説明

人体支持装置

【課題】人体を支持する面が、全ての方向において体形にフィットするように沈み込み、その形状を維持するとともに、人の姿勢の変化に追従して自動的に沈み込み形状が変化する人体支持装置を提供する。
【解決手段】人体を支持する面を形成する可撓性をもった表皮部材1の周縁部をフレーム5に支持させ、表皮部材1の裏面側に、フレーム5に固定されたガイド部材9と、一端にヘッド部14を有し、ヘッド部14を表皮部材1に向けてガイド部材9に移動自在に支持されたロッド11と、ロッド11を一端方向に押圧するバネ部材15と、ロッド11の移動を拘束するロック及びその解除を行うロック手段18とからなる荷重受け機構8を複数の方向に所定のピッチで分布させて配置し、表皮部材1からロッド11に加わる荷重が所定値を越え、且つその荷重値が所定時間以上変化しないときに、ロック手段18によりロッド11をロックし、荷重がロック時の荷重値に対して変化したときにロッド11のロックを解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、椅子やベッド等の人体支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
椅子やベッド等の人体支持装置として、人体を支持する面が、体重によって沈み込み、その形状を維持するものがある。この種の人体支持装置としては、例えば特公昭50−14407号(特許第805692号)公報に記載されているような椅子がある。
【0003】
この椅子は、背もたれ部が、人の脊柱形状に合った形状になるものであり、背中部分を支持する背もたれ面を形成する複数の横ビーム材と、各ビーム材の両端付近の後側にそれぞれ前後方向に移動自在に配置された複数のロッドとを備えている。これらのロッドは、バネ力によりビーム材に押し付けられており、ビーム材に荷重が加わったときに、その荷重の大きさに応じて後方に移動する。そして、各ロッドはそれぞれ、手動により操作されるブレーキ機構によって前後方向に移動しないようにロックされる。
【0004】
この椅子は、背もたれ部に寄り掛かったときに、各ビーム材がそれぞれ荷重の大きさに応じて後退し、各ビーム材からなる背もたれ面が人の脊柱形状に合った形状になる。そして、その状態でブレーキ機構により各ロッドをロックすると、背もたれ面が脊柱形状に合った形状に保たれる。そのため、生理的に楽な姿勢で座ることができ、長時間座っていても疲れ難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭50−14407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記椅子は、背もたれ部の上下方向においては背もたれ面が人の脊柱形状に合った形状になるが、左右方向の背もたれ面の形状の変化は、各ビーム材の荷重による撓み変形程度である。そのため、背中部分を横方向からも抱えるようなフィット感が得られない。また、上記椅子は、背もたれ部への寄り掛かり姿勢を変えるときや、体形が異なる別人が座るときに、その都度、ブレーキ機構による各ロッドのロックを解除し、背もたれ面が脊柱形状に合った形状になったところで再びブレーキ機構を操作して各ロッドをロックしなければならない。
【0007】
この発明は、人体を支持する面が、全ての方向において体形にフィットするように沈み込み、その形状を維持するとともに、人の姿勢の変化に追従して自動的に沈み込み形状が変化する人体支持装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の人体支持装置は、人体を支持する面を形成する可撓性をもった表皮部材と、前記表皮部材の周縁部を支持するフレームと、前記表皮部材の裏面側に、複数の方向に所定のピッチで分布させて配置され、それぞれが前記表皮部材を支持する複数の荷重受け機構と、前記荷重受け機構を制御する制御手段と、を備え、
前記荷重受け機構は、前記フレームに固定部材を介して固定されたガイド部材と、一端に前記表皮部材の裏面に当接するヘッド部を有し、前記ガイド部材に、前記ヘッド部を前記表皮部材に向け、他端を前記表皮部材とは反対方向に向けて、前記一端方向と他端方向とに移動自在に支持されたロッドと、前記ロッドを前記一端方向に押圧するバネ部材と、前記制御手段からの制御信号に基づいて前記ロッドの移動を拘束するロック及びその解除を行うロック手段とからなり、
前記制御手段は、前記表皮部材から前記ロッドに加わる荷重を測定し、前記荷重が所定値を越え、且つその荷重値が所定時間以上変化しないときに、前記ロック手段に前記ロッドをロックさせる信号を出力し、前記荷重が前記ロック時の荷重値に対して変化したときに、前記ロック手段に前記ロックを解除させる信号を出力する制御回路を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明の人体支持装置によれば、人体を支持する面が、全ての方向において体形にフィットするように沈み込み、その形状を維持するとともに、人の姿勢の変化に追従して自動的に沈み込み形状が変化する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の一実施例を示すベッドの一部を切開した平面図。
【図2】図1のII部の拡大図。
【図3】前記ベッドの一部を切開した側面図。
【図4】前記ベッドにおけるベッド面の沈み込みを示す一部を切開した側面図。
【図5】前記ベッドの一つの荷重受け機構の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1〜図5はこの発明の一実施例を示している。この実施例の人体支持装置は、シングルサイズの大人用ベッドであり、人体を支持する面(以下、ベッド面という)は、ベッド面上の寝る人の身長方向に沿った縦幅が約190cm、それと直交する方向の横幅が約95cmの矩形状の平面形状を有している。
【0012】
このベッドは、ベッド面を形成する可撓性をもった表皮部材1と、この表皮部材1の周縁部を支持するフレーム5と、表皮部材1の裏面側(下側)に、複数の方向に所定のピッチで分布させて配置され、それぞれが表皮部材1を支持する複数の荷重受け機構8と、これらの荷重受け機構8を制御する制御手段20(図5参照)とを備えている。
【0013】
表皮部材1は、表面カバー2と、この表面カバー2の裏面に設けられた複数本の縦帯材3及び横帯材4とにより構成されている。表面カバー2は、通気性を有する布材からなっており、ベッド面よりもある程度大きい矩形形状に縫製されている。縦帯材3と横帯材4はそれぞれ、例えば布製ベルトのような、可撓性を有し、且つ高い耐引っ張り性及び耐磨耗性をもった材料からなっている。この縦帯材3と横帯材4は、いずれも2〜3cmの幅を有している。さらに、縦帯材3は、表面カバー2の長手方向の幅と同じ長さを有し、横帯材4は、表面カバー2の短手方向の幅と同じ長さを有している。
【0014】
そして、各縦帯材3は、表面カバー2の長手方向と平行に、且つ所定の間隔で表面カバー2の短手方向に並べて配置され、各横帯材4は、表面カバー2の短手方向と平行に、且つ所定の間隔で表面カバー2の長手方向に並べて配置されている。すなわち、各縦帯材3と各横帯材4は、格子状に交差させて配置されている。そして、縦帯材3と横帯材4は、互いにずれ動かないように、その交差部、つまり重なり部において縫い合わされている。また、隣り合う縦帯材3,3の間隔と、隣り合う横帯材4,4の間隔は、それぞれ3〜5cmに設定されている。
【0015】
フレーム5は、ベッド面よりも下側のベッド外周壁を形成する板材からなっている。このフレーム5の高さは40〜50cmである。そして、各縦帯材3と各横帯材4はそれぞれ、フレーム5の対向する壁部の上端間に、弛みを生じない程度に緊張させて張り渡され、両端部をフレーム5に固定されている。また、表面カバー2は、各縦帯材3及び各横帯材4の上に被せられ、周縁部をフレーム5に固定されている。なお、各縦帯材3と各横帯材4の両端部と表面カバー2の周縁部は、フレーム5の上端に支持されると共に、下方に折曲されてフレーム5の外側面に重ねられ、図示しない鋲等によりフレーム5に固定されている。
【0016】
荷重受け機構8は、図5のように、フレーム5に固定部材6,7を介して固定されたガイド部材9と、一端に表皮部材1の裏面に当接するヘッド部14を有し、ガイド部材9に、ヘッド部14を表皮部材1に向け、他端を表皮部材1とは反対方向(下方向)に向けて、前記一端方向と他端方向とに移動自在に支持されたロッド11と、このロッド11を前記一端方向、すなわち上方向に押圧するバネ部材と、制御手段20からの制御信号に基づいてロッド11の移動を拘束するロック及びその解除を行うロック手段18とからなっている。
【0017】
この実施例において、ガイド部材9は、両端の中心部にそれぞれロッド挿通孔が設けられた密閉構造の円筒状シリンダからなっている。以下、このガイド部材9をシリンダという。このシリンダ9は、その軸方向を垂直方向に向けて配置されている。
【0018】
ロッド11は、シリンダ9に、ロッド11の両端側をシリンダ9外に突き出させて挿通されており、シリンダ9の両端のロッド挿通孔に、Oリング10を介して、気密状態に、且つ軸方向、つまり上下方向に移動自在に支持されている。このロッド11のシリンダ9内を移動する部分には、シリンダ9の内周面にOリング13を介して気密状態に接触するピストン12が固定されている。
【0019】
ロッド11を上方向に押圧するバネ部材15はコイルスプリングからなっており、シリンダ9内に、ロッド11のピストン12よりも下側の部分に遊嵌させて収容され、シリンダ9の下端部の内面とピストン12との間に挟持されている。
【0020】
また、シリンダ9内のピストン12よりも上側の領域とピストン12よりも下側の領域は、シリンダ9の一側に設けられた連通管17により連通されている。そして、シリンダ9内及び連通管17内には、空気またはオイル等の流体が加圧状態で充填されている。
【0021】
そのため、ロッド11は、バネ部材15のバネ力により、シリンダ9内の流体を連通管17を介して上側の領域から下側の領域に流動させながら上昇する。なお、ロッド11の下端部には、シリンダ9の下端面に当接してロッド11の上昇限を規定するストッパ16が設けられている。
【0022】
また、ロッド11は、その上端に設けられたヘッド部14にバネ部材15による押し上げ力よりも大きい荷重が加わったときに、バネ部材15を圧縮すると共にシリンダ9内の流体を連通管17を介して下側の領域から上側の領域に流動させながら下降する。
【0023】
このロッド11の移動、つまり上昇及び下降を拘束するロック及びその解除を行うロック手段18は、前記連通管17からなる流体の流路に介在させて設けられた電磁弁からなっている。以下、このロック手段18を電磁弁という。
【0024】
この電磁弁18は、制御手段20からの制御信号に基づいて開閉され、電磁弁18を閉じると、シリンダ9内の上側の領域と下側の領域との間での流体の流動が阻止されてロッド11が移動しないようにロックされる。また、電磁弁18を開くと、シリンダ9内の上側の領域と下側の領域との間での流体の流動が許容され、ロッド11のロックが解除される。
【0025】
ロッド11の上端に設けられたヘッド部14は、ロッド11の上端に固定されたベース部材14aと、このベース部材14aの上面に貼り付けられたスポンジ等のクッション層14bとからなっている。このヘッド部14は、直径が4〜5cmの円形な平面形状を有している。
【0026】
そして各荷重受け機構8は、表皮部材1の各縦帯材3と各横帯材4の重なり部の下側にそれぞれ、ロッド11が上昇限まで上昇したときにヘッド部14の上面(クッション層14bの上面)が表皮部材1の縦帯材3と横帯材4の重なり部に表皮部材1を緊張させる接触圧で当接するような高さに位置決めされて配置され、シリンダ9の上下端を固定部材6,7を介してフレーム5に固定されている。なお、図1及び図2では、固定部材6,7を省略している。また、図3及び図4では、フレーム5に最も近い位置に配置された荷重受け機構8のシリンダ9を固定している固定部材6,7だけを示し、他の荷重受け機構8のシリンダ9を固定している固定部材6,7は省略している。
【0027】
この実施例において、表皮部材1の各縦帯材3と各横帯材4は、これらの重なり部が表皮部材1のフレーム5に支持された周縁部よりも内側の領域全体に亘って分布するように配置されており、各荷重受け機構8は、各縦帯材3と各横帯材4の全ての重なり部にそれぞれ対応させて配置されている。すなわち、各荷重受け機構8は、表皮部材1の長手方向と短手方向の二つの方向に、各縦帯材3と各横帯材4の重なり部のピッチに対応したピッチで配置されている。
【0028】
各縦帯材3と各横帯材4の重なり部のピッチは5〜6cm、各荷重受け機構8のヘッド部14の直径は4〜5cmであり、各荷重受け機構8は、隣り合う荷重受け機構8,8のヘッド部14,14の間に1cm程度の隙間を空けて配置されている。また、各荷重受け機構8のシリンダ9の外径は、ヘッド部14の直径と同程度であり、各荷重受け機構8は、図2のように、シリンダ9の連通管17が設けられた側を各荷重受け機構8の配列方向(表皮部材1の長手方向及び短手方向の)に対して約45°の方向に向けて、連通管17及び電磁弁18が隣り合う荷重受け機構のシリンダ9に当たらないように配置されている。なお、図1では連通管17及び電磁弁18を省略している。
【0029】
前記荷重受け機構8を制御する制御手段20は、図5のように、荷重受け機構8の電磁弁18を制御する制御回路21を備えている。なお、図5には一つの荷重受け機構8だけを示しているが、制御回路21は、全ての荷重受け機構8の電磁弁18を制御するように構成されている。
【0030】
この制御回路21は、表皮部材1から荷重受け機構8のロッド11に加わる荷重を測定し、前記荷重が所定値を越え、且つその荷重値が所定時間以上変化しないときに、電磁弁18にロッド11をロックさせる信号、すなわち電磁弁18を閉じさせる閉信号を出力し、前記荷重が前記ロック時の荷重値に対して変化したときに、前記電磁弁18にロッド11のロックを解除させる信号、すなわち電磁弁18を開かせる開信号を出力する。この開信号は、電磁弁18の開度、つまり電磁弁18を通る流体の流量を制御する信号であり、電磁弁18の開度は、操作盤23に設けられた昇降速度調整キーにより選択される。
【0031】
このような電磁弁18の制御を行うために、この実施例では、図5のように、荷重受け機構8に荷重センサ22を設けている。この荷重センサ22は、荷重の大きさに応じて出力信号の電圧値が変化するセンサであり、ロッド11の上端のヘッド部14に、ベース部材14aの上面とクッション層14bとの間に挟持させて配置され、信号出力配線を介して制御回路21に接続されている。
【0032】
さらに、制御手段20は、制御回路21に接続された操作盤23を備えている。この操作盤23は、例えばタッチパネルであり、電源キー、ベッド面の昇降速度調整キー等の各種のキーを備えている。
【0033】
そして、制御回路21は、電源がオンされたときに、全ての荷重受け機構8の電磁弁18を開かせ、その後に上記のような各荷重受け機構8の電磁弁18の開閉制御を行い、電源がオフされたときに、全ての荷重受け機構8の電磁弁18を閉じさせ、その後に各電磁弁18の制御を停止するように構成されている。
【0034】
このベッドは、周縁部をフレーム5に支持された表皮部材1の裏面側に、前記荷重受け機構8を、複数の方向(この実施例では表皮部材1の長手方向と短手方向の二つの方向)に所定のピッチで分布させて配置しているため、図4のように、表皮部材1からなるベッド面上に人Aが寝たときに、ベッド面が、全ての方向において人Aの体形にフィットするように沈み込む。
【0035】
すなわち、ベッド面上に人Aが寝ると、人Aの体重に応じた荷重が加わった領域の各荷重受け機構8のロッド11がそれぞれ、ロッド11に加わった荷重の大きさに応じて、バネ部材15を圧縮させながら下降し、荷重とバネ部材15の反発力とが釣り合った位置で下降を停止する。
【0036】
そして、各荷重受け機構8は、複数の方向に所定のピッチで分布させて配置されているため、ベッド面のうちの荷重が加わった領域が、ベッド面の長手方向において、図4のように人Aの頭部から足先に亘る身長方向の体形(S字曲線と言われる生理曲線)にフィットするように沈み込むと共に、ベッド面の短手方向においても人Aの頭部や胴部及び手足の横方向の体形にフィットするように沈み込む。すなわち、ベッド面は、全ての方向において人Aの体形にフィットするように沈み込む。
【0037】
なお、各荷重受け機構8のバネ部材15のバネ力は、表皮部材1の重さでは圧縮されること無くロッド11を最も上昇した位置に保持するように設定されている。従って、ベッド面は、無荷重状態では平坦面になっており、ベッド面上に人Aが寝たときに沈み込む。
【0038】
また、ベッド面の沈み込み深さは、ベッド面上に寝た人Aの体重によって異なり、体重が重いほどベッド面が大きく沈み込む。そのため、この実施例では、ベッドを使用する人の最大体重を例えば100Kgと想定し、各荷重受け機構8のバネ部材15のバネ力を、最大体重の人がベッド面上に寝たときに、最も大きい荷重が加わる尻部の下のベッド面の沈み込み深さが15cm程度になるように設定すると共に、各荷重受け機構8のロッド11が最も上昇したときのシリンダ9の上端からヘッド部14の下面までの高さ、つまりロッド11の下降ストロークを15〜20cmの範囲に設定している。
【0039】
一方、制御回路21には、所定の荷重値として、各荷重受け機構8のロッド11にそれぞれ加わる表皮部材1の重さよりも1〜10%程度大きい値が設定されると共に、1〜2秒のロッド停止時間が設定されている。そして、制御回路21は、荷重センサ22により測定された荷重値が前記所定の荷重値を越え、且つその荷重値が1〜2秒以上変化しないときに、電磁弁18に閉信号を出力するように構成されている。なお、ベッド面上に寝た人Aが姿勢を変えなくても、体の各部の微妙な動きにより、荷重センサ22により測定される荷重値が僅かながら変化する。そのため、この実施例では、±0.05Kg程度の荷重値の変化を許容範囲とし、測定された荷重値の変化が許容範囲内であるときは、荷重値が変化しないと判定するようにしている。
【0040】
各荷重受け機構8のロッド11が、荷重とバネ部材15の反発力とが釣り合うまで下降し、その下降位置で1〜2秒以上停止すると、制御回路21から電磁弁18に閉信号が出力されてロッド11が前記下降位置にロックされ、ベッド面が、体形にフィットした形状に沈み込んだ状態で固定される。
【0041】
このように、前記ベッドは、ベッド面が、全ての方向において人Aの体形にフィットするように沈み込んでその形状を維持するため、ベッド面上に寝た人Aを、安定に、しかもベッド面からの反力が全身に均等に分散して加わるように支持することができる。従って、筋肉疲労が部分的に集中することがなく、安眠できる。
【0042】
また、ベッド面上に寝ている人Aが、例えば図4のようなあお向け姿勢から横向き姿勢に寝返りしたりすると、その姿勢の変化に対応して、各荷重受け機構8のロッド11に加わる荷重が前記許容範囲よりも大きく変化する。
【0043】
このようにロッド11に加わる荷重が変化すると、その荷重受け機構8の電磁弁18が、制御回路21からの開信号によって開かれ、ロッド11が荷重の変化に対応して上昇または下降する。なお、ロッド11が最も上昇した状態にある無荷重の荷重受け機構8の電磁弁18は、電源がオンされた時点で開かれている。そのため、この荷重受け機構8のロッド11は荷重が加わったときに、荷重の大きさに応じて下降する。
【0044】
そして、各荷重受け機構8のロッド11が、荷重とバネ部材15の反発力とが釣り合う位置まで移動し、その位置で1〜2秒以上停止すると、制御回路21から電磁弁18に閉信号が出力されてロッド11がロックされ、ベッド面が、姿勢を変えた体形にフィットした形状に沈み込んだ状態で固定される。
【0045】
従って、ベッド面上に寝ている人Aが姿勢を変えても、ベッド面が姿勢の変化に追従して自動的に姿勢を変えた体形にフィットするように沈み込み、その沈み込み形状を維持する。従って、睡眠中に無意識に姿勢を変えてもそのまま安眠できる。
【0046】
しかも、このベッドは、荷重受け機構8のロッド11が、シリンダ9内の流体を連通管17を介してピストン12よりも下側の領域と上側の領域の一方から他方に流動させながら下降及び上昇するため、ベッド面の沈み込み及び復帰を、不快感を与えないように緩やに行わせることができる。さらに、この実施例では、荷重受け機構8の電磁弁18を、操作盤23に設けられた昇降速度調整キーにより選択された開度で開かせるようにしているため、ベッド面の沈み込み及び復帰速度を、使用者の好みに合わせて調整することができる。
【0047】
また、上記実施例では、前記制御手段20に、電源のオフにより、全ての荷重受け機構8の電磁弁18を閉じさせて各電磁弁18の制御を停止する機能をもたせている。そのため、ベッド面全体が無荷重の状態、つまり全ての荷重受け機構8のロッド11が最も上昇した状態で、各荷重受け機構8の電磁弁18を閉じさせて各電磁弁18の制御を停止することにより、ベッド面を平坦な状態に固定することができる。
【0048】
このように、ベッド面が平坦な状態で固定されれば、ベッド面上に足元がふらつかない状態で安全に立つことができ、また、ベッド面の縁に楽に腰掛けることができる。なお、上記実施例では、電源のオフによりベッド面が平坦な状態で固定されるようにしているが、ベッド面が平坦な状態で固定するための操作キーを操作盤23に設けてもよい。
【0049】
さらに、上記ベッドは、表皮部材1を、表面カバー2と複数本の縦帯材3及び横帯材4とにより構成し、各荷重受け機構8のロッド11のヘッド部14を、各縦帯材3と各横帯材4との重なり部に当接させているため、表面カバー2の耐久性を充分に確保することができる。
【0050】
なお、前記縦帯材3と横帯材4は、例えばネット等の部材に置き換えてもよく、また、表面カバー2が充分な耐久性を有する場合は、表皮部材1を表面カバー2だけにしてもよい。また、上記実施例では、荷重受け機構8を、表皮部材1の長手方向と短手方向の二つの方向に所定のピッチで配置しているが、荷重受け機構8は、例えば千鳥状や、複数の同心円に沿った方向に所定のピッチで配置してもよい。
【0051】
さらに、上記実施例では、荷重受け機構8を、表皮部材1のフレーム5に支持された周縁部よりも内側の領域全体に亘って分布するように配置しているが、表皮部材1の周縁部付近の領域の裏面をフレーム5の内周面に固定した板状部材により定位置に支持し、この板状部材よりも内側の領域に荷重受け機構8を配置してもよい。
【0052】
また、荷重受け機構は、上記実施例のものに限らず、例えばロッド11を軸方向に移動自在に支持する軸受けをガイド部材としたものでもよい。その場合、ロッド11の移動を拘束するロック及びその解除を行うロック手段としては、例えばロッド11を両側から挟持する電磁ブレーキ等を用いればよい。
【0053】
さらに、上記実施例では、ベッド面に加わる荷重の変化を、荷重受け機構8に設けられた荷重センサ22の測定値の変化により判定しているが、ベッド面に加わる荷重の変化は、ロッド11の移動を検出することにより判定してもよい。
【0054】
また、上記実施例の人体支持装置はベッドであるが、この発明は、ベッドに限らず、例えば事務用、家庭用、車両または航空機用等の椅子の座部や背もたれ部にも適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…表皮部材、5…フレーム、6,7…固定部材、8…荷重受け機構、9…シリンダ(ガイド部材)、11…ロッド、12…ピストン、14…ヘッド部、15…バネ部材、17…連通管、18…電磁弁(ロック手段)、20…制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体を支持する面を形成する可撓性をもった表皮部材と、前記表皮部材の周縁部を支持するフレームと、前記表皮部材の裏面側に、複数の方向に所定のピッチで分布させて配置され、それぞれが前記表皮部材を支持する複数の荷重受け機構と、前記荷重受け機構を制御する制御手段と、を備え、
前記荷重受け機構は、前記フレームに固定部材を介して固定されたガイド部材と、一端に前記表皮部材の裏面に当接するヘッド部を有し、前記ガイド部材に、前記ヘッド部を前記表皮部材に向け、他端を前記表皮部材とは反対方向に向けて、前記一端方向と他端方向とに移動自在に支持されたロッドと、前記ロッドを前記一端方向に押圧するバネ部材と、前記制御手段からの制御信号に基づいて前記ロッドの移動を拘束するロック及びその解除を行うロック手段とからなり、
前記制御手段は、前記表皮部材から前記ロッドに加わる荷重を測定し、前記荷重が所定値を越え、且つその荷重値が所定時間以上変化しないときに、前記ロック手段に前記ロッドをロックさせる信号を出力し、前記荷重が前記ロック時の荷重値に対して変化したときに、前記ロック手段に前記ロックを解除させる信号を出力する制御回路を備えていることを特徴とする人体支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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