説明

人体検出装置及びこれを有する水栓制御装置

【課題】 特定周波数の周期的なノイズや任意のパターンのランダム・ノイズが存在する場合でも、いずれについてもノイズ除去を行い、高感度で安定した検出が可能なアクティブ型の光電センサ方式の人体検出装置を提供する。
【解決手段】 光をパルス投光し、その反射光で受光して人体を検出する人体検出装置において、受光手段の出力を増幅した第1の信号を出力する増幅手段と、第1の信号を受けてその極性を反転させた第2の信号を出力する反転手段と、第1または第2の信号を積分する積分手段と、投光手段及び積分手段を制御し、積分手段出力に応じて人体の有無を判定する制御手段を備え、パルス投光の投光開始に同期して第1の信号を所定時間積分し、その投光終了に同期して第2の信号を所定時間と同一時間積分するノイズ除去積分動作を複数回行なうとともに、ノイズ除去積分動作同士の間隔に所定の遅延時間を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトイレにおいて、水栓や便器の使用者を検出して自動的に吐水や洗浄等の制御を行うために用いられる人体検出装置のひとつである、アクティブ型光電センサのノイズ除去の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水栓に手を差し出すと自動的に吐水する自動水栓や、便器の使用後に自動的に洗浄水を流す便器自動洗浄装置など、人体を検出して吐水や洗浄を自動的に行う水栓装置は、その利便性や衛生性から広く普及している。
【0003】
これらの水栓装置の使用者である人体を検出する手段として、焦電センサや超音波センサなども使用可能であるが、人体の有無を確実に捉える性能に優れ、小型で防水構造にも適しているという理由により、赤外線を用いたアクティブ型の光電センサが多く使用されている。
【0004】
この種の光電センサは、赤外線を検出領域に対してパルス投光を行い、その反射光を検出して、検出対象物の有無を判定するものである。ここでパルス投光を行うのは、検出領域に存在する環境光である蛍光灯などの照明や太陽光に含まれる赤外線の成分、すなわち、光電センサにとってのノイズを除去するためである。
【0005】
パルス投光によりノイズを除去する方法として、同期積分という方法がある(例えば特許文献1参照)。
同期積分は、パルス投光のタイミングに同期して受光信号を積分するものである。また、投光に同期して受光信号を積分する動作に加えて、投光しないタイミングで、受光信号の極性(プラス・マイナス)を逆転させて積分(すなわち反転積分)すると、更にノイズ除去効果が高まる。この方法は、受光信号の極性を反転させる等の手段が必要なため、回路は複雑になるが、反転積分を行わない方法に比較すると、ノイズ除去性能は格段に向上する。
【0006】
このパルス投光とその積分動作を複数回、繰り返し行うことにより、反射光の積分値である信号量は増え、ノイズの積分値は逆に減っていく。つまり、パルス投光とそれに同期した積分を複数回行えば、その繰り返し回数が増えるに従ってS/Nが向上する。
【0007】
また、特定の周波数のノイズ(周期的なノイズ)を除去する方法として、不規則な送信パターン、すなわちコード情報に基づいて変調した投光パターンを用いる方法がある(例えば特許文献2参照)。
【0008】
コード情報で設定された不規則な投光パターンに対して、受信した反射光のパターンが一致した場合に、これをノイズではない有効な信号であると判断する。投光パターンを複雑にすれば、それだけノイズと投光パターンが偶然一致する可能性が減るため、誤検出を減らすことができる。
【0009】
【特許文献1】特開平5−156685 給水制御装置
【特許文献2】特開平5−156683 給水制御装置
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述の同期積分は、不規則なノイズを除去する手段として有効な方法であるが、同期積分の繰り返し周波数に対して、同じ周波数成分を持つ周期的なノイズは逆に増幅してしまうという問題がある。
【0011】
つまり、信号であるパルス投光の周波数(積分のタイミングはパルス投光に同期するので、これは同期積分の周波数に等しい)に対して、同一周波数、もしくはその奇数倍の周波数のノイズがあると、ノイズ波形と同期積分のタイミングが合ってしまい、ノイズ波形を同期積分してしまうため、ノイズ除去を目的とする同期積分によって、かえって悪い結果となってしまう。
【0012】
これを避けるには、パルス投光の周波数を、ノイズとして予想される周波数に一致しないようにすればよい。周期的なノイズとして主なものは、インバータ蛍光灯やテレビなどで使用される赤外リモコンであるため、ノイズの周波数帯をある程度予想することはできる。
【0013】
よって、パルス投光の周波数を適切に選択すれば、多くの場合は前述のようなノイズ波形を同期積分してしまう問題を回避できる。しかし、使用環境のノイズ帯域を完全に限定することは出来ないため、パルス投光の周波数とノイズの周波数が一致する場合もあり、光電センサが誤動作するという事態を完全に避けることはできない。
【0014】
また、パルス投光をコード変調する方法では、信号であるコード変調したパルス投光と、ノイズのパターンが一致しない限り誤検出(実際は「検出対象が無い」のに、誤って「有る」と判断すること)とはならない。そして、コード変調を複雑にすれば、それだけ誤検出の可能性が減る。
【0015】
しかし、これはノイズによって誤検出してしまうことを回避するだけであって、ノイズの多い環境で光電センサが正確な検出をすることにはならない。ノイズが多ければ、受信した信号にノイズがたくさん入り、受信した信号はコード変調した投光パターンとなかなか一致しない。
【0016】
よって誤検出はしないものの、検出という判断もできない。つまり、ノイズが多ければ、物体が有るという判断ができない(全て、「無い」側の判断となる)ことになり、誤検出は無いとしても、センサとして役に立たない。
【0017】
ここに、本発明は上記問題を解決するためになされたもので、特定周波数の周期的なノイズや任意のパターンのランダム・ノイズが存在する場合でも、いずれについてもノイズ除去を行い、高感度で安定した検出が可能なアクティブ型の光電センサ方式の人体検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、投光手段から光をパルス投光し、その反射光を受光手段で受光して人体を検出する人体検出装置において、前記受光手段の出力を増幅した第1の信号を出力する増幅手段と、前記第1の信号を受けてその極性を反転させた第2の信号を出力する反転手段と、前記第1または第2の信号を積分する積分手段と、前記投光手段及び前記積分手段を制御し、前記積分手段出力に応じて人体の有無を判定する制御手段を備え、該制御手段は、前記パルス投光の投光開始に同期して第1の信号を所定時間積分し、その投光終了に同期して第2の信号を前記所定時間と同一時間積分するノイズ除去積分動作を複数回行なうとともに、前記ノイズ除去積分動作同士の間隔は所定の遅延時間を設け、前記複数回のノイズ除去積分動作後の前記積分手段の出力が予め設定した閾値レベルに達したときに人体を感知したと判定する人体判定動作を行なうので、1回のノイズ除去積分動作で除去できない特定の周波数のノイズを、遅延時間を含む複数回のノイズ除去積分動作で低減できるため、従来のような、積分動作を周期的に繰り返すことで周期的なノイズを増幅するという問題が無くなり、周期的なノイズにもランダムなノイズにも、ノイズ低減効果を発揮する。
【0019】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の人体検出装置において、前記人体判定動作で、前記ノイズ除去積分動作を3回以上行なう場合、前記遅延時間は、少なくても2種以上の時間長を有するので、
積分動作に関する周期性がなくなり、特定の周波数に対してノイズを増幅することがなく、また、偶然にノイズパターンと投光パターンが一致する状況があったとしても、これを避けるように人体検出装置の動作を変更することができる。
【0020】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の人体検出装置において、前記人体判定動作を繰り返し行なうごとに、前記時間長を変更するので、偶然にノイズパターンと投光及び積分のパターンが一致する状況があっても、これが継続する可能性が極めて低く、安定した人体検出動作が可能となる。
【0021】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3の何れか1つに記載の人体検出装置を有する水栓制御装置であるため、さまざまなノイズ環境の現場に設置することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、1回の同期積分によるノイズ除去効果と、それを遅延時間を挟みながら繰り返すことにより、周期的なノイズでもランダムなノイズでも、その影響を低減することができる。従来のように固定周波数で投光及び同期積分を繰り返す方法の場合、たまたま使用する環境に投光と同一周波数のノイズがあると、動作不能となって対処のしようがないが、本発明ではそのような事が起きない。
【0023】
また、遅延時間を任意に変更し、その変更を絶えず繰り返すことにより、投光パターンとノイズパターンが偶然一致する状況があったとしても、それが継続することはない。特に、水栓装置の人体検出のような場合、一瞬の人体検出は無視することができる。つまり、ある周期で人体検出動作を繰り返し行い、人体(使用者)の検出が所定回数継続した場合に限り吐水や洗浄を行う仕様とすれば、ノイズによる誤動作は皆無となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形である、アクティブ型の光電センサの方式の人体検出装置を有する水栓制御装置の回路図であり、図2及び図3はその動作タイミングチャートである。
また、図4は従来例である光電センサの動作を示すタイミングチャートである。
【0025】
図1において、1は光電センサの出力信号である赤外光を投光する投光素子、2は対象物から反射した赤外光を受光する受光素子である。
22は図1の光電センサを含む水栓制御装置の回路を制御する制御手段であり、光電センサの検出結果(検出対象である使用者の有無)に応じて電磁弁駆動手段23を駆動して、水栓の自動吐水や便器の自動洗浄を行う。
【0026】
トランジスタ3と抵抗4とOPアンプ5は、投光素子3に所定の電流を流す定電流回路である。6はアナログスイッチであり、制御手段22から出力される電圧(定電流回路の基準電圧となる電圧で、例えば、制御手段からD/A変換により出力される)を、同じく制御手段22から出力されるタイミング信号S2により、OPアンプ5へ伝達する。これにより、前記定電流回路が動作し、信号S2に同期して投光素子1がパルス投光する投光手段が形成されている。
【0027】
抵抗7とOPアンプ8は受光手段を構成し、受光素子2が、その受光量に比例して発生する光電流を電圧に変換する。この電圧のAC成分はコンデンサ9を介して抵抗10、11及びOPアンプ12からなる増幅手段に入力され、増幅される。増幅手段の出力は、抵抗13、14及びOPアンプ15からなる反転手段に入力される。反転手段では、信号振幅は等しく、その極性が反転する。
【0028】
更に、増幅手段の出力はアナログスイッチ16を介して、また、反転手段の出力はアナログスイッチ17を介して積分手段に入力される。なお、アナログスイッチ16及び17はそれぞれ、制御手段22から出力されるタイミング信号S2及びS3により、オン/オフされる。
積分手段は、抵抗18とコンデンサ19、OPアンプ20により構成される。また21は、制御手段22が出力するタイミング信号S1によりオン/オフするアナログスイッチであり、コンデンサ19の放電(積分手段のリセット)を行う。
【0029】
制御手段22により信号S1乃至S3を制御し、投光のタイミングと積分のタイミングを同期させることにより効果的な信号の積分とノイズ除去を行うことができる。従来から知られているこの動作を図4のタイミングチャートを用いて説明する。
【0030】
まずパルス投光を行う前に、図4のT0のタイミングから所定時間、信号S1によってアナログスイッチ21をオンし、コンデンサ19を放電、すなわち積分手段をリセットする。この状態の積分手段の出力電圧(OPアンプ20の出力)が基準(反射信号のゼロ位置)となる。
【0031】
T1のタイミングで信号S2がオン出力されアナログスイッチ6がオンして、投光素子1が投光する。これと同時にアナログスイッチ16がオンし、投光素子1の投光に同期して、反射光に比例した信号である増幅手段出力を積分手段で積分する。
【0032】
T2のタイミングで信号S2がオフし、信号S3がオンしてアナログスイッチ17がオンする。ここでは、投光素子1が投光していない状態の受信信号を、反転手段によって極性を反転させて積分手段で積分する。T3のタイミングでは、信号S3がオフ、信号S2がオンして、T1〜T3のタイミングの動作を繰り返す。なお、T1〜T2とT2〜T3の時間間隔は、同じ時間である。このT1〜T3の積分動作だけでノイズ除去効果を持っている。つまりノイズの周波数が、T1〜T3の時間を1周期とする周波数(または、その奇数倍)に一致しない限り、ノイズは低減される。よって、T1〜T3の動作だけで、ひとつのノイズ除去積分動作と言うことができる。そして、図4のT9のタイミングまで、同一のノイズ除去積分動作を4回繰り返す。
【0033】
投光素子1の投光に同期して増幅手段出力を積分することにより、積分手段出力は、投光回数に比例した信号量を出力する。また、増幅手段出力と反転手段出力を同時間、同回数積分することにより、投光に同期しない成分、つまり光電センサの動作環境にあるノイズを打ち消すことができる。こうして、投光と積分動作を繰り返すことで、反射信号量(積分手段出力)は大きくなり、ノイズ成分は小さくなって光電センサのS/N比が向上する。
【0034】
以上は良く知られた同期積分の動作であるが、動作環境のノイズの周波数が投光周波数と同一の場合、または奇数倍の場合、同期積分によってノイズを増幅してしまい、図4の積分動作は逆効果となる。つまり、ノイズの周期またはノイズの奇数回の周期がT1〜T3の時間に一致する場合、ノイズは図4の検出対象で反射した受光信号と同様に、積分される。言い換えれば、ノイズの周波数が、T1〜T3の時間を周期とする周波数に一致、または奇数倍の周波数に一致する場合、ノイズを除去するはずの積分によって、逆に増幅される。そこで、本発明による光電センサの動作を図2を用いて説明する。なお、回路図は従来と同様で図1である。
【0035】
図2において、T0のタイミングで積分手段をリセットする。次にT1のタイミングで投光素子1が投光し、同時に増幅手段出力を積分し、T2〜T3のタイミングで反転手段の出力を積分する。ここまで、つまり1回目の投光とその積分動作は、従来の図4と同じである。
【0036】
次に、T3〜T4のタイミングでは、信号S2もS3もオンしていない。よって、積分手段の出力が増減することはない。T3〜T4は、T1〜T3の1回目のノイズ除去積分動作と、T4以降の動作とのタイミングをずらすための遅延時間であり、受光信号の積分も、受光信号を反転させた信号の積分も、いずれの積分も行わない休止期間である。
【0037】
次に図2のT4のタイミングで信号S2がオンし、T5のタイミングでS2がオフしS3がオン、T6のタイミングでS3がオフしS2がオンする。この図2のT4〜T6の動作は2回目の投光とその積分動作であり、従来動作の図4のT3〜T5と同じ動作である。
【0038】
このように、T3〜T4の遅延時間により、1回目と2回目のノイズ除去積分動作の時間間隔が変化している。同様に、図2のT8〜T9の時間により、3回目と4回目のノイズ除去積分動作の時間間隔が変化している。積分の時間及び回数は図2と図4で同じであるため、図2の動作においても従来の図4の動作と同様の反射信号量およびノイズ除去効果が得られ、光電センサのS/N比も同様に向上する。
【0039】
しかし、図2の4回の投光タイミング(T1、T4、T6、T9)は、図4の投光タイミング(T1、T3、T5、T7)のように一定周波数でなく、周期的ではない。よって、図2では投光に同期した4回の積分タイミングも周期的ではない。このため、図4の従来動作では、周期的なノイズ、特に投光タイミングと同一か奇数倍の周波数のノイズを同期積分で増幅してしまう問題があったが、図2ではそのような事が無い。
【0040】
この様子を、周期的なノイズが常時存在する場合について、図3を用いて説明する。図3の投光及び積分タイミングは図2と同じである。なお図3は、検出対象が存在しない(例えば、水栓や便器の使用者がいない)状態で、投光パルスに対する反射光の受光信号はゼロの場合としている。
【0041】
受光手段出力には、ある周期的なノイズが出力されている。例えば、強力なインバータ蛍光灯が光電センサのそばにあった場合などが想定される。この信号も、通常の反射光と同様に増幅手段で増幅し、反転手段で極性を反転させ積分手段で積分する。
図3のように、周期的でない不規則なタイミングで積分と反転積分、すなわちノイズ除去積分動作を行うため、周期的なノイズに対する積分出力は小さい値となる。更に積分回数を増やすことで、最終的にゼロに近づいていく。
【0042】
このように、図2及び図3の動作では、ノイズ除去積分動作の繰り返しが周期的でなく不規則なパターンとなり、周期的なノイズを除去できる。だが、仮にノイズがこの不規則なパターンのタイミングに完全に一致すれば、やはり積分によってノイズを増幅してしまうことになる。
【0043】
しかし、図2の動作に対して「投光回数を増やす」「T3〜T4、T8〜T9の遅延時間を変化させる」「投光に対してT3〜T4などの遅延時間を挿入するタイミング(何回目のノイズ除去積分動作の後に入れるか)を変化させる」などの処理を行えば、ノイズのタイミングと投光及び積分のタイミングが偶然に一致する場合を減らすことができる。
【0044】
このように、ノイズ除去積分動作間の遅延時間及び挿入するタイミングを変えてノイズ除去積分動作の繰り返しパターンを変化させる場合でも、S2とS3のオン時間は同一、すなわち投光タイミングで増幅手段出力を積分する時間と、投光していないタイミングで反転手段出力を積分する時間が同一であることが必要である。この時間を同じにすれば、積分のたびにノイズ成分がプラス(増幅手段出力)とマイナス(反転手段出力)で合算されゼロに近づいて行く。
【0045】
更に詳しく説明すれば、S2とS3が1回ずつオンする時間、例えば図2のT1〜T3の1回のノイズ除去成分動作の時間により、この部分で除去できるノイズの周波数が決定する。つまり、この1回のノイズ除去積分動作の時間(T1〜T3)を周期とするノイズ、及びその奇数倍の周波数のノイズ以外は、1回のノイズ除去積分動作によって低減される。逆に、1回のノイズ除去積分動作の時間(T1〜T3)を周期とするノイズ、及びその奇数倍の周波数のノイズは、1回のノイズ除去積分動作では低減できない。
【0046】
そして、1回のノイズ除去積分動作で出来なかった周波数のノイズは、ノイズ除去積分動作を不規則に繰り返すことで除去できるようになる。従来のように、1回のノイズ除去積分動作の時間と、その繰り返し周期が一致する場合、何回、ノイズ除去積分動作を繰り返しても除去できない周波数成分が存在し、ノイズ除去積分動作を繰り返す事で逆にノイズを増大させてしまう。
【0047】
しかし、ノイズ除去積分動作を繰り返す際に遅延時間を挟むことで、この不規則な繰り返しによって、従来(周期的な繰り返し)は除去できなかった周波数のノイズを除去できるようになる。よって、図2の実施例ではノイズ除去積分動作を4回行っているが、例えば2回だけでも、その間に遅延時間を挿入することで、本発明の効果が得られる。勿論、回数が多い程、ノイズ除去効果は大きい。
【0048】
また、ノイズ除去積分動作の時間間隔を不規則にするための遅延時間(図2ではT3〜T4、T8〜T9の時間)は、何ら制約はなく、長くても短くても、どこに挿入しても良い。図2では、2回目のノイズ除去積分動作のT4〜T6と、3回目のノイズ除去積分動作のT6〜T8の間に遅延時間が入っていないが、図2の計4回のノイズ積分動作の時間間隔を不規則にするため、この部分の遅延時間をゼロとしているという事である。ここをゼロとせず、なんらかの遅延時間を入れても良い。また、例えばT3〜T4、またはT8〜T9をゼロとしても良いし、T3〜T4とT8〜T9が同じでも、違う時間でも良い。
【0049】
この遅延時間は、例えばマイコンのプログラムによって乱数を発生させるなどして、絶えず変化するようにしても良い。ノイズ除去積分動作の繰り返しタイミングを遅延時間を挿入することで不規則にしたつもりでも、それが固定であれば、たまたま周囲環境のノイズに一致する可能性もある。しかし、遅延時間を挿入するタイミングや遅延時間を変化させていれば、仮にノイズとタイミングが一致しても、それが継続することはない。
【0050】
よって、1回の人体判定動作(図2ではT1〜T11)毎に、これらの条件を変える(投光回数や遅延時間などのタイミングを変える)操作を行い、ノイズ除去積分動作のタイミングを絶えず不規則に変化させることで、ノイズのタイミングと積分タイミングが一致する可能性を限りなくゼロに近づけることができる。
【0051】
特に、水栓装置の人体検知のように、瞬間的に検出に反応する必要性が低い用途であれば、「ある時間、連続して人体を感知した場合に水を出す」という条件(水栓装置では、一般的に、そのような制御が多い)を付けることで、更にノイズによる不具合をなくすことができる。
【0052】
図5は、人体検知装置を有する水栓制御装置のトイレにおける使用例である。図5のように、男性の小便器の洗浄水の給水管と洗浄管の間に便器自動洗浄装置が取り付けられている。この中に水栓制御装置が含まれる。
便器自動洗浄装置は、使用者に向かって赤外光を投光し、その反射光を受光して使用者の有無を判断し、自動的に小便器を洗浄する。
【0053】
図6は便器自動洗浄装置の内部構造例である。カバー内に、水栓制御装置、電磁弁、電源となる電池などが入っている。便器自動洗浄装置のタイプによっては、電磁弁が水栓制御装置と別に設置される事もあり、電源はAC電源で動作するものもある。また、これらが小便器に内蔵されて、便器と一体構造となる場合もある。なお、水栓制御装置は人体検知装置や電磁弁の制御機能を有するが、図6のように、人体検知装置の投光及び受光素子とともに、電気回路として一体に構成される場合が多い。
【0054】
水栓制御装置は、例えば、使用者が小便器の前に来た時に前洗浄(事前に便器を濡らし、汚れの付着や小便の飛びはねを防止する)を行ったり、使用者が立ち去った後に本洗浄(便器の洗浄および小便の排出)を行うが、いずれの場合も、人体検知装置にとって一刻を争う程の反応は必要無い。
【0055】
よって、人体判定動作ごとに遅延時間を変えたり遅延時間を挿入するタイミングを変えるなどして、ノイズ除去積分動作のタイミングを変えながら繰り返し人体判定動作を行い「その結果がある時間以上安定して継続した場合にのみ便器の洗浄を行う」といった判断をする時間的余裕がある。そのため、偶然にノイズのタイミングとノイズ除去積分動作のタイミングが一度だけ一致して、それが水栓制御装置の誤動作に直結するような事はない。
【0056】
このように、投光および積分のタイミングを一定周期とせず、不規則に変化させながら投光タイミングに同期して積分を行うことにより、周期的なノイズに対しても周期的でないノイズに対してもノイズ抑制効果を持ち、あらゆるノイズ環境で良好なS/N比を持って検出動作を行うことができる光電センサが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形である人体検知装置を有する水栓制御装置の回路図である。
【図2】本発明の実施形である人体検知装置の検出動作を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明の実施形である人体検知装置のノイズに対する動作を示すタイミングチャートである。
【図4】従来の人体検知装置の検出動作を示すタイミングチャートである。
【図5】男性用小便器に水栓制御装置を使用した例である。
【図6】便器自動洗浄装置の内部構造例である。
【符号の説明】
【0058】
1 投光素子
2 受光素子
5 投光手段のOPアンプ
6 投光をオン・オフするアナログスイッチ
8 受光手段のOPアンプ
12 増幅手段のOPアンプ
15 反転手段のOPアンプ
16 増幅手段出力を積分する際にオンするアナログスイッチ
17 反転手段出力を積分する際にオンするアナログスイッチ
18 積分手段の抵抗
19 積分手段のコンデンサ
20 積分手段のOPアンプ
21 積分手段をリセットするアナログスイッチ
22 制御手段
23 電磁弁駆動手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
投光手段から光をパルス投光し、その反射光を受光手段で受光して人体を検出する人体検出装置において、前記受光手段の出力を増幅した第1の信号を出力する増幅手段と、前記第1の信号を受けてその極性を反転させた第2の信号を出力する反転手段と、前記第1または第2の信号を積分する積分手段と、前記投光手段及び前記積分手段を制御し、前記積分手段出力に応じて人体の有無を判定する制御手段を備え、
該制御手段は、前記パルス投光の投光開始に同期して第1の信号を所定時間積分し、その投光終了に同期して第2の信号を前記所定時間と同一時間積分するノイズ除去積分動作を複数回行なうとともに、前記ノイズ除去積分動作同士の間隔は所定の遅延時間を設け、前記複数回のノイズ除去積分動作後の前記積分手段の出力が予め設定した閾値レベルに達したときに人体を感知したと判定する人体判定動作を行なうことを特徴とする人体検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の人体検出装置において、
前記人体判定動作で、前記ノイズ除去積分動作を3回以上行なう場合、
前記遅延時間は、少なくても2種以上の時間長を有することを特徴とする人体検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の人体検出装置において、
前記人体判定動作を繰り返し行なうごとに、
前記時間長を変更することを特徴とする人体検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つに記載の人体検出装置を有することを特徴とする水栓制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−248343(P2007−248343A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74090(P2006−74090)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】