説明

交流軌道リレー及び付属品ならびに測定方法

【課題】交流軌道リレーの測定用端子への測定用ケーブル接続の容易化。
【解決手段】箱状本体27の後背面29に接続用端子21〜26が配され前面28に雄ねじの測定用端子31〜34が配された交流軌道リレー50において、外筒41が電気絶縁体からなり内筒42が電気良導体からなり内筒42の一端側には測定用端子31〜34の雄ねじに螺合しうる雌ねじ部44が形成されており内筒42の他端側はピンプラグ63に適合したジャック部43になっている筒状アダプタ40を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道の軌道回路に受信機として組み込まれて列車の有無を検知する交流軌道リレーに関し、さらには、それに装着して又は接続して用いる付属品や、それらを使用した受信レベル等の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軌道リレーには交流用と直流用とがあり、交流用は商用周波数など低周波の列車検知用交流信号を流す軌道回路に使用されている(例えば非特許文献1参照)。
そのような交流軌道リレー20について、図面を引用しながら、本願発明の課題の提起に役立つ程度に、説明する。図7は、(a)が軌道回路、(b)が交流軌道リレー20の回路図、(c)が交流軌道リレー20の正面図、(d)が交流軌道リレー20の右側面図、(e)が測定用端子34から絶縁キャップ35を外したところの右側面図、(f)が測定器のケーブルをクリップ13で測定用端子に接続したところの右側面図である。
【0003】
交流軌道リレー20は、軌道11における設置先の区間の一端を送電端としてそこから送信機12にて軌道11に送出された列車検知用交流信号を受信機として該当区間の他端側の受電端で検出するものであり(図7(a)参照)、列車が該当区間に存在しないときは列車検知用交流信号が受信できるのに対し、列車が該当区間に進来したときには列車検知用交流信号が車軸での途中短絡のため受信できないことに基づいて、列車の有無を示す列車検知信号TRを生成し、リレー接点で信号送出するようになっている。
【0004】
しかも、交流軌道リレー20は(図7(b),非特許文献1参照)、他の鉄道信号用リレーと異なり、二元形であるため、列車検知用交流信号の受電線を接続する軌道接続用端子21,22に加えて、局部電源からの給電線を接続する局部電源接続用端子23,24も具えている。さらに、列車検知信号TRをリレー接点で出力するための接点接続用端子25,26に加えて、列車検知用交流信号の受信レベル等を測定するため軌道接続用端子21,22にそれぞれ接続された軌道側測定用端子31,32と、局部電源からの給電の電圧レベル等を測定するため局部電源接続用端子23,24にそれぞれ接続された局部電源側測定用端子33,34も具えている。
【0005】
このような交流軌道リレー20は(図7(c),(d),非特許文献1参照)、やはり他の鉄道信号用リレーと異なり、実用に供しながら測定を行わなければならないため、測定用端子31〜34が箱状の本体27の前面28に配置され本体27から突き出て露呈した植設状態で設けられている。また、接続用端子21〜26が本体27の後背面29に配置されている。そのため、取付面である後背面29を例えば軌道脇の接続箱のジャック板等に取り付けた状態のままで、取付面でない前面28の測定用端子31〜34に対して測定器の探触子を当てることができる。なお、各端子の要部は電気良導体でできている。
【0006】
測定用端子31〜34の要部は立設状態の雄ネジであり(図7(e)参照)、常態ではそれぞれ絶縁キャップ35がねじ止めされているので(図7(c),(d)参照)、測定を行うときは先ず対象の端子たとえば測定用端子34から絶縁キャップ35を外し(図7(e)参照)、露出した測定用端子34の雄ネジ部分を例えばワニ口クリップ13で挟んで測定ケーブル端のクリップ13を測定用端子34に繋ぐことにより(図7(f)参照)、交流軌道リレー20を取り外すことなく交流軌道リレー20を動作させながらでも不都合なくテスターやオシロスコープ等の測定器で信号レベル等を測定することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「鉄道電気技術者のための信号概論 軌道回路」改訂版 社団法人日本鉄道電気技術協会発行、平成14年4月10日、p.60
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、交流軌道リレーの性能測定を現地で行う場合、従来は、測定用端子に測定用ケーブルを接続するに際し、測定用端子の導電性ネジ部を露出させてから、それをケーブル端の導電性クリップにて挟む等のことで、行っていた。
しかしながら、この遣り方では、隣り合っている測定用端子同士をクリップで短絡させてしまうといった不所望な事態を引き起こすことがないよう注意深く測定作業を進めなければならないため、測定作業に熟練するまでは作業の能率が上がらないうえ、例え熟練したとしても測定作業者の精神的な負担が重かった。また、測定の前後に行う絶縁キャップの付け外しに際してネジを緩めたり締めたりするのにも手間が掛かっていた。
そこで、交流軌道リレーの測定用端子に測定用ケーブルを接続するのが容易になるよう工夫することが重要な課題となる。
【0009】
また、上述した交流軌道リレーの性能測定に加えて、列車進来を模擬する動作性能試験まで行うことも多く、その動作性能試験では測定器に代えてスイッチが測定用端子に接続されるが、このスイッチの配線接続に際しても、上述した測定器の接続時と同様の不都合があった。
そこで、交流軌道リレーの測定用端子に測定用ケーブルを接続するのが容易になるよう工夫することに加えて、交流軌道リレーの測定用端子に列車進来模擬試験用スイッチを接続するのも容易になるよう工夫を重ねることが更なる課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の交流軌道リレーは(当初請求項1,解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、箱状本体の取付面に接続用端子が配され非取付面に雄ねじの測定用端子が配された交流軌道リレーにおいて、外筒が電気絶縁体からなり内筒が電気良導体からなり前記内筒の一端側には前記雄ねじに螺合しうる雌ねじが形成されており前記内筒の他端側はピンプラグに適合したジャックになっている筒状アダプタを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の交流軌道リレーは(当初請求項2,解決手段1)、上記の交流軌道リレーであって、前記筒状アダプタが前記雌ねじを前記雄ねじに螺合させた状態で前記測定用端子に組み込まれていることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の筒状アダプタは(当初請求項3,解決手段1)、外筒が電気絶縁体からなり内筒が電気良導体からなり前記内筒の一端側には雌ねじが形成されており前記内筒の他端側はピンプラグに適合したジャックになっている筒状アダプタであって、箱状本体の取付面に接続用端子が配され非取付面に測定用端子が配された交流軌道リレーにおける前記測定用端子の雄ねじに対して前記雌ねじが螺合しうるようになっていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の測定方法は(当初請求項4,解決手段1)、箱状本体の取付面に接続用端子が配され非取付面に雄ねじの測定用端子が配された交流軌道リレーであって既に軌道回路に組み込まれて稼動しているものに対し、外筒が電気絶縁体からなり内筒が電気良導体からなり前記内筒の一端側には前記雄ねじに螺合しうる雌ねじが形成されており前記内筒の他端側はジャックになっている筒状アダプタを追加して、前記雌ねじを前記雄ねじに螺合させることにより前記筒状アダプタを前記測定用端子に組み込んでおくとともに、前記ジャックに適合したピンプラグをリレー側の端部に具えた測定用ケーブルを測定器と前記交流軌道リレーとの接続に使用して、前記ピンプラグを前記ジャックに嵌挿することにより前記測定器と前記交流軌道リレーとの接続を確立してから、前記測定器で測定を行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の測定用ケーブルは(当初請求項5,解決手段3)、箱状本体の取付面に接続用端子が配され非取付面に雄ねじの測定用端子が配された交流軌道リレーにおける前記測定用端子に対して接続するリレー側の端部が、外筒が電気絶縁体からなり内筒が電気良導体からなり前記内筒の一端側には前記雄ねじに螺合しうる雌ねじが形成されており前記内筒の他端側はジャックになっている筒状アダプタにおける前記ジャックに適合したピンプラグを複数具えたリレー側コネクタになっており、前記ピンプラグの配置が前記測定用端子のうち二本以上のものの配置に対応していることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の交流軌道リレーは(当初請求項6,解決手段2)、上記(当初請求項1,2)の交流軌道リレーであって、前記筒状アダプタの前記ジャックに適合したピンプラグに電気絶縁性の頭部を付けた絶縁栓を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の絶縁栓は(当初請求項7,解決手段2)、箱状本体の取付面に接続用端子が配され非取付面に雄ねじの測定用端子が配された交流軌道リレーにおける前記測定用端子に組み込まれる筒状アダプタであって外筒が電気絶縁体からなり内筒が電気良導体からなり前記内筒の一端側には前記雄ねじに螺合しうる雌ねじが形成されており前記内筒の他端側はジャックになっている筒状アダプタにおける前記ジャックに適合したピンプラグに電気絶縁性の頭部を付けたものであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の絶縁栓は(当初請求項8,解決手段3)、上記(当初請求項7)の絶縁栓であって、前記ピンプラグが複数設けられており、前記ピンプラグの配置が前記測定用端子のうち二本以上のものの配置に対応していることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の絶縁栓は(当初請求項9,解決手段4)、上記(当初請求項8)の絶縁栓であって、前記ピンプラグ同士を一時的に短絡しうる手動スイッチを備えたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の中継具は(当初請求項10,解決手段4)、上記(当初請求項9)の絶縁栓の前記頭部に対して前記ピンプラグを延長する形で前記ピンプラグに適合したジャック部を埋設したものであることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の測定用ケーブルは(当初請求項11,解決手段4)、上記(当初請求項5)の測定用ケーブルであって、前記ピンプラグ同士を一時的に短絡しうる手動スイッチを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
このような本発明の交流軌道リレー及び付属品ならびに測定方法にあっては(解決手段1)、交流軌道リレーが、未設のものであれ(当初請求項1)、既設のものであれ(当初請求項4)、その測定用端子に筒状アダプタ(当初請求項3)を組み込むことにより、簡便かつ安価に、測定用端子がネジ式の雄ネジからピンジャック式のジャックに変換された交流軌道リレー(当初請求項2)が出来上がる。ピンジャック式では、測定用ケーブルの接続がピンの抜き差しで容易かつ迅速に行えるうえ、ジャックの外筒が絶縁されていて測定用端子同士の短絡が発生しにくいので、気軽に作業しても的確な結果が得られる。
したがって、この発明によれば、交流軌道リレーの測定用端子に測定用ケーブルを接続する作業を容易に行うことができる。
【0022】
また、本発明の交流軌道リレー(当初請求項6)及び付属の絶縁栓(当初請求項7)にあっては(解決手段2)、交流軌道リレーの測定用端子がネジ式の雄ネジからピンジャック式のジャックに変換されたことに追随して、絶縁性頭部に付けられている係合部がネジ式の雌ネジからピンジャック式のピンプラグになったことにより、測定用端子への着脱を抜き差しにて容易かつ迅速に行うことができる。
したがって、この発明によれば、交流軌道リレーの測定用端子に測定用ケーブルを接続する作業ばかりか、測定中は測定用端子から外しておかなければならない絶縁覆装部材を着脱する作業までも、容易に行うことができる。
【0023】
さらに、本発明の交流軌道リレー付属品(解決手段3)である絶縁栓(当初請求項8)や測定用ケーブル(当初請求項5)にあっては、複数のピンプラグを纏めて挿抜できるので、作業性が一層向上する。
【0024】
また、本発明の交流軌道リレー付属品にあっては(解決手段4)、絶縁栓であれ(当初請求項9)、中継具(当初請求項10)であれ、測定用ケーブルであれ(当初請求項11)、交流軌道リレーの測定用端子のジャックに挿着された複数のピンプラグ同士をスイッチ操作で簡便に短絡させたり絶縁状態に戻したりすることができる。
したがって、この発明によれば、交流軌道リレーの測定用端子に測定用ケーブルを接続する作業に加えて、交流軌道リレーの測定用端子に列車進来模擬試験用スイッチを接続する作業までも、容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1について、交流軌道リレー及び付属品の構造を示し、(a)が筒状アダプタの左端面図と縦断面図と右端面図、(b)がピンプラグの側面図、(c)が交流軌道リレーの正面図、(d)が交流軌道リレーの右側面図、(e)が測定用ケーブルの側面図である。
【図2】本発明の実施例2について、交流軌道リレー及び付属品の構造を示し、(a)が絶縁栓の側面図、(b)が交流軌道リレーの側面図である。
【図3】本発明の実施例3について、交流軌道リレー及び付属品の構造を示し、(a)が絶縁栓の底面図、(b)が交流軌道リレーの底面図である。
【図4】本発明の実施例4について、交流軌道リレー及び付属品の構造を示し、(a)と(b)が絶縁栓の正面図と底面図、(c)と(d)が交流軌道リレーの底面図である。
【図5】本発明の実施例5について、交流軌道リレー及び付属品の構造を示し、(a)が中継具の正面図、(b)と(c)が中継具の底面図、(d)が交流軌道リレーの底面図である。
【図6】本発明の実施例6について、交流軌道リレーの付属品の一つである測定用ケーブルの側面図である。
【図7】従来の交流軌道リレー及び測定方法を示し、(a)が軌道回路、(b)が交流軌道リレーの回路図、(c)が交流軌道リレーの正面図、(d)が交流軌道リレーの右側面図、(e)が測定用端子から絶縁キャップを外したところの右側面図、(f)が測定器のケーブルをクリップで測定用端子に接続したところの右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
このような本発明の交流軌道リレー及び付属品ならびに測定方法について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1〜6により説明する。
図1に示した実施例1は、上述した解決手段1,3(当初請求項1〜4,当初請求項5)を具現化したものであり、図2に示した実施例2は、上述した解決手段2(当初請求項6〜7)を具現化したものであり、図3に示した実施例3は、上述した解決手段3(当初請求項8)を具現化したものである。
【0027】
また、図4に示した実施例4は、上述した解決手段4(出願当初の請求項9)を具現化したものであり、図5に示した実施例5は、上述した解決手段4(出願当初の請求項10)を具現化したものであり、図6に示した実施例6は、上述した解決手段4(出願当初の請求項11)を具現化したものである。
なお、それらの図示に際し従来と同様の構成要素には同一の符号を付して示したので、重複する再度の説明は割愛し、以下、従来との相違点を中心に説明する。
【実施例1】
【0028】
本発明の交流軌道リレー及び付属品の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が筒状アダプタ40の左端面図と縦断面図と右端面図、(b)がピンプラグ63の側面図、(c)が交流軌道リレー50の正面図、(d)が交流軌道リレー50の右側面図、(e)が測定用ケーブル60の側面図である。
【0029】
この交流軌道リレー50が既述した従来の交流軌道リレー20と相違するのは、筒状アダプタ40が追加された点と、それに適合した測定用ケーブル60を交流軌道リレー50と図示しない測定器との接続に使用するようになった点である。
筒状アダプタ40は(図1(a)参照)、外筒41と内筒42とを嵌合固定したような二重筒体であり、外筒41がプラスチック等の電気絶縁体から作られ、内筒42が金メッキ銅管等の電気良導体から作られている。
【0030】
内筒42の一端側(図1(a)では右側)の雌ねじ部44には雌ねじが形成されて、雌ねじ部44は測定用端子31〜34の雄ネジに螺合しうるものとなっている。そのネジは呼び径がM4で長さが8mmである。
内筒42の他端側(図1(a)では左側)のジャック部43は、ピンプラグ63(図1(b)参照)に適合したジャックになっている。ピンプラグ63は、市販品で足り、バナナチップやバナナプラグと呼ばれているピンを採用すれば、ジャック部43の中空は単純なキリ穴で済ませることができる。
【0031】
測定用端子31〜34に対する筒状アダプタ40の装着は、絶縁キャップ35が付いていれば先ずそれを外して雄ネジを露出させ、測定用端子31〜34の雄ネジに筒状アダプタ40の雌ねじ部44を螺合させることで行われる。これにより、交流軌道リレー50は(図1(c),(d)参照)、箱状本体27の後背面29(取付面)に接続用端子21〜26が配され、本体27の前面28(非取付面)に雄ねじの測定用端子31〜34が配され、上述の筒状アダプタ40が雌ねじ部44を測定用端子31〜34の雄ねじに螺合させた状態で測定用端子31〜34に組み込まれ、測定用端子31〜34がネジ式からピンジャック式に変換されたものとなる。
【0032】
測定用ケーブル60は、一本のケーブルに二本の信号線を収めたものであり、そのケーブルの一端部は、測定器の信号入力端子の一対に適合させた測定器側コネクタ61になっており、そのケーブルの他端部は、二本のピンプラグ63を植設したリレー側コネクタ62になっており、このリレー側コネクタ62におけるピンプラグ63の配置は、交流軌道リレー50における軌道側測定用端子31,32や局部電源側測定用端子33,34の配置に対応していて、軌道側測定用端子31,32の筒状アダプタ40,40のジャック部43,43にも局部電源側測定用端子33,34の筒状アダプタ40,40のジャック部43,43にも二本のピンプラグ63を纏めて一緒に挿抜できるものとなっている。
【0033】
この実施例1の交流軌道リレー50と筒状アダプタ40(付属品)と測定用ケーブル60(付属品)について、その使用態様やそれを用いた測定方法を説明する。
【0034】
測定に先立って、図示しない測定器と測定用ケーブル60とを確保し、測定器の信号入力端子に測定用ケーブル60の測定器側コネクタ61を接続しておく。
そして、測定用端子31〜34に筒状アダプタ40を予め装着した交流軌道リレー50を対象として(図1(c),(d)参照)、列車検知用交流信号の受信レベル等を測定するときは、測定用ケーブル60のリレー側コネクタ62を手に持って、そのピンプラグ63,63を交流軌道リレー50の軌道側測定用端子31,32の筒状アダプタ40,40のジャック部43,43に挿着させ、その状態で測定を行う。
【0035】
また、同じ交流軌道リレー50を対象として局部電源の給電レベル等を測定するときは、測定用ケーブル60のリレー側コネクタ62のピンプラグ63,63を交流軌道リレー50の局部電源側測定用端子33,34の筒状アダプタ40,40のジャック部43,43に挿着させ、その状態で測定を行う。
このように、交流軌道リレー50に対する測定用ケーブル60の接続が、ジャック部43に対するピンプラグ63の抜き差しによって行われるので、容易かつ迅速になるうえ、測定用端子同士の不所望な短絡を気にしなくても的確な結果を得ることができる。しかも、二本のピンプラグ63を一回の操作で纏めて挿抜できるので、交流軌道リレー50に対する測定用ケーブル60の接続が一段と容易に而も迅速に行われる。
【0036】
筒状アダプタ40が着脱容易な付属品なので、交流軌道リレー20に筒状アダプタ40を後付けすることにより交流軌道リレー20を交流軌道リレー50に改造してから上述の測定方法を実施することも多い。そのように筒状アダプタ40が交流軌道リレー20に未だ装着されていない場合の態様としては、交流軌道リレー20に筒状アダプタ40を添えてキット(組物)として提供される場合や、交流軌道リレー20が既に現場に設置されて稼動しているところに筒状アダプタ40が追加された場合が挙げられる。
【0037】
後者の筒状アダプタ40追加の場合、先ず、対象になっている稼動中の交流軌道リレー20の測定用端子31〜34から絶縁キャップ35を取り外し、それで露呈した測定用端子31〜34の雄ネジに筒状アダプタ40の雌ねじ部44を螺合させて、測定用端子31〜34に筒状アダプタ40を組み込む。これにより、交流軌道リレー20が稼動を継続したまま交流軌道リレー50に改造される。次に、筒状アダプタ40を装備した交流軌道リレー50については、上述のように測定用ケーブル60と測定器とを使用して列車検知用交流信号の受信レベルや局部電源の給電レベル等を測定する。
【0038】
前者のキット提供の場合は、交流軌道リレー20の取り付け時期と筒状アダプタ40の取り付け時期との先後に応じて更に場合分けされる。交流軌道リレー20を現場に取り付けて稼動させておき、それに後から筒状アダプタ40を取り付ける場合は、上述した筒状アダプタ40を追加する場合に帰する。交流軌道リレー20を現場に取り付ける前に筒状アダプタ40を交流軌道リレー20に取り付けて、交流軌道リレー20を交流軌道リレー50に改造し、それから交流軌道リレー50を現場に取り付けて稼動させた場合は、最初に説明した測定態様に帰する。すなわち、測定用端子31〜34に筒状アダプタ40を予め装着した交流軌道リレー50を対象として受信レベル等を測定するとき、に帰する。
【実施例2】
【0039】
本発明の交流軌道リレー及び付属品の実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図2は、(a)が付属品の一つである絶縁栓70の側面図、(b)が交流軌道リレー50の側面図である。
【0040】
この交流軌道リレー50及び付属品が上述した実施例1のものと相違するのは、絶縁キャップ35に代えて絶縁栓70が装備されている点である。
絶縁栓70は(図2(a)参照)、電気絶縁体から作られた頭部71に対し、筒状アダプタ40のジャック部43に適合している上述のピンプラグ63を、植設状態で付けたものである。
【0041】
この場合(図2(b)参照)、交流軌道リレー50を対象とした測定が行われていない時には、交流軌道リレー50の測定用端子31〜34に装着されている筒状アダプタ40の先端に絶縁栓70を装着しておくことで、測定用端子31〜34の接点部が完全に覆われて雰囲気から遮蔽されるので、不所望な接点部の汚染等を防止することができる。
しかも、絶縁栓70の着脱は、絶縁栓70のピンプラグ63を筒状アダプタ40のジャック部43に対して抜き差しすることで、容易かつ迅速に行うことができる。
【実施例3】
【0042】
本発明の交流軌道リレー及び付属品の実施例3について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図3は、(a)が付属品の一つである絶縁栓73の底面図、(b)が交流軌道リレー50の底面図である。
この交流軌道リレー50及び付属品が上述した実施例2のものと相違するのは、上述した絶縁栓70に代えてピンプラグ63の多い絶縁栓73が装備されている点である。
【0043】
絶縁栓73は(図3(a)参照)、やはり電気絶縁体から作られているが頭部71より大きい頭部74に対し、筒状アダプタ40のジャック部43に適合している上述のピンプラグ63を二本並べて付けたものである。
この絶縁栓73におけるピンプラグ63,63の配置も、上述した測定用ケーブル60のリレー側コネクタ62のピン配置と同じで、交流軌道リレー50における軌道側測定用端子31,32や局部電源側測定用端子33,34の配置に対応している。
【0044】
そのため、軌道側測定用端子31,32の筒状アダプタ40,40のジャック部43,43に対しても、局部電源側測定用端子33,34の筒状アダプタ40,40のジャック部43,43に対しても、二本のピンプラグ63を一回の操作で纏めて挿抜できるので、交流軌道リレー50の測定用端子31〜34の接点部に対する絶縁栓73での覆装作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【実施例4】
【0045】
本発明の交流軌道リレー及び付属品ならびに測定方法の実施例4について、図面を引用して説明する。図4は、(a)と(b)が付属品の一つである絶縁栓76の正面図と底面図、(c)と(d)が交流軌道リレー50の底面図である。
この交流軌道リレー50及び付属品ならびに測定方法が上述した実施例3のものと相違するのは、上述した絶縁栓73に代えてスイッチ内蔵の絶縁栓76が装備されている点である。
【0046】
絶縁栓76は、上述した絶縁栓73の頭部74にスイッチ78を埋め込んだものであるが、スイッチ78の操作子77は手動操作しうるよう頭部74から露出している。スイッチ78は、操作子77の位置に応じて開閉状態の何れかを採るものであり、例えば操作子77を頭部74の中央に位置させると(図4(a)参照)、開状態になって、二本のピンプラグ63同士の絶縁状態を維持するようになっている。これに対し、例えば操作子77を頭部74の端に移動させると(図4(b)参照)、閉状態になって、二本のピンプラグ63同士を短絡させるようになっている。ピンプラグ63同士を一時的に短絡できれば列車進来模擬試験に足りるので、開状態が継続可能であれば閉状態の継続に制約はない。
【0047】
この場合、先ず、絶縁栓76のスイッチ78が開状態であることを確認してから、軌道側測定用端子31,32の筒状アダプタ40,40に絶縁栓76を装着しておくが(図4(c)参照)、その着脱もピンプラグの抜き差しで容易かつ迅速に行うことができる。そして、所望の時に操作子77を操作してスイッチ78を閉状態に切り替えることにより(図4(d)参照)、軌道側測定用端子31,32を短絡させて、軌道接続用端子21,22の短絡ひいては列車の進来による列車検知用交流信号の受信中断を模擬することができるので、スイッチ78を列車進来模擬試験用スイッチとして使用することができる。さらに、局部電源側測定用端子33,34に測定用ケーブル60のリレー側コネクタ62を繋いでおくことで容易に、列車進来時の局部電源の変動まで調べることができる。
【実施例5】
【0048】
本発明の交流軌道リレー及び付属品ならびに測定方法の実施例5について、図面を引用して説明する。図5は、(a)が付属品の一つである中継具80の正面図、(b)と(c)が中継具80の底面図、(d)が交流軌道リレー50の底面図である。
この交流軌道リレー及び付属品ならびに測定方法が上述した実施例1〜4のものと相違するのは、中継具80が付属している点である。
【0049】
中継具80は(図5(a)〜(c)参照)、上述した絶縁栓76の頭部74に対して、ピンプラグ63,63を延長する形で、ピンプラグ63に適合したジャック部82,83を、埋設したものである。言い換えると、頭部74と同様の頭部81に二本の導電性ジャック部82,83を平行状態で埋め込み、ジャック部82,83それぞれの先端にピンプラグ63の基端部を連結固定し、さらに操作子77を露出させた状態でスイッチ78を内蔵させたものである。
【0050】
ピンプラグ63,63に加えてジャック部82,83も、その配置が軌道側測定用端子31,32や局部電源側測定用端子33,34の配置に対応している。また、頭部81における操作子77の設置面は、ピンプラグ63の植設面でもなく、その対向面でもない、他の面になっている。さらに、スイッチ78は、上述した絶縁栓76のときと同様、手動操作される操作子77の位置に応じて開閉状態の何れかを採り、開状態では二本のピンプラグ63同士を絶縁させ、閉状態では二本のピンプラグ63同士を短絡させるので、列車進来模擬試験用スイッチとして使用可能なものとなっている。
【0051】
この場合(図5(d)参照)、交流軌道リレー50の軌道側測定用端子31,32の筒状アダプタ40,40及び/又は局部電源側測定用端子33,34の筒状アダプタ40,40に中継具80を装着すると、軌道側測定用端子31,32が列車進来模擬試験用スイッチを装備した状態で長さが延長されたものとなり、局部電源側測定用端子33,34は局部電源の給電線の短絡障害の模擬試験用スイッチを装備した状態で長さが延長されたものとなる。さらに、中継具80のジャック部82,83が、筒状アダプタ40のジャック部43の代わりに、測定用ケーブル60のピンプラグ63を差し込む箇所となる。
【0052】
そして、中継具80のジャック部82,83に測定用ケーブル60のリレー側コネクタ62のピンプラグ63,63を差し込んで交流軌道リレー50と測定器とを測定用ケーブル60で接続することにより、列車検知用交流信号の受信レベル等を測定することも、局部電源の給電レベル等を測定することも、列車進来時の列車検知用交流信号の受信中断の模擬とそれによる局部電源の変動測定も、局部電源の給電線の短絡障害の模擬試験も、中継具80のスイッチ78の操作子77を操作することで自在に切り替えて速やかに実行することができる。しかも、その測定や試験に先立つ準備や後始末といった付随作業までもピン挿抜で容易かつ迅速に行うことができる。
【実施例6】
【0053】
図6に側面図を示した本発明の測定用ケーブル90は、交流軌道リレー50の付属品の一つであって、上述した実施例1の測定用ケーブル60を更に改良したものである。
この測定用ケーブル90が測定用ケーブル60と相違するのは、リレー側コネクタ62がスイッチ78を内蔵したリレー側コネクタ91になっている点である。スイッチ78は、上述したものと同様、リレー側コネクタ91の二本のピンプラグ63同士を操作子77の操作に応じて一時的に短絡しうる手動スイッチであり、操作子77は操作可能に露呈した状態でリレー側コネクタ91に装備されている。
【0054】
この場合、軌道側測定用端子31,32に筒状アダプタ40を装着した交流軌道リレー50を対象として、その軌道側測定用端子31,32の筒状アダプタ40,40のジャック部43,43に測定用ケーブル90のリレー側コネクタ91のピンプラグ63,63を差し込んで、交流軌道リレー50と測定器とを測定用ケーブル90で接続することにより、列車検知用交流信号の受信レベル等の測定も、列車進来時の列車検知用交流信号の受信中断の模擬試験も、操作子77の切り替え操作で速やかに済ませることができる。その準備や後始末までもピン挿抜で容易かつ迅速に行うことができる。
【0055】
また、局部電源側測定用端子33,34に筒状アダプタ40を装着した交流軌道リレー50を対象として、その局部電源側測定用端子33,34の筒状アダプタ40,40のジャック部43,43に測定用ケーブル90のリレー側コネクタ91のピンプラグ63,63を差し込んで、交流軌道リレー50と測定器とを測定用ケーブル90で接続することにより、局部電源の給電レベル等の測定も、局部電源の給電線の短絡障害の模擬試験も、操作子77の切り替え操作で速やかに済ませることができる。さらに、その準備や後始末までもピン挿抜で容易かつ迅速に行うことができる。
【0056】
[その他]
なお、上記の各実施例では、ジャック部43が固いのに対してピンプラグ63が径方向変形の容易なものになっていたが、嵌挿容易で電気接続確実なものであれば、逆であっても良く、双方が径方向変形容易であっても良く、製造コスト基準等で選択すれば良い。
また、交流軌道リレー50の測定用端子31〜34や,それに装着される筒状アダプタ40,測定用ケーブル60のリレー側コネクタ62におけるピンプラグ63の支持部を、例えば赤色や黒色で塗り分けたり、さらには他の色も加えて色分けすることにより、より使い易くすることができる。
さらに、測定用ケーブル60,90のリレー側コネクタ62,91や、絶縁栓73,76、中継具80に装備されているピンプラグ63は、二本より多くても良い。
【符号の説明】
【0057】
11…軌道、12…送信機、13…ワニ口クリップ、
20…交流軌道リレー、
21,22…軌道接続用端子、
23,24…局部電源接続用端子、
25,26…接点接続用端子、27…本体(箱部)、
28…前面(非取付面)、29…後背面(取付面)、
31〜34…測定用端子、35…絶縁キャップ、
40…筒状アダプタ、41…外筒、
42…内筒、43…ジャック部、44…雌ねじ部、
50…交流軌道リレー、60…測定用ケーブル、
61…測定器側コネクタ、62…リレー側コネクタ、
63…ピンプラグ(バナナチップ,バナナプラグ)、
70…絶縁栓、71…頭部、73…絶縁栓、74…頭部、
76…絶縁栓、77…操作子、78…スイッチ、
80…中継具、81…頭部、82,83…ジャック部、
90…測定用ケーブル、91…リレー側コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状本体の取付面に接続用端子が配され非取付面に雄ねじの測定用端子が配された交流軌道リレーにおいて、外筒が電気絶縁体からなり内筒が電気良導体からなり前記内筒の一端側には前記雄ねじに螺合しうる雌ねじが形成されており前記内筒の他端側はピンプラグに適合したジャックになっている筒状アダプタを備えたことを特徴とする交流軌道リレー。
【請求項2】
前記筒状アダプタが前記雌ねじを前記雄ねじに螺合させた状態で前記測定用端子に組み込まれていることを特徴とする請求項1記載の交流軌道リレー。
【請求項3】
外筒が電気絶縁体からなり内筒が電気良導体からなり前記内筒の一端側には雌ねじが形成されており前記内筒の他端側はピンプラグに適合したジャックになっている筒状アダプタであって、箱状本体の取付面に接続用端子が配され非取付面に測定用端子が配された交流軌道リレーにおける前記測定用端子の雄ねじに対して前記雌ねじが螺合しうるようになっていることを特徴とする筒状アダプタ。
【請求項4】
箱状本体の取付面に接続用端子が配され非取付面に雄ねじの測定用端子が配された交流軌道リレーであって既に軌道回路に組み込まれて稼動してものに対し、外筒が電気絶縁体からなり内筒が電気良導体からなり前記内筒の一端側には前記雄ねじに螺合しうる雌ねじが形成されており前記内筒の他端側はジャックになっている筒状アダプタを追加して、前記雌ねじを前記雄ねじに螺合させることにより前記筒状アダプタを前記測定用端子に組み込んでおくとともに、前記ジャックに適合したピンプラグをリレー側の端部に具えた測定用ケーブルを測定器と前記交流軌道リレーとの接続に使用して、前記ピンプラグを前記ジャックに嵌挿することにより前記測定器と前記交流軌道リレーとの接続を確立してから、前記測定器で測定を行うことを特徴とする測定方法。
【請求項5】
箱状本体の取付面に接続用端子が配され非取付面に雄ねじの測定用端子が配された交流軌道リレーにおける前記測定用端子に対して接続するリレー側の端部が、外筒が電気絶縁体からなり内筒が電気良導体からなり前記内筒の一端側には前記雄ねじに螺合しうる雌ねじが形成されており前記内筒の他端側はジャックになっている筒状アダプタにおける前記ジャックに適合したピンプラグを複数具えたリレー側コネクタになっており、前記ピンプラグの配置が前記測定用端子のうち二本以上のものの配置に対応していることを特徴とする測定用ケーブル。
【請求項6】
前記筒状アダプタの前記ジャックに適合したピンプラグに電気絶縁性の頭部を付けた絶縁栓を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された交流軌道リレー。
【請求項7】
箱状本体の取付面に接続用端子が配され非取付面に雄ねじの測定用端子が配された交流軌道リレーにおける前記測定用端子に組み込まれる筒状アダプタであって外筒が電気絶縁体からなり内筒が電気良導体からなり前記内筒の一端側には前記雄ねじに螺合しうる雌ねじが形成されており前記内筒の他端側はジャックになっている筒状アダプタにおける前記ジャックに適合したピンプラグに電気絶縁性の頭部を付けたものであることを特徴とする絶縁栓。
【請求項8】
前記ピンプラグが複数設けられており、前記ピンプラグの配置が前記測定用端子のうち二本以上のものの配置に対応していることを特徴とする請求項7記載の絶縁栓。
【請求項9】
前記ピンプラグ同士を一時的に短絡しうる手動スイッチを備えたことを特徴とする請求項8記載の絶縁栓。
【請求項10】
請求項9記載の絶縁栓の前記頭部に対して前記ピンプラグを延長する形で前記ピンプラグに適合したジャック部を埋設したものであることを特徴とする中継具。
【請求項11】
前記ピンプラグ同士を一時的に短絡しうる手動スイッチを備えたことを特徴とする請求項5記載の測定用ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−102092(P2011−102092A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257921(P2009−257921)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【出願人】(000207470)大同信号株式会社 (83)
【Fターム(参考)】