説明

交通信号制御システム及び信号制御方法

【課題】交差点に設置された各信号灯器を駆動するSSUと該交差点の交通信号を制御する制御装置とが無線通信によって接続された交通信号制御システムにおける信頼性及び安全性の向上。
【解決手段】交通信号制御システム1では、信号灯器10それぞれの近傍に該信号灯器10を駆動対象とする灯器駆動部20が設けられ、各灯器駆動部20と該交差点の交通信号を制御する制御装置30の間が無線通信で接続されている。制御装置30は、信号灯器10の信号表示指令を含む指令パケットを各灯器駆動部20に同報送信する。各灯器駆動部20は、受信した指令パケットの複製データを含む応答パケットを、定められた順序で、順次、制御装置30及び他の各灯器駆動部20に同報通知する。また、灯器駆動部20は、制御装置30から受信した指令パケット或いは他の灯器駆動部20から受信した応答パケットに含まれる信号表示指令に従って、駆動対象の信号灯器10の信号灯を点灯させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通信号制御システム及び信号制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点における交通整理のための交通信号制御システムでは、交差点に設置された複数の信号灯器と、これらの信号灯器の信号表示を制御する制御装置とを備えて構成される。制御装置は、各信号灯器の信号灯を駆動するSSU(ソリッド・ステート・リレー・ユニット:SSRユニット)を内蔵している。そして、制御装置と各信号灯器との間には、信号灯器の信号灯を制御するための信号ケーブルが配線される。しかし、特に都市部においては、設置される信号灯器の数の増加や、制御装置と信号灯器との距離が長くなることから、ケーブルの設置にかかる費用や工期等の面で問題があった。
【0003】
そこで、近年では、制御装置に内蔵されていたSSUを制御装置から分離させ、対応する信号灯器の近傍に設置するとともに、各SSUと制御装置との通信を無線通信によって実現し、制御装置と信号灯器との間の配線を不要とした構成が知られている。これにより、設置工事が容易となる、配線の断線が無いために災害時等の影響が少ないといった利点が得られる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−46682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、SSUを制御装置から分離させてこれらの間を無線通信とした構成では、安全性や信頼性の低下という問題が生じ得る。無線通信では、有線通信に比較して通信遅延や通信エラーが生じやすい。交通信号制御では、1つの交差点における各信号灯器の信号表示の切り替えを同期させる必要があるが、通信遅延によって各信号灯器間の同期のずれが生じたり、或いは、通信エラーによって信号表示の切り替えが行われないといった事態が生じるおそれがある。これは、車両や歩行者の安全な通行の確保といった面から非常に問題となる。また、信号灯器の機械的な故障等によって、例えば1つの信号灯器において複数の信号灯が点灯したり、交差点で異方向の信号灯器が同時に青表示となるといった信号表示の異常が生じることがあるが、これらの異常を速やかに検出し対処する必要がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、交差点に設置された各信号灯器を駆動するSSUと該交差点の交通信号を制御する制御装置とが無線通信によって接続された交通信号制御システムにおける信頼性及び安全性の向上を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の発明は、
交差点に係る各信号灯器の信号制御を司る信号制御装置と、前記信号灯器を駆動する個別の灯器駆動部とが無線通信で接続された交通信号制御システムであって、
前記信号制御装置は、
信号表示指令を含む指令情報を、全ての前記灯器駆動部に所定時間間隔で同報送信する指令送信手段を備え、
前記灯器駆動部それぞれは、
前記信号制御装置から受信した指令情報に含まれる信号表示指令に従って、自灯器駆動部が駆動している信号灯器の信号表示を制御する表示制御手段と、
前記信号制御装置から受信した指令情報の複製データを含む応答情報を、各灯器駆動部の送信タイミングが重ならないように前記所定時間間隔を時分割して定められた送信タイミングで、前記信号制御装置及び他の灯器駆動部に同報送信する応答送信手段と、
を備えるとともに、
前記表示制御手段が、他の灯器駆動部から受信した前記複製データに含まれる信号表示指令に従って、自灯器駆動部が駆動している信号灯器の信号表示を制御する手段を有している、
交通信号制御システムである。
【0007】
また、他の発明として、
交差点に係る各信号灯器の信号制御を司る信号制御装置と、前記信号灯器を駆動する個別の灯器駆動部とが無線通信で接続された交通信号制御システムにおける信号制御方法であって、
前記信号制御装置が、信号表示指令を含む指令情報を、全ての前記灯器駆動部に所定時間間隔で同報送信する指令送信ステップと、
前記灯器駆動部それぞれが、前記信号制御装置から受信した指令情報に含まれる信号表示指令に従って、自灯器駆動部が駆動している信号灯器の信号表示を制御する第1の表示制御ステップと、
前記灯器駆動部それぞれが、前記信号制御装置から受信した指令情報の複製データを含む応答情報を、各灯器駆動部の送信タイミングが重ならないように前記所定時間間隔を時分割して定められた送信タイミングで、前記信号制御装置及び他の灯器駆動部に同報送信する応答送信ステップと、
前記灯器駆動部それぞれが、他の灯器駆動部から受信した前記複製データに含まれる信号表示指令に従って、自灯器駆動部が駆動している信号灯器の信号表示を制御する第2の表示制御ステップと、
を含む信号制御方法を構成しても良い。
【0008】
この第1の発明等によれば、信号制御装置と、各信号灯器を駆動する灯器駆動部とが無線通信で接続された交通信号制御システムにおいて、各灯器駆動部は、信号制御装置から受信した複製データを含む応答情報を、信号制御装置及び他の灯器駆動部に同報送信する。つまり、各灯器駆動部は、信号制御装置からの指令情報に加えて、他の灯器駆動部から送信される応答情報をも受信している。これにより、灯器駆動部が制御装置からの指令情報を受信できなかった場合にも、他の灯器駆動部からの応答情報を受信していることから、この応答情報に含まれる信号表示指令に従って信号灯器の信号表示を制御できる。つまり、次の指令情報の受信を待つことなく、速やかに、信号表示指令に従った信号灯器の信号表示を行うことができ、安全性を高めた交通信号制御が実現される。
【0009】
第2の発明として、第1の発明の交通信号制御システムであって、
前記灯器駆動部それぞれは、
自灯器駆動部が駆動している信号灯器の現在の表示状態を検出する表示状態検出手段と、
前記信号表示指令と前記検出された現在の表示状態とに基づいて、自灯器駆動部が駆動している信号灯器における表示異常を検出する表示異常検出手段と、
を更に備えた交通信号制御システムを構成しても良い。
【0010】
この第2の発明によれば、灯器駆動部では、信号制御装置から受信した信号表示指令と、駆動している信号灯器の現在の表示状態とに基づいて、信号灯器の表示異常が検出される。従って、信号灯器において自身の表示異常を判断することが可能となる。
【0011】
第3の発明として、第1又は第2の発明の交通信号制御システムであって、
前記灯器駆動部それぞれは、
前記信号制御装置から前記指令情報を最後に受信してからの経過時間と、前記所定時間間隔とに基づいて通信異常を検出する通信異常検出手段を更に備えた交通信号制御システムを構成しても良い。
【0012】
この第3の発明によれば、灯器駆動部では、信号制御装置から指令情報を最後に受信してからの経過時間と、信号制御装置における指令情報を送信する時間間隔とに基づいて、通信異常が検出される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[全体構成]
図1は、本実施形態の交通信号制御システム1の設置例を示す図である。同図によれば、交通信号制御システム1は、交差点毎に設置・構成され、複数(同図では、4台)の信号灯器10と、信号灯器10それぞれを駆動する灯器駆動部20と、制御装置30とを備えて構成される。灯器駆動部20それぞれと制御装置30とは、SS(Spread Spectrum)無線によって通信可能となっている。
【0014】
信号灯器10は、車両用であり、交差点の所定位置に設置された柱の上方に取り付けられている。灯器駆動部20は、駆動対象となる信号灯器10の近傍に取り付けられる。例えば、信号灯器10に隣接して取り付けられたり、信号灯器10に内蔵されたり、或いは、信号灯器10が取り付けられた柱の内部に取り付けられる。
【0015】
制御装置30は、例えば信号灯器10が取り付けられた何れかの柱の下方やその近傍に設置され、自交差点にかかる交通信号全体を制御する。具体的には、制御装置30は、灯器駆動部20それぞれに対して、対応する信号灯器10の信号表示を指示する信号表示指令を送信する。そして、灯器駆動部20では、受信した信号表示指令に従って、駆動対象の信号灯器10を駆動し、各灯色の点灯や消灯等を制御する。なお、本実施形態における信号制御方式は、定周期制御であるとする。
【0016】
なお、同図では、4つの交通路で構成される十字交差点を対象とし、4つの車両用の信号灯器10が設置される場合を示しているが、交差点の形状や信号灯器10の数はこれに限らないし、更に、歩行者用の信号灯器が設置されることにしても良い。
【0017】
[通信方式]
各灯器駆動部20と制御装置30との間の通信手順について説明する。図2は、各灯器駆動部20と制御装置30との間の通信手順を説明する図である。同図では、横軸を時刻tとして、各灯器駆動部20制御装置30及びそれぞれのデータの送信タイミングを示している。
【0018】
つまり、制御装置30からは、指令情報である指令パケット40が、全ての灯器駆動部20に対して同報送信される。この指令パケット40の送出は、所定の送信時間間隔で繰り返し行われる。そして、灯器駆動部20からは、指令パケット40の受信後、所定の送信待ち時間Twが経過した後、応答情報である応答パケット50(50−1,50−2,・・・)が、制御装置30及び他の灯器駆動部20それぞれに対して同報送信される。
【0019】
送信待ち時間Tw(Tw1,Tw2,・・・)は、灯器駆動部20からの応答パケット50の送信タイミングを指定する時間であり、灯器駆動部20毎に、指令パケット40の受信時点からの経過時間として予め定められている。この送信待ち時間Twは、各灯器駆動部20の応答パケット50の送信タイミングが重ならないように、すなわち同時に複数の灯器駆動部20から応答パケット50が送信されることがないように、各灯器駆動部20による応答パケット50の送信順序や、応答パケット50のデータ長、無線通信による通信速度等をもとに定められる。
【0020】
そして、制御装置30からの指令パケット40の送信時間間隔は、全ての灯器駆動部20からの応答パケット50の送信が完了するのに充分な時間間隔として定められる。また、この送信時間間隔は数百ms程度であり、交通信号制御における各ステップ(階梯)の長さよりも充分短い。つまり、1ステップ中に複数回の指令パケット40の送信が行われることになる。
【0021】
図3は、この通信手順に従ったデータ送受信の一例を示す図である。同図(a)に示すように、先ず、制御装置30が、指令パケット40を、灯器駆動部20−1〜20−4それぞれに同報送信する。つまり、各灯器駆動部20−1〜20−4では、この指令パケット40を受信する。
【0022】
すると、同図(b)に示すように、灯器駆動部20−1が、応答パケット50−1を、制御装置30及び他の灯器駆動部20−2〜20−4それぞれに同報送信する。つまり、制御装置30及び灯器駆動部20−2〜20−4それぞれは、灯器駆動部20−1からの応答パケット50−1を受信する。
【0023】
次いで、同図(c)に示すように、灯器駆動部20−2が、応答パケット50−2を、制御装置30及び他の灯器駆動部20−1,20−3,20−4それぞれに同報送信する。つまり、制御装置30及び灯器駆動部20−1,20−3,20−4それぞれは、灯器駆動部20−2からの応答パケット50−2を受信する。続く灯器駆動部20−3,20−4についても同様である。
【0024】
このように、制御装置30では、指令パケット40を送出すると、これに応答して灯器駆動部20それぞれから送信される応答パケット50を、順次受信することになる。また、各灯器駆動部20では、指令パケット40を受信すると、これに応答して他の灯器駆動部20それぞれから送信される応答パケット50も、順次受信することになる。
【0025】
図4は、制御装置30から送信される指令パケット40のデータ構成の一例を示す図である。同図によれば、指令パケット40は、ヘッダ部及びデータ部から成る。ヘッダ部には、該パケットの種類(種別)を示すデータ(同図では、「指令」)が格納される。また、データ部には、信号表示指令と、異常復帰指令とが格納される。信号表示指令は各信号灯器10における各灯色の点灯を指示するデータであり、本実施形態では、ステップカウンタ値(階梯番号)が格納される。また、異常復帰指令は、信号灯器10や灯器駆動部20において発生した動作異常に対する復帰指令の有無を表すフラグデータである。
【0026】
図5は、灯器駆動部20から送信される応答パケット50のデータ構成の一例を示す図である。同図によれば、応答パケット50は、ヘッダ部及びデータ部から成る。ヘッダ部には、該パケットの種類を示すデータ(同図では、「応答」)が格納される。また、データ部には、直前に受信した指令パケット40の複製データ51、及び、該当する信号灯器10に関するデータが格納される。信号灯器10に関するデータには、該信号灯器10の識別番号と、現在の表示状態と、動作異常の有無とが含まれる。表示状態とは、各灯色(青(G)、黄(Y)及び赤(R))の点灯や消灯、点滅といった点灯状態である。動作異常の有無は、タイムアウトといった通信異常や、二重現示といった表示異常の発生有無である。
【0027】
このように、応答パケット50には、指令パケット40の内容が含まれている。また、ある灯器駆動部20からの応答パケット50は、他の全ての灯器駆動部20にも同報送信される。これにより、ある灯器駆動部20において、制御装置30からの指令パケットが受信できなくとも、他の灯器駆動部20からの応答パケット50を受信することによって、制御装置30からの信号表示指令を取得することができる。
【0028】
[機能構成]
図6は、灯器駆動部20の機能構成を示すブロック図である。同図によれば、灯器駆動部20は、機能的には、処理部210と、無線通信部220と、リレー部230と、電源部240と、記憶部250と、二重現示検出回路260とを有して構成される。
【0029】
処理部210は、例えばCPUで実現され、灯器駆動部20の全体制御を行う。また、処理部210は、灯器制御プログラム251に従った灯器制御処理を行って、駆動対象の信号灯器10を駆動する。具体的には、制御装置30から指令パケット40を受信すると、受信した指令パケット40に含まれる信号表示指令に従って、駆動対象の信号灯器10の信号表示を制御する。すなわち、灯色テーブル252に従って、指令パケット40に含まれるステップカウンタ値に対応する信号灯器10の灯色を点灯させる。
【0030】
図7は、灯色テーブル252のデータ構成の一例を示す図である。同図によれば、灯色テーブル252は、ステップカウンタ値252aそれぞれについて、灯色それぞれの点灯252bを対応付けて格納している。
【0031】
なお、灯器駆動部20に定められる灯色テーブル252は、該当する交差点に定められた現示階梯表を実現するように定められる。図8に、現示階梯表の一例を示す。同図に示すように、現示階梯表は、交差点における全ての信号灯器10の表示状態の組合せを規定したデータテーブルである。
【0032】
また、他の灯器駆動部20からの応答パケット50を受信したときも、同様に信号灯器10の表示制御を行う。すなわち、応答パケット50に含まれる複製データ51の信号表示指令に従って、駆動対象の信号灯器10の灯色を更新する。
【0033】
また、処理部210は、制御装置30から指令パケット40を受信すると、この指令パケット40の受信時点から所定の送信待ち時間Twが経過した後、応答パケット50を生成し、制御装置30及び他の全ての灯器駆動部20それぞれに対して同報送信する。このとき、応答パケット50には、直前に受信した指令パケット40の複製データとともに、駆動対象の信号灯器10の識別番号や現在の表示状態、動作異常の発生有無を含める。また、信号灯器10の表示状態の検出は、リレー部230から該信号灯器10の各灯色のLEDに供給される交流電圧を検出することで行う。また、動作異常の発生有無は、表示異常の発生有無を示す表示異常フラグ、及び、通信異常の発生有無を示す通信異常フラグそれぞれの設定値から判断する。なお、表示異常及び通信異常の発生有無の判定については、後述する。
【0034】
また、処理部210は、制御装置30からの指令パケット40の不達を検出することで、「通信異常」の発生を判断する。すなわち、前回の指令パケット40の受信から、所定の受信監視時間Tgが経過しても次の指令パケット40が受信されない場合、「タイムアウト」が発生したと判断する。そして、このタイムアウトが所定回数(例えば、2回)連続して発生した場合、「通信異常」が生じたと判断する。通信異常が生じたと判断すると、駆動対象の信号灯器10を強制的に滅灯(消灯)させる。また、通信異常フラグを「1」に設定する。この通信異常は、その後に指令パケット40が受信されると解除される。
【0035】
また、処理部210は、二重現示検出回路260による「二重現示」の検出によって「表示異常」の発生を判断する。二重現示とは、1つの信号灯器10において複数の灯色が点灯することである。表示異常が生じたと判断すると、駆動対象の信号灯器10を強制的に滅灯させる。また、表示異常フラグを「1」に設定する。この表示異常は、制御装置30から異常復旧指令がなされるまで解除されず、異常復旧指令がなされることで解除される。
【0036】
二重現示検出回路260は、制御装置30からの信号表示指令によって点灯させるとして指示された灯色(指令灯色)と、信号灯器10において現在点灯している灯色とをもとに、二重現示の発生を検出する。
【0037】
図9は、二重現示検出回路260における二重現示の検出理論を示す図である。同図に示すように、二重現示検出回路260は、指令灯色と現在の点灯灯色とが異なるときに、二重現示の発生可能性有りと検出する。すなわち、厳密には二重現示の発生そのものを検出しているわけではなく、フェールセーフに鑑みて、二重現示の可能性を検出し、処理部210は、二重現示の可能性が検出されることで表示異常が生じたと判断している。
【0038】
なお、二重現示検出回路260による二重現示の検出を、処理部210がソフトウェア的に行うことにしても良い。この場合、図9に示した検出理論をデータテーブル化した二重現示検出テーブル253を用意しておき、この二重現示検出テーブル253に従って二重現示の発生可能性を検出する。
【0039】
図6に戻り、無線通信部220は、SS無線通信を行う無線通信装置であり、外部装置(主に、制御装置30)との間の無線通信を制御する。
【0040】
リレー部230は、電源部240から信号灯器10の各灯色(青、黄及び赤)のLEDに供給される直流電圧をオン/オフする半導体リレーを有する。各半導体リレーは、処理部210の制御によってオン/オフされる。
【0041】
電源部240は、商用電源及び太陽電池を併用した直流電源であり、商用電源はバックアップとして用いられる。すなわち、太陽電池による不足分を、商用電源のAC100Vを直流変換した直流電力によって補う。
【0042】
記憶部250は、例えばICメモリやハードディスク等で実現され、処理部210に灯器駆動部20を統合的に制御させるためのシステムプログラムや、各種機能を実現するためのプログラムやデータ等を記憶するとともに、処理部210の作業領域として用いられる。本実施形態では、記憶部250には、プログラムとして灯器制御プログラム251が記憶されるとともに、データとして、灯色テーブル252と、二重現示検出テーブル253とが記憶される。
【0043】
図10は、制御装置30の機能構成を示すブロック図である。同図によれば、制御装置30は、入力部310と、処理部320と、表示部330と、音声出力部340と、無線通信部350と、電源部360と、記憶部370とを有して構成される。
【0044】
入力部310は、例えばキーボードやマウス、プッシュボタン、タッチパネル等の入力装置で実現され、管理者の操作に応じた操作信号を処理部320に出力する。
【0045】
処理部320は、例えばCPUで実現され、制御装置30の全体制御を行う。また、処理部320は、交通信号制御プログラム371に従った交通信号制御処理を行って、対象の交差点における交通信号を制御する。具体的には、定められた送出時間間隔で、指令パケット40を生成し、灯器駆動部20それぞれに対して同報送信する。
【0046】
また、処理部320は、灯器駆動部20からの応答パケット50を受信すると、受信した応答パケット50をもとに、該当する信号灯器10の表示状態や動作異常の発生有無を管理する。各信号灯器10の表示状態や動作状態は、灯器管理データ372にて管理する。
【0047】
図11は、灯器管理データ372のデータ構成の一例を示す図である。同図によれば、灯器管理データ372は、制御対象の信号灯器10それぞれについて、灯器番号372aと、現在の表示状態372bと、動作異常372cとを対応付けて格納している。動作異常372cには、表示異常及び通信異常それぞれの発生有無が格納される。
【0048】
また、受信した応答パケット50により、信号灯器10にて表示異常が発生したことを把握した場合には、表示異常が発生したことを報知する所定の報知画面を表示部330に表示させたり、所定の異常ランプを点灯させたり、所定の報知音声を音声出力部340から出力させるといった所定の報知を行う。なお、図示していないが、各交差点の交通信号状態を統括的に制御しているサーバに報知信号を送信することにしても良い。そして、入力部310から管理者による表示異常の復旧指令が入力されると、該当する信号灯器10に対する異常復旧指令を、次の指令パケット40に含めて送信する。
【0049】
図10に戻り、表示部330は、例えばLCD等の表示装置で実現され、処理部320の制御に従って、例えば信号灯器10の動作異常を知らせる報知画面を表示する。音声出力部340は、例えばスピーカ等の音声出力装置で実現され、処理部320の制御に従って、例えば信号灯器10の動作異常を知らせる報知音声等を出力する。
【0050】
無線通信部350は、SS無線通信を行う無線通信装置で実現され、外部装置(主に、灯器駆動部20)との間の無線通信を制御する。電源部360は、商用電源から供給されたAC100Vを所定の直流電圧に変換し、制御装置30の各部が作動するために必要な直流電力を生成・供給する。
【0051】
記憶部370は、例えばICメモリやハードディスク等で実現され、処理部320に制御装置30を統合的に制御させるためのシステムプログラムや、各種機能を実現するためのプログラムやデータ等を記憶するとともに、処理部320の作業領域として用いられる。本実施形態では、記憶部370には、プログラムとして交通信号制御プログラム371が記憶されるとともに、データとして、灯器管理データ372が記憶される。
【0052】
[処理の流れ]
図12,図13は、灯器駆動部20における灯器制御処理を説明するフローチャートである。同図によれば、処理部210は、制御装置30から指令パケット40を受信したならば(ステップA1:YES)、該指令パケット40の受信時点を開始時点とした応答パケット50の送信待ち時間Twの計時を開始するとともに(ステップA3)、指令パケット40の受信監視時間Tgの計時を開始する(ステップA5)。
【0053】
次いで、通信異常フラグを判断し、「1」に設定されているならば(ステップA7:YES)、指令パケット40が受信されたことで通信異常が解除されたとみなし、通信異常フラグを「0」に設定するとともに(ステップA9)、タイムアウトの連続発生回数nをゼロクリアする(ステップA11)。
【0054】
また、表示異常フラグを判断し、「1」に設定されているならば(ステップA13:YES)、表示異常が発生していると判断して、受信した指令パケット40中に異常復帰指令が含まれているか否かを判断する。そして、異常復帰指令が含まれているならば(ステップA15:YES)、この異常復帰指令によって表示異常が解除されたとみなし、表示異常フラグを「0」に設定する(ステップA17)。次いで、受信した指令パケット40中の信号表示指令(ステップカウンタ値)に従って、信号灯器10の点灯を更新する(ステップA19)。
【0055】
一方、表示異常フラグが「0」に設定されているならば(ステップA13:NO)、表示異常が発生していないので、受信した指令パケット40中の信号表示指令(ステップカウンタ値)に従って、信号灯器10の点灯制御を行う(ステップA19)。
【0056】
また、処理部210は、他の灯器駆動部20からの応答パケット50を受信したならば(ステップA21:YES)、表示異常フラグを判断し、「1」に設定されているならば(ステップA23:YES)、表示異常が発生していると判断して、受信した応答パケット50中に異常復帰指令が含まれているか否かを判断する。異常復帰指令が含まれているならば(ステップA25:YES)、この異常復帰指令によって表示異常が解除されたとみなし、表示異常フラグを「0」に設定する(ステップA27)。次いで、応答パケット50に含まれる信号表示指令(ステップカウンタ値)に従って、信号灯器10の点灯制御を行う(ステップA29)。
【0057】
一方、表示異常フラグが「0」に設定されているならば(ステップA23:NO)、表示異常が生じていないと判断して、応答パケット50に含まれる信号表示指令に従って、信号灯器10の点灯制御を行う(ステップA29)。
【0058】
また、処理部210は、送信待ち時間Twが経過したならば(ステップA31:YES)、直前に受信した指令パケット40の複製データや、駆動対象の信号灯器10の表示状態、表示異常フラグや表示異常フラグの設定値から判断した動作異常の発生有無等を含む応答パケット50を生成する(ステップA33)。そして、生成した応答パケット50を、制御装置30及び他の全ての灯器駆動部20に対して同報送信する(ステップA35)。
【0059】
また、通信異常フラグが「0」であり(ステップA37:YES)、且つ、定められた受信監視時間Tgに達したならば(ステップA39:YES)、タイムアウトの連続発生回数nを「1」加算した値に更新する(ステップA41)。その結果、連続発生回数nが所定数N(2)に達したならば(ステップA43:YES)、通信異常が発生したと判断して、通信異常フラグを「1」に設定するとともに(ステップA45)、信号灯器10を強制滅灯させる(ステップA47)。一方、連続発生回数nがN(2)に達していないならば(ステップA43:NO)、受信監視時間Tgに達した時点から、再度、受信監視時間Tgの計時を開始する(ステップA49)。
【0060】
続いて、処理部210は、二重現示検出回路260によって二重現示の発生可能性が検出されたか否かを判断する(ステップA51)。二重現示の発生可能性が検出されたならば(ステップA53:YES)、表示異常フラグを「1」に設定し(ステップA55)、信号灯器を強制滅灯させる(ステップA57)。以上の処理を行うと、ステップA1に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0061】
図14は、制御装置30における交通信号制御処理の流れを説明するフローチャートである。同図によれば、処理部320は、指令パケット40の送信タイミングとなったならば(ステップB1:YES)、現在のステップカウンタ値や、必要な異常復旧指令の有無を含めた指令パケット40を生成する(ステップB3)。そして、生成した指令パケット40を、全ての灯器駆動部20それぞれに同報送信する(ステップB5)。
【0062】
また、ステップカウンタの更新タイミングとなったならば(ステップB7:YES)、ステップカウンタ値を次の値に更新する(ステップB9)。
【0063】
また、灯器駆動部20からの応答パケット50を受信したならば(ステップB11:YES)。受信した応答パケット50をもとに、該当する信号灯器10の表示状態や動作異常の有無を更新する(ステップB13)。また、この応答パケット50に、表示異常の発生有りが含まれるならば(ステップB15:YES)、所定の報知画面の表示や報知音声の出力といった、表示異常の発生の報知を行う(ステップB17)。以上の処理を行うと、ステップB1に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0064】
[作用・効果]
このように、本実施形態によれば、交差点に設置された複数の信号灯器10それぞれを駆動する複数の灯器駆動部20と、該交差点の交通信号を制御する制御装置30の間が無線通信で接続された交通信号制御システム1において、制御装置30は、信号灯器10に対する信号表示指令を含む指令パケット40を各灯器駆動部20に同報送信し、各灯器駆動部20は、受信した指令パケット40の複製データを含む応答パケット50を制御装置30及び他の灯器駆動部20に同報送信する。つまり、各灯器駆動部20では、指令パケット40に加えて他の灯器駆動部20からの応答パケット50をも受信している。これにより、ある灯器駆動部20において、制御装置30からの指令パケットが受信できなくとも、他の灯器駆動部20からの応答パケット50を受信することによって、制御装置30からの信号表示指令を取得することができる。
【0065】
また、灯器駆動部20では、指令された灯色と信号灯器10の実際の灯色とが一致するか否かによって表示異常の検出を行うとともに、指令パケット40の受信間隔を監視することで通信異常の検出を行う。そして、表示異常或いは通信異常を検出すると、信号灯器10を強制的に滅灯させるとともに、異常の発生を示すデータを応答パケット50に含めて送信する。これにより、動作異常の発生を制御装置30にて知ることができ、速やかな復旧が可能となる。
【0066】
なお、本発明の適用可能な実施形態は、上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】交通信号制御システムの設置例。
【図2】灯器駆動部と制御装置間の通信手順の説明図。
【図3】灯器駆動部と制御装置間のデータ送受信の一例。
【図4】指令パケットのデータ構成例。
【図5】応答パケットのデータ構成例。
【図6】灯器駆動部の機能構成図。
【図7】灯色テーブルのデータ構成例。
【図8】現示階梯表の一例。
【図9】二重現示の検出理論の説明図。
【図10】制御装置の機能構成図。
【図11】灯器管理テーブルのデータ構成例。
【図12】灯器駆動部における灯器制御処理のフローチャート。
【図13】図12のフローチャートの続き。
【図14】制御装置における交通信号制御処理のフローチャート。
【符号の説明】
【0068】
1 交通信号制御システム
10 信号灯器
20 灯器駆動部
210 処理部、220 無線通信部、230 リレー部、240 電源部
250 記憶部
251 灯器制御プログラム
252 灯色テーブル、253 二重現示検出テーブル
260 二重現示検出回路
30 制御装置
310 入力部、320 処理部、330 表示部
340 音声出力部、350 無線通信部、360 電源部
370 記憶部
371 交通信号制御プログラム、372 灯器管理テーブル
40 指令パケット、50 応答パケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点に係る各信号灯器の信号制御を司る信号制御装置と、前記信号灯器を駆動する個別の灯器駆動部とが無線通信で接続された交通信号制御システムであって、
前記信号制御装置は、
信号表示指令を含む指令情報を、全ての前記灯器駆動部に所定時間間隔で同報送信する指令送信手段を備え、
前記灯器駆動部それぞれは、
前記信号制御装置から受信した指令情報に含まれる信号表示指令に従って、自灯器駆動部が駆動している信号灯器の信号表示を制御する表示制御手段と、
前記信号制御装置から受信した指令情報の複製データを含む応答情報を、各灯器駆動部の送信タイミングが重ならないように前記所定時間間隔を時分割して定められた送信タイミングで、前記信号制御装置及び他の灯器駆動部に同報送信する応答送信手段と、
を備えるとともに、
前記表示制御手段が、他の灯器駆動部から受信した前記複製データに含まれる信号表示指令に従って、自灯器駆動部が駆動している信号灯器の信号表示を制御する手段を有している、
交通信号制御システム。
【請求項2】
前記灯器駆動部それぞれは、
自灯器駆動部が駆動している信号灯器の現在の表示状態を検出する表示状態検出手段と、
前記信号表示指令と前記検出された現在の表示状態とに基づいて、自灯器駆動部が駆動している信号灯器における表示異常を検出する表示異常検出手段と、
を更に備えた請求項1に記載の交通信号制御システム。
【請求項3】
前記灯器駆動部それぞれは、
前記信号制御装置から前記指令情報を最後に受信してからの経過時間と、前記所定時間間隔とに基づいて通信異常を検出する通信異常検出手段を更に備えた請求項1又は2に記載の交通信号制御システム。
【請求項4】
交差点に係る各信号灯器の信号制御を司る信号制御装置と、前記信号灯器を駆動する個別の灯器駆動部とが無線通信で接続された交通信号制御システムにおける信号制御方法であって、
前記信号制御装置が、信号表示指令を含む指令情報を、全ての前記灯器駆動部に所定時間間隔で同報送信する指令送信ステップと、
前記灯器駆動部それぞれが、前記信号制御装置から受信した指令情報に含まれる信号表示指令に従って、自灯器駆動部が駆動している信号灯器の信号表示を制御する第1の表示制御ステップと、
前記灯器駆動部それぞれが、前記信号制御装置から受信した指令情報の複製データを含む応答情報を、各灯器駆動部の送信タイミングが重ならないように前記所定時間間隔を時分割して定められた送信タイミングで、前記信号制御装置及び他の灯器駆動部に同報送信する応答送信ステップと、
前記灯器駆動部それぞれが、他の灯器駆動部から受信した前記複製データに含まれる信号表示指令に従って、自灯器駆動部が駆動している信号灯器の信号表示を制御する第2の表示制御ステップと、
を含む信号制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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