人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法およびその測定装置
【課題】微細加工したマイクロチャンバーアレイと、膜タンパク質を組み込んだ人工脂質二重膜を組み合わせて、膜タンパク質の輸送効率を蛍光イメージングにより定量解析できる、膜輸送分子の機能測定方法およびその測定装置を提供する。
【解決手段】人工二分子膜の機能測定方法において、ガラス基板上に形成したマイクロチャンバーに人工二分子膜を押付け、上面が前記人工二分子膜で閉じられた微小領域を形成し、前記人工二分子膜に膜輸送分子を再構成し、前記人工二分子膜の上側に基質の溶液を加えて、前記膜輸送分子によって前記人工二分子膜を通過させ、輸送させた前記基質を前記微小領域内に蓄積させ、該蓄積された基質の濃度を検出する。
【解決手段】人工二分子膜の機能測定方法において、ガラス基板上に形成したマイクロチャンバーに人工二分子膜を押付け、上面が前記人工二分子膜で閉じられた微小領域を形成し、前記人工二分子膜に膜輸送分子を再構成し、前記人工二分子膜の上側に基質の溶液を加えて、前記膜輸送分子によって前記人工二分子膜を通過させ、輸送させた前記基質を前記微小領域内に蓄積させ、該蓄積された基質の濃度を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工二分子膜を用いた膜輸送分子(例えば、薬剤排出トランスポーターなどの膜輸送タンパク質)の機能測定方法およびその測定装置に係り、特に、その生体膜輸送機能、およびインヒビター(阻害薬)等への応答を詳細に定量計測するものである。
【背景技術】
【0002】
細胞膜上で、細胞内外のイオンや化学物質の濃度調整、または信号伝達を担っているタンパク質群があり、これらは膜タンパク質と呼ばれている。そのなかで、イオンを輸送するイオンチャンネルなどの活性は、電気生理学的手法(膜電位・膜電流計測)によって計測することができる。
【0003】
また、人工脂質二重膜の形成とそれを使用した応用に係る提案が下記の特許文献2〜4になされている。
【0004】
なお、細胞膜を直接小孔に押し当てた後に破砕し、細胞質を溶出させた後に膜を通過した基質が小孔内に蓄積していく様子をイメージングした先行研究が存在する(下記非特許文献1)。また、マイクロ(ナノ)チャンバー群の底面のみに、全反射顕微鏡のエバネッセント場を発生させ、一分子レベルでの高感度の検出を行うという点でも先行研究が存在する(下記特許文献1参照)。
【0005】
また、下記非特許文献1の発明者等にかかる同様の提案が下記非特許文献2〜5に報告されている。
【特許文献1】特開2004−163122号公報
【特許文献2】特開2005−083765号公報
【特許文献3】特開2005−091305号公報
【特許文献4】特開2005−091308号公報
【非特許文献1】R.Peters,Annu.Rev.Biophys.Biomol.Struct.,2003,32:47−67
【非特許文献2】Nikolai I.Kiskin et.al Biophysical Journal Volume 85 October 2003 pp.2311−2322
【非特許文献3】M.TSCHODRICH−ROTTER & R.Peters,Journal of Microscopy,vol.192,Pt 2,November 1998,pp.114−125
【非特許文献4】R.Peters,Traffic 2005;6:pp.199−204,Blackwell Munksgaard
【非特許文献5】R.Peters,Traffic 2005;6:pp.421−427,Blackwell Munksgaard
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した非特許文献1では、ポリマーシートに自然に存在する小孔を利用しており、体積のコントロールが精密になされないこと、生細胞膜に発現している膜タンパク質をそのまま使用しているため、ターゲットのタンパク質のほかに雑多なタンパク質が存在することになり、タンパク一分子レベルでの計測は不可能であること、などの問題がある。
【0007】
このように、化学物質や薬剤などを輸送する膜輸送タンパク質(トランスポーターという)の信頼性のある定量的解析手法は、存在していないのが現状である。
【0008】
そこで、本発明は、上記状況に鑑みて、微細加工したマイクロチャンバーアレイと、膜タンパク質を組み込んだ人工二分子膜を組み合わせて、膜タンパク質の輸送効率を蛍光イメージングにより定量解析するための、人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法およびその測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法において、ガラス基板上に形成したマイクロチャンバーに人工二分子膜を押付け、上面が前記人工二分子膜で閉じられた微小領域を形成し、前記人工二分子膜に膜輸送分子を再構成し、前記人工二分子膜の上側に基質の溶液を加えて、前記膜輸送分子によって前記人工二分子膜を通過させ、輸送させた前記基質を前記微小領域内に蓄積させ、この蓄積された基質の濃度を検出することを特徴とする。
【0010】
〔2〕上記〔1〕記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法において、前記基質に蛍光物質を付加し、基質の濃度を蛍光物質の蛍光イメージングにより検出することを特徴とする。
【0011】
〔3〕上記〔2〕記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法において、前記ガラス基板の下方から、前記マイクロチャンバー内に蓄積され、基質の濃度を共焦点顕微鏡により高感度・高S/N比で検出することを特徴とする。
【0012】
〔4〕上記〔2〕記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法において、前記ガラス基板の下方から該ガラス基板で全反射するようにレーザーを照射して、前記マイクロチャンバーの底部にエバネッセント場を生成させて基質の濃度を高感度・高S/N比で検出することを特徴とする。
【0013】
〔5〕上記〔1〕記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法において、前記微小領域が体積fL(フェムトリットル)〜pL(ピコリットル)であることを特徴とする。
【0014】
〔6〕上記〔1〕記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法において、前記膜輸送分子は膜タンパク質であることを特徴とする。
【0015】
〔7〕人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置において、ガラス基板上に形成されたマイクロチャンバーと、このマイクロチャンバーに押付けられる人工二分子膜と、上面が前記人工二分子膜で閉じられた微小領域と、前記人工二分子膜に再構成される膜輸送分子と、前記人工二分子膜の上側に加えられる基質の溶液と、前記膜輸送分子によって前記人工二分子膜を通過させ、輸送させた前記基質を前記微小領域内に蓄積させ、この蓄積された基質の濃度を検出する手段とを具備することを特徴とする。
【0016】
〔8〕上記〔7〕記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置において、前記基質に蛍光材料を付加し、基質の濃度を蛍光物質の蛍光イメージングにより検出する手段とを具備することを特徴とする。
【0017】
〔9〕上記〔7〕記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置において、前記ガラス基板の下方に配置される、前記マイクロチャンバー内に蓄積され、基質の濃度を共焦点顕微鏡により検出する手段とを具備することを特徴とする。
【0018】
〔10〕上記〔7〕記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置において、前記ガラス基板の下方から傾斜させてレーザーを照射する手段と、前記マイクロチャンバーの底部にエバネッセント場を生成させて基質の濃度を検出する手段とを具備することを特徴とする。
【0019】
〔11〕上記〔7〕〜〔10〕の何れか一項記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置において、前記微小領域が体積fL(フェムトリットル)〜pL(ピコリットル)であることを特徴とする。
【0020】
〔12〕上記〔7〕記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置において、前記膜輸送分子は膜タンパク質であることを特徴とする。
【0021】
ここで、二分子膜とは、両親媒性分子膜であれば、脂質分子膜に限定されることなく、多様な膜成分からなる膜を言う。また、膜輸送分子も、膜タンパク質に限定されることはない。
【発明の効果】
【0022】
トランスポーターなどの膜輸送タンパク質は、細胞膜における免疫反応や薬剤応答などに深くかかわっているため、医学的・薬学的にも非常に重要性が高い。例えば、薬剤排出ABCトランスポーターと呼ばれる膜タンパク質群は、抗がん剤を細胞外に排出してしまうため、これらを不活性化させるインヒビターなどの研究が必要不加欠である。本発明は、これらのタンパク質の機能・性質を詳細に解明するのに寄与することができ、その効果は著大である。
【0023】
より具体的には、本発明によれば、マイクロ加工した微小チャンバーアレイ、膜タンパク質を組み込んだ人工二分子膜を組み合わせて、それらの膜タンパク質の輸送効率を蛍光イメージングにより定量解析することにより、膜タンパク質一分子レベルの超高感度の計測を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法およびその測定装置は、ガラス基板上に形成したマイクロチャンバーに人工二分子膜を押付け、上面が前記人工二分子膜で閉じられた微小領域を形成し、前記人工二分子膜に膜輸送分子を再構成し、前記人工二分子膜の上側に基質の溶液を加えて、前記膜輸送分子によって前記人工二分子膜を通過させ、輸送させた前記基質を前記微小領域内に蓄積させ、この蓄積された基質の濃度を検出する。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明の実施例を示す人工二分子膜の機能測定装置の断面模式図、図2は図1のA部拡大図である。
【0027】
これらの図において、1はガラス基板(カバーガラス)、2はガラス基板1上に配置される小孔が形成されたパリレン樹脂からなるマイクロチャンバーアレイ、3Aは上部チャンバー4内部に溜められた基質溶液(バッファ液)、3Bは上部チャンバー4外部に溜められた基質溶液(バッファ液)、4はマイクロチャンバーアレイ2上にセットされた漏斗型の上部チャンバー、5はその漏斗型の上部チャンバー4の下部に形成された開口、6はその開口5にセットされた、トランスポーター9が組み込まれた人工二分子膜(人工脂質二重膜)、7はその上部チャンバー4内にセットされる電極、8はその上部チャンバー4の外部の基質溶液(バッファ液)3Bにセットされるアース電極、9は人工二分子膜6に組み込まれたトランスポーター、10はバッファ液3A内に含まれる蛍光物質、11は電極7と8との間に接続される増幅器、12はその増幅器11に接続されるオシロスコープ、13は対物レンズ、14はレーザー装置(図示なし)から照射され、対物レンズ13を介してマイクロチャンバーアレイ2の底部にエバネッセント場を生成させるレーザーである。
【0028】
ここで、上部チャンバー4の下部に設けられた人工脂質二重膜6を、ガラス基板1上に形成したマイクロチャンバーアレイに押付ける。すると、小孔2Aの上面が人工脂質二重膜6で閉じられ、微小領域(体積fL〜pL程度)4Aが形成される。人工脂質二重膜6にはトランスポーター9が再構成されているため、上部チャンバー4内の、蛍光物質10によって蛍光ラベルされた基質は、トランスポーター9によって人工脂質二重膜6を通過し輸送される。輸送された基質は下側の微小領域4A内に蓄積されるため、微小領域4A内の基質濃度が急速に上昇し、蛍光イメージングにより検出できる。
【0029】
すなわち、本発明では、マイクロチャンバーアレイを用いて、膜タンパク質(例えば、イオンポンプおよびトランスポーター)を通して人工平面脂質二重膜を横切る膜輸送を光学的に検出する。ここで、パリレン樹脂からなるマイクロチャンバーは、ホトリソグラフィを用いてカバーガラス上に形成される。
【0030】
本発明によれば、人工脂質二重膜を利用しているため、通常の生細胞膜に発現した膜タンパク質を用いる手法に比べ、ターゲットの膜タンパク質の純粋な機能を一分子レベルで計測することができる。また、人工脂質二重膜を通過して輸送された基質は、通常ならば拡散してしまうため検出が困難であるが、マイクロチャンバーを用いることにより微小領域に蓄積されるため、高感度で検出でき、膜タンパク質が基質を輸送する効率を例えば、ATP濃度依存性、基質濃度依存性、インヒビターの効果などを詳細に計測することができる。
【0031】
これまでに、このような膜タンパク質の機能を詳細に計測できる実験系は存在していない。本発明では、イメージングの手法として、共焦点顕微鏡や全反射顕微鏡といった高感度・高S/N比の蛍光観察手法・装置を利用することが可能であるため、蛍光一分子レベルでの検出が可能となる。
【0032】
図3は本発明の実施例を示すガラス基板(カバーガラス)上に作製されたパリレン樹脂からなるマイクロチャンバーを示す図であり、図3(a)は直径20μmで深さ3μm、図3(b)は直径10μmで深さ3μmのマイクロチャンバーが示されている。
【0033】
マイクロチャンバーは、ガラス基板(カバーガラス)上に堆積されたパリレンを、酸素プラズマアッシングでパターニングして作製されている。
【0034】
図4は本発明の平面脂質二重膜を形成するための上部チャンバーとその開口を示す図であり、図4(a)は平面脂質二重膜を形成するための上部チャンバーを、図4(b)はその上部チャンバーの底に形成された開口を示す図である。
【0035】
本実施例では、マイクロチャンバーの直径は数十μm、深さは数μmである。そして、PMMAプラスチックよりなる上部チャンバーの底部に形成された150μmの開口に、平面脂質二重膜が形成される。上部チャンバーはバッファ液〔この実験においては、10mM MOPS(硫酸モルフォリノプロパン)+100mM KCl〕で満たされている。さらに、PC(フォスファチジルコリン:中性リン脂質)を含む数μLの溶媒〔5mg PC/1mL n−デカン(decane:C10H22 飽和脂肪族炭化水素の一つ);以下、脂質溶液という〕が開口上に添加される。ここで、上部チャンバー内のバッファ液レベルを調整することで平面脂質二重膜が自然に形成される。なお、上部チャンバーの開口が上部チャンバーの底面よりも低く作られることによって、基板への押し付けが容易になる(図1及び図4参照)。
【0036】
図5は本発明の上部チャンバーの開口に形成された平面脂質二重膜と、それをマイクロチャンバーに押し付けた状態を示す図であり、図5(a)は上部チャンバーの開口に形成された脂質二重膜を、図5(b)はその脂質二重膜をマイクロチャンバーに押し付けた状態を示す図である。脂質二重膜をガラスやパリレンなどの基板上に直接押し付けると割れてしまうため、本実施例では、親水性のリン脂質ポリマー(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンポリマー、またはMPCポリマー)でチャンバー基板をコーティングしている。このようなポリマー材料で基板を覆うと、脂質二重膜が基板に直接接触せず、押付け後も脂質二重膜の分子構造がこわれない。アガロースやPEG(ポリエチレングリコール)、デキストランなどの分子でも同様の効果が報告されている。
【0037】
図5(a)に示すように平面脂質二重膜は、上部チャンバーの開口に形成される。その平面脂質二重膜の外側の領域はいわゆる環(annulus)状になっていて、ここには大量の脂質溶液が存在して平面脂質二重膜を支持している。図5(b)に示すように、上部チャンバーの位置を低くすることによって平面脂質二重膜がマイクロチャンバーアレイに押し付けられる。
【0038】
図6は本発明の共焦点顕微鏡によって観察されたマイクロチャンバー内に捕捉された蛍光ビーズとその単一ビーズの軌跡を示す図である。
【0039】
図6(a)は共焦点顕微鏡によって観察されたマイクロチャンバー内に捕捉された200nmの蛍光ビーズを、図6(b)はマイクロチャンバー内の単一ビーズの軌跡を示す図である。チャンバー上面は脂質二重膜により蓋がされているため、ブラウン運動によってもチャンバーから出て行かない。
【0040】
本発明は、究極には単一分子レベルでの分子の輸送を検出するものである。この単一蛍光分子のイメージングのためには、TIRFM(全反射蛍光顕微鏡)システムが用いられる場合が多い。このシステムでは、ガラス基板の底部から数百nmを照明するために、バックグラウンド放射が除去されて、優れたS/N比が得られる。マイクロチャンバーは、生物学的観察のために用いられている通常のガラスのカバースリップ上に作製されるので、エバネッセント場(全反射面上での励起光場)はマイクロチャンバーの底部のみに形成される。
【0041】
図7はTIRFMで観察されたCy3の単一蛍光分子を示す図であり、100nsecの間隔で撮られた200フレームの画像が重ね合わされている。
【0042】
この図は、10nMのCy3蛍光染料溶液が本発明のマイクロチャンバー上に置かれたときのTIRFM画像(200フレームの画像が重ね合わされている)であり、各蛍光分子からの発光は、各蛍光分子がマイクロチャンバーの底面に達して光退色するにつれ、マイクロチャンバー内で明滅するドットのように見える。
【0043】
図8は本発明に係る、20mVの電圧固定状態においてナノ細孔タンパク質(α−ヘモリジン)の再構成によって脂質二重膜を横切る膜透過電流を示す図であり、縦軸は電流(pA)、横軸は時間(秒)を示している。
【0044】
図9は本発明に係るナノ細孔(α−ヘモリジン)を通じて輸送されたローダミンBの蓄積による蛍光強度の増加を示す図である。
【0045】
ここでは、トランスポータータンパク質のモデルとして、生体膜にナノ細孔(直径1.5nm)を形成する抗生物質として知られているα−ヘモリジンを、その溶液を上部チャンバー内に加えることによって、脂質二重膜内に組み込んだ。図8より、ナノ細孔が脂質二重膜中に再構成されると、ステップ状に膜電流が増加することが分かる。これは、各ナノ細孔が等しいコンダクタンスを有するためである。図8から、単一のα−ヘモリジンのコンダクタンスは、20mVの電圧固定状態で0.5nSと算出される。したがって、このシステムでは、ナノ細孔の数は全体の電流から計算される。さらに、単位面積におけるナノ細孔の数密度も、図5のように顕微鏡下で二重膜の領域を監視できるので、同様に計算することができる。
【0046】
ナノ細孔の再構成(約10個のナノ細孔/100μm2 )の後で、ローダミン溶液(最終濃度で10μM)が上部チャンバーに付加される。ローダミン溶液はナノ細孔を通じて輸送されるので、図9に見られるように、マイクロチャンバー内の密度の増加は,蛍光発光強度の増加として観察される。
【0047】
最後に、本発明の輸送基質の蛍光検出システムにおいて、検出可能な濃度範囲を検証した。本実施例でマイクロチャンバーを形成する材料として使用したパリレン樹脂は、光学的に透明な有機材料である。従って、本来ならばマイクロチャンバーの内部の蛍光のみを検出したいが、チャンバー外側の部分にも励起光・蛍光ともに透過してしまうため、S/N比が低下するという問題があった。また、検出法としてTIRFMを使用する場合、励起光がある入射角を伴って照射されるが、このとき、チャンバーの側面から励起光が漏れ出してしまう(図9写真)、また、チャンバーの上面でもエバネッセント場が発生してしまい、こちらもS/N比が低下するという問題があった。この問題はチャンバーの材料を不透明な物質(例えば金属やシリコンなど)で形成すれば、チャンバー内部のみの蛍光を検出することができ、またこれも本発明の範囲から除外されない。しかし、本実施例では、平面膜押付け時に、平面膜の状態を観察しながら行ったほうが再現性がよく、不透明な材料を用いると、透過光での観察ができなくなってしまう。
【0048】
これらの問題を解決するため、図10に示すように、ガラス基板とパリレン樹脂マイクロチャンバーの間に、十分に薄い(10nm以下)アルミニウム薄膜を蒸着した。このアルミニウム薄膜は、透過光を10−20%程度減光する。
【0049】
図11に、共焦点顕微鏡観察における、チャンバー内側および外側の蛍光輝度を示す。この実験は検出システムの校正が目的であり、脂質二重膜及び膜タンパク質は用いておらず、マイクロチャンバー上に規定濃度の蛍光色素を含む溶液を滴下し、観察を行った。
【0050】
ここでは、微小領域4Aを除くガラス基板(カバーガラス)1の上面には、アルミニウム薄膜21が形成されるようにしている点を除くと、図2と同様の装置である。
【0051】
アルミニウム薄膜21がない場合は、チャンバーの内側及び外側の蛍光輝度の比が1.2程度に対し、アルミニウム薄膜21を蒸着したチャンバーでは1.5程度に上昇し、S/N比が改善された。また、検出に60倍の対物レンズ(オリンパス)および冷却CCDカメラ(浜松フォトニクス、ORCA−ER)を用いた場合、およそ100nM−10μMの濃度範囲で検出可能であることを確認した。
【0052】
図12に、全反射顕微鏡観察おける、チャンバー内側および外側の蛍光輝度を示す。図12(a)は、アルミニウム薄膜21なしの場合である。このとき、チャンバー側壁からの励起光の染み出しや、チャンバー上面でのエバネッセント場の発生が障害となるため、色素の濃度と蛍光輝度が比例関係からのばらつきが大きくなってしまう。それに対し、アルミニウム薄膜21を蒸着した場合(図12b)は、これらの障害が抑えられるため、ばらつきが小さく、よい再現性が得られる。全反射顕微鏡を検出手段とした場合は、10nM−1μMの範囲で計測が行えることを確認した。
【0053】
上記したように、本発明によれば、
(1)人工脂質二重膜を通過した基質が微小領域内に蓄積されるために急速に濃度が上昇し、超高感度で検出が可能である。
(2)人工脂質二重膜を使用しているため、機能解析を行う膜タンパク質のみの純粋な効果を計測できる。また、タンパク質濃度を調整することにより一分子レベルでの機能を計測できる。
(3)人工脂質二重膜をマイクロチャンバーアレイに押付けて微小領域を形成するが、その際マイクロチャンバー表面を親水性ポリマー(PEG,MPCポリマーなど)でコーティングすることにより、脂質二重膜が壊れることを防止できる。
(4)マイクロチャンバーアレイをカバーガラス上に形成しているため、共焦点顕微鏡など高感度・高S/N比のイメージング手法を使用できる。
(5)マイクロチャンバーアレイは微細加工技術により形成することにより形状・体積が均一にそろっているため、再現性の良いデータが取得できる。
(6)イメージングと電気生理的手法を同時に利用できるため、膜輸送とそれに伴うイオンやプロトンの移動も同時計測が可能である。
【0054】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
トランスポーターなどの膜輸送タンパク質は、細胞膜における免疫反応や薬剤応答などに深くかかわっているため、医学的・薬学的にも非常に重要性が高い。例えば、薬剤排出ABCトランスポーターと呼ばれる膜タンパク質群は、抗がん剤を細胞外に排出してしまうため、これらを不活性化させるインヒビターなどの研究が必要不可欠である。本発明は、これらのタンパク質の機能・性質を詳細に解明するためのツールになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施例を示す膜輸送分子の機能測定装置の断面模式図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】本発明の実施例を示すガラス基板(カバーガラス)上に作製されたパリレン樹脂からなるマイクロチャンバーを示す図である。
【図4】本発明の平面脂質二重膜形成のための上部チャンバーとその開口を示す図である。
【図5】本発明の上部チャンバーの開口に形成された平面脂質二重膜と、それをマイクロチャンバーに押し付けた状態を示す図である。
【図6】本発明の共焦点顕微鏡によって観察されたマイクロチャンバー内に捕捉された蛍光ビーズとその単一ビーズの軌跡を示す図である。
【図7】本発明のTIRFMで観察されたCy3の単一蛍光分子を示す図である。
【図8】本発明に係る、20mVの電圧固定状態においてナノ細孔(α−ヘモリジン)の再構成によって脂質二重膜を横切る膜透過電流を示す図である。
【図9】本発明に係る、ナノ細孔(α−ヘモリジン)を通じて輸送されるローダミンBの蓄積による蛍光強度の増加を示す図である。
【図10】本発明の実施例を示すS/N比が改善されたマイクロチャンバーを示す図である。
【図11】本発明の実施例を示す共焦点顕微鏡観察における、チャンバー内側および外側の蛍光輝度を示す図である。
【図12】本発明の実施例を示す全反射顕微鏡観察おける、チャンバー内側および外側の蛍光輝度を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ガラス基板(カバーガラス)
2 マイクロチャンバー
2A 小孔
3A,3B 基質溶液(バッファ液)
4 漏斗型の上部チャンバー
5 開口
6 人工二分子膜(人工脂質二重膜)
7 上部チャンバー内にセットされる電極
8 上部チャンバーの外部のバッファ液にセットされるアース電極
9 トランスポーター
10 バッファ液内に含まれる蛍光物質
11 増幅器
12 オシロスコープ
13 対物レンズ
14 レーザー
21 アルミニウム薄膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工二分子膜を用いた膜輸送分子(例えば、薬剤排出トランスポーターなどの膜輸送タンパク質)の機能測定方法およびその測定装置に係り、特に、その生体膜輸送機能、およびインヒビター(阻害薬)等への応答を詳細に定量計測するものである。
【背景技術】
【0002】
細胞膜上で、細胞内外のイオンや化学物質の濃度調整、または信号伝達を担っているタンパク質群があり、これらは膜タンパク質と呼ばれている。そのなかで、イオンを輸送するイオンチャンネルなどの活性は、電気生理学的手法(膜電位・膜電流計測)によって計測することができる。
【0003】
また、人工脂質二重膜の形成とそれを使用した応用に係る提案が下記の特許文献2〜4になされている。
【0004】
なお、細胞膜を直接小孔に押し当てた後に破砕し、細胞質を溶出させた後に膜を通過した基質が小孔内に蓄積していく様子をイメージングした先行研究が存在する(下記非特許文献1)。また、マイクロ(ナノ)チャンバー群の底面のみに、全反射顕微鏡のエバネッセント場を発生させ、一分子レベルでの高感度の検出を行うという点でも先行研究が存在する(下記特許文献1参照)。
【0005】
また、下記非特許文献1の発明者等にかかる同様の提案が下記非特許文献2〜5に報告されている。
【特許文献1】特開2004−163122号公報
【特許文献2】特開2005−083765号公報
【特許文献3】特開2005−091305号公報
【特許文献4】特開2005−091308号公報
【非特許文献1】R.Peters,Annu.Rev.Biophys.Biomol.Struct.,2003,32:47−67
【非特許文献2】Nikolai I.Kiskin et.al Biophysical Journal Volume 85 October 2003 pp.2311−2322
【非特許文献3】M.TSCHODRICH−ROTTER & R.Peters,Journal of Microscopy,vol.192,Pt 2,November 1998,pp.114−125
【非特許文献4】R.Peters,Traffic 2005;6:pp.199−204,Blackwell Munksgaard
【非特許文献5】R.Peters,Traffic 2005;6:pp.421−427,Blackwell Munksgaard
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した非特許文献1では、ポリマーシートに自然に存在する小孔を利用しており、体積のコントロールが精密になされないこと、生細胞膜に発現している膜タンパク質をそのまま使用しているため、ターゲットのタンパク質のほかに雑多なタンパク質が存在することになり、タンパク一分子レベルでの計測は不可能であること、などの問題がある。
【0007】
このように、化学物質や薬剤などを輸送する膜輸送タンパク質(トランスポーターという)の信頼性のある定量的解析手法は、存在していないのが現状である。
【0008】
そこで、本発明は、上記状況に鑑みて、微細加工したマイクロチャンバーアレイと、膜タンパク質を組み込んだ人工二分子膜を組み合わせて、膜タンパク質の輸送効率を蛍光イメージングにより定量解析するための、人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法およびその測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法において、ガラス基板上に形成したマイクロチャンバーに人工二分子膜を押付け、上面が前記人工二分子膜で閉じられた微小領域を形成し、前記人工二分子膜に膜輸送分子を再構成し、前記人工二分子膜の上側に基質の溶液を加えて、前記膜輸送分子によって前記人工二分子膜を通過させ、輸送させた前記基質を前記微小領域内に蓄積させ、この蓄積された基質の濃度を検出することを特徴とする。
【0010】
〔2〕上記〔1〕記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法において、前記基質に蛍光物質を付加し、基質の濃度を蛍光物質の蛍光イメージングにより検出することを特徴とする。
【0011】
〔3〕上記〔2〕記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法において、前記ガラス基板の下方から、前記マイクロチャンバー内に蓄積され、基質の濃度を共焦点顕微鏡により高感度・高S/N比で検出することを特徴とする。
【0012】
〔4〕上記〔2〕記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法において、前記ガラス基板の下方から該ガラス基板で全反射するようにレーザーを照射して、前記マイクロチャンバーの底部にエバネッセント場を生成させて基質の濃度を高感度・高S/N比で検出することを特徴とする。
【0013】
〔5〕上記〔1〕記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法において、前記微小領域が体積fL(フェムトリットル)〜pL(ピコリットル)であることを特徴とする。
【0014】
〔6〕上記〔1〕記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法において、前記膜輸送分子は膜タンパク質であることを特徴とする。
【0015】
〔7〕人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置において、ガラス基板上に形成されたマイクロチャンバーと、このマイクロチャンバーに押付けられる人工二分子膜と、上面が前記人工二分子膜で閉じられた微小領域と、前記人工二分子膜に再構成される膜輸送分子と、前記人工二分子膜の上側に加えられる基質の溶液と、前記膜輸送分子によって前記人工二分子膜を通過させ、輸送させた前記基質を前記微小領域内に蓄積させ、この蓄積された基質の濃度を検出する手段とを具備することを特徴とする。
【0016】
〔8〕上記〔7〕記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置において、前記基質に蛍光材料を付加し、基質の濃度を蛍光物質の蛍光イメージングにより検出する手段とを具備することを特徴とする。
【0017】
〔9〕上記〔7〕記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置において、前記ガラス基板の下方に配置される、前記マイクロチャンバー内に蓄積され、基質の濃度を共焦点顕微鏡により検出する手段とを具備することを特徴とする。
【0018】
〔10〕上記〔7〕記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置において、前記ガラス基板の下方から傾斜させてレーザーを照射する手段と、前記マイクロチャンバーの底部にエバネッセント場を生成させて基質の濃度を検出する手段とを具備することを特徴とする。
【0019】
〔11〕上記〔7〕〜〔10〕の何れか一項記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置において、前記微小領域が体積fL(フェムトリットル)〜pL(ピコリットル)であることを特徴とする。
【0020】
〔12〕上記〔7〕記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置において、前記膜輸送分子は膜タンパク質であることを特徴とする。
【0021】
ここで、二分子膜とは、両親媒性分子膜であれば、脂質分子膜に限定されることなく、多様な膜成分からなる膜を言う。また、膜輸送分子も、膜タンパク質に限定されることはない。
【発明の効果】
【0022】
トランスポーターなどの膜輸送タンパク質は、細胞膜における免疫反応や薬剤応答などに深くかかわっているため、医学的・薬学的にも非常に重要性が高い。例えば、薬剤排出ABCトランスポーターと呼ばれる膜タンパク質群は、抗がん剤を細胞外に排出してしまうため、これらを不活性化させるインヒビターなどの研究が必要不加欠である。本発明は、これらのタンパク質の機能・性質を詳細に解明するのに寄与することができ、その効果は著大である。
【0023】
より具体的には、本発明によれば、マイクロ加工した微小チャンバーアレイ、膜タンパク質を組み込んだ人工二分子膜を組み合わせて、それらの膜タンパク質の輸送効率を蛍光イメージングにより定量解析することにより、膜タンパク質一分子レベルの超高感度の計測を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法およびその測定装置は、ガラス基板上に形成したマイクロチャンバーに人工二分子膜を押付け、上面が前記人工二分子膜で閉じられた微小領域を形成し、前記人工二分子膜に膜輸送分子を再構成し、前記人工二分子膜の上側に基質の溶液を加えて、前記膜輸送分子によって前記人工二分子膜を通過させ、輸送させた前記基質を前記微小領域内に蓄積させ、この蓄積された基質の濃度を検出する。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明の実施例を示す人工二分子膜の機能測定装置の断面模式図、図2は図1のA部拡大図である。
【0027】
これらの図において、1はガラス基板(カバーガラス)、2はガラス基板1上に配置される小孔が形成されたパリレン樹脂からなるマイクロチャンバーアレイ、3Aは上部チャンバー4内部に溜められた基質溶液(バッファ液)、3Bは上部チャンバー4外部に溜められた基質溶液(バッファ液)、4はマイクロチャンバーアレイ2上にセットされた漏斗型の上部チャンバー、5はその漏斗型の上部チャンバー4の下部に形成された開口、6はその開口5にセットされた、トランスポーター9が組み込まれた人工二分子膜(人工脂質二重膜)、7はその上部チャンバー4内にセットされる電極、8はその上部チャンバー4の外部の基質溶液(バッファ液)3Bにセットされるアース電極、9は人工二分子膜6に組み込まれたトランスポーター、10はバッファ液3A内に含まれる蛍光物質、11は電極7と8との間に接続される増幅器、12はその増幅器11に接続されるオシロスコープ、13は対物レンズ、14はレーザー装置(図示なし)から照射され、対物レンズ13を介してマイクロチャンバーアレイ2の底部にエバネッセント場を生成させるレーザーである。
【0028】
ここで、上部チャンバー4の下部に設けられた人工脂質二重膜6を、ガラス基板1上に形成したマイクロチャンバーアレイに押付ける。すると、小孔2Aの上面が人工脂質二重膜6で閉じられ、微小領域(体積fL〜pL程度)4Aが形成される。人工脂質二重膜6にはトランスポーター9が再構成されているため、上部チャンバー4内の、蛍光物質10によって蛍光ラベルされた基質は、トランスポーター9によって人工脂質二重膜6を通過し輸送される。輸送された基質は下側の微小領域4A内に蓄積されるため、微小領域4A内の基質濃度が急速に上昇し、蛍光イメージングにより検出できる。
【0029】
すなわち、本発明では、マイクロチャンバーアレイを用いて、膜タンパク質(例えば、イオンポンプおよびトランスポーター)を通して人工平面脂質二重膜を横切る膜輸送を光学的に検出する。ここで、パリレン樹脂からなるマイクロチャンバーは、ホトリソグラフィを用いてカバーガラス上に形成される。
【0030】
本発明によれば、人工脂質二重膜を利用しているため、通常の生細胞膜に発現した膜タンパク質を用いる手法に比べ、ターゲットの膜タンパク質の純粋な機能を一分子レベルで計測することができる。また、人工脂質二重膜を通過して輸送された基質は、通常ならば拡散してしまうため検出が困難であるが、マイクロチャンバーを用いることにより微小領域に蓄積されるため、高感度で検出でき、膜タンパク質が基質を輸送する効率を例えば、ATP濃度依存性、基質濃度依存性、インヒビターの効果などを詳細に計測することができる。
【0031】
これまでに、このような膜タンパク質の機能を詳細に計測できる実験系は存在していない。本発明では、イメージングの手法として、共焦点顕微鏡や全反射顕微鏡といった高感度・高S/N比の蛍光観察手法・装置を利用することが可能であるため、蛍光一分子レベルでの検出が可能となる。
【0032】
図3は本発明の実施例を示すガラス基板(カバーガラス)上に作製されたパリレン樹脂からなるマイクロチャンバーを示す図であり、図3(a)は直径20μmで深さ3μm、図3(b)は直径10μmで深さ3μmのマイクロチャンバーが示されている。
【0033】
マイクロチャンバーは、ガラス基板(カバーガラス)上に堆積されたパリレンを、酸素プラズマアッシングでパターニングして作製されている。
【0034】
図4は本発明の平面脂質二重膜を形成するための上部チャンバーとその開口を示す図であり、図4(a)は平面脂質二重膜を形成するための上部チャンバーを、図4(b)はその上部チャンバーの底に形成された開口を示す図である。
【0035】
本実施例では、マイクロチャンバーの直径は数十μm、深さは数μmである。そして、PMMAプラスチックよりなる上部チャンバーの底部に形成された150μmの開口に、平面脂質二重膜が形成される。上部チャンバーはバッファ液〔この実験においては、10mM MOPS(硫酸モルフォリノプロパン)+100mM KCl〕で満たされている。さらに、PC(フォスファチジルコリン:中性リン脂質)を含む数μLの溶媒〔5mg PC/1mL n−デカン(decane:C10H22 飽和脂肪族炭化水素の一つ);以下、脂質溶液という〕が開口上に添加される。ここで、上部チャンバー内のバッファ液レベルを調整することで平面脂質二重膜が自然に形成される。なお、上部チャンバーの開口が上部チャンバーの底面よりも低く作られることによって、基板への押し付けが容易になる(図1及び図4参照)。
【0036】
図5は本発明の上部チャンバーの開口に形成された平面脂質二重膜と、それをマイクロチャンバーに押し付けた状態を示す図であり、図5(a)は上部チャンバーの開口に形成された脂質二重膜を、図5(b)はその脂質二重膜をマイクロチャンバーに押し付けた状態を示す図である。脂質二重膜をガラスやパリレンなどの基板上に直接押し付けると割れてしまうため、本実施例では、親水性のリン脂質ポリマー(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンポリマー、またはMPCポリマー)でチャンバー基板をコーティングしている。このようなポリマー材料で基板を覆うと、脂質二重膜が基板に直接接触せず、押付け後も脂質二重膜の分子構造がこわれない。アガロースやPEG(ポリエチレングリコール)、デキストランなどの分子でも同様の効果が報告されている。
【0037】
図5(a)に示すように平面脂質二重膜は、上部チャンバーの開口に形成される。その平面脂質二重膜の外側の領域はいわゆる環(annulus)状になっていて、ここには大量の脂質溶液が存在して平面脂質二重膜を支持している。図5(b)に示すように、上部チャンバーの位置を低くすることによって平面脂質二重膜がマイクロチャンバーアレイに押し付けられる。
【0038】
図6は本発明の共焦点顕微鏡によって観察されたマイクロチャンバー内に捕捉された蛍光ビーズとその単一ビーズの軌跡を示す図である。
【0039】
図6(a)は共焦点顕微鏡によって観察されたマイクロチャンバー内に捕捉された200nmの蛍光ビーズを、図6(b)はマイクロチャンバー内の単一ビーズの軌跡を示す図である。チャンバー上面は脂質二重膜により蓋がされているため、ブラウン運動によってもチャンバーから出て行かない。
【0040】
本発明は、究極には単一分子レベルでの分子の輸送を検出するものである。この単一蛍光分子のイメージングのためには、TIRFM(全反射蛍光顕微鏡)システムが用いられる場合が多い。このシステムでは、ガラス基板の底部から数百nmを照明するために、バックグラウンド放射が除去されて、優れたS/N比が得られる。マイクロチャンバーは、生物学的観察のために用いられている通常のガラスのカバースリップ上に作製されるので、エバネッセント場(全反射面上での励起光場)はマイクロチャンバーの底部のみに形成される。
【0041】
図7はTIRFMで観察されたCy3の単一蛍光分子を示す図であり、100nsecの間隔で撮られた200フレームの画像が重ね合わされている。
【0042】
この図は、10nMのCy3蛍光染料溶液が本発明のマイクロチャンバー上に置かれたときのTIRFM画像(200フレームの画像が重ね合わされている)であり、各蛍光分子からの発光は、各蛍光分子がマイクロチャンバーの底面に達して光退色するにつれ、マイクロチャンバー内で明滅するドットのように見える。
【0043】
図8は本発明に係る、20mVの電圧固定状態においてナノ細孔タンパク質(α−ヘモリジン)の再構成によって脂質二重膜を横切る膜透過電流を示す図であり、縦軸は電流(pA)、横軸は時間(秒)を示している。
【0044】
図9は本発明に係るナノ細孔(α−ヘモリジン)を通じて輸送されたローダミンBの蓄積による蛍光強度の増加を示す図である。
【0045】
ここでは、トランスポータータンパク質のモデルとして、生体膜にナノ細孔(直径1.5nm)を形成する抗生物質として知られているα−ヘモリジンを、その溶液を上部チャンバー内に加えることによって、脂質二重膜内に組み込んだ。図8より、ナノ細孔が脂質二重膜中に再構成されると、ステップ状に膜電流が増加することが分かる。これは、各ナノ細孔が等しいコンダクタンスを有するためである。図8から、単一のα−ヘモリジンのコンダクタンスは、20mVの電圧固定状態で0.5nSと算出される。したがって、このシステムでは、ナノ細孔の数は全体の電流から計算される。さらに、単位面積におけるナノ細孔の数密度も、図5のように顕微鏡下で二重膜の領域を監視できるので、同様に計算することができる。
【0046】
ナノ細孔の再構成(約10個のナノ細孔/100μm2 )の後で、ローダミン溶液(最終濃度で10μM)が上部チャンバーに付加される。ローダミン溶液はナノ細孔を通じて輸送されるので、図9に見られるように、マイクロチャンバー内の密度の増加は,蛍光発光強度の増加として観察される。
【0047】
最後に、本発明の輸送基質の蛍光検出システムにおいて、検出可能な濃度範囲を検証した。本実施例でマイクロチャンバーを形成する材料として使用したパリレン樹脂は、光学的に透明な有機材料である。従って、本来ならばマイクロチャンバーの内部の蛍光のみを検出したいが、チャンバー外側の部分にも励起光・蛍光ともに透過してしまうため、S/N比が低下するという問題があった。また、検出法としてTIRFMを使用する場合、励起光がある入射角を伴って照射されるが、このとき、チャンバーの側面から励起光が漏れ出してしまう(図9写真)、また、チャンバーの上面でもエバネッセント場が発生してしまい、こちらもS/N比が低下するという問題があった。この問題はチャンバーの材料を不透明な物質(例えば金属やシリコンなど)で形成すれば、チャンバー内部のみの蛍光を検出することができ、またこれも本発明の範囲から除外されない。しかし、本実施例では、平面膜押付け時に、平面膜の状態を観察しながら行ったほうが再現性がよく、不透明な材料を用いると、透過光での観察ができなくなってしまう。
【0048】
これらの問題を解決するため、図10に示すように、ガラス基板とパリレン樹脂マイクロチャンバーの間に、十分に薄い(10nm以下)アルミニウム薄膜を蒸着した。このアルミニウム薄膜は、透過光を10−20%程度減光する。
【0049】
図11に、共焦点顕微鏡観察における、チャンバー内側および外側の蛍光輝度を示す。この実験は検出システムの校正が目的であり、脂質二重膜及び膜タンパク質は用いておらず、マイクロチャンバー上に規定濃度の蛍光色素を含む溶液を滴下し、観察を行った。
【0050】
ここでは、微小領域4Aを除くガラス基板(カバーガラス)1の上面には、アルミニウム薄膜21が形成されるようにしている点を除くと、図2と同様の装置である。
【0051】
アルミニウム薄膜21がない場合は、チャンバーの内側及び外側の蛍光輝度の比が1.2程度に対し、アルミニウム薄膜21を蒸着したチャンバーでは1.5程度に上昇し、S/N比が改善された。また、検出に60倍の対物レンズ(オリンパス)および冷却CCDカメラ(浜松フォトニクス、ORCA−ER)を用いた場合、およそ100nM−10μMの濃度範囲で検出可能であることを確認した。
【0052】
図12に、全反射顕微鏡観察おける、チャンバー内側および外側の蛍光輝度を示す。図12(a)は、アルミニウム薄膜21なしの場合である。このとき、チャンバー側壁からの励起光の染み出しや、チャンバー上面でのエバネッセント場の発生が障害となるため、色素の濃度と蛍光輝度が比例関係からのばらつきが大きくなってしまう。それに対し、アルミニウム薄膜21を蒸着した場合(図12b)は、これらの障害が抑えられるため、ばらつきが小さく、よい再現性が得られる。全反射顕微鏡を検出手段とした場合は、10nM−1μMの範囲で計測が行えることを確認した。
【0053】
上記したように、本発明によれば、
(1)人工脂質二重膜を通過した基質が微小領域内に蓄積されるために急速に濃度が上昇し、超高感度で検出が可能である。
(2)人工脂質二重膜を使用しているため、機能解析を行う膜タンパク質のみの純粋な効果を計測できる。また、タンパク質濃度を調整することにより一分子レベルでの機能を計測できる。
(3)人工脂質二重膜をマイクロチャンバーアレイに押付けて微小領域を形成するが、その際マイクロチャンバー表面を親水性ポリマー(PEG,MPCポリマーなど)でコーティングすることにより、脂質二重膜が壊れることを防止できる。
(4)マイクロチャンバーアレイをカバーガラス上に形成しているため、共焦点顕微鏡など高感度・高S/N比のイメージング手法を使用できる。
(5)マイクロチャンバーアレイは微細加工技術により形成することにより形状・体積が均一にそろっているため、再現性の良いデータが取得できる。
(6)イメージングと電気生理的手法を同時に利用できるため、膜輸送とそれに伴うイオンやプロトンの移動も同時計測が可能である。
【0054】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
トランスポーターなどの膜輸送タンパク質は、細胞膜における免疫反応や薬剤応答などに深くかかわっているため、医学的・薬学的にも非常に重要性が高い。例えば、薬剤排出ABCトランスポーターと呼ばれる膜タンパク質群は、抗がん剤を細胞外に排出してしまうため、これらを不活性化させるインヒビターなどの研究が必要不可欠である。本発明は、これらのタンパク質の機能・性質を詳細に解明するためのツールになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施例を示す膜輸送分子の機能測定装置の断面模式図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】本発明の実施例を示すガラス基板(カバーガラス)上に作製されたパリレン樹脂からなるマイクロチャンバーを示す図である。
【図4】本発明の平面脂質二重膜形成のための上部チャンバーとその開口を示す図である。
【図5】本発明の上部チャンバーの開口に形成された平面脂質二重膜と、それをマイクロチャンバーに押し付けた状態を示す図である。
【図6】本発明の共焦点顕微鏡によって観察されたマイクロチャンバー内に捕捉された蛍光ビーズとその単一ビーズの軌跡を示す図である。
【図7】本発明のTIRFMで観察されたCy3の単一蛍光分子を示す図である。
【図8】本発明に係る、20mVの電圧固定状態においてナノ細孔(α−ヘモリジン)の再構成によって脂質二重膜を横切る膜透過電流を示す図である。
【図9】本発明に係る、ナノ細孔(α−ヘモリジン)を通じて輸送されるローダミンBの蓄積による蛍光強度の増加を示す図である。
【図10】本発明の実施例を示すS/N比が改善されたマイクロチャンバーを示す図である。
【図11】本発明の実施例を示す共焦点顕微鏡観察における、チャンバー内側および外側の蛍光輝度を示す図である。
【図12】本発明の実施例を示す全反射顕微鏡観察おける、チャンバー内側および外側の蛍光輝度を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ガラス基板(カバーガラス)
2 マイクロチャンバー
2A 小孔
3A,3B 基質溶液(バッファ液)
4 漏斗型の上部チャンバー
5 開口
6 人工二分子膜(人工脂質二重膜)
7 上部チャンバー内にセットされる電極
8 上部チャンバーの外部のバッファ液にセットされるアース電極
9 トランスポーター
10 バッファ液内に含まれる蛍光物質
11 増幅器
12 オシロスコープ
13 対物レンズ
14 レーザー
21 アルミニウム薄膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上に形成したマイクロチャンバーに人工二分子膜を押付け、上面が前記人工二分子膜で閉じられた微小領域を形成し、前記人工二分子膜に膜輸送分子を再構成し、前記人工二分子膜の上側に基質の溶液を加えて、前記膜輸送分子によって前記人工二分子膜を通過させ、輸送させた前記基質を前記微小領域内に蓄積させ、該蓄積された基質の濃度を検出することを特徴とする人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法。
【請求項2】
請求項1記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法において、前記基質に蛍光物質を付加し、基質の濃度を蛍光物質の蛍光イメージングにより検出することを特徴とする人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法。
【請求項3】
請求項2記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法において、前記ガラス基板の下方から、前記マイクロチャンバー内に蓄積され、基質の濃度を共焦点顕微鏡により高感度・高S/N比で検出することを特徴とする人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法。
【請求項4】
請求項2記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法において、前記ガラス基板の下方から該ガラス基板で全反射するようにレーザーを照射して、前記マイクロチャンバーの底部にエバネッセント場を生成させて基質の濃度を高感度・高S/N比で検出することを特徴とする人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法。
【請求項5】
請求項1記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法において、前記微小領域が体積fL(フェムトリットル)〜pL(ピコリットル)であることを特徴とする人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法。
【請求項6】
請求項1記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法において、前記膜輸送分子は膜タンパク質であることを特徴とする人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法。
【請求項7】
(a)ガラス基板上に形成されたマイクロチャンバーと、
(b)該マイクロチャンバーに押付けられる人工二分子膜と、
(c)上面が前記人工二分子膜で閉じられた微小領域と、
(d)前記人工二分子膜に再構成される膜輸送分子と、
(e)前記人工二分子膜の上側に加えられる基質の溶液と、
(f)前記膜輸送分子によって前記人工二分子膜を通過させ、輸送させた前記基質を前記微小領域内に蓄積させ、該蓄積された基質の濃度を検出する手段とを具備することを特徴とする人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置。
【請求項8】
請求項7記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置において、前記基質に蛍光材料を付加し、基質の濃度を蛍光物質の蛍光イメージングにより検出する手段とを具備することを特徴とする人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置。
【請求項9】
請求項7記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置において、前記ガラス基板の下方に配置される、前記マイクロチャンバー内に蓄積され、基質の濃度を共焦点顕微鏡により検出する手段とを具備することを特徴とする人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置。
【請求項10】
請求項7記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置において、前記ガラス基板の下方から傾斜させてレーザーを照射する手段と、前記マイクロチャンバーの底部にエバネッセント場を生成させて基質の濃度を検出する手段とを具備することを特徴とする人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置。
【請求項11】
請求項7〜10の何れか一項記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置において、前記微小領域が体積fL(フェムトリットル)〜pL(ピコリットル)であることを特徴とする人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置。
【請求項12】
請求項7記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置において、前記膜輸送分子は膜タンパク質であることを特徴とする人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置。
【請求項1】
ガラス基板上に形成したマイクロチャンバーに人工二分子膜を押付け、上面が前記人工二分子膜で閉じられた微小領域を形成し、前記人工二分子膜に膜輸送分子を再構成し、前記人工二分子膜の上側に基質の溶液を加えて、前記膜輸送分子によって前記人工二分子膜を通過させ、輸送させた前記基質を前記微小領域内に蓄積させ、該蓄積された基質の濃度を検出することを特徴とする人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法。
【請求項2】
請求項1記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法において、前記基質に蛍光物質を付加し、基質の濃度を蛍光物質の蛍光イメージングにより検出することを特徴とする人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法。
【請求項3】
請求項2記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法において、前記ガラス基板の下方から、前記マイクロチャンバー内に蓄積され、基質の濃度を共焦点顕微鏡により高感度・高S/N比で検出することを特徴とする人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法。
【請求項4】
請求項2記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法において、前記ガラス基板の下方から該ガラス基板で全反射するようにレーザーを照射して、前記マイクロチャンバーの底部にエバネッセント場を生成させて基質の濃度を高感度・高S/N比で検出することを特徴とする人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法。
【請求項5】
請求項1記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法において、前記微小領域が体積fL(フェムトリットル)〜pL(ピコリットル)であることを特徴とする人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法。
【請求項6】
請求項1記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法において、前記膜輸送分子は膜タンパク質であることを特徴とする人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定方法。
【請求項7】
(a)ガラス基板上に形成されたマイクロチャンバーと、
(b)該マイクロチャンバーに押付けられる人工二分子膜と、
(c)上面が前記人工二分子膜で閉じられた微小領域と、
(d)前記人工二分子膜に再構成される膜輸送分子と、
(e)前記人工二分子膜の上側に加えられる基質の溶液と、
(f)前記膜輸送分子によって前記人工二分子膜を通過させ、輸送させた前記基質を前記微小領域内に蓄積させ、該蓄積された基質の濃度を検出する手段とを具備することを特徴とする人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置。
【請求項8】
請求項7記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置において、前記基質に蛍光材料を付加し、基質の濃度を蛍光物質の蛍光イメージングにより検出する手段とを具備することを特徴とする人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置。
【請求項9】
請求項7記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置において、前記ガラス基板の下方に配置される、前記マイクロチャンバー内に蓄積され、基質の濃度を共焦点顕微鏡により検出する手段とを具備することを特徴とする人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置。
【請求項10】
請求項7記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置において、前記ガラス基板の下方から傾斜させてレーザーを照射する手段と、前記マイクロチャンバーの底部にエバネッセント場を生成させて基質の濃度を検出する手段とを具備することを特徴とする人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置。
【請求項11】
請求項7〜10の何れか一項記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置において、前記微小領域が体積fL(フェムトリットル)〜pL(ピコリットル)であることを特徴とする人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置。
【請求項12】
請求項7記載の人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置において、前記膜輸送分子は膜タンパク質であることを特徴とする人工二分子膜を用いた膜輸送分子の膜輸送機能測定装置。
【図1】
【図2】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図2】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【公開番号】特開2007−187560(P2007−187560A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5922(P2006−5922)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(801000049)財団法人生産技術研究奨励会 (72)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(801000049)財団法人生産技術研究奨励会 (72)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]