説明

人工ゼオライトによる尿素合成方法

【課題】化石燃料の大量消費によって発生する地球温暖化の原因となる二酸化炭素を有効利用して、人工ゼオライトから尿素を合成する。
【解決手段】ナトリウム型もしくはカリウム型の人工ゼオライトを、塩化アンモニウム水溶液に浸漬処理しイオン交換してアンモニア型人工ゼオライトを生成するアンモニア型人工ゼオライト生成工程Cと、該アンモニア型人工ゼオライトに二酸化炭素を反応させて尿素を合成する尿素合成工程Dとから成る。尿素合成工程Dは、アンモニア型人工ゼオライトと二酸化炭素を温度100〜150℃、圧力15〜25MPaの高温圧力釜(オートクレーブ)に入れて尿素を合成する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化石燃料の大量消費によって発生する地球温暖化の原因となっている二酸化炭素を有功利用して尿素を合成することを可能とした人工ゼオライトによる尿素合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の大量消費に依存している中、地球温暖化問題として、鉄鋼業、窯業、化学工業、金属機械産業、紙パルプ業、農林水産業等の二酸化炭素の排出量の規制が世界的規模で行なわれつつある。この二酸化炭素の排出量は、先進工業諸国が70%、発展途上諸国が30%といわれており、該二酸化炭素自体は、大気中に50〜200年残留し続けるといわれている。特に、ガソリンを必要とする自動車は、小型乗用車1台当たり1年間に平均649kgの二酸化炭素を排出しており、自然破壊のみならず人間破壊をもたらすという危惧が現実のものになっている。このような地球温暖化の原因である大気中の二酸化炭素の蓄積を減らすために、国際協定では、熱帯雨林での光合成作用を通じて二酸化炭素を大量吸収するという森林の二酸化炭素吸収能力を考慮に入れる提案が出されているのも事実である。
【0003】
また、尿素はカルバミドといわれ、化学式CH42 O、分子量60.06、融点137℃、比重d=1.335の無色の柱状晶であり、例えば、コスゲン、クロロギ酸エステル、塩化カルバモイル、炭酸エステル等にアンモニアを作用させると尿素が生成される。工業的には、アンモニア合成の際の副産物である二酸化炭素を1モルとアンモニア4モルを温度180〜200℃、圧力14〜25MPa等の高温高圧下で反応させると二酸化炭素の約70%が尿素に転換することが周知である。また、得られた尿素の溶液、カルバミン酸アンモニウム、および水中のアンモニアを含む反応混合物から、未反応のカルバミン酸とアンモニアを分離して、これを脱水するという直接合成法も行なわれている。
【0004】
この尿素は弱塩基性を有し、この10%水溶液は、pH7.2で酸と反応して塩を作る。この尿素を静かに加熱するとアンモニアに、急熱するとシアヌル酸とアンモニアに分解する。そして、酸、アルカリとの加熱、もしくは酵素ウレアーゼの作用により加水分解し、アンモニアと二酸化炭素になる。さらに、亜硝酸によって二酸化炭素、窒素、水に分解される。特に、アルカリ性溶液中で次亜臭素酸塩を作用させて窒素を生じさせる反応はウレアーゼ反応として尿素の定量に用いられている。
【0005】
このようにして合成された尿素は、水に溶けやすい即効性肥料となり、特に、硫安に勝る肥効性のある中性の窒素肥料(窒素含有量46%)として使用され、硫酸を用いないで合成が容易にできるために重要である。また、飼料あるいは合成樹脂の原料として有用であり、いろいろなアルデヒドと反応させて、熱硬化性合成樹脂を作る。さらには、セルロースの軟化剤として製紙工業でも利用されている。
【0006】
また、従来では、特許文献1に開示されているように、ナトリウム型もしくはカリウム型の人工ゼオライトを、塩化アンモニウム水溶液に浸漬処理しイオン交換してアンモニア型人工ゼオライトを生成し、これを用いてモルタルもしくはコンクリート構築物を形成する技術が存在する。
【特許文献1】特開2002−293534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、地球温暖化の主原因は大気中への二酸化炭素の放出であるにもかかわらず、二酸化炭素そのものは全くの無害であり、直接人間の健康を害するものではなく、むしろ植物の生育には不可欠なものである。したがって、二酸化炭素の国際協定による規制の実行を期待するのは困難なものとなっているのが実状である。
【0008】
また、特許文献1による技術では、アンモニア型人工ゼオライトからモルタルもしくはコンクリート構築物を形成するのであるが、アンモニア型人工ゼオライトから尿素を合成する方法は未だ確立されていなかった。
【0009】
そこで、本発明は叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、化石燃料の大量消費によって発生する地球温暖化の原因となる二酸化炭素を有効利用して、産業廃棄物である石炭灰のフライアッシュ、都市ゴミの焼却灰、都市ゴミの溶融スラグ、パルプスラッジの焼却灰、上下水道汚泥の焼却灰等からの無害化された人工ゼオライトから尿素を容易に合成することを可能にした人工ゼオライトによる尿素合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明にあっては、ナトリウム型もしくはカリウム型の人工ゼオライトを、塩化アンモニウム水溶液に浸漬処理しイオン交換してアンモニア型人工ゼオライトを生成するアンモニア型人工ゼオライト生成工程Cと、該アンモニア型人工ゼオライトに二酸化炭素を反応させて尿素を合成する尿素合成工程Dとから成ることを特徴とした。
【0011】
尿素合成工程Dは、アンモニア型人工ゼオライトと二酸化炭素を温度100〜150℃、圧力15〜25MPaの高温圧力釜(オートクレーブ)に入れて尿素を合成する。
【0012】
ナトリウム型もしくはカリウム型の人工ゼオライトの製造は、石炭灰のフライアッシュ、都市ゴミの焼却灰、都市ゴミの溶融スラグ、パルプスラッジの焼却灰、上下水道汚泥の焼却灰等を、溶媒としての水酸化アルカリ水溶液を含んだ液状にして攪拌混合して生成されるものとした。
【0013】
ナトリウム型もしくはカリウム型の人工ゼオライトの製造は、石炭灰を、容積1cm3 当たり温度174℃(飽和蒸気圧)、圧力8kgf/cm2 の高温圧力釜(オートクレーブ)に入れて、濃度3.5Nの水酸化ナトリウムを加えて攪拌することで石炭灰に含まれている非晶質体であるアルミ酸珪素の酸素原子からアルミニウム原子と珪素原子とをそれぞれ解離させてテクトアルミノケイ酸塩構造のゼオライトに結晶化させるものとした。
【0014】
以上のように構成された本発明に係る人工ゼオライトによる尿素合成方法にあって、アルカリ処理を施した石炭灰である人工ゼオライトは、吸着性能、イオン交換能力、触媒能力等の優れた機能を有する。また、人工ゼオライト自体は多孔質構造体であり、アクロポア、ミクロポア等の微細孔を有し、水中の有毒物質の吸着に寄与する。添加される人工ゼオライトには二酸化珪素(シリカ)、三酸化二アルミニウム(アルミナ)を多く含み、その他に酸化鉄、酸化カルシウム、酸化チタン等を含む。そして、塩化アンモニウム水溶液に浸漬処理しイオン交換して得られたアンモニア型人工ゼオライトは、二酸化炭素と高温高圧下で反応して尿素を合成させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、化石燃料の大量消費によって発生する地球温暖化の原因となる二酸化炭素を有効利用して、産業廃棄物である石炭灰のフライアッシュ、都市ゴミの焼却灰、都市ゴミの溶融スラグ、パルプスラッジの焼却灰、上下水道汚泥の焼却灰等からの無害化された人工ゼオライトから尿素を短時間で効率良く合成することを可能にした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の一形態を説明する。図1に示すように、ナトリウム型もしくはカリウム型の人工ゼオライトの製造工程は、対象物質であるシリカ、アルミナを主成分とする石炭灰のフライアッシュを、溶媒としての水酸化アルカリ水溶液として例えば濃度3.5Nの水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液を含んだ液状にして貯蔵したスラリータンクから攪拌タンクに圧送導入する攪拌混合工程Aと、攪拌タンク内で混合し熱処理することで石炭灰から可溶性珪素および可溶性アルミニウムを析出させ、テクトアルミノケイ酸塩構造のナトリウム型人工ゼオライトもしくはカリウム型人工ゼオライトに結晶化させる結晶化工程Bによる。尚、石炭灰のフライアッシュの他に、都市ゴミの焼却灰、都市ゴミの溶融スラグ、パルプスラッジの焼却灰、上下水道汚泥の焼却灰等であっても良い。
【0017】
そして、アンモニア型人工ゼオライト生成工程Cの処理過程において、ナトリウム型もしくはカリウム型の人工ゼオライトを、水100重量部に対し5〜30重量部の塩化アンモニウム水溶液に常温で数時間攪拌しながら浸漬処理する。これによってナトリウムとアンモニアとがイオン交換してアンモニア型人工ゼオライトが生成される。
【0018】
そして、尿素合成工程Dの処理過程において、アンモニア型人工ゼオライトと、化石燃料の大量消費によって発生する地球温暖化の原因となる二酸化炭素とを、温度100〜150℃、圧力15〜25MPaの高温圧力釜(オートクレーブ)に入れ、アンモニア型人工ゼオライトに二酸化炭素を化学反応させれば尿素が合成される。
【0019】
また、ナトリウム型もしくはカリウム型の人工ゼオライトを生成する場合の他の例(図2)としては、対象物質であるシリカ、アルミナを主成分とする石炭灰のフライアッシュを、容積1cm3 当たり温度174℃(飽和蒸気圧)、圧力8kgf/cm2 の高温圧力釜(オートクレーブ)に入れてから、濃度3.5Nの水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液を加えて攪拌することで石炭灰に含まれている非晶質体であるアルミ酸珪素の酸素原子からアルミニウム原子と珪素原子とをそれぞれ解離させてテクトアルミノケイ酸塩構造のゼオライトに結晶化させる方法であっても良い。このとき、以後のアンモニア型人工ゼオライト生成工程Cに加えて、尿素合成工程Dが同一の高温圧力釜(オートクレーブ)を用いて連続的に稼働できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の最良の形態における人工ゼオライトから尿素を合成する工程を示す概略フローチャート図である。
【図2】本形態の他例における人工ゼオライトから尿素を合成する工程を示す概略フローチャート図である。
【符号の説明】
【0021】
A 攪拌混合工程
B 結晶化工程(ナトリウム型人工ゼオライト・カリウム型人工ゼオライト製造工程)
C アンモニア型人工ゼオライト生成工程
D 尿素合成工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウム型もしくはカリウム型の人工ゼオライトを、塩化アンモニウム水溶液に浸漬処理しイオン交換してアンモニア型人工ゼオライトを生成するアンモニア型人工ゼオライト生成工程と、該アンモニア型人工ゼオライトに二酸化炭素を反応させて尿素を合成する尿素合成工程とから成ることを特徴とした人工ゼオライトによる尿素合成方法。
【請求項2】
尿素合成工程は、アンモニア型人工ゼオライトと二酸化炭素を温度100〜150℃、圧力15〜25MPaの高温圧力釜(オートクレーブ)に入れて尿素を合成する請求項1記載の人工ゼオライトによる尿素合成方法。
【請求項3】
ナトリウム型もしくはカリウム型の人工ゼオライトの製造は、石炭灰のフライアッシュ、都市ゴミの焼却灰、都市ゴミの溶融スラグ、パルプスラッジの焼却灰、上下水道汚泥の焼却灰等を、溶媒としての水酸化アルカリ水溶液を含んだ液状にして攪拌混合して生成されるものとした請求項1または2記載の人工ゼオライトによる尿素合成方法。
【請求項4】
ナトリウム型もしくはカリウム型の人工ゼオライトの製造は、石炭灰を、容積1cm3 当たり温度174℃(飽和蒸気圧)、圧力8kgf/cm2 の高温圧力釜(オートクレーブ)に入れて、濃度3.5Nの水酸化ナトリウムを加えて攪拌することで石炭灰に含まれている非晶質体であるアルミ酸珪素の酸素原子からアルミニウム原子と珪素原子とをそれぞれ解離させてテクトアルミノケイ酸塩構造のゼオライトに結晶化させることによる請求項1または2記載の人工ゼオライトによる尿素合成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−94757(P2008−94757A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278276(P2006−278276)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(506371350)
【出願人】(597072763)
【出願人】(503423203)
【Fターム(参考)】