説明

交差点車両衝突事故防止システム

【課題】 停止等すべき車両に対して交差する車両の搭乗者に、交差点に進入する危険車両の存在を知らせることにより、車両同士の衝突事故を防止する交差点車両衝突事故防止ステムを提供する。
【解決手段】 交差点車両衝突事故防止システム11は、交差点に進入する車両の速度を測定する車速測定手段Sと、交差点における車両の進行方向の信号機の表示する信号に関する情報を取得する信号情報取得手段32と、交差点における車両の進行方向と交差する方向の信号機の表示を変更可能な信号表示変更手段33とをもち、信号情報取得手段32によって取得された信号が停止信号で、かつ車速測定手段Sによって取得された車両速度が所定速度以上の場合に、信号表示変更手段33によって信号機の表示を変更する信号機制御手段3と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点車両衝突事故防止システムに関し、特に信号機付き交差点での信号見落とし及び信号無視等による交差点車両衝突事故防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、停止や減速が必要な交差点において、車両同士の追突事故あるいは出会い頭の衝突事故等を防止するためのシステムが種々提案されている。例えば、特許文献1には、信号付き交差点において、信号機の表示が停止信号の赤であるにもかかわらず、交差点に進入しようとする車両に対して、注意を喚起するために、路面から突起物を突出させる発明が開示されている。
【特許文献1】実開平5−65708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献1のように、停止や減速しなければならない車両の運転者は、信号を見落としたり、信号を無視してしまったりしているのであるため、注意を喚起するために振動を与えることで運転者が驚き、適切な運転操作ができない場合も考えられる。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、停止等すべき車両に対して交差する車両の搭乗者に、交差点に進入する危険車両の存在を知らせることにより、車両同士の衝突事故を防止する交差点車両衝突事故防止ステムを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明の構成上の特徴は、 交差点に進入する車両の速度を測定する車速測定手段と、
前記交差点における前記車両の進行方向の信号機の表示する信号に関する情報を取得する信号情報取得手段と、前記交差点における前記車両の進行方向と交差する方向の信号機の表示を変更可能な信号表示変更手段とをもち、前記信号情報取得手段によって取得された前記信号が停止信号で、かつ前記車速測定手段によって取得された車両速度が所定速度以上の場合に、前記信号表示変更手段によって前記信号機の表示を変更する信号機制御手段と、を有することである。
【0006】
また請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記信号表示変更手段による信号表示の変更を検知する信号表示変更検知手段と、当該信号表示変更検知手段による検知に基づいて警告音の出力、警告の表示又は車両を減速ないし停止のうちの少なくとも1つを実行する注意喚起手段とを有することである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明においては、交差点の信号機の表示が停止信号で停止すべき車両が、所定速度以上である場合に、当該車両に対して交差する車両側の信号機の表示を信号表示変更手段により変更させることで、交差する車両の搭乗者に信号無視して交差点に進入してくる車両があることを知らせる。信号機の表示の変更は、例えば青信号なら青信号を点滅させる等がある。信号の表示を見落としたり、信号を無視してしまったりした車両側に、従来技術などにより注意を喚起するのはもちろんであるが、本発明の交差点車両衝突事故防止システムを用いることで、交差する側の車両に対しても注意を喚起することで、車両同士の衝突事故をより抑止することができる。ましてや、信号無視等した車両の運転者が注意を喚起されてもなんらかの事情で対応できない場合にも、交差する車両側に注意を喚起することによる事故防止が可能になり、事故発生を抑止できる。
【0008】
請求項2に係る発明においては、信号の表示が変更したことを検知できる信号表示変更検知手段と、車両の搭乗者に対して警告音を出力したり、警告の表示をしたり、あるいは車両自体を減速や停止させたりすることで注意を喚起する注意喚起手段とを有するため、青信号だと認識して車両の操作に意識を向けた運転者等に対して、注意を喚起するあるいは車両そのものを制御することで、停止信号無視等により交差点に進入する車両との衝突事故を防止することができる。例えば、停止信号側の車両と交差する車両が信号表示変更検知手段と注意喚起手段とを有することで、交差する車両側の搭乗者に注意を喚起したり、その車両が停止等したりする。また、停止信号側の車両が信号表示変更検知手段と注意喚起手段とを有することで、交差する車両側の信号機の表示を検知して、注意喚起手段のうちのいずれかが実行され、衝突事故を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、実施形態を用いて本発明を具体的に説明する。
【0010】
(実施形態1)
本実施形態1の交差点車両衝突事故防止システム11は、図1に示すように、車速測定手段Sと、信号機制御手段3とを有する。
【0011】
車速測定手段Sは、図2に示されるように、交差点に進入可能な道路の車線で、停止線から所定距離L(例えば、10m)の地点の路面に埋め込まれ、通過する車両の速度を検出し、後述する信号機制御手段3の制御部34部に当該速度を出力する装置である。交差点が4叉路で、各叉路から交差点に進入可能であれば、4カ所に車速測定手段S1〜S4を設置する。また、当該手段Sを路面に埋め込まず、車両の上方位置等から車速を計測するものでも良く、車速計測手段Sは任意の超音波式、ループコイル式、遠赤外線式、画像式等である。
【0012】
図1に戻って、信号機制御手段3は、信号機表示部31と、信号情報取得手段32と、信号表示変更手段33と、制御部34とを有し、例えば、交差点の信号機K1〜K4を制御する制御装置内部に配置するか、あるいは制御装置自体に、信号機制御手段3を拡張する。
【0013】
信号機表示部31は、いわゆる赤信号、青信号、黄色信号あるいは矢印信号が表示され、各色の信号が横並びあるいは縦並びに整列する信号機K1〜K4の表示部材である。信号情報取得手段32は、信号機表示部31が表示する信号(信号情報)を取得することができる。信号表示変更手段33は、信号機表示部31の信号を点滅させる手段である。点滅は、例えば、人間が見て点滅していることを認識できる間隔である。制御部34は、車速測定手段S1〜S4及び信号情報取得手段32からの信号情報を取得し、取得した信号情報を基に信号表示変更手段33に点滅するか否かの情報を出力する等の制御をする。詳しくは、信号機K1〜K4のうち、信号機表示部31が赤信号で、車両が停止すべき車線の車両の速度が所定速度以上の場合に、信号表示変更手段33が、停止すべき車線と交差する車線の信号機表示部31に青信号を点滅させる指示を信号機表示部31に出力する。青信号は、「進むことができる」と指示を出している矢印信号等の信号表示を含める。
【0014】
図2を用いて、どのように車両の衝突事故が防止できるか説明する。信号機K1及び信号機K2の信号が赤信号であるとき、信号機K1に表示される信号機に従って走行するはずの車両Aは、車速測定手段S4によって測定された速度が所定速度(例えば、50Km/h)以上であったとする。信号機制御手段3の制御部34は、車両Aが走行する方向と交差する車線のための信号機K3及び信号機K4の信号機表示部31に青信号を点滅させるための信号を出力する。信号機K3及び信号機K4が青信号になったことで、走行しようとしていた車両(車両B1及び車両B2)の搭乗者は、信号機K3又は信号機K4の青信号が点滅することを認識することで、交差点に進入する可能性のある車両の存在を知ることができる。よって、車両B1及び車両B2の運転者は、青信号であるが車両を減速させるかあるいは停止させることで、車両Aとの衝突事故を避けることができる。
【0015】
ここで、所定速度は、距離L以内で車両が制動して停止線で止まることができる速度である。つまり、所定速度と距離Lとは密接に関係しており、距離L以内で制動して停止線で車両が止まることができるか否かは、距離Lが短い場合の所定速度より距離Lが長い場合の所定速度のほうが高速である。そのため、あまりに距離Lが長すぎ、法定速度で走行していても停止線で制動可能な位置では、交差点への車両の進入を予測することはできないので、以上のことを考慮して距離Lと所定速度とを決定するのが望ましい。また、距離Lを停止線からの距離とはせず、交差点の角(図2において、ポイントM)からの距離等でも良い。そして、所定速度を車両毎に決定する方法も考えられる。例えば、車両の加速度(増速していれば増速の度合いに応じて相対的に大きな所定速度に設定する。減速していれば減速の度合いに応じて相対的に小さな所定速度に設定する。つまり、車両が同じ速度で交差点に進入してもそのとき、増速していれば運転者は止まろうとしていないとして所定速度を大きく設定したり、減速していれば運転者は止まろうとしているとして所定速度を小さく設定したりする。)、車両の大きさや重量(大きかったり重かったりすれば大きな所定速度に設定し、小さかったり軽かったりすれば小さな所定速度に設定する。つまり、車両が大きかったり重たい車両は小さかったり軽い車両に比べて相対的に停止しにくいからである。)等を検知するセンサを用い、それらのデータに基づき、車両毎の所定速度を決定し、交差点に進入するか否かをより正確に判定する。
【0016】
本実施形態1の交差点車両衝突事故防止システム11によれば、車速測定手段S1〜S4によって測定されている車両の速度と、信号機K1〜K4の信号との情報から赤信号を無視する可能性がある車両の存在を、交差する車両側の信号機の青信号を点滅させて交差する車両に知らせることで、交差点における衝突事故を回避することが可能である。信号の表示を見落としたり、信号を無視してしまったりした車両の運転者に対して従来技術などにより注意を喚起するのはもちろんであるが、交差する側の車両に対しても注意を喚起することで、車両同士の衝突事故をより抑止することができる。ましてや、信号無視等した車両の運転者が注意を喚起されてもなんらかの事情で対応できない場合にも、交差する車両側に注意を喚起することによる事故防止が可能になり、事故発生を抑止できる。
【0017】
(実施形態2)
本発明の実施形態2について具体的に説明する。本実施形態2は実施形態1と基本的には同様の構成及び同様の作用効果を有する。以下、異なる部分を中心に説明する。
【0018】
本交差点車両衝突事故防止システム12では、車両が、図3に示されるように、信号機制御手段3の信号表示変更手段33によって信号機表示部31に表示される青信号が点滅するのを受信(検知)できる信号表示変更検知手段4を有する。そして、信号表示変更検知手段4が青信号の点滅を受信したら、警告音を出力する警告音手段51、警告を表示する警告表示手段52及び又は車両を減速ないしは停止させる減速停止手段53のうちの少なくとも一つを実行する注意喚起手段5を有する。
【0019】
信号表示変更検知手段4は、フォトダイオード、フォトトランジスタ等の受光素子を備えることで、点滅する青信号を受信する。
【0020】
警告音手段51及び警告表示手段52は、信号表示変更検知手段4と一体のスピーカーとディスプレイとを備える装置を考えられる。その他に、車両への搭載率の高いカーナビゲーションシステムに信号表示変更検知手段4を追加し、カーナビゲーションシステムのスピーカー及びディスプレイを利用することも考えられる。
【0021】
そして、車両を減速ないしは停止させる減速停止手段53は、車両に通常搭載される制御装置(ECU)に連結あるいはECUのROMにプログラムとして保存する等されており、信号表示変更検知手段4が点滅信号を受信したという信号が入力されることで、実行される。車両を減速させたり、停止させたりする方法としては、公知になっている技術を利用することが考えられる。例えば、ブレーキを作動させたり、内燃機関への燃料や空気の供給を抑制して車両を減速させたり、停止させたりする方法がある。
【0022】
本実施形態2の交差点車両衝突事故防止システム12よれば、赤信号にもかかわらず交差点に進入する車両の可能性を、その車両と交差する方向の車線を走行中の車両の搭乗者に対して信号機の青信号を点滅させて報知するだけでなく、音や車内のディスプレイに警告を表示することで、更に注意を喚起することができる。その上、交差する車両を制御して、車両を減速あるいは停止させることで、交差点に進入する車両を減少し、衝突事故を抑止できる。車両をシステムが制御することは、車両の運転者が認識して車両を減速等せるより速く確実に車両を制御することが可能であるため、衝突事故の発生の防止によりつながる。
【0023】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態2において、車両に搭載される警告音手段51、警告表示手段52、そして減速停止手段53は、いずれか1つでも良いし、2つを組み合わせたものでも良い。
【0024】
特に、点滅する信号を受信することは、信号機の表示する信号が発光ダイオードで実現されることにより、モールス信号のように使えるという利点を生かすシステムとすることもでき、より安全な運転を各車両で実現できる画期的なシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態1の交差点車両衝突事故防止システム11の構成図である。
【図2】本交差点車両衝突事故防止システム11を利用した場合における交差点での衝突事故をシミュレーションした概要図である。
【図3】本実施形態2の交差点車両衝突事故防止システム12の構成図である。
【符号の説明】
【0026】
11,12:交差点車両衝突事故防止システム、
2:車速測定手段、
3:信号機制御手段、31:信号機表示部31、32:信号情報取得手段、33:信号表示変更手段、34:制御部、
4:信号表示変更検知手段、
5:注意喚起手段、51:警告音手段、52:警告表示手段、53:減速停止手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点に進入する車両の速度を測定する車速測定手段と、
前記交差点における前記車両の進行方向の信号機の表示する信号に関する情報を取得する信号情報取得手段と、前記交差点における前記車両の進行方向と交差する方向の信号機の表示を変更可能な信号表示変更手段とをもち、前記信号情報取得手段によって取得された前記信号が停止信号で、かつ前記車速測定手段によって取得された車両速度が所定速度以上の場合に、前記信号表示変更手段によって前記信号機の表示を変更する信号機制御手段と、を有することを特徴とする交差点車両衝突事故防止システム。
【請求項2】
前記信号表示変更手段による信号表示の変更を検知する信号表示変更検知手段と、当該信号表示変更検知手段による検知に基づいて警告音の出力、警告の表示又は車両の減速ないし停止のうちの少なくとも1つを実行する注意喚起手段とを有する請求項1に記載の交差点車両衝突事故防止システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−151701(P2009−151701A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330934(P2007−330934)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】