説明

亜鉛−ニッケル三元合金およびより多元の合金を電気めっきするための浴、システム、および方法、ならびにそのようにして電気めっきされた物品

【課題】これまでに試みられた追加の合金化元素を含む亜鉛−ニッケル合金に関連する所望されない特徴を回避する一方で、輝度、水平度、延性、および強度が高められた亜鉛−ニッケル合金を提供すること。
【解決手段】a)亜鉛イオン;b)ニッケルイオン;ならびにc)Te+4、Bi+3およびSb+3のイオンから選択される1つ以上のイオン種、およびある実施形態においては、Bi+3、Sb+3、Ag+1、Cd+2、Co+2、Cr+3、Cu+2、Fe+2、In+3、Mn+2、Mo+6、P+3、Sn+2、およびW+6のイオンから選択される1つ以上の追加のイオン種をさらに含む亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を析出するための電気めっき浴、システム、方法、およびこのような合金を析出することから得られる物品。ある実施形態において、該システムは、カソードチャンバー(114、214、314、414)中にのみ電気めっき浴を有する状態で、カソードチャンバー(114、214、314、414)とアノードチャンバー(112、212、412)を形成する仕切り(116、216、316、416)を含む。種々の実施形態において、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金は、該合金がその上に析出された導電性基板に改善された性質を提供し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、一般に、亜鉛−ニッケル三元合金およびより多元の合金を電気めっきするための浴、方法、およびシステムに関し、このような合金を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
長年に渡り、金属などの基板上に明るく輝く平坦な亜鉛−ニッケル合金を電気めっきするための試みがなされ、方法が使用されている。アルカリ浴を使用するものもあったが、商業的に使用された方法の大部分は、酸浴を使用している。輝度、水平度、延性、強度、および析出される亜鉛−ニッケル合金中のニッケル含有量を高めようとして、多くの種類の添加剤が使用されている。
【0003】
電着(ED)亜鉛−ニッケル合金は、耐食性の機能的コーティングとして増加中の用途が見出されている。追加の合金化元素を使用するED亜鉛−ニッケル合金の変形物が使用され、塗料の受容性を向上するための鉄の使用、耐食性を向上するためのコバルトの使用、水素透過を低減するためのカドミウムの使用などの特定のニッチな適用改善の達成を補助している。しかしながら、全てのED亜鉛−ニッケル合金は、所望の機械的性質を獲得し難く、または維持し難い。多くのこのようなED亜鉛−ニッケル合金は、亀裂、剥離、欠け、脆性、または低延性などの所望されない特徴を呈する。これらの所望されない特徴は、ED亜鉛−ニッケル合金が、係る所望されない特徴をもたらす結晶相を含み得、たいていの場合は含むという事実に依ると考えられる。これらの結晶相としては、例えば、約10原子パーセント(at%)のニッケル含有量での金属間ZnNi‘デルタ’相、約12at%のニッケル含有量での‘ガンマ’相様真鍮、または約20at%のニッケル含有量での‘ベータ’相が挙げられる。これらの相の全てを有する亜鉛−ニッケル合金が、様々な研究者によって報告されている。全体的なニッケル含有量が、これらの相を形成するために通常要求される範囲外であるときでも、これらの問題のある相が、作りたてのED亜鉛−ニッケル合金中に見出され得ること、またはそれらが、溶解ニッケルを含む六方晶系亜鉛のマトリックス内で時間とともに形成し得ることが報告されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当該技術分野においては、これまでに試みられた追加の合金化元素を含む亜鉛−ニッケル合金に関連する所望されない特徴を回避する一方で、輝度、水平度、延性、および強度が高められた亜鉛−ニッケル合金に対する継続的な長期にわたる切実な需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
本発明者らは、電着亜鉛−ニッケル合金または電着三元合金、四元合金、もしくはより多元の亜鉛−ニッケル合金、例えば、ZnNiM...M中への比較的少量のテルリウムおよび/またはビスマスおよび/またはアンチモンの導入が、電着合金の機械的性質に有利に作用することを発見した。例えば、Te、BiまたはSbの1つ以上の導入は、電着合金コーティングの曲げ性を増大させ得、時に所望されない電着開始時の高い初期ニッケル濃度を低減させ得、電着合金の粒子サイズを変化させ得、および/または電着合金コーティングの耐衝撃性を増大させ得る。本開示から追加の利点が見出され、当業者にとって明らかとなるであろう。
【0006】
1つの実施形態において、本発明は、a)亜鉛イオン;b)ニッケルイオン;ならびにc)Te+4、Bi+3およびSb+3のイオンから選択される1つ以上のイオン種を含む、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を析出させるための電気めっき浴に関する。但し、該イオン種がTe+4を含むとき、該浴は、Bi+3、Sb+3、Ag+1、Cd+2、Co+2、Cr+3、Cu+2、Fe+2、In+3、Mn+2、Mo+6、P+3、Sn+2、およびW+6のイオンから選択される1つ以上の追加のイオン種をさらに含む。1つの実施形態において、該イオン種がBi+3またはSb+3の1つ以上を含むとき、該浴は、Ag+1、Cd+2、Co+2、Cr+3、Cu+2、Fe+2、In+3、Mn+2、Mo+6、P+3、Sn+2、およびW+6のイオンから選択される1つ以上の追加のイオン種をさらに含む。
【0007】
別の実施形態において、本発明は、電気めっき浴を保持するための電気めっきセル、アノード、電気めっきされる基板を含むカソード、および該アノードと該カソードとに操作可能に接続された電源を含む電気めっき装置;ならびにa)亜鉛イオン;b)ニッケルイオン;およびc)Te+4、Bi+3およびSb+3のイオンから選択される1つ以上のイオン種を含む電気めっき浴、但し、該イオン種がTe+4を含むとき、該電気めっき浴は、Bi+3、Sb+3、Ag+1、Cd+2、Co+2、Cr+3、Cu+2、Fe+2、In+3、Mn+2、Mo+6、P+3、Sn+2、およびW+6のイオンから選択される1つ以上の追加のイオン種をさらに含む、を含む、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金で基板を電気めっきするためのシステムに関する。1つの実施形態において、該イオン種がBi+3またはSb+3の1つ以上を含むとき、該浴は、Ag+1、Cd+2、Co+2、Cr+3、Cu+2、Fe+2、In+3、Mn+2、Mo+6、P+3、Sn+2、およびW+6のイオンから選択される1つ以上の追加のイオン種をさらに含む。
【0008】
別の実施形態において、本発明は、a)亜鉛イオン;b)ニッケルイオン;ならびにc)Te+4、Bi+3およびSb+3のイオンから選択される1つ以上のイオン種を含む、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を析出させるための電気めっき浴、但し、該イオン種がTe+4を含むとき、該浴は、(i)エチレンジアミンまたはそのメチル置換誘導体;プロピレンジアミンまたはそのメチル置換誘導体;ジエチレントリアミンまたはそのメチル置換誘導体;および高級アルキレンポリアミンなどのアルキレンアミンとエピハロヒドリンとの反応生成物と、(ii)芳香族アルデヒドとの両方を含む光沢剤の混合物を含まない、に関する。
【0009】
別の実施形態において、本発明は、電気めっき浴を保持するための電気めっきセル(該チャンバーは、該セルを仕切りによってカソードチャンバーとアノードチャンバーとに分離する仕切りを有する)、該アノードチャンバー中のアノード、該カソードチャンバー中のカソード(該カソードは、電気めっきされる基板を含む)、および該アノードと該カソードとに操作可能に接続された電源を含む電気めっき装置;ならびにa)亜鉛イオン;b)ニッケルイオン;およびc)Te+4、Bi+3およびSb+3のイオンから選択される1つ以上のイオン種を含む、該カソードチャンバー中の電気めっき浴を含む、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金で基板を電気めっきするためのシステムに関する。1つの実施形態において、該浴は、Ag+1、Cd+2、Co+2、Cr+3、Cu+2、Fe+2、In+3、Mn+2、Mo+6、P+3、Sn+2、およびW+6のイオンから選択される1つ以上の追加のイオン種をさらに含む。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、亜鉛;ニッケル;ならびにTe、BiおよびSbから選択される1つ以上の元素を含む、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を含む物品、但し、該合金がTeを含むとき、該合金はBi、Sb、Ag、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、In、Mn、Mo、P、Sn、およびWから選択される1つ以上の追加の元素をさらに含む、に関する。1つの実施形態において、該合金は、BiおよびSbの1つ以上を含むより多元の合金であり、Ag、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、In、Mn、Mo、P、Sn、およびWから選択される1つ以上の追加の元素をさらに含む。
【0011】
さらに別の実施形態において、本発明は、亜鉛;ニッケル;Te、BiおよびSbから選択される1つ以上の元素;ならびにAg、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、In、Mn、Mo、P、Sn、およびWから選択される1つ以上の元素を含む、亜鉛−ニッケル四元合金またはより多元の合金を含む物品に関する。
【0012】
さらに別の実施形態において、本発明は、基板を上述の浴の1つ中に浸漬すること;および該浴で電気めっき方法を実施して、該浴中に存在するTe+4、Bi+3およびSb+3から選択される1つ以上のイオン種に対応する1つ以上の元素を含む三元合金またはより多元の合金を該基板上に析出させることを含む、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を形成する方法に関し、ある実施形態において、該三元合金またはより多元の合金は、該浴中に存在するAg+1、Cd+2、Co+2、Cr+3、Cu+2、Fe+2、In+3、Mn+2、Mo+6、P+3、Sn+2、およびW+6のイオンから選択される1つ以上の追加のイオン種に対応する1つ以上の追加の元素をさらに含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明に従って作られた物品は、改善された曲げ性、改善された塩浴耐食性、低減されたグレーベール(gray veil)、より低い初期ニッケル含有量、極小の粒子サイズ、および水素誘発脆化に対する耐性などの1つ以上の所望の特徴を示す。従って、本発明によれば、先行技術において公知の亜鉛−ニッケル合金に関する1つ以上の問題に対する解決法が提供され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図中に示される要素は、説明図の簡潔さおよび明確さのために、必ずしも縮尺どおりに描画されていないことが理解されるべきである。例えば、いくつかの要素の寸法は、明確さのために互いに比べて誇張され得る。さらに、適切と考えられるところでは、対応する要素を示す図間で参照番号が反復されている。
【0015】
詳細な説明
以下に記載される工程段階および構造は、本発明の合金を組込んだ自動車部品または他のめっき物品などの装置を製造するための全工程の流れを形成しないことが理解されるべきである。本発明は、適当な技術分野において現在使用されている作製技術と共に実施され得、一般的に実施される工程段階のわずかな部分は、本発明の理解のために必要なものとして含まれる。
【0016】
本発明の改善された亜鉛−ニッケル合金電気めっき浴は、亜鉛イオン、ニッケルイオン、および1つ以上の追加の金属イオンを含む水性溶液を含む。合金は、亜鉛とニッケルと共に合金化される追加の原子の数nに応じて、ZnNiM、またはZnNiM、またはZnNiM...M、などの一般式を有し得る。亜鉛とニッケルと共に合金化される追加の原子としては、Te、Bi、Sb、Ag、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、In、Mn、Mo、P、Sn、およびWの1つ以上が挙げられ得る。該電気めっき浴は、追加のシアン化物を含まない。
【0017】
用語「電気めっき」、「電着」、または類似もしくは同語源の用語は、例えば亜鉛イオン、ニッケルイオン、ならびにTe、Sb、およびBiの1つ以上のイオン(ある態様においては、さらに他のイオン)を含む導電媒体が、導電性基板、例えば金属基板と接触している間に、該導電媒体を介してアノードから電流を通すことを含む工程をいい、ここで、該基板はカソードとして機能する。係る用語は、当該技術分野における通常の、および慣習上の意味を組込み、当該技術分野において例えばパルス電気めっきと称される使用電流の複合波形での使用を含むものとされる。
【0018】
亜鉛イオン
本発明の電気めっき浴は、亜鉛イオンを含む。1つの実施形態において、亜鉛イオンは、約0.1から約100g/lの範囲の濃度で存在する。1つの実施形態において、亜鉛イオンの濃度は、約1から約50g/l、別の実施形態において、約5から約20g/lの範囲である。亜鉛イオンは、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、スルファミン酸亜鉛、水酸化亜鉛、酒石酸亜鉛などの可溶性塩の形態で浴中に存在し得る。1つの実施形態において、亜鉛イオンは、ZnO、Zn(OH)、ZnCl、ZnSO、ZnCO、Zn(SONH、Zn(OOCCH、Zn(BF、およびメタンスルホン酸亜鉛(zinc methane sulfonate)の1つ以上から得られる。
【0019】
ニッケルイオン
本発明の電気めっき浴は、ニッケルイオンを含む。1つの実施形態において、ニッケルイオンは、約0.1から約50g/lの範囲内のニッケルイオン濃度で存在し、1つの実施形態において、該浴は、約0.5から約20g/lのニッケルイオンを含む。電気めっき浴中で使用され得るニッケルイオン源としては、水酸化ニッケル、ニッケルの無機酸塩、およびニッケルの有機酸塩の1つ以上などのニッケル源が挙げられる。1つの実施形態において、ニッケル源としては、水酸化ニッケル、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、硫酸ニッケルアンモニウム、スルファミン酸ニッケル、酢酸ニッケル、ギ酸ニッケル、臭化ニッケル、塩化ニッケルなどの1つ以上が挙げられる。本発明の電気めっき浴中で使用され得るニッケルおよび亜鉛源は、上記亜鉛源の1つ以上および上記ニッケル源の1つ以上含み得る。1つの実施形態において、ニッケルイオンは、NiSO、NiSO・6HO、NiCO、Ni(SONH、Ni(OOCCH、(NHNi(SO・6HO、Ni(OOCH)、Ni錯体、Ni(BF、およびメタンスルホン酸ニッケル(nickel methane sulfonate)の1つ以上から得られる。
【0020】
1つの実施形態において、亜鉛イオンおよびニッケルイオンは、合金の約3wt%から約25wt%のニッケル含有量を含む亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を析出させるのに充分な濃度で存在する。別の実施形態において、亜鉛イオンおよびニッケルイオンは、合金の約8wt%から約22wt%のニッケル含有量を含む亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を析出させるのに充分な濃度で存在する。別の実施形態において、亜鉛イオンおよびニッケルイオンは、実質的にガンマ結晶相を有する亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を析出させるのに充分な濃度で存在する。別の実施形態において、亜鉛イオンおよびニッケルイオンは、ガンマ結晶相を含む亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を析出させるのに充分な濃度で存在する。当該技術分野で公知の通り、実質的にガンマ結晶相を有する亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金は、実質的にガンマ相以外の相を有する合金よりも、腐食、特に塩化物由来または塩由来の腐食に対して耐性を有する。
【0021】
亜鉛とニッケルと共に合金化される追加の元素
上記の通り、本発明による電気めっき浴は、亜鉛およびニッケルに加えて、Te+4、Bi+3、およびSb+3イオンの1つ以上をさらに含み、ある実施形態において、Ag+1、Cd+2、Co+2、Cr+3、Cu+2、Fe+2、In+3、Mn+2、Mo+6、P+3、Sn+2、およびW+6のイオンから選択される1つ以上の追加のイオン種をも含み得る。該電気めっき浴が、本明細書中に記載される電気めっきシステム中で使用され、電気めっき方法が実施されるとき、亜鉛−ニッケル合金の新しい群が導電性表面上に析出され得る。
【0022】
従って、本発明の結果として、亜鉛およびニッケルに加えて、Te、Bi、Sb、Ag、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、In、Mn、Mo、P、Sn、およびWから選択される1つ以上の追加の元素を含む、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金が形成され得る。他の元素も同様に含まれ得るが、これらが主要な関心を有する元素である。
【0023】
追加の元素のいくつかは、多価イオンまたはオキシアニオン(例えば、HPO、MoO−2、TeO−2、およびWO−2)として存在する。1つの実施形態において、多価イオンは、低酸化状態で電気めっき浴中に提供される。低酸化状態にある係るイオンは、とても容易に所定の基板上を電気めっきすることが見出されている。ある実施形態において、高酸化状態のこれらの元素は、通常の条件下では電気めっきされ得ず、また一方で、他のケースにおいては、元素を高酸化状態から電気めっきすることが可能であり得るが、そのようにすることは、経済的および/または技術的に不適である。1つの実施形態において、追加の元素は水性の電気めっき浴中で使用されるため、原料は水和物の形態で提供され得る;無水の形態であることは必要ではない。ある実施形態において、多価イオン、例えばCu+2は、高酸化状態で、または中間酸化状態(intermediate oxidation state)、例えばCr+3で使用される。当然のことながら、元素のいくつか、例えばAg+1、Cd+2、In+3およびZn+2は多価ではなく、従って、非ゼロ酸化状態(non-zero
oxidation state)のみで使用される。
【0024】
1つの実施形態において、合金中の追加の元素は、Te、BiおよびSbの1つ以上を含む。本発明者らは、亜鉛−ニッケル、または三元、四元、もしくはより多元の合金、ZnNiM...M(ZnNiM)析出物中への、少量のテルリウム(Te)および/またはビスマス(Bi)および/またはアンチモン(Sb)の導入が、そのようにして形成された三元またはより多元の合金析出物の、例えば機械的性質に好ましい効果を提供し得ることを発見した。例えば、Te、BiおよびSbの1つ以上の導入は、コーティングの曲げ性を増大させ得、および/または電着開始時の高い初期ニッケル濃度を低減させ得、合金の粒子サイズを変化させ得、および/またはコーティングの耐衝撃性を増大させ得る。これらは全て、亜鉛−ニッケル合金の特定の使用において所望の特徴であり得る。
【0025】
1つの実施形態において、Teは、約15−20ppmよりも高い濃度で合金中に存在する。別の実施形態において、Teは、約15−20ppmから約1原子パーセント(at%)(〜1000ppm)、1つの実施形態において、約15−20ppmから約0.1at%の範囲内の濃度で合金中に存在する。Teは、プロトン励起X線分析(PIXE)によって、合金中においてこれらの濃度範囲で検出され得る。
【0026】
Teは、例えばTeCl、TeBr、TeIまたはTeOの1つ以上から得られ得るTe+4の形態で、電気めっき浴に提供され得る。本明細書中において、Teイオンは、一般にTe+4と称されるが、当業者には明らかなように、Te+4は、オキシアニオンTeO−2として水性溶液中により存在しがちである。このオキシアニオンは、Te+4であるよりも水性溶液中において、より安定であると考えられている。しかしながら、便宜上、本明細書中においてTeイオンは、Te+4と称される。1つの実施形態において、Te+4は、約0.01g/dmから約10g/dmの範囲内の濃度で電気めっき浴中に存在する。
【0027】
1つの実施形態において、Biは、約0.1at%よりも高い濃度で合金中に存在する。別の実施形態において、Biは、約0.1at%から約5at%の範囲内の濃度で合金中に存在し、別の実施形態において、Biは、約0.5at%から約2at%の濃度で合金中に存在する。Biは、X線光分子分光法(XPS)によって、合金中においてこれらの濃度範囲で検出され得る。
【0028】
Biは、例えばBi(CHCO、BiF、BiCl、BiBr、BiI、サリチル酸Bi、グルコン酸Bi、クエン酸Bi、Bi(NO、Bi、およびBiPOの1つ以上から得られ得るBi+3の形態で、電気めっき浴に提供され得る。1つの実施形態において、Bi+3は、約0.01g/dmから約10g/dmの範囲内の濃度で電気めっき浴中に存在する。
【0029】
1つの実施形態において、Sbは、約0.1at%よりも高い濃度で合金中に存在する。別の実施形態において、Sbは、約0.1at%から約5at%の範囲内の濃度で合金中に存在し、別の実施形態において、Sbは、約0.5at%から約2at%の濃度で合金中に存在する。Sbは、XPSによって、合金中においてこれらの濃度範囲で検出され得る。
【0030】
Sbは、例えばSb(CHCO、SbF、SbCl、SbBr、SbI、酒石酸Sbカリウム(CKSbO)、クエン酸Sb、Sb(NO、Sb、およびSbPOの1つ以上から得られ得るSb+3の形態で、電気めっき浴に提供され得る。1つの実施形態において、Sb+3は、約0.01g/dmから約10g/dmの範囲内の濃度で電気めっき浴中に存在し得る。
【0031】
先の記載において、Te、BiおよびSbの2つ以上が存在するとき、合金中のそれらの濃度は、独立して開示された範囲内である。同様に、Te+4、Bi+3およびSb+3イオンの2つ以上が、電気めっき浴中に存在するとき、それらの濃度は、独立して開示された範囲内である。
【0032】
1つの実施形態において、追加の元素は、Ag、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、In、Mn、Mo、P、Sn、およびWの1つ以上を含む。1つの実施形態において、Ag、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、In、Mn、Mo、P、およびWの1つ以上の各々は、独立して約0.5at%より高い濃度で合金中に存在し得る。別の実施形態において、Ag、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、In、Mn、Mo、P、Sn、およびWの1つ以上の各々は、独立して約1at%から約30at%の範囲内の濃度で合金中に存在し得、別の実施形態において、Ag、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、In、Mn、Mo、P、Sn、およびWの1つ以上の各々は、約2at%から約10at%の濃度で合金中に存在し得る。これらの元素の各々は、エネルギー分散分光法(EDS)によって、合金中においてこれらの濃度範囲で検出され得る。
【0033】
Agは、例えばAgNOから得られ得るAgの形態で、電気めっき浴に提供され得る。1つの実施形態において、Agは、約0.1g/dmから約100g/dmの範囲内の濃度で電気めっき浴中に存在する。
【0034】
Cdは、例えばCdCl、CdBr、Cd(NO、およびCdSOの1つ以上から得られ得るCd+2の形態で、電気めっき浴に提供され得る。1つの実施形態において、Cd+2は、約0.1g/dmから約100g/dmの範囲内の濃度で電気めっき浴中に存在する。
【0035】
Coは、例えばCo(CHCO、CoCl、CoBr、Co(NO、CoSO、およびCoPOの1つ以上から得られ得るCo+2の形態で、電気めっき浴に提供され得る。1つの実施形態において、Co+2は、約0.1g/dmから約50g/dmの範囲内の濃度で電気めっき浴中に存在する。
【0036】
Crは、例えばCrCl、CrBr、Cr(NO、およびCr(SOの1つ以上から得られ得るCr+3の形態で、電気めっき浴に提供され得る。1つの実施形態において、Cr+3は、約1g/dmから約100g/dmの範囲内の濃度で電気めっき浴中に存在する。
【0037】
Cuは、例えばCuCl、CuBr、Cu(NO、CuSO、およびCu(HPOの1つ以上から得られ得るCu+2の形態で、電気めっき浴に提供され得る。1つの実施形態において、Cu+2は、約1g/dmから約100g/dmの範囲内の濃度で電気めっき浴中に存在する。
【0038】
Feは、例えばFeClから得られ得るFe+2の形態で、電気めっき浴に提供され得る。他のFe+2源が使用され得るが、最も容易に得られるのは、FeClである。1つの実施形態において、Fe+2は、約0.1g/dmから約50g/dmの範囲内の濃度で電気めっき浴中に存在する。
【0039】
Inは、例えばInCl、InBr、In(NO、およびIn(SOの1つ以上から得られ得るIn+3の形態で、電気めっき浴に提供され得る。1つの実施形態において、In+3は、約1g/dmから約100g/dmの範囲内の濃度で電気めっき浴中に存在する。
【0040】
Mnは、例えばMn(CHCO、MnCl、MnBr、MnCO、Mn(NO、MnSO、およびMn(HPOの1つ以上から得られ得るMn+2の形態で、電気めっき浴に提供され得る。1つの実施形態において、Mn+2は、約1g/dmから約50g/dmの範囲内の濃度で電気めっき浴中に存在する。
【0041】
Moは、例えばMoCl、MoBr、Mo(NO、MoO、およびMo(SOの1つ以上から得られ得るMo+6の形態で、電気めっき浴に提供され得る。本明細書中において、Moイオンは、一般にMo+6と称されるが、当業者には明らかなように、Mo+6は、オキシアニオンMoO−2として水性溶液中により存在しがちである。このオキシアニオンは、Mo+6であるよりも水性溶液中において、より安定であると考えられている。しかしながら、便宜上、本明細書中においてMoイオンは、Mo+6と称される。1つの実施形態において、Mo+6は、約1g/dmから約100g/dmの範囲内の濃度で電気めっき浴中に存在する。
【0042】
Pは、例えばHPO、次亜リン酸、またはそれらの塩から得られ得るP+3の形態で、電気めっき浴に提供され得る。他のP+2源が使用され得るが、最も容易に得られるのは、HPOである。本明細書中において、Pイオンは、一般にP+3と称されるが、当業者には明らかなように、P+3は、オキシアニオンHPO−2として水性溶液中により存在しがちである。このオキシアニオンは、P+3であるよりも水性溶液中において、より安定であると考えられている。しかしながら、便宜上、本明細書中においてPイオンは、P+3と称される。1つの実施形態において、P+3は、約0.1g/dmから約100g/dmの範囲内の濃度で電気めっき浴中に存在する。
【0043】
Snは、例えばSnCl、SnBr、Sn(NO、およびSnSOの1つ以上から得られ得るSn+2の形態で、電気めっき浴に提供され得る。1つの実施形態において、Sn+2は、約0.1g/dmから約100g/dmの範囲内の濃度で電気めっき浴中に存在する。
【0044】
Wは、例えば、WO、WCl、またはHWOの1つ以上から得られ得るW+6の形態で、電気めっき浴に提供され得る。本明細書中において、Wイオンは、一般にW+6と称されるが、当業者には明らかなように、W+6は、オキシアニオンWO−2として水性溶液中により存在しがちである。このオキシアニオンは、W+6であるよりも水性溶液中において、より安定であると考えられている。しかしながら、便宜上、本明細書中においてWイオンは、W+6と称される。1つの実施形態において、W+6は、約0.1g/dmから約100g/dmの範囲内の濃度で電気めっき浴中に存在する。
【0045】
Te、BiおよびSbの1つ以上の組み合わせ、またはTe、BiおよびSbの1つ以上とAg、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、In、Mn、Mo、P、Sn、およびWの1つ以上との組み合わせが、亜鉛−ニッケル合金中に存在するとき、係る合金化元素の各々の濃度は、独立して選択され得る。
【0046】
1つの実施形態において、Teは、Bi、Sb、Ag、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、In、Mn、Mo、P、Sn、およびWの1つ以上と共に合金中に存在する。従って、Teが亜鉛とニッケルとともに合金化されたとき、1つの実施形態において、別の元素もまた該合金中に存在し、四元合金またはより多元の合金を形成する。
【0047】
電気めっきチャンバーが、カソードチャンバーとアノードチャンバーとを形成する仕切りを含む1つの実施形態において、Te+4は、亜鉛およびニッケルイオンとともに該セルのカソードチャンバー中に存在する唯一の追加の金属イオンであり得る。
【0048】
1つの実施形態において、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金の厚さは、約100ナノメートルから約50マイクロメートル(μm)、別の実施形態において、約1μmから約25μm、別の実施形態において、約3μmから約15μmの範囲である。
【0049】
以下の開示および請求の範囲においてと同様に、先の開示において、開示される範囲および割合の数値限定は、組み合わされ得る。従って、例えば、先の厚さ範囲において、明示的に述べられていないけれども、該開示は、約100オングストロームから約10,000オングストローム、および約10オングストロームから約2,500オングストロームの範囲を包含する。
【0050】
1つの実施形態において、電気めっき浴は、導電性基板上に三元のまたはより多元の亜鉛−ニッケル合金を電着させて、亜鉛;ニッケル;ならびにTe、BiおよびSbから選択される1つ以上の元素を含む三元のまたはより多元の亜鉛−ニッケル合金の層を有する物品を形成するために使用される。但し、該合金がTeを含むとき、該合金はBi、Sb、Ag、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、In、Mn、Mo、P、Sn、およびWから選択される1つ以上の追加の元素をさらに含む。1つの実施形態において、三元のまたはより多元の亜鉛−ニッケル合金の層がBiおよびSbの一方または両方を含むとき、該合金はAg、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、In、Mn、Mo、P、Sn、およびWから選択される1つ以上の追加の元素をさらに含む。
【0051】
1つの実施形態において、電気めっき浴は、導電性基板上に亜鉛−ニッケル四元合金またはより多元の合金を電着させて、亜鉛;ニッケル;Te、BiおよびSbから選択される1つ以上の元素;ならびにAg、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、In、Mn、Mo、P、Sn、およびWから選択される1つ以上の元素を含む亜鉛−ニッケル四元合金またはより多元の合金の層を有する物品を形成するために使用される。
【0052】
本発明に従って作られた物品は、改善された曲げ性、改善された塩浴耐食性、低減されたグレーベール(gray veil)、より低い初期ニッケル含有量、極小の粒子サイズ、および水素誘発脆化に対する耐性などの1つ以上の所望の特徴を示す。
【0053】
非イオノゲン界面活性ポリオキシアルキレン剤
本明細書中において使用されるとき、用語「非イオノゲン界面活性ポリオキシアルキレン」は、(1)化学分野において非イオン性界面活性剤と称される物質などの実質的に非イオン性の性質を有する物質と、(2)例えば、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミン基、またはハロゲン基(halide group)などの末端基を伴うポリオキシアルキレンなどの、性質上は実質的に非イオン性であるが、限定的なイオン性の性質を有するポリキシアルキレンの誘導体または反応生成物との両方をいう。多くの係る化合物が、当該技術分野において公知である。
【0054】
1つの実施形態において、本発明の電気めっき浴は、該浴で電気めっきされる亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金の微粒化を提供するに有効な量で存在する1つ以上の非イオノゲン界面活性ポリオキシアルキレン化合物を含む。微粒化とは、電着物質が、低減された粗さおよび/または低減された樹枝状性質(dendritic character)、および該電着物質がその上に適用される基板のより均一な被覆範囲を有することを意味する。微粒化添加剤は、使用電流密度が比較的高い領域における粗くて樹枝状の析出物を減少させることにより、1つの実施形態においては、除去することにより、および使用電流密度が比較的低い領域への電着物質の被覆範囲を拡張することにより、電着を改善するものである。当該技術分野において公知の通り、電着方法において電流を使用するとき、アノード(電流源)からのカソード基板の距離または長さは、使用電流密度に反比例し、その結果、アノードにより近いカソード基板部分は、比較的高い電流密度に曝され、アノードからより離れているカソード基板部分は、比較的低い電流密度に曝される。微粒化剤の非存在下において、高い電流密度に曝されるカソード基板部分は、粗くおよび/または樹枝状の電着物質を有し得るが、他方では、低い電流密度に曝されるカソード基板部分は、電着物質による被覆が不十分であり得る。本発明の微粒化添加剤は、電着物質がより平滑であり、より均一に分配され、および/または樹枝状析出物を含まないように、該方法を平滑化し、平衡を保ち得る。
【0055】
酸浴
1つの実施形態において、本発明の電気めっき浴は、浴に酸性pHを提供するに十分な量の酸性成分を含む。1つの実施形態において、酸性電気めっき浴は、約0.5から約6.5の範囲のpHを有する。別の実施形態において、酸性電気めっき浴は、約1から約6、別の実施形態において、約1から約5、さらに別の実施形態において、約1から約3の範囲のpHを有する。1つの実施形態において、酸性浴のpHは、約3.5から約5の範囲内である。別の実施形態において、酸性pHとしては、7より小さい任意のpHを包含する。
【0056】
酸性電気めっき浴は、有機もしくは無機の任意の適切な酸、または任意の適切なその塩を含み得る。1つの実施形態において、酸性電気めっき浴は、塩酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、置換または非置換ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ならびに類似および関連芳香族スルホン酸などの芳香族スルホン酸、メタンスルホン酸および類似のアルキルスルホン酸、クエン酸などのポリカルボン酸、スルファミン酸、フルオロホウ酸、または適したpHを提供し得る他の任意の酸の1つ以上を含む。必要に応じて、例えば、所望されるpHおよびイオン強度を得るために、酸そのものまたは適切なその塩が、使用され得る。
【0057】
1つの実施形態において、酸性範囲内のpHを得るために、電気めっき浴1リットルあたり約5から約220グラムの量の塩および/または対応する酸性成分が使用され、別の実施形態において、該量は、1リットルあたり約10から約100グラムである。1つの実施形態において、当業者には明らかなように、酸の量は、所望されるpHを得るに十分な量である。
【0058】
アルカリ浴
1つの実施形態において、本発明の電気めっき浴は、浴にアルカリ性pHを提供するに十分な量の無機アルカリ成分を含む。1つの実施形態において、電気めっき浴中に含まれるアルカリ成分の量は、少なくともpH10を提供するに十分な量、1つの実施形態において、少なくともpH11を提供するに十分な量、また1つの実施形態において、約pH14を提供するに十分な量である。1つの実施形態において、アルカリ性pHは、約pH7.5から約pH14の範囲内である。
【0059】
アルカリ電気めっき浴は、任意の適切な塩基を含み得る。1つの実施形態において、アルカリ成分は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウム、および炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属誘導体ならびにその混合物である。
【0060】
1つの実施形態において、電気めっき浴1リットルあたり約50から約220gグラムの量のアルカリ成分が使用され、別の実施形態において、該量は、1リットルあたり約90から約110グラムである。
【0061】
当業者は、本発明による浴、システム、および方法によって電着されるイオン種の特定の組み合わせに関して、必要に応じて、pH、酸、塩基、バッファー、およびそれらの濃度を適切に決定および選択し得る。
【0062】
錯化剤
1つの実施形態において、本発明の電気めっき浴は、1つ以上の錯化剤をさらに含む。電気めっき浴がアルカリ性pHを有する実施形態において、溶液中にニッケルイオンを溶解および維持するのを助けるために、錯化剤を含むことが有用である。酸性電気めっき浴において、ニッケルは、溶液中に残留するために錯化剤を必要としない。錯化剤のいくつかはまた、酸性浴中で使用され得る酸として上掲されていることに留意されたい。
【0063】
1つ以上の錯化剤を含む実施形態において、1つ以上の錯化剤は、当該技術分野で公知の任意の錯化剤であり得る。1つの実施形態において、1つ以上の錯化剤は、ニッケルイオンに対して適した錯化剤である。1つの実施形態において、1つ以上の錯化剤は、以下に記載される錯化剤の1つ以上であり得る。別の実施形態において、1つ以上の錯化剤は、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、および/または以下に記載されるような高級ポリアミンなどのアミンであり得る。
【0064】
1つの実施形態において、1つ以上の錯化剤は、1つ以上の脂肪族アミンのポリマーを含む。1つの実施形態において、本発明の電気めっき浴中に含まれる脂肪族アミンのポリマーの量は、約1から約150g/lの範囲であり、別の実施形態において、約5から約50g/lの範囲である。
【0065】
係る脂肪族アミンのポリマーを形成するために使用され得る典型的な脂肪族アミンとしては、1,2−アルキレンイミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、イミノ−ビス−プロピルアミン、ポリエチレンイミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。
【0066】
1つの実施形態において、1,2−アルキレンイミン由来のポリマーが使用され、ここで、該アルキレンイミンは、一般式(IV)によって表され得る:
【0067】
【化1】

【0068】
(式中、AおよびBは、各々独立して水素または1から約3個の炭素原子を含むアルキル基である)。AおよびBが水素である場合、該化合物はエチレンイミンである。AとBとの一方または両方がアルキル基である化合物は、エチレンイミン誘導体とも称されているが、本明細書中においては、一般にアルキレンイミンと称される。
【0069】
本発明において錯化剤として有用であるポリ(アルキレンイミン)の例としては、エチレンイミン、1,2−プロピレンイミン、1,2−ブチレンイミン、および1,1−ジメチルエチレンイミンから得られるポリマーが挙げられる。より高分子量のポリマーは、本発明の電気めっき浴中で不溶性である傾向を有するため、一般的に有用ではないが、本発明において有用なポリ(アルキレンイミン)は、約100から約100,000、またはそれ以上の分子量を有し得る。1つの実施形態において、該分子量は、約100から約60,000、別の実施形態において、約150から約2000の範囲内である。1つの実施形態において、ポリ(エチレンイミン)は、約150から約2000の分子量を有する。有用なポリエチレンイミンは、例えばBASFから、Lugalvan(登録商標)G−15(分子量150)、Lugalvan(登録商標)G−20(分子量200)、およびLugalvan(登録商標)G−35(分子量1400)の名称で市販されている。
【0070】
ポリ(アルキレンイミン)は、それ自体で使用されてもよく、また炭素、水素、および酸素原子からなる環状炭酸エステルとともに反応させられてもよい。係る反応生成物の調製例についての記載は、米国特許第2,824,857号および同第4,162,947号中に見出され、該開示は参照として本明細書中に援用される。環状炭酸エステルはさらに、環炭素原子に各々結合されるカルボニル団に隣接する環酸素原子を含むと定義され、該酸素原子および炭素原子を含む環は、3個の炭素原子のみを有し、炭素‐炭素の不飽和結合(carbon-to-carbon unsaturation)を有さない。
【0071】
1つの実施形態において、本発明の電気めっき浴中に導入され得る1つ以上の錯化剤としては、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、アルファ−ヒドロキシ酪酸、該カルボン酸のナトリウムおよび/またはカリウム塩などのカルボン酸(または対応する塩);エチレンジアミン、トリエチレンテトラミンなどのポリアミン;N−(2−アミノエチル)エタノールアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミンなどのアミノアルコールなどが挙げられる。本発明の浴中に含まれる場合、金属錯化剤の量は、5から約100g/lの範囲であり得、しばしば該量は、約10から約30g/lの範囲内である。
【0072】
1つの実施形態において、本発明の電気めっき浴中で有用な1つ以上の錯化剤は、式(V)によって表される化合物を含む:
【0073】
【化2】

【0074】
(式中、R、R、RおよびR10は各々独立してアルキルまたはヒドロキシアルキル基であって、但し、R−R10の1つ以上がヒドロキシアルキル基であり、Rは約10個までの炭素原子を含むヒドロカルビレン基である)。1つの実施形態において、R−R10の基は、1から10個の炭素原子を含むアルキル基であり得、1つの実施形態において、R−R10の基は、1から5個の炭素原子を含むアルキル基であり得、また別の実施形態において、これらの基は、1から10個の炭素原子、別の実施形態において、1から5個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル基であり得る。ヒドロキシアルキル基は、1つ以上の水酸基を含み得、1つの実施形態において、ヒドロキシアルキル基中に存在する水酸基の1つ以上は、末端基である。1つの実施形態において、R、R、RおよびR10の各々は、上記で定義されたようなヒドロキシアルキル基である。
【0075】
式(V)によって特徴付けられる錯化剤の具体例としては、N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N’,N’−トリエチルエチレンジアミン;N,N’−ジ(2−ヒドロキシエチル)N,N’−ジエチルエチレンジアミン;N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−N’,N’−ジエチルエチレンジアミン;N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン;N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン;N,N,N’,N’−テトラキス(2,3−ジヒドロキシプロピル)エチレンジアミン;N,N,N’,N’−テトラキス(2,3−ジヒドロキシプロピル)プロピレンジアミン;N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン;N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)1,4−ジアミノブタン;などが挙げられる。市販されている有用な金属錯化剤の例は、BASF製のQuadrol(登録商標)である。Quadrolは、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンである。
【0076】
光沢助剤
1つの実施形態において、光沢助剤が、電気めっき浴に添加される。多くの光沢剤が、当該技術分野において公知であり、当業者によって適切に選択され得る。
【0077】
1つの実施形態において、以下の光沢助剤の1つ以上が、添加され得る:米国特許第4,188,271号(以下にさらに詳細に記載され、参照として本明細書中に援用される)中に定義される通りのピペラジン、グアニジン、ホルマリン、およびエピクロロヒドリンの縮合生成物;ポリエチレンイミン;ピリジニウムプロピルスルホン酸塩;N−ベンジル−3−カルボキシピリジニウム塩化物;トリゴネリン(trigonelline);Golpanol(登録商標)PS(プロパルギルスルホン酸ナトリウム);プロパルギルアルコール;エチレングリコールプロパルギルアルコールエーテル;BEO(エトキシレートブチンジオール(ethoxylated
butyne diol));Aerosol AY65(ジアミルスルホコハク酸ナトリウム);N,N’−ビス[3−(ジメチルアミノ)プロピル]ウレアの1,3−ジクロロプロパンとのポリマー(米国特許6,652,726号B1参照);カルボキシエチルイソチウロニウムベタイン(carboxyethylisothiuronium
betaine);Rewopol(登録商標)EHS(硫酸エチルヘキシル);ベンゾチアゾール;Lutensit(登録商標)A−PS(BASF所有の陰イオン性界面活性剤);Lugalvan(登録商標)BPC34(N−ニコチン酸ベンジルの34wt%水性溶液);ベンジル−2−メチルイミダゾール(benzyl-2-methylimidiazole);Tamol(登録商標)NN(2−ナフタレンスルホン酸塩のホルムアルデヒド縮合物);メチルナフチルケトン;ベンザルアセトン;Lutensit(登録商標)CS40(40%クメンスルホン酸塩);Golpanol(登録商標)VS(ビニルスルホン酸ナトリウム);ベンゾチアゾリウム−2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−3,6−ジメチルクロリド;DPS(N,N−ジメチル−ジチオカルバミルプロピルスルホン酸ナトリウム塩);MPS(3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸、ナトリウム塩(3-mercapto-1-proanesulfonic
acid, sodium salt));OPS(O−エチルジチオカルボナート−S−(3−スルホプロピル)−エステル、カリウム塩);SPS(ビス−(3−スルホプロピル)−二硫化物、二ナトリウム塩);UPS(3−S−イソチオウロニウムプロピルスルホン酸塩(3-S-iosthiouronium
propyl sulfonate));ZPS(3−(ベンゾチアゾリル−2−メルカプト)−プロピル−スルホン酸、ナトリウム塩)(DPS、MPS、OPS、SPS、UPS、およびZPSは、Raschig GmbHから入手可能である);N−(ポリアクリルアミド);サフラニン;クリスタルバイオレットおよびその誘導体;フェナゾニウム色素(phenazonium
dyes)およびその誘導体;Lugalvan(登録商標)HT(チオジグリコールエトキシレート);クエン酸ナトリウム;ラウリル硫酸ナトリウム;Dequest(登録商標)(1−ヒドロキシエチレン−1,1−ジホスホン酸);Lugalvan(登録商標)BNO(エトキシ化ベータナフトール);Lugalvan(登録商標)NES(スルホン酸化アルキルフェノールエトキシレートのナトリウム塩);硫化ベンゼンスルホン酸;ブチンジオールジヒドロキシプロピルスルホン酸塩;サッカリンナトリウム;MPSA(3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸、ナトリウム塩);1−ナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物;ベンゾトリアゾール;酒石酸;EDTA(エチレンジアミン四酢酸);安息香酸ナトリウム;2−アミノピリジンのエピクロロヒドリンとの水性反応生成物;Mirapol(登録商標)A15(ウレイレン四級アンモニウムポリマー(ureylene
quaternary ammonium polymer));イミダゾールとエピクロロヒドリンとの水性反応生成物;バニリン;アニスアルデヒド;ヘリオトロピン(ピペロナール);チオ尿素;ポリビニルアルコール;還元ポリビニルアルコール;o−クロロベンズアルデヒド;α−ナフトアルデヒド(α-napthaldehyde);縮合ナフタレンスルホン酸塩;ナイアシン;ピリジン;3−ヒドロキシプロパンスルホン酸塩;アリルピリジニウムクロライド;ジベンゼンスルホンアミド;ピリジニウムブタンスルホン酸塩;アリルスルホン酸ナトリウム;ビニルスルホン酸ナトリウム;ナフタレントリスルホン酸;クメンスルホン酸塩;CMP(カルボキシメチルピリジニウムクロライド);Golpanol(登録商標)9531(プロパルギルヒドロキシプロピルエーテルスルホン酸塩);o−スルホベンズアルデヒド;Lugalvan(登録商標)ES−9571(イミダゾールとエピクロロヒドリンとの水性反応生成物);メルカプトチオエーテル;PVP(ポリビニルピロリドン);アジピン酸ナトリウム;抱水クロラール;グルコン酸ナトリウム;サリチル酸ナトリウム;硫酸マンガン;硫酸カドミウム;亜テルル酸ナトリウム;およびグリシン。前掲のリストは、包括的なものではなく、単なる例示である。亜鉛および/またはニッケルを電気めっきするにおいて有用な他の全ての公知の光沢剤が、本明細書中において有用であり得る。
【0078】
1つの実施形態において、光沢助剤は、米国特許第6,652,728号B1において開示され、特許が請求されている物質であり、その開示は、一般式Aのポリマー、および亜鉛または亜鉛合金電気めっき浴中でのその使用に関連する教示について、参照として本明細書に援用され:
【0079】
【化3】

【0080】
米国特許第6,652,728号B1は、浴が
(a)亜鉛イオン源および任意にさらなる金属イオン源、
(b)水酸化物イオン、ならびに
(c)浴中で可溶性であり、上記一般式Aを有するポリマー:
(式中、mは、2または3の値を有し、nは、少なくとも2の値を有し、R、R、RおよびRは、同一であっても異なっていてもよく、各々独立してメチル、エチルまたはヒドロキシエチルを示し、pは、3から12の範囲内の値を有し、Xは、Cl、Brおよび/またはIを示す)を含むことを特徴とする、基板表面上への亜鉛または亜鉛合金コーティングのガルバニック析出のためのシアン非含有−水性アルカリ浴を開示する。1つの実施形態において、上記式Aにおいて、R、R、RおよびRの各々は、メチルであり、mとpとの両方が3であり、Xは、Clであり、nは、2から約80の範囲内である。1つの実施形態において、該添加剤の量は、約0.1g/lから約50g/l、1つの実施形態において、約0.25から約10g/lの範囲であり得る。
【0081】
1つの実施形態においては、任意の上記光沢剤に加え、また1つの実施形態においては、米国特許第6,652,728号B1で規定される物質に加えて、式Bのピリジン−3−カルボン酸の四級誘導体および/または式Cのピリジン−3−カルボン酸の四級誘導体としてのさらなる添加剤もまた、浴中に含まれる:
【0082】
【化4】

【0083】
(式中、Rは、1から12個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和脂肪族、芳香族、またはアリール脂肪族炭化水素基を示す)。該さらなる添加剤の量は、約0.005から約0.5g/lの範囲であり得、1つの実施形態において、約0.01から約0.2g/lの範囲であり得る。
【0084】
本発明による浴におけるさらなる添加剤として、1つの実施形態において使用され得る式BまたはCのピリジン−3−カルボン酸の四級誘導体は、公知の化合物であり、例えばDE4038721に記載される。類似物質もまた、米国特許第3,296,105号に記載される。これらの誘導体は、一般にニコチン酸を脂肪族、芳香族、またはアリール脂肪族ハロゲン化炭化水素と反応させることにより調製される。
【0085】
1つの実施形態において、電気めっき浴は、光沢剤としておよび/または光沢および平滑性をさらに改善するために1つ以上のアルデヒドを含み得る。電気めっき浴中に含まれ得るアルデヒドの例としては、アニスアルデヒド、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド(バニリン)、1,3−ベンゾジオキソール−5−カルボキシアルデヒド(ピペロナール)、ベラトルアルデヒド、p−トルアルデヒド、ベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、2,3−ジメトキシベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、シンナムアルデヒド、シンナムアルデヒドの亜硫酸ナトリウム付加化合物などの1つ以上の芳香族アルデヒドが挙げられる。電気めっき浴中に含まれ得るアルデヒドの量は、約0.01から約2g/lの範囲であり得る。
【0086】
前掲の光沢剤は、例示であり、本発明と一体となって有用であり得る光沢助剤の範囲を網羅し、または制限するものではない。追加のまたは代替の光沢剤が、当業者によって適切に選択され得る。
【0087】
1つの実施形態において、Te+4が亜鉛イオンとニッケルイオンとを有する電気めっき浴中における唯一の追加の金属である場合、該浴は、(i)エチレンジアミンまたはそのメチル置換誘導体、プロピレンジアミンまたはそのメチル置換誘導体、ジエチレントリアミンまたはそのメチル置換誘導体などのアミンとエピハロヒドリンとの反応生成物と、(ii)芳香族アルデヒドとの両方を含む光沢剤の混合物を含まない。1つの実施形態において、任意の光沢剤の1個または他の組み合わせが、Te+4と共にまたは亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を形成するために使用される任意の他の追加の元素と共に使用され得る。
【0088】
追加の浴成分
1つの実施形態において、本発明の電気めっき浴は、さらに改善された安定な電気めっき浴を提供し、さらに改善された亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を提供するための1つ以上の追加の成分を含む。例えば、電気めっき浴は、追加の金属錯化剤、合金の輝きまたは光沢を改善するための芳香族アルデヒド、脂肪族アミンのポリマー、界面活性剤などを含み得る。
【0089】
1つの実施形態において、浴は、1つ以上のピペラジン、アンモニアもしくは少なくとも1つの一級アミン基を含む脂肪族非環式化合物からなる群より選択される1つ以上の追加の窒素含有化合物、ホルムアルデヒドと、エピハロヒドリンもしくはハロヒドリングリセロール(glycerol halohydrin)またはそれらの混合物との反応生成物を含む添加剤をさらに含み得る。係る反応生成物は、米国特許第4,188,271号中に開示され、係る反応生成物に関連する該開示は、本明細書中において参照として援用される。1つの実施形態において、該反応生成物は、
(a)ホルムアルデヒドを
(i.)式
【0090】
【化5】

【0091】
(式中、R12およびR13は、各々独立して水素または低級アルキル基である)を有する1つ以上のピペラジンと、
(ii.)アンモニアまたは少なくとも1つの一級アミン基を含む脂肪族非環式化合物からなる群より選択される1つ以上の追加の窒素含有化合物との混合物と、反応させることにより、中間生成物を調製すること、および
(b)該中間生成物をエピハロヒドリンもしくはハロヒドリングリセロールまたはその混合物と、室温から該混合物の還流温度までの範囲内の温度で反応すること
の方法により得られる。1つの実施形態において、ピペラジン、追加の窒素含有化合物、ホルムアルデヒド、およびエピハロヒドリンまたはハロヒドリングリセロールのモル比は、約1:1:2:1から約1:1:4.5:1の範囲内である。1つの実施形態において、追加の窒素含有化合物は、少なくとも2つの一級アミン基を有する脂肪族非環式アミンである。1つの実施形態において、エピハロヒドリンは、エピクロロヒドリンである。1つの実施形態において、追加の窒素含有化合物は、アンモニア、グアニジン、1つ以上の低級アルキルアミン、1つ以上のアルキレンジアミン、またはそれらの混合物である。1つの実施形態において、該生成物は、米国特許第4,188,271号で規定される通り、ピペラジン、グアニジン、ホルマリン、およびエピクロロヒドリンの縮合生成物である。該反応生成物が存在するとき、該反応生成物は、約0.1g/lから約5g/lの範囲内の濃度で、1つの実施形態において、約0.3g/lから約1g/lの範囲内の濃度で、1つの実施形態において、約0.4g/lの濃度で浴中に添加され得る。
【0092】
1つの実施形態において、本発明の電気めっき浴は、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾールおよび/またはチオ尿素などの添加剤をさらに含み得る。これらの添加剤の濃度は、亜鉛−ニッケル電気めっき浴中における係る添加剤の使用に関して通常の濃度であり、例えば0.01から0.50g/lの範囲である。
【0093】
1つの実施形態において、本発明の電気めっき浴はまた、水軟化剤を含み得る。1つの実施形態において、外来の金属イオン、特に水道水由来のカルシウムおよびマグネシウムイオンに対する浴の感受性は、係る添加剤の使用によって低減される。係る水軟化剤の例は、EDTA、ケイ酸ナトリウム、酒石酸である。
【0094】
方法
1つの実施形態において、本発明は、本明細書中に記載される電気めっき浴中に基板を浸漬すること、および該浴で電気めっき方法を実施して、前記1つ以上のイオン種に対応する1つ以上の元素を含む合金を該基板上に析出させることを含む、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を形成する方法に関する。該工程段階は、例えば、合金が析出される部品を前洗浄すること、該部品がカソードと電気的に接触するようにおよび/またはカソードを形成するように、めっき用バレルなどの適切な装置内に該部品を設置すること、仕切りが使用される実施形態においては、適切なアノード電解質をアノードチャンバー内に設置すること、およびアノードに電流を流して、カソードチャンバーまたは電気めっき浴中の1つ以上のイオン種を亜鉛とニッケルと共に析出させて部品の表面上に三元またはより多元の電着物を形成させることを含み得る。該方法はまた、該方法によって消費される種の濃度を調べること、亜鉛、ニッケル、および亜鉛とニッケルと共に共析出する1つ以上のイオン種の各々の所望される相対濃度を維持するために必要に応じてそれらの種を補充して、亜鉛、ニッケルおよび合金化元素の所望される相対濃度を有する所望される亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を形成することなどの工程を含み得る。当業者は、所望される合金、合金が電気めっきされる部品、および本開示に基づく他の要因に基づいて、工程および条件を適切に選択し得る。
【0095】
pH、温度、時間、電流密度の条件
本発明の電気めっき浴は、慣用の方法、例えば特定量の上述の成分を水へ添加することによって調製され得る。
【0096】
本発明による電気めっき浴の使用により、1つの実施形態において、金属の導電性基板に、光沢があり、平坦で、高い延性を有し、耐食性である亜鉛−ニッケル三元合金、またはより多元の合金、または他の適切な合金のコーティングが提供され得る。
【0097】
従って、本発明は、電気めっき浴として上述の組成を有する浴が使用され得ることに特徴付けられる、慣用の基板上への亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金コーティングの電気めっきまたは電着方法に関する。本発明の電気めっき浴は、光沢があり、平坦で、延性を有する亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を基板上に析出させる。本発明による方法において、1つの実施形態において、コーティングの析出は、約0.01から約150A/dm、1つの実施形態において、約0.5から約25A/dm、1つの実施形態において、約1から約10A/dmの範囲内の電流密度で実施される。該方法は、室温、またはそれより低温もしくは高温の都合のよいところで実施され得る。該方法は、1つの実施形態において、約10℃から約90℃、1つの実施形態において、約15℃から約45℃、1つの実施形態において、約25℃から約40℃の範囲内の温度で実施され得る。例えば、電解質からの水の蒸発を生じさせるためには、開示された高めの温度が有用であり得る。
【0098】
1つの実施形態において、本発明による方法は、マス部品(mass parts)に関して使用されるときは、バレル電気めっき方法として、より大型の加工部品への析出に関しては、ラック電気亜鉛めっき方法(rack
electrogalvanizing process)として実施され得る。これに関連して、可溶性であり得るアノード、例えば、同時に亜鉛イオン源として機能する亜鉛アノードなどが使用され、その結果、カソード上に析出する亜鉛は、アノードでの亜鉛の溶解により再生される。あるいは、例えばニッケルまたは鉄アノードなどの不溶性アノードもまた使用され得、この場合、電解質から除去された亜鉛イオンは、別の手段、例えば亜鉛溶解タンクを使用することにより、補充されなければならない。1つの実施形態において、アノードが鉄アノードまたは別のそのような金属である場合、該アノードは、適切な膜または他の仕切りによって、カソードおよび浴の残りの部分から隔離される。
【0099】
電着においてはいつものことであるが、本発明による方法はまた、得られるコーティングに有害な影響を与えることなく、被覆される物品の運動を伴う、または伴わない電解質の撹拌(カソード棒撹拌またはバレル回転など)を提供するための適切なガス圧入または排出で操作され得る。
【0100】
本発明の電気めっき浴は、連続的にまたは断続的に操作され得、時折り、浴の成分が補充されなければならないかもしれない。様々な成分が、必要に応じて、単独でまたは組み合わせで添加され得る。添加される様々な成分の量は、連続的にまたは断続的に添加され得る。濃度は、経験に基づく適切な間隔で決定され得、または、例えば自動分析機器によって連続的に決定され得る。電着浴に添加される様々な成分の量は、該成分が添加される電気めっき浴の性質および性能によって広範囲に変化し得る。係る量は、当業者によって容易に決定され得る。
【0101】
本発明の電気めっき浴は、亜鉛−ニッケル合金が析出され得る導電性基板の実質的に全種類に渡って使用され得る。有用な基板の例としては、軟鋼、バネ鋼、クロム鋼、クロム−モリブデン鋼、銅、銅−亜鉛合金などの基板が挙げられ、本発明による亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金の適用に先立ってそこへ適用された初期電着ストライクまたはバリア層を有する基板を含む。公知の通り、ストライク層は、基板を、その後に適用される本発明の亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金層などの層に対して、より感受性を高くし得る層であり、バリア層は、基板と本発明の亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金層との間などの層間における原子の拡散または移動を防止する層である。ストライク層としては、例えば酸性亜鉛層、酸性亜鉛−ニッケル合金層、または酸性ニッケル層、または他の公知のストライク層物質であり得る。
【0102】
従って、上述の通り、1つの実施形態において、本発明は、本明細書中に記載される電気めっき浴で基板を電気めっきすることを含む、基板上に亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を電気めっきする方法に関する。本発明はさらに、本明細書中に記載される方法に従って電気めっきされた基板を含む物品に関する。
【0103】
電気めっき浴チャンバー仕切り
多価イオンTe+4、Bi+3、およびSb+3は、最も低い非金属または非メタロイド酸化状態でめっき液中に導入され、高酸化状態で電着効果を失う。追加のイオン種のいくつか、例えばCr+3、Fe+2、およびMn+2は、低酸化状態で使用され、予想される酸化も受ける。これらの多価イオンは、アノードにまたはその近くに存在する場合、酸化され得る。この問題を解決するために、本発明者らは、1つの実施形態において、アノードを多価イオンから分離することが有用かつ有益であることを発見した。1つの実施形態において、アノードは、イオン膜、塩橋、または他の手段などの仕切りによって、溶液(陰極電解液またはカソード媒体)の大部分から隔離される。
【0104】
1つの実施形態において、電気めっきシステムは、電気めっきセルまたはチャンバーであって、該セルまたはチャンバーをアノードチャンバーとカソードチャンバーとに分離する仕切りを含む電気めっきセルまたはチャンバーを含む。
仕切りは、該仕切りにより形成された2つのチャンバー内で異なる浴を使用することを可能にする。一般に、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金が電気めっきされる金属表面は、カソードチャンバー中に浸漬され、電気めっき方法におけるカソードとしてまたはカソードの一部として作動する。アノードは、アノードチャンバー中にある。1つの実施形態において、2つのチャンバー中の浴の成分は異なっており、より詳細には以下に記載される通りである。この特徴は、本発明に関して、多くの利点を提供する。
【0105】
図1は、導電性基板を亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金で電気めっきするための、本発明の1つの実施形態による装置100の概略図である。装置100は、アノードチャンバー112とカソードチャンバー114とを有する電気めっきセル110を含む。アノードチャンバー112は、仕切り116によってカソードチャバー114から分離されている。仕切り116は、電流を許容し、ある実施形態において、選択されたイオンに該仕切り116を通過させるが、他のイオンおよび分子の通過を妨げる。1つの実施形態において、適切な仕切り116の選択は、該仕切りを横切るイオンの選択および/または制御を可能にする。
【0106】
図1に示される通り、アノードチャンバー112中において、導電性アノード媒体120中に浸漬されるアノード118が析出される。本発明の1つの実施形態によると、アノード118は、鉄などの活性で安価な金属から形成され得る。本発明のこの実施形態によると、アノードチャンバー112が、カソードチャンバー114から分離されるので、アノードが、先行技術のように不活性または比較的非反応性の金属で被覆されたり、そのような金属で形成される必要はない。
【0107】
記載される通り、仕切りの使用は、あまり高価でなく、より活性な金属のアノードとしての使用を可能にすると同時に、アノード物質のカソード媒体へのイオンの放出を回避し、それ故、金属表面上へのそれらの析出を回避する。本発明の1つの実施形態において、アノード金属は、カソード金属表面上への析出を防止され得る。別の実施形態において、イオン選択性仕切りが使用される場合などは、アノード由来金属は、制御可能な状態でカソード金属表面上へ析出し得る。
【0108】
1つの実施形態において、仕切り116は、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金の三元またはより多元の元素として使用される元素の酸化を回避または実質的に低減するので、前記システムは、より効率的に操作されることが可能となる。上述の通り、本発明のある実施形態によると、これらの元素の多くは、電気めっき浴中に存在し、低酸化状態から電着される。これらの種は、高酸化状態から、ある実施形態において、あまり電着せず、ある実施形態において、全く電着しない。低酸化状態にあるこれらの元素が、高酸化状態への酸化を受ける場合、それらが合金中に析出され得ないならば、電気めっき浴から有効に失われる。従って、電気めっき浴中におけるこれらの種の酸化を回避することが、実質的な利点である。以下に記載される通り、ある実施形態において、電着装置は、カソードチャンバーとアノードチャンバーとの両方を含み、本発明の電気めっき浴は、カソードチャンバー中にのみ存在し、異なる導電性媒体が、アノードチャンバー中に存在する。
【0109】
1つの実施形態において、アノード118は、板または当該技術分野で公知の他の適当な形状の形態であり得る。以下に記載される通り、他の実施形態において、アノードは、仕切りに等角であり得、部分的に仕切りの周囲にあるか、または仕切りと合致し得る;該アノードは仕切りによって囲まれ得る;または、該アノードは仕切りによって実質的に覆われるか、被覆され得る。1つの実施形態において、1つより多いアノードが、必要に応じて使用され得る。アノードの形状および数は、電流密度、電気めっきセルの形状、電気めっき浴またはアノードチャンバー中の導電性アノード媒体の化学的性質、および当業者に公知の他の要因などの要因に基づき、必要に応じて適切に選択され得る。
【0110】
アノードチャンバー112は、導電性アノード媒体120を含む。アノード媒体に関する唯一の制限基準は、電流を導電することである。導電性アノード媒体120は、酸性、中性、またはアルカリ性であり得る。1つの実施形態において、導電性アノード媒体120は、酸性であり、すなわち7より低いpHを有する。1つの実施形態において、アノード媒体は、約0.5から約6.5の範囲内のpHを有し、1つの実施形態において、アノード媒体は、約2から約6の範囲内のpH、別の実施形態において、約3から約5の範囲内のpHを有する。1つの実施形態において、導電性アノード媒体120は、アルカリ性pHを有し、すなわち7より高いpHを有する。1つの実施形態において、導電性アノード媒体120は、9以上のpHを有する。別の実施形態において、導電性アノード媒体120は、11以上のpHを有する。1つの実施形態において、導電性アノード媒体は、約7.5から約14の範囲内のpHを有する。
【0111】
導電性アノード媒体120は、選択されたpHに到達するに適当な酸、塩基、塩および/または緩衝剤を含む。当業者は、選択されたpHに到達するに適切な酸、塩基、塩および/または緩衝剤の組み合わせを決定かつ選択し得る。
【0112】
1つの実施形態において、導電性アノード媒体は、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物の水性溶液を含む。1つの実施形態において、導電性アノード媒体は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの水性溶液を含む。1つの実施形態において、導電性アノード媒体は、約1wt%から約50wt%のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を含む。別の実施形態において、導電性アノード媒体は、約3wt%から約25wt%のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を含む。別の実施形態において、導電性アノード媒体は、約5wt%から約15wt%のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を含む。別の実施形態において、導電性アノード媒体は、約6wt%から約10wt%のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を含む。
【0113】
1つの実施形態において、導電性アノード媒体は、1つ以上の鉱酸の水性溶液を含む。1つの実施形態において、導電性アノード媒体は、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フルオロホウ酸、メタンスルホン酸、またはスルファミン酸の水性溶液を含む。1つの実施形態において、導電性アノード媒体は、約1wt%から約50wt%の鉱酸を含む。別の実施形態において、導電性アノード媒体は、約3wt%から約25wt%の鉱酸を含む。別の実施形態において、導電性アノード媒体は、約5wt%から約15wt%の鉱酸を含む。別の実施形態において、導電性アノード媒体は、約6wt%から約10wt%の鉱酸を含む。
【0114】
1つの実施形態において、アノードチャンバー112中における導電性アノード媒体120は、易酸化性の有機または無機添加剤を含まない。1つの実施形態において、アノードチャンバー中における導電性アノード媒体は、易酸化性の有機または無機化合物を含まない。「易酸化性の有機または無機化合物を含まない」とは、導電性アノード媒体が、不純物および不注意で存在する種以外の任意の源に由来する易酸化性の有機または無機化合物を実質的に含まないことを意味する。1つの実施形態において、アノードチャンバー中における導電性アノード媒体は、易酸化性の有機添加剤を含まない。「有機添加剤を含まない」とは、有機添加剤が、意図的に導電性アノード媒体中に入れられたり、含まれたりしないことを意味する。
【0115】
導電性アノード媒体は、必要に応じて、溶解を促進するための適切な温度制御を伴って、酸および/または塩基、緩衝剤、ならびに他の任意の成分を水中に単に溶解することによって調製され得る。
【0116】
図1に示される通り、カソードチャンバー114中において、電気めっき浴124中に浸漬される物体122が析出される。本発明の実施形態によると、物体122は、導電性金属表面を含む。上述の通り、導電性金属表面は、図1に示される装置において、カソードとして作動する。本発明の実施形態によると、電気めっき浴124は、より詳細は上述した通り、亜鉛イオン、ニッケルイオン、ならびにTe、Sb、Bi、Ag、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、In、Mn、Mo、P、Sn、およびWの1つ以上のイオンを含むイオンの混合物を含む。物体122は、ボルトまたはネジの形態で図1中に図示されるが、本発明は、係る物体にも何らかの特定の物体にも限定されない。上述の通り、物体は、導電性金属表面を含む任意の物体であり得る。
【0117】
仕切り材料
1つの実施形態において、仕切りは、ダニエル電池で使用されるような、塩橋、イオン選択性膜、ゾル−ゲル、イオン選択性アノードコーティング(ion-selective anode coating)、アノード共形イオン選択性膜(anode-conforming
ion-selective membrane)、および多孔性セラミックの1つ以上を含む。
【0118】
1つの実施形態において、膜は、仕切りとして有用であることが見出されている。様々な実施形態において、イオン選択性膜は、アニオン性、カチオン性、二極性、または荷電モザイク型(charge-mosaic type)膜であり得る。アニオン性膜はまた、アニオン交換膜と称され得、カチオン性膜はまた、カチオン交換膜と称され得る。二極性膜は、カチオン性膜とアニオン性膜とが共に取り付けられた構造を有するイオン交換膜である。荷電モザイク膜は、膜全体を通して、二次元または三次元的に、交互になっているカチオン交換チャネルとアニオン交換チャネルとから成る。1つの実施形態において、アノード側にアニオン選択性膜およびカソード側にカチオン選択性膜を有するアニオン性膜とカチオン性膜との組み合わせが使用される。別の実施形態において、アノード側にカチオン選択性膜およびカソード側にアニオン選択性膜を有するアニオン性膜とカチオン性膜との組み合わせが使用される。係るアニオン性とカチオン性との組み合わせにおいて、該組み合わせの膜は、2つの膜が共に取り付けられる二極性膜と対照的に、少なくとも若干は使用の間に分離される。1つの実施形態において、二極性の非イオン性膜が、そのカチオン性側をカソードに向けて、アニオン性側をアノードに向けて配置され、別の実施形態においては、その逆の形態で配置される。任意の公知のアニオン性、カチオン性、二極性、または荷電−モザイク膜が使用され得、適切な膜が、当該技術分野において公知の膜から選択され得る。
【0119】
典型的なイオン選択性膜は、NAFION(登録商標)、パーフルオロスルホナート(perfluorosulfonate)アイオノマーおよびポリパーフルオロスルホン酸(polyperfluorosulfonic acid);ダウケミカルから入手可能なエチレン−スチレンインターポリマー(ESI);VICTREX(登録商標)PEEKTMなどのスルホン酸化ポリアリールエーテルケトン、セラニーズゲーエムベーハーからPBI(登録商標)として入手可能なポリベンズイミダゾール、などの材料から作製され得る。
【0120】
1つの実施形態において、微小孔性物質もまた、仕切りとして使用され得る。例えば、1つの実施形態において、ダニエル電池において使用されるものなどの多孔性セラミックが、本発明における仕切りとして使用され得る。
【0121】
1つの実施形態において、仕切りは、米国特許第5,590,383号において開示される方法または該特許の背景技術の項において開示される任意の方法などの方法によって調製され得る。特に、Ramesh Bhaveによる書籍、Inorganic Membranes(van Nostrand、1991)、およびY.S.LinおよびA.J.Burggraafによる論文、J.Amer.Ceram.Soc.,Vol.4,1991,p.219を含む、微小孔性膜に関する米国特許第5,590,383号の開示は、参照として本明細書中において援用される。
【0122】
1つの実施形態において、塩橋またはゾル−ゲル橋であり得る。塩橋は、アノードチャンバーとカソードチャンバーとの間に電気的接続を提供しながら、該2つのチャンバーを分離した状態に保ち得る。塩橋は、電子およびいくつかのイオンが、2つのチャンバー間を移動することを可能にする。塩橋は、例えばNaCl、KCl、KNO、またはアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩および遷移金属塩などの他の塩を含み得る。
【0123】
1つの実施形態において、仕切りは、周囲の媒体中における種の酸化を回避するアノード上のコーティングであり得る。係る例が、図3中に示される。コーティングは、例えばイオン選択性膜としての使用に関して上記で開示されるポリマー物質の1つであり得、また、多孔性セラミック材料であり得る。
【0124】
1つの実施形態において、仕切りは、アノードの比較的近くではあるが、接触することなく配置される容器のように設形された上述の任意のものであり得る。係る例が、図4および5中に示される。1つの実施形態において、電気めっきシステムが仕切りを含み、該システムが低酸化状態(例えば、Sb+3、Bi+3またはTe+4)で電気めっき浴中に存在する1つ以上のイオン種を用いて操作されるとき、カソードチャンバー中の電気めっき浴1リットルあたり10アンペア時(A・Hr/l)の後で、高酸化状態(例えば、Sb+5、Bi+5またはTe+6)への酸化は、実質的に観察されない。1つの実施形態において、係る酸化は、20A・Hr/lの後で観察されない。
【0125】
当然、ある実施形態においては、仕切りが使用されるときでさえ、一定量の係る不要な酸化が生じ得る。すなわち、たとえ仕切りが使用されても、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を形成するために亜鉛とニッケルと共に使用されるイオン種の係る不要な酸化を回避することについて、部分的にのみ成功し得る。1つの実施形態において、これらのイオン種が、仕切りを有さない電気めっき浴へ添加される場合、係る酸化は、電気めっきが開始されたほぼ直後に観察され、低酸化状態のイオン種が、導電性基板上への析出の代わりに酸化によって浴から使い尽くされるので、効率を落とすことになる。当該技術分野で公知の通り、アノードに電流が使用されるとき、アノードから水性溶液に入る電子は、アノードでまたはその近くで水を加水分解して酸素ガスを発生させる。本発明の仕切りの非存在下において、係る酸素は、アノードが配置される電気めっき浴中に存在する易酸化性の有機および/または無機種の酸化を引き起こす。
【0126】
当然に認識される通り、イオン種のいくつかは単一電荷であり(例えば、Ag、Cd+2、In+3)、そのため係る不要な酸化を受けず、本発明のある実施形態においては、高酸化状態で使用され得るもの(例えば、Cu+2)もあれば、その一方で、係る不要な酸化を受ける中間酸化状態で使用されるもの(例えば、Cr+3)もある。
【0127】
1つの実施形態において、ゾル−ゲル橋は、例えば、導電性媒体が付着、接着、または結合されているケイ酸塩ゾル−ゲルを含み得、該導電性媒体は、例えば、グラファイトまたはポリアニリンもしくはポリビニルピリジンなどの以下に記載されるような導電性ポリマーを含む。1つの実施形態において、仕切りはゾル−ゲルを含み、別の実施形態において、ゾル−ゲル膜を含む。ゾル−ゲルは、シリカ粒子、アルミナ粒子、またはシリコンを主材料とする物質もしくはアルミナと有機化合物との組み合わせの粒子のコロイド状懸濁液である。得られる多孔性ゲルは、膜として形成され得、仕切りとしてそのまま使用され得るか、まずは化学的に修飾され得る。1つの実施形態において、セラマー(ceramer)と称されている有機−無機混成物であるゾル−ゲル膜は、仕切りとして用いられ得る。例えば、TEOS(オルトケイ酸テトラエチル)は、ポリメタクリル酸メチル、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(N,N−ジメチルアミド)、ポリアニリン、ポリビニルピリジン、およびグラファイトなどのポリマーと連結され得、これらは仕切りとしての使用に適したフィルムまたは膜にされ得る。他の公知のゾル−ゲル物質も同様に使用され得る。ゾル−ゲル膜と共に仕切りとして使用され得る可能性がある他の導電性ポリマーとしては、例えば、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルホン酸塩(PEDT/PSS);ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(ビニルピリジン−コ−ビニルアセテート(vinyl
pyridine-co-vinyl acetate))(PVPy−VAc)、ポリメタクリル酸(PMAA)、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート−コ−メタクリル酸(poly(hydroxyethylacrylate-co-methacrylic
acid)))(PHEA−MAA)およびポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA);ポリビニルブチラール(PVB)が挙げられる。他の実施形態において、他の公知の導電性ポリマーが多孔性膜と接合した状態で仕切りとして使用され得る。
【0128】
図2は、本発明の別の実施形態による、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金で導電性基板を電気めっきするための装置200の概略図である。装置200は、アノードチャンバー212とカソードチャンバー214とを有する電気めっきセル210を含む。アノードチャンバー212は、仕切り216によってカソードチャンバー214から分離されている。仕切り216は、電流を許容し、ある実施形態において、選択されたイオンに該仕切り216を通過させるが、他のイオンおよび分子の通過を妨げる。仕切り216は、第一の実施形態に関連して上記で開示された任意の仕切り材料から形成され得る。
【0129】
図2に示される通り、アノードチャンバー212において、導電性アノード媒体220中に浸漬されるアノード218が析出される。該実施形態において、アノード218は、共形アノード(conformal anode)であり、ここで共形アノード218は、少なくとも部分的に仕切り216を囲み、および/またはその形状に合致する。仕切り216を部分的に囲むように示されているが、1つの実施形態において、共形アノード218は、バンド(すなわち、両側面を覆い、上面および底面を開放したままにする)として、または部分的囲い込み(上面を開けたまま両側面および底面を囲う)として、仕切り216を囲み得る。これらの代替の実施形態は示されていないが、それらは当該分野の技術水準である。
【0130】
アノードチャンバー212は、導電性アノード媒体220を含む。導電性アノード媒体220は、酸性、中性または塩基性であり得、第一の実施形態に関連して上記で開示された任意のpH値を有し得る。導電性アノード媒体220は、選択されたpHに到達するに適当な酸、塩基、塩および/または緩衝剤を含む。当業者は、選択されたpHに到達するに適切な酸、塩基、塩および/または緩衝剤の組み合わせを決定し、選択し得る。
【0131】
上述の通り、1つの実施形態において、アノードチャンバー212中の導電性アノード媒体220は、易酸化性の有機添加剤を含まない。
【0132】
図2に示される通り、カソードチャンバー214において、本発明の1つの実施形態による電気めっき浴224中に少なくとも部分的に浸漬される容器222が析出される。容器222は、バレルまたは複数の比較的小さい部品の処置に関して電着分野において公知の他の筐体であり得、ここで、該容器は、電気めっき浴への部品の均一な曝露を確実にするために、回転、振動、または他の動きをする。1つの実施形態において、容器222は、非導電性表面を含むが、バレルの内側に本発明による処置のための導電性金属部品を含む。上述の通り、バレル222中の導電性金属部品は、図2に示される装置におけるカソードとしてまたはその一部として作動する。容器222は、長楕円形または楕円形の形態で図2に描かれているが、本発明の該実施形態は、係る形状または何らかの特定の形状の容器に限定されない。上述の通り、容器は、部品の表面上に均一でむらのない析出の形成を生じるように、該容器の内側の部品を電気めっき浴224に曝露させることができる任意の容器であり得る。本発明の全ての実施形態においてと同様に、部品は、任意の種類の金属または導電性物体を含み得る。
【0133】
記載された通り、電気めっき浴224は、上述通りの電気めっき浴中に含まれるイオンを含み、該イオンは、簡潔さのためにここでは繰り返して説明しない。
【0134】
図2に図示される実施形態は、共形アノード218が合致する仕切り216と共に使用される、共形アノード218とバレル222との両方を描くが、これは、そんなに限定されない。1つの実施形態において、バレルは、図1に示されるような装置のカソードチャンバー中に配置され得る。別の実施形態において、共形アノードは、仕切り216と同様の仕切りを取り囲んで使用されるが、ここで物体122などの1つ以上の物体が、カソードとして吊り下げられる。
【0135】
1つの実施形態において、カソードチャンバー214中の電気めっき浴224は、導電性アノード媒体220中であれば酸化するであろう1つ以上の有機または無機の種を含む。1つの実施形態において、有機または無機の種は、電気めっき浴224中の前述の追加のイオン(例えば、Te、Bi、Sb、Ag、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、In、Mn、Mo、P、Sn、およびWのイオン)の1つである。
【0136】
図3は、本発明のまた別の実施形態を図示する。図3は、本発明の別の実施形態による、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金で導電性基板を電気めっきするための装置300の概略図である。装置300は、カソードチャンバー314を有するが、分離したアノードチャンバーを有さない電気めっきセル310を含む。装置300は、アノード318および仕切り316を含む。該実施形態において、アノード318は、仕切り316によってカソードチャンバー314から分離されている。該実施形態において、仕切りは、アノード318を囲み、1つの実施形態において、アノード318の表面に適用される。仕切り316は、電流を許容し、ある実施形態において、選択されたイオンに該仕切り316を通過させるが、他のイオンおよび分子の通過を妨げる。仕切り316は、第一の実施形態に関連して上記で開示された任意の仕切り材料から形成され得る。
【0137】
第一および第二の実施形態に関連して記載された通り、本発明の1つの実施形態によると、アノード318は、アノードに関して上記で開示された任意の材料から形成され得る。
【0138】
該実施形態の電気めっきセル310の他の元素は、実質的に第一および第二の実施形態に関して記載された通りであり、従って、ここではその記述は繰り返されない。
【0139】
図4は、本発明のまた別の実施形態を図示する。図4は、本発明の別の実施形態による、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金で導電性基板を電気めっきするための装置400の概略図である。装置400は、カソードチャンバー414と、導電性アノード媒体420を含むかなり縮小されたアノードチャンバー412とを有する電気めっきセル410を含む。装置400は、アノード418および仕切り416を含む。図4に示される通り、アノードチャンバー412は、仕切り416によって規定され、その中にアノード418が配置される容器を形成する。該実施形態において、アノード418およびアノードチャンバー412は、仕切り416によってカソードチャンバー414から分離されている。該実施形態において、仕切りは、アノード418を囲み、1つの実施形態において、アノード418の周りに容器を形成する。1つの実施形態において、仕切り416は、アノード418を完全に囲む。仕切り416は、電流を許容し、ある実施形態において、選択されたイオンに該仕切り416を通過させるが、他のイオンおよび分子の通過を妨げる。仕切り416は、第一の実施形態に関連して上記で開示された任意の仕切り材料から形成され得る。
【0140】
第一および第二の実施形態に関連して記載された通り、本発明の1つの実施形態によると、アノード418は、アノードに関して上記で開示された任意の材料から形成され得る。
【0141】
第一および第二の実施形態に関連して記載された通り、該第4の実施形態において、カソードチャンバー414中の電気めっき浴424は、導電性アノード媒体420中であれば酸化するであろう1つ以上の有機または無機の種を含む。同じ記述が、該第四の実施形態に使用されるが、簡潔さのためにここでは繰り返されない。
【0142】
該実施形態の電気めっきセル410の他の元素は、実質的に第一、第二および第三の実施形態に関して記載された通りであり、従って、ここではその記述は繰り返されない。
【0143】
図5は、仕切り416によって形成され、図4に示されるものと同様の実施形態のアノード418を囲む容器の拡大図である。図5に示される通り、導電性アノード媒体420を保持し、その中にアノード418が配置される容器を形成する仕切り416によって、アノードチャンバー412が規定される。
【0144】
図4に示される通り、仕切り116と同様に仕切り416によって形成された容器は、例えばアノード418と導電性アノード媒体420とを電気めっき浴424から分離する。従って、1つの実施形態において、仕切り416によって形成された容器の上縁は、電気めっき浴424の液面の上方に延びる。別の実施形態において、示されていないが、仕切り416によって形成された容器は、アノード418および導電性アノード媒体420を完全に囲み得る。後者の実施形態において、仕切り416によって形成された容器の側面は、アノード418の上方に延び、アノード418を完全に囲むであろう。該実施形態において、アノード418と、仕切り416によって形成される容器とは、電気めっき浴424中に沈み得る。
【0145】
試験方法
電気めっきされた亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金の組成および厚さは、ハルセル(Hull cell)を使用して調製されたパネルを検査するための蛍光X線(XRF)を使用することによって測定される。効率は、種々の電流での厚さを比較すること、あるいは、類似の使用電流の総アンペア秒を有するパネルに関して電着前後のパネルの重量の増加を比較すること、およびファラデーの法則を使用した理論上の厚さまたは重量の増加とそれを比較することにより、測定される。スローイングパワーは、(例えば、ハーリングブルムセル(Haring
Blum cell)の使用により)中央のアノードのいずれかの側に様々な距離で設置された2つのカソードに関して相対的なコーティング重量の増加を測定することによって測定される。結晶相および好ましい配向性は、好ましくは複数軸の性能を備えたX線粉末回折計(XRPD)を使用することによって測定される。曲げ性は、伸長と圧縮剥離との両方として測定される。伸長は、円筒形マンドレル試験(例えば、ISO 8401段落4.4)の使用によって測定され、該屈曲の外側の合金コーティングに対する曲がりの影響に注目し、一般に伸び率(percent
elongation)として表される。圧縮剥離もまた、円筒形マンドレル試験の使用によって測定されるが、該屈曲の内側の合金コーティングに対する曲がりの影響に注目し、Hu,M.SおよびEvans,A.G.「The cracking and decohesion of thin films on ductile substrates」、Acta Metal.37,3(917−925)1989に記載される方法によって実施される。残留応力は、ピークブロードニングを測定するためのXRPDの使用とポアソン比を計算に組込むこととによって測定される。ポアソン比は、ナノインデンテーション(Hysitron)を使用して換算係数(reduced
modulus)を測定することによって予測される。輝度は、目視観察によって測定される。平滑度は、原子間力顕微鏡(AFM)で析出物の二乗平均平方根(RMS)垂直偏向を測定することによって測定される。
【0146】
コーティングの元素組成は、その両方がXRFの形態であるEDSおよび/またはPIXE分光法で測定され得る。X線光電子分光法(XPS)は、析出される元素の酸化状態を測定するために使用され得る。EDSの検出限界は、約1原子パーセント(at%)である。XPSの検出限界は、約0.1at%である。PIXEの検出限界は、約15−20ppmである。当然、公知の通り、前記方法の検出限界は、検出される厳密な種および当該技術分野において公知の他の要因によって多少変動する。
【0147】
1つの実施形態において、PIXEによる検出限界で合金中に存在するTeは、曲げ性の改善、初期Ni濃度の低減、より小さい粒子サイズ、および低減された硬度の1つ以上を含む、該存在の利点を提供する。1つの実施形態において、電気めっき浴中におけるTeの存在は、めっき効率をある程度低減するが、同時にスローイングパワーを改善する。
【0148】
1つの実施形態において、XPSによる検出限界で合金中に存在するBiは、曲げ性の改善、延性、合金中の低減された初期Ni含有量の1つ以上を含む、光沢剤としては高めの濃度での該存在の利点を提供する。1つの実施形態において、電気めっき浴中におけるBiの存在は、めっき効率をある程度低減するが、同時にスローイングパワーを改善する。
【0149】
1つの実施形態において、XPSによる検出限界で合金中に存在するSbは、曲げ性の改善、延性、低減された粒子サイズの1つ以上を含む、該存在の利点を提供する。1つの実施形態において、電気めっき浴中におけるSbの存在は、めっき効率をある程度低減するが、同時にスローイングパワーを改善する。
【0150】
Te、Bi、およびSbの各々は、存在する場合には、合金の硬度の低減に寄与する。硬度は、ビッカース硬度またはヌープ硬度などの標準的な技術によって測定され得る。ヌープ硬度は、特定量の圧力下におけるダイヤモンド針の侵入深さによって物質の硬度を測定し、通常はKg/mmで表される。ビッカース硬度は、ヌープ硬度試験に類似する試験において測定され、同じ単位で表される。
【0151】
従って、ある実施形態において、最小検出可能量のこれらのイオンは、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金にその存在の利点を与える。
【0152】
初期ニッケル濃度とは、本発明の亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を含む亜鉛−ニッケル合金の電着の最初の5−20秒間に析出される有核ニッケル(nucleate nickel)の量を言う。初期ニッケルが高いとき、析出される合金の所望されない結晶構造または他の所望されない効果が得られ得る。初期ニッケルは、XPSによって測定される。
【0153】
析出物の、特に初期核形成段階(initial nucleate stage)の形態は、冷陰極電界放出型走査電子顕微鏡(SEM)を用いて検査され得る。コーティングの粒子サイズの変化量は、研磨された金属組織断面を調製すること、および該試料が真空チャンバー内で均一に回転される(ザラー回転(Zalar
rotation))間に、アルゴンイオンビームを用いてそれらにイオン照射を与えることによって観察され得る。生じたアルゴンイオンエッチング断面は、冷陰極電界放出型SEMを用いて検査される。
【0154】
ハーリングブルムパネル(Haring Blum panel)、均一な電流密度試片、およびハルセルパネルが、添加剤含有および非含有の様々な電解質から得られたコーティングの組成および性質を評価するために使用され得る。ハーリングブルムパネル(例えば、2.5A電流で30分間)は、スローイングパワーおよび相対的な析出効率についての情報を得るために使用され得る。一定の電流密度(20分間の28アンペア/平方フィート(ASF))試片は、曲げ性および圧縮剥離試験、微小硬度および係数測定試験、ならびに多くの場合、X線回折を受け得る。ハーリングブルム、一定電流密度、およびハルセルパネルは、元素組成および形態を測定するために使用され得る。
【0155】
重要な物質の性質の全ては、一般に、析出されたZnNi合金内の原子の配列に依存すると考えられる。原子の原子配列の研究は、電子線回折またはX線回折技術の使用によって容易化される。特にX線回折は、容易に実施し、析出物、特に合金についての多くの情報を提供する。反射モードにおけるX線粉末回折計の使用は、結晶化した合金中に存在する相、結晶の好ましい配向性(通常は電着物を有する繊維配向である)、および析出物の質感についての情報を提供し得る。亜鉛ニッケル合金に関しては、多様な相があり得る。六方晶亜鉛相(hexagonal zinc phase)(ICDD87−0713)、立方ガンマ相(cubic gamma phase)(ICDD06−0653、組成式NiZn21)、および正方デルタ相(tetragonal
delta phase)(ICDD10−0209、組成式NiZn22)は全て、電着ZnNiについての文献中で報告されている。
【0156】
ハーリングブルムセルの使用は、McCormicおよびKuhn(Metal Finish.,72(2),(74)1993)により、およびMetal Finishing Guidebook and Directory(1998,pp.566)中でGabeにより概説される。この装置では、2つのカソードパネルが、たいていメッシュ材料から作製される、該2つのカソード間に配置される単一のアノードを使用して、同時にめっきされる。生じたジオメトリーは、非常によく似た電流対称(symmetric current)およびポテンシャル分布を備えた2つの分離したセルを提供する。アノードと2つのカソードとの間の異なる長さが存在するようにして、3つの電極が配置される。様々な式が、スローイングパワーを計算するために使用され得る。式は全て、一般に、2つのカソードパネルの質量増加の比および2つのカソードとアノードとの間の長さの比の使用を有する。1つの実施形態において、スローイングパワーについてハーリング式(Haring
formula)が使用され得、それは%TP=100(L−R)/L、(式中、Lは、近いカソード距離に対する遠いカソード距離の比であり、Rは、カソードパネルによって増えた重量の比である)である。
【0157】
1つの実施形態において、2つの試片に由来する重量の増加の合計は、類似の電流密度における電解質間の電着効率を比較するために使用され得る。ハーリングブルムパネルをめっきするために使用された電流および時間を記録すること、生じた合金の組成を測定すること、および同一組成の合金について理論上の質量増加を計算することによって、理論上の質量増加に対する観察された質量増加の比によるめっき効率の評価を得ることができる。理論上の質量増加、Mtheorは、ファラデーの法則から導かれ、SchlesingerおよびPaunovic,Modern Electroplating,4th ed.,Appendix Table4(2000)などの膨大な文献において表にされた
【0158】
【数1】

【0159】
(式中、Iは、電流であり、tは、分単位でのめっき時間であり、Aは、生じた析出物中の元素iの原子パーセントであり、gは、1アンペア時間内に析出され得る元素iのグラム表示における特定元素の電気化学当量である)
などの式から計算される。例えば、ハーリングブルムカソードを2Aで30分間めっきすることによって得られる15原子パーセントニッケル平衡亜鉛析出物(nickel balance zinc deposit)は、ニッケルおよび亜鉛それぞれについての1.095g/Ahrおよび1.219g/Ahr電気化学当量に基づく1.2004グラムの理論上の質量を有する。2つのパネルの合計重量増加が0.6グラムである場合、計算効率は、0.6/1.2004×100%または〜50%である。
【0160】
曲げ性試験は、国際規格8401「金属コーティング−延性測定方法の概説」4.4章、円筒形マンドレル試験に記載される手順に従って行われる。本質的にこれは、2.5×10cm試片を、その電気めっきされた表面が様々な直径の円筒形マンドレルを囲むようにして該屈曲の外側に向くようにして曲げること、および10倍率で亀裂が観察される直径を書き留めることから成る。等式%E=Ttot/(d+Ttot100の使用によって、コーティングの伸び率が測定され(式中、Ttotは、コーティングの厚さを加算した基板の厚さであり、dは、マンドレルの直径である)、記録される。圧縮剥離は、この場合、類似の試片を、そのめっきされた表面が様々な直径の円筒形マンドレルを囲むようにして円筒形マンドレルに向くようにして曲げること、および再度亀裂を観察することによって観察される。圧縮剥離に関して、使用し易い等式は利用できないが、圧縮剥離の類型の観察がなされ得る。基板からの層間剥離の形跡が無く、非常に多くの亀裂がある場合、観察された直径において拡散した微小亀裂という所見がなされる。亀裂がほんのわずかしかなく、コーティングのいくつかが基板に接着していないことが明らかな場合、観察された直径において集中した剥離という所見がなされる。後者の所見は、観察された曲げ半径においてコーティングの重大な不具合と考察されるべきである。
【0161】
実施例
以下の実施例は、本発明の電気めっき浴を説明する。以下の実施例における成分の量は、mol/dm(mole/liter)単位である。明細書および特許請求の範囲において別段の指示が無い限り、全ての割合および百分率は重量基準(または原子%)であり、温度はセ氏度であり、圧力は大気圧または大気圧付近である。
【0162】
電解質
実施例において、4つの異なるアルカリ電解質および2つの酸電解質が調製される。比較する実施例において、本発明の実施形態による合金化金属の様々な組み合わせを含む状態で、もしくは係る合金化金属を含まない状態で、または本発明の実施形態による仕切りを有する状態で、もしくは係る仕切りが無い状態で、これらの電解質が使用される。
【0163】
【表1】

【0164】
【表2】

【0165】
亜鉛とニッケルと共に合金化するための元素
本発明によれば、本発明の電気めっき浴は、亜鉛イオンおよびニッケルイオンに加えて、Te、Bi、Sb、Ag、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、In、Mn、Mo、P、Sn、およびWから選択される元素に対応する1つ以上の追加のイオン種をさらに含む。理解される通り、係る合金中には追加の元素が含まれ得る。例えば、亜鉛、ニッケル、テルリウム、および銅と一緒に、スズ(Sn)などの別の元素が含まれて、亜鉛−ニッケルカナリア合金(canaria alloy)が形成され得る。同様に、4つの元素が亜鉛−ニッケル合金に添加されて、亜鉛−ニッケルセントリー合金(sentry
alloy)を形成し得、5つの元素が添加されて、亜鉛−ニッケル七元合金が形成され得る。より多元の合金もまた形成され得る。しかしながら、1つの実施形態において、本発明は主として、亜鉛、ニッケル、ならびに上記のTe、Bi、Sb、Ag、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、In、Mn、Mo、P、Sn、およびWから選択される1つ以上の追加の元素の1つ以上に対応する1つ以上の元素を含む、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金に関する。
【0166】
表Iは、本発明の様々な実施形態による亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金中において使用され得る元素についての、源、利点、典型的なアルカリ浴濃度、および典型的な合金含有量を含む、典型的なデータを示す。類似の源、利点、濃度および含有量範囲が、酸浴を使用する本発明の様々な実施形態に応用可能である。該表I中の情報は、例示であり、添付の特許請求の範囲の有効範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0167】
【表3】

【0168】
表IIは、本発明の実施形態による、亜鉛およびニッケルと共に合金化するための元素の一定の実施形態に関連する情報を示す。該表II中に示された源、浴中濃度、合金中濃度、および利点は、単に例示であり、添付の特許請求の範囲の有効範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0169】
【表4】

【0170】
【表5】

【0171】
【表6】

【0172】
前述の通り、本発明は、金属または導電性表面上に亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を形成するための電気めっき浴、電気めっきシステム、および電気めっき方法に関する。本発明は、主として金属または金属性表面を用いた使用に適合されるが、任意の導電性表面が本発明に従って処理され得ることが理解されるべきである。前記述は金属表面に言及するが、本明細書中において使用されるとき、用語「金属表面」は、一般に、金属、炭素、もしくはグラファイトで被覆された金属表面、金属性表面、ポリマー表面、または導電性ポリマーなどの他の導電性物質である導電性表面を含むことが理解されるべきである。本明細書中において使用されるとき、用語「金属表面」は、数ある金属の中でも、鋼鉄、鋼鉄、鉄、および鉄合金を含むシリコン、亜鉛、銅、鉛、金属化セラミックおよびプラスチック、導電性ポリマー、炭素およびグラファイト、ならびにそれらの合金などの広範囲の金属表面を含む。金属含有表面としてはまた、天然に生じるまたは人工の酸化および還元生成物、例えば、数ある中でもFe、Feをも挙げられ得る。
【0173】
本発明を、様々な実施形態に関して説明してきたが、前述の明細書および以下の特許請求の範囲を読むことで、その様々な改変が当業者にとって明らかになることが理解されるべきである。従って、本明細書中に開示される本発明は、係る改変を添付の特許請求の範囲内にあるものとしてカバーすることが意図されていると理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】図1は、本発明の1つの実施形態に基づく電気めっきセルの概略図である。
【図2】図2は、本発明の別の実施形態に基づく電気めっきセルの概略図である。
【図3】図3は、本発明のさらに別の実施形態に基づく電気めっきセルの概略図である。
【図4】図4は、本発明のまた別の実施形態に基づく電気めっきセルの概略図である。
【図5】図5は、仕切りの実施形態によって形成される容器の拡大図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)亜鉛イオン;
b)ニッケルイオン;ならびに
c)Te+4、Bi+3およびSb+3のイオンから選択される1つ以上のイオン種
を含む、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を析出させるための電気めっき浴、但し、該イオン種がTe+4を含むとき、該浴は、Bi+3、Sb+3、Ag+1、Cd+2、Co+2、Cr+3、Cu+2、Fe+2、In+3、Mn+2、Mo+6、P+3、Sn+2、およびW+6のイオンから選択される1つ以上の追加のイオン種をさらに含み、該イオン種がSb+3であるとき、該浴中におけるSb+3の濃度は0.01g/dmから10g/dmの範囲内である。
【請求項2】
電気めっき浴を保持するための電気めっきセル(110、210、310、410)、アノード(118、218、318、418)、電気めっきされる基板を含むカソード(122、222、322、422)、および該アノード(118、218、318、418)と該カソード(122、222、322、422)とに操作可能に接続された電源を含む電気めっき装置(100、200、300、400);ならびに
請求項1の電気めっき浴
を含む、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金で基板を電気めっきするためのシステム。
【請求項3】
前記イオン種がBi+3またはSb+3の1つ以上を含むとき、前記浴が、Ag+1、Cd+2、Co+2、Cr+3、Cu+2、Fe+2、In+3、Mn+2、Mo+6、P+3、Sn+2、およびW+6のイオンから選択される1つ以上の追加のイオン種をさらに含む、請求項1の浴または請求項2のシステム。
【請求項4】
前記亜鉛イオンおよびニッケルイオンが、合金の約3wt%から約25wt%のニッケル含有量を含む亜鉛−ニッケル合金を析出させるのに充分な濃度で前記浴中に存在する、請求項1の浴または請求項2のシステム。
【請求項5】
前記亜鉛イオンおよびニッケルイオンが、合金の約8wt%から約22wt%のニッケル含有量を含む亜鉛−ニッケル合金を析出させるのに充分な濃度で前記浴中に存在する、請求項1の浴または請求項2のシステム。
【請求項6】
1つ以上の非イオノゲン界面活性ポリオキシアルキレン化合物をさらに含む、請求項1の浴または請求項2のシステム。
【請求項7】
前記1つ以上の非イオノゲン界面活性ポリオキシアルキレン化合物が、
(i)式:
--O--[(CHO]H (Ia)
または
--O--[(CHRCH)O]H (Ib)
または
--O--[(CHCHR)O]H (Ic)
(式中、Rは、約24個までの炭素原子を含むアリールまたはアルキル基であり、Rは、1から約4個の炭素原子を含むアルキル基であり、nは、2または3であり、xは、2と約100との間の整数である)
を有する1つ以上の化合物;
(ii)式:
−O−[R−O−]−X (IIa)
または
(R−O−[R−O−]−Y (IIb)
(式中、Rは、C−C18分岐もしくは非分岐アルキル、アルキレンまたはアルキニル基、あるいはフェニル−O−[R−O−]−CH−、ここで、mは0−100、Rは、C−C分岐または非分岐アルキレンであり;RはC−C分岐または非分岐アルキレンであり;Xは、H、−SOZ、−SOZ、−SOZ、−PO、−PO(式中、Zは、独立してH、アルカリ金属イオンであり得、またZは、アルカリ土類金属イオンであり得る)、−NH、−Clまたは−Brであり;Yは、脂肪族ポリヒドロキシ基、アミン基、ポリアミン基、またはメルカプタン基であり、aは、Y成分上のOH、−NH、NHまたは−SH基中の活性水素の数と等しいかまたはそれより小さい)
を有する1つ以上の化合物;または
(iii)2つ以上の(i)および/または(ii)の混合物
を含む、請求項6の浴またはシステム。
【請求項8】
前記浴が、酸性pHを有する、請求項1の浴または請求項2のシステム。
【請求項9】
前記浴が、アルカリ性pHを有し、錯化剤をさらに含む、請求項1の浴または請求項2のシステム。
【請求項10】
1つ以上の非イオノゲン界面活性ポリオキシアルキレン化合物をさらに含む、請求項9の浴またはシステム。
【請求項11】
前記錯化剤が、脂肪族アミン、脂肪族アミンのポリマー、式(V):
(R)N−R11−N(R)R10 (V)
(式中、R、R、RおよびR10は各々独立してアルキルまたはヒドロキシアルキル基であって、但し、R−R10の1つ以上がヒドロキシアルキル基であり、R11は約10個までの炭素原子を含むヒドロカルビレン基である)
によって表される化合物、またはそれらの2つ以上の混合物を含む、請求項9の浴またはシステム。
【請求項12】
前記セル(110、210、310、410)が、仕切り(116、216、316、416)によってカソードチャンバー(114、214、314、414)とアノードチャンバー(112、212、412)とに分離され、前記電気めっき浴が、該カソードチャンバー(114、214、314、414)中に含まれる、請求項2のシステム。
【請求項13】
前記仕切り(116、216、316、416)が、塩橋、イオン選択性膜、ゾル−ゲル、イオン選択性アノードコーティング、アノード共形イオン選択性膜、および多孔性セラミックの1つ以上を含む、請求項13のシステム。
【請求項14】
電気めっき浴を保持するための電気めっきセル(110、210、310、410)(該チャンバーは、該セル(110、210、310、410)をカソードチャンバー(114、214、314、414)とアノードチャンバー(112、212、412)とに分離する仕切り(116、216、316、416)を有する)、該アノードチャンバー(112、212、412)中のアノード(118、218、318、418)、該カソードチャンバー(114、214、314、414)中のカソード(122、222、322、422)(該カソード(122、222、322、422)は、電気めっきされる基板を含む)、および該アノード(118、218、318、418)と該カソード(122、222、322、422)とに操作可能に接続された電源を含む電気めっき装置(100、200、300、400);ならびに
a)亜鉛イオン;
b)ニッケルイオン;および
c)Te+4、Bi+3およびSb+3のイオンから選択される1つ以上のイオン種
を含む、該カソードチャンバー(114、214、314、414)中の電気めっき浴、但し、該イオン種がSb+3であるとき、該浴中におけるSb+3の濃度は0.01g/dmから10g/dmの範囲内である
を含む、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金で基板を電気めっきするためのシステム。
【請求項15】
前記浴が、Ag+1、Cd+2、Co+2、Cr+3、Cu+2、Fe+2、In+3、Mn+2、Mo+6、P+3、Sn+2、およびW+6のイオンから選択される1つ以上の追加のイオン種をさらに含む、請求項14のシステム。
【請求項16】
前記亜鉛イオンおよびニッケルイオンが、合金の約3wt%から約25wt%のニッケル含有量を含む亜鉛−ニッケル合金を析出させるのに充分な濃度で前記浴中に存在する、請求項14のシステム。
【請求項17】
前記亜鉛イオンおよびニッケルイオンが、合金の約8wt%から約22wt%のニッケル含有量を含む亜鉛−ニッケル合金を析出させるのに充分な濃度で前記浴中に存在する、請求項14のシステム。
【請求項18】
前記浴が、1つ以上の非イオノゲン界面活性ポリオキシアルキレン化合物をさらに含む、請求項14のシステム。
【請求項19】
前記1つ以上の非イオノゲン界面活性ポリオキシアルキレン化合物が、
(i)式:
--O--[(CHO]H (Ia)
または
--O--[(CHRCH)O]H (Ib)
または
--O--[(CHCHR)O]H (Ic)
(式中、Rは、約24個までの炭素原子を含むアリールまたはアルキル基であり、Rは、1から約4個の炭素原子を含むアルキル基であり、nは、2または3であり、xは、2と約100との間の整数である)
を有する1つ以上の化合物;
(ii)式:
−O−[R−O−]−X (IIa)
または
(R−O−[R−O−]−Y (IIb)
(式中、Rは、C−C18分岐もしくは非分岐アルキル、アルキレンまたはアルキニル基、またはフェニル−O−[R−O−]−CH−、ここで、mは0−100、Rは、C−C分岐または非分岐アルキレンであり;Rは、C−C分岐または非分岐アルキレンであり;Xは、H、−SOZ、−SOZ、−SOZ、−PO、−PO(式中、Zは、独立してH、アルカリ金属イオンであり得、またZは、アルカリ土類金属イオンであり得る)、−NH、−Clまたは−Brであり;Yは、脂肪族ポリヒドロキシ基、アミン基、ポリアミン基、またはメルカプタン基であり、aは、Y成分上のOH、−NH、NHまたは−SH基中の活性水素の数と等しいかまたはそれより小さい)
を有する1つ以上の化合物;または
(iii)2つ以上の(i)および/または(ii)の混合物
を含む、請求項18のシステム。
【請求項20】
前記浴が酸性pHを有する、請求項14のシステム。
【請求項21】
前記浴がアルカリ性pHを有し、錯化剤をさらに含む、請求項14のシステム。
【請求項22】
前記浴が、1つ以上の非イオノゲン界面活性ポリオキシアルキレン化合物をさらに含む、請求項21のシステム。
【請求項23】
前記錯化剤が、脂肪族アミン、脂肪族アミンのポリマー、式
(R)N−R11−N(R)R10 (V)
(式中、R、R、RおよびR10は、各々独立してアルキルまたはヒドロキシアルキル基であって、但し、R−R10の1つ以上がヒドロキシアルキル基であり、R11は、約10個までの炭素原子を含むヒドロカルビレン基である)
によって表される化合物、またはそれらの2つ以上の混合物を含む、請求項21のシステム。
【請求項24】
前記仕切り(116、216、316、416)が、塩橋、イオン選択性膜、ゾル−ゲル、イオン選択性アノードコーティング、アノード共形イオン選択性膜、および多孔性セラミックの1つ以上を含む、請求項14のシステム。
【請求項25】
亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を含む物品であって、該合金が、
亜鉛;
ニッケル;ならびに
Te、BiおよびSbから選択される1つ以上の元素
を含む物品、但し、該合金がTeを含むとき、該合金はBi、Sb、Ag、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、In、Mn、Mo、P、Sn、およびWから選択される1つ以上の追加の元素をさらに含み、該合金がSbを含むとき、該合金はBi、Ag、Cd、Cu、In、Mn、Mo、P、Sn、およびWから選択される1つ以上の追加の元素をさらに含む。
【請求項26】
前記合金が、BiおよびSbの1つ以上を含むより多元の合金であり、Ag、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、In、Mn、Mo、P、Sn、およびWから選択される1つ以上の追加の元素をさらに含む、請求項25の物品。
【請求項27】
亜鉛−ニッケル四元合金またはより多元の合金を含む物品であって、該合金が、
亜鉛;
ニッケル;
Te、BiおよびSbから選択される1つ以上の元素;ならびに
Ag、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、In、Mn、Mo、P、Sn、およびWから選択される1つ以上の元素
を含む物品、但し、該合金がSbを含むとき、該1つ以上の元素はBi、Ag、Cd、Cu、In、Mn、Mo、P、Sn、およびWから選択される。
【請求項28】
基板を請求項1の浴中に浸漬すること;および
該浴で電気めっき方法を実施して、前記1つ以上のイオン種に対応する1つ以上の元素を含む合金を該基板上に析出させること
を含む、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を形成する方法。
【請求項29】
基板を請求項2の浴中に浸漬すること;および
前記電気めっき装置を操作して、前記1つ以上のイオン種に対応する1つ以上の元素を含む合金を該基板上に析出させること
を含む、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を形成する方法。
【請求項30】
基板を請求項3の浴中に浸漬すること;および
該浴で電気めっき方法を実施して、前記1つ以上のイオン種に対応する1つ以上の元素を含む合金を該基板上に析出させること
を含む、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を形成する方法。
【請求項31】
基板を請求項14の浴中に浸漬すること;および
前記電気めっき装置を操作して、前記1つ以上のイオン種に対応する1つ以上の元素を含む合金を該基板上に析出させること
を含む、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を形成する方法。
【請求項32】
基板を請求項15の浴中に浸漬すること;および
前記電気めっき装置を操作して、前記1つ以上のイオン種に対応する1つ以上の元素を含む合金を該基板上に析出させること
を含む、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を形成する方法。
【請求項33】
a)亜鉛イオン;
b)ニッケルイオン;ならびに
c)Te+4、Bi+3およびSb+3のイオンから選択される1つ以上のイオン種
を含む、亜鉛−ニッケル三元合金またはより多元の合金を析出させるための電気めっき浴、但し、該イオン種がTe+4を含むとき、該浴は、(i)エチレンジアミンまたはそのメチル置換誘導体;プロピレンジアミンまたはそのメチル置換誘導体;ジエチレントリアミンまたはそのメチル置換誘導体;および高級アルキレンポリアミンなどのアルキレンアミンとエピハロヒドリンとの反応生成物と、(ii)芳香族アルデヒドとの両方を含む光沢剤の混合物を含まず、但し、該イオン種がSb+3であるとき、該浴中におけるSb+3の濃度は0.01g/dmから10g/dmの範囲内である。
【請求項34】
前記浴が、Ag+1、Cd+2、Co+2、Cr+3、Cu+2、Fe+2、In+3、Mn+2、Mo+6、P+3、Sn+2、およびW+6のイオンから選択される1つ以上の追加のイオン種をさらに含む、請求項33の浴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−525598(P2007−525598A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500754(P2007−500754)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/043212
【国際公開番号】WO2005/093133
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(503037583)アトテック・ドイチュラント・ゲーエムベーハー (55)
【氏名又は名称原語表記】ATOTECH DEUTSCHLAND GMBH
【Fターム(参考)】