説明

交通車両の案内装置

【課題】案内輪の回転にて素材の変形が繰り返されることによる発熱問題が生じにくく、比較的簡単な構造で、分岐案内輪に限られず主案内輪を含む案内輪の衝撃緩和を図ることが可能な交通車両の案内装置を提供することにある。
【解決手段】本発明は、走行軌道1の両側に設置される案内レール2と、車両側に取付けられる案内輪3とを備え、案内輪3が案内レール2に接して転動することによって車両を案内する交通車両の案内装置において、案内輪3は、軸受4を介して輪軸5に回転自在に支持され、案内輪3と輪軸5との間には、衝撃荷重を吸収するための緩衝部材6が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、案内輪を走行軌道の案内レールに当接させることにより、車両を走行軌道に沿って案内しながら走行させる交通車両の案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通車両が軌道上や路面等の設定された経路を走行する新交通システムにおいては、交通車両の案内装置が設備されている(例えば、特許文献1)。この案内装置は、図6に示すように、走行軌道51の左右両側に設置される案内レール52と、交通車両の車体前後部に取付けられる案内輪53とを備えており、案内輪53が案内レール52に接して転動することによって、走行する交通車両が走行軌道51に沿って案内されるようになっている。
【0003】
そのため、案内輪53は、車幅方向へ延在する前後の案内横梁(図示せず)の左右両端部にそれぞれ回転可能に設けられており、軸心が偏位した状態で上下に位置する主案内輪53aと分岐案内輪53bとから構成されている。また、案内レール52は、走行軌道51に沿って設置される主案内レール52aと、走行軌道51の分岐箇所に設置される分岐案内レール52bとから構成されている。そして、主案内輪53aは主案内レール52aに接し、分岐案内輪53bは分岐案内レール52bに接するようになっている。
このような主案内輪53a及び分岐案内輪53bからなる案内輪53の素材として、従来技術では、主案内輪53aと案内レール52の主案内レール52aとが接触した際、または分岐案内輪53bと案内レール52の分岐案内レール52bとが接触した際の衝撃力の発生を緩和低減するため、柔らかいウレタンゴムやナイロン素材が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−278004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術のように、案内輪53に柔らかい素材を用いると、衝撃荷重を低減することはできるが、案内輪53の回転によって弾性素材の変形が繰返し行われることになるので、発熱が発生してしまうという問題を有している。したがって、案内輪53を安易に柔らかくすることはできず、柔らかくするには限界がある。また、柔らかくすると弾性素材の変形量が増大し、発熱が大きくなってしまうという問題も有している。
一方、剛性の高い案内輪53を用いた場合、交通車両の走行中に、主案内輪53a及び分岐案内輪53bに対して過大な衝撃荷重が加わることがあるので、案内装置の寿命が短くなる上、交通車両の乗り心地の低下や騒音増大という問題を引き起こす場合がある。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、案内輪の回転にて素材の変形が繰り返されることによる発熱問題が生じにくく、比較的簡単な構造で、分岐案内輪に限られず主案内輪を含む案内輪の衝撃緩和を図ることが可能な交通車両の案内装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、走行軌道の両側に設置される案内レールと、車両側に取付けられる案内輪とを備え、該案内輪が前記案内レールに接して転動することによって前記車両を案内する交通車両の案内装置において、前記案内輪は、軸受を介して輪軸に回転自在に支持され、前記案内輪と前記輪軸との間には、衝撃荷重を吸収するための緩衝部材が設けられている。
【0008】
この発明において、具体的には、前記緩衝部材は、前記軸受と前記輪軸との間に設けられていることが好ましい。
そして、本発明において、前記緩衝部材には、複数の切欠き部が周方向に間隔を置いて設けられていることが好ましい。
【0009】
また、本発明において、前記緩衝部材は、前記案内輪と前記軸受との間に設けられていることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明において、前記案内輪は、主案内輪と分岐案内輪とから構成され、前記案内レールは、前記走行軌道に沿って設置される主案内レールと前記走行軌道の分岐箇所に設置される分岐案内レールとから構成されており、前記主案内輪は前記主案内レールに接し、前記分岐案内輪は前記分岐案内レールに接するようになっている。
【発明の効果】
【0011】
上述の如く、本発明に係る交通車両の案内装置は、走行軌道の両側に設置される案内レールと、車両側に取付けられる案内輪とを備え、該案内輪が前記案内レールに接して転動することによって前記車両を案内するものであって、前記案内輪は、軸受を介して輪軸に回転自在に支持され、前記案内輪と前記輪軸との間には、衝撃荷重を吸収するための緩衝部材が設けられているので、新交通システムにおいて、交通車両が走行する際に発生する案内輪への衝撃荷重を緩和低減できるとともに、コスト高を招くことなく比較的容易な改造によって製作することができる。しかも、このような衝撃荷重の緩和低減により、案内装置の長寿命化、発生騒音の低減化及び乗り心地向上を図ることができ、新交通システムへの適用に優れた案内装置を提供できる。
【0012】
また、本発明において、前記緩衝部材は、前記軸受と前記輪軸との間に設けられているので、非回転部の箇所に設置されることになり、変形が繰り返されることによる発熱問題が生じにくくなるという、より一層の効果を奏することができる。
【0013】
さらに、本発明において、前記緩衝部材には、複数の切欠き部が周方向に間隔を置いて設けられているので、緩衝部材の弾力性を高めることが可能となり、衝撃荷重を効果的に吸収することができる。
【0014】
また、本発明において、前記緩衝部材は、前記案内輪と前記軸受との間に設けられているので、案内輪へ加わった衝撃荷重を軸受に伝えずに吸収することができる。
【0015】
さらに、本発明において、前記案内輪は、主案内輪と分岐案内輪とから構成され、前記案内レールは、前記走行軌道に沿って設置される主案内レールと前記走行軌道の分岐箇所に設置される分岐案内レールとから構成されており、前記主案内輪は前記主案内レールに接し、前記分岐案内輪は前記分岐案内レールに接するようになっているので、分岐案内輪と分岐案内レールとが接触した際の衝撃力のみならず、主案内輪と主案内レールとが接触した際の衝撃力も緩和低減でき、通常走行時の乗り心地をより一層改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る交通車両の案内装置を示すものであり、その案内輪の平面断面図である。
【図2】図1における案内輪を構成する主案内輪及び分岐案内輪と案内レールを構成する主案内レール及び分岐案内レールとの位置関係を示す概略正面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る交通車両の案内装置を示すものであり、その案内輪の平面断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る交通車両の案内装置を示すものであり、その案内輪の平面断面図である。
【図5】図1における案内輪を構成する主案内輪及び分岐案内輪と案内レールを構成する主案内レール及び分岐案内レールとの位置関係を示す概略正面図である。
【図6】従来の案内輪を構成する主案内輪及び分岐案内輪と案内レールを構成する主案内レール及び分岐案内レールとの位置関係を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1及び図2は、新交通システムに適用する本発明の第1実施形態に係る交通車両の案内装置を示すものであり、図1は案内輪(主案内輪または分岐案内輪)の平面断面図、図2は案内輪を構成する主案内輪及び分岐案内輪と案内レールを構成する主案内レール及び分岐案内レールとの位置関係を表す概略正面図である。
本発明の第1実施形態に係る交通車両の案内装置は、図1及び図2に示すように、新交通システムの経路となる走行軌道1に沿ってその左右両側にそれぞれ設置される案内レール2と、図示しない交通車両の車体前後部にそれぞれ取付けられる案内輪3とを備えている。したがって、新交通システムの交通車両は、案内装置を構成する案内輪3が案内レール2に接して転動することにより、走行軌道1に沿って案内されながら走行するようになっている。
【0019】
このような案内レール2は、走行軌道1において、関連を持たせて設置される2種類の主案内レール21と分岐案内レール22とから構成されている。主案内レール21は、例えば、剛性を有するH形鋼材などを用いて形成され、走行軌道1の軌道面上の左右両側に設けられている。また、分岐案内レール22は、走行軌道1の途中に位置して別の走行軌道へ導くための分岐箇所に設置され、主案内レール21の下側内方の軌道面に立設されている。
【0020】
一方、本発明の第1実施形態に係る案内装置の案内輪3は、交通車両の車幅方向へ延在する前後の案内横梁(図示せず)の左右両端部にそれぞれ回転可能に設けられており、軸心が偏位した状態で上下に配置する主案内輪31と分岐案内輪32とから構成されている。主案内輪31は、分岐案内輪32の上方に位置して主案内レール21の側面に接するように配置されており、主案内レール21に当接すると、主案内輪31には、外側の主案内レール21から内方へ向かう横方向の荷重Faが加わるようになっている。また、分岐案内輪32は、主案内輪31の下方に位置して分岐案内レール22の側面に接するように配置されており、分岐案内レール22に当接すると、分岐案内輪32には、内側の分岐案内レール22から外方へ向かう横方向の荷重Fbが加わるようになっている。このように、主案内輪31または分岐案内輪32が主案内レール21または分岐案内レール22から横方向の荷重Fa,Fbを受けることによって、交通車両が所定の運行ルートの走行軌道1上を走行することが可能となる。
【0021】
また、本発明の第1実施形態に係る案内輪3は、図1に示すように、その主案内輪31及び分岐案内輪32が径の大きさを除いて共に同じ構造を有している。すなわち、主案内輪31(または分岐案内輪32)は、軸受4を介して輪軸5に回転自在に支持されている。また、主案内輪31(または分岐案内輪32)と輪軸5との間であって、軸受4と輪軸5との間には、衝撃荷重となる横方向の荷重Fa,Fbを吸収するための緩衝部材6が設けられている。このため、緩衝部材6は、弾力性を有するゴムなどによって製作され、主案内輪31(または分岐案内輪32)と同一の上下方向長さを有する円筒状に形成されている。
【0022】
このように構成された本発明の第1実施形態に係る交通車両の案内装置においては、案内輪3を構成する主案内輪31及び分岐案内輪32の内部に位置する軸受4と輪軸5との間に緩衝部材6が設けられているため、交通車両が案内装置にて案内されながら走行軌道1上を走行する間、主案内レール21または分岐案内レール22から横方向の衝撃荷重Fa,Fbが主案内輪31または分岐案内輪32に加わった場合でも、緩衝部材6が弾性変形することによって当該衝撃荷重Fa,Fbを効果的に吸収することができる。これによって、案内輪3より案内横梁(図示せず)などを介して交通車両に伝達される衝撃を緩和低減できるとともに、騒音の発生を抑えることができ、乗り心地が良くなる。しかも、第1実施形態の緩衝部材6は、主案内輪31及び分岐案内輪32の非回転部の箇所に配置されているため、回転によって生じる変形が繰り返されることによる発熱問題が生じにくく、案内輪3の耐久性を向上させることができる。
【0023】
[第2実施形態]
図3は、新交通システムに適用する本発明の第2実施形態に係る交通車両の案内装置を示すものであって、案内輪(主案内輪または分岐案内輪)の平面断面図である。
この第2実施形態においては、上記第1実施形態と異なり、緩衝部材6に複数の切欠き部6aが周方向に間隔を置いて設けられている。この切欠き部6aは、対向する位置の2箇所(3箇所以上でもよい)に設けられており、これら切欠き部6aによって、緩衝部材6には空隙が部分的に形成されることになる。その他の構成は上記第1実施形態と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示している。
かかる第2実施形態の案内装置においては、緩衝部材6に切欠き部6aが部分的に設けられているため、同一素材の緩衝部材6を用いた場合でも、弾力性を向上させ、衝撃荷重Fa,Fbの吸収力を高めることができる。
【0024】
[第3実施形態]
図4及び図5は、新交通システムに適用する本発明の第3実施形態に係る交通車両の案内装置を示すものであり、図4は案内輪(主案内輪または分岐案内輪)の平面断面図、図5は案内輪を構成する主案内輪及び分岐案内輪と案内レールを構成する主案内レール及び分岐案内レールとの位置関係を表す概略正面図である。
この第3実施形態においては、上記第1実施形態と異なり、緩衝部材6が案内輪3(主案内輪31または分岐案内輪32)と軸受4との間に設けられている。その他の構成は上記第1実施形態と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示している。
このように構成された本発明の第3実施形態の案内装置においては、緩衝部材6が軸受4の外周の案内輪3(主案内輪31または分岐案内輪32)側に設けられているため、案内輪3(主案内輪31または分岐案内輪32)に加わった衝撃荷重Fa,Fbを軸受に伝えずに吸収することができる。
【0025】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
例えば、既述の実施の形態では、緩衝部材6としてゴム製素材を用いて形成されているが、弾力性を有する素材であれば、合成樹脂材などを用い形成されても良い。
【符号の説明】
【0026】
1 走行軌道
2 案内レール
3 案内輪
4 軸受
5 輪軸
6 緩衝部材
6a 切欠き部
21 主案内レール
22 分岐案内レール
31 主案内輪
32 分岐案内輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行軌道の両側に設置される案内レールと、車両側に取付けられる案内輪とを備え、該案内輪が前記案内レールに接して転動することによって前記車両を案内する交通車両の案内装置において、
前記案内輪は、軸受を介して輪軸に回転自在に支持され、前記案内輪と前記輪軸との間には、衝撃荷重を吸収するための緩衝部材が設けられていることを特徴とする交通車両の案内装置。
【請求項2】
前記緩衝部材は、前記軸受と前記輪軸との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の交通車両の案内装置。
【請求項3】
前記緩衝部材には、複数の切欠き部が周方向に間隔を置いて設けられていることを特徴とする請求項2に記載の交通車両の案内装置。
【請求項4】
前記緩衝部材は、前記案内輪と前記軸受との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の交通車両の案内装置。
【請求項5】
前記案内輪は、主案内輪と分岐案内輪とから構成され、前記案内レールは、前記走行軌道に沿って設置される主案内レールと前記走行軌道の分岐箇所に設置される分岐案内レールとから構成されており、前記主案内輪は前記主案内レールに接し、前記分岐案内輪は前記分岐案内レールに接するようになっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の交通車両の案内装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−158941(P2010−158941A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1394(P2009−1394)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】