説明

人体測定装置

【課題】種々の体型の被検者であっても、常に正確に、安定して腹囲長等の人体各部の周囲長を測定することができる人体測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】複数の枠体が水平方向に回動可能であるが垂直方向に変位不能に連結された2個の連結ガイド1a,1bと、前記2個の連結ガイドの長手方向に沿って設置され、該長手方向に変位可能な被検者の腹囲を計測するためのメジャー6と、前記2個の連結ガイドの一端が水平方向に回動可能に接続されたアダプター7と、前記アダプターを垂直方向に変位させるための支柱8aと、前記アダプターを前記支柱に固定するための固定具9とからなることを特徴とする人体測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体脂肪測定の基本データとして用いる人体の腹囲寸法又は胸部等の人体各部の周囲長を測定する人体測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体各部の周囲長は内臓脂肪組織の推定、衣類作製等のための基礎データ等として広く活用されている。
【0003】
例えば、体脂肪組織情報は、糖尿病や高血圧及び高脂血症などの生活習慣病のスクリーニング用としての有用性が特に問われており、内蔵脂肪組織付近に付着、蓄積した内臓脂肪組織に関して、その計測の重要性が日に日に高まってきている。
【0004】
従来の内臓脂肪組織の推定方法では、身体特定情報として、主に、身長、体重、年齢、性別情報を用いてきたが、このような情報を用いた推定では、四肢と体幹の個人誤差が含まれてしまうこと等から、精度の高い測定を行うことができないという問題があった。そのため、体幹部付近の腹囲長に関する情報を用いて内臓脂肪組織の推定が行われているのが現状である。
【0005】
例えば、特許文献1には、ノギス及びメジャーを用いた腹囲長の測定方法の例が開示されている(図8参照)。更に、人体の胸、腰及び尻等の周囲長も一般的にはメジャーで通常測定されている。
【特許文献1】特開2002−219132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記図8に示したようなノギスや通常のメジャーのみを使用した測定ではその測定値にはどうしてばらつきが発生し、正確な測定ができないのが現状であり、その結果内臓脂肪組織の推定値がばらつくと言う問題があった。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、種々の体型の被検者であっても、常に正確に、安定して腹囲長等の人体各部の周囲長を測定することができる人体測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の目的を達成するため、以下(1)〜(5)の構成を備えるものである。
【0009】
(1)複数の枠体が水平方向に回動可能であるが垂直方向に変位不能に連結された2個の連結ガイドと、前記2個の連結ガイドの長手方向に沿って設置され、該長手方向に変位可能な被検者の人体各部の周囲長を計測するためのメジャーと、前記2個の連結ガイドの一端が水平方向に回動可能に接続されたアダプターと、前記アダプターを垂直方向に変位させるための支柱と、前記アダプターを前記支柱に固定するための固定具とからなることを特徴とする人体測定装置。
【0010】
(2)複数の枠体が水平方向に回動可能であるが垂直方向に変位不能に連結された2個の連結ガイドと、前記2個の連結ガイドの一方のガイドの長手方向に沿って設置され、該長手方向に変位可能な被検者の人体各部の周囲長を計測するためのメジャーと、前記2個の連結ガイドの他方の連結ガイドの一端に設置され、前記メジャーの一方端をロックするための固定具と、前記メジャーが巻き取られる巻取り部と、前記ゼンマイバネと前記メジャーが設置された連結ガイドの中間に位置し、前記メジャーが巻き付けられる計測ローラと、前記計測ローラの回転数を検知する検出部を有することを特徴とする人体測定装置。
【0011】
(3)前記計測ローラの回転軸と同一の軸上に一方向回転ダンパーが設置されていることを特徴とする前記(2)記載の人体測定装置。
【0012】
(4)前記巻取り部がゼンマイバネであり、前記検出部がエンコーダであることを特徴とする前記(2)又は(3)記載の人体測定装置。
【0013】
(5)前記人体測定装置が、身長計又は身長体重計の支柱に移動可能に設置されることを特徴とする前記(1)乃至(4)いずれか記載の人体測定装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上記構成を有することで、種々の体型の被検者であっても、常に正確に、安定して人体各部の周囲長を測定することができる人体測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
【実施例1】
【0016】
本実施例の人体測定装置A,10の外観を示した斜視図を図1に示す。図に示したように、装置10は左右の連結ガイド1a,1b、メジャー6及びアダプター7を主な構成品としている。メジャーは左右の連結ガイドの中を貫通しており、更にガイドは取付具B,5を介してアダプターに固定されている。本アダプター7は腹囲測定の被検者の背面に接するものであり、その凹部は支柱にはまり上下にスライドできるものとする。上記メジャー6は被検者の腹囲を測定するための一般的なメジャーである。
【0017】
ここで、左右の連結ガイドの詳細を図2を参照しながら説明する。本連結ガイドの基本構成要素は、図2(a)に示したように枠体2と蓋3である。個々の枠体は図のボス2bと穴2aを介して相互に連結され、その後蓋3がはめ込まれるという構造を有している。二つの枠体が結合され、蓋を取付けた状態を図2(b)に示す。この図から分かるように、連結されたガイドはX方向には所定の角度だけ回動可能であるが、Y方向には変位しない構造となっている。図2(c)には、上記のようにして組み立てられた連結ガイドの両端に取付けられる取付具A,4と取付具B,5を示した。これら取付具のボス4aと穴5aは、枠体の穴2aとボス2bに挿入されるものとする。このようにして組み立てられた連結ガイドは、X方向が水平面に、Y方向が垂直面になるようにアダプターに固定され(図1)、その結果水平面内ではほぼ自由に変形可能であるが、垂直方向には変位しない構造となっている。
【0018】
次に、本実施例の人体測定装置Aを用いて被検者の腹囲を測定する手順を図3を参照しながら説明する。
【0019】
まず、被検者を台8bの上に載せる。その後、被検者の腹囲の計測適正位置に装置本体を移動させ、位置が決まったら図の固定レバー9を回し装置を支柱8aに固定する。そして、左右の連結ガイド1a,1bを被検者の腹部表面に接するように巻きつけた後、連結ガイドの中を貫通しているメジャー6を使って腹囲を計測する。計測が終了したら、左右の連結ガイドを開き被検者は台から降りる。
【0020】
このように、本実施例の人体測定装置Aを使用すると、常に被検者の腹部の頂上部を通る腹囲を、その水平面内で正確に測定することが可能となる。
【0021】
本実施例では、人体測定装置Aを用いて被検者の腹囲を測定したが、被検者の胸、腰又は尻等の周囲長を測定できるのは言うまでもない。
【実施例2】
【0022】
本願発明の人体測定装置の第二の実施形態を図4〜図6を参照しながら説明する。
【0023】
本実施例の人体測定装置B,20は、実施例1と同じ左右の連結ガイド1a,1bを有している(図4)。そして、一方の連結ガイド(今の場合、左連結ガイド1b)にはメジャー13が貫通しており、他方の連結ガイドの先端にはロック金具11が固定されているものとする。また、左右の連結ガイドは図4に示したように、演算装置12に固定されている。この演算装置は図のように、実施例1のアダプターと同様に支柱と接合するための凹部を有している。メジャー13は、この演算装置の内部に導入されている。
【0024】
次に、演算装置の内部構造を説明する。一方の連結ガイド1bを貫通しているメジャー13は、図5に示したように計測ローラ12cを介して巻取り部、例えばゼンマイバネ12bに巻き取られている。また、計測ローラの軸と同軸上に、ローラの回転をパルス値として計数するための検出部、例えばエンコーダ12eが設置されており、更にこの同軸上に一方向回転ダンパー12dが設置されている。
【0025】
上記ゼンマイバネ12bは、メジャーを巻き取る機能の他に、計測誤差を少なくするためにメジャーを計測ローラに密着させるという機能も有する。また、一方向回転ダンパー12dは、メジャーを引き出した後、急に放した際の急激な差し込みによるメジャーと計測ローラとのズレを防ぐという機能を有している。
【0026】
また、図5に示したように上記エンコーダ12eにより計測されたパルス値をもとに、被検者の腹囲を計算するためのPC板12fが内蔵されている。
【0027】
本実施例の人体測定装置B,20を使って、被検者50の腹囲を測定する手順を図6、図7を参照しながら説明する。
【0028】
まず、実際の計測をする前に計測準備を行う。すなわち、電源と外部機器(例えば、パソコン)との接続を行い、電源スイッチ25をONにする。その後、基準腹囲ダミー(図示せず)をセットし校正スイッチ23を押す。これは、既知の腹囲長を有するダミーにより装置本体の初期設定を行うものである。最後に、計測スイッチ24を押してプリントアウトを行い、内容を確認する。
【0029】
次に、被検者50の腹囲測定を行う。被検者を台の上に載せる。その後、装置本体を被検者の腹囲が最大となる位置で固定する。この場合、人体測定装置Bは図6に示したように身長体重計に固定されたレール15の溝に沿って移動するものとする。そして、メジャー13を引き出し、反対側の金具11に固定した後、計測スイッチ24を押す。最後に、メジャーを固定金具11から外した後、被検者を台から降ろす。
【0030】
なお、本実施例の人体測定装置はメジャーの変位量をエンコーダで計測して腹囲長を算出する構成を有するものであるが、このメジャーの目盛りを使用して、あらかじめ決められた左連結ガイド1bの所定の位置(例えば、図5のAの位置)で腹囲長を実際に読むという構成も同時に有しているものとする。
【0031】
このように、本実施例の人体測定装置は、被検者の腹部の頂上部の腹囲を確実かつ安定的に測定することが可能である。また、身長体重計のデータと本装置で計測した腹囲データを総合的に分析することで、合理的かつ正確な内臓脂肪組織の推定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1の人体測定装置Aを示す斜視図
【図2】(a)連結ガイドの枠体の斜視図(b)枠体が連結された状態を示す図(c)取付具A及び取付具Bを示す図
【図3】実施例1の人体測定装置Aの使用状態を示す図
【図4】実施例2の人体測定装置Bを示す斜視図
【図5】実施例2の人体測定装置Bの構造を示す断面図
【図6】実施例2の人体測定装置Bの使用状態を示す図
【図7】(a)実施例2の人体測定装置Bの背面図(b)右側面図(c)左側面図
【図8】従来の腹囲測定方法を示す図
【符号の説明】
【0033】
1a 右連結ガイド
1b 左連結ガイド
2 枠体
2a 穴
2b ボス
3 蓋
4 取付具A
4a ボス
5 取付具B
5a 穴
6 メジャー
7 アダプター
8a 支柱
8b 台
9 固定レバー
10 人体測定装置A
11 ロック金具
12 演算装置
12a レール
12b ゼンマイバネ
12c 計測ローラ
12d 一方向回転ダンパー
12e エンコーダ
12f PC板
13 メジャー
14 背当てマット
15 移動レール
16 固定バンド
17 身長体重計
18 ヒューズホルダ
19 電源コード
20 人体測定装置B
21 ロール紙
22 表示部
23 校正スイッチ
24 計測スイッチ
25 電源スイッチ
26 出力コネクタ
27 ノギス
50 被検者
50a 被検者の腹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の枠体が水平方向に回動可能であるが垂直方向に変位不能に連結された2個の連結ガイドと、
前記2個の連結ガイドの長手方向に沿って設置され、該長手方向に変位可能な被検者の人体各部の周囲長を計測するためのメジャーと、
前記2個の連結ガイドの一端が水平方向に回動可能に接続されたアダプターと、
前記アダプターを垂直方向に変位させるための支柱と、
前記アダプターを前記支柱に固定するための固定具とからなることを特徴とする人体測定装置。
【請求項2】
複数の枠体が水平方向に回動可能であるが垂直方向に変位不能に連結された2個の連結ガイドと、
前記2個の連結ガイドの一方のガイドの長手方向に沿って設置され、該長手方向に変位可能な被検者の人体各部の周囲長を計測するためのメジャーと、
前記2個の連結ガイドの他方の連結ガイドの一端に設置され、前記メジャーの一方端をロックするための固定具と、
前記メジャーが巻き取られる巻取り部と、
前記ゼンマイバネと前記メジャーが設置された連結ガイドの中間に位置し、前記メジャーが巻き付けられる計測ローラと、
前記計測ローラの回転数を検知する検出部を有することを特徴とする人体測定装置。
【請求項3】
前記計測ローラの回転軸と同一の軸上に一方向回転ダンパーが設置されていることを特徴とする請求項2記載の人体測定装置。
【請求項4】
前記巻取り部がゼンマイバネであり、前記検出部がエンコーダであることを特徴とする請求項2又は3記載の人体測定装置。
【請求項5】
前記人体測定装置が、身長計又は身長体重計の支柱に移動可能に設置されることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の人体測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−6047(P2009−6047A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172143(P2007−172143)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【特許番号】特許第4027415号(P4027415)
【特許公報発行日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(507221988)株式会社ワンズウィル (1)
【Fターム(参考)】