説明

井戸の液面検出装置

【課題】充分な耐久性を確保するとともに構造を簡単にした上で、環境温度の変化によっても井戸の液面を精度良く検出する。
【解決手段】耐熱性および耐蝕性を有する材料によって形成される検出管2が井戸1内の液中に先端部を浸漬させるようにして井戸1に挿入され、検出管2の先端から空気を漏出させるに充分な圧力および量の空気を連続的に供給し得る空気供給源3および検出管2間に絞り5が介設され、絞り5を迂回する開閉弁9が空気供給源3および検出管2間に設けられ、検出管2内の空気圧を検出する圧力検出器が検出管2に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、井戸の液面検出装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
井戸の液面を検出するために、液中に浸漬させるようにして圧力センサを井戸内に吊り下げ、圧力センサに加わる水頭圧によって井戸の液面を検出するようにしたものが、たとえば特許文献1によって既に知られている。
【特許文献1】特開平9−159509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかるに、温泉井戸内は、硫化水素等の腐食性ガスが存在し、しかも高温の雰囲気にあるので、上記従来のように、圧力センサを湯中に直接浸すような検出手法では、充分な耐久性を確保することが困難である。
【0004】
そこで本出願人は、温泉井戸に挿入されたステンレス鋼製の検出管に空気供給源を接続し、検出管の先端から空気を漏出させた後に検出管への空気供給源からの空気供給を遮断した状態で検出管内の圧力を検出するようにした簡単な構造で、充分な耐久性を確保しつつ湯面を正確に検出し得るようにした温泉井戸の湯面検出装置を、特願2004−257433号で既に提案している。
【0005】
ところが、温泉井戸の設置場所によっては環境温度の変化が大きく、上記提案装置のように検出管に空気供給源から間欠的に空気を供給するようにしたものでは、空気供給を停止した状態で検出管内の空気の容積が環境温度の変換によって大きく変化し、それによって湯面の検出精度が低下してしまうことがある。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、充分な耐久性を確保するとともに構造を簡単にした上で、環境温度の変化によっても井戸の液面を精度良く検出し得るようにした井戸の液面検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、耐熱性および耐蝕性を有する材料によって形成されるとともに井戸内の液中に先端部を浸漬させるようにして前記井戸に挿入される検出管と、該検出管の先端から空気を漏出させるに充分な圧力および量の空気を連続的に供給し得る空気供給源と、前記検出管および前記空気供給源間に介設される絞りと、該絞りを迂回して前記空気供給源および前記検出管間に設けられる開閉弁と、前記検出管内の空気圧を検出するようにして検出管に接続される圧力検出器とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このような構成によれば、検出管には、絞りによって流量が絞られた少量の空気が常時供給され、検出管の先端からは少量の空気が気泡となって常時漏出することになり、その際の検出管内の圧力は、検出管の先端から液面までの水頭圧に対応した値となっており、検出管内の圧力を検出する圧力検出器で液面レベルに応じた圧力を正確に検出することができる。しかも検出管内に常時少量の空気が供給されるので、環境温度の変化が生じても検出管内の空気の容積が大きく変化することはなく、環境温度の変化によっても井戸の液面を精度良く検出することができる。また井戸内に挿入されるのは、耐熱性および耐食性を有する材料によって形成される検出管だけであり、井戸内が腐食性ガスの存在する高温雰囲気にあっても、充分な耐久性を確保することができる。また開閉弁を開弁することにより、検出管内に比較的大量の空気を供給することができるので、検出開始時に液面レベルを速やかに検出することができる。さらに検出管に供給される空気量が少量ですむので空気供給源の小型化が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
【0010】
図1〜図3は本発明の一実施例を示すものであり、図1は本発明装置の構成を示す図、図2は圧力検出器の縦断面図、図3は絞りの構成を示す縦断面図である。
【0011】
先ず図1において、地面にはたとえば温泉井戸である井戸1が掘削されており、その井戸1内の液面Lを検出するために、たとえば内径を8mmφとした検出管2がその先端を井戸1の底部1aに近接する位置まで挿入され、検出管2の先端部は湯中に浸漬される。しかも検出管2は、耐熱性および耐食性を有する材料によって形成されるものであり、たとえばSUS304やSUS306L等のステンレス鋼製またはフッ化樹脂製のものである。また地表では、空気供給源3が管路4、絞り5、管路6およびT字形の管継手7を介して検出管2に接続され、前記管継手7には圧力検出器8が接続され、また管路4,6間には絞り5を迂回するようにして開閉弁9が接続される。
【0012】
空気供給源3は、コンプレッサ10と、該コンプレッサ10に接続されるタンク11と、該タンク11に接続される空気フィルタ12とを備えるものであり、コンプレッサ10はタンク11内の圧力が所定値以下となるのに応じて作動し、タンク11に貯留された加圧空気は空気フィルタ12で濾過されて絞り5側に圧送される。
【0013】
而して前記絞り5で絞られた少量の空気が、前記検出管2の先端から空気を漏出させるに充分な圧力で検出管2に常時供給されることになる。また開閉弁9は、たとえば常閉型電磁弁であり、その開閉作動は制御手段Cによって制御される。
【0014】
図2において、圧力検出器8は、半導体圧力センサ13を用いて、該半導体圧力センサ13が備える半導体感圧要素14に対する空気圧を検出するように構成される。
【0015】
半導体圧力センサ13は、圧力導入管15aを有して合成樹脂により形成されるハウジング15内に半導体感圧要素14が内蔵されて成るものであり、半導体感圧要素14に連なる複数の端子16,16…がハウジング15を液密に貫通してハウジング15外に突出され、図1で示すように制御手段Cに接続される。
【0016】
半導体圧力センサ13は支持部材17に取付けられる。この支持部材17は、円盤部17aと、円盤部17aの一端中心部から同軸に突出する円筒部17bと、円盤部17aの他端外周から半径方向外方に張出す鍔部17cとを一体に有して、たとえば真鍮等の金属により形成されるものであり、該支持部材17の中心部には貫通孔18が設けられる。
【0017】
前記貫通孔18の一端側には大径孔部18aが形成されており、半導体圧力センサ13のハウジング15が備える圧力導入管15aは、前記大径孔部18aの内面との間にリング状のシール部材19を介在させて、貫通孔18にその一端側から液密に嵌入される。
【0018】
貫通孔18に圧力導入管15aを嵌入させたハウジング15は円筒部17bの先端に当接され、その状態のハウジング15に支持部材17とは反対側から係合する複数たとえば一対の係合部材20,20が、ねじ部材21,21で円盤部17aの一端に締結される。これにより半導体圧力センサ13は、そのハウジング15を円筒部17bおよび一対の係合部材20,20間で挟持するようにして支持部材17に取付けられる。
【0019】
支持部材17の他端側には、貫通孔18の他端側を覆う金属たとえばステンレス鋼製のダイヤフラム22が取付けられ、該ダイヤフラム22の一面を臨ませて支持部材17およびハウジング15内に形成される受圧室23に、たとえばシリコーンオイル等の液状媒体が充填される。
【0020】
支持部材17の他端側外周部すなわち鍔部17cの外周部には、金属たとえばステンレス鋼によってダイヤフラム22の他面側を臨ませる皿状に形成される挟持部材24の外周部全周が、支持部材17との間にダイヤフラム22の周縁部を挟持するようにしてかしめ結合される。
【0021】
ダイヤフラム22の周縁部を挟持するにあたり、支持部材17の鍔部17cおよび挟持部材24には、相互に対応してリング状に形成される挟持突部17d,24aがそれぞれ突設されており、ダイヤフラム22の周縁部は、それらの挟持突部17d,24a間に挟持される。
【0022】
また挟持突部17d,24aよりも外方側で、ダイヤフラム22および鍔部17c間にはリング状のシール部材25が挟持され、ダイヤフラム22および挟持部材24間にはリング状のシール部材26が挟持されており、これらのシール部材25,26によりシール性を維持するようにして、ダイヤフラム22の周縁部が支持部材17の鍔部17cおよび挟持部材24の外周部間に挟持される。
【0023】
挟持部材24の中央部にはダイヤフラム22とは反対側に突出する連結筒部24bが一体に連設される。この連結筒部24bには袋ナット27が連結される。
【0024】
この袋ナット27は、前記連結筒部24bを挿通させる挿通孔28が中心部に設けられる端壁27aを有するものであり、挿通孔28に挿通された連結筒部24bの先端を袋ナット27内で彎曲させて成る係合部24cが端壁27aの内面に係合することにより、袋ナット27に連結筒部24cが連結される。
【0025】
一方、管継手7が備える分岐管部7aの先端部外面には前記袋ナット27に螺合する雄ねじ29が刻設されており、袋ナット27内には、前記挿通孔28に挿通された連結筒部24cの先端部と、前記分岐管部7aの先端との間に挟まれるリング状のシール部材30が収容されており、管継手7の分岐管部7aに袋ナット27が螺合されることにより、管継手7すなわち検出管2が、圧力検出器8に気密に接続される。
【0026】
この圧力検出器8からは、検出管2内の圧力が増加するのに応じて比例的に増大する信号が出力される。
【0027】
図3において、上流端が空気フィルタ12に接続される管路4の下流端には雄型継手部材31が設けられ、下流端が管継手7に接続される管路6の上流端には雌型継手部材32が設けられ、雄型継手部材31および雌型継手部材32間を接続する継手部材33に絞り5が設けられる。
【0028】
継手部材33は、雄型継手部材31を螺合せしめる有底円筒状の円筒部33aと、該円筒部33aの閉塞端に同軸に連なるとともに雌型継手部材32に螺合される軸部33bとを一体に備えるものであり、軸部33bの中央部に同軸に設けられる貫通孔34を貫通する毛細銅管34が、たとえばロウ付けによって前記軸部33bに、固定される。而して前記毛細銅管34の一部を絞ることにより、たとえば0.3mmφの内径を有する絞り5が形成され、空気供給源3からの空気は、たとえば20cc/min程度の流量に絞られて検出管2に供給されることになる。
【0029】
次にこの実施例の作用について説明すると、井戸1内の液中に先端部を浸漬させるようにして検出管2が井戸1に挿入され、空気供給源3からの空気が絞り5で絞られることにより、少量の空気が検出管2に常時供給され、検出管2の先端からは少量の空気が気泡となって常時漏出される。しかも検出管2には、該検出管2内の空気圧を検出する圧力検出器8が接続されている。
【0030】
このように少量の空気が常時供給されるとともに供給された分の少量の空気が漏出して入る状態で、検出管2内の圧力は、検出管2の先端から液面Lまでの水頭圧に対応した値となっている。したがって検出管2内の圧力を圧力検出器8で検出することにより、水頭圧すなわち液面Lに応じた圧力を検出することができ、圧力検出器8の検出値に応じた制御手段Cの演算により液面Lを正確に得ることができる。
【0031】
しかも検出管2内に常時少量の空気が供給されるので、環境温度の変化が生じても検出管2内の空気の容積が大きく変化することはなく、環境温度の変化によっても井戸1の液面Lを精度良く検出することができる。また検出管2に供給される空気量が少量ですむので空気供給源3の小型化が可能である。
【0032】
また井戸1内に挿入されるのは、耐熱性および耐蝕性を有する材料から成る検出管2だけであり、井戸1内が腐食性ガスの存在する高温雰囲気にあっても、充分な耐久性を確保することができる。
【0033】
また絞り5を迂回する開閉弁9を開弁することにより、検出管2内に比較的大量の空気を供給することができるので、検出管2内の圧力を水頭圧に対応した値とするまでの時間を短縮し、検出開始時に液面Lを速やかに検出することができる。
【0034】
さらに絞り5が、上流端が空気フィルタ12に接続される管路4の下流端に設けられる雄型継手部材31と、下流端が管継手7に接続される管路6の上流端に設けられる雌型継手部材32間を接続する継手部材33に設けられているので、絞り5に目詰まりが生じたときには継手部材33を交換すればよい。
【0035】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0036】
たとえば上記実施例では、温泉井戸の液面を検出する場合について説明したが、本発明は、井戸の液面を検出する検出装置として広く実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明装置の構成を示す図である。
【図2】圧力検出器の縦断面図である。
【図3】絞りの構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1・・・井戸
2・・・検出管
3・・・空気供給源
5・・・絞り
8・・・圧力検出器
9・・・開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性および耐蝕性を有する材料によって形成されるとともに井戸(1)内の液中に先端部を浸漬させるようにして前記井戸(1)に挿入される検出管(2)と、該検出管(2)の先端から常時空気を漏出させるに充分な圧力および量の空気を連続的に供給し得る空気供給源(3)と、前記検出管(2)および前記空気供給源(3)間に介設される絞り(5)と、該絞り(5)を迂回して前記空気供給源(3)および前記検出管(2)間に設けられる開閉弁(9)と、前記検出管(2)内の空気圧を検出するようにして検出管(2)に接続される圧力検出器(8)とを備えることを特徴とする井戸の液面検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−329785(P2006−329785A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152925(P2005−152925)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000112635)フジコントロールズ株式会社 (11)
【Fターム(参考)】