説明

二量体及び多量体FVIIa化合物

本発明はFVIIaポリペプチドの本来備わっている触媒活性を保持するように、少なくとも2つのFVIIaポリペプチドが共有結合で接続される二量体または多量体FVIIa化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(技術分野)
本発明は、新規なFVIIa化合物、それらの合成方法、新規な化合物を含有する医薬組成物、加えて凝固障害の治療におけるそれらの使用に関する。
【0002】
(発明の背景)
血液凝固第VIIa因子(FVIIa)は、止血の重要な開始因子である。該因子は機能的な循環半減期が約1−3時間である50kDaの血漿タンパク質である。チモーゲンであるFVIIは触媒として不活性な単鎖タンパク質であって、内部のArg152-Ile153ペプチド結合の切断により触媒として活性な二本鎖チモーゲンFVIIaへ変換される。FVIIaは、凝血因子欠乏または凝血因子阻害剤によって生じる多様な凝固障害の治療のための治療用タンパク質として広く使われている。また、FVIIaは正常に機能する血液凝固カスケードで患者に起こった過度の出血を制御するためにも用いられている。このような出血は、外科手術中や組織障害の他の病状に加えて、例えば欠陥のある血小板機能、血小板減少症、フォンウィルブランド病によっても引き起こされることがある。
【0003】
FVIIaの治療適用の多くで、天然FVIIaに対する改良された特性を有するFVIIa変異体を使用して治療を行うことが望ましい。増強された生物学的活性を有するFVIIa変異体が望ましい分野の一つは、FVIIaの効果が最適状態に及ばないために、従来のrFVIIaに部分的にまたは完全に難治性の制御されない出血の治療である。現在、これらのいわゆるスーパーアクティブFVIIa変異体は、それらの作用機序によって2つのクラスに分けることができる。1つのグループは、触媒能のある状態に向かってタンパク質の高次構造上の平衡をシフトさせることにより生じた上昇したタンパク質分解活性を有する変異体を含む。例えば、Persson等(2001a)、(2001b)、(2002)、(2004) 及び Soejima等(2002)を参照。他方のグループは、主に、アニオン性リン脂質膜に対し上昇した親和性を呈する最適化されたGLAドメインを有する変異体である(Shah等(1998)、Nelsestuen等(2001) 及び Harvey等(2003))。上昇したリン脂質結合性が、血管損傷部位で、活性化された血小板膜上にFVIIaを局所化して集中させるのに役立ち、それによって止血を促進していると考えられている。
【0004】
例えばPEG化または脂質連結などの共有結合による修飾は、いくつかのタンパク質を基礎とする薬剤学に成功裏に適用され、それらの薬物動態学的および薬力学的プロファイルを改善している。天然または改変されたシステイン結合は、タンパク質の表面、特に細胞によって分泌されたものの表面上にこのアミノ酸が稀であることと、加えてチオールカップリング化学剤の高い選択性のおかげで、部位特異的修飾の魅力的な手段を提供する。天然FVIIaにおける遊離チオールの欠如は、循環半減期の延長が改変された溶媒-露出性システインの修飾、例えばPEG化によって達成できるかもしれないという提案を導いている(例えば、WO02/077218A1およびWO01/58935A2を参照)。
【0005】
したがって、WO01/58935A2は、非ポリペプチド部分とのFVIIaコンジュゲートおよびそれらの調製法を開示する。とりわけ、非ポリペプチド部分が1つのシステインを介してFVIIaポリペプチドに結合することが示唆されている。同様に、WO02/077218A1は、化学基とのFVIIaポリペプチドコンジュゲートおよびそれらの調製法を開示している。とりわけ、化学基が1つのシステインを介してFVIIaポリペプチドに結合することが示唆されている。
【0006】
しかしながら、実際にはこの方法が薬物動態学的および薬力学的プロファイルの最適な適合、例えば高い活性や延長された循環半減期などを有するFVIIa化合物を必ずしも保証するというわけではない。
【0007】
したがって、製造、取扱、及び製剤に関する許容可能な生理化学的特性と同様に、高い特異的活性、延長された血漿半減期を呈する改良されたFVIIa化合物が必要である。
【0008】
WO03/076461は二量体組織因子アンタゴニストと、例えば血管性疾患および炎症性疾患の治療におけるそれらの使用を開示する。
【0009】
SE9501285Aは、タンパク質ジスルフィド酸化還元酵素(例えばタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI))、グルタレドキシンおよび酸化還元バッファーの混合液を使った、適正に折り畳まれた生物学的に活性なジスルフィド架橋結合タンパク質の生体外産生方法を開示する。この文献は、分子内ジスルフィド結合に含まれるシステインに焦点を置いている。
【0010】
(発明の概要)
既知のFVIIa化合物の上記の限界を克服するために、本発明は、ここで、FVIIaポリペプチドの本来備わっている触媒活性を保持するために、少なくとも2つのFVIIaポリペプチドが共有結合により連結して成る二量体および多量体FVIIa化合物を提供する。驚くべきことに、そのようなFVIIa化合物はスーパー活性を示し、これは2つ以上のFVIIaポリペプチドが共有結合により連結される時に結合活性効果が起こり、結果として増強した膜親和性が呈されると考えられている。
【0011】
一態様では、本発明は、2つのFVIIaポリペプチドが共有結合で連結し二量体FVIIa化合物を形成して、FVIIa化合物を提供する。一実施態様において、FVIIaポリペプチドは、前記FVIIaポリペプチドの改変されたシステインを介して共有結合により連結される。別の実施態様では、2つの同一のFVIIaポリペプチドが共有結合により連結され、二量体FVIIa化合物を形成する。
【0012】
別の態様において、本発明は、構成要素FVIIaポリペプチド間にリンカーを含有する二量体または多量体FVIIa化合物を提供する。
【0013】
「本来備わっている触媒活性を保持する」なる用語は、二量体または多量体FVIIaポリペプチドが、構成要素のFVIIaポリペプチドと実質的に同等(例えば、本願明細書において開示される分析による測定で、活性部位濃度が少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%)のペプチド分解活性を有する特性を指す。
【0014】
(発明の詳細な説明)
本発明は、上記のように、FVIIaポリペプチドの本来備わっている触媒活性を保持するために、少なくとも2つのFVIIaポリペプチドが共有結合で連結された二量体および多量体FVIIa化合物を提供する。一実施態様において、二量体または多量体FVIIa化合物は、本願明細書において開示される分析で測定されるように(参照、実施例1)、構成要素のFVIIaポリペプチドの活性部位濃度の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%の活性部位濃度を有する。別の実施態様では、二量体または多量体FVIIa化合物は、構成要素のFVIIaポリペプチドの生物学的活性と比較して増強した生物学的活性を有する。
【0015】
本発明の好ましい態様において、2つのFVIIaポリペプチドは共有結合で連結し、二量体FVIIa化合物を形成する。したがって、二量体FVIIaは、通常約100kDaより大きい分子量を有する。
【0016】
別の態様において、本発明はFVIIaポリペプチドの本来備わっている触媒活性を保持するために、例えば少なくとも3つのFVIIaポリペプチドが共有結合で連結して成る多量体FVIIa化合物を提供する。
【0017】
FVIIaポリペプチド
多数の異なるFVIIaポリペプチドは、本発明に従って共有結合で連結され、二量体または多量体FVIIa化合物を形成してもよい。
【0018】
本願明細書において使用する「第VII因子ポリペプチド」または「FVIIポリペプチド」なる用語は、不活性な一本鎖チモーゲン第VII因子分子およびその変異体を意味する。一本鎖チモーゲン第VII因子は406のアミノ酸残基を含むポリペプチドであり、そのうちの10はγ-カルボキシル化グルタミン酸残基、N-グリコシル化アスパラギン残基(番号145および番号322)、52と60の位置のO-グリコシル化セリン残基である。FVII変異体の型は、一つ以上のアミノ酸が置換、付加、または欠失している分子、GLA残基の数が異なる分子、修飾されたまたは不完全なグリコシル化パターンを有する分子を含む。アミノ酸残基の修飾の非制限的な例は、アミド化、アルキル化、アシル化およびPEG化である。
【0019】
本願明細書で使用する「第VIIa因子ポリペプチド」または「FVIIaポリペプチド」なる用語は、活性な2本鎖のFVIIaおよびその変異体を意味する。2本鎖のFVIIaは、FVIIのArg152-Ile153ペプチド結合の加水分解によって、FVIIから産生されるポリペプチドである。FVIIaも、また406のアミノ酸残基を含み、そのうちの10はγ-カルボキシル化グルタミン酸残基、N-グリコシル化アスパラギン残基(番号145および番号322)、52と60の位置のO-グリコシル化セリン残基である。FVIIa変異体の型には、一つ以上のアミノ酸が置換、付加、または欠失している分子、GLA残基の数が異なる分子、修飾されたまたは不完全なグリコシル化パターンを有する分子を含む。
【0020】
本願明細書で使用する「GLA」なる用語は、4-カルボキシグルタミン酸(γ-カルボキシグルタメート)を意味する。
【0021】
本願明細書で使用する「ポリペプチド」なる用語は、共有結合でポリペプチド結合によって連結する少なくとも5つの構成要素アミノ酸残基を含んでなる化合物を意味する。構成要素アミノ酸が遺伝コードによってコードされるアミノ酸のグループに由来してもよく、遺伝コードによってコードされていない天然アミノ酸であってもよく、加えて合成アミノ酸でもよい。遺伝コードによってコードされていない天然アミノ酸は、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキ-シグルタミン酸、オルニチン、ホスホセリン、D-アラニン、D-グルタミン酸である。合成アミノ酸は、有機合成によって製造されるアミノ酸、例えば遺伝コードによってコードされるアミノ酸のD-異性体およびAib(α-アミノイソ酪酸)、Abu(α-アミノ酪酸)、Tle(tert-ブチルグリシン)およびβ-アラニンを含む。ポリペプチドは、一本鎖であるFVIIおよび二本鎖がジスルフィド結合によって連結したFVIIaのように、単一のペプチド鎖を含んでもよく、または複数のポリペプチド鎖を含んでもよい。
【0022】
本願明細書で使用する「第VIIa因子誘導体」または「FVIIa誘導体」なる用語は、例えばアルキル化、グリコシル化、脱グリコシル化、PEG化、アシル化、エステル形成またはアミド形成等々によって、親ペプチドの一つ以上のアミノ酸が遺伝的におよび/または化学的におよび/または酵素的に修飾された、野生型の第VIIa因子と比較して実質的に同等か改良された生物学的活性を呈するFVIIaポリペプチドを示す。これは、PEG化第VIIa因子、システイン-PEG化ヒト第VIIa因子およびその変異体を含むが、これに限定されるものではない。
【0023】
「PEG化第VIIa因子」等の用語は、PEG分子が結合した第VIIa因子ポリペプチドを意味する。PEG分子が、第VIIa因子ポリペプチドの任意のアミノ酸残基または糖鎖を含む任意の部分に付加できることが分かっている。「システイン-PEG化第VIIa因子」なる用語は、第VIIa因子ポリペプチドの非天然システインのスルフヒドリル基に結合するPEG分子を有する第VIIa因子ポリペプチドを意味する。
【0024】
FVIIa誘導体の非制限的な例は、WO03/31464および米国特許出願US20040043446、US20040063911、US20040142856、US20040137557、およびUS20040132640(Neose Technologies社)に記載されているような糖・PEG化FVIIa誘導体と、WO01/04287、US20030165996、WO01/58935、WO03/93465(マキシジェンApS社)およびWO02/02764、US20030211094(ミネソタ大学))に記載されているようなFVIIaコンジュゲートを含む。
【0025】
「改良された生物学的活性」なる用語は、i)組換え野生型ヒト第VIIa因子と比較して、実質的に同程度あるいは増加したタンパク分解活性を有するFVIIaポリペプチドを、またはii)組換え野生型ヒト第VIIa因子と比較して、実質的に同程度あるいは増加したTF結合活性を有するFVIIaポリペプチドを、またはiii)組換え野生型ヒト第VIIa因子と比較して、実質的に同程度あるいは増加した血漿半減期を有するFVIIaポリペプチドを指す。
【0026】
「PEG化ヒト第VIIa因子」なる用語は、ヒト第VIIa因子ポリペプチドに結合したPEG分子を有するヒト第VIIa因子を意味する。PEG分子が、第VIIa因子ポリペプチドの任意のアミノ酸残基または糖鎖を含む任意の部分に付加できることが分かっている。「システイン-PEG化ヒト第VIIa因子」なる用語は、ヒト第VIIa因子に導入したシステインのスルフヒドリル基に結合するPEG分子を有する第VIIa因子を意味する。
【0027】
組換え野生型ヒト第VIIa因子と比較して、実質的に同程度あるいは増加したタンパク分解活性を有する第VIIa因子ポリペプチドの非制限的な例は、S52A-FVIIa、S60A-FVIIa ( Lino等、Arch. Biochem. Biophys. 352: 182-192、1998);米国特許第5580560号にて開示されているタンパク分解の安定性が増加したFVIIa変異体;残基290と291の間で、または残基315と316の間でタンパク質加水分解で切断されている第VIIa因子(Mollerup等, Biotechnol. Bioeng. 48:501-505, 1995);酸化型第VIIa因子(Kornfelt等, Arch. Biochem. Biophys. 363:43-54, 1999);PCT/DK02/00189(WO02/077218に対応)にて開示されているFVIIa変異体;WO02/38162(スクリップス研究所)にて開示されているタンパク分解の安定性が増加したFVIIa変異体;WO99/20767、米国特許第6017882号および第6747003号、US20030100506 (ミネソタ大学) およびWO00/66753、US20010018414、US2004220106、およびUS200131005、米国特許第6762286号および第6693075号(ミネソタ大学)にて開示されている修飾されたGla-ドメインを有し増強された膜結合を呈するFVIIa変異体;WO01/58935、米国特許第6806063号、US20030096338(マキシジェンApS社)、WO03/93465(マキシジェンApS社)、WO04/029091(マキシジェンApS社)、WO04/083361(マキシジェンApS社)、およびWO04/111242(マキシジェンApS社)、加えてWO04/108763(カナダ血液サービス)で開示されているFVIIa変異体を含む。
【0028】
野生型ヒトFVIIaと比較して、増加した生物学的活性を有するFVIIaポリペプチドの非制限的な例は、WO01/83725、WO02/22776、WO02/077218、PCT/DK02/00635(WO03/027147に対応する)、デンマーク特許出願PA200201423(WO04/029090に対応する)、デンマーク特許出願PA200101627(WO03/027147に対応する)にて開示されているFVIIa変異体;WO02/38162(スクリップス研究所);およびJP2001061479(Chemo-Sero-Therapeutic Res Inst.)にて開示されている、増強された活性を有するFVIIa変異体を含む。
【0029】
興味深い「改変された」FVIIaポリペプチドの特異的な具体例は、WO02/077218A1(ノボ・ノルディスクA/S社)およびWO01/58935A2(マキシジェンApS社)の21-24ページにおいて開示されている第VIIa因子ポリペプチドである。
【0030】
特に興味深いのは、システイン残基が導入されたFVIIaポリペプチドである。システイン残基が導入される部位の例は、タンパク分解性が低下する部位かまたはその周辺を含むが、これに限定されるものではない。このように、本発明の興味深い実施態様において、好ましくは置換によって、導入されるシステイン残基は、I30C、K32C、D33C、A34C、T37C、K38C、W41C、Y44C、S45C、D46C、L141C、E142C、K143C、R144C、L288C、D289C、R290C、G291C、A292C、S314C、R315C、K316C、V317C、L390C、M391C、R392C、S393C、E394C、P395C、R396C、P397C、G398C、V399C、L401C、R402C、A403C、P404Cおよびその組合せからなる群から選択され、そして特にK32C、Y44C、K143C、R290C、R315C、K341C、R392C、R396C、R402Cおよびその組合せから成る群から選択される。本発明の更なる興味深い実施態様において、システイン残基は、野生型hFVIIにおいて、少なくともその側鎖の25%が表面にさらさているスレオニンまたはセリン残基によって占められる位置に導入される。例えば、第VIIa因子ポリペプチドにおいて、好ましくは置換によって、導入されるシステイン残基は、S12、S23、S43、S45、S52、S53、S60、S67、T83、S103、T106、T108、S111、S119、S126、T128、T130、S147、T185、S214、S222、S232、T233、T238、T239、T255、T267、T293、T307、S320、T324、S333、S336、T370およびS393からなる群から選択される少なくとも一つの位置に導入される。さらにより好ましくは、システイン残基はS残基を含むヒトhFVIIの少なくとも一つの位置に導入され、その位置はS12、S23、S43、S45、S52、S53、S60、S67、S103、S111、S119、S126、S147、S214、S222、S232、S320、S333、S336およびS393からなる群から選択される。本発明の更なる興味深い実施態様において、システイン残基は、野生型hFVIIにおいて、少なくともその側鎖の50%が表面にさらされているスレオニンまたはセリン残基によって占められる位置に導入される。例えば、第VII因子ポリペプチドにおいて、好ましくは置換によって、導入されるシステイン残基は、S23、S43、S52、S53、S60、S67、T106、T108、S111、S119、S147、S214、T238、T267およびT293からなる群から選択される少なくとも一つの位置に導入され、さらにより好ましくは、S23、S43、S52、S53、S60、S67、S111、S119、S147およびS214からなる群から選択される位置である。より更なる実施態様において、システイン残基は上記の位置のいずれかから選ばれる少なくとも一つの位置に導入され、それは活性部位領域ではない。好ましくは、該位置はT残基またはS残基によって占められている。例えば、第VII因子ポリペプチドは、S12、S23、S43、S45、S52、S53、S60、S67、T83、S103、T106、T108、S111、S119、S126、T128、T130、S147、T185、S214、S222、T255、T267、T307、S320、S333、S336、T370およびS393(その側鎖の25%以上が表面にさらされている)からなる群から選択される少なくとも一つの位置に導入されるシステイン残基を含んで成り、特に、S12、S23、S43、S45、S52、S53、S60、S67、S103、S111、S1 19、S 126、S147、S214、S222、S320、S333、S336およびS393(S残基によって占められている)、より好ましくはS23、S43、S52、S53、S60、S67、T106、T108、S111、S119、S147、S214およびT267(その側鎖の50%以上が表面にさらされている)からなる群から選択され、特にS23、S43、S52、S53、S60、S67、S111、S119、S147およびS214(S残基によって占められている)からなる群から選択される。より更なる実施態様において、システイン残基は上記リストのいずれかから選ばれる少なくとも一つの位置に導入され、それは組織因子結合部位領域ではない。好ましくは、該位置はT残基またはS残基によって占められている。例えば、第VII因子ポリペプチドは、S12、S23、S45、S52、S53、S67、T83、S103、T106、T108、S111、S119、S126、T128、T130、S147、T185、S214、S222、S232、T233、T238、T239、T255、T267、T293、S320、T324、S333、S336、T370およびS393(その25%以上が表面にさらされる側鎖を有する)からなる群から選択される少なくとも一つの位置に導入されるシステイン残基を含んで成り、特にS12、S23、S45、S52、S53、S67、S103、S111、S119、S126、S147、S214、S222、S232、S320、S333、S336およびS393(S残基によって占められている)からなる群から選択され、より好ましくはS23、S52、S53、S67、T106、T108、S111、S119、S147、S214、T238、T267およびT293(その側鎖の50%以上が表面にさらされている)からなる群から選択され、特にS23、S52、S53、S67、S111、S119、S147およびS214(S残基によって占められている)からなる群から選択される。より更なる実施態様において、システイン残基が少なくとも上記リストのいずれかから選ばれる少なくとも1つの位置に導入され、それは組織因子結合部位領域あるいは活性部位領域のどちらにも位置しない。好ましくは、該位置はT残基またはS残基によって占められている。例えば、第VII因子ポリペプチドは、S12、S23、S45、S52、S53、S67、T83、S103、T106、T108、S111、S119、S126、T128、T130、S147、T185、S214、S222、T255、T267、S320、S333、S336、T370およびS393(その側鎖の25%以上が表面にさらされている)からなる群から選択される少なくとも一つの位置に導入されるシステイン残基を含んで成り、特にS12、S23、S45、S52、S53、S67、S103、S111、S119、S126、S147、S214、S222、S320、S333、S336およびS393(S残基によって占められている)からなる群から選択されて、より好ましくはS23、S52、S53、S67、T106、T108、S111、S119、S147、S214およびT267(その側鎖の50%以上が表面にさらされている)からなる群から選択され、特にS23、S52、S53、S67、S111、S119、S147およびS214(S残基によって占められている)からなる群から選択される。
【0031】
第VIIa因子ポリペプチドの他の有用な例は、247−260、393−405または406、特にR396、Q250またはP406またはK157、V158、M298、L305、D334、S336、K337またはF374から選択される位置のアミノ酸がシステインによって置換されているかまたはシステインが端末に導入されたもの(例えばFVIIa407C)を含む。
【0032】
好適な一連の実施態様において、FVIIaポリペプチドは、FVIIa407C、FVIIa407C変異体、FVIIaP406C、FVIIaP406C変異体、FVIIaR396C、FVIIaR396C変異体、FVIIaQ250CまたはFVIIaQ250C変異体である。
【0033】
別の実施態様において、FVIIaポリペプチドは、最適化されたGLAドメインを有するFVIIa変異体であり、例えばY4(挿入)、P10Q、K32E、D33F、D33EおよびA34Eの組合せである。
【0034】
さらに別の実施態様において、FVIIaポリペプチドは、本来備わっているタンパク分解活性が増加されたFVIIa変異体であり、例えばM298Q、V158D/E296V/M298Q、V158D/E296V/M298Q/K337A、F374Y/L305V、F374Y/L305V/S314E/K337A、F374Y/L305V/S314E、F374Y/L305V/K337A、L305V/K337A、V158D/E296V/M298Q/L305V、V158D/E296V/M298Q/L305V/K337A、V158T/M298Q、E296V/M298Q、V158D/E296V、V158D/M298Qおよびそれらの407C変異体からなる群から選択される置換を含む。
【0035】
さらに別の実施態様において、FVIIaポリペプチドは、FVIIa変異体であり、L305V、L305V/M306D/D309S、L305I、L305T、F374P、V158T/M298Q、V158D/E296V/M298Q、K337A、M298Q、V158D/M298Q、L305V/K337A、V158D/E296V/M298Q/L305V、V158D/E296V/M298Q/K337A、V158D/E296V/M298Q/L305V/K337A、K157A、E296V、E296V/M298Q、V158D/E296V、V158D/M298K、S336G、L305V/K337A、L305V/V158D、L305V/E296V、L305V/M298Q、L305V/V158T、L305V/K337A/V158T、L305V/K337A/M298Q、L305V/K337A/E296V、L305V/K337A/V158D、L305V/V158D/M298Q、L305V/V158D/E296V、L305V/V158T/M298Q、L305V/V158T/E296V、L305V/E296V/M298Q、L305V/V158D/E296V/M298Q、L305V/V158T/E296V/M298Q、L305V/V158T/K337A/M298Q、L305V/V158T/E296V/K337A、L305V/V158D/K337A/M298Q、L305V/V158D/E296V/K337A、L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A、L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A、S314E/K316H、S314E/K316Q、S314E/L305V、S314E/K337A、S314E/V158D、S314E/E296V、S314E/M298Q、S314E/V158T、K316H/L305V、K316H/K337A、K316H/V158D、K316H/E296V、K316H/M298Q、K316H/V158T、K316Q/L305V、K316Q/K337A、K316Q/V158D、K316Q/E296V、K316Q/M298Q、K316Q/V158T、S314E/L305V/K337A、S314E/L305V/V158D、S314E/L305V/E296V、S314E/L305V/M298Q、S314E/L305V/V158T、S314E/L305V/K337A/V158T、S314E/L305V/K337A/M298Q、S314E/L305V/K337A/E296V、S314E/L305V/K337A/V158D、S314E/L305V/V158D/M298Q、S314E/L305V/V158D/E296V、S314E/L305V/V158T/M298Q、S314E/L305V/V158T/E296V、S314E/L305V/E296V/M298Q、S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q、S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q、S314E/L305V/V158T/K337A/M298Q、S314E/L305V/V158T/E296V/K337A、S314E/L305V/V158D/K337A/M298Q、S314E/L305V/V158D/E296V/K337A、S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A、S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A、K316H/L305V/K337A、K316H/L305V/V158D、K316H/L305V/E296V、K316H/L305V/M298Q、K316H/L305V/V158T、K316H/L305V/K337A/V158T、K316H/L305V/K337A/M298Q、K316H/L305V/K337A/E296V、K316H/L305V/K337A/V158D、K316H/L305V/V158D/M298Q、K316H/L305V/V158D/E296V、K316H/L305V/V158T/M298Q、K316H/L305V/V158T/E296V、K316H/L305V/E296V/M298Q、K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q、K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q、K316H/L305V/V158T/K337A/M298Q、K316H/L305V/V158T/E296V/K337A、K316H/L305V/V158D/K337A/M298Q、K316H/L305V/V158D/E296V/K337A、K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A、K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A、K316Q/L305V/K337A、K316Q/L305V/V158D、K316Q/L305V/E296V、K316Q/L305V/M298Q、K316Q/L305V/V158T、K316Q/L305V/K337A/V158T、K316Q/L305V/K337A/M298Q、K316Q/L305V/K337A/E296V、K316Q/L305V/K337A/V158D、K316Q/L305V/V158D/M298Q、K316Q/L305V/V158D/E296V、K316Q/L305V/V158T/M298Q、K316Q/L305V/V158T/E296V、K316Q/L305V/E296V/M298Q、K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q、K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q、K316Q/L305V/V158T/K337A/M298Q、K316Q/L305V/V158T/E296V/K337A、K316Q/L305V/V158D/K337A/M298Q、K316Q/L305V/V158D/E296V/K337A、K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A、K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337Aおよびそれらの407C変異体から成る群から選択される置換を含む。
【0036】
さらに別の実施態様において、FVIIaポリペプチドはPEG化である。PEG化が二量体または多量体FVIIa化合物の形成前に実施できること、または二量体または多量体FVIIa化合物の形成後に実施できることが分かっている。
【0037】
さらに別の実施態様において、FVIIa化合物は、2つのFVIIaポリペプチドを含む二量体である。さらに別の実施態様において、FVIIa化合物は、3つのFVIIaポリペプチドを含む三量体である。さらに別の実施態様において、FVIIa化合物は、4つのFVIIaポリペプチドを含む四量体である。
【0038】
二量体および多量体FVIIa化合物
一連のカップリング剤を、リンカー部分を任意に含んでもよい二量体または多量体FVIIa化合物を産生するために使用できる。
【0039】
好ましい実施態様において、共有結合で連結し二量体または多量体FVIIaを形成するFVIIa化合物は同一のFVIIaポリペプチドである。別の実施態様において、共有結合で連結し二量体または多量体FVIIaを形成するFVIIa化合物は2つの異なるFVIIaポリペプチドである。
【0040】
特に好適な実施態様において、二量体または多量体FVIIa化合物は、前記FVIIaポリペプチドの改変されたシステインを介して共有結合で連結される少なくとも2つのFVIIaポリペプチドを含む。システインを介して連結されるFVIIaポリペプチドから成る該二量体または多量体の合成には、下記に開示する選択的に還元したFVIIaポリペプチドを産生する方法が有用である。別の実施態様において、本発明による二量体または多量体FVIIa化合物は、構成要素FVIIaポリペプチド間のリンカーを含む。このようなリンカーの一クラスは、二価のシステイン反応性PEGを含む反応から生じる構造を有するリンカーである。好適なこのようなリンカーは、マレイミド-PEG-マレイミドを含む反応から生じる構造を有する。例えばマレイミド-PEG2kD-マレイミド、マレイミド-PEG3.4kD-マレイミド、マレイミド-PEG5kD-マレイミド、マレイミド-PEG10kD-マレイミドおよびマレイミド-PEG20kD-マレイミドである。別の実施態様では、前記リンカーはアミノ酸配列を含む。
【0041】
さらに別の実施態様において、本発明による二量体または多量体FVIIa化合物は、遊離アミンを介して共有結合で連結するFVIIaポリペプチドを含む。
【0042】
さらに別の実施態様において、本発明による二量体または多量体FVIIa化合物は、天然または改変されたグリカンを介して該FVIIaポリペプチドに共有結合で連結するFVIIaポリペプチドを含む。
【0043】
さらに別の実施態様において、本発明による二量体または多量体FVIIa化合物は、例えばトランスグルタミナーゼまたはソートアーゼによる、酵素で触媒されるカップリング反応から生じる化学構造を介して共有結合で連結する少なくとも2つのFVIIaポリペプチドを含む。
【0044】
二量体または多量体FVIIa化合物が改変されたシステインを介して共有結合で連結するFVIIaポリペプチドを含む場合において、好適なFVIIaポリペプチドは、FVIIa407C、FVIIa407C変異体、FVIIaP406C、FVIIaP406C変異体、FVIIaR396C、FVIIaR396C変異体、FVIIaQ250C、およびFVIIaQ250C変異体から選択される。
【0045】
本発明の範囲内には、二量体または多量体FVIIa化合物とプロトラクター基(例えば、ヒト血清アルブミンまたはその変異体、PEG部分、親油性部分など)の間のコンジュゲートがある。
【0046】
一般に、本発明による二量体または多量体FVIIa化合物は、以下の工程を含む方法によって調製されることが望ましい:
a) 前記FVIIaポリペプチドの合成および精製;
b) 前記FVIIaポリペプチドのカップリングによる前記化合物の合成;
c) 前記二量体または多量体FVIIa化合物の単離。
【0047】
システインカップリング剤を使用する場合は、本発明による二量体または多量体FVIIa化合物は、以下の工程を含む方法によって調製されることが望ましい:
a) 前記FVIIaポリペプチドの合成および精製;
b) 連結されるFVIIaポリペプチド上のシステイン残基の選択還元;
c) 活性リンカーの存在下で、前記FVIIaポリペプチドと還元されたシステイン残基のカップリングによる前記二量体または多量体FVIIa化合物の合成;
d) 前記二量体または多量体FVIIa化合物の単離。
【0048】
この方法の好ましい実施態様において、工程b)は、酸化還元バッファーまたはトリアリールホスフィン還元剤(選択還元の下記のセクションを参照)を伴う反応によるFVIIaポリペプチド上のシステイン残基の選択還元を含む。
【0049】
FVIIa単量体の非天然システインの選択還元
上記のように、二量体または多量体FVIIa化合物を構成要素FVIIa分子またはFVII分子から非天然システインを介して合成するときは、カップリングの前にFVIIaまたはFVIIポリペプチドの非天然システインを選択的に還元することが必要であろう。FVIIaおよびFVIIポリペプチドは、通常は低分子量チオール(RS-Cys)にジスルフィド架橋を介して結合する一つ以上のシステイン部分を含み、該部分はFVIIaポリペプチドがその活性型である時に、分子内S-S架橋(Cys-S-S-Cys)に含まれていない。
【0050】
酸化還元バッファーを使用する選択還元
選択還元の一方法は、低分子量チオール結合FVIIaポリペプチドを酸化還元バッファーを含む混合液と反応させる工程を含む。
【0051】
本願明細書において使われる場合「酸化還元バッファー」なる用語は、FVIIaまたはFVIIポリペプチド-低分子量チオール混合ジスルフィド(RS-Cys)を崩壊させるための十分な還元と同時に、FVIIaポリペプチドの天然ジスルフィド結合の完全性を保存するための十分な酸化の比率のチオール/ジスルフィドの酸化還元ペアを意味するものである。
【0052】
好ましくは、酸化還元バッファーは、低分子量チオール/ジスルフィド酸化還元ペアを含む。「低分子量」なる用語は、酸化還元ペアのチオール型が多くても500グラム/モルの分子量を有することを意味する。このような酸化還元ペアの具体例は、(i)還元型および酸化型グルタチオン、および(ii)還元型および酸化型γ-グルタミルシステイン、(iii)還元型および酸化型システイニルグリシン、(iv)還元型および酸化型システイン、(v)還元型および酸化型N-アセチルシステイン、(vi)システアミン、および(vii)ジヒドロリポアミド/リポアミドから選択され、より好ましくは(i)還元型および酸化型グルタチオンから選択される。
【0053】
最適な酸化還元状態は、当業者に知られているように、および図2、3および4において示されるように、タンパク質の酸化還元滴定を実施することによって推定することができる;Gilbert (1995)も参照。
【0054】
一実施態様において、酸化還元バッファーは還元型および酸化型グルタチオンの酸化還元ペアであり、還元型グルタチオンの濃度は0−100mMの範囲であり、還元型グルタチオンと酸化型グルタチオン間の比率は2−200の範囲である。
【0055】
別の実施態様では、酸化還元バッファーは還元型および酸化型グルタチオンの酸化還元ペアであり、還元型グルタチオンの濃度は0−100mMの範囲であって、例えば0.01−50mMであり、酸化型グルタチオンの濃度は0−5mMの範囲であって、例えば0.001−5mMである。第VII因子ポリペプチドのために、還元型グルタチオンの濃度は好ましくは0−5mMの範囲であって、例えば0.01−2mMであり、酸化型グルタチオンの濃度は0.001−2mMの範囲であって、例えば0.001−0.200mMである。
【0056】
グルタチオンおよび他の低分子量チオールが通常、反応速度論的には劣った還元剤/酸化剤であるので、最も好ましくは、チオール/ジスルフィド酸化還元触媒が反応速度を改良するために酸化還元バッファーと組み合わせて混合液に含まれる。
【0057】
混合液に含まれる適切なチオール/ジスルフィド酸化還元触媒は、ジチオール型およびモノチオール型グルタレドキシンを含む。グルタレドキシンおよびそれらの機能は、概してFernandes等(2004)に記載されている。グルタレドキシンの有用な例は、大腸菌由来のGrx1、Grx2またはGrx3 (Holmgren等, 1995)、酵母由来のGrx1p、Grx2p、Grx3p、Grx4pおよびGrx5p (Luikenhuis 等 1998; Rodriguez-Manzaneque等, 1999; Grant, 2001), ヒト由来のGrx1およびGrx2(Padilla等1995; Lundberg等, 2001)およびそれらの変異体から選択されるものである。変異体は、他のアミノ酸、典型的にはセリンと置換されたCXXCモティーフのC末端のシステインがあるジチオール型グルタレドキシンを含むがこれに限定されるものではない(参照、Yang等,1998)。
【0058】
酸化還元触媒(特にグルタレドキシン)は、好ましくは0.001−20μMの濃度で使用される。
【0059】
混合液がタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)を含まないことが好ましい。
【0060】
酸化還元バッファーは、塩類、pHバッファー等の他の構成要素を更に含んでもよく、本発明の方法は、問題のFVIIaタンパク質に適している任意の温度で実施してもよく、例えば−5℃から50℃の範囲で、0℃から25℃の範囲の温度であって、当然所与の条件下でタンパク質の安定性に依存する。
【0061】
トリアリールホスフィン還元剤を使用する選択還元
選択還元のための別の方法は、低分子量チオール結合FVIIaタンパク質をトリアリールホスフィン還元剤と反応させることを含む。
【0062】
「トリアリールホスフィン還元剤」なる用語は、一つ以上の置換基によって任意に置換されるトリアリールホスフィンを意味するものである。
【0063】
トリアリールホスフィン還元剤のアリール基は、好ましくはフェニル、ナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、アントラシル、フェナントラシル、ピレニル、ベンゾピレニル、フルオレニルおよびキサンテニル、特にフェニルから選ばれ、現在選択されている実施態様においてアリール基が好ましくは同一である。目下の最も興味深い実施態様において、全3つのアリール基はフェニルである。アリール基に、特にフェニル基に存在する置換基の例は、概してスルホン酸、カルボキシル酸、C1-6-アルキル、C1-6-アルコキシ、およびC1-6-アルコキシ-C1-6-アルキル、またはC3-6-アルキレン(2つの隣接するアリール炭素原子を有する環を表す)またはC2-6-アルキレンオキシ(2つの隣接するアリール炭素原子を有する環を表す)またはC1-4-アルキレン-オキシ-C1-4-アルキレン(2つの隣接するアリール炭素原子を有する環を表す)から選択されるものである。
【0064】
一実施態様において、少なくとも一つのアリール(例えばフェニル)は、スルホン酸およびカルボキシル酸、特にスルホン酸から選ばれる少なくとも一つの置換基を有する;該置換は好ましくはリン光体原子の結合と比較してメタ位に配置されている。
【0065】
好ましくは全3つのアリール基はスルホン酸置換基を有し、例えば全3つのアリール基はスルホン酸置換基および更に少なくとも1つの置換基を有し、特に少なくともリン光体原子の結合と比較してパラ位の置換基、特にこのパラ位に酸素置換基を有する。
【0066】
好適な還元剤のアリール基はリン光体原子の結合と比較してオルト位にいかなる置換基も有しないと現在考えている。
【0067】
「C1-6-アルキル」なる用語は、1−6の炭素原子を有する、線形または分枝飽和炭化水素残基を含むことを意味する。特定の例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチルおよびn-ヘキシルである。同様に、「C1-4アルキル」なる用語は1−4の炭素原子を有する線形または分枝飽和炭化水素残基を含むことを意味する。「C1-6-アルキレン」、「C2-6-アルキレン」などの用語は、それぞれ「C1-6-アルキル」、「C2-6-アルキル」に対応する二価基をあらわす。
【0068】
適切なトリアリールホスフィン還元剤は、還元電位および立体障害の間で有用なバランスを有するものである。トリアリールホスフィン還元剤の化学的性質は、タンパク質の天然ジスルフィド結合の完全性を保存すると共に、タンパク質-低分子量チオール混合ジスルフィド(RS-Cys)を切断するその能力によって記される。現在非常に興味深い化合物は、トリアリールホスフィントリスルホン酸、例えばトリフェニルホスフィン-3,3',3''-トリスルホン酸およびその類似体である。この具体例は、トリアリールホスフィン還元剤はトリフェニルホスフィン-3,3',3''-トリスルホン酸およびその類似体から選択されており、例えば下記の化合物9−11:
【化1】

の一つから選択される。
【0069】
トリアリールホスフィン還元剤は、好ましくは0.001−100mM、例えば0.01−50mMまたは0.1−25mMの濃度で使用される。
【0070】
興味深い一実施態様において、トリアリールホスフィン還元剤は担体に固定される。これは、タンパク質から還元剤の簡単な分離に役立つ。一般に、トリアリールホスフィン還元剤(例えば化合物9−11)は、当業者にとって知られている方法によって、例えばアリール基のうちの1つにリンカー基を導入することによって固定してもよい。トリアリールホスフィン試料12は、1のリンク可能な変異体の例である。
【化2】

【0071】
反応は、典型的には0−40℃の範囲の温度で、例えば外界温度で、5秒から場合によっては数日の期間の間で行われる。反応後には、その変換を確認するためにHPLCを後に続けてもよい。適切な溶媒は望ましくは、DMSOまたはDMFのような共溶媒を任意に含む水性バッファーである。また、溶媒は塩類、例えばカルシウム塩を含んでもよい。
【0072】
ある変異体において、トリアリールホスフィン還元剤はタンパク質の阻害剤(例えば活性部位Sポケット阻害剤)と組合せて使用される(更に下を参照)。
【0073】
現在の好適な一実施態様において、低分子量チオールにジスルフィド架橋を介して連結した1つ以上のシステイン部分(RS-Cys)を含み、FVIIaポリペプチドがその活性型の時に該部分/部分が分子内S-S架橋(Cys-S-S-Cys)に含まれていないFVIIaまたはFVIIポリペプチドの選択還元のための方法であって、低分子量チオール結合FVIIaまたはFVIIポリペプチドを酸化型および還元型グルタチオンおよびグルタレドキシンを含む混合液と反応させる工程と、化学基を有する選択還元型システイン(HS-Cys)部分のうちの少なくとも1つを結合させる同時のおよび/または後に続く工程を含んでなる方法である。
【0074】
現在の好適な別の実施態様において、低分子量チオールにジスルフィド架橋を介して連結した1つ以上のシステイン部分(RS-Cys)を含み、FVIIaポリペプチドがその活性型の時に該部分/部分が分子内S-S架橋(Cys-S-S-Cys)に含まれていないFVIIaまたはFVIIポリペプチドの選択還元のための方法であって、低分子量チオール結合FVIIaポリペプチドをトリアリールホスフィン-3,3',3''-トルスルホン酸化合物および活性部位Sポケット阻害剤を含む混合液と反応させる工程、化学基を有する選択還元型システイン(HS-Cys)部分のうちの少なくとも1つを結合させる同時のおよび/または後に続く工程を含んでなる方法である。
【0075】
FVIIaポリペプチド
上記のように酸化還元バッファーを用いた選択還元ストラテジーは、通常、少なくとも一つの非天然システインを含む改変されたFVIIaまたはFVIIポリペプチドに、特にタンパク質がその活性型の時に分子内S-S架橋(Cys-S-S-Cys)に含まれていない改変されたシステインを有する、したがって低分子量チオール接合型になる可能性がある該タンパク質に適用できると考えられている。
【0076】
「低分子量チオール結合(RS-Cys)型」なる用語および類似した用語は、問題のFVIIaポリペプチドのシステインのチオール基がチオール基を有する化合物に結合することを意味するものであり、前記化合物は500Da未満の分子量を有する。該化合物の例はグルタチオン、ガンマ-グルタミルシステイン、システイニルグリシン、システイン、ホモシステイン、N-アセチルシステイン、システアミン等である。
【0077】
「活性型」なる用語は、例えば触媒(酵素)、チモーゲン、またはコファクターとして望ましい働きを行うことができるタンパク質の型を指す。「活性型」は「正しく折り畳まれた形態」と呼ばれることもある。
【0078】
興味深い一実施態様において、FVIIaポリペプチドの実質部分(すなわち少なくとも50%)は、選択還元反応が実施される時に活性型にある。
【0079】
FVIIaポリペプチドは、通常少なくとも一つの非天然システインを含む天然FVIIaと比較して「改変された」ポリペプチドである。前記「改変された」ポリペプチドは、好ましくは当業者には明らかである組換え技術によって調製される; WO02/077218A1およびWO01/58935A2を参照。
【0080】
タンパク質阻害剤
興味深い一実施態様において、混合液はFVIIaポリペプチドの阻害剤を更に含む。混合液に阻害剤を含むことによって、タンパク質の立体構造がいくらか安定し、それによって分子内ジスルフィド結合は酸化還元バッファーによって還元される低い傾向がと考えられる。好ましくは、タンパク質の阻害剤は活性部位阻害剤である。
【0081】
FVIIaポリペプチドの場合、選択還元反応の間、S結合ポケットに及ぶ活性部位阻害剤の存在が、活性部位領域の内部ジスルフィド結合を還元から保護するために必要である。この目的に有用な阻害剤は、例えば4-アミノベンズアミジンなどのベンズアミジン、アルギニン、その他のより有力な類似体を含む。例えば、WO05/016365A3に開示されているもの、EP1162194A1(Aventis)に開示されているもの(特に請求項1−6およびセクション[0009]−[0052]において定義されているもの)、EP1270551A1に開示されているもの(特に請求項1および2およびセクション[0010]−[0032])である。
【0082】
コンジュゲート
上に記載されている選択還元法の1つの重要な目的は、化学基(例えば非ポリペプチド部分)の結合(コンジュゲーション)に使うことができるシステイン基を解放することである。したがって、重要な一実施態様において、方法は化学基を有する選択的に還元されたシステイン(HS-Cys)部分のうちの少なくとも1つを結合させる同時のおよび/または続く工程をさらに含んでなる。
【0083】
化学基を有する少なくとも一つの選択的に還元されたシステイン部分のコンジュゲーションは、同時にすなわち酸化還元バッファーを含む混合液にコンジュゲーションを導く一つ以上の試料を加えることによって実施してもよく、または、例えば選択的に還元したタンパク質の精製および/または単離の後のような後に続く工程で実施してもよいと考えられる。
【0084】
また、コンジュゲーションは、二量体または多量体FVIIa化合物の合成前に、FVIIaポリペプチドに実施してもよく、または二量体または多量体FVIIa化合物が合成された後に実施してもよいと考えられる。
【0085】
一実施態様において、化学基はプロトラクター基であり、すなわち、非修飾ポリペプチドと比較した時、FVIIaポリペプチドのコンジュゲーションに応じて、上記FVIIaポリペプチドの循環半減期を増加させる基である。引き延ばし効果の裏側の特異的原理は、増加したサイズ、ペプチダーゼまたは抗体によって認識され得るペプチド配列のシールド、または例えば肝臓またはマクロファージ上に存在するグリカン特異的レセプターによっては認識されないようにするグリカンのマスキング、クリアランスの防止または減少によって生じるのかもしれない。また、プロトラクター基の引き延ばし効果は、例えばアルブミンのような血液成分に対する結合性または血管組織に対する非特異的粘着力によって生じることがありえる。結合した糖タンパク質は、その生物学的活性を実質的に保たなければならない。
【0086】
本発明の一実施態様において、プロトラクター基は以下を含む群から選択される:
(a) 低分子性有機荷電基(15−1,000Da)であって、一つ以上のカルボキシル酸、アミン、スルホン酸、テトラゾール、アシルスルホンアミド、ホスホン酸またはそれらの組合せを含んでもよい。
(b) 低分子性(15−1,000Da)中性親水性分子、例えばシクロデキストリン、または任意に分枝したポリエチレン鎖。
(c) 低分子性(15−1,000Da)疎水性分子、例えばその脂肪酸またはコール酸またはそれらの誘導体。
(d) 2,000−60,000Daの平均分子量を有するポリエチレングリコール。
(e) 700から20,000Daの範囲の、またはより好ましくは700−10,000Daの間の正確な分子質量を有するデンドリマーのような明確な精度を有するポリマー。
(f) 実質的に非免疫原性のポリペプチド、例えばアルブミンまたは抗体または任意にFc-ドメインを含む抗体の一部。
(g) 高分子量有機ポリマー、例えばデキストラン。
【0087】
本発明の別の実施態様において、プロトラクター基は、デンドリマー、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリプロピレングリコール(PPG)のようなポリアルキレン・グリコール(PAG)を含むポリアルキレン酸化物(PAO)、分枝PEG、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレイト、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン/無水マレイン酸、ポリスチレン/無水マレイン酸およびカルボキシメチルデキストランを含むデキストランから成る群から選択される。本発明の特に興味深い一実施態様において、プロトラクター基はPEG基である。
【0088】
「分枝ポリマー」、または互換可能な「樹状ポリマー」、「デンドリマー」または「樹状構造」なる用語は、それらのモノマーの構築ブロック(いくつかは分枝を含む)の選択から組み立てられる有機ポリマーを意味する。
【0089】
本発明の一実施態様において、プロトラクター基は血清タンパク質結合性リガンドからなる群から選択されるものであり、例えばアルブミンと結合する化合物で、脂肪酸の類のC5−C24脂肪酸、脂肪族二酸(例えばC5−C24)である。プロトラクター基の別の例は、生理学的条件下の荷電特性を変える部分、例えばカルボキシル酸またはアミン、またはより小さいアルキル置換基(例えばC1−C5アルキル)のようなグリカン特異的な認識を防止する中性の置換基を含む小有機分子を含む。本発明の一実施態様において、プロトラクター基はアルブミンである。
【0090】
一実施態様において、化学基は非ポリペプチドである。
【0091】
興味深い一実施態様において、化学基がポリエチレングリコール(PEG)であり、特に500−100,000の範囲の平均分子量を有するもの、例えば1,000−75,000または2,000−60,000のものである。
【0092】
コンジュゲーションは、WO02/077218A1およびWO01/58935A2にて開示されているように行うことができる。
【0093】
タンパク質にコンジュゲーションするための化学基としてのPEGの使用は、特に興味深い。「ポリエチレングリコール」または「PEG」なる用語は、ポリエチレングリコール化合物またはそれの誘導体を意味し、カップリング剤、結合または活性化部分(例えば、チオール、トリフレート、トレシレート、アジルジン(azirdine)、オキシラン、ピリジルジチオ、ビニルスルホン、または好ましくはマレイミド部分)の有無にかかわらない。マレイミドモノメトキシPEGのような化合物は、本発明の活性化PEG化合物の典型例である。
【0094】
PEGは適切なポリマー分子であり、それはデキストランのような多糖と比較して、架橋結合ができる反応基をほんのわずかしか有しない為である。特に、単官能基のPEG(例えばメトキシポリエチレングリコール(mPEG)が興味深く、それはそのカップリング化学が比較的シンプルである為である(一つの反応基だけが、FVIIaポリペプチド上の結合基によって結合に利用できる)。従って、架橋結合の危険がないので、得られるFVIIaコンジュゲートはより均質であって、FVIIaポリペプチドを有するポリマー分子の反応が制御し易い。
【0095】
FVIIaポリペプチドにポリマー分子の共有結合による付加を達成するために、ポリマー分子のヒドロキシ末端基は活性型、すなわち活性な官能基で与えられる。適切な活性ポリマー分子は、例えばShearwater社(ハンツヴィル、アラバマ、米国)またはPolyMASC Pharmaceuticals社(英国)から購入できる。あるいは、ポリマー分子は、例えばWO90/13540にて開示されているような当該分野で知られている通常方法によって活性化することができる。本発明に用いられる活性化線形分子または分枝ポリマー分子の具体例は、Shearwater社の1997年および2000年のカタログ(Functionalized Biocompatible Polymers for Research and pharmaceuticals、Polyethylene Glycol and Derivatives、出典明記により本願明細書に援用)に記載されている。活性化PEGポリマーの具体的例としては、以下の線形PEGがあげられる:NHS−PEG(例えばSPA−PEG、SSPA−PEG、SBA−PEG、SS−PEG、SSA−PEG、SC−PEG、SG−PEGおよびSCM−PEG、そしてNOR−PEG)、BTC−PEG、EPOX−PEG、NCO−PEG、NPC−PEG、CDI−PEG、ALD−PEG、TRES−PEG、VS−PEG、IODO−PEG、およびMAL−PEG、およびPEG2−NHSおよび米国特許第5932462号および米国特許第5643575号(両者を出典明記により本願明細書に援用)で開示されているような分枝PEG。さらに、以下の文献(出典明記により本願明細書に援用)は、役立つポリマー分子および/またはPEG化の化学を開示する:米国特許第5824778号、米国特許第5476653号、WO97/32607、EP229108、EP402378、米国特許第4902502号、米国特許第5281698号、米国特許第5122614号、米国特許第5219564号、WO92/16555、WO94/04193、WO94/14758、WO94/17039、WO94/18247、WO94/28024、WO95/00162、WO95/11924、WO95/13090、WO95/33490、WO96/00080、WO97/18832、WO98/41562、WO98/48837、WO99/32134、WO99/32139、WO99/32140、WO96/40791、WO98/32466、WO95/06058、EP439508、WO97/03106、WO96/21469、WO95/13312、EP921131、米国特許第5736625号、WO98/05363、EP809996、米国特許第5629384号、WO96/41813、WO96/07670、米国特許第5473034号、米国特許第5516673号、EP605963、米国特許第5382657号、EP510356、EP400472、EP183503およびEP154316。
【0096】
FVIIaポリペプチドおよび活性ポリマー分子のコンジュゲート化は、例えば以下の文献に記載されているような任意の従来法を用いて行われる(参照には、ポリマー分子の活性化のための適切な方法も記載されている):R. F. Taylor, (1991), 「Protein immobilisation. Fundamental and applications」, マーセル・デッカー, ニューヨーク; S. S. Wong, (1992), 「Chemistry of Protein Conjugation and Crosslinking", CRC 出版, ボカ・ラートン; G. T. Hermanson 等, (1993), 「Immobilized Affinity Ligand Techniques」, アカデミックプレス, ニューヨーク)。熟練した当業者であれば、使用するポリペプチドの結合基(その例は上記した)と共にポリマーの官能基(例えばアミン、ヒドロキシル、カルボキシル、アルデヒド、スルフィドリル、スクシンイミジル、マレイミド、ビニルスルホンまたはハロアセテイトである)に依存して、活性化法および/またはコンジュゲーション化学が使用されることを理解するであろう。PEG化は、FVIIaポリペプチド上の全ての利用できる結合基(すなわちFVIIaポリペプチドの表に露出した該付加基)に対してコンジュゲーションを行ってもよく、または一つ以上の特異的な結合基に対して行ってもよい(例えばN末端基アミノ基(米国特許第5985265号))。さらにまた、コンジュゲーションは一段階でまたは段階的方法で達成してもよい(例えばWO99/55377に記載されている)。
【0097】
PEG化は、結合されたPEGの数、分子のサイズと形状(例えば、それらが線形かまたは分枝か)、ポリペプチドのどこに該分子が結合されるかに関して最適分子を産生するために設計されると理解される。使用するポリマーの分子量は、達成される所望の効果を考慮に入れて選択される。例えば、コンジュゲーションの主要な目的が高分子量およびより大きいサイズ(例えば、腎臓クリアランスを減らすため)を有するコンジュゲートの達成であれば、所望の効果を得るために、1つあるいは少数の高分子量ポリマー分子か、多数のより分子量の小さいポリマー分子のどちらかを結合することを選択してもよい。しかしながら、好ましくは低分子量を有するいくつかのポリマー分子が使われる。
【0098】
本発明のコンジュゲートの少なくとも大部分の見かけのサイズ(「見かけの分子量」または「見かけの質量」でもよい)が少なくとも約50kDa、例えば少なくとも約55kDa、少なくとも約60kDa、例えば少なくとも約66kDaであるときに、有利な結果が得られることが更に分かっている。これは、腎臓クリアランスが十分に大きな見かけのサイズを有するコンジュゲートを実質的に除去するという事実によると考えられている。本状況において、FVIIaポリペプチドの「見かけのサイズ」は、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動方法で測定される。
【0099】
さらにまた、過剰ポリマー・コンジュゲーションが化学基(例えば非ポリペプチド部分)が結合するFVIIaポリペプチドの活性の損失を導くことがあると報告されている。この問題は、例えば機能部位に位置する結合基を取り除くことによって、またはコンジュゲーション前に機能部位を可逆的にブロッキングすること、つまりコンジュゲーションの間にFVIIaポリペプチドの機能部位がブロックされることによって解決できる。具体的には、FVIIaポリペプチドと化学基(例えば非ポリペプチド部分)間のコンジュゲーションは、FVIIaポリペプチドの機能部位がヘルパー分子(例えばFVIIaポリペプチドまたはセリンプロテアーゼ阻害剤の機能部位に結合可能な組織因子)によってブロックされる状況下で行うことができる。好ましくは、ヘルパー分子は特定の組織因子において、FVIIaポリペプチド(例えば受容体)の機能的部位を特に認識するもので、完全長組織因子または最適に短縮された形態の組織因子、または一方が組織因子で他方がペプチドである2つの分子、または結合して触媒性トリアド(好ましくは、触媒性トリアドの任意の原子の10Å以内のアミノ酸残基として定義される)周辺の領域を保護しているペプチド阻害剤である。
【0100】
あるいは、ヘルパー分子は抗体であってもよく、特にFVIIaポリペプチドを認識するモノクローナル抗体であってもよい。特に、ヘルパー分子は無効化モノクローン抗体であってもよい。
【0101】
FVIIaポリペプチドは好ましくはコンジュゲーションを遂行する前にヘルパー分子と相互に作用する(しばしば、混合ジスルフィドが還元される工程で使用するものと同じヘルパー分子(例えば阻害剤)を使用することは有利でさえある)。これは、FVIIaポリペプチドの機能部位がシールドされているかまたは保護されていることを確実にする。従ってポリマーのような化学基(例えば非ポリペプチド部分)による誘導体化に利用されない。
【0102】
ヘルパー分子からの解離に続いて、化学基とタンパク質のコンジュゲートは、少なくとも部分的に保存された機能部位が再生され得る。
【0103】
医薬品組成物
本発明に従った二量体および多量体FVIIa化合物は、出血性疾患または出血症状発現の患者の治療ために、または正常な止血系の強化のための医薬組成物として適用できる。上記治療を必要とする患者の例は、すなわち血友病Aまたは血友病Bの治療を受けている患者である。
【0104】
別の態様においては、本発明はその範囲に、活性成分として、二量体または多量体FVIIa化合物、または製薬的に許容可能な担体または希釈液と共に、製薬的に許容可能なその塩を含む医薬組成物を含む。
【0105】
任意には、本発明の医薬組成物は、抗凝固活性を呈する一つ以上の他の化合物(例えば血小板凝集阻害薬)と組み合わせて、二量体または多量体FVIIa化合物を含んでなってもよい。
【0106】
本発明の化合物は、化合物および製薬的に許容可能な担体または希釈液から成る医薬組成物に調剤されてもよい。上記担体は水、生理食塩水、エタノール、ポリオール(例えばグリセリンまたはプロピレングリコール、植物油)を含む。本願明細書で使用する「製薬的に許容可能な担体」は、任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗カビ剤、防腐剤、等張剤およびその類を含む。任意の従来の媒体は活性成分およびその所望の用途と適合しない場合を除いて、本発明の組成物に使用されることが考えられる。
【0107】
組成物は従来の技術によって調製することができて、従来の形態(例えばカプセル、錠剤、溶液または懸濁液)で市場に出される。使用される薬剤担体は、従来の固体または液体担体であってもよい。固体担体の例としては、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸があげられる。液体担体の例は、シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油および水である。同様に、担体または希釈剤は、当業者に知られているあらゆる徐放性物質(グリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレートなど)を単独か、もしくはワックスと混合した形で含有してよい。製剤はまた、湿潤剤、乳化剤、および懸濁剤、保存剤、甘味料または香味料を含んでもよい。本発明の製剤は、当該分野で知られている手順を使用することによって、患者への投与後の活性成分の速効性、持続性、後発性放出を提供するために処方することができる。
【0108】
医薬品組成物は殺菌することができて、必要に応じて、活性な化合物と有害な反応をしない補助剤、乳化剤、浸透圧を調節する塩、バッファーおよび/または染色剤などを混合することができる。
【0109】
投与ルートは経口投与または非経口投与(例えば直腸投与、経皮投与、皮下投与、鼻腔内投与、筋肉内投与、局所的投与、静脈内投与、尿道内投与、眼内投与または軟膏剤)のような、効果的に活性化合物を適当なまたは所望の作用点へ効果的に輸送する任意のルートであってもよく、経口投与が好ましい。
【0110】
固体担体を経口投与に用いる場合は、錠剤またはハードゼラチンカプセル内に入った粉末もしくはペレット形態に調剤するか、あるいはトローチまたはロゼンジの形態に調剤してもよい。固体担体の量は、広い範囲内で様々であるが、通常は約25mg〜約1gである。
【0111】
液体担体が用いられる場合、製剤がシロップ、乳化剤、ソフトゼラチンカプセルまたは無菌の注射可能な液体(例えば水性であるか非水溶液懸濁剤または溶液)の形状であってもよい。
【0112】
鼻腔内投与のために、製剤は、エアゾールアプリケーションのための液体担体、特に水性担体に溶解するかまたは懸濁した化学式(I)の化合物を含んでもよい。担体は、可溶化剤(例えばプロピレングリコール)、表面活性薬、吸収促進薬(例えばレシチン(ホスファチジルコリン)またはシクロデキストリン)または防腐剤(例えばパラベン))のような添加物を含んでもよい。
【0113】
非経口投与のためには、注射可能な溶液または懸濁液が特に適切であって、好ましくはポリヒドロキシル化されたヒマシ油に溶解した活性化合物の水性溶液である。
【0114】
タルクおよび/または糖質の担体または製剤結合剤またはその類を含む錠剤、糖剤またはカプセルは特に内服に適している。錠剤、糖剤またはカプセル用の好ましい担体は、ラクトース、コーンスターチおよび/またはジャガイモスターチを含む。加糖賦形薬が用いられる場合は、シロップまたはエリクシルが使用できる。
【0115】
従来の錠剤化技法により調製される典型的錠剤は、
コア:
活性化合物(本発明の化合物の遊離型または塩) 10mg
コロイド状二酸化ケイ素(Aerosil(登録商標)) 1.5mg
微結晶性セルロース(Avicel(登録商標)) 70mg
変性セルロースガム(Ac-Di-Sol(登録商標)) 7.5mg
ステアリン酸マグネシウム

コーティング:
HPMC 約9mg
*Mywacett(登録商標)9−40T 約0.9mg
*フィルムコーティングの可塑剤として用いるアセチル化モノグリセリド
を含んでよい。
【0116】
本発明の化合物は、上記したような血栓溶解性または血液凝固性疾患または傷害の該治療、予防、除去、緩和または改善を必要とする哺乳類、特にヒトに投与することができる。上記哺乳類は、例えば家庭のペットのような家畜および野生生物のような非家畜の両方の動物を含む。
【0117】
通常、経口投与、鼻腔内投与、肺投与または経皮投与に適している投与形態は、製薬的に許容可能な担体または希釈液に、化学式Iの化合物を約0.001mgから約100mgを、好ましくは約0.01mgから約50mgを含む。
【0118】
経口投与、直腸投与、非経口投与(皮下投与を含む)の経路に関係なく、製薬的に許容可能な担体または希釈液と同時に、並行して、共に投与することができる。化合物は、しばしば、および好ましくは、それのアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩の形である。
【0119】
適切な用量範囲は、正確な投与様式、投与形態、投与が向けられる適応症、関与する患者およびその体重、そして担当医又は獣医の好み及び経験に応じて、上記のように変化する。
【0120】
本発明は以下の実施例で更に例示されるが、これは保護の範囲を制限するものとして解釈されるものではない。前述の説明および以下の実施例において開示される特徴は、その両方を別々でまたはいかなる組合せでも、本発明が多様な形態をとることを理解するための材料である。
【実施例】
【0121】
実施例1
材料−還元型および酸化型グルタチオン(それぞれ、GSHおよびGSSG)、システイン(Cys)、DL-ホモシステイン(hCy)、システイニルグリシン(CG)およびγ-グルタミルシステイン(γ-GC)は、シグマ社から購入した。システアミン(Cya)および7-フルオロベンゾフラザン-4-スルホン酸アンモニウム塩(SBD-f)は、Fluka社より得た。トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)は、Calbiochem社(Merck KGaA、ダルムシュタット、ドイツ)から購入した。クロモジェニックS-2288基質は、クロモジェニック社(ミラノ、イタリア)から得た。PEG5k-マレイミド(2E2M0H01)、PEG20k-マレイミド(2E2M0P01)、PEG40k-マレイミド(2D3Y0T01)およびマレイミド-PEG3.4k-マレイミド(2E2E0F02)は、Nektar Therapeutics社(ハンツヴィレ、アラバマ州)から購入した。d-Phe-Phe-Arg-クロロメチルケトンは、Bachemから購入した。トリフェニルホスフィン-3,3',3"-トリスルホン酸は、アルドリッチ社から得た。ヒト血漿由来FXおよびFXaは、Enzyme Research Laboratories社(サウスベンド、インディアナ州)から得た。ビオチン-ポリエチレンオキサイド-ヨードアセトアミド(ビオチン-PEO-ヨードアセトアミド)は、シグマ社(ミズーリ、米国)のものである。可溶性組織因子1-219(sTF)は、公表されている手順(Freskgard等、1996)に従って調製した。sTF(1-219)Glu219→Cys(E219C)は、基本的に以前の記載に従って調製した(Owenius等、1999)。組換えFVIIaの発現および精製は、以前の記載に従って行った(Thim等、1988;PerssonとNielsen,1996)。他の全ての化学薬品は、分析用等級以上であった。
【0122】
濃度測定−原液のGSSGの濃度は、381M-1cm-1の吸光係数を使用して248nmの吸収から測定した(ChauとNelson,1991)。GSHおよび他の低分子量のチオールの濃度は、エルマン試薬(5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸))および14150M-1cm-1を使用して、412nmで2-ニトロ-5-チオ安息香酸のモル吸光係数として測定した(Riddles等、1979)。
【0123】
HPLCによるGSSGの定量化−GSSGの定量化は、基本的に他の文献の記載に従ってに実施した(TakahashiとCreighton,1996)。簡潔には、酸で反応停止した50μlサンプルを、30℃に維持したC18逆相カラム(Luna C18(2)100Å,3μm粒径,4.6×50mm;Phenomenex Inc.、トランス、カリフォルニア州)へロードした。100%溶出液A(0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液)で5分間均一濃度で泳動後、GSSGは1ml/minの流速で5分間0−5%の溶出液B(0.085%(v/v)TFAアセトニトリル溶液)の直線濃度勾配によって溶出し、214nmの吸収によって検出した。GSSGの濃度は、算出ピーク面積(Millenium32 v4.0ソフトウェア、Waters)を、GSSGの既知量によって作った標準曲線と比較して測定した。直線性は、GSSGの2−25nmolの範囲で観察された。
【0124】
HPLCによるチオール修飾FVIIa407Cの分析−遊離およびチオール修飾FVIIa407C種は、45℃に保ったC3逆相カラム(Zorbax 300SB-C3,2.1×150mm,5-μm粒径;Agilent Technologies,デンマーク)を用いたHPLCによって分析した。流速は0.5ml/minであり、移動相は0.1%(v/v)TFA水溶液(溶出液A)および0.085%(v/v)TFAアセトニトリル溶液(溶出液B)を含む。酸で反応停止した25μlサンプルの注入後、システムは5分間の30%均一濃度の溶出液Bの後に、20分にわたる38−41.5%の直線濃度勾配の溶出液Bおよび20分にわたる41.5−55%の溶出液Bを続けて流した。溶出は蛍光によってモニタした(励起波長および蛍光波長は、それぞれ280および348nm)。
【0125】
FVII407C突然変異体をコードするDNAのコンストラクト−FVIIa407CをコードするDNAコンストラクトは、WO02/077218A1に記載されているように構築した。
【0126】
FVIIQ250C突然変異体をコードするDNAのコンストラクト−FVIIaQ250CをコードするDNAコンストラクトは、WO02/077218A1に記載されているように構築した。
【0127】
FVIIR396C突然変異体コードするDNAのコンストラクト−FVIIaR396CをコードするDNAコンストラクトは、WO02/077218A1に記載されているように構築した。
【0128】
FVII407Cの発現および精製−BHK細胞は、FVIIa407C変異体の発現を得るために、基本的に以前に記載されているように(Thim等,1988;PerssonとNielsen,1996)形質移入した。FVIIポリペプチドは、以下に従って精製した:
熟成した培地は、5mMのEDTA、0.1%TritonX-100および10mMのトリスを加え、pH8.0に調製し、伝導率10−11mS/cmに水添加で調製した後、Q Sepharose Fast Flowの25mlのカラム(アマシャム・バイオサイエンス社,GEヘルスケア)にロードした。タンパク質の溶出は、10mMのトリス、50mMのNaCl、0.1%TritonX-100(pH8.0)から10mMのトリス、50mMのNaCl、25mMのCaCl、0.1%TritonX-100(pH7.5)までの勾配によって達成した。FVIIa407Cを含む分画をプールし、CNBr活性セファロース4B(アマシャム・バイオサイエンス社,GEヘルスケア)に結合させたモノクローナル抗体F1A2(ノボ・ノルディスクA/S社、Bagsvard、デンマーク)を含む25mlカラムにアプライした。カラムは10mMのCaCl、100mMのNaClおよび0.02%TritonX-100を含む50mMのHEPES(pH7.5)によって平衡化した。平衡化バッファーおよび2MのNaClを含む平衡化バッファーで洗った後、結合した物質をCaClの代わりに10mMのEDTAを含む平衡化バッファーで溶出させた。保存の前に、FVIIa407Cは透析によって50mMのHEPES、100mMのNaCl、10mMのCaCl、pH7.0のバッファーへ移した。各工程の収量は第VII因子ELISA測定により求め、精製したタンパク質はSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析した。
【0129】
FVIIQ250Cの発現と精製−BHK細胞は、FVIIaQ250C変異体の発現を得るために、基本的に以前に記載されているように(Thim等,1988;PerssonとNielsen,1996)形質移入した。FVIIポリペプチドは、以下に従って精製した:
熟成した培地は、5mMのEDTA、0.1%TritonX-100および10mMのトリスを加え、pH8.0に調製し、伝導率10−11mS/cmに水添加で調製した後、Q Sepharose Fast Flowの25mlのカラム(アマシャム・バイオサイエンス社,GEヘルスケア)にロードした。タンパク質の溶出は、10mMのトリス、50mMのNaCl、0.1%TritonX-100(pH8.0)から10mMのトリス、50mMのNaCl、25mMのCaCl、0.1%TritonX-100(pH7.5)までの勾配によって達成した。FVIIaQ250Cを含む分画をプールし、CNBr活性セファロース4B(アマシャム・バイオサイエンス社,GEヘルスケア)に結合させたモノクローナル抗体F1A2(ノボ・ノルディスクA/S社、Bagsvard、デンマーク)を含む25mlカラムにアプライした。カラムは10mMのCaCl、100mMのNaClおよび0.02%TritonX-100を含む50mMのHEPES(pH7.5)によって平衡化した。平衡化バッファーおよび2MのNaClを含む平衡化バッファーで洗った後、結合した物質をCaClの代わりに10mMのEDTAを含む平衡化バッファーで溶出させた。保存の前に、FVIIaQ250Cは透析によって50mMのHEPES、100mMのNaCl、10mMのCaCl、pH7.0のバッファーへ移した。各工程の収量は第VII因子ELISA測定により求め、精製したタンパク質はSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析した。
【0130】
FVIIR396Cの発現と精製−FVIIaR396Cの発現と精製は、WO02/077218A1に記載に従って行った。
【0131】
グルタレドキシンのクローニングと発現−大腸菌グルタレドキシン2(Grx2)および酵母グルタレドキシン1(yGrx1p)の配列をコードしているDNAは、プライマー対oHOJ98-f/oHOJ98-rおよびoHOJ11-f/oHOJ11-rをそれぞれ使用して、それぞれの側近にNdeIとXhoIの制限サイトが導入されるように、Expand High Fidelity PCRシステム (ロシュ・ダイアグノスティックス社,インディアナポリス、インディアナ州)を使用して製造業者の推奨法に従ってPCR増幅した(プライマー配列は表1に示す)。
【0132】
表1−それぞれ大腸菌グルタレドキシン2(Grx2)、酵母グルタレドキシン1(yGrx1p)およびyGrx1p C30Sを発現するプラスミドpHOJ294、210および286の構築に使用したDNAオリゴ。NdeIとXhoIの制限サイトは太字で表す。
【表1】

【0133】
PCR反応のためのゲノム鋳型DNAは、公開されている手順に従ってE.coliおよびS.cerevisiaeから調製した(Grimberg等,1989;HoffmanとWinston,1987)。精製したPCR産物は、NdeIおよびXhoIで切った後、pET-24a(+)(ノバジェン)の対応するサイトに連結し、それぞれpHOJ294およびpHOJ210を作った。終止コドンがベクターによって生じたので、2つの遺伝子に3'ベクター由来のC末端LEHHHHHHアフィニティタグをコードするエクステンションを加えた。yGrx1p Cys30→Ser(yGrx1p C30S)をコードするプラスミドpHOJ286は、製造業者の指示書(ストラタジェン,ラホイヤ, カリフォルニア州)に従って、プライマーoHOJ88-f/oHOJ88-rおよびテンプレートとしてpHOJ210を用いたQuickChange(登録商標)Site-Directed 突然変異生成によって構築した。全クローン配列の同一性の正確性は、DNA塩基配列決定によって検証した。
【0134】
発現のために、pHOJ210、286および294のプラスミドは、ケミカルコンピテントBL21(DE3)セル(ストラタジェン,ラホイヤ, カリフォルニア州)に導入した。新鮮なオーバーナイト形質転換体は、当初のOD600が0.02で、30μg/mlカナマイシンを含む500mlのテリフィック培養液(Sambrook等、1989)に接種した。培養株は、対数増殖期(OD600 3−4)まで、バッフル付フラスコで230rpm、37℃でインキュベートし、対数増殖期に温度を25℃まで下げてタンパク発現を0.1mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(ITPG)で誘導した。オーバーナイトで発現させた後、細胞を遠心によって集めて50ml溶解バッファー(50mMのリン酸カリウム、300mMのNaCl、pH8.0)に再懸濁し、3回の凍結融解サイクルで溶解した。透明な溶菌液は、溶解バッファーによって平衡化した20mlのNi-NTA Superflow(キアゲン GmbH社 Hilden,ドイツ)カラムに5ml/minの流速でロードした。溶解バッファーで洗った後に、結合したタンパク質は、溶解バッファーに0−200mMの直線濃度勾配イミダゾールによって溶出した。ピーク分画をプールし、50mMのトリス-HCl、2mMのEDTA、pH8.0に対する広範囲な透析の前に20分間の20mMのジチオスレイトールによって処理した。タンパク質は、−80℃で保存し、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって純粋(>90%)であると判断した。濃度は、5240M-1cm-1(yGrx1pおよびyGrx1p C30S)および21740M-1cm-1(Grx2)の吸光係数を使用して280nmの吸光指数によって推定した。
【0135】
FVIIa407Cと混合ジスルフィドで結合している低分子量チオールの同定−
蛍光SBD誘導体化低分子量チオールのHPLC検出は、Oe等(1998)の記載に、マイナーな変更を加えて実施した。簡潔に述べると、ジスルフィド還元とその後の遊離チオールの誘導体化は、25μlの10μMのFVIIa407C(または野生型FVIIa)を5μlの14mMのTCEP(水溶物)と10μlの0.3%SBD-f(水溶物)を含む160mMのトリス-HCl、8mMのEDTA(pH9.6)バッファー中で60分間60℃でインキュベートすることで実施した。その後、誘導体化は2μlの5MのHClの添加によって停止させ、サンプルは更なる分析まで4℃に置いた(24時間以内)。HPLC分析は、逆相C18(2)カラム(Luna,100Å,3.5μm粒径,150×4.6mm;Phenomenex Inc., トランス, カリフォルニア州)にサンプルの25-μl分割量を1ml/minの流速で注入することによって実施した。カラムの温度は30℃に維持した。SBD誘導体化チオールは75mMクエン酸ナトリウム、pH2.90および2%メタノールを含む移動相を使用して一定濃度溶出によって分離し、386nm励起により516nmで発する蛍光によって検出した。ピークの同定は、FVIIa407Cの上記した手順に従って調製した既知の低分子量チオール化合物の一連との保持時間の比較によって行った。GSH、γ-GC、GC、Cys、HcyおよびCyaの定量化のための較正曲線は、最終反応混合物中の各チオール濃度を0.4から3.5μMまで変化させることによって得た。
【0136】
この分析から、FVIIa407Cに結合する主要な低分子量チオールがグルタチオン、システインおよびホモシステインであると結論することができる。結果は、図1に示す。
【0137】
FVIIaの酸化還元滴定−FVIIaCys変異体の選択還元に適する条件を同定するために、FVIIaの構造安定性を、基本的に他の文献の記載に従って(Loferer等、1995)、GSHおよびGSSGの濃度を変化させることによって得られた規定済みの酸化還元能力を有するバッファーにおいて評価した。FVIIaの2つの最も不安定なジスルフィド結合の還元がアsTF結合性およびミド分解活性の損失(Higashi等、1997)と関係していることが示されているので、FVIIaの構造の保全性は、sTFの存在下で発色体基質S-2288を加水分解するその能力によってモニタした。
【0138】
FVIIa(1μM)の酸化還元滴定は、50μMのGSSGを含み、様々なGSH濃度(0−34mM)の50mMのHEPES、100mMのNaCl、5mMのCaCl、pH7.0のバッファー(徹底的に窒素をパージしたもの)で行った。さらに、一連のサンプルは、25mMのp-アミノベンズアミジン(Sポケットを占有しているFVIIaの活性部位阻害剤)を含む(Sichler等,2002;Persson等,2004)。平衡に達するまでに要する時間を減らすために、反応は酸化還元触媒として作用する1μMのyGrx1pの存在下で行った(Ostergaard等,2004)。窒素雰囲気下30℃で3.5時間のサンプルの平衡化の後、残余アミド分解活性は、後述するように測定した。同時に、反応混合物のアリコートは、等量の100mMのHClで反応停止し、材料および方法において記載したようにGSSGの平衡濃度はHPLCで測定した。
【0139】
残余アミド分解活性の測定のために、平衡化サンプルの20μlは、遊離チオールを急速にアルキル化し、続くチオール酸化を防止するために、10mMのヨードアセトアミドを含む分析バッファー(50mMのHEPES、100mMのNaCl、5mMのCaCl、0.01%Tween80、pH7.4)で20倍希釈した。活性分析は、80nMのsTFおよび最終濃度10nMのFVIIaの反応停止させたサンプルを含む最終容量200μlの分析バッファーでポリスチレンマイクロタイタープレート(ヌンク,デンマーク)において行った。室温で15分のプレインキュベーションの後、1mMの発色体基質S-2288を加え、吸光度はSOFTmax PROソフトウェア(v2.2;Molecular Devices Corp.,サニーベール、カリフォルニア州)を装備したSpectraMaxTM340マイクロプレート分光光度計で20分間の405nmで連続的にモニタした。アミド分解活性は、ブランク補正後、リニア反応進行曲線の傾斜として報告した。
【0140】
データは以下の反応(式1)によって分析した。ここで、FVIIaは一つの分子内ジスルフィド結合の可逆的還元によって不活性FVIIa(FVIIaiと表す)に変化する:
【数1】

逆反応(Kox)の推定平衡定数は、以下の関係(式2)から推定することができる
【数2】

[上式中、fは所与の[GSH]/[GSSG]における残余アミド分解活性であり、amaxは低[GSH]/[GSSG]時の極限アミド分解活性である]。
【0141】
カレイドグラフソフトウェア(v3.6、シナジーソフトウェア)を使用して非線形最小2乗法回帰によって酸化還元滴定データを式2に当てはめることにより、25mMのp-アミノベンズアミジンの非存在下または存在下において、それぞれ見かけのKox93±6mMおよび166±16mMを得た。
【0142】
FVIIa407C-グルタチオン混合ジスルフィドの酸化還元滴定−グルタチオンとCys407の間の混合ジスルフィドの安定性は、13μMのFVIIa407Cを、0.5mMのGSHを含む、様々なGSSG濃度(5−500μM)の50mMのHEPES、100mMのNaCl、10mMのCaCl、pH7.0でインキュベートすることで測定した。更に、全サンプルは、反応を触媒するために10μMのGrx2を含む。30℃、5時間の平衡化の後、50μlアリコートは100mMのHClで反応停止させ、材料および方法にて説明したように、GSSGの平衡濃度はHPLCで測定した。脱グルタチオン化FVIIa407Cの相対量を測定するために、各サンプル20μlを15μlの1.6mMのPEG5k-マレイミドと結合させることによって、遊離チオールをPEG5k標識した。室温で18分のインキュベート後、更なる(非特異的)タンパク質のPEG化を競争的に抑制するために、次の処理の間、N-エチルマレイミドを最終濃度25mMで加えた。各サンプルのPEG5k修飾FVIIa407Cは、材料および方法にて説明したように、HPLCによって検出し定量化した。
【0143】
データは以下の反応(式3)に従って分析し、グルタチオン化FVIIa407C(FVIIa407C-GSH)はGSHと反応し、遊離FVIIa407CおよびGSSGを生じる。
【数3】

逆反応の推定平衡定数(Kscoxと表す)は、以下の関係式(式4)から推定することができる。
【数4】

[上式中、A407C−PEG5kは、既知の[GSH]/[GSSG]比における5k-PEG化FVIIa407Cのピーク面積であり、Amaxは高[GSH]/[GSSG]時の極限ピーク面積である。]
【0144】
平衡時の[GSH]/[GSSG]比に対する測定されたピーク面積のプロットを図3に示す。カレイドグラフソフトウェア(v3.6、シナジーソフトウェア)を使用して非線形最小2乗法回帰によってデータを式4に当てはめることにより見かけのKscox値1.0が得られ、これは他のグルタチオン化タンパク質の範囲で測定された値と非常に類似していた(Gilbert,1995)。
【0145】
最適還元条件の特定−FVIIa407C-混合ジスルフィドの選択還元を支える最適なグルタチオン酸化還元条件は、[GSSG]の作用として以下のパラメータのプロットから特定した:(1)式2および見かけのKox値を用いたp-アミノベンズアミジンの存在下または非存在下の残余アミド分解活性、および(2)式4およびKscoxからの選択的に還元したタンパク質の分数。実際的な理由のために、GSH濃度は0.5mMに設定した。図4に示すように、0.5mMのGSH存在下でGSSG濃度がおよそ15と60μMの間は、残余活性が>90%および遊離Cys407が>90%という結果である。[GSSG]の最適作用範囲は、(図3−5に例示するように)GSH濃度、KoxおよびKscox(図示せず)の値および還元反応中のアミド分解活性の許容損失を含むいくつかのパラメータに依存する。
【0146】
選択還元およびFVIIa407CのPEG5k、PEG20k、およびPEG40k修飾-FVIIa407Cのチオール修飾は、3つの連続的な工程に分けることができる:(A)グルタレドキシン触媒還元反応、(B)チオール特異性アルキル化、および(C)精製。各工程の終了後、反応混合液の少量のアリコートは、10%(v/v)ギ酸によって反応停止し、材料および方法にて説明および図7において例示するように、HPLCによって分析した。
【0147】
(A)FVIIa407C(4.8mg)は、0.5mMのGSH、15μMのGSSG、25mMのp-アミノベンズアミジンおよび10μMのGrx2を含む、総体積4.4mlの50mMのHEPES、100mMのNaCl、10mMのCaCl、pH7.0のバッファーで、30℃4.5時間インキュベートした。GSSGの当初濃度は、反応の間、GSSG形成を補償するために、最適作用範囲(図4の影をつけた面積)の下端にした。(B)その後、遊離チオールは、最終濃度0.8mMに、PEG5k-マレイミド、PEG20k-マレイミドまたはPEG40k-マレイミド(水溶物)の付加によって修飾した。チオールアルキル化は、0.5mMのシステインによる反応停止まで、室温で15分間進行させた。(C)EDTAを過剰カルシウム(最終濃度20mM)として加え、FVIIa407Cを捕獲するために、バッファーA(50mMのHEPES、100mMのNaCl、1mMのEDTA、pH7.0)で平衡化した1mlのHiTrap Q FFカラム(アマシャム・バイオサイエンス社, GEヘルスケア)に全容量をロードした。バッファーAによる洗浄後、結合したタンパク質のワンステップ溶出を、HiTrapカラムの前に取り付けたHiLoad Superdex200 16/60pgカラム(アマシャム・バイオサイエンス社)上で直接に、バッファーB(10mMのGlyGly、150mMのNaCl、10mMのCaCl、0.01%Tween80、pH7.0)によって行った。PEG化および非PEG化種は、1ml/minの流速で分離し、280nmの吸収によって検出した。
【0148】
選択還元およびFVIIa407CのPEG3.4またはPEG20k架橋−選択還元は、0.5mMのGSHを含み、10μMのGSSG、25mMのp-アミノベンズアミジンおよび10μMのGrx2を含む、総体積4.4mlの50mMのHEPES、100mMのNaCl、10mMCaCl、pH7.0のバッファーで4.5時間、30℃でインキュベートすることで行った。その後、EDTAを過剰カルシウム(最終濃度20mM)として加え、FVIIa407Cを捕獲するために、バッファーA(50mMのHEPES、100mMのNaCl、1mMのEDTA、pH7.0)で平衡化した1mlのHiTrap Q FFカラム(アマシャム・バイオサイエンス社, GEヘルスケア)に全量をロードした。結合していないグルタチオン・バッファーおよびGrx2pを除去するためにバッファーAによる洗浄後、FVIIa407CはバッファーB(50mMのHEPES、100mMのNaCl、10mMのCaCl、pH7.0)でワンステップで溶出させた。該溶出液中のFVIIa407Cの濃度は、62・10-1cm-1の吸光係数を使用して280nmの吸光度で測定した。架橋結合は、約0.6相当のマレイミド-PEG3.4k-マレイミドまたはマレイミド-PEG20k-マレイミドの存在下で、室温で1.5時間行った。(C)EDTAを過剰カルシウム(最終濃度20mM)として加え、FVIIa407Cを捕獲するために、バッファーA(50mMのHEPES、100mMのNaCl、1mMのEDTA、pH7.0)で平衡化した1mlのHiTrap Q FFカラム(アマシャム・バイオサイエンス社, GEヘルスケア)に全容量をロードした。バッファーAによる洗浄後、PEG化で非PEG化種を分離するために、結合したタンパク質のワンステップ溶出を、HiLoad Superdex200 16/60pgカラム(アマシャム・バイオサイエンス社)上で直接、バッファーB(10mMのGlyGly、150mMのNaCl、10mMのCaCl、0.01%Tween80、pH7.0)によって実施した。流速は1ml/minで、タンパク質は280nmの吸収によって検出した。
【0149】
FVIIa407C,FVIIa407C-PEG5k、FVIIa407C-PEG20k、FVIIa407C-PEG40kおよびFVIIa407C-PEG3.4k-FVIIa407CのSDS-PAGE分析−FVIIa407C、および5k、20k、40kおよび3.4kPEG化化合物(各約1.5μg)は、製造業者の推奨に従って、4−12%のビストリスNuPAGE(登録商標)ゲル(インビトロジェン・ライフ・テクノロジー社,カールスバット、カリフォルニア州)上で、MESバッファー(インビトロジェン・ライフ・テクノロジー社,カールスバット、カリフォルニア州)により200Vで35分間泳動する還元および非還元SDS-PAGEによって分析した。ゲルは、水で洗浄し、製造業者の推奨に従ってSimply Blue SafeStain(インビトロジェン・ライフ・テクノロジー社,カールスバット、カリフォルニア州)で染色した。ゲルは、図8に示す。
【0150】
FVIIa407C、FVIIa407C-PEG3.4k-FVIIa407C、およびFVIIa407C-PEG20k-FVIIa407CのSDS-PAGE分析−タンパク質(各約1μg)は、製造業者の推奨に従って、4−12%のビストリスNuPAGE(登録商標)ゲル(インビトロジェン・ライフ・テクノロジー社, カールスバット、カリフォルニア州)上で、MESバッファー(インビトロジェン・ライフ・テクノロジー社, カールスバット、カリフォルニア州)により200Vで35分間泳動する、還元および非還元SDS-PAGEによって分析した。ゲル類は、水で洗い、製造業者の推奨に従ってSimply Blue SafeStain(インビトロジェン・ライフ・テクノロジー社, カールスバット、カリフォルニア州) で染色した。ゲルは、図9に示す。
【0151】
FVIIa407C,FVIIa407C-PEG5k、FVIIa407C-PEG20k、FVIIa407C-PEG40k、FVIIa407C-PEG3.4k-FVIIa407CおよびFVIIa407C-PEG20k-FVIIa407Cの活性部位滴定−基本的に他の文献(Bock, 1992)の記載に従って、FVIIa407CおよびPEG化化合物の活性部位濃度はd-Phe-Phe-Arg-クロロメチルケトン(FFR-cmk)の半化学量論的レベルによる滴定におけるアミド分解活性の不可逆性の損失から推定した。簡潔に述べると、各タンパク質は、50mMのHEPES、100mMのNaCl、10mMのCaCl、0.01%Tween80、pH7.0バッファーに、280nmで62・10-1cm-1の吸光係数を使用して約300nMの濃度にに希釈した。希釈したタンパク質(20μl)は、その後20μlの1.5μMのsTFおよび20μlの0−1.2μMのFFR-cmk(DMSOに溶解したFFR-cmkストックから新しく調製し、−80℃で保存したもの)と結合させた。室温で一晩インキュベート後、残余アミド分解活性を測定した。
【0152】
活性分析は、50nMのsTFおよび約10nMのFVIIaを含むサンプルの10倍の希釈に相当する最終量200μlの分析バッファー(50mMのHEPES、100mMのNaCl、5mMのCaCl、0.01%Tween80、pH7.4)で、ポリスチレン・マイクロタイタープレート(ヌンク, デンマーク)上で行った。室温で15分のプレインキュベーションの後、1mMの発色体基質S-2288を加え、吸光度はSOFTmax PROソフトウェア(v2.2;Molecular Devices Corp., サニーベール、カリフォルニア州)を装備したSpectraMaxTM340マイクロプレート分光光度計で20分間の405nmで連続的にモニタした。アミド分解活性は、ブランク補正後、リニア反応進行曲線の傾斜として報告した。アミド分解活性が完全に消滅しているFFR-cmkを最小濃度として、活性部位濃度は外挿法で測定した。
【0153】
表2に、280nmのタンパク質の吸光度を比例する測定された活性部位濃度を示す。値は、FVIIa407Cを100%に正規化している。
表2−FVIIa407CおよびPEG化変異体の特異的な活性部位濃度。特異的な活性部位濃度は、280nmのタンパク質の吸光度に対するFFR-cmk滴定よる活性部位濃度として測定した。値は、FVIIa407Cを100%に正規化している。
【表2】

【0154】
固定化された可溶組織因子に結合するFVIIa407C、FVIIa407C-PEG3.4k-FVIIa407CおよびFVIIa407C-PEG20k-FVIIa407Cの表面プラスモン共鳴(SPR)分析−FVIIa407CおよびPEG化変異体の固定された可溶な組織因子に対する結合性は、Biacore 3000計測器(ビアコアAB社, ウプサラ, スウェーデン)上の表面プラスモン共鳴分析によって分析した。固定化の前に、sTF E219Cは、20分間pH7.0でタンパク質を2mMのビオチン-PEO-ヨードアセトアミドと作用させることによって、その遊離システインでビオチン化した。続いて、5mMのCaClを含むHBS-Pバッファー(10mMのHEPES、150mMのNaCl、0,005%P20;ビアコアAB社, ウプサラ, スウェーデン)で平衡化したNAPTM5カラム(アマシャム・バイオサイエンスAB社, ウプサラ、スウェーデン)でゲル濾過によって、過剰な試薬は除去した。ビオチン化されたsTF E19Cは、SAセンサーチップ(ビアコアAB社, ウプサラ, スウェーデン)のフローセル2に2.2fmol/mm(〜50RU)の密度で固定した。接触分析は、自動インライン対照減算のための無処置のフローセル1を使用して、泳動バッファー(5mMのCaClを含むHBS-Pバッファー)で、30μl/minの流速で実施した。100nMから約5nMまでのタンパク質の連続希釈を分析した。泳動バッファー中でのフローセルの3分間の平衡化後、KINJECTコマンドを使用して、90μlのタンパク質サンプルを注入した。溶出相は9分持続し、再生はHBS-Pバッファーの20mMのEDTAの3分間パルスによって実施した。SPRデータは、BIAevaluation 4.1ソフトウェア(ビアコア社、ウプサラ、スウェーデン)を使用して、1:1ラングミュア結合モデルに合てはめた。結果は、表3に示す。
【0155】
表3−FVIIa407Cおよび二量体変異体の固定されたsTFに対する結合性の表面プラスモン共鳴分析。解離定数(K)は、測定された対合(kon)および解離(koff)化学反応速度定数から算出した。
【表3】

【0156】
トリフェニルホスフィン-3,3',3"トリスルホン酸を使用するFVIIaR396C-混合ジスルフィドの還元−トリフェニルホスフィン-3,3',3"トリスルホン酸を使用するFVIIaR396C-混合ジスルフィドの小スケールの還元は、以下に従って行った:FVIIaR396C(4.4μM)は、50mMのp-アミノベンズアミジンを含む総体積50μlの反応バッファー(50mMのHEPES、100mMのNaCl、10mMのCaCl、0.05%Tween20、pH7.0)中で、2.5または5.0mMどちらかのPPhで処理した。室温で16.3時間のインキュベーションの後、過剰な還元体を取り除くために、製造業者の指示に従って、反応混合液(30μl)は、再水和したPro・SpinTMスピンカラムで脱塩した。その後、遊離チオールは、室温で10分間、0.2mMのPEG5k-マレイミドでアルキル化した。PEG化および非PEG化FVIIaR396Cは、製造業者の推奨に従って4−12%のビストリスゲル(インビトロジェン・ライフ・テクノロジー社,カールスバット、カリフォルニア州)をMESバッファーで35分間200V泳動する還元SDS-PAGEによって分離した。製造業者の指示に従って、Simply BlueTM SafeStain (インビトロジェン・ライフ・テクノロジー社, カールスバット、カリフォルニア州)によるゲル染色を行った。ゲルは、図10Aに示す。
【0157】
PPhによるインキュベーション前後のFVIIaR396Cのアミド分解活性は、200μl(総体積)の50mMのsTFを含む50mMのHEPES、100mMのNaCl、5mMのCaCl、1mg/mlのBSA、pH7.4である320倍希釈の反応混合液によって測定した。室温で、15分のプレインキュベーション後、1mMの発色体基質S-2288を加え、吸光度はSOFTmax PROソフトウェア(v2.2;Molecular Devices Corp., サニーベール、カリフォルニア州)を装備したSpectraMaxTM340マイクロプレート分光光度計で20分間の405nmで連続的にモニタした。アミド分解活性は、ブランク補正後、リニア反応進行曲線の傾斜として報告した。結果は、図10Bに示す。
【0158】
第VII因子ポリペプチドの露出したジスルフィドの選択還元−トリアリールホスフィン1(アルドリッチ社製のトリフェニルホスフィン-3,3',3"トリスルホン酸の三ナトリウム塩)は、対応する3,3'-ビス-スルホン酸2のほぼ5%を含む。従って、1は0.1%トリフルオロ酢酸の存在下で、アセトニトリル水溶液の濃度勾配によって溶出する標準の逆相HPLCによって精製した。
【化7】

【0159】
トリフェニルホスフィン-3,3',3"トリスルホン酸(2.5mM)は、活性化部位阻害剤4-アミノベンズアミジンと組合わせて、グルタチオンとFVIIaR396C間の露出したジスルフィド結合を基本的にアミド分解活性の損失なしに還元するために用いることができることが分かっている。混合ジスルフィド結合の還元分解反応は、PEG5k-マレイミドで遊離したシステインの後に続く修飾によって示された。
【0160】
トリアリールホスフィン1−3(10mM)は、個々に室温で1時間、rFVIIaと共にインキュベートした。1の存在下では、rFVIIaはその活性の大部分を保持した。対照的に、3,3'-ビス-スルホン酸2は、非常に類似した4,4'-ビス-スルホン酸3(アルドリッチ社製の二カリウム塩)のように、酵素のアミド分解活性の急速な減少を引き起こしたので、rFVIIaの還元に最適であるとみなされなかった。
【0161】
さらにまた、1のシスチンジメチルエステル5を還元する能力を試験した。反応は室温で1の15mM濃度の水溶液で行った。基質は、5mM濃度で存在した。LC-MS分析によって、5のジスルフィド結合が所与の条件下で還元することを証明した。
【化8】

【0162】
より多くの立体障害型トリアリールホスフィン4(Strem製の三ナトリウム塩)がrFVIIaに対しほぼ不活性であるとわかり、より選択的な還元剤を開発する可能性を示唆した。化合物9−11は、選択的なジスルフィド還元剤であると期待されるトリアリールホスフィンの非制限的な例を示す。
【0163】
実施例2
材料−FVIII欠乏血漿は、ジョージ・キング・バイオメディカル社(カンサス、米国;製品番号0800)より入手した。凍結乾燥されたヒト血小板は、ヘレナ・バイオサイエンス社(英国、製品番号5371)から購入した。血小板還元バッファー:トリスバッファー生理食塩水は、ヘレナ・バイオサイエンス社(英国、製品番号5365)より入手した。イノビンは、Dade Behring社(Liederbach,ドイツ;製品番号B4212-50)より入手した。トロンビン特異的基質:Z-Gly-Gly-Arg-AMC HClフルオロフォアはBachem社(Weil am Rhein、ドイツ;製品番号I−1140)より入手した。組換えFVIIa(rFVIIa)の発現および精製は、以前に記載したとおりに行った(Thim等,1988;PerssonとNielsen,1996)。他の全ての化学製品は、分析用グレード以上である。
【0164】
内因性トロンビン産性能(ETP)バイオアッセイを使用したFVII類似体のrFVIIa様活性の測定−内因性トロンビン産性能(ETP)アッセイは、選択した血漿サンプルのトロンビン生成のリアルタイム測定に基づく。血漿サンプルはXaseのアセンブリーのための生理的脂質表面源として凍結乾燥した血小板、および凝固カスケードのプロトロンビナーゼ複合体を含む。リアルタイム・トロンビン活性は、トロンビン特異的基質由来の発生した蛍光生成物の連続検出で測定した(Hemker等,2000;HemkerとBeguin,2000)。
【0165】
FVIIaおよびPEG化変異体の濃度は、280nmので吸光度測定値で測定した。1mg/mlのタンパク質溶液(E0.1%)の吸光度として、1.36の値を得た。
【0166】
凍結乾燥された血小板の1つのバイアルは、0.73mlの還元バッファー(トリス緩衝化サリン)において分解されて、FVIII欠乏性血漿の75.000の血小板/μlに更に希釈した。イノビン、組換えFVIIa(rFVIIa)およびテストサンプルを分析バッファー(20mMのHepes、150mMのNaCl、pH7.35、1.5%のウシ血清アルブミン(BSA))に希釈した。トロンビン特異的基質(Z-Gly-Gly-Arg-AMC)を60%ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、カルシウム含有分析バッファー(100mMのCaCl、20mMのHepes、150mMのNaCl、pH7.35)で更に希釈した。コスターマイクロタイタープレート(96穴、製品番号3631)において、10μlのrFVIIa(最終0―10000ng/ml)、またはテストサンプル、またはブランク(分析バッファー)(10μl)をそれぞれのウェルに加えた。イノビン(10μl、最終0.12pM)、および血漿を含む血小板(80μl、最終50.000血小板/μl)をコスタープレートのそれぞれのウェルに加えた(96穴、製品番号3631)。プレートは、Thermo Fluoroscan Ascent(Thermo Electron Corporation, ケンブリッジ、英国)で37℃で10分間インキュベートした。基質(20μl、最終濃度:0.4mMのトロンビン特異的基質、0.5%DMSOおよび16.7mMのCaCl)を即時に加え、蛍光を60分間連続的に記録した(励起390nm,蛍光460nm)。
【0167】
濃度反応曲線は、シグナルに基づいて、rFVIIaおよびFVII類似体で作製した(60分間の蛍光単位時間曲線下の面積)。FVIIaに関する類似体のETP活性は、カーブから算出し表4に示した。
【0168】
表4−rFVIIaに関する二量体FVIIa407C分子のETP活性。相対活性はFVIIa407Cのプロトマーごとに与えられるので、二量体分子の総活性は報告された値の2倍である。
【表4】

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【非特許文献33】Thim,L., Bjoern,S., Christensen,M., Nicolaisen,E.M., Lund-Hansen,T., Pedersen,A.H., and Hedner,U. (1988). Amino acid sequence and posttranslational modifications of human factor VIIa from plasma and transfected baby hamster kidney cells. Biochemistry 27, 7785-7793.
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【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】混合ジスルフィドでFVIIa407Cと結合した低分子量チオールの同定。タンパク質をTCEPおよびSBD-f存在下でインキュベートし、FVIIa407Cの調製において、改変したCys407に付加したチオールを解放し誘導体化した。SBD誘導体化チオールを逆転相HPLCによって分離し、蛍光(励起波長および蛍光波長が各々386および516nm)によって検出した。野生型FVIIaおよび一連の低分子量のチオール化合物(各々の10pmol;標準と表す)のHPLCトレースを比較のために示す。1つの星印で印をつけたピークは、市販のシステアミンの不純物に起因する。2つの星印は、FVIIa407CのHPLCトレースの同定不明のピークを示す。各々のピーク上のパーセントは、分析したFVIIa407Cの量に対する(その保持時間から同定された)既知のチオール種の量を示す。保持時間に基づいて、FVIIa407Cに結合する主要チオールがグルタチオン、システインおよびホモシステインであると結論づけることができる。略語:GSH(グルタチオン)、γ-GC(γ-グルタミルシステイン)、CG(システイニルグリシン)、Cys(システイン)、Hcy(ホモシステイン)およびCya(システアミン)。
【図2】pH7における多様な濃度の還元型および酸化型グルタチオン([GSH]/[GSSG]比によって表す)、1μMの酵母グルタレドキシン1(yGrx1p)、無(中空の丸)または25mMのp-アミノベンズアミジン(中空の四角)の存在下でインキュベートしたFVIIaの残余アミド分解活性。全サンプルは、アミド分解活性を測定する前に30℃で3.5時間平衡化した。アミド分解活性は、完全に活性なFVIIaを1として正規化されている。
【図3】FVIIaCys407およびグルタチオン間の混合ジスルフィドの酸化還元滴定。FVIIa407CはpH7における多様な濃度の還元型および酸化型グルタチオン([GSH]/[GSSG]比で表す)および10μMの大腸菌グルタレドキシン2(Grx2)を含むバッファーで平衡化されている。30℃5時間の平衡化後の、遊離FVIIaを検出し、PEG5k-マレイミドでアルキル化後にHPLCによって定量化した。ピーク面積は、完全な5k-PEG化活性化FVIIaを1として正規化した。
【図4】0.5mMのGSH、多様な濃度のGSSG、および無(−PABA)または25mMのp-アミノベンズアミジン(+PABA)のどちらかを含む酸化還元バッファー中で平衡時の、残余アミド分解活性(点線)および遊離Cys407チオール基を有する活性化FVIIa407Cの比(実線)。カーブは式2および4(それぞれKox値93mM(−PABA)および166mM(+PABA)、およびKscox値1.02)を使用して描いた。陰をつけた領域は>90%の残余活性および>90%の遊離407CチオールとなるGSSGの濃度範囲を示す。
【図5】図4で代わりに0.5mMのGSHを有するもの。陰をつけた領域は>90%の残余活性および>90%の遊離FVIIa407CチオールとなるGSSGの濃度範囲を示す。
【図6】図4で代わりに1.0mMのGSHを有するもの。陰をつけた領域は>90%の残余活性および>90%の遊離FVIIa407CチオールとなるGSSGの濃度範囲を示す。
【図7】選択還元の前(点線)および後(破線の点線)、およびPEG20k-マレイミド修飾後(実線)のFVIIa407CのHPLC分析。407C、407C-SRおよび407C-PEG20kは、それぞれ、遊離の、低分子量チオール結合した、および20k-PEG化したFVIIa407Cのピークを示す。星印は、おそらくハイパーPEG化種である未同定のピークを示す。ピーク積分は、未処理の材料の11%に対して、還元工程の最終時の遊離FVIIa407Cの89%となった。チオール・アルキル化後、85%のFVIIa407Cは、モノPEG化種に変換した。
【図8】還元(右パネル)および非還元(左パネル)SDS-PAGE分析:FVIIa407C(レーンA)、FVIIa407C-PEG5k(レーンB)、FVIIa407C-PEG20k(レーンC)、FVIIa407C-PEG40k(レーンD)およびFVIIa407C-PEG3.4k-FVIIa407C(レーンE)。
【図9】還元(右パネル)および非還元(左パネル)SDS-PAGE分析:FVIIa407C(レーンA)、FVIIa407C-PEG3.4k-FVIIa407C(レーンB)、FVIIa407C-PEG20k-FVIIa407C(レーンC)。
【図10】(A)2.5mM(レーンA)または5.0mMの(レーンB)トリフェニルホスフィン-3,3',3"トリスルホン酸(PPh)で16.3時間室温で処理し、その後PEG20k-マレイミドで標識したFVIIaR396Cの還元SDS-PAGE分析。レーンCに、対照として無処置のFVIIaを含む。(B)PPhによる16.3時間のインキュベーション前(100%活性)と後のFVIIaR396Cの相対アミド分解活性。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FVIIaポリペプチドの本来備わっている触媒活性を保持するように共有結合により連結された少なくとも2つのFVIIaポリペプチドを含んで成る二量体または多量体FVIIa化合物。
【請求項2】
上記化合物が、本願明細書において開示される分析で測定して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%の活性部位濃度を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
構成要素のFVIIaポリペプチドの生物学的活性と比較したとき、上記化合物の生物学的活性が上昇している請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
2つのFVIIaポリペプチドが共有結合により連結して二量体FVIIa化合物を形成している請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
上記少なくとも2つのFVIIaポリペプチドが上記FVIIaポリペプチドの改変されたシステインを介して共有結合で連結される請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
共有結合で連結された上記FVIIaポリペプチドが同一のFVIIaポリペプチドである請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
少なくとも2つの異なるFVIIaポリペプチドが共有結合で連結される請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
上記二量体または多量体FVIIaが構成要素FVIIaポリペプチド間にリンカーを含む請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
上記リンカーが二価のシステイン反応性PEGを伴う反応から生じる構造を有する請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
上記リンカーがマレイミド-PEG-マレイミドを伴う反応から生じる構造を有する請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
上記マレイミド-PEG-マレイミドが、マレイミド-PEG2kD-マレイミド、マレイミド-PEG3.4kD-マレイミド、マレイミド-PEG5kD-マレイミド、マレイミド-PEG10kD-マレイミドおよびマレイミド-PEG20kD-マレイミドからなる群から選択される請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
上記リンカーがアミノ酸配列を含んで成る請求項8に記載の化合物。
【請求項13】
上記少なくとも2つのFVIIaポリペプチドが上記FVIIaポリペプチドの遊離アミンを介して共有結合で連結する請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
上記少なくとも2つのFVIIaポリペプチドが上記FVIIaポリペプチドに結合した天然のまたは改変されたグリカンを介して共有結合で連結する請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
少なくとも2つのFVIIaポリペプチドが、例えばトランスグルタミナーゼまたはソルターゼによって、酵素触媒カップリング反応から生じる化学構造を介して共有結合で連結する請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
上記FVIIaポリペプチドがFVIIa407Cである請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
上記FVIIaポリペプチドがFVIIa407C変異体である請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
上記FVIIaポリペプチドがFVIIaP406CまたはFVIIaP406C変異体である請求項1から17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
上記FVIIaポリペプチドがFVIIaR396CまたはFVIIaR396C変異体である請求項1から18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
上記FVIIaポリペプチドがFVIIaQ250CまたはFVIIaQ250C変異体である請求項1から19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
上記FVIIaポリペプチドが、最適化されたGLAドメイン(例えばY4挿入、P10Q、K32E、D33F、D33EおよびA34Eの組み合わせ)を有するFVIIa変異体である請求項1から20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
上記FVIIaが、M298Q、V158D/E296V/M298Q、V158D/E296V/M298Q/K337A、F374Y/L305V、F374Y/L305V/S314E/K337A、F374Y/L305V/S314E、F374Y/L305V/K337A、L305V/K337A、V158D/E296V/M298Q/L305V、V158D/E296V/M298Q/L305V/K337A、V158T/M298Q、E296V/M298Q、V158D/E296V、V158D/M298Qおよびこれらの407C変異体からなる群から選択される置換を含んで成る、本来備わっているタンパク分解活性が上昇しているFVIIa変異体である請求項1から21のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
上記FVIIa変異体が、L305V、L305V/M306D/D309S、L305I、L305T、F374P、V158T/M298Q、V158D/E296V/M298Q、K337A、M298Q、V158D/M298Q、L305V/K337A、V158D/E296V/M298Q/L305V、V158D/E296V/M298Q/K337A、V158D/E296V/M298Q/L305V/K337A、K157A、E296V、E296V/M298Q、V158D/E296V、V158D/M298K、S336G、L305V/K337A、L305V/V158D、L305V/E296V、L305V/M298Q、L305V/V158T、L305V/K337A/V158T、L305V/K337A/M298Q、L305V/K337A/E296V、L305V/K337A/V158D、L305V/V158D/M298Q、L305V/V158D/E296V、L305V/V158T/M298Q、L305V/V158T/E296V、L305V/E296V/M298Q、L305V/V158D/E296V/M298Q、L305V/V158T/E296V/M298Q、L305V/V158T/K337A/M298Q、L305V/V158T/E296V/K337A、L305V/V158D/K337A/M298Q、L305V/V158D/E296V/K337A、L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A、L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A、S314E/K316H、S314E/K316Q、S314E/L305V、S314E/K337A、S314E/V158D、S314E/E296V、S314E/M298Q、S314E/V158T、K316H/L305V、K316H/K337A、K316H/V158D、K316H/E296V、K316H/M298Q、K316H/V158T、K316Q/L305V、K316Q/K337A、K316Q/V158D、K316Q/E296V、K316Q/M298Q、K316Q/V158T、S314E/L305V/K337A、S314E/L305V/V158D、S314E/L305V/E296V、S314E/L305V/M298Q、S314E/L305V/V158T、S314E/L305V/K337A/V158T、S314E/L305V/K337A/M298Q、S314E/L305V/K337A/E296V、S314E/L305V/K337A/V158D、S314E/L305V/V158D/M298Q、S314E/L305V/V158D/E296V、S314E/L305V/V158T/M298Q、S314E/L305V/V158T/E296V、S314E/L305V/E296V/M298Q、S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q、S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q、S314E/L305V/V158T/K337A/M298Q、S314E/L305V/V158T/E296V/K337A、S314E/L305V/V158D/K337A/M298Q、S314E/L305V/V158D/E296V/K337A、S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A、S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A、K316H/L305V/K337A、K316H/L305V/V158D、K316H/L305V/E296V、K316H/L305V/M298Q、K316H/L305V/V158T、K316H/L305V/K337A/V158T、K316H/L305V/K337A/M298Q、K316H/L305V/K337A/E296V、K316H/L305V/K337A/V158D、K316H/L305V/V158D/M298Q、K316H/L305V/V158D/E296V、K316H/L305V/V158T/M298Q、K316H/L305V/V158T/E296V、K316H/L305V/E296V/M298Q、K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q、K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q、K316H/L305V/V158T/K337A/M298Q、K316H/L305V/V158T/E296V/K337A、K316H/L305V/V158D/K337A/M298Q、K316H/L305V/V158D/E296V/K337A、K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A、K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A、K316Q/L305V/K337A、K316Q/L305V/V158D、K316Q/L305V/E296V、K316Q/L305V/M298Q、K316Q/L305V/V158T、K316Q/L305V/K337A/V158T、K316Q/L305V/K337A/M298Q、K316Q/L305V/K337A/E296V、K316Q/L305V/K337A/V158D、K316Q/L305V/V158D/M298Q、K316Q/L305V/V158D/E296V、K316Q/L305V/V158T/M298Q、K316Q/L305V/V158T/E296V、K316Q/L305V/E296V/M298Q、K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q、K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q、K316Q/L305V/V158T/K337A/M298Q、K316Q/L305V/V158T/E296V/K337A、K316Q/L305V/V158D/K337A/M298Q、K316Q/L305V/V158D/E296V/K337A、K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A、K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337Aおよびこれらの407C変異体からなる群から選択される置換を含んで成る請求項1から20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
上記FVIIaポリペプチドがPEG化されている請求項1から23のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
ヒト血清アルブミンまたはその変異体と請求項1から24のいずれか一項に記載の二量体または多量体FVIIa化合物の間のコンジュゲートである化合物。
【請求項26】
請求項1から25のいずれか一項に記載の化合物と製薬的に許容可能な担体または賦形剤を含有する医薬組成物。
【請求項27】
患者の出血障害または出血症状の発現の治療のためまたは正常な止血系の強化のための医薬の製造のための請求項1から25のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項28】
請求項1から25のいずれか一項に記載の化合物の調製方法であって、以下の工程を含んで成る方法:
a) 上記FVIIaポリペプチドの合成および精製;
b) 上記FVIIaポリペプチドのカップリングによる上記化合物の合成;
c) 上記二量体または多量体FVIIa化合物の単離。
【請求項29】
請求項5、9から11および15から25のいずれか一項に記載の化合物の調製方法であって、以下の工程を含んで成る方法:
a) 上記FVIIaポリペプチドの合成および精製;
b) 連結されるFVIIaポリペプチド上のシステイン残基の選択還元;
c) 活性型リンカーの存在下において、還元型システイン残基で上記FVIIaポリペプチドをカップリングさせることよる上記二量体および多量体FVIIa化合物の合成;
d) 上記二量体または多量体FVIIa化合物の単離。
【請求項30】
工程b)が、酸化還元バッファーまたはトリアリールホスフィン還元剤による反応によるFVIIaポリペプチド上のシステイン残基の選択還元を含んで成る請求項29に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−546671(P2008−546671A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516339(P2008−516339)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063311
【国際公開番号】WO2006/134174
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(507383862)ノボ ノルディスク ヘルス ケア アーゲー (42)
【Fターム(参考)】