充填配置されている。
【0024】
次に、上述のような二重殻タンクを建設するための、本実施形態の二重殻タンクの建設方法について、図2〜図4を参照して説明する。
なお、図2は本実施形態の二重殻タンクの建設方法を説明するためのフローチャートであり、図3及び図4は本実施形態の二重殻タンクの建設方法を模式的に示す工程図である。
【0025】
本実施形態の二重殻タンクの建設方法は、図2(a)に示すように、外槽側壁形成工程(ステップS1)、屋根形成工程(ステップS2)、屋根上昇工程(ステップS3)、内槽側壁形成工程(ステップS4)及び仕上工程(ステップS5)を有しており、これらの工程が順に行われることによって進められる。
【0026】
本実施形態の二重殻タンクの建設方法では、まず外槽側壁形成工程(ステップS1)を行う。外槽側壁形成工程(ステップS1)は、外槽側壁3bを形成する工程である。
この外槽側壁形成工程(ステップS1)では、図3(a)に示すように、プレキャストコンクリートによって外槽側壁3bを形成し、また外槽側壁3bと同時に外槽床部3aを形成する。
【0027】
続いて、屋根形成工程(ステップS2)を行う。屋根形成工程(ステップS2)は、外槽側壁3b内(外槽床部3a上)にて内槽屋根2cと外槽屋根3cとを重ねて一体化して形成する工程である。
ここで、図2(b)を参照して屋根形成工程(ステップS2)について詳細に説明する。
本実施形態の二重殻タンクの建設方法において本屋根形成工程(ステップS2)は、図2(b)に示すように、内槽屋根形成工程(ステップS21)、内槽屋根中央領域検査工程(ステップS22)、外槽屋根中央領域形成工程(ステップS23)、外槽屋根中央領域検査工程(ステップS24)、内槽屋根外周領域検査工程(ステップS25)、外槽屋根外周領域形成工程(ステップS26)及び外槽屋根外周領域検査工程(ステップS27)を有している。
【0028】
内槽屋根形成工程(ステップS21)は、内槽屋根2cを形成する工程である。
この内槽屋根形成工程(ステップS21)では、複数の鋼材を溶接等によって接合することによって、図3(a)に示すように、外槽床部3a上に内槽屋根2cを形成する。
【0029】
続いて、内槽屋根中央領域検査工程(ステップS22)を行う。内槽屋根中央領域検査工程(ステップS22)は、本発明における内槽屋根第1領域検査工程に相当し、上記内槽屋根形成工程(ステップS21)にて外槽屋根3cよりも先に形成された内槽屋根2cの一部領域である中央領域2c1(内槽屋根第1領域)の検査を行う工程である。
この内槽屋根中央領域検査工程(ステップS22)では、図3(c)に示すように、外槽床部3a上に形成された内槽屋根2cのうち、外周領域2c2に囲まれた中央領域2c1の検査を行う。
なお、具体的には、本内槽屋根中央領域検査工程(ステップS22)では、例えば、浸透探傷検査(PT検査)やX線検査透過検査(RT検査)が行われる。
【0030】
続いて、本実施形態の二重殻タンクの建設方法においては、外槽屋根中央領域形成工程(ステップS23)と、内槽屋根外周領域検査工程(ステップS25)とを並行して行う。
【0031】
外槽屋根中央領域形成工程(ステップS23)は、本発明における外槽屋根第1領域形成工程に相当し、内槽屋根中央領域検査工程(ステップS22)が完了した内槽屋根2cの中央領域2c1に重なる外槽屋根3cの中央領域(外槽屋根第1領域)を形成する工程である。
【0032】
内槽屋根外周領域検査工程(ステップS25)は、本発明における内槽屋根第2領域検査工に相当し、外槽屋根中央領域形成工程(ステップS23)と同時に行われると共に、内槽屋根中央領域検査工程(ステップS22)にて検査が完了していない内槽屋根2cの残存領域である外周領域2c2(内槽屋根第2領域)の検査を行う工程である。
【0033】
これらの外槽屋根中央領域形成工程(ステップS23)と、内槽屋根外周領域検査工程(ステップS25)とが並行して行われることによって、図3(d)に示すように、内槽屋根2cの中央領域2c1の上方に連結部材4を介して外槽屋根3cの中央領域3c1が形成されると共に、内槽屋根2cの外周領域2c2の検査が行われる。
なお、内槽屋根2cの外周領域2c2に対しても、内槽屋根2cの中央領域2c1と同様に、例えば、浸透探傷検査(PT検査)やX線検査透過検査(RT検査)が行われる。
【0034】
続いて、本実施形態の二重殻タンクの建設方法においては、外槽屋根中央領域検査工程(ステップS24)と、外槽屋根外周領域形成工程(ステップS26)とを並行して行う。
【0035】
外槽屋根中央領域検査工程(ステップS24)は、外槽屋根3cの中央領域3c1(外槽屋根第1領域)の検査を行う工程である。
【0036】
外槽屋根外周領域形成工程(ステップS26)は、本発明における外槽屋根第2領域形成工程に相当し、内槽屋根外周領域検査工程(ステップS25)が完了した内槽屋根2cの外周領域2c2に重なる外槽屋根3cの外周領域3c2(外槽屋根第2領域)を形成する工程である。
【0037】
これらの外槽屋根中央領域検査工程(ステップS24)と、外槽屋根外周領域形成工程(ステップS26)とが並行して行われることによって、図4(a)に示すように、内槽屋根2cの外周領域2c2の上方に連結部材4を介して外槽屋根3cの外周領域3c2が形成されると共に、外周屋根3cの中央領域3c1の検査が行われる。
【0038】
ただし、これらの外槽屋根中央領域検査工程(ステップS24)と、外槽屋根外周領域形成工程(ステップS26)とは、必ずしも並行に行われる必要はない。
例えば、外槽屋根中央領域検査工程(ステップS24)は、外槽屋根中央領域形成工程(ステップS23)が完了すれば行うことが可能となる。このため、外槽屋根中央領域形成工程(ステップS23)が完了した際に未だ内槽屋根外周領域検査工程(ステップS25)が行われている場合には、当該内槽屋根外周領域検査工程(ステップS25)と並行して行うこともできる。
【0039】
続いて、外槽屋根外周領域検査工程(ステップS27)を行う。この外槽屋根外周領域検査工程(ステップS27)は、外槽屋根3cの外周領域3c2(外槽屋根第2領域)の検査を行う工程である。
この外槽屋根外周領域検査工程(ステップS27)では、図4(b)に示すように、外槽屋根3cのうち、外周領域3c2の検査を行う。
なお、外槽屋根3cの外周領域3c2に対しても、外槽屋根3cの中央領域3c1、内槽屋根2cの外周領域2c2及び内槽屋根2cの中央領域2c1と同様に、例えば、浸透探傷検査(PT検査)やX線検査透過検査(RT検査)が行われる。
【0040】
本実施形態の二重殻タンクの建設方法では、このような屋根形成工程(ステップS2)が完了すると、図2(a)に示すように、屋根上昇工程(ステップS3)を行う。
屋根上昇工程(ステップS3)は、上述の屋根形成工程(ステップS2)で形成された内槽屋根2c及び外槽屋根3cを上昇させて外槽側壁3bに固定する工程である。
具体的には、図4(c)に示すように、内槽屋根2c及び外槽屋根3cの下方に加圧空気を供給することによって内槽屋根2c及び外槽屋根3cを浮かすエアレイジングを用いて内槽屋根2c及び外槽屋根3cを上昇させる。そして、外槽屋根3cを外槽側壁3bの上部に固定する。
【0041】
続いて、本実施形態の二重殻タンクの建設方法では、内槽側壁形成工程(ステップS4)を行う。内槽側壁形成工程(ステップS4)は、屋根上昇工程(ステップS3)で上昇された内槽屋根2cに接続して内槽側壁2bを形成する工程である。
この内槽側壁形成工程(ステップS4)では、図4(d)に示すように、鋼材(いわゆる側板)を組み上げることによって内槽側壁2bを形成し、また内槽側壁2bと同時に内槽床部2aを形成する。
【0042】
続いて、本実施形態の二重殻タンクの建設方法では、仕上工程(ステップS5)を行う。この仕上工程(ステップS5)では、二重殻タンク1を最終的な形状に仕上る工程であり、例えば、断熱材5の配置等が行われる。
【0043】
そして、以上のような本実施形態の二重殻タンクの建設方法によれば、内槽屋根2cの検査は、内槽屋根中央領域検査工程(ステップS22)と内槽屋根外周領域検査工程(ステップS25)の2つの工程に分かれて行われる。そして、内槽屋根中央領域検査工程(ステップS22)は、内槽屋根2cの中央領域2c1に被さる外槽屋根3cの中央領域3c1が形成される前(すなわち外槽屋根中央領域形成工程(ステップS23)よりも前)に行われる。
また、内槽屋根外周領域検査工程(ステップS25)は、内槽屋根2cの外周領域2c2に被さる外槽屋根3cの外周領域3c2が形成される前(すなわち外槽屋根外周領域形成工程(ステップS26)よりも前)に行われる。
つまり、本実施形態の二重殻タンクの建設方法においては、内槽屋根2cの中央領域2c1を検査する際にはその上に被さる外槽屋根3cの中央領域3c1が形成されておらず、内槽屋根2cの外周領域2c2を検査する際にはその上に被さる外槽屋根3cの外周領域3c2が形成されていない。
このため、本実施形態の二重殻タンクの建設方法によれば、内槽屋根2cの検査を明るくかつ広い環境で行うことができ、検査の作業効率を向上させることができる。
【0044】
また、本実施形態の二重殻タンクの建設方法においては内槽屋根中央領域検査工程(ステップS22)が完了とすると、外槽屋根中央領域形成工程(ステップS23)と内槽屋根外周領域検査工程(ステップS25)とが同時に行われる。
つまり、本実施形態の二重殻タンクの建設方法においては、内槽屋根2cの検査が全領域で完了するのを待つことなく、内槽屋根2cの外周領域2c2にて検査を行っている際に内槽屋根2cの中央領域2c1に被さる領域で外槽屋根3cを形成する。
このため、工期が長期化することを抑制することができる。
したがって、本実施形態の二重殻タンクの建設方法によれば、工期の長期化を抑制しつつ、屋根の検査作業を効率化することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態の二重殻タンクの建設方法においては、本発明の内槽屋根第1領域が内槽屋根2cの中央領域2c1であり、内槽屋根第2領域が内槽屋根2cの外周領域2c2であるという構成を採用している。
このため、内槽屋根2cの外周領域2c2よりも先に内槽屋根2cの中央領域2c1に対する検査が行われる。通常、外周領域2c2は中央領域2c1より複雑に鋼材が溶接されていることから、検査に時間がかかる。このため、先に内槽屋根2cの中央領域2c1に対する検査を行うことによって、より短時間で外槽屋根3cの形成を始めることが可能となる。
【0046】
また、本実施形態の二重殻タンクの建設方法においては、内槽屋根2cの全領域を形成した後、内槽屋根2cの検査を開始する構成を採用している。
このため、内槽屋根2cを分割して形成しないことから、一度に内槽屋根2cを形成することができ、内槽屋根2cの形成作業が効率化される。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0048】
例えば、上記実施形態においては、内槽屋根2cの外周領域2c2よりも先に内槽屋根2cの中央領域2c1に対する検査を行い、外槽屋根3cの外周領域3c2よりも先に外槽屋根3cの中央領域3c1を形成する構成を採用した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、内槽屋根2cの中央領域2c1よりも先に内槽屋根2cの外周領域2c2に対する検査を行い、外槽屋根3cの中央領域3c1よりも先に外槽屋根3cの外周領域3c2を形成する構成を採用することもできる。
この場合には、本発明の内槽屋根第1領域が内槽屋根2cの外周領域2c2となり、内槽屋根第2領域が内槽屋根2cの中央領域2c1となる。
【0049】
また、上記実施形態においては、内槽屋根2cの全領域を形成した後、内槽屋根2cの検査を開始する構成を採用した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、内槽屋根第1領域を形成した後、内槽屋根第2領域を形成するより前に内槽屋根第1領域の検査を開始するようにしても良い。
これによって、工期をより短縮することが可能となる。
【符号の説明】
【0050】
1……二重殻タンク、2……内槽、2a……内槽床部、2b……内槽側壁、2c……内槽屋根、3……外槽、3a……外槽床部、3b……外槽側壁、3c……外槽屋根、4……連結部材、5……断熱材、X……液化ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外槽側壁を形成する外槽側壁形成工程と、前記外槽側壁内で内槽屋根及び外槽屋根を重ねて一体化して形成する屋根形成工程と、前記内槽屋根及び前記外槽屋根を上昇させて前記外槽側壁に固定する屋根上昇工程と、前記屋根上昇工程で上昇された前記内槽屋根に接続して内槽側壁を形成する内槽側壁形成工程とを有する二重殻タンクの建設方法であって、
前記屋根形成工程は、
前記外槽屋根よりも先に形成された前記内槽屋根の一部領域である内槽屋根第1領域の検査を行う内槽屋根第1領域検査工程と、
当該内槽屋根第1領域検査工程が完了した前記内槽屋根第1領域に重なる前記外槽屋根の領域である外槽屋根第1領域を形成する外槽屋根第1領域形成工程と、
当該外槽屋根第1領域形成工程と同時に行われると共に、前記内槽屋根第1領域検査工程にて検査が完了していない前記内槽屋根の残存領域である内槽屋根第2領域の検査を行う内槽屋根第2領域検査工程と、
当該内槽屋根第2領域検査工程が完了した前記内槽屋根第2領域に重なる前記外槽屋根の領域である外槽屋根第2領域を形成する外槽屋根第2領域形成工程と
を有することを特徴とする二重殻タンクの建設方法。
【請求項2】
前記内槽屋根第1領域が前記内槽屋根の中央領域であり、前記内槽屋根第2領域が前記内槽屋根の外周領域であることを特徴とする請求項1記載の二重殻タンクの建設方法。
【請求項3】
前記屋根形成工程にて、前記内槽屋根の全領域を形成してから前記内槽屋根第1領域検査工程を行うことを特徴とする請求項1または2記載の二重殻タンクの建設方法。
【請求項4】
前記屋根形成工程にて、前記内槽屋根第1領域検査工程及び前記外槽屋根第1領域形成工程との少なくともいずれかと同時に前記内槽屋根第2領域を形成することを特徴とする請求項1または2記載の二重殻タンクの建設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−233338(P2012−233338A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102069(P2011−102069)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】