説明

人工大動脈心臓弁

人工大動脈弁は、患者の自然大動脈弁輪においてあるいはその近くに存在するよう設計された環状の輪状流入部、及び、バルサルバ洞の少なくとも一部から下流における患者の大動脈に存在するよう設計された環状の大動脈流出部を有する。輪状流入部及び大動脈流出部は、患者の自然大動脈弁の交連の近くにおける領域に限定される複数の接続ストラットによって互いに対して接続される。接続ストラットは、人工大動脈弁を適所において固定する支援をするようバルサルバ洞へと突出するように設計される。弁は、患者へのより侵襲性の少ない送出に対して比較的小さい直径まで周方向に折畳み可能である。弁は、インプラント箇所において展開されるときにより大きな動作直径まで周方向に拡張する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年8月24日出願、米国仮特許出願第60/966,113号の便益を主張し、該出願は、本願において全体的に参照されることにより組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
2008年6月4日出願、PCT特許出願番号第PCT/US08/07015(特許文献1)は、患者への送出に対して環状に折畳み可能であり且つ患者におけるインプラント箇所で再度拡張可能である人工心臓弁を示す。(該特許文献は、以下において上述された参考文献として参照され、全体的に参照することによって本願に組み込まれる。)上述された参考文献において図示及び説明される人工心臓弁は、典型的に、(例えばニチノール等である高弾性金属の)環状支持構造又はステントフレームを有する。このステントフレーム又はステントは、典型的に、輪状流入部及び大動脈流出部を有し、該大動脈流出部は、輪状流入部と概ね同軸であり、輪状流入部から(インプラントされた弁を通る血流の観点から)下流に離間される。輪状流入部及び大動脈流出部は、望ましくは、実質的に接続ストラットによってのみ互いに対して接続され、該接続ストラットは、弁の交連領域(commissure regions)(交連先端を備える交連ポストとしても既知である)に対して隣接する大動脈流出部と輪状流入部との間において延在する。輪状流入部と大動脈流出部との間におけるかかる接続ストラットを交連先端領域に近接するよう限定することによって、環状に隣接する交連先端間における周方向空間は、比較的開放されたままであり、(大動脈弁を使用する場合に)人工器官が冠状動脈口を閉塞することを避ける支援をする。
【0003】
この一般的な種類の弁は、執刀医が例えばインプラントされる弁を適所において縫合するよう直接的な開放アクセスを有し得ないインプラント箇所での患者への送出を意図される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】PCT特許出願番号第PCT/US08/07015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがってインプラント箇所における弁の優れた自己固定は、重要であり、上述された参考文献において示される実施例に関連してなされ得る自己固定向上が行なわれ得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従った人工大動脈弁は、典型的に、環状のステントフレーム、及びステントの一部によって支持される複数の弁リーフレット(valve leaflets)を有する。ステントは典型的に、患者の自然(生得)大動脈弁輪(aortic valve annulus)に隣接して配置されるよう構成される輪状流入部(annulus inflow portion)を有する。リーフレットは、典型的に輪状流入部によって支持される。典型的にはステントは、大動脈流出部(aortic outflow portion)を更に有し、該大動脈流出部は、患者の自然バルサルバ洞(バルサルバの洞と称されることもある)の少なくとも一部から下流における患者の自然大動脈において配置されるよう構成される。典型的にはステントは、複数の接続ストラットを有し、該接続ストラットは、輪状流入部と大動脈流出部との間における実質的に単独の接続を構成する。輪状流入部は、典型的に、輪状流入部の周囲において環状方向に互いから離間される複数の交連先端を画定する。交連先端は、大動脈流出部に対して最も近接する輪状流入部の特徴である。上述された接続ストラットの各々は、交連先端より大動脈流出部から更に離れた点においてのみ輪状流入部に対して接続される。加えて、接続ストラットの各々は、交連先端の関連付けられる1つに対して隣接し、ストラットのうち少なくとも1つは、患者の自然大動脈弁交連先端の各々の各側に隣接した配置に対して位置付けられる。接続ストラットの各々は、弁が患者において使用されるときにバルサルバ洞と同様に(またバルサルバ洞へと)半径方向外方に突出するよう構成される。
【0007】
本発明の更なる特徴、特性及び多種の利点は、添付の図面及び以下の詳細な説明からより明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の可能な作動状態における本発明に従った人工心臓弁の複数の構成要素の説明的実施例の単純化された斜視図又は等角図である。
【図2】他の可能な作動状態における図1に示される構造の単純化された斜視図又は等角図である。
【図3】本発明のインプラントされた弁の複数の構成要素が自然組織構造において可視である患者の自然組織の単純化された断面図である。
【図4】本発明に従った他の説明的実施例に関する図2に類似した図である。
【図5】本発明に従った更に他の説明的実施例に関する図2に類似した図である。
【図6】本発明に従った更に他の説明的実施例に関する図2に類似した図である。
【図7a】本発明の更に他の説明的実施例に関する図2の一部に類似した図であり、非常に単純化された開放された弁リーフレットを図示する。
【図7b】本発明の更に他の説明的実施例に関する図2の一部に類似した図であり、追加された他の可能な構成要素を図示する。
【図8】本発明に従った更に他の説明的実施例に関する図2に類似した図である。
【図9】装置の他の作動状態における図8中の実施例の一部を図示する。
【図10】本発明に従った更に他の説明的実施例の一部の単純化された立面図であり、図10において垂直である軸に沿って切断されてから図10が描かれている平面において平らにレイアウトされた後の図示された構成要素を示す。
【図11】図10中に示されたものの代表部分の拡大図である。
【図12】他の動作状態における図11の構造を図示する。
【図13】本発明に従った他の説明的実施例に関する図10に類似する図である。
【図14】本発明に従った人工心臓弁の説明的な一実施例の流入部を見下ろす単純化された図である。
【図15】本発明に従った人工心臓弁の他の説明的実施例の流入部を見下ろす単純化された図である。
【図16】本発明に従った他の説明的実施例に関する図13に類似する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上述された参考文献において図示及び説明される人工心臓弁において用い得られる原理の多くは、本発明に従った弁において用いられ得る。したがって、より完全な情報が上述された参考文献から既に入手可能であるため、本願における複数の特徴に関する説明は多少省略され得る。比較を容易にするよう、上述された参考文献における構成要素に少なくとも概ね類似する構成要素に対して本願において使用される参照符号は、しばしば(必ずしもそうとは限らない)上述された参考文献における概ね類似する構成要素に対して使用される参照符号に対する1000の整数倍数によって関連される。故に、例えば、本願における構成要素5010は、上述された参考文献において構成要素10,1010,2010,3010,4010,5010等のいずれかに概ね類似する。
【0010】
図1は、比較的小さな直径の送出装置(delivery apparatus)を介する患者への送出に対して環状にあるいは円周方向に折り畳まれた状態にある本発明に従った一例の人工心臓弁の複数の構成要素を示す。(図1は、以下の段落においてより詳細に説明される通り単純化されている。)かかる小さな直径の送出は、全開胸/開心手術を避けるよう使用され得る。図2は、(例えば高弾性自己拡張の使用を介する)環状又は円周方向再拡張の後の(図1に示されるものとは多少異なるが)図1に示される弁と概ね同様である弁を示す。故に図2は、展開された状態(即ち患者にインプラントされたときの状態)の弁を示す。
【0011】
本願における図示及び説明される多くの実施例の全ては、図1によって全体的に示されるような送出状態まで環状にあるいは周方向に折畳み可能であり、続いて図2によって全体的に示されるようなインプラント又は展開状態まで環状にあるいは周方向に再拡張可能である。
【0012】
図1及び2に示される弁は、自然弁の機能障害を緩和するために患者の自然大動脈弁内においてインプラントするよう意図される。図1及び2は、完全な弁の全ての特徴又は構成要素を必ずしも示しているわけではない。例えば、弁の特定の部分の外側の周囲において使用され得る複数の材料の層(ファブリック及び/又は組織等)は、弁の他の構成要素の可能な構成上の特徴をより明らかにするよう図1及び2において示されていない。特には、図1及び2はまず、図示される弁の折畳み可能/拡張可能な金属のステントフレーム5010、及び該弁の可撓性のリーフレット5500を示す。(ここでもファブリック材料(図示せず)は、ステントの流入部分においてステントフレーム5010の外側又は内側において使用され得る。)リーフレット5500に対する適切な材料の例は、生物組織、ポリマ、薄い金属、強化ポリマ等を有する。本願で使用される「生物組織」という用語は、実際に取られた豚弁、牛心膜等であるものを含む。
【0013】
上述された参考文献における通り、ステント5010は、大動脈流出部5100及び輪状流入部5200を有する。部分5100及び5200は、実質的に少なくとも1つの接続ストラット5284によってのみ互いに対して接続される。かかる構造の全て(5100,5200及び5284)は、環状にあるいは円周方向に折畳み可能であり(図1)、また拡張可能である(図2)。これは、リーフレット5500を含む。弁が患者の自然大動脈弁において適所におかれるとき、人工弁は、図2に示される通り再拡張される。故に弁が患者におけるインプラント箇所で再拡張されるとき、輪状流入部5200は典型的に、患者の自然大動脈弁輪に隣接し、大動脈流出部5100は、バルサルバ洞から下流(又はバルサルバ洞の少なくとも一部から下流)における大動脈にあり、接続ストラット5284は、バルサルバ洞(又はバルサルバ洞の少なくとも一部)を通過する。加えて、夫々の接続ストラット5284は、望ましくは患者の自然弁交連の各々の各側の近くあるいは該各側上を通る。かかる最後の点は、本願においてより詳細に後述される。故に部分5100は弁がインプラントされるときに患者の大動脈において存在するため、部分5100は、本願において全体的に大動脈流出部として称される。
【0014】
輪状流入部5200は、弁の周囲において互いから同等に離間される3つの交連ポスト又は先端領域5236を有する。図2の実施例においては、例えば、交連先端5236の各々は、図2に示される通り先端から下方に延在するV字型交連ポスト構造の自由頂点にある。かかるV字型交連ポスト構造の各々は、輪状流入部5200の残りの構造において少なくとも関連付けられる一組の環状に離間された点からカンチレバーされる(片持ちされる、cantilevered)。交連ポストをこのようにしてカンチレバーすることは、交連ポストに所望される可撓性を与えることを促進し、該可撓性には各交連ポストの先端又は自由端の位置における弁の半径方向での可撓性が含まれる。
【0015】
交連先端5236の各々に隣接して、関連付けられた一組の接続ストラット5284a及び5284bがある。かかるストラットの一方5284aは、弁の周囲において円周方向に関連付けられた交連先端5236の一側上にあり、他方のストラット5284bは、弁の周囲において円周方向に関連付けられた交連先端の他側上にある。かかるストラット5284の各々は、関連付けられた交連先端5236の十分下方にある点において輪状流入部5200に対して接続される。上述された参考文献にある通り、このことは、各先端5236の下方における交連ポスト構造が比較的ストラット5284とは無関係に所望の通り可撓性である、ことを可能にする。また、互いに比較的無関係であり得る半径方向(即ち、全体的に弁の内方向及び外方向)における形状を交連ポスト構造5236及びストラット5284に与えることは、容易にされる。例えば、交連ポスト構造5236は、輪状流入部5200の基部から比較的真っ直ぐ上方に向かい得、ストラット5284は、交連ポスト構造がある形状的に円筒形の表面から半径方向外側に突出し得る。(弁における接続ストラット5284の集まり(entire population)は、参照符号5280によって集合的に称され得ることがある。)
各交連先端5236に対して隣接する接続ストラット5284a及び5284bは、大動脈流出部5100まで延在する際に交連先端及び互いに対して比較的近接したままであり得る。故に、例えば拡張された弁の周囲における環状(円周)方向において(例えば図2の通り)、並びに交連先端5236の(弁に沿った軸方向においての)レベルにおいて、各交連先端5236に関連付けられるストラット5284a及び5284bは、他の交連先端に関連付けられる円周方向に最も近いストラット5284に対してよりも互いに対して更に近い傾向がある。これにより、弁に交連先端のうち環状に隣接するものに関連付けられるストラット5284間における比較的大きな開口5140が与えられ得る。これは、弁が患者の冠状動脈口を閉塞することを避ける支援をするよう所望され得る。かかる閉塞は、自然大動脈弁交連の特定の部分の軸方向の突出の間の略中間におけるバルサルバ洞において位置決めされる(本明細書においてより詳細に後述される図3を参照のこと)。
【0016】
上述された態様を数値化する(quantify)よう、図2に示される円周方向に拡張された弁における交連先端5236のレベルにおいて、2つの環状に(あるいは円周方向に)隣接する交連に関連付けられるストラット5284間における開口5140の幅W1は、所定の交連に関連付けられたストラット間の幅W2より望ましくは大きい。より望ましくは、W2は、W1の約1/2より小さい。
【0017】
図3は、典型的な自然バルサルバ洞20の近似断面形状を示す。自然大動脈弁の交連の軸方向の突出は、参照符号22で示される。環状大動脈口の位置は、参照符号24で示される。交連突出22の環状に隣接する各組の間において、バルサルバ洞20は、外方向に突出するローブを備える。各人工弁交連に関連付けられる2つの接続ストラット5284a及び5284bは、突出22と位置合せされる人工弁交連5236に関連付けられる交連突出22の夫々対向する側部上においてバルサルバ洞を軸方向に通過する。かかるストラット5284a及び5284bはまた、隣接するバルサルバ洞組織の突出に追随するよう半径方向外側に突出する(再度図2参照のこと)。このことから、ストラット5284a及び5284bの形状及び位置が患者の所望される軸方向及び角度位置において人工弁を固定する支援をし得る、ことが理解される。各交連突出22の各側に対して隣接する一組のストラット5284a及び5284bの存在は、人工弁が弁の長手方向軸の周囲で患者において回転することを防ぐ支援をし得る。加えて、バルサルバ洞ローブの外方向突出へのストラット5284の外方向突出は、人工弁が弁の長手方向軸に沿ったいずれかの方向において動くことを防ぐ支援をし得る。このようなバルサルバ洞20を通過する接続ストラット5284の固定の態様は、人工弁が有し得る(例えば上述された参考文献において図示及び説明されるような)他の固定の態様に追加され得る。
【0018】
患者において展開されるとき、本願において図示及び説明される多種の人工弁の実施例の全ては、図2に示されるような間隔(W1及びW2)を有し、並びに図3に示されるような自然弁交連突出22に対してストラットを位置付けする、図2に示されるような外方向に突出する接続ストラット5284を備える。
【0019】
図4は、ステントフレーム5010の他の実施例を示す(図4中は参照符号5010aで示される)。ステント5010aとステント5010との間には複数の差異があるが、両方(即ち図4中の実施例並びに図1及び2中の前述の実施例)の実施例の概ね同様の部分に対して同一の参照符号が概ね使用される。図1及び2中の実施例において、大動脈流出部5100及び輪状流入部5200はいずれも、ステント5010の全周にわたって環状に継続的である一方、図4中の実施例においてステント5010aは、全体的に環状に継続的であるが、部分5100及び5200の各々は、環状(円周)方向において複数の離断を有する。特に、部分5100は、2つの環状に隣接する接続ストラット5284間において延在する場合、部分5200は該2つのストラット間において延在せず、部分5200が2つの環状に隣接するストラット5284間において延在する場合、部分5100は該2つのストラット間において延在しない。他の事項において、図4に示される人工心臓弁は、図1及び2に示されるものに類似し得、図3に示されるものと同様に患者にインプラントされ得る。
【0020】
図4に示されるものと同様の一実施例は、特定の患者においてよりよく適合し得る。例えばそれは、不規則生の自然大動脈弁輪(例えば、先天的欠陥又は石灰化された自然リーフレット材料の存在によって不規則にされる輪)においてよりよく適合し得る。この実施例の目的は、遠位部分(大動脈流出部5100等)のサイジング(sizing)において柔軟性を与える。流入側の意図(intention of the inflow side)は、自然形状に合致しないが、人工弁が最適に機能し得るよう形状を作り直すよう(remodel)合致する。硬質石灰化(hard calcification)の存在は、最終的な展開形状に影響を与え得る。この設計は、作り直しと合致との間のある程度の平衡を可能にする。
【0021】
図5は、ステントフレーム5010(図5中5010bで参照される)の他の実施例を示す。ここでも、前述された同一の参照符号は、図5中の概ね類似する要素に対して再度使用される。図5において、大動脈流出部5100は、環状に継続的である(図1及び2の通り)が、輪状流入部5200は、図4において輪状流入部が離断されているのと同様に環状に離断される。他の事項において図5の実施例は、前述された実施例に類似し得、図3において部分的に示される通り患者においてインプラントされ得る。図4中の実施例と同様に、図5中の実施例は、不規則生自然大動脈弁輪を有する患者等である特定の患者においてよりよく適合され得る。
【0022】
本願において図示及び説明されるいずれの実施例においても、ステントフレームは、アイレット、開口、又はリーフレットの取付けを容易にする他の特徴及びステントに対する他の材料を与えられ得る。例は、本願において図示及び後述される。
【0023】
図6は、ステントフレーム5010の更に他の実施例を示す(図6中参照符号5010cで示される)。ここでも、前述において使用された同一の参照符号は、図6において概ね類似する要素に対して再度使用される。ステント5010cは、ステント5010と基本的に同一であり、輪状流入部520から外方向に傾斜するよう弾性的に付勢される複数のアンカー部材5201を追加的に有する。環状に圧縮又は折畳みされた状態での患者への弁の送出中、アンカー部材5201は、弁の長手方向軸に対して実質的に平行に偏向され得る。弁が患者における展開に対してかかる環状圧縮から解放されるとき(例えば弁を環状に圧縮し続ける送出チューブの遠位端部から弁を押し出すことによって)、アンカー部材5201は、図6に示される通りとび出す。この状態においてアンカー部材5201は、患者の隣接する自然組織を係合(例えば貫通)し、それによって弁を患者における適所に保持する支援をする。(再度図3は、図6中の実施例の展開状態に対して適用される。)
参照符号5201のようなアンカーは、本願に示される実施例のいずれかのステントフレーム5010等において多くの異なる位置のいずれかで使用され得る、ことが理解される。参照符号5201等のアンカーに対する他の可能な場所の単なる一例として、かかるアンカーは、本願に示されるステントフレームのいずれかの上方(流出)エッジにおいて代替的又は追加的に位置決めされ得る。
【0024】
図7a及び7bは、(例えばファブリックの)流入端部カフ5203が有される説明的実施例を示す。流入カフ5203の追加を除けば、図7a及び7bに示される実施例は、本願に示される他の実施例のいずれかに類似し得る。(図7a及び7bは、開放状態におけるリーフレット構造5500の大幅に単純化された図を有する。)流入カフ5203は、望ましくは、流入エッジに隣接する弁の全周囲において環状に延在する。(本願においては常として、「流入(inflow)」は、インプラントされて患者において使用されている弁を通る血流の方向をさす。)カフファブリック材料は、外側(図7a)、内側(例えば図7bに示される通りステントフレーム5010dとリーフレット5500との間)に対して、あるいは他の実施例においてはステントフレームの直下において、取り付けられ得る。内側及び外側は、リーフレット材料は、組立て及び一体化中にカフファブリック材料の存在を利用するためステント5010d上へのリーフレット材料5500のより優れた一体化を可能にするので、望ましいとされる。このことは、より耐久性のある設計を与える。弁が拡張状態にあるとき、カフファブリック材料は、ステントフレーム5010dの内側又は外側上に平らに置かれるべきである。ファブリック5203の存在は、弁がインプラントされた後に組織の内成長の促進を支援する。このことは、弁周囲の漏れ(perivalvular leakage)に備えて弁を密封する支援をする。(再度図3は、図7a及び7b中の実施例の展開状態に対して適用される。)
図8及び9は、ステントフレーム5010eが参照符号5237で示される多少更にポスト状である交連領域を有する、という他の説明的な実施例を示す。(図8は、環状に拡張された展開状態における装置を示す。図9は、環状に折り畳まれた送出状態における該装置の一部を示す。)各人工弁交連領域をより単一の直立ポスト状にすることは、かかる各交連領域の独立した可撓性(即ち、支持構造5010eの他の部分とは無関係に屈曲する能力)を高め得る。図8及び9中のこの態様の説明を多少詳述すると、この種類の実施例において弁の各交連先端5236は、輪状流入部5200の残りの構造における夫々単一の点からカンチレバーされる夫々単一の構造部材5237の自由端にある。
【0025】
図8及び9はまた、ステントフレームに対する他の構成要素(リーフレット5500等)の取付けを容易にするよう開口5239を与えられ得る。参照符号5239のような開口の他の可能な用途は、本発明に従った人工弁を弁に対する送出システム装置に対して解放可能に固定する支援をすることである。例えば、ワイヤ又は縫合材料は、送出装置から並びに/あるいは送出装置まで参照符号5239のような開口を通過して、弁が患者へと展開される準備ができるまで送出装置において弁を解放可能に保持する支援をし得るようにする。再度図3は、図8及び9中の実施例の展開に対して適用される。
【0026】
図10は、(単にここでの図示を目的として)長手方向軸に沿って切断されて平らにされたステントフレーム5010fの一例を示す。図10中の実施例において、(図10中の下部に向かって)ステントフレームの流入エッジは、波形にされる(scalloped)かあるいは凹状にされるため、各交連領域5236の付近においては比較的「高く」、各環状に隣接する一組の交連領域間において比較的「低い」。高い範囲は参照符号Hで示され、低い範囲は参照符号Lで示される。ステントフレーム5010fの流入エッジを大動脈弁交連に隣接して比較的高くすることは、患者の自然僧帽弁上にぶつかる可能性を回避する支援をし、他の利点も有し得る。
【0027】
図10はまた、他の可能な変形を示す。例えば、図10は、上述されたような開口5239の他の可能な配置を示す。図10は、範囲5100及び5200において使用され得る周方向に折畳み可能/拡張可能なリング構造の他の配置を示す。この例において、かかるリング構造は、4つの側部を有する中央が開放されたセルを有し(例えば参照符号5105及び5205)、該セルは、患者における展開に対してステントフレームを環状に拡張するよう図10中に示される通り左右方向において拡張し得るか、あるいは患者への展開に対してステントフレームを環状に折り畳むよう図10中に示される通り左右方向において縮小し得る。図10は、環状に折り畳まれた状態におけるかかるセル5105及び5205を示す。かかるセルの列は、互いに180°位相不一致であり且つ起伏において隣接するピークで共に接合されている、2つの並列蛇行又は起伏リングとして考えられ得る。図10はまた、本願において前述された返し部(barbas)5201の使用の他の例を示す。
【0028】
図11及び12は、図10からの代表詳細図である。この種類の特徴は、本願において示される実施例のいずれかにおけるいずれかの適切な位置において使用され得る、ことが理解される。図11及び12中で示される特徴は、参照符号5205で示されるようなセルの比較的真っ直ぐな部材間、又は他の同様な蛇行又は起伏リング構造間における、丸くされた角部5207である。(再度、この特徴は、領域5100等においても使用され得る。)図11は、環状に折り畳まれた構造における1つの代表的な丸い角部5207を示す。図11中、丸い角部5207は望ましくは全体的にC字形状を有する、ことが留意される。図12は、構造の環状拡張の後の同一の丸い角部を示す。ここで(即ち図12で)角部5207は、よりU字形状に近い形状を有するよう多少広げられている。かかる丸い角部の使用は、セルラー(cellular)又は蛇行構造の部材が方向を変える場合の応力集中を避ける支援をする。このことは、構造の性能を高め且つ寿命を延ばすことを可能にする。また、拡張時、かかる丸い角部は僅かに(例えばC字形状からU字形状に)広がる傾向がある。このことは、縫合材料5209が(例えば図12に示される通り)通され得る場所を与えることによってリーフレット取付けを容易にし得る。
【0029】
図13は、(図10に示されるものと概ね同一の種類の図を使用して)大動脈流出部5100が輪状流入部5200より多くの閉じられたセル5105を備えるという更に他の実施例を示す。このことは、輪状流入部5200より大きな直径までの大動脈流出部5100の環状拡張を容易にし得る。図13はまた、ステントフレームに対する弁リーフレット及び他の材料の取り付けを容易にするよう、開口5239がどのように並びにどこにステントフレーム5105gにおいて与えられ得るかに関する他の例を示す。(再度図3は、図10及び13において示されるものと同様の実施例の展開に対して適用される。)
図14は、本発明に従った弁がステントフレーム5010のいずれかの部分の内部において取り付けられるファブリック5206を有し得る、ことを示す。(図14中の例は、輪状流入部5200と弁リーフレット5500との間におけるファブリック5206を示す。)図14はまた、本発明に従った弁がステントフレーム5010のいずかの部分の外側に取り付けられるファブリック5208を有し得る、ことを示す(再度、図14中の例は輪状流入部5200の外側の周囲におけるファブリック5208を示す)。図14はステントフレーム5010の一部の内側及び外側の両方の周囲におけるファブリックを示すが、ファブリックは、所望に応じてかかる位置の1つのみにおいて使用される、ことが理解される。参照符号5206及び/又は5208のようなファブリックの複数又は全ては、図7a又は7bに示されるカフ5203を形成し得る。
【0030】
図15は、本発明に従った弁がステントフレーム5010と接合リーフレット(coapting leaflets)5500との間におけるバッファとして組織材料5206aを有し得、ステントフレームによるリーフレットの摩耗を防ぎ且つ弁のより長い耐久性能を与えるようにする、ことを示す。図15に示される例において、組織材料5206aは、輪状流入部5200と弁リーフレット5500との間にある。組織材料5206aは、望ましくは弁リーフレット5500に対して使用される材料より薄い。
【0031】
図16は、(図13において示されるものと概ね同一の種類の図を使用して)ステントフレーム5010hの他の説明的な実施例を示しており、該実施例において各交連ポスト領域5237は、2つの実質的に平行である独立してカンチレバーされるポスト部材5237a及び5237bへと分岐される。
【0032】
一般的に、本発明に従った人工弁の円周方向(環状、半径方向)の折畳み及び再拡張は弾性的又は少なくともほぼ弾性的である、ことが望ましい。しかしながら、かかる折畳み及び/又は再拡張の一部又は全ては、弁のステントフレーム(参照符号5010等)の材料の形状記憶特性の使用から代替的又は追加的に起因し得る。更に他の可能性として、折畳み及び/又は再拡張の一部又は全ては、プラスチックであり得る。かかるプラスチック再拡張(plastic re−expansion)は、弁内部での(例えばカテーテルにおける)バルーンの膨張によってもたらされ得る。
【0033】
前述は、単に本発明の原理を説明するものであり、多種の修正が本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく当業者によって行なわれ得る、ことが理解される。例えば、大動脈流出部5100及び/又は輪状流入部5200において使用されるセル又は起伏の数は、本開示の一部を形成する図において示される数と異なる(それより多い又は少ない)ことがあり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工大動脈弁であって、
環状ステントフレームと、
複数の弁リーフレットと、
を有し、
前記環状ステントフレームは、(1)使用時に患者の自然大動脈弁輪に隣接して配置されるよう構成される輪状流入部と、(2)使用時に患者の自然バルサルバ洞の少なくとも一部から下流における前記患者の自然大動脈において配置されるよう構成される大動脈流出部と、(3)前記輪状流入部と前記大動脈流出部との間において実質的に単独の接続を構成する複数の接続ストラットとを有し、前記輪状流入部は、該輪状流入部の周囲において環状方向に互いから離間される複数の交連先端を画定し、該交連先端は、前記大動脈流出部に対して最も近接する前記輪状流入部の特徴であり、前記接続ストラットの各々は、前記交連先端より更に前記動脈流出部から離れた点においてのみ前記輪状流入部に対して接続され、前記接続ストラットの各々は、前記交連先端の関連付けられる1つに対して隣接し、前記接続ストラットの少なくとも1つは、使用時に患者の自然大動脈弁交連先端の各々の各側に隣接して配置されるよう位置付けられ、前記接続ストラットの各々は、使用時に前記輪状流入部と前記大動脈流出部との間において前記バルサルバ洞へと半径方向外方に突出し、
前記複数の弁リーフレットは、前記輪状流入部によって支持される、
人工大動脈弁。
【請求項2】
前記大動脈流出部は、前記接続ストラットを介して前記輪状流入部に対して一体的に接続される、
請求項1記載の人工大動脈弁。
【請求項3】
前記ステントフレームは、第1の比較的小さな寸法まで弾性的且つ環状に圧縮可能である、
請求項1記載の人工大動脈弁。
【請求項4】
前記ステントフレームは、前記第1の寸法から第2の比較的大きな寸法まで弾性的且つ環状に再拡張可能である、
請求項3記載の人工大動脈弁。
【請求項5】
前記第1の寸法は、前記患者への前記弁の送出に対して適切である、
請求項4記載の人工大動脈弁。
【請求項6】
前記第2の寸法は、前記患者における前記弁の使用及び前記患者による前記弁の使用に対して適切である、
請求項5記載の人工大動脈弁。
【請求項7】
前記患者の自然大動脈弁交連先端の各々の各側に隣接する前記接続ストラットは、2つの異なる前記交連先端に隣接する最も近い接続ストラット間の距離より小さい距離分を互いから離間され、前記距離の全ては、前記人工弁交連先端のレベルにおいて測定される、
請求項1記載の人工大動脈弁。
【請求項8】
前記輪状流入部は、前記弁の全周囲において環状に連続的である、
請求項1記載の人工大動脈弁。
【請求項9】
前記大動脈流出部は、前記弁の全周囲において環状に連続的である、
請求項1記載の人工大動脈弁。
【請求項10】
前記輪状流入部は、環状方向において少なくとも1つの離断を有する、
請求項1記載の人工大動脈弁。
【請求項11】
前記大動脈流出部は、前記環状方向において少なくとも1つの離断を有する、
請求項1記載の人工大動脈弁。
【請求項12】
複数のアンカー部材を更に有し、該複数のアンカー部材は、前記ステントフレームから外方向に傾斜するよう弾性的に付勢される、
請求項1記載の人工大動脈弁。
【請求項13】
環状カフを更に有し、該環状カフは、前記輪状流入部上に取り付けられる、
請求項1記載の人工大動脈弁。
【請求項14】
前記交連先端の各々は、前記輪状流入部の残りの構造において少なくとも夫々単一の点からカンチレバーされる夫々単一の構造部材の自由端にある、
請求項1記載の人工大動脈弁。
【請求項15】
前記交連先端の各々は、前記輪状流入部の残りの構造において少なくとも夫々一組の点からカンチレバーされるV字型構造の自由頂点にある、
請求項1記載の人工大動脈弁。
【請求項16】
前記ステントフレームは、前記リーフレットを前記ステントフレームに対して固定するよう使用される複数の開口を画定する、
請求項1記載の人工大動脈弁。
【請求項17】
前記ステントフレームは、前記弁に対する送出システムと共に使用される複数の開口を画定する、
請求項1記載の人工大動脈弁。
【請求項18】
前記輪状流入部は、湾曲角部において互いに一体的である一組の構造部材を有し、該湾曲角部は、最初はC字型で、前記構造部材が前記弁の環状である方向において互いから離れて動くときによりU字型になる、
請求項1記載の人工大動脈弁。
【請求項19】
前記大動脈流出部及び輪状流入部はいずれも、前記弁の周囲において環状方向に進む際に起伏構造を有する、
請求項1記載の人工大動脈弁。
【請求項20】
起伏する前記大動脈流出部の構造は、起伏する前記輪状流入部の構造と略同一の数の起伏を備える、
請求項19記載の人工大動脈弁。
【請求項21】
起伏する前記大動脈流出部の構造は、起伏する前記輪状流入部の構造より多くの起伏を備える、
請求項19記載の人工大動脈弁。
【請求項22】
前記大動脈流出部から最も離れている前記輪状流入部のエッジは、前記交連先端の少なくとも1つと位置合わせされる凹状エッジ部を有し、該凹状エッジ部は、前記輪状流入部の前記エッジの他の部分より前記大動脈流出部に対して近接する、
請求項1記載の人工大動脈弁。
【請求項23】
前記ステントフレームの少なくとも一部の内部においてファブリックを更に有する、
請求項1記載の人工大動脈弁。
【請求項24】
前記ステントフレームの少なくとも一部の外側においてファブリックを更に有する、
請求項1記載の人工大動脈弁。
【請求項25】
摩耗を防ぎ且つより長い耐久性能を与えるよう前記ステントフレームと前記リーフレットとの間におけるバッファとしての組織材料を更に有する、
請求項1記載の人工大動脈弁。
【請求項26】
前記組織材料は、前記リーフレットより薄い、
請求項25記載の人工大動脈弁。
【請求項27】
前記リーフレットは、生物組織、ポリマ、薄い金属、及び強化ポリマを有する群から選択される材料を有して作られる、
請求項1記載の人工大動脈弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2010−536527(P2010−536527A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522910(P2010−522910)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/009950
【国際公開番号】WO2009/029199
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(500232466)セント ジュード メディカル インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】