説明

交通渋滞防止手段

【課題】 本発明は、運転者に、道路の勾配情報を視覚的に提供し、勾配に適した車間距離をとることを可能にし、交通渋滞、車両追突等を防止する交通渋滞防止手段を提供する。
【解決手段】 そこで、本発明は、運転者の側方視野内に存在する道路構造物に走行路の登り勾配又は下り勾配を示す高位置表示線部分11と低位置表示線部分12とその高低の位置表示部分間の段差表示線部分13とからなる勾配段差表示線構造10を設けてなる交通渋滞防止手段を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者に、道路の勾配情報を視覚的に提供し、勾配に適した車間距離をとることを可能にし、交通渋滞、車両追突を防止する交通渋滞防止手段に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路のように、ほぼ平坦な走行路では、運転者の側方視野内に、走行路の緩やかな登り、下り又はカーブに沿ってほぼ同じ高さと位置を保って防音壁やガードレールが単調に続くため、運転者は自車が登っているのか下っているのか無関心になり、特に走行路が平坦又は下り坂から登り坂に緩やかに変化するサグ部や、照灯が必要なトンネル内においては、下りとは気付かずにスピードを出しすぎたり、登りとは気付かずにスピードを低下させて、前後する車が適正な車間距離を取れなくなり、不必要なブレーキ操作を後続する車両が順次に繰り返して渋滞の原因になることが多々あり、従来から、円滑な車の流れと安全運転ができるように、種々の交通渋滞防止手段が提案されている。
【0003】
例えば、サグ部底付近の下り側に後方車両の速度を測定する速度センサと追突注意表示標識を設けると共に、登り側に前方車両用の速度センサと加速促進表示標識を設けて、前後の車両の車間距離を適正に維持するようにしたもの(特許文献1参照。)、又は、車両用のナビゲーション装置において、車速検出結果と位置情報により車両がサグ地点に差し掛かると音声メッセージによるサグ報知を行うもの(特許文献2参照。)、又は、直角三角形の道路標識を斜辺部を坂の勾配に合わせて道路の路肩に設置して水平部に対する斜辺部の勾配から坂道であることを認識させるもの(特許文献3参照。)等が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−259046号公報
【特許文献2】特開2005−300184号公報
【特許文献3】特開2005−282301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のものでは、速度センサと表示標識の設置位置の設定や、表示内容とタイミングの設定が難しい課題があり、特許文献2のものでは、ナビゲーション装置を搭載しない車には効果が全くない課題があり、特許文献3のものでは、長大な直角三角形の標識を道路の路肩に設置するのが困難な課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、請求項1に記載のように、運転者の側方視野内に存在する道路構造物に走行路の登り勾配又は下り勾配を示す勾配段差表示線構造を設けてなる交通渋滞防止手段を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、請求項2に記載のように、勾配段差表示線構造が低位置表示線部分と高位置表示線部分とその高低の位置表示線部分間の段差表示線部分とからなる請求項1に記載の交通渋滞防止手段を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、請求項3に記載のように、低位置表示線部分又は高位置表示線部分がそのまま平坦部に連続して設けてあることからなる請求項2に記載の交通渋滞防止手段を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、請求項4に記載のように、一の勾配段差表示線構造の段差表示線部分の高位置表示線部分を次の低位置表示線部分として、或いは、低位置表示線部分を次の高位置表示線部分として、引き続いて次の登り又は下り勾配段差表示線構造を連続的に設けてなる請求項2又は3に記載の交通渋滞防止手段を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、請求項5に記載のように、運転者の側方視野内に、下り勾配を示す下り勾配段差表示線構造に引き続いて登り勾配を示す登り勾配段差表示線構造を設けてなる請求項3又は4に記載の交通渋滞防止手段を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、請求項6に記載のように、運転者の側方視野内に、登り勾配を示す登り勾配段差表示線構造に引き続いて下り勾配を示す下り勾配段差表示線構造を設けてなる請求項3又は4に記載の交通渋滞防止手段を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、請求項7に記載のように、登り勾配又は下り勾配を示す勾配段差表示線構造において、低位置表示線部分又は高位置表示線部分としてほぼ水平をなす水平直線部を設けてなる請求項1乃至5のいずれかに記載の交通渋滞防止手段を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、請求項8に記載のように、登り勾配又は下り勾配を示す勾配段差表示線構造において、低位置表示線部分又は高位置表示線部分に水平に対して勾配が実際より大きく傾斜して見える傾斜線部分を設けてなる請求項1乃至6のいずれかに記載の交通渋滞防止手段を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、請求項9に記載のように、勾配段差表示線構造の高位置又は低位置表示線部分に下方又は上方に向かって湾曲した湾曲線部を設けてなる請求項8に記載の交通渋滞防止手段を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、請求項10に記載のように、勾配段差表示線構造を運転席の高い車用と運転席の低い車用に2段以上に設けてなる請求項1乃至9のいずれかに記載の交通渋滞防止手段を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、請求項11に記載のように、勾配段差表示線構造が立体構造からなる請求項1乃至10のいずれかに記載の交通渋滞防止手段を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、請求項12に記載のように、立体構造からなる勾配段差表示線構造が、植栽壁、防塵壁、防護壁、防音壁又はトンネル壁等の側壁の棚状部、壁孔部、側壁に設けた棒状部材、ワイヤ、鎖、又はロープ、側壁に設けた照明灯、テープ又は反射部材、又はそのいずれかの組み合わせからなる請求項11に記載の交通渋滞防止手段を提供するものである。
【0018】
また、本発明は、請求項13に記載のように、立体構造からなる勾配段差表示線構造が、鉄板状のガードレール、鎖状のガードレール、ロープ又はワイヤ状のガードレール、棒状のガードレール、ガードレールに設けた鎖、ワイヤ、ロープ、棒、照明灯、反射部材又はその組合わせからなる請求項11に記載の交通渋滞防止手段を提供するものである。
【0019】
また、本発明は、請求項14に記載のように、勾配段差表示線構造が側壁又はガードレールに設けた構造物表面から突出の少ない平面構造からなる請求項1乃至10のいずれかに記載の交通渋滞防止手段を提供するものである。
【0020】
また、本発明は、請求項15に記載のように、平面構造からなる勾配段差表示線構造が側壁に施したフィルム、テープ、タイル、ペイント又はその組み合わせからなる請求項14に記載の交通渋滞防止手段を提供するものである。
【0021】
また、本発明は、請求項16に記載のように、平面構造からなる勾配段差表示線構造が側壁に内蔵した照明灯、又は、側壁に貼り付けた反射板等の光学手段からなる請求項14に記載の交通渋滞防止手段を提供するものである。
【0022】
また、本発明は、請求項17に記載のように、隣り合う勾配段差表示線構造の段差表示線部分の間隔が安全運転の車間距離で設けてある請求項1乃至16のいずれかに記載の交通渋滞防止手段を提供するものである。
【0023】
また、本発明は、請求項18に記載のように、安全運転の車間距離が20〜120mに設けてある請求項17に記載の交通渋滞防止手段を提供するものである。
【0024】
また、本発明は、請求項19に記載のように、隣り合う勾配段差表示線構造の段差表示線部分に対応して路面に、文字、粗面、微少凹凸、白線、変色線、反射体、発光体等からなる段差表示を設けてなる請求項1乃至18のいずれかに記載の交通渋滞防止手段を提供するものである。
【0025】
また、本発明は、請求項20に記載のように、勾配段差表示線構造の低位置表示線部分、高位置表示線部分又は段差表示線部分に車の進行方向を示す矢印表示を設けてなる請求項1乃至19のいずれかに記載の交通渋滞防止手段を提供するものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る交通渋滞防止手段によれば、請求項1に記載のように、運転者の側方視野内に存在する道路構造物に走行路の登り勾配又は下り勾配を示す勾配段差表示線構造を設けてなる構成を有することにより、走行路の路肩の道路構造物に表示線で勾配を表示することからができるから、既存の道路構造物に設けることができ、通行車両やガードレール等の道路構造物の邪魔にならないから、容易且つ安価に設置することができる効果があると共に、運転者は無理なく自然に側方視野内に見える道路構造物に設けた勾配段差表示線構造によって、自分の運転している車及び前後の車が下り勾配を下っているのか、登り勾配を上っているのかを明白に認識することができるから、適正なスピードと車間距離を維持することができ、下りとは気付かずにスピードを出しすぎたり、登りとは気付かずにスピードを低下させて、適正な車間距離を取れなかったり、不必要なブレーキ操作をして渋滞の原因になったりすることが無くなり、円滑な車の流れと安全運転ができる効果がある。
【0027】
また、本発明は、請求項2に記載のように、勾配段差表示線構造が低位置表示線部分と高位置表示線部分とその高低の位置表示線部分間の段差表示線部分とからなる構成を有することにより、段差表示線部分を境に車が上がって見えるか下って見えるかによって運転者は一目で登り勾配か又は下り勾配かを認識することができる効果がある。
【0028】
また、本発明は、請求項3に記載のように、低位置表示線部分又は高位置表示線部分がそのまま平坦部に連続して設けてある構成を有することにより、運転者は表示線部分がそのまま道路に平行して連続して続くから、段差表示線部分が現れるまで平坦部を走行していることを認識し安心して走行することができる効果がある。
【0029】
また、本発明は、請求項4に記載のように、一の勾配段差表示線構造の段差表示線部分の高位置表示線部分を次の低位置表示線部分として、或いは、低位置表示線部分を次の高位置表示線部分として、引き続いて次の登り又は下り勾配段差表示線構造を連続的に設けてなる構成を有することにより、階段を斜め横から見るように一見して連続する上り又は下り勾配を認識することができる効果がある。
【0030】
また、本発明は、請求項5に記載のように、運転者の側方視野内に、下り勾配を示す下り勾配段差表示線構造に引き続いて登り勾配を示す登り勾配段差表示線構造を設けてなる構成を有することにより、高速道路のサグ区間等において、下り勾配から登り勾配変わったのに気がつかずに車のスピードが低下し、後続の車が車間距離を縮めてブレーキ操作することによって、順次にスピードが低下して最終的には停止に至り、交通渋滞が生じるのを、運転者が側方視野内の段差表示線部分から下り勾配から登り勾配に変わることを即座に察知して車のスピードの維持を図ることが出来るから、サグ区間において、常時、適正な車間距離を維持でき、交通渋滞を防止することができる効果がある。
【0031】
また、本発明は、請求項6に記載のように、運転者の側方視野内に、登り勾配を示す登り勾配段差表示線構造に引き続いて下り勾配を示す下り勾配段差表示線構造を設けてなる構成を有することにより、高速道路の緩やかな峠区間等において、登り勾配から下り勾配変わったのに気がつかずに車のスピードが上がり、前の車との車間距離を縮めてブレーキ操作することによって、後続の車が順次にスピードを落として最終的には登り勾配の交通渋滞が生じるのを、運転者が側方視野内の段差表示線部分から登り勾配から下り勾配に変わったことを即座に察知して車のスピードの維持を図ることが出来るから、常時、適正な車間距離を維持でき、交通渋滞を防止することができる効果がある。
【0032】
また、本発明は、請求項7に記載のように、登り勾配又は下り勾配を示す勾配段差表示線構造において、低位置表示線部分又は高位置表示線部分にほぼ水平をなす水平直線部を設けてなる構成を有することにより、水平直線部に対して自分の車が平行に走っているのか、下っているのか登っているのかを一見して認識することができる効果がある。
【0033】
また、本発明は、請求項8に記載のように、登り勾配又は下り勾配を示す勾配段差表示線構造において、低位置表示線部分又は高位置表示線部分に水平に対して勾配が実際より大きく傾斜して見える傾斜線部分を設けてなる構成を有することにより、水平直線部では認識しにくい緩い勾配の路面であっても、水平に対して勾配が実際より大きく傾斜して見える傾斜線部分で運転者に下り勾配か登り勾配かを一見して容易に認識させることができる効果がある。
【0034】
また、本発明は、請求項9に記載のように、勾配段差表示線構造の位置表示線部分に下方又は上方に向かって湾曲した湾曲線部を設けてなる構成を有することにより、段差表示線部分の高さを大きく表示することによって勾配を明確に視認することができる効果がある。
【0035】
また、本発明は、請求項10に記載のように、勾配段差表示線構造を運転席の高い車用と運転席の低い車用に2段以上に設けてなる請求項1乃至9のいずれかに記載の構成を有することにより、運転席の高い車と運転席の低い車に対応した勾配段差表示線構造を容易に提供することができる効果がある。
【0036】
また、本発明は、請求項11に記載のように、勾配段差表示線構造が立体構造からなる構成を有することにより、立体的で視認が容易な構造物として勾配表示をすることができる効果がある。
【0037】
また、本発明は、請求項12に記載のように、立体構造からなる勾配段差表示線構造が、植栽壁、防塵壁、防護壁、防音壁又はトンネル壁からなる側壁に設けた棒状部材、ワイヤ、鎖、又はロープ、又は、側壁に設けた照明灯、フィルム、テープ又は反射部材、又は、そのいずれかの組み合わせからなる構成を有することにより、高速道路等の植栽壁の側壁のように他の用途を有する道路構造物を利用して勾配段差表示線構造を立体的に構成することができる効果がある。
【0038】
また、本発明は、請求項13に記載のように、立体構造からなる勾配段差表示線構造が、鉄板状のガードレール、鎖状のガードレール、ロープ又はワイヤ状のガードレール、棒状のガードレール、ガードレールに設けた鎖、ワイヤ、ロープ、棒、照明灯、反射部材又はその組合わせからなる構成を有することにより、ガードレール、ガードレールに設けた反射部材又は照明灯等によって勾配段差表示線構造を立体的に構成することができる効果がある。
【0039】
また、本発明は、請求項14に記載のように、勾配段差表示線構造が側壁又はガードレールに設けた構造物表面から突出の少ない平面構造からなる請求項1乃至10のいずれかに記載の構成を有することにより、勾配段差表示線構造を側壁等の表面から突出の小さい平面的な安全な状態で容易に設けることができる効果がある。
【0040】
また、本発明は、請求項15に記載のように、平面構造からなる勾配段差表示線構造が側壁に施したフィルム、テープ、タイル、ペイント又はその組み合わせからなる構成を有することにより、既存の構造物を利用して勾配段差表示線構造を容易に設けることができる効果がある。
【0041】
また、本発明は、請求項16に記載のように、平面構造からなる勾配段差表示線部分が側壁に内蔵した照明灯、又は、側壁に貼り付けた反射板等の光学手段からなる構成を有することにより、夜間やトンネル内において勾配段差表示を容易に達成することができる効果がある。
【0042】
また、本発明は、請求項17に記載のように、隣り合う勾配段差表示線構造の段差表示線部分の間隔が安全運転の車間距離で設けてある構成を有することにより、段差表示線部分の間隔を目安に運転することによって安全運転の車間距離を維持することができる相乗効果がある。
【0043】
また、本発明は、請求項18に記載のように、安全運転の車間距離が20〜120mで設けてある構成を有することにより、車のスピードに対応した車間距離で勾配段差表示線構造物を設けることができる効果がある。
【0044】
また、本発明は、請求項19に記載のように、隣り合う勾配段差表示線構造の段差表示線部分に対応して路面に、文字、粗面、微少凹凸、白線、変色線、反射体、発光体等からなる段差表示を設けてなる記載の構成を有することにより、勾配段差表示線部分の存在を、路面において確実に認識することができると共に、車間間隔を安全運転に適した車間距離と認識することができる相乗効果がある。
【0045】
また、本発明は、請求項20に記載のように、勾配段差表示線構造の低位置表示線部分、高位置表示線部分又は段差表示線部分に車の進行方向を示す矢印表示を設けてなる構成を有することにより、車の進行方向と勾配の傾斜方向を明白に表示することができる相乗効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明は、運転者の側方視野内に存在する道路構造物に走行路の登り勾配又は下り勾配を示す勾配段差表示線構造を設けてなる交通渋滞防止手段を提供するものである。
【実施例1】
【0047】
図1において、1は走行路で、高速道路のように、緩やかに下る走行路1の側方には、ほぼ同じ高さと位置を保って防塵壁、防護壁、防音壁又はトンネル壁等からなる側壁2が設けてあり、側壁2は運転者の側方視野内において、ずっと走行路1の緩やかな登り、下り又はカーブに沿ってほぼ同じ高さと位置を保って単調に続いており、運転者は車が登っているのか下っているのか無関心になる可能性がある。
【0048】
特に走行路1が平坦又は下りから登りに緩やかに変化するサグ部や、照灯が必要なトンネル内においては、下りとは気付かずにスピードを出しすぎたり、登りとは気付かずにスピードを低下させて、前後する車が適正な車間距離を取れなくなり、不必要なブレーキ操作を行い、後続車両が順次に繰り返して渋滞の原因になる可能性がある。
【0049】
図1においては、緩やかな下り坂を下っている車3,4,5に対して緩やかな上り坂に差し掛かっている車6がスピードを低下させると、次の車3が充分な車間距離を取れずにブレーキを掛けると、引き続く車4,5が順次にスピードを落としながらブレーキを掛けて行き、更に後続する車の渋滞の原因になる。
【0050】
本発明は、側壁2に運転者の側方視野内に入るように走行路1の登り勾配又は下り勾配を示す勾配段差表示線構造10を設けてある。
【0051】
この実施例の場合、下り勾配を示す勾配段差表示線構造10は、下り勾配に対してほぼ水平な直線表示からなる高位置表示線部分11と低位置表示線部分12とその高低の位置表示線部分間の段差表示線部分13とが一単位として構成してある。
【0052】
従って、図1の実施例に記載のように、長い下り坂に沿って下り勾配段差表示線構造10が連続して設けてある走行路部分では、一の勾配段差表示線構造10の段差表示線部分13の低位置表示線部分12を次の勾配段差表示線構造10の高位置表示線部分11として、次の段差表示線部分13に連結し、引き続いて次の下り勾配段差表示線構造10を連続的に設けることにより、下り階段を斜め横から見るように一見して連続する下り勾配を認識することができる。
【0053】
即ち、車の運転者は、下り勾配段差表示線構造10において、先ず平坦部から続く高位置表示線部分11を側視野内で見ることによって、高位置表示線部分11を基準に自分の運転する車が下がって行くのを見るか、逆に自分の車を基準に高位置表示線部分11が上がっていくのを見ることによって、自分の車が下っているのを視認することができるのみならず、その終端において急激に降下する段差表示線部分13を見ることによって、間違いなく自分の車が下っていることを認識することができる。
【0054】
逆に、図1において、車が右から左に上り坂を登って行く場合には、勾配段差表示線構造10は登り勾配を示し、車の運転者は、先ず低位置表示線部分12を側視野内で見ることによって、低位置表示線部分12を基準に自分の運転する車が上って行くのを見るか、逆に自分の車を基準に低位置表示線部分12が下がっていくのを見ることによって、自分の車が登っているのを視認することができるのみならず、その終端において急激に上昇する段差表示線部分13を見ることによって、間違いなく自分の車が登っていることを認識することができる。
【0055】
この場合、登り勾配の勾配段差表示線構造10は、低位置表示線部分12と高位置表示線部分11とその高低の位置表示線部分間の段差表示線部分13とが一単位として構成してあり、従って、図1の実施例において右から左に長い上り坂に沿って勾配段差表示線構造10が連続して設けてある走行路部分では、一の勾配段差表示線構造10の段差表示線部分13の高位置表示線部分11を次の低位置表示線部分12として、次の段差表示線部分13に連結し引き続いて次の上り勾配段差表示線構造10を連続的に設けることにより、階段を斜め横から見るように一見して連続する上り勾配を認識することができる。
【0056】
また、隣り合う勾配段差表示線構造10の段差表示線部分13の間隔は、走行路1の状況に応じて重要箇所では目立つように短くするなど、実際に試行して適宜な間隔に設定することができるが、一般には、走行路1で定められた上限速度を基準に安全運転に必要な車間距離で設けることが、走行する車に車間距離の目標を与えることになるから好ましい。
【0057】
一般に、前方の車がブレーキを掛けるのを視認してから、後続の車が余裕を持ってブレーキを掛けることができる時間は約2秒とされているから、その車のスピードで2秒間に走る距離以上が安全な車間距離と見なすことができ、それだけ車間距離が開いていれば後続の車のブレーキ操作が不要になり、渋滞を回避できることとなる。従って、走行路1の制限速度が時速80kmでは段差表示線部分13の間隔は約45m、時速50kmでは約28m、時速30kmでは約17m、時速100kmでは約56m、時速120mでは約67m、時速150kmでは約84m、時速200kmでは約112mであるから、一般に段差表示線部分13の間隔は走行路1の状況に応じて約20m〜120mの間隔で設けることができる。
【0058】
また、表示線部分11、12、13は、側壁2に対して鮮明に視認できるように設けることが好ましく、塗装やテープで表示する場合には、表示線の幅は表示する道路構造物に対応して適宜に設けることができるが、視認性と施工性から5cm〜30cmの範囲に設けることが好ましい。
【0059】
また、段差表示線部分13の高さは、高位置表示線部分11と低位置表示線部分12との段差であるが、図1では左から右に行くに従って低くなっているから、運転者は段差表示線部分13の高さから勾配が左から右に下り勾配が徐々に緩くなっていくのを認識することができる。逆に右から左に行く車は、徐々に登り勾配が大きくなるのを知ることができる。
【実施例2】
【0060】
図2に示す実施例の場合、高位置表示線部分11と低位置表示線部分12と段差表示線部分13とからなる勾配段差表示線構造10を一単位として、勾配段差表示線構造10が個々に所定間隔で配設してある。この場合、隣り合う勾配表示構造10の高位置表示線部分11と低位置表示線部分12を一直線に連結して表示する必要がないから、隣り合う配置間隔を自由に設定でき、側壁2が途切れている場所や、夜間照明の配置、表示の簡易性、経済性に配慮して設置することができる利点がある。
【0061】
図2において、左から右に緩く下る車では、側壁2に高位置表示線部分11と段差表示線部分13と低位置表示線部分11からなる勾配段差表示線構造10を視認することによって、車が下り勾配を下っていることを認識することができる。
【0062】
逆に、右から左に上る車では、側壁2に低位置表示線部分12と段差表示線部分13と高位置表示線部分12からなる勾配段差表示線構造10を視認することによって、車が上り勾配を登っていることを認識することができる。
【0063】
この種の勾配段差表示線構造10としては、図3の(a)〜(i)に記載のように、種々の構成を実施することができる。(a)〜(e)は、それぞれ下り勾配を表示するもので、(a)は図2の実施例と同様に、ほぼ水平な直線表示からなる高位置表示線部分11と低位置表示線部分12と垂直な段差表示線部分13とが一単位として構成してあり、高位置表示線部分11と低位置表示線部分12には車の進行方向及び勾配の下り方向を示す矢標14、段差表示線部分13には下りの勾配方向を明確に示す矢標15が適宜に設けてある。(c)は段差表示線部分13の傾斜を勾配方向に沿って緩やかに表示したものである。
【0064】
(b)は、高位置表示線部分11と低位置表示線部分12とを水平に対して登り勾配に表示して、運転者に車が実際より急な坂道を下っているような錯覚を与えてスピードの出し過ぎをより強力に抑制しようとするものであり、(d)はその段差表示線部分13の傾斜を勾配方向に沿って緩やかに表示したものである。(e)は、段差表示線部分13を2段以上に設けその中間に中間位置表示線部分16を設けて、段差表示を多様化して表示性と視認性の自由度を増大したものである。
【0065】
図3の(f)〜(i)は、それぞれ上り勾配を表示するもので、(f)は、ほぼ水平な直線表示からなる低位置表示線部分11と高位置表示線部分12と垂直な段差表示線部分13とが一単位として構成してあり、(h)は段差表示線部分13の傾斜を勾配方向に沿って緩やかに表示したものである。(g)は、低位置表示線部分12と高位置表示線部分11とを水平に対して下り勾配に表示して、運転者に車が実際より急な坂道を登っているような錯覚を与えてスピードの低下をより強力に抑制しようとするものであり、(i)は、段差表示線部分13を2段以上に設けその中間に中間位置表示線部分16を設けて、段差表示を多様化して表示性と視認性の自由度を増大したものである。
【実施例3】
【0066】
また、本発明は、図4に記載のように、勾配段差表示線構造10の高位置表示線部分11及び低位置表示線部分12に下方に向かって湾曲した湾曲線部を設けて、段差表示線部分13の高さを大きくして、左から右に下る下り勾配においては先端部が上に向かっているから車が急速に下る印象を与え、右から左に登る上り勾配においては先端部が下に下がっているから車が急速に上っている印象を与え、段差表示線部分13の高さを大きく見せることと相まって、勾配表示を明確にすることができる。
【実施例4】
【0067】
また、本発明は、図5に記載の実施例のように、高速道路のサグ区間等において、走行路1が中央部において下り勾配から登り勾配に緩やかに変化する場合、運転者の側方視野内に、下り勾配を示す下り勾配段差表示線構造10に引き続いて登り勾配を示す登り勾配段差表示線構造10を連続して設けてある。この場合、最後の下り勾配を示す勾配段差表示線構造10の段差表示線部分13に続く低位置表示線部分12は、最初の上り勾配を示す上り勾配段差表示線構造10の低位置表示線部分12にそのまま引き継がれて、最初の上り勾配の段差表示線部分13、高位置表示線部分11に続き、更に次の上り勾配を示す勾配段差表示線構造10に連続していく。
【0068】
この結果、高速道路のサグ区間等において、下り勾配から登り勾配変わったのを、運転者が側方視野内の段差表示線部分13が下り勾配から登り勾配に変わることを即座に察知して車のスピードの維持を図ることが出来るから、サグ区間において、常時、適正な車間距離を維持でき、交通渋滞を防止することができる。
【0069】
なお、図5の実施例の場合、勾配段差表示線構造10の位置表示線部分11,12及び段差表示線部分13を明確にするために、その下側に着色又は模様を施してある。図5の場合は、植栽又は柵を現すような模様を施してある。
【0070】
また、図では省略したが、図5とは逆に高速道路の緩やかな峠区間等において、走行路1が中央部において上り勾配から下り勾配に緩やかに変化する場合、運転者の側方視野内に、上り勾配を示す上り勾配段差表示線構造10に引き続いて下り勾配を示す下り勾配段差表示線構造10を連続して設けることができる。
【0071】
この場合、最後の上り勾配を示す勾配段差表示線構造10の段差表示線部分13に続く高位置表示線部分11は、最初の下り勾配を示す下り勾配段差表示線構造10の高位置表示線部分11にそのまま引き継がれて、最初の下り勾配の段差表示線部分13、低位置表示線部分12に続き、更に次の下り勾配を示す勾配段差表示線構造10に連続していく。
【0072】
この結果、運転者は側方視野内の段差表示線部分13が上りから下りへの切り替わるのを見て、登り勾配から下り勾配に変わったことを即座に察知し、車のスピードの維持を図ることが出来るから、常時、適正な車間距離を維持でき、交通渋滞を防止することができる。
【実施例5】
【0073】
また、図6に記載の実施例では、勾配段差表示線構造10を運転席の高い車用と低い車用に2段に設けてある。3段以上に設けることも勿論可能である。
【実施例6】
【0074】
また、図1乃至図6に記載の実施例の場合、勾配段差表示線構造10は側壁2に設けた構造物表面から突出の少ない平面構造からなる。
【0075】
勾配段差表示線構造10の平面構造としては、側壁2にフィルム、テープ又はタイルを貼着して設けることができ、また、ペイントを塗布することにより、又はその組み合わせによって構成することができる。また、これら平面構造は、側方から見て目立つように運転者が見やすい反射性に優れた素材を使用することが好ましい。
【0076】
また、勾配段差表示線構造10の平面構造は、夜間やトンネル内用に、側壁2に照明灯を内蔵した内部照明式の細長い表示板で構成することができると共に、側壁2に貼り付けた反射板等からなる細長い表示板を外部照明によって光らせる構成にすることができる。
【実施例7】
【0077】
また、勾配段差表示線構造10は視認が容易な立体的な構造物として構成することができる。立体構造からなる勾配段差表示線構造10としては、植栽壁、防塵壁、防護壁、防音壁又はトンネル壁等の側壁2、又は側壁2の棚状部、壁孔部に照明灯、テープやフィルムを施して設けることができる。又は、側壁2に設けた棒状部材、ワイヤ、鎖、又はロープで構成することができる。又は、側壁2に設けた前記の棒状部材等に照明灯、テープ又は反射部材、又は、そのいずれかの組み合わせからなる表示手段を施して線状に設けることができる。
【0078】
図7に記載の実施例において、立体構造からなる勾配段差表示線構造10として、平板状又は断面湾曲板状の鉄板状のガードレール20に、高位置表示線部分11,低位置表示線部分12及び段差表示線部分13からなる勾配段差表示線構造10を、発光体、反射部材、フィルム、テープ又はペイントにより表示してある。
【0079】
また、このガードレール20の支柱21に高さ調整可能な支持部材22を立設して、鎖、ワイヤ、ロープ、棒、照明灯、反射部材又はその組合わせからなる高位置表示線部分11,低位置表示線部分12及び段差表示線部分13からなる立体的な勾配段差表示線構造10を設けてある。
【0080】
また、図7には、照明灯の支柱23に、鎖、ワイヤ、ロープ、棒、照明灯、反射部材又はその組合わせからなる高位置表示線部分11,低位置表示線部分12及び段差表示線部分13からなる立体的な勾配段差表示線構造10を設けてある。
【0081】
なお、鉄板に代えて鎖状、棒状、ロープ又はワイヤ状のガードレールの場合に、このガードレールに設けた鎖、ワイヤ、ロープ、棒によって勾配段差表示線構造10を構成することができることは勿論である。
【実施例8】
【0082】
図8に記載の実施例の場合、進行方向において隣り合う勾配段差表示線構造10の段差表示線部分13に対応して路面25に、文字、粗面、微少凹凸、白線、変色線、反射体、発光体等からなる段差表示26を設けてあり、勾配段差表示線部分13の存在を、所定間隔に設けた段差表示26によって確実に認識することができると共に、車間間隔を安全運転に適した車間距離にすることができる。なお、図8の段差表示26は路面全体に横断して設けてあるが、路肩近くの路面25の一部や路面中央にのみ設けることも勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の一実施例を示す概略説明図。
【図2】本発明の他の実施例を示す概略説明図。
【図3】本発明の他の種々の実施例を示す概略説明図。
【図4】本発明の他の実施例を示す概略説明図。
【図5】本発明の他の実施例を示す概略説明図。
【図6】本発明の他の実施例を示す概略説明図。
【図7】本発明の他の実施例を示す概略説明図。
【図8】本発明の他の実施例を示す概略説明図。
【符号の説明】
【0084】
1 走行路
2 側壁
3,4,5,6 車
10 勾配段差表示線構造
11 高位置表示線部分
12 低位置表示線部分
13 段差表示線部分
14,15 矢標
16 中間位置表示線部分
20 ガードレール
21 支柱
22 支持部材
23 支柱
25 路面
26 段差表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の側方視野内に存在する道路構造物に走行路の平坦部を含めて登り勾配又は下り勾配を示す勾配段差表示線構造を設けてなる交通渋滞防止手段。
【請求項2】
勾配段差表示線構造が低位置表示線部分と高位置表示線部分とその高低の位置表示線部分間の段差表示線部分とからなる請求項1に記載の交通渋滞防止手段。
【請求項3】
低位置表示線部分又は高位置表示線部分がそのまま平坦部に連続して設けてあることからなる請求項2に記載の交通渋滞防止手段。
【請求項4】
一の勾配段差表示線構造の段差表示線部分に連なる高位置表示線部分を次の低位置表示線部分として、或いは、低位置表示線部分を次の高位置表示線部分として、引き続いて次の登り又は下り勾配段差表示線構造を連続して設けてなる請求項2又は3に記載の交通渋滞防止手段。
【請求項5】
運転者の側方視野内に、下り勾配を示す下り勾配段差表示線構造に引き続いて登り勾配を示す登り勾配段差表示線構造を設けてなる請求項3又は4に記載の交通渋滞防止手段。
【請求項6】
運転者の側方視野内に、登り勾配を示す登り勾配段差表示線構造に引き続いて下り勾配を示す下り勾配段差表示線構造を設けてなる請求項3又は4に記載の交通渋滞防止手段。
【請求項7】
登り勾配又は下り勾配を示す勾配段差表示線構造において、低位置表示線部分又は高位置表示線部分としてほぼ水平をなす水平直線部を設けてなる請求項1乃至6のいずれかに記載の交通渋滞防止手段。
【請求項8】
登り勾配又は下り勾配を示す勾配段差表示線構造において、低位置表示線部分又は高位置表示線部分として水平に対して勾配が実際より大きく傾斜して見える傾斜線部を設けてなる請求項1乃至6のいずれかに記載の交通渋滞防止手段。
【請求項9】
勾配段差表示線構造の位置表示線部分に下方又は上方に向かって湾曲した湾曲線部を設けてなる請求項8に記載の交通渋滞防止手段。
【請求項10】
勾配段差表示線構造を運転席の高い車用と運転席の低い車用に2段以上に設けてなる請求項1乃至9のいずれかに記載の交通渋滞防止手段。
【請求項11】
勾配段差表示線構造が立体構造からなる請求項1乃至10のいずれかに記載の交通渋滞防止手段。
【請求項12】
立体構造からなる勾配段差表示線構造が、植栽壁、防塵壁、防護壁、防音壁又はトンネル壁からなる側壁に設けた棒状部材、ワイヤ、鎖、又はロープ、又は、側壁に設けた照明灯、フィリム、テープ又は反射部材、又は、そのいずれかの組み合わせからなる請求項11に記載の交通渋滞防止手段。
【請求項13】
立体構造からなる勾配段差表示線構造が、鉄板状のガードレール、鎖状のガードレール、ロープ又はワイヤ状のガードレール、棒状のガードレール、ガードレールに設けた鎖、ワイヤ、ロープ、棒、照明灯、反射部材又はその組合わせからなる請求項11に記載の交通渋滞防止手段。
【請求項14】
勾配段差表示線構造が側壁又はガードレールに設けた構造物表面から突出の少ない平面構造からなる請求項1乃至10のいずれかに記載の交通渋滞防止手段。
【請求項15】
平面構造からなる勾配段差表示線構造が側壁に施したフィルム、テープ、タイル、ペイント又はその組み合わせからなる請求項14に記載の交通渋滞防止手段。
【請求項16】
平面構造からなる勾配段差表示線構造が側壁に内蔵した照明灯、又は、側壁に貼り付けた反射板等の光学手段からなる請求項14に記載の交通渋滞防止手段。
【請求項17】
隣り合う勾配段差表示線構造の段差表示線部の間隔が安全運転の車間距離で設けてある請求項1乃至16のいずれかに記載の交通渋滞防止手段。
【請求項18】
安全運転の車間距離が20〜120mに設けてある請求項17に記載の交通渋滞防止手段。
【請求項19】
隣り合う勾配段差表示線構造の段差表示線部に対応して路面に、文字、粗面、微少凹凸、白線、変色線、反射体、発光体等からなる段差表示を施してなる請求項1乃至18のいずれかに記載の交通渋滞防止手段。
【請求項20】
勾配段差表示線構造の低位置表示線部分、高位置表示線部分又は段差表示線部分に車の進行方向を示す矢印構造を設けてなる請求項1乃至19のいずれかに記載の交通渋滞防止手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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