説明

交差金具

【課題】 従来の交差金具の問題点を解決して、交差金具の位置調整等の調整に優れるとともに、その調整作業の作業性にも優れた交差金具を提供することにある。
【解決手段】 交差金具10は、第1取付部20と第2取付部30を備える。第1取付部20は、垂下された吊部材又は鋼材を取り付けるために、本体21と本体21の上下2箇所に設けられる係止孔25とを備える。第2取付部30は、振止部材を取り付けるために、本体31と本体31の上下2箇所に設けられる係止孔35とを備える。そして、交差金具10は、垂下された吊部材又は鋼材と振止部材で形成される面を境に第1部材20の本体中央部分22と第2取付部30の本体中央部分32が同一側になるように第1取付部20と第2取付部30を重ね合わせるとともに、第1取付部20と第2取付部30を回動自在に接続したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、垂下された吊部材又は鋼材に振止部材を交差状に連結するため、あるいは垂下された吊部材又は鋼材に設けられる振止部材どうしを交差状に連結するための交差金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
垂下された吊部材又は鋼材に振止部材を交差状に連結するための交差金具に関する先行技術文献としては、特許文献1及び特許文献2に示すものが挙げられる。
【0003】
特許文献1は、図5に示すものであり、所定の電設資材D(図示省略)を吊持すべく、天井スラブ等から吊下されている複数本の吊杆部材B1と、これら複数本の吊杆部材B1相互間に架装される適数本の棒状ぬき部材B2と、吊杆部材B1、ぬき部材B2相互を交差連結させる交差連結金具1とから成り、交差連結金具1は、弾撥性ある金具主板2の長手方向両端近傍部に、金具主板2の弾性に抗して彎曲させたときに吊杆部材B1或いはぬき部材B2のいずれか一方が貫挿され、金具主板2が原状に復原しようとするときに生じる弾性復帰力にて前記部材に圧接する内周縁面3Aを有する取付部3を設け、金具主板2の略中央に設けた平板状連結部4に、吊杆部材B1或いはぬき部材B2のいずれか他方に嵌合するV字形縁面7Aを有する支持溝7が側壁6に切欠形成された断面略溝形の交差支持板5を、その奥底壁8にて回動自在に連結して成ることを特徴とする揺振防止機能を備えた電設資材用吊持装置が開示されている。
【0004】
特許文献2は、図6に示すものであり、一方の棒状体の二箇所に対して弾性復元力で係合保持可能な係合部6を備え、且つ前記両係合部6を互いに近づける側への弾性変形操作で該係合部6が係合解除される形態に屈曲形成されている一対の連結部材5が、互いに逆向き姿勢となる背中合わせで相対回転自在に枢支連結されている棒状体用交差連結具Aが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57 −166809号公報
【特許文献2】特開2009−185940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記する特許文献1及び特許文献2には、それぞれ以下のような問題があった。
(1)特許文献1は、金属主板2に取り付けられているぬき部材B2で、交差支持板5に取り付けられている吊杆部材B1を押圧し、固定する構造となっている。そのため、交差連結金具1で吊杆部材B1及びぬき部材B2を連結支持された後に、吊杆部材B1及びぬき部材B2(特に押圧される吊杆部材B1)のスライドは困難であり、交差連結金具1を取り外して再度取り付ける作業が必要となる。
(2)特許文献2は、この点、連結部材5,5がそれぞれ別々に棒状体3,4と係合しているので、棒状体3,4のスライドは容易であり、棒状体用交差連結具Aの調整(位置調整など)は可能である(同文献明細書[0009])。しかしながら、一対の連結部材5,5が互いに逆向き姿勢となる背中合わせで枢支連結されているため、交差する棒状体3,4で形成される面を境にその両側から調整操作を行わなくてはならず、必ずしも作業性に優れているとは言い難かった。
【0007】
これに対して、本願発明者は、上記特許文献1及び特許文献2の問題点を解決して、交差金具の調整に優れるとともに、その調整作業にも優れたものを提供すべく鋭意試験・研究を行い、本願発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本願発明の第1の発明は、垂下された吊部材又は鋼材に振止部材を交差状に連結するための交差金具であって、垂下された吊部材又は鋼材の長手方向に延びる本体と、本体の上下2箇所に設けられて垂下された吊部材又は鋼材に本体を装着するとともに装着された本体がその弾性復元力で垂下された吊部材又は鋼材を本体中央部分側へ押圧する係止孔を備えた第1取付部と、振止部材の長手方向に延びる本体と、本体の上下2箇所に設けられて振止部材に本体を装着するとともに装着された本体がその弾性復元力で振止部材を本体中央部分側へ押圧する係止孔を備えた第2取付部とを備え、垂下された吊部材又は鋼材と振止部材で形成される面を境に第1部材の本体中央部分と第2取付部の本体中央部分が同一側になるように第1取付部と第2取付部を重ね合わせるとともに、第1取付部と第2取付部を回動自在に接続したことを特徴とする交差金具である。
第2の発明は、垂下された吊部材又は鋼材に設けられる振止部材どうしを交差状に連結するための交差金具であって、一方の振止部材の長手方向に延びる本体と、本体の上下2箇所に設けられて振止部材に本体を装着するとともに装着された本体がその弾性復元力で振止部材を本体中央部分側へ押圧する係止孔を備えた第1取付部と、他方の振止部材の長手方向に延びる本体と、本体の上下2箇所に設けられて振止部材に本体を装着するとともに装着された本体がその弾性復元力で振止部材を本体中央部分側へ押圧する係止孔を備えた第2取付部とを備え、双方の振止部材で形成される面を境に第1部材の本体中央部分と第2取付部の本体中央部分が同一側になるように第1取付部と第2取付部を重ね合わせるとともに、第1取付部と第2取付部を回動自在に接続したことを特徴とする交差金具である。
ここで「垂下された吊部材又は鋼材」としては、例えば、吊りボルト,全ネジ,丸鋼等が挙げられる。
また、「振止部材」としては、全ネジボルト等が挙げられる。
第3の発明は、第2取付部の本体中央部分と係止孔の間に側縁を切り欠いた切欠部を形成したことを特徴とする同交差金具である。
第4の発明は、第2取付部の係止孔を同一方向又は反対方向に形成したことを特徴とする同交差金具である。
【発明の効果】
【0009】
上記した本願発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)本願発明は、第1取付部と第2取付部がそれぞれ別個に垂下された吊部材又は鋼材及び振止部材と係止しているので、垂下された吊部材又は鋼材と振止部材のスライドは容易であり、交差金具の調整(位置調整など)は可能である。
(2)また、本願発明は、垂下された吊部材又は鋼材と振止部材で形成される面を境に第1部材の本体中央部分と第2取付部の本体中央部分が同一側になるように第1取付部と第2取付部を重ね合わせて接続されているので、当該面の片側(反本体中央部分側)からの調整操作だけで交差金具の調整(位置調整など)ができるので、作業性に優れたものとなっている。
(3)垂下された吊部材又は鋼材と振止部材の間に交差金具を配置していないので、交差金具取付時に、垂下された吊部材又は鋼材と振止部材の空間を保つ必要がない。
(4)垂下された吊部材又は鋼材に交差部材を仮止めできる。それにより、交差部材の位置を調整して振止部材を取り付けられたり、取り付けた振止部材の位置を調整したりして、振止部材のたわみを調整できる。
(5)第1取付部と第2取付部は回動自在に接続されており交差角度の調整が容易であるために、垂下された吊部材又は鋼材と振止部材を取り付けた状態で振止部材のたわみを調整できるとともに、垂下された吊部材又は鋼材に取り付けた振止部材をたわみなく他方の部材に取り付けることができる。
(6)第2取付部の本体中央部分と係止孔の間に側縁を切り欠いた切欠部を形成したことで、垂下された吊部材又は鋼材と振止部材を取り付けた状態で第1取付部と第2取付部の交差角度を広げることができる(例えば、45度回転を確保できる)。
(7)第2取付部の係止孔を同一方向又は反対方向に形成したことで、振止部材の取付を容易にする。すなわち、係止孔を同一方向に形成した場合には、第2取付部と平行に位置する振止部材に対して第1取付部を係止孔の開口方向にスライドさせることで、振止部材は係止孔に挿入されてその取付作業が容易となる。また、係止孔を反対方向に形成した場合には、第2取付部と交差状(X状)に位置する振止部材に対して第2取付部を回転させることで、振止部材は係止孔に挿入されてその取付作業が容易となる。
(8)上記(1)〜(7)の効果は、振止部材どうしを交差状に連結するための交差金具においても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本願発明の実施形態を示す説明図(1)。
【図2】本願発明の実施形態を示す説明図(2)。
【図3】本願発明の実施形態を示す説明図(3)。
【図4】本願発明の実施形態を示す説明図(4)。
【図5】特許文献1に開示された先行技術を示す説明図。
【図6】特許文献2に開示された先行技術を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願発明の実施形態を「垂下された吊部材又は鋼材に振止部材を交差状に連結するための交差金具」に基づいて説明する。なお、本願発明は「振止部材どうしを交差状に連結するための交差金具」としても使用できるが、前者と同旨であるためその説明については省略する。
図1〜図4は、本願発明の実施形態を示す説明図である。図1は、本願発明に係る交差金具の全体構造を示す斜視図である。図1に示すように、交差金具10は、第1取付部20と第2取付部30を備える。第1取付部20は、垂下された吊部材又は鋼材(図示省略)の長手方向に延びる本体21と、本体21の上下2箇所に設けられて垂下された吊部材又は鋼材に本体21を装着するとともに装着された本体21がその弾性復元力で垂下された吊部材又は鋼材を本体中央部分22側へ押圧する係止孔25を備える。
【0012】
また、第2取付部30は、振止部材(図示省略)の長手方向に延びる本体31と、本体31の上下2箇所に設けられて振止部材に本体31を装着するとともに装着された本体31がその弾性復元力で振止部材を本体中央部分32側へ押圧する係止孔35を備える。また、本体中央部分32と係止孔35の間に側縁を切り欠いた切欠部36を備える。
【0013】
そして、交差金具10は、垂下された吊部材又は鋼材と振止部材で形成される面を境に第1部材20の本体中央部分22と第2取付部30の本体中央部分32が同一側になるように第1取付部20と第2取付部30を重ね合わせるとともに、第1取付部20と第2取付部30を回動自在に接続したものである。
【0014】
図2は、本願発明に係る交差金具の使用状態を示す斜視図であり、図3は、本願発明に係る交差金具の使用状態を示す断面図(縦)である。図2及び図3に示すように、交差金具10は、第1取付部20で垂下された吊部材又は鋼材40と、第2取付部30で振止部材50とそれぞれ別個に係合している(図3に図示するように、吊部材又は鋼材40と振止部材50の間には接点がない。或いは図示省略するが、吊部材又は鋼材40と振止部材50の間には接点があっても各部材間に圧力がほぼ無い状態である。)。従って、吊部材又は鋼材40および振止部材50のスライドは容易であり、交差金具10の位置調整などの調整は可能である。
【0015】
また、垂下された吊部材又は鋼材40と振止部材50で形成される面を境に第1部材20の本体中央部分22と第2取付部30の本体中央部分32が同一側(図3に図示するA側)になるように第1取付部20と第2取付部30を重ね合わせて接続されている。従って、当該面の片側(反本体中央部分側:図3に図示するB側)からの調整操作だけで交差金具10の位置調整などの調整ができるので、作業性に優れたものとなっている。
【0016】
図4は、本願発明に係る交差金具の使用状態を示す部分拡大図である。第1取付部20と第2取付部30は回動自在となっているが、第2取付部30は、第1取付部20に取り付けられた垂下された吊部材又は鋼材40と当接し、その回動範囲が規制される。しかし、この当接する部分、すなわち本体中央部分32と係止孔35の間に側縁を切り欠いた切欠部36を形成することで、第2取付部30の回動範囲をその分だけ広げることができ、第1取付部20と第2取付部30の交差角度を広範囲に調整できる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本願発明に係る吊り交差金具は、垂下された吊部材又は鋼材に振止部材を交差状に連結するために広く利用できるものであるとともに、振止部材どうしを交差状に連結するためにも広く利用できるものである。
【符号の説明】
【0018】
10 交差金具
20 第1取付部
21 本体
22 本体中央部分
23 本体上下先端部分
25 係止孔
30 第2取付部
31 本体
32 本体中央部分
33 本体上下先端部分
35 係止孔
36 切欠部
40 垂下された吊部材又は鋼材
50 振止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂下された吊部材又は鋼材に振止部材を交差状に連結するための交差金具であって、
垂下された吊部材又は鋼材の長手方向に延びる本体と、本体の上下2箇所に設けられて垂下された吊部材又は鋼材に本体を装着するとともに装着された本体がその弾性復元力で垂下された吊部材又は鋼材を本体中央部分側へ押圧する係止孔を備えた第1取付部と、
振止部材の長手方向に延びる本体と、本体の上下2箇所に設けられて振止部材に本体を装着するとともに装着された本体がその弾性復元力で振止部材を本体中央部分側へ押圧する係止孔を備えた第2取付部とを備え、
垂下された吊部材又は鋼材と振止部材で形成される面を境に第1部材の本体中央部分と第2取付部の本体中央部分が同一側になるように第1取付部と第2取付部を重ね合わせるとともに、第1取付部と第2取付部を回動自在に接続したことを特徴とする交差金具。
【請求項2】
垂下された吊部材又は鋼材に設けられる振止部材どうしを交差状に連結するための交差金具であって、
一方の振止部材の長手方向に延びる本体と、本体の上下2箇所に設けられて振止部材に本体を装着するとともに装着された本体がその弾性復元力で振止部材を本体中央部分側へ押圧する係止孔を備えた第1取付部と、
他方の振止部材の長手方向に延びる本体と、本体の上下2箇所に設けられて振止部材に本体を装着するとともに装着された本体がその弾性復元力で振止部材を本体中央部分側へ押圧する係止孔を備えた第2取付部とを備え、
双方の振止部材で形成される面を境に第1部材の本体中央部分と第2取付部の本体中央部分が同一側になるように第1取付部と第2取付部を重ね合わせるとともに、第1取付部と第2取付部を回動自在に接続したことを特徴とする交差金具。
【請求項3】
第2取付部の本体中央部分と係止孔の間に側縁を切り欠いた切欠部を形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の交差金具。
【請求項4】
第2取付部の係止孔を同一方向又は反対方向に形成したことを特徴とする請求項1,2又は3記載の交差金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−163544(P2011−163544A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30560(P2010−30560)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(391039302)株式会社昭和コーポレーション (10)
【Fターム(参考)】