説明

人体接近検出システム及び警護システム

【課題】保安塀に外部から接近した侵入者のみを精度よく検出する。
【解決手段】検知パネル11と、検知パネル11の保安区域内部側に近接配置した異方性制御パネル12のセットを連接して保安塀10を形成する。監視信号出力装置31は、所定周波数の監視信号をインダクタ315を介して検知パネル11に印加する。接近検出装置32は、検知パネル11の電位変動を検出し、検出した電位変動を表す検出信号中の監視信号のレベル変動に基づいて、検知パネル11への人体の接近を検出する。監視信号の周波数は、検知パネル11に人体が接近していないときの、インダクタ315への監視信号の出力点から接近検出装置32の入力点までの間の周波数領域の伝達特性においてピークが表れる周波数と一致させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、保安区域の外周警護の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
保安区域への外部よりの接近を検知する技術としては、監視カメラで撮影した画像を画像処理して、侵入者の有無を検出する技術(たとえば、特許文献1)や、赤外線センサや超音波センサを用いて、侵入者の有無を検出する技術(たとえば、特許文献2)が知られている。
【0003】
なお、本発明において行う信号検出に関する技術としては、本出願人が本願に先行する出願において開示した、コイルとコイルに軸方向に近接して配置した電極より構成されるコイルセンサを用いて交流信号を検出する交流信号検出装置が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-294974号公報
【特許文献2】特開2010-026917号公報
【特許文献3】特開2009-212675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記監視カメラや赤外線センサを侵入者の検知に用いた場合、霧や雨天時に検出感度が低下することが否めない。また、超音波センサを侵入者の検知に用いる技術によれば、風による枯れ葉の動きなどによって、侵入者の誤検出が生じやすい。
また、いずれの技術も、施設の塀の全周に渡って侵入者を検出するような用途に用いる場合に、真に塀に接近した侵入者のみを弁別して検知するように、侵入者を検出するエリアを狭域化することが困難である。
そこで、本出願人は、より精度よく人体の真なる接近を検出できるシステムとして、特許出願(特願2011-23795号)において、パネルと人体との容量性結合を利用したシステムを提示したところ、このようなシステムの現実用途の適用においては、単に人体の接近の検出を行えるのみならず、所望の方向側において接近した人体のみを、異方性をもって検出できることが重要となる。たとえば、塀や柵で囲まれた保安区域内部への不審者の侵入を検出する場合には、保安区域内側からの塀や柵への人体の接近は検出せずに、保安区域外側からの塀や柵への人体の接近のみを検出できるようにすることが好ましい。
【0006】
そこで、本発明は、所望の方向からの人体の接近のみを、精度よく検出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、人体の接近を検出する人体接近検出システムに、接地されていない第1の導電体と、前記第1の導電体に近接配置した、当該第1の導電体と絶縁された第2の導電体と、信号出力装置と、信号検出装置とを設け、前記信号出力装置を、所定周波数の監視信号を出力する監視信号生成手段と、前記監視信号生成手段の出力と前記第1の導電体との間に直列に介挿されたインダクタとを含めてより構成し、前記信号検出装置を、前記第1の導電体に接続した入力を有し、前記第1の導電体の電位変動を表す検出信号を出力する信号センサと、前記信号センサが出力する検出信号中に表れる前記監視信号のレベルを監視し、当該監視信号のレベルの変化に基づいて、前記第1の導電体への前記人体の接近を検出する接近検出手段とをふくめて構成すると共に、前記第2の導電体を、前記接近検出手段による前記人体の接近の検出の感度に、人体の前記第1の導電体に対する方向についての異方性を与えるように配置したものである。
【0008】
以上のような人体接近検出システムによれば、第1の導電体と、当該第1の導電体の前記第2の導電体が配置されていない方向側に接近した人体との容量性結合による、前記インダクタの前記第1の導電体側端と大地とのキャパシタンスの変化に伴う前記監視信号生成手段の出力と前記信号センサの入力との間の周波数領域の伝達特性の変化に従って生じる監視信号の周波数に対するゲインの変化に応じて表れる信号センサが出力する検出信号中に表れる前記監視信号のレベルの変化を利用して、前記第1の導電体の前記第2の導電体が配置されていない方向側への人体の接近を検出することができる。一方で、前記第2の導電体を間に挟むように前記第1の導電体に接近した人体と、当該第1の導電体との間には、容量性結合が発生しないので、人体の接近の検出の感度に異方性が生じ、当該第1の導電体の前記第2の導電体が配置されていない方向側に接近した人体のみを検出できるようになる。
【0009】
よって、本発明によれば、所望の方向からの人体の接近のみを、精度よく検出することができるようになる。
ここで、このような人体接近検出システムは、前記接近検出手段は、前記監視信号のレベルが所定の値よりも小さくなったときに、前記第1の導電体への前記人体の接近を検出するように構成すると共に、前記インダクタのインダクタンスと、前記インダクタの前記第1の導電体側端と大地との間の前記第1の導電体と前記第2の導電体とを介したキャパシタンスとより定まる、前記第1の導電体に人体が接近していないときの、前記監視信号生成手段の出力と前記信号センサの入力との間の周波数領域の伝達特性においてピークが現れる周波数に、前記監視信号の前記所定周波数を一致もしくは近接させるようにしてもよい。
【0010】
また、このような人体接近検出システムは、前記接近検出手段において、前記監視信号のレベルが所定の値よりも小さくなったときに、前記第1の導電体への前記人体の接近を検出すると共に、前記インダクタのインダクタンスをLとし、前記インダクタの前記第1の導電体側端と大地との間の前記第1の導電体と第2の導電体とを介したキャパシタンスをCとして、前記監視信号の前記所定周波数を、1/{2π(L×C)1/2}と一致もしくは近接させるようにしてもよい。
【0011】
また、以上のような人体接近検出システムは、前記監視信号生成手段において、前記所定周波数の信号を、所定のデータ信号で変調して前記監視信号として生成し、前記接近検出手段において、前記信号センサが出力する検出信号中に表れる前記監視信号から前記データ信号を復調し、復調したデータ信号のレベルを前記監視信号のレベルを表すものとして用いて、前記第1の導電体への前記人体の接近を検出するように構成してもよい。
【0012】
また、以上のような人体接近検出システムは、前記信号センサを、コイルと、当該信号センサの入力に接続され、かつ、前記コイルの中央穴に近接させて配置された電極と、前記コイルの出力に基づいて、前記検出信号を出力する検出信号出力手段とより構成するようにしてもよい。
【0013】
また、前記課題達成のために、本発明は、以上のような人体接近検出システムを用いて、保安区域内部を外部より遮断する構造物への人体の接近を検出する警護システムも提供する。ここで、この警護システムにおいて、前記第1の導電体と前記第2の導電体は、前記第2の導電体が前記保安区域内部を前記第1の導電体に対して遮蔽するように前記構造物に組み込まれるものである。また、この警護システムにおいては、前記人体検出システムの前記第1の導電体と前記第2の導電体とを並行に配置されたパネル状の二枚の導電体とし、前記構造物を、柵、フェンス、建造物の壁、建造物の窓、または、扉とするようにしてもよい。
【0014】
また、前記課題達成のために、本発明は、以上のような人体接近検出システムを用いて、保安区域内部を外部より遮断する塀への人体の接近を検出する警護システムも提供する。ここで、この警護システムにおいて、前記人体検出システムの前記第1の導電体と前記第2の導電体とは並行に配置されたパネル状の二枚の導電体であり、前記塀は、前記人体検出システムの前記第1の導電体と前記第2の導電体とのセットを、前記第2の導電体が前記保安区域内部を前記第1の導電体に対して遮蔽する配置で、複数セット連設して形成されているものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば所望の方向からの人体の接近のみを、精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る警護システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る監視装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る監視信号出力装置のアンプ出力から接近検出装置までの間の等価回路を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る接近検出の原理を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る信号センサの構成を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る交流センサの構成例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る警護システムの応用例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る人体接近検出技術の応用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る警護システムの実施形態について説明する。
本実施形態に係る警護システムは、たとえば、図1aに示すように、工場、研究施設、発電所、軍事施設等である保安区域100を内部に囲む保安塀10への、人体の接近を検出するものである。
ここで、保安塀10は、図1bに示すように、検知パネル11と、検知パネル11に近接させて検知パネル11と並行配置した異方性制御パネル12とのセットを、複数セット、保安区域100を内部に囲むように並べて支柱2を用いて固定することにより形成されている。
【0018】
ここで、検知パネル11は、金属製等の導電性を有する金網やネットフェンスなどのパネルであり、図1c1の斜視図、図1c2の側面図、図1c3の上面図に示すように、検知パネル11と大地、及び、各検知パネル11同士が相互に絶縁されるように、絶縁性の連結部材21を介して支柱2に固定されている。一方、異方性制御パネル12は、金属板等の導電性を有するパネルであり、検知パネル11と並行に配置されるように、検知パネル11よりも保安区域100内部方向側において支柱2に固定されている。また、異方性制御パネル12は、直接または支柱2を介して大地に接地されている。
【0019】
さて、図1bに示すように、本警護システムは、検知パネル毎に設けた監視装置3と、各監視装置3に接続した警報装置4とを含んで構成される。
図2に、監視装置3の構成を示す。
図示するように、監視装置3は、監視信号出力装置31と、接近検出装置32とより構成される。
そして、監視信号出力装置31は、所定周波数(たとえば、10Hz)の矩形波であるデータ信号を出力するデータ出力部311、所定周波数Ftx(たとえば、2MHz)のキャリア信号を出力するキャリア発振器312、データ信号でキャリア信号をASK変調する変調器313、インダクタンスLのコイル等のインダクタ315、変調器313が変調した変調信号を増幅し、監視信号としてインダクタ315を介して検知パネル11に印加するアンプ314とを有している。
【0020】
また、接近検出装置32は、検知パネル11の電位変動を検出し検出信号として出力する信号センサ321、信号センサ321が出力する検出信号を上述したキャリア信号の周波数FtxでASK復調し復調したデータ信号を受信信号として出力する復調器322、復調器322が出力した受信信号のレベルの所定しきい値以下への低下を検出する信号異常検出部323、信号異常検出部323が受信信号のレベルの所定しきい値以下への低下を検出したときに検知パネル11への人体の接近を表す接近検出信号を警報装置4に送信する接近通知部324とを有している。
【0021】
さて、ここで、図2の、監視信号出力装置31のアンプ314の出力RefTから、接近検出装置32の入力RefRまでの間(図2、200で示した部分)の伝達の周波数応答特性、すなわち、出力RefTから入力RefRまでの間の周波数領域の伝達特性について説明する。
いま、図3a1に示すように、検知パネル11に人体が接近していない場合、インダクタ315の出力側(接近検出装置側)端に、インダクタ315の出力と大地との間の検知パネル11を介したキャパシタンスCfと、インダクタ315の出力と大地との間の異方性制御パネル12を介したキャパシタンスCsが存在している状態となる。したがって、出力RefTから入力RefRまでの間の伝達関数は、図3a2で示す等価回路で示すことができ、この場合、出力RefTから入力RefRまでの間の周波数領域の伝達特性(周波数応答特性)は、インダクタ315のインダクタンスLとキャパシタンスCf+CsによるLCフィルタの周波数応答特性と同等となる。
【0022】
よって、検知パネル11に人体が接近していない場合の出力RefTから入力RefRまでの間の周波数領域の伝達特性(周波数応答特性)は、図4aの401に示すように、LCフィルタの共振周波数
F(f)=1/[2π{L×(Cf+Cs)}1/2]
にピークを持つものとなる。
【0023】
一方、図3b1に示すように、検知パネル11の異方性制御パネル12が配置されていない側、すなわち、保安区域100の外部方向側に人体200が接近した場合、検知パネル11と人体が容量結合し、インダクタ315の出力側(接近検出装置側)端に、インダクタ315の出力と大地との間の検知パネル11を介したキャパシタンスCfとインダクタ315の出力と大地との間の異方性制御パネル12を介したキャパシタンスCsとに加え、インダクタ315の出力と大地との間の人体を介したキャパシタンスChが存在している状態となる。したがって、出力RefTから入力RefRまでの間の伝達関数は、図3b2で示す等価回路で示すことができ、この場合、出力RefTから入力RefRまでの間の周波数領域の伝達特性(周波数応答特性)は、インダクタ315のインダクタンスLとキャパシタンスCf+Cs+ChによるLCフィルタの周波数応答特性と同等となる。
【0024】
よって、検知パネル11に人体が接近している場合の、出力RefTから入力RefRまでの間の周波数領域の伝達特性(周波数応答特性)は、図4aの402に示すように、LCフィルタの共振周波数
F(f+h)=1/[2π{L×(Cf+Cs+Ch)}1/2]
にピークを持つものとなる。
【0025】
次に、図3c1に示すように、検知パネル11の異方性制御パネル12が配置されている側、すなわち、保安区域100の内部方向側に、間に異方性制御パネル12が介在した形態で人体200が接近した場合、検知パネル11と人体とが直接容量結合することはなく、インダクタ315の出力側(接近検出装置側)端に、インダクタ315の出力と大地との間の検知パネル11を介したキャパシタンスCfとインダクタ315の出力と大地との間の異方性制御パネル12を介したキャパシタンスCsのみが存在している状態となる。
【0026】
したがって、出力RefTから入力RefRまでの間の伝達関数は、図3c2で示す等価回路で示すことができ、この場合、出力RefTから入力RefRまでの間の周波数領域の伝達特性(周波数応答特性)は、インダクタ315のインダクタンスLとキャパシタンスCf+CsによるLCフィルタの周波数応答特性と同等となる。
【0027】
よって、検知パネル11に間に異方性制御パネル12が介在した形態で人体200が接近した場合、出力RefTから入力RefRまでの間の周波数領域の伝達特性(周波数応答特性)は、検知パネル11に人体が接近していない場合と同様となり、図4aの401に示すように、LCフィルタの共振周波数
F(f)=1/[2π{L×(Cf+Cs)}1/2]
にピークを持つものとなる。
【0028】
さて、本実施形態では、キャリア発振器312で生成するキャリア信号の周波数Ftxが、図4aの人体が検知パネル11に接近していないときの周波数応答特性401におけるピークの周波数F(f)に一致、または、ほぼ一致するように、周波数Ftxとインダクタ315とインダクタンスLを設定する。
【0029】
ここで、図4aに示されるように、人体が検知パネル11に接近していないときの周波数応答特性401におけるピークの周波数F(f)近傍におけるゲインは、人体が異方性制御パネル12が配置されていない側から検知パネル11に接近しているときの周波数応答特性402におけるゲイン412の方が、人体が検知パネル11に接近していないとき及び人体が異方性制御パネル12が配置されている側から検知パネル11に接近しているときの周波数応答特性401におけるゲイン411よりも小さくなる。よって、キャリア信号の周波数Ftxが周波数F(f)に一致、または、ほぼ一致する場合、監視信号のゲインも人体が異方性制御パネル12が配置されていない側から検知パネル11に接近しているときの方が、人体が検知パネル11に接近していないとき及び人体が異方性制御パネル12が配置されている側から検知パネル11に接近しているときよりも小さくなる。
【0030】
したがって、キャリア信号の周波数Ftxを人体が検知パネル11に接近していないときの周波数応答特性401におけるピークの周波数F(f)に一致、または、ほぼ一致するようにすると、侵入者の人体が異方性制御パネル12が配置されていない側、すなわち、保安区域外部側から検知パネル11へ接近するのに伴い、検知パネル11と侵入者の身体の容量結合が強まり、周波数応答特性が図4aの401から402のように変化して監視信号のゲインが徐々に低下し、これにより、信号センサ321の出力する検出信号中の監視信号の振幅レベルは徐々に低下し、監視信号を復調したデータ信号のレベルも徐々に低下することとなる。
【0031】
一方、侵入者の人体が異方性制御パネル12が配置されている側、すなわち、保安区域内部側から検知パネル11へ接近した場合には、周波数応答特性は図4aの401のまま維持されるので、監視信号やデータ信号のレベルは、そのまま維持される。
したがって、上述のように信号異常検出部323において、データ信号のレベルが、適当なしきい値レベルよりも小さくなったことを検出することにより、検知パネル11への保安区域内部側からの人体の接近は検出せずに、検知パネル11への侵入者の保安区域外部側からのみの接近を検出することができる。
【0032】
ここで、保安区域外部側の侵入者と検知パネル11との距離が大きくなるにつれて、検知パネル11と侵入者の身体との容量結合の大きさは急速に弱まり、周波数応答特性は図4aの人体が検知パネル11に接近していないときの周波数応答特性401に復帰するので、このような構成によれば、保安壁に真に接近した侵入者のみを、精度よく検出することができることになる。
【0033】
さて、図1に戻り、警報装置4は、監視装置3の信号異常検出部323から接近検出信号を受信したならば、接近検出信号を出力した監視装置3に対応する保安塀10を位置を識別可能な形態で、所定の警報出力を行う。
さて、次に、監視装置3の接近検出装置32の信号センサ321としては、たとえば、上述した特許文献3で示した交流信号検出装置を用いることができる。
図5に、特許文献3で示した交流信号検出装置を用いた場合の、信号センサ321の構成を示す。
図5に示すように、信号センサ321は、コイル511と、コイル511に近接させて配置した第1電極512と、コイル511に近接させて配置した第2電極513とより構成される交流センサ510を備えている。ここで、第1電極512と第2電極513は、コイル511の軸方向について相互に反対側に、間にコイル511を挟み込むように配置されている。そして、第1電極512の入力INに、検知パネル11が接続され、検知パネル11の電圧が印加される。
【0034】
また、信号センサ321は、FET521と抵抗522と抵抗523と周波数特性調整用のコンデンサ524とより構成される反転増幅回路520を備え、コイル511の一端がFET521のゲートに接続され、コイル511の他端が接地されている。そして、FET521は、ゲート電圧であるコイル511の誘起電圧に応じてFET521のソース-ドレイン電流の大きさを変化させ、抵抗522、抵抗523は、FET521のソース-ドレイン電流の大きさを、大小が反転(位相反転)した電圧に変換し、反転増幅回路520の出力とする。そして、コンデンサ531で反転増幅回路520の出力の交流成分が抽出され、信号センサ321から復調器322への出力OUTとなる。
【0035】
また、この反転増幅回路520の出力電圧は、抵抗541、低キャパシタンスのコンデンサ542を介して、第2電極513に印可される。
また、この他、信号センサ321は、コイル511の共振周波数を設定するためのコンデンサ551や、不要周波数成分を減衰するためのコイル552なども備えている。
このような信号センサ321の構成によれば、接近検出装置32の入力RefRから第1電極512に検知パネル11の電圧が印加されると、当該電圧の変動であるところの交流信号によって第1電極512から発生する、コイル511の軸方向にコイル511を貫く磁束に変化が発生する。
【0036】
一方で、コイル511を貫く磁束に変化が生じると、コイル511の誘起電圧による交流信号が反転増幅回路520に入力され、入力された交流信号は反転増幅回路520で反転増幅された上で抵抗541、コンデンサ542を介して第2電極513に帰還される。
そして、当該第2電極513に帰還された交流信号によって第2電極513から発生するコイル511の軸方向にコイル511を貫く磁束の変化も発生する。
そして、コイル511を貫く磁束の変化は、第1電極512から発生する磁束の磁束変化と第2電極513から発生する磁束の磁束変化によってもたらさせることになる。そこで、抵抗541の抵抗値やコンデンサ542の容量は、第2電極513に帰還する交流信号の位相が、コイル511に生じる誘起電圧が最大となる位相となるように設定する。
【0037】
ただし、第2電極513、抵抗541、コンデンサ542は、これを設けないようにしてもよい。
さて、ここで、このような信号センサ321の全体は、プリント基板を用いて実現したり、集積回路として実現することができる。
また、信号センサ321の交流センサ510は、図6aに示すように、フェライト製のコアを有するコイル511と、コアの上面に固定した銅性の第1電極512と、コアの下面に固定した銅性の第2電極513と、第1電極512や第2電極513を封止する周囲空間よりも透磁率の大きな封止体401とより構成することができる。なお、封止体401としては、磁性粉末を混合したエポキシ樹脂などを用いることができる。
【0038】
また、このような交流センサ510は、プリント基板や半導体基板の導体パターンとして形成することもできる。
すなわち、プリント基板の導体パターンとして、信号センサ321を形成する場合には、たとえば、次のように交流センサ510を形成する。
すなわち、図6b1に示すようなプリント基板600の層構造を、図6b2に示すようにプリント基板600を板状またはフィルム状の基材601の上に、第1パターン層602、第1絶縁層603、第2パターン層604、第1絶縁層605、第3パターン層606を当該順序で積層したものとする。
【0039】
そして、図6b3に示すように、第1パターン層602に設けた導電体パターンにより第2電極513を形成し、第2パターン層604に設けた渦巻き形状を有する導電体パターンによってコイル511を形成し、第3パターン層606に設けた導電体パターンにより第1電極512を形成する。
【0040】
ここで、第1電極512、第2電極513の導電体パターンは、図6b4にプリント基盤を鉛直方向から見た配置を示すように、コイル511のパターンを覆うように形成する。
なお、交流センサ510において、第1電極512、第2電極513の導電体パターンは、必ずしも、コイル511のパターンの全てを覆うように形成しなくてもよく、コイル511のパターンの一部のみを覆うように形成してもよいし、コイル511のパターンの中央部分を除く部分を覆うように形成してもよい。
【0041】
なお、図6bには、プリント基板を用いて交流センサ510を形成する場合について説明したが、交流センサ510は、半導体基板上にも、同様に形成することができる。
以上、本発明の実施形態について説明した。
ここで、図4bに示すように、キャリア発振器312で生成するキャリア信号の周波数Ftxが、人体が異方性制御パネル12が配置されていない側から検知パネル11に接近しているときの周波数応答特性402におけるピークの周波数F(f+h)に一致、または、ほぼ一致するように、周波数Ftxのインダクタ315とインダクタンスLを設定すれば、当該周波数F(f+h)近傍におけるゲインは、人体が異方性制御パネル12が配置されていない側から検知パネル11に接近しているときの周波数応答特性402におけるゲイン422の方が、人体が検知パネル11に接近していないとき、及び、人体が異方性制御パネル12が配置されている側から検知パネル11に接近しているときの周波数応答特性401におけるゲイン421の方よりも大きくなる。よって、この場合は、侵入者の異方性制御パネル12が配置されていない側からの検知パネル11への接近に伴い、検知パネル11と侵入者の身体が容量結合して、周波数領域の伝達関数が図4aの401から402のように変化して監視信号のゲインが徐々に増大し、これにより、信号センサ321の出力する検出信号中の監視信号の振幅レベルは徐々に増大し、監視信号を復調したデータ信号のレベルも徐々に増大することとなる。
【0042】
そこで、以上の実施形態においては、キャリア発振器312で生成するキャリア信号の周波数Ftxを、図4aの人体が異方性制御パネル12が配置されていない側から検知パネル11に接近しているときの周波数応答特性402におけるピークの周波数F(f+h)に一致、または、ほぼ一致するように設定し、信号異常検出部323において、データ信号のレベルが適当なしきい値レベルを超えたときに、検知パネル11への侵入者の接近を検出するようにしてもよい。
【0043】
また、以上の実施形態では、キャリア信号をデータ信号で変調した信号を監視信号として監視信号出力装置31から検知パネル11に出力し、接近検出装置32において、検出信号を復調したデータ信号のレベルから人体の接近を検出したが、これは、監視信号出力装置31からキャリア信号をそのまま監視信号として検知パネル11に出力し、接近検出装置32において、検出信号に含まれる監視信号のレベルから人体の接近を検出するようにしてもよい。
【0044】
また、以上の実施形態では、検知パネル11として金網やネットフェンスなどの格子を有するパネルを用いたが、これは図7a1に示す導電性の平板状のパネルや、図7a2に示すような導電性の平板状のパネルに多数の孔を設けたものなども用いることができる。
また、以上の実施形態における異方性制御パネル12としては、金属板の他に、金網やネットフェンスなどの格子を有するパネルや、図7a2に示すような導電性の平板状のパネルに多数の孔を設けたものなども用いることができる。
また、図7bのb1に外観を、b2、b3、b4にb1のA-A線による断面を示すように、非導電性の板状の構造材1の内部または外面上に設けた導電性のパネルやネットやシートやフィルムの層として検知パネル11や異方性制御パネル12を構成するようにしてもよい。なお、図7bの場合は、構造材1を支柱2に固定することとなる。
【0045】
また、以上の実施形態では、異方性制御パネル12を、検知パネル11の一面を遮蔽するように設けたが、これは人体を検知したい任意の方向に応じて、検知パネル11の人体を検知したくない方向側を異方性制御パネル12で遮蔽するように、異方性制御パネル12の形状や検知パネル11に対する配置を、たとえば、図7c1-c3の側面図や、d1-d3の上面図に示すように適宜設定するようにしてよい。
【0046】
また、以上の実施形態は、図8aに示すように異方性制御パネル12を導電性の床800に接地し、インダクタ315の出力と床800との間の検知パネル11を介したキャパシタンスを上述したCfとして用いるようにしてもよい。
また、以上の実施形態では、塀に接近する侵入者を検知する場合について示したが、本実施形態は、柵、フェンス、建造物の壁、建造物の窓、扉などの、保安区域を外部に対して遮断する任意の構造物への侵入者を検知する場合について同様に適用することができる。また、この場合には、これら構造物を構成する部材に、図7bに示したように検知パネル11や異方性制御パネル12を組み込んだり、検知パネル11や異方性制御パネル12自体を当該構造物として用いるようにしてもよい。なお、窓に適用する場合には、たとえば、窓ガラスを形成する透明板の内部に、金属細線の網や薄膜等の導電性の層を検知パネル11や異方性制御パネル12として設け、窓の透明性が損なわれないようにする。
また、本実施形態に係る、検知パネル11と異方性制御パネル12と監視装置3の組を人体接近検出装置として抜き出して、警護システム以外の、人体の接近を検出する任意のシステムにも同様に適用することができる。
【0047】
すなわち、このような人体接近検出装置は、たとえば、図8bに示すような、自動車のドアロックシステムにおいて、ドアノブ付近に、検知パネル11と異方性制御パネル12のセットを検知パネル11を外側として配置して、ドアノブに人体が接近することを検出するために適用することができる。なお、このドアロックシステムにおいて、ドアノブへの人体の接近は、ドアの開錠のためのリモコンキーとの通信のトリガ等として用いることができる。
【0048】
また、このような人体接近検出装置は、たとえば、図8c1に示すように、自動ドアシステムにおいて、ドア810に検知パネル11と異方性制御パネル12を内挿して、ドアの開動作を行うために、ドア810への人体の接近を検出するためなどにも適用することができる。また、この場合には、図8c2に自動ドアシステムのドア810の正面図における断面線A-Aによる断面を図8c3に示すように、ドア810内に、二枚の検知パネル11を間に異方性制御パネル12を挟む形態で設け、各検知パネル11にそれぞれ監視装置3を接続すれば、ドア810の出入りのそれぞれについて、人体接近を検出し、出のみ人体接近に応じてドア810の開動作を行うようにしたり、入りのみ人体接近に応じてドア810の開動作を行うようにしたり、出入りの双方について人体接近に応じてドア810の開動作を行うようにしたりすることができる。
【0049】
なお、このような人体接近検出装置に警報装置4を接続すれば、夜間などの自動ドアの施錠時には、人体接近検出装置を、ドア810への不審者接近を検出する警護システムとしても利用することができる。ここで、このように警護システムとしても利用する場合において、外部側からの人体の接近のみを検出する場合には、内側に配置した検知パネル11による人体検出を停止するようにすればよい。
【0050】
また、以上の実施形態における、検知パネル11と異方性制御パネル12の形状は必ずしもパネル状の形状でなくてもよい。すなわち、たとえば、検知パネル11と異方性制御パネル12として、図8dに示すような柱形状の部材を用いるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0051】
2…支柱、3…監視装置、4…警報装置、10…保安塀、11…検知パネル、12…異方性制御パネル、21…連結部材、31…監視信号出力装置、32…接近検出装置、311…データ出力部、312…キャリア発振器、313…変調器、314…アンプ、315…インダクタ、321…信号センサ、322…復調器、323…信号異常検出部、324…接近通知部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の接近を検出する人体接近検出システムであって、
接地されていない第1の導電体と、
前記第1の導電体に近接配置した、当該第1の導電体と絶縁された第2の導電体と、
信号出力装置と、
信号検出装置とを有し、
前記信号出力装置は、
所定周波数の監視信号を出力する監視信号生成手段と、
前記監視信号生成手段の出力と前記第1の導電体との間に直列に介挿されたインダクタとを有し、
前記信号検出装置は、
前記第1の導電体に接続した入力を有し、前記第1の導電体の電位変動を表す検出信号を出力する信号センサと、
前記信号センサが出力する検出信号中に表れる前記監視信号のレベルを監視し、当該監視信号のレベルの変化に基づいて、前記第1の導電体への前記人体の接近を検出する接近検出手段とを有し、
前記第2の導電体は、前記接近検出手段による前記人体の接近の検出の感度に、人体の前記第1の導電体に対する方向についての異方性を与えるように配置されていることを特徴とする人体接近検出システム。
【請求項2】
請求項1記載の人体接近検出システムであって、
前記接近検出手段は、前記監視信号のレベルが所定の値よりも小さくなったときに、前記第1の導電体への前記人体の接近を検出し、
前記インダクタのインダクタンスと、前記インダクタの前記第1の導電体側端と大地との間の前記第1の導電体と前記第2の導電体とを介したキャパシタンスとより定まる、前記第1の導電体に人体が接近していないときの、前記監視信号生成手段の出力と前記信号センサの入力との間の周波数領域の伝達特性においてピークが現れる周波数は、前記監視信号の前記所定周波数と一致もしくは近接していることを特徴とする人体接近検出システム。
【請求項3】
請求項1記載の人体接近検出システムであって、
前記接近検出手段は、前記監視信号のレベルが所定の値よりも小さくなったときに、前記第1の導電体への前記人体の接近を検出し、
前記インダクタのインダクタンスをLとし、前記インダクタの前記第1の導電体側端と大地との間の前記第1の導電体と第2の導電体とを介したキャパシタンスをCとして、前記監視信号の前記所定周波数は、1/{2π(L×C)1/2}と一致もしくは近接していることを特徴とする人体接近検出システム。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の人体接近検出システムであって、
前記監視信号生成手段は、前記所定周波数の信号を、所定のデータ信号で変調して前記監視信号として生成し、
前記接近検出手段は、前記信号センサが出力する検出信号中に表れる前記監視信号から前記データ信号を復調し、復調したデータ信号のレベルを前記監視信号のレベルを表すものとして用いて、前記第1の導電体への前記人体の接近を検出することを特徴とする人体接近検出システム。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載の人体接近検出システムであって、
前記信号センサは、
コイルと、
当該信号センサの入力に接続され、かつ、前記コイルの中央穴に近接させて配置された電極と、
前記コイルの出力に基づいて、前記検出信号を出力する検出信号出力手段とを有することを特徴とする人体接近検出システム。
【請求項6】
保安区域内部を外部より遮断する構造物への人体の接近を検出する警護システムであって、
請求項1、2、3、4または5記載の人体接近検出システムを備え、
前記第1の導電体と前記第2の導電体とは、前記第2の導電体が前記保安区域内部を前記第1の導電体に対して遮蔽するように、前記構造物に組み込まれていることを特徴とする警護システム。
【請求項7】
請求項6記載の警護システムであって、
前記人体検出システムの前記第1の導電体と前記第2の導電体とは並行に配置されたパネル状の二枚の導電体であり、
前記構造物は、柵、フェンス、建造物の壁、建造物の窓、または、扉であることを特徴とする警護システム。
【請求項8】
保安区域内部を外部より遮断する塀への人体の接近を検出する警護システムであって、
請求項1、2、3、4または5記載の人体接近検出システムを複数備え、
前記人体検出システムの前記第1の導電体と前記第2の導電体とは、並行に配置されたパネル状の二枚の導電体であり、
前記塀は、前記人体検出システムの前記第1の導電体と前記第2の導電体とのセットを、前記第2の導電体が前記保安区域内部を前記第1の導電体に対して遮蔽する配置で、複数セット連設して形成されていることを特徴とする警護システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−3947(P2013−3947A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136116(P2011−136116)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(504256774)株式会社カイザーテクノロジー (17)
【Fターム(参考)】