説明

二重管装置および配管締結方法

【課題】二重管装置1において、部品点数および製造工数を低減するとともに、ゴム管12、13の外周に作用する締結力を周方向において均等にする。
【解決手段】二重管装置1は、内周管2および外周管4からなる二重管17の両端にゴム管12、13が接続することで構成され、外周管4は外周パーツ20、21からなり、外周パーツ20、21の各々の上流側の端部22、23がゴム管12の端部14の外周でスナップフィット方式により周方向に係合する。また、端部22、23は、周方向に係合する前の内周曲率が、ゴム管12の拡大外周曲率よりも小さい。これにより、端部22、23の係合により発生する復元力により外周パーツ20、21がゴム管12に圧接するため、外周管4がゴム管12、13と二重管17とを締結する締結手段として機能するの
で、クランプが不要となり部品点数および製造工数を低減でき、締結力を周方向において均等にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内外二重層を有する二重管装置、および、ゴム管の端部に配管を締結する配管締結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の二重管装置は、ゴム管の端部に二重管を挿入し、二重管が挿入されたゴム管の端部を外周からクランプにより締め付けることで設けられている。しかし、この二重管装置では、二重管とゴム管との締結部材としてクランプを使用するため、部品点数が多く、締付作業が必要となる。
【0003】
また、クランプによる締結では、ゴム管の外周に作用する締結力が周方向において部分的に弱くなる部位が生じ、気密性が保てなくなる虞がある。
なお、特許文献1には、配管の軸方向へ移動させるだけでゴム管と配管とを締結できるクランプが記載されている。しかし、部品点数が多い問題点や締結力が周方向において部分的に弱くなる問題点を解決することができない。
【特許文献1】特開平08−128578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、二重管装置において、部品点数および製造工数を低減するとともに、ゴム管の外周に作用する締結力を周方向において均等にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔請求項1の手段〕
請求項1に記載の二重管装置は、ゴム管の端部に挿入されて接続する内周管と、内周管の外周側に配されて、内周管と共に内外二重層を形成する外周管とを備える。そして、外周管は、少なくとも2つの外周管形成部材の端部が、内周管が挿入されたゴム管の端部の外周でスナップフィット方式により周方向に係合することで一体として設けられる。また、外周管形成部材の端部は、周方向に係合する前の内周曲率が、内周管が挿入されたゴム管の端部の外周曲率よりも小さい。
【0006】
これによれば、内周管が挿入されたゴム管の端部の外周で外周管形成部材の端部同士が係合すると、外周管形成部材の端部が外周側に弾性変形して内周曲率が拡大する。このため、内周曲率を縮小する方向に復元力が発生し、この復元力が二重管とゴム管との締結力として作用する。この結果、内外二重層の形成、およびゴム管と二重管との締結が同時になされ、外周管形成部材の端部がゴム管と二重管とを締結する締結手段として用いられるので、クランプが不要となり部品点数を低減できるとともに、クランプの締付作業が不要となり、製造工数を低減できる。
【0007】
また、個々の外周管形成部材は、互いに自身の変位を束縛し合いながらも、クランプのように一部材としてゴム管に圧接する場合よりも高い自由度でゴム管に圧接する。このため、外周管形成部材により圧接する場合の方が、クランプにより圧接する場合よりも、ゴム管の外周に作用する締結力が周方向において均等になる。
【0008】
〔請求項2の手段〕
請求項2に記載の二重管装置によれば、ゴム管の端部の外周に環状の突起が設けられている。
これによれば、ゴム管の端部の外周で外周管形成部材の端部同士が係合すると、外周管形成部材の内周がゴム管の外周に圧接して、突起が外周管形成部材の内周面に沿って圧延される。このため、外周管とゴム管との間の気密性を高めることができる。
【0009】
〔請求項3の手段〕
請求項3に記載の二重管装置によれば、互いに係合する2つの外周管形成部材のいずれか一方の外周管形成部材は、周方向に対して傾斜した傾斜面を有し、他方の外周管形成部材は、傾斜面に外周側から当接する当接部を有する。
これによれば、傾斜面に当接部が当接することで、径方向内周側へ向かう方向に分力が生じて、締結力が強化される。
【0010】
〔請求項4の手段〕
請求項4に記載の二重管装置は、内燃機関への吸気に伴う騒音を低減する消音デバイスに適用される。
【0011】
〔請求項5の手段〕
請求項5に記載の配管締結方法は、ゴム管の端部に配管を挿入するとともに、配管が挿入されたゴム管の端部を外周から締結手段により締め付ける配管締結方法であって、締結手段は、配管の外周側に配されて、配管と共に内外二重層を形成する外周管である。そして、外周管は、少なくとも2つの外周管形成部材の端部が、前記配管が挿入されたゴム管の端部の外周でスナップフィット方式により周方向に係合することで一体として設けられる。また、外周管形成部材の端部は、周方向に係合する前の内周曲率が、配管が挿入されたゴム管の端部の外周曲率よりも小さい。
これによれば、外周管を締結手段として用いることができるので、締結手段としてのクランプが不要となり、部品点数を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
最良の形態1の二重管装置は、ゴム管の端部に挿入されて接続する内周管と、内周管の外周側に配されて、内周管と共に内外二重層を形成する外周管とを備える。そして、外周管は、少なくとも2つの外周管形成部材の端部が、内周管が挿入されたゴム管の端部の外周でスナップフィット方式により周方向に係合することで一体として設けられる。また、外周管形成部材の端部は、周方向に係合する前の内周曲率が、内周管が挿入されたゴム管の端部の外周曲率よりも小さい。
そして、ゴム管の端部の外周に環状の突起が設けられている。
また、周方向に係合する2つの外周管形成部材のいずれか一方の外周管形成部材は、周方向に対して傾斜した傾斜面を有し、他方の外周管形成部材は、傾斜面に外周側から当接する当接部を有する。
そして、内燃機関への吸気に伴う騒音を低減する消音デバイスに適用される。
【実施例1】
【0013】
〔実施例1の構成〕
実施例1の二重管装置1の構成を、図1および図2を用いて説明する。二重管装置1は、内外二重層を形成し、例えば、内燃機関のスロットル装置とエアクリーナとの間に配されて、内燃機関への吸気に伴う騒音を低減する消音デバイスに用いられる。
【0014】
すなわち、二重管装置1は、吸気通路を形成する内周管2と、内周管2の外周側に配されて内周管2との間に筒状の消音層3を形成する外周管4とを備える。また、内周管2および外周管4は、各々の上流側の端部6、7および下流側の端部8、9が縮径して、ゴム管12、13の端部14、15を内外から狭持するようにゴム管12、13に接続している。すなわち、二重管装置1は、内周管2および外周管4からなる二重管17の両端にゴム管12、13が接続することで構成されている。
【0015】
内周管2は、断面が長円状の筒状に樹脂成形されており、端部6、8がゴム管12、13の端部14、15に挿入される。端部6、8の外周の曲率は、端部6、8が挿入される前のゴム管12、13の端部14、15の内周の曲率よりも大きく、ゴム管12、13の端部14、15は、内周管2の端部6、8の挿入により弾性変形して拡径している(以下、「外周の曲率」を外周曲率と略し、「内周の曲率」を内周曲率と略す)。
【0016】
外周管4は、内周管2よりも径大かつ内周管2の断面と相似形の長円状の断面を有し、軸方向に沿って分割された略同一形状の2つの外周管形成部材20、21から構成されている(以下、「外周管形成部材」を外周パーツと呼ぶ)。外周パーツ20、21の各々の上流側の端部22、23は、ゴム管12の端部14の外周でスナップフィット方式により周方向に係合し、下流側の端部24、25はゴム管13の端部15の外周でスナップフィット方式により周方向に係合する。そして、この係合により外周パーツ20、21は外周管4として一体をなす。なお、外周パーツ20、21も樹脂成形により設けられている。
【0017】
また、外周パーツ20、21の上流側の端部22、23は、周方向に係合する前の内周曲率が、内周管2が挿入されたゴム管12の外周曲率、つまり内周管2の挿入により拡径したゴム管12の外周曲率よりも小さい(以下、「拡径したゴム管12の外周曲率」をゴム管12の拡大外周曲率と呼ぶ)。そして、端部22、23がゴム管12の端部14の外周で係合すると、端部22、23が外周側に弾性変形して内周曲率が拡大する。このため、端部22、23では内周曲率を縮小する方向に復元力が発生し、端部22、23の内周面がゴム管12の端部14の外周面に圧接する。なお、下流側の端部24、25の内周面も同様に、ゴム管13の端部15の外周面に圧接している。
【0018】
また、ゴム管12、13の端部14、15の外周には環状の突起28、29が設けられている。そして、端部22、23および端部24、25が係合すると、外周パーツ20、21の内周がゴム管12、13の外周に圧接して、突起28、29が外周パーツ20、21の内周面に沿って圧延される。
【0019】
また、端部22、23のスナップフィット方式による係合は、端部22に設けられた嵌合爪30が、端部23の設けられた嵌合穴31に嵌め込まれることによってなされる。
ここで、端部22、23は各々、周方向に互いに係合する部分に、径方向に突出する突出部32、33を有している。そして、嵌合爪30は、突出部32の根元で周方向に突出するように設けられ、嵌合穴31は、突出部33の根元で周方向に貫通して設けられている。また、嵌合爪30は、端部22、23の係合により、嵌合穴31を貫通して突出部33に係合する先端部34と、嵌合穴31に内在する根元部35とからなる。そして、先端部34が突出部33に係合することで突出部32、33が周方向に圧接している。
【0020】
また、嵌合爪30は、根元部35の外周側に周方向に対して傾斜した傾斜面39を有し、突出部33の嵌合穴31よりも外周側の部分は、傾斜面39に外周側から当接する当接部40をなす。このように、傾斜面39に当接部40が当接することで、当接部40から傾斜面39に対し、径方向内周側へ向かう方向に分力が作用する。
【0021】
また、端部22は、嵌合爪30の内周側に、周方向に対して傾斜し内周側に臨む傾斜面42を有し、端部23は、嵌合穴31の内周側に、周方向に対して傾斜し外周側に臨む傾斜面43を有している。そして、端部22、23の係合により、傾斜面42が傾斜面43に外周側から面状に当接する。すなわち、嵌合爪30よりも内周側で傾斜面42を有する部分は、傾斜面43に外周側から当接する当接部44をなす。このように、傾斜面43に当接部44が当接することで、当接部44から傾斜面43に対し、径方向内周側へ向かう方向に分力が作用する。
なお、端部24、25の係合も、同様のスナップフィット方式により係合され、同様の分力が作用している。
【0022】
〔実施例1の効果〕
実施例1の二重管装置1では、外周パーツ20、21の各々の上流側の端部22、23がゴム管12の端部14の外周でスナップフィット方式により周方向に係合する。また、端部22、23は、周方向に係合する前の内周曲率が、ゴム管12の拡大外周曲率よりも小さい。
【0023】
これにより、内周管2が挿入されたゴム管12の端部14の外周で端部22、23が係合すると、端部22、23では、内周曲率を縮小する方向に復元力が発生し、この復元力が二重管17とゴム管12との締結力として作用する。なお、下流側の端部24、25でも同様に復元力が発生し、その復元力が二重管17とゴム管13との締結力として作用する。
【0024】
このため、内外二重層の形成、およびゴム管12、13と二重管17との締結が同時になされ、外周パーツ20、21の端部22〜25がゴム管12、13と二重管17とを締結する締結手段として機能するので、クランプが不要となり部品点数を低減できるとともに、クランプの締付作業が不要となり、製造工数を低減できる。
【0025】
また、外周パーツ20、21は、互いに自身の変位を束縛し合いながらも、クランプのように一部材としてゴム管12、13に圧接する場合よりも高い自由度でゴム管12、13に圧接する。このため、外周パーツ20、21により圧接する場合の方が、クランプにより圧接する場合よりも、ゴム管12、13の外周に作用する締結力が周方向において均等になる。
【0026】
また、ゴム管12の端部14の外周に環状の突起28が設けられている。これにより、端部14の外周で外周パーツ20、21の端部22、23が係合すると、端部22、23の内周が端部14の外周に圧接して、突起28が端部22、23の内周面に沿って圧延される。また、ゴム管13の端部15にも同様に突起29が設けられており、下流側の端部24、25が係合すると突起29が端部24、25の内周面に沿って圧延される。このため、外周管4とゴム管12、13との間の気密性を高めることができる。
【0027】
さらに、外周パーツ20は傾斜面39を有し、外周パーツ21は傾斜面39に外周から当接する当接部40を有し、また、外周パーツ21は傾斜面43を有し、外周パーツ20は傾斜面43に外周から当接する当接部44を有している。
これにより、当接部40から傾斜面39に対し、径方向内周側へ向かう方向に分力が作用し、当接部44から傾斜面43に対し、径方向内周側へ向かう方向に分力が作用する。このため、傾斜面39に作用する分力、および傾斜面43に作用する分力の2重の分力により締結力が強化される。
【0028】
〔変形例〕
実施例1の二重管装置1によれば、外周管4は、軸方向に沿って分割された2つの外周パーツ20、21から構成されていたが、3つ以上の外周パーツにより構成してもよい。
また、実施例1の二重管装置1によれば、端部22、23および端部24、25のスナップフィット方式による係合は、周方向に突出した嵌合爪30が周方向に貫通した嵌合穴31に嵌め込まれることによってなされるものであったが、このような形態に限定されず、例えば、周方向に突出した凸部を、周方向に窪む凹部に圧入して嵌着することで端部22、23および端部24、25を係合させてもよい。
また、実施例1の二重管装置1は、スロットル装置とエアクリーナとの間に配されていたが、エアクリーナよりも上流に配してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】二重管装置の側部断面図である(実施例1)。
【図2】(a)は、図1のA−A断面図であり、(b)は、(a)の部分拡大図である(実施例1)。
【符号の説明】
【0030】
1 二重管装置
2 内周管
3 消音層
4 外周管
12、13 ゴム管
14、15 ゴム管の端部
20、21 外周パーツ(外周管形成部材)
22〜25 外周パーツの端部
28、29 突起
39、43 傾斜面
40、44 当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム管の端部に挿入されて接続する内周管と、
前記内周管の外周側に配されて、前記内周管と共に内外二重層を形成する外周管とを備え、
前記外周管は、
少なくとも2つの外周管形成部材の端部が、前記内周管が挿入された前記ゴム管の端部の外周でスナップフィット方式により周方向に係合することで一体として設けられ、
前記外周管形成部材の端部は、
周方向に係合する前の内周曲率が、前記内周管が挿入された前記ゴム管の端部の外周曲率よりも小さいことを特徴とする二重管装置。
【請求項2】
請求項1に記載の二重管装置において、
前記ゴム管の端部の外周に環状の突起が設けられていることを特徴とする二重管装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の二重管装置において、
互いに係合する前記2つの外周管形成部材のいずれか一方の外周管形成部材は、周方向に対して傾斜した傾斜面を有し、
他方の外周管形成部材は、前記傾斜面に外周側から当接する当接部を有することを特徴とする二重管装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の二重管装置において、
内燃機関への吸気に伴う騒音を低減する消音デバイスに適用されることを特徴とする二重管装置。
【請求項5】
ゴム管の端部に配管を挿入するとともに、前記配管が挿入された前記ゴム管の端部を外周から締結手段により締め付ける配管締結方法であって、
前記締結手段は、
前記配管の外周側に配されて、前記配管と共に内外二重層を形成する外周管であり、
前記外周管は、
少なくとも2つの外周管形成部材の端部が、前記配管が挿入された前記ゴム管の端部の外周でスナップフィット方式により周方向に係合することで一体として設けられ、
前記外周管形成部材の端部は、
周方向に係合する前の内周曲率が、前記配管が挿入された前記ゴム管の端部の外周曲率よりも小さいことを特徴とする配管締結方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−24755(P2009−24755A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187261(P2007−187261)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】