説明

交差線状材用連結具

【課題】線径が異なる線状材の交差部と線径が同じ線状材の交差部の両方に適用が可能な交差線状材用連結具を提供する。
【解決手段】中心部にボルト挿通用の貫通孔7が形成されたブロック体2、3の一組を、前記貫通孔7にボルト4を挿通して柱状体に組付けて用いる交差線状材用連結具1であって、ブロック体2、3同士の対向面間にボルト挿通用貫通孔を挟んで線状材R1、R2を収容し得る収容部12、13が交差状に形成されるとともに、収容部12、13の一方の溝形状が他方の溝形状より大きく形成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差線状材用連結具に関し、詳細には、ロープ類や棒材あるいは線材などの線状材を交差させて網などを形成する際に使用される、前記線状材の交差部分を連結固定する連結具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開平10−219630号公報(特許文献1)や特開平11−140827号公報(特許文献2)には、落石防止のために縦横に張ったワイヤロープの交差部を連結するための連結金具が開示されている。
【0003】
図5は、特許文献1で開示されている連結金具を示す。この連結金具は、交差ロープR1、R2の重なり部分を内装する鞍状体21と、挟持ボルト体22と、ナット23から構成され、鞍状体21は、鞍内上部にロープR1、R2の交差部分を収納可能にして、収納部分の前部並びに前部下方を開口してボルト体装着口24を設け、更に後部下方にボルト挿通孔25を設けてなる。挟持ボルト体22は、前記装着口24に対応する頭部26と、頭部26の下方部分から後方に突設したボルト部27からなる。この連結金具では、ロープRの交差部分を鞍状体21の収納箇所(鞍内上部)に重ね合せ状態で収納し、挟持ボルト体22のボルト部27を挿通孔25に挿通すると共に、頭部26を装着口24内に位置せしめて、鞍状体21の後部に突出したボルト部27にナット23を螺合緊締して、交差ロープR1、R2を鞍状体21とボルト部27の頭部26とで挟持する。
【0004】
図6は、特許文献1に開示されている上記とは別の構成の連結金具を示す。この連結金具は、中間体31と、2個の挟持体32、33と挟持ボルト34と、ナット35から構成される。中間体31は、平面楕円形状の板状部材で、その表裏面に互いに交差する方向に穿設した溝36、37を形成すると共に、前記溝から外れた両側箇所に表裏貫通するボルト孔38を穿設している。挟持体32、33は、前記中間体31の上下(表裏)に積層するもので、それぞれ前記溝36、37と対面する溝39、40を穿設し、且つ前記ボルト孔38と対応するボルト孔41、42を形成している。この連結金具では、交差ロープR1、R2の重なり部分を、中間体31と挟持体32、33の各対向面に溝36と溝39並びに溝37と溝40でそれぞれ挟持するように積層し、積層状態でボルト34をボルト孔38、41、42を貫通してナット35を螺合緊締して、交差ロープR1、R2を中間体31と挟持体32、33とで挟持する。
【0005】
図7は、特許文献2に開示されている連結金具(クロスクリップ)を示す。このクロスクリップは、ワイヤロープRを受け入れる受け溝51、52が形成された挟持板53、54と、挟持板53、54間にワイヤロープRの交差部を挟持した状態で、一方の挟持板54に形成された貫通孔に挿入され他方の挟持板53に形成されたネジ孔に螺合されるボルト55とを備え、ボルト55を締め付けることによりワイヤロープRの交差部を結束するようにしている。
【0006】
ところで、上述した従来の連結具は、ボルトを交差ロープの交差面に対して直交方向から挿通させナットで締め付ける構成であるため、連結具を交差ロープの交差部分へ取り付ける時は、挟持部材でロープを挟持した状態で挟持部材のボルト挿通孔にボルトを挿通し、ナットを締め付けて固定連結する必要があり、また連結具を交差ロープの交差部分から取り除く時は、ナットをボルトから取り除き、更にボルトを抜き取ってからでないと挟持部材をロープの交差部分から取り除くことができない。
【0007】
従って、連結具を交差ロープに着脱する都度、挟持部材、ボルト、ナットがバラバラになるため、施工現場でボルトやナットの紛失が起こり易い上に、着脱の作業も時間を要し作業性が悪い。特に施工現場が、特許文献1や2のように落石防止の現場である場合には、ボルトやナットを傾斜地に落とし紛失し易い。また図5や図7に示す形態の場合には、交差ロープ同士が接触しているため、ロープのキンクや摩耗が懸念される。
【特許文献1】特開平10−219630号公報(段落[0014]、[0015]、[0023]、[0024]、図2、図3、図10−12)
【特許文献2】特開平11−140827号公報(段落[0003]、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本出願人は、上記の問題点に鑑み、次の如き交差線状材用連結具を先に提案した(特願2003−174979号参照)。即ち、その交差線状材用連結具とは、中心部にボルト挿通用の貫通孔が形成されたブロック体の一組を、前記貫通孔にボルトを挿通して柱状体に組付けて用いる交差線状材用連結具であって、ブロック体同士の対向面間にボルト挿通用貫通孔を挟んで線状材を収容し得る収容部が交差状に形成されてなるものである。
【0009】
上記提案の交差線状材用連結具によれば、次の如き作用効果を得ることができる。即ち、ボルト・ナットを緩めたり、締めたりすることによって、ボルト挿通用貫通孔の両側に形成された線状材の収容部が開閉でき、緩めて開いた状態で線状材を側面の開放側より収容部に収容し、あるいは収容部から側方へ外すことができる。このようにブロック体同士をボルト・ナットで連結したままで収容部への線状材の着脱ができるので、ボルトやナットの紛失が防げ、また施工もし易く、施工作業の作業性が大きく改善される。また、ボルトとナットの締め付け、あるいは緩める操作方向は、線状材の交差面と略平行な方向になるので、施工の際、ボルトの頭やナットへのスパナなどの工具を取り付け易く、また廻り止めがし易く、この面からも施工作業の作業性が改善される。
【0010】
ところで、ロープ類や棒材あるいは線材などの線状材を交差させて網などを形成する場合、その交差部分における両線状材の線径は必ずしも同径の線状材同士が交差するとは限らず、例えば、落石防止のために縦横に張った主ワイヤロープ(例えば線径14mm)に対して補助ワイヤロープ(例えば線径12mm)を張るような場合には、補助ワイヤロープの端部を主ワイヤロープに巻付けグリップ(例えば線径9mm)を用いて取付けるが、この場合、巻付けグリップを取付けた補助ワイヤロープの端部の線径は約17mmとなる。このような場合、交差部の線径の組合せは14mmと9mm、12mmと12mm、12mmと14mm、17mmと17mm、17mmと12mmなどの組合せが想定される。
【0011】
上記提案の交差線状材用連結具は、交差部の線径が14mmと14mm、12mmと12mmなどのように同一線径同士のワイヤロープ(線状材)の組合せであれば、ブロック体の対向面間の隙間を大きくなるように形成しその隙間を締め代として数mm(例えば2〜3mm)程度の範囲を吸収して施行可能であるが、上記のように線径が異なる線状材の場合には、適用が難しい。
【0012】
本発明は、上述の如き経緯を基に、上記提案の交差線状材用連結具を更に調査研究を重ねた結果、見出したものであって、その目的は、線径が異なる線状材の交差部と線径が同じ線状材の交差部の両方に適用が可能な交差線状材用連結具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明(請求項1)に係る交差線状材用連結具は、中心部にボルト挿通用の貫通孔が形成されたブロック体の一組を、前記貫通孔にボルトを挿通して柱状体に組付けて用いる交差線状材用連結具であって、ブロック体同士の対向面間にボルト挿通用貫通孔を挟んで線状材を収容し得る収容部が交差状に形成されるとともに、収容部の一方の溝形状が他方の溝形状より大きく形成されてなるものである。
【0014】
本発明(請求項2)に係る交差線状材用連結具は、請求項1に記載の交差線状材用連結具において、ブロック体が、その対抗面側がボルト挿通用貫通孔を挟んで交差する傾きで切除され線状材の収容部に形成されてなるものである。
【0015】
本発明(請求項3)に係る交差線状材用連結具は、請求項1又は2に記載の交差線状材用連結具において、収容部の溝形状の断面が、円弧又は台形に形成されてなるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る交差線状材用連結具によれば、1組のブロック体における、線状材を収容し得る収容部の一方の溝形状が他方の溝形状より大きく形成されているので、ブロック体をボルト挿通用の貫通孔を軸に180度回転させて収容部の大きい溝と小さい溝を対向させることにより同じ線径の線状材を収容することができ、線径が異なる線状材の交差部と線径が同じ線状材の交差部の両方の交差部に対して適用できる。
【0017】
また更に、ブロック体同士をボルト・ナットで連結したままで収容部への線状材の着脱ができるので、ブロック体はもとよりボルトやナットの紛失が防止できる。また施工もし易く、施工作業の作業性が大きく改善される。また、ボルトとナットの締め付け、あるいは緩める操作方向は、線状材の交差面と略平行な方向になるので、落石防止などのケーブルの施工の際に、ボルトの頭やナットへのスパナなどの工具が取り付け易く、また廻り止めがし易く、この面からも施工作業の作業性が改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る交差線状材用連結具の説明図であって、aは正面図、bは上面図、cは側面図、図2は、本発明に係るブロック体の説明図であって、aは正面図、bは上面図、cは左側面図、dは右側面図である。
【0019】
連結具1は、左ブロック体2、右ブロック体3及びボルト4、ワッシャ5、ナット6を備えてなる。また、本例では左右ブロック体2、3は同じ形状のものであって、詳細を図2に示す。
【0020】
ブロック体2(3)は、角柱体を基本形状とし、その角柱体の中心部にボルト4を挿通するためのボルト挿通用貫通孔7が形成され、また角柱体の一方の端面は、ボルト挿通用貫通孔7を挟んで略交差する傾きで切除された傾斜面8、9と、傾斜面8に線径の太い線状材R3を収容するための断面円弧状に形成された収容溝10と、傾斜面9に線径の細い線状材R4を収容するための断面円弧状に形成された収容溝11とを有する。
【0021】
そして、連結具1は、図1に示すように、ブロック体2と3の傾斜面8、9を有する側を、ブロック体2の傾斜面8とブロック体3の傾斜面8、ブロック体2の傾斜面9とブロック体3の傾斜面9とがそれぞれ対向するように配置するとともに、ブロック体2と3のボルト挿通用貫通孔7にボルト4を挿通し、ワッシャ5及びナット6を取付け、全体として柱状体に組付けて構成される。このように組付けることで、ボルト4を挟んだ柱状体の両側には交差状に大径の線状材R3と小径の線状材R4を収容するための収容部12、13が形成される。
【0022】
上記構成の連結具1による線状材R3、R4の交差部への取付けは次の要領で行える。即ち、ナット6を緩めブロック体2と3の間隔を開ける。これにより収容部12と13の間隔も開く。この状態で、交差部の線状材R3とR4の間に、収容部12を線状材R3側に収容部13を線状材R4側に位置して装入するとともに、収容部12に線状材R3を収容部13に線状材R4をそれぞれ収容せしめる。この後、ボルト4にナット6を締め込んで取付ける。また、連結具1から線状材R3、R4を外すときは、前記の逆の操作でボルト4に対してナット6を緩めることにより外すことができる。
【0023】
図3は、本発明に係る交差線状材用連結具の別の使用状態の説明図であって、aは正面図、bは上面図、cは側面図である。この図3に示す使用状態は、上記図1が線状材R3とR4が異径の場合であるのに対して同径Rの場合であって、上述のブロック体2と3の何れか一方を、ボルト4を軸中心にして180度回転させ、ブロック体2の傾斜面8の収容溝10とブロック体3の傾斜面9の収容溝11とを対向するように組付けて連結具14とするものである。
【0024】
即ち、連結具14は、図3に示すように、ブロック体2と3の傾斜面8、9を有する側を、ブロック体2の傾斜面9とブロック体3の傾斜面8とがそれぞれ対向するように配置するとともに、ブロック体2と3のボルト挿通用貫通孔7にボルト4を挿通し、ワッシャ5及びナット6を取付け、全体として柱状体に組付けて構成される。このように組付けることで、ボルト4を挟んだ柱状体の両側には交差状に同径の線状材RとRを収容するための収容部15、16が形成される。
【0025】
上記構成の連結具14による線状材R、Rの交差部への取付けは上記連結具1と同様の次の要領で行える。即ち、ナット6を緩めブロック体2と3の間隔を開ける。これにより収容部15と16の間隔も開く。この状態で、交差部の線状材RとRの間に、収容部15を一方の線状材R側に収容部16を他方の線状材R側に位置して装入するとともに、収容部15と16のそれぞれに線状材Rを収容せしめる。この後、ボルト4にナット6を締め込んで取付ける。また、連結具14から線状材R、Rを外すときは、前記の逆の操作でボルト4に対してナット6を緩めることにより外すことができる。
【0026】
ブロック体2と3を、上記連結具1や14のように組付けることにより、例えば、落石防止のために縦横に張った主ワイヤロープ(例えば線径14mm)に対して補助ワイヤロープ(例えば線径12mm)を張るような場合であって、補助ワイヤロープの端部を主ワイヤロープに巻付けグリップ(例えば線径9mm)を用い、この巻付けグリップを取付けた補助ワイヤロープの端部の線径が約17mmとなるような場合には、交差部の線径の組合せは14mmと9mm、12mmと12mm、12mmと14mm、17mmと17mm、17mmと12mmなどの組合せが想定されるが、これら5種類の交差部を、収容溝の組合せが異なる2種類のブロック体2(3)で対応が可能となる。
【0027】
即ち、例えば、17mmと12mm及び12mmと14mmの各組合せの収容溝を形成したブロック体2(3)の連結具1を準備することで、17mmと12mmの連結具1は14mmと9mmにも使え、またこれを180度回転させた連結具14とすることで17mmと17mmにも使用できる。また、12mmと14mmの連結具1は、これを180度回転させた連結具14とすることで12mmと12mmに使用できる。このように、5種類の交差部に対して2種類のブロック体2(3)で対応でき、施行現場への連結具の持ち込み種類を少なくでき、施工作業の作業性が期待される。その上、ブロック体2と3をボルト4とナット6で連結したままで線状材R3とR4及びRとRの交差部に対して着脱ができるので、ボルト4やナット6の紛失はもとよりブロック体2(3)の紛失を防止することができる。また、施工もし易く、施工作業の作業性が大きく改善される。更に、ボルト4に対するナット6の締め付け、あるいは緩める操作は、その操作方向が線状材R3とR4、RとRの交差面と略平行な方向になるので、施工の際、ボルト4の頭やナット6へのスパナなどの工具を取り付け易く、また廻り止めがし易い。
【0028】
なお、上記例では、ブロック体2(3)の傾斜面8、9に、線状材の収容溝10、11として断面円弧状の溝形状を例に説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、例えば断面V字状あるいは多角形状の溝形状、特に図4に示すように台形であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る交差線状材用連結具の説明図であって、aは正面図、bは上面図、cは側面図である。
【図2】本発明に係るブロック体の説明図であって、aは正面図、bは上面図、cは左側面図、dは右側面図である。
【図3】本発明に係る交差線状材用連結具の別の使用状態の説明図であって、aは正面図、bは上面図、cは側面図である。
【図4】本発明に係るブロック体の別の実施形態の上面図である。
【図5】従来の交差部用の連結金具の説明図であって、aは分解斜視図、bは使用状態の断面図である。
【図6】従来の交差部用の連結金具の説明図であって、aは分解斜視図、bは使用状態の平面図、cは使用状態の正面図である。
【図7】従来の交差部用の連結金具の説明図であって、aは正面図、bは平面図である。
【符号の説明】
【0030】
1:連結具 2:左ブロック体 3:右ブロック体
4:ボルト 5:ワッシャ 6:ナット
7:ボルト挿通用貫通孔 8、9:傾斜面 10、11:収容溝
12、13:収容部 14:連結具 15、16:収容部
R、R3、R4:線状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部にボルト挿通用の貫通孔が形成されたブロック体の一組を、前記貫通孔にボルトを挿通して柱状体に組付けて用いる交差線状材用連結具であって、ブロック体同士の対向面間にボルト挿通用貫通孔を挟んで線状材を収容し得る収容部が交差状に形成されるとともに、収容部の一方の溝形状が他方の溝形状より大きく形成されてなることを特徴とする交差線状材用連結具。
【請求項2】
ブロック体が、その対抗面側がボルト挿通用貫通孔を挟んで交差する傾きで切除され線状材の収容部に形成されてなる請求項1に記載の交差線状材用連結具。
【請求項3】
収容部の溝形状の断面が、円弧又は台形に形成されてなる請求項1又は2に記載の交差線状材用連結具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate