説明

人工心臓弁の経血管移植用カテーテル

本発明は人工心臓弁の経血管移用のカテーテルに関し、特に最小限の侵襲で人工心臓弁の移植を可能とする、自己拡張型アンカーサポートからなる。本発明の目的は、移植中の患者のリスクを軽減することにある。これを達成するため、本発明の、アンカーサポートを装着した人工心臓弁は、移植中はカートリッジ型ユニット(4)内に折り畳んだ状態で一時的に格納されている。カートリッジ型ユニットは、大動脈を通してガイド可能な可撓性部分(9)を備えたガイドシステム(1)の近端に固定できる。動作部材(2、3)は中空のガイドシステムを通って進み、該動作部材は、カートリッジ型ユニット部の部分をその長手軸の半径方向、及び/又は近端側に横方向に動かして、アンカーサポートの個別の部分及び、関連する人工心臓弁を続けて開放できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最小限の侵襲で人工心臓弁の移植を行うことを可能とする、自己拡張アンカーシステムを備えた人工心臓弁の経血管移植用カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
患者数の増加に伴って、心臓移植は頻繁に行われるようになってきている。この心臓移植のために人工移植物や生体移植物が用いられている。
【0003】
過去において、この種の手術を行う場合に、麻酔を施した患者に人工心肺装置を用いる必要があった。このため、コストのかかる外科的介入が必須となり、患者にとっては大きな心的及び肉体的なストレスとなっている。致死リスクを3%未満に保つことが目標となっている。患者の年齢が上昇し、心臓弁の障害が更に進行してしまうと、現実的な治療を必要としても、患者が手術を行えない状況になってしまうことがある。このような患者は、外科的に心臓弁を置換することができないため、生活の質の低下に苦しみ、寿命がかなり短くなってしまう。外科的介入は、極めて大きなリスクを患者に負わせる。
【0004】
これと同じ問題が、いわゆるバルーンカテーテルを用いて、アンカーシステムを装着した人工心臓弁を移植する手術にもあてはまる。
【0005】
この種の治療においては、誤った位置に設定することが起こりうる。これは、場合によっては患者を死に導く重大な結果になりうる。
【0006】
最近では、人工心臓弁をアンカーサポートとともに患者の大動脈に入れ、大動脈を通して心臓に送り込むという、侵襲を最小にする介入方法によって人工心臓弁を移植する試みがなされてきた。心臓の移植部分に到達すると、この人工心臓弁に装着されたアンカーサポートは自己拡張を開始し、この自己拡張によって、人工心臓弁を確実に固定して正確な位置に設定する。かかるアンカーサポートは例えば「ニチノール(登録商標)」などの形状記憶合金から製造されるものが多く、形状記憶合金は、その転移温度が約37℃であり、転移温度に達すると自己拡張を開始できるものが選択される。
【0007】
この拡張の結果、アンカーサポートが開き、必要な場合は、更に鈎状部材を用いて、安全に固定できる大動脈壁に固定される。同時に人工心臓弁が開き、その機能を実現できるようになっている。
【0008】
人工心臓弁を組み込んだこの種類のアンカーサポートは、例えば、国際公開第2004/019825号パンフレットに記載されている。
【0009】
サポートフープは、このように患者の心臓弁の嚢に挿入するアンカーサポートの近端に設けられている。これらのサポートフープによって外科的介入の間、極めて正確にアンカーサポートを配置できるようになっている。サポートフープに加えてこのアンカーサポートには、いわゆるコミッシュラルフープが取り付けられている。コミッシュラルフープはサポートフープとともに、アンカーサポートが開いた後の患者の古い心臓弁の部分を固定する。この効果によって、アンカーサポートを信頼性をもって位置決めして固定できる。
【0010】
したがって、この公知のアンカーサポートのサポートフープ及びコミッシュラルフープを配置し、寸法合わせをした結果、サポートフープとコミッシュラルフープの連続した自己拡張が可能となる。これは、アンカーサポートが、移植過程でカートリッジ内部に収容されることを意味する。そして、アンカーサポートは大動脈から心臓へ到達するカテーテルによって挿入される。移植部位に着くと、カートリッジを操作され、その結果、サポートフープは自己拡張できるように解除される。カートリッジはその後操作され、アンカーサポートと一緒に正確に位置決めされる。その結果、サポートフープは各患者の心臓弁の嚢に挿入される。これにより、正確な位置決めを達成できる。
【0011】
また、それぞれのカートリッジを更に操作し、その結果、コミッシュラルフープを解除し、フープが自己拡張できる。これが起こると、古い心臓弁をサポートフープとコミッシュラルフープの間に固定し、人工心臓弁が機能する位置へと展開される。
【0012】
人工心臓弁を組み込んでいるアンカーサポートを移植した後で、カテーテルはその後、大動脈を通してカートリッジとともに患者の体から取り外すことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
アンカーサポートに備えられるサポートフープは、前記方法で移植する人工心臓弁を、著しく簡単に、より良好な位置決めができるにも関わらず、誤った移植をしてしまう可能性がある。すると人工心臓弁は機能できなくなるか、又は不十分な程度しか機能しなくなる。特定の状況では、機能していないか十分に機能していない人工心臓弁の除去はもはや不可能であり、そして、場合によっては各患者が死亡する危険性が増してしまう。
【0014】
大動脈経由の導入部での人体の大動脈の屈曲は、このような外科的介入の間、他の問題を引き起こす。この処置の間、カートリッジ及びそれぞれのカテーテルが移動する最中に、約50mmの比較的小半径を有する約180°の方向転換があっても、血管壁に損傷を引き起こさずにうまく通り抜けなければならない。
【0015】
したがって、本発明の目的は、人工心臓弁の移植の間、患者のへのリスクを下げることにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1で定義される、特徴的な機能を持ったカテーテルに基づく発明により、この目標は達成される。独立請求項で明確にされる、特徴的な機能は、好適な実施形態と発明の構造を得ることができる。
【0017】
望ましい実施形態の中で、発明によって提案されるカテーテルは、参照によって本明細書に援用する、国際公開第2004/019825号パンフレットに公知の自己拡張型アンカーサポートを伴った人工心臓弁と併せて用いることが出来る。
【0018】
この状況下では、人工心臓弁を伴ったアンカーサポートを、移植の間、萎んだ状態のカートリッジユニット内に一時的に収容することができる。
【0019】
この方法で準備されたカートリッジユニットは、ガイドシステムの近端に解放可能に取り付け可能である。カートリッジユニットとガイドシステムは、苦もなく手術できるように、患者の大動脈を通して移動できる程度まで、外径を可能な限り小さくしている。このため、大動脈内部に完全に閉塞されない、全体的に自由な断面部分が存在するようにしている。
【0020】
使用するガイドシステムは、カートリッジシステムを患者の鼠径部から送り込み、患者の大動脈を通して心臓まで挿入できるように、カートリッジユニットに対して十分な長さをもたせている。
【0021】
ガイドシステムには可撓性の屈曲可能な部分が設けられており、この部分を用いることによって、ガイドシステムは患者の大動脈の屈曲に対応して、屈曲半径及び屈曲角度を調整できる。
【0022】
カートリッジユニットを操作する部材は、内部が空洞のガイドシステムによってもたらされる。これらの動作部材はカートリッジユニットの部品を操作可能にする。そしてカートリッジユニットを特定の方法で操作し動かすことが出来る。例えばまた、この動作部材により、カートリッジユニットの部品の半径方向の運動もしくは側方向の運動が可能となる。この特定の方法でのカートリッジユニットの可動部品は、アンカーサポートの部品を次々と解放し得る。その結果、移植と固定は国際公開第2004/019825号パンフレットで述べる方法で行うことができる。
【0023】
例えば、アンカーサポートのサポートフープは、カートリッジユニットの一部の近端又は遠端方向での、回転によって、又は側方へ動かすことによって開放できるが、例えば、コミッシュラルフープなどのその他の部品は、カートリッジユニット内部に畳んだ状態で残り続ける。そこでカートリッジユニットの他の部品を動かす、又はカートリッジユニットの中に畳んだ状態で残り続けているカートリッジユニットの部品を動かし続けることによって、膨らますようにして開放できる。
【0024】
例えば縫合によってアンカーサポートを取り付けた人工心臓弁は、人工心臓弁が取り付けられるアンカーサポートのフープの各々が広がるように、一斉に開く。
【0025】
好適の実施形態においては、カートリッジユニットの部品の動作部材に加えて、他の動作部材を、中空のガイドシステムを通して供給する。ガイドシステムは、特定の方法で大動脈の屈曲に働きかける屈曲可能部分に作用する。
【0026】
特に動作部材を介して伝達される牽引力によって、移植時に屈曲可能部分は、大動脈の屈曲部を通り抜け得る所定の曲率が得られるようになっている。テンションケーブル又はテンションワイヤは動作部材として用いられ、中空ガイドシステムの内部を通って屈曲可能部分の近端まで導かれている。動作部材は、ガイドシステムに固定されており、2つの動作部材の力が作用するポイントは相互に対向し、更に、屈曲可能部分が曲がる屈曲軸に対して90度とするのが望ましい。
【0027】
例えば、ガイドシステムを、屈曲可能部分によって大動脈の屈曲部を通って押し込む場合、及び手術完了時に引き抜く場合、屈曲可能部分の曲率は、動作部材の一方からの牽引力によって所定の影響を受けるようになっている。
【0028】
ガイドシステムの屈曲可能部分は個々のジョイントによって相互に連結した複数のリンク部からなるリンク部のチェーンでもよい。これによって、個々のジョイントは、それぞれ隣接するリンク部に突出して係合している。屈曲可能部分で180度を超える曲率を維持できるように個々のジョイントの連結を設計することによって、屈曲半径を少なくとも大動脈内の屈曲部の半径に確実に対応できるようにしている。
【0029】
リンクのチェーンの個々のリンク部に対応する個々のジョイントは、個々のリンクに対して、2つ一組で互いに正反対に、屈曲可能部分の回転軸に沿って平行に配設されている。
【0030】
本発明によって提案するカテーテルを使用するガイドシステムはまた、クーラントもしくは製剤を中空のガイドシステムを通してカートリッジユニットまで循環出来るという利点をもって設計される。クーラント、例えば、食塩水などの補助によって、アンカーサポートを形状記憶合金の転移温度以下に保つことができる。このクーラントはまた、体液のガイドシステム内部へ浸透を防止する働きもある。このためには、体液もしくは体液に含まれる他の成分の浸透を妨げるように液体圧を十分に高く維持するべきである。
【0031】
クーラントを適切な状態で導入することにより、例えば空気などの気体が大動脈や血液に侵入することも防止できる。
【0032】
このため、ガイドシステム全体は可能な限り不浸透性であるのが望ましい。したがって、この場合、リンクのチェーンで構成される可撓性の屈曲可能部分を、プラスチックホースを用いて外部から密封し、不浸透性をもたせてもよい。
【0033】
アンカーサポートのフープを開放するため、特定の方向に動かすことができるカートリッジユニットの部品は、好ましくは、相互に伸縮自在に係合可能な内径及び外径を有したスリーブ状部の部品で構成することが好ましい。スリーブ状部の部品の少なくとも二つは、人工心臓弁を装着した畳んだ状態のアンカーサポートを、それらの間に保持できる適当な内径及び外径を有する。
【0034】
カテーテルの挿入時には、カートリッジユニットは可能な限り完全に閉じ、更に、近端側で大動脈を通して挿入しやすくするため、先端部は、例えばシリコーンなどの可撓性材料から作られることが望ましい。
【0035】
カートリッジユニットが患者の心臓に到達すると、適切な操作が実行可能となる。換言すると、カートリッジユニットを構成する部品/スリーブ状部を動かして、アンカーサポートの様々なフープを順に解除し、それらによって固定されていた人工心臓弁を同時に開くことができる。
【0036】
しかしながら、フープが開いても、アンカーサポートはカートリッジユニット内にしっかりと保持されたままである。このため、アンカー部を、カートリッジユニットの遠端側のスリーブ状部、例えば、輪をアンカーサポートに配置した場所に備えている。この場所で、これらのアンカー部もまた、アンカーサポートの遠端部とともにカートリッジユニットのスリーブ状部によって覆われ、この結果アンカー部の遠端部は畳んだ状態のまま保たれている。
【0037】
この位置で、すでに開いた人工心臓弁の機能を検査することが可能である。人工心臓弁が機能することが判明した時点で、更に操作を行い、それまでアンカーサポートの遠端部によってアンカー部を覆っていたスリーブ部材を動かし、アンカーサポートの遠端部を完全に開放し、その結果人工心臓弁を完全に展開できる。
【0038】
検査中に、移植した人工心臓弁がその機能を満たさず、又は満足に動作しないことを確認したなら、カートリッジユニット内に人工心臓弁とともにアンカーサポートを戻すことも好都合なことに可能である。これは、部品/スリーブ状部を、挿入時と反対方向に動かし、全ての部品、換言すると、カテーテル全体を患者の体から取り除く。こうして、同患者には、その後、改めて移植を試みることができ、手術の危険を十分に減じることができる。
【0039】
本発明によって提案される好ましい実施形態のカテーテルでは、ガイドワイヤをカテーテル全体にわたって通すこともできる。この種の手術ではこのようなガイドワイヤはすでに用いられており、ガイドワイヤはカテーテルを導入する前に患者の大動脈を通して心臓の背後に到達する。カテーテルはカートリッジユニットとガイドシステムを介して、ガイドワイヤに導かれ、大動脈を通じて患者の心臓まで押し込むことができる。
【0040】
カテーテル挿入過程、特に大動脈の屈曲部など、屈曲部位の操作を観察するため、ガイドシステム及び/又はカートリッジユニットにX線照射を吸収する材料で作られたマーカー部を設けることは有用である。これによって、手術時に各々の位置をX線画像で特定できる。
【0041】
粒子が患者の血液循環系に侵入することを防止するため、スクリーンフィルターを本願発明が提案するカテーテルとともに用いることができる。このスクリーンフィルターは、ガイドシステムを半径方向に完全に包囲するように、ガイドシステムに取り付けてもよい。この場合、粒子が浸透することのないように密封するため、大動脈の血管壁に対して弾性的なバイアスがかかるようにすべきである。
【0042】
その上、本発明によるカテーテルは、ガイドシステム又はカートリッジユニット内部に配設された、標準的なバルーンを更に備えており、それをそこまで運ぶか、又は代わりに、拡張するアンカーサポートまでガイドシステム内部を通って運ぶ。このようなバルーンは流体の圧力を高めることによって、体積を増加できるため、更にアンカーサポートの拡張を支援するようになっている。
【0043】
ガイドシステム内部を通り、牽引され、収縮手段ともなる、上述の動作部材は、操作部から有利に操作を行うことができる。操作部をハンドルとして形成して、執刀医各々がカテーテル挿入動作を操作できるようにしてもよい。
【0044】
更に、動作部材のそれぞれの動作を操作できるように、この操作部は他の制御部材も備えている。これは、例えば、適切な並進比(translation ratios)に従わせるなど、可能な限り対応する動きに影響を与えることができ、少なくともエンドストッパ又は受け位置による動きの制限が可能となるのが望ましい。これによって、特定の最大距離又は角度を、アンカーサポートが連続的に拡張するために許容された範囲、又は屈曲可能部分の屈曲への影響を考慮した範囲で維持することができる。この点において、エンドストッパ又は個々の受け位置は可能な限り微細に調整できることが望ましい。
【0045】
少なくとも患者各々に直接結合し、また、大動脈内に挿入される、発明によって提案されたカテーテルの全ての部品は、有機体各々に適応する生物適合性材料によって作られることが望ましい。標準的な滅菌過程の一つを使用できるように、それらもまた殺菌できることが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明を、実施例に基づいて更に詳細に説明する。
【0047】
図1乃至4は、発明によって示されたカテーテルの一例を示し、これを明瞭に理解するためのものである。それぞれの図は、違った段階を示している。それは、人工心臓弁に組み込まれるアンカーサポート10を移植する間で生じる段階である。
【0048】
図1に示す本発明が提示するカテーテルの一例は、カートリッジユニット4に焦点を当てている。このカートリッジユニット4は未だ完全に閉じており、拡張していない状態での心臓弁を組み込んだアンカーサポート10を収容し、折り畳んでいる。その結果、適切な接近場所から大動脈を通って、そして患者の心臓の移植部分の各々へ、中空のガイドシステム1を用いてカートリッジユニット4が供給される。
【0049】
挿入手段を簡単にし、損傷のリスクを軽減する、シリコーンで出来た可撓性先端部は、カートリッジユニット4上の最も近くに配置される。
【0050】
カートリッジユニットの部品5は、例えばねじ込み式の接続方式を使って、ガイドシステム1の他の部品と解除可能に連結されている。
【0051】
カートリッジユニット4の調節は、屈曲可能部分9によって行われる。その屈曲可能部分9が設計され、寸法を合わせることにより、問題なく患者の大動脈の屈曲の通り抜けが保証される。
【0052】
かかる屈曲可能部分9について可能な構造は後に説明する。
【0053】
中空のガイドシステム1の他の部品は以下のように示される。図1から図4は、カートリッジユニット4のところまでガイドシステム1の中を通り抜ける2つの動作部材2と3を示している。そして、その場で動作部材2は同様にカートリッジユニット4のところへ内部が空洞の動作部材3を通り抜けて到達する。
【0054】
ここでは、動作部材2と3は、好ましくはテンションワイヤを用いて補強した圧縮スプリングとしている。このテンションワイヤを用いることによって、手術の終了後、患者の体からカテーテルを引き抜く際の安全性を高めることができる。
【0055】
ガイドシステム1の他の部品11が左側に設置されているが、この部品は、ガイドシステム1の他の部品11が大動脈への挿入と大動脈からの再摘出に耐え得るような圧力と伸張に対する抵抗力がなければならない。そしてガイドシステム1は多かれ少なかれスリーブ状部で提供できる。適切に、この用途には硬いプラスチック、例えばポリ四フッ化エチレンやポリ四フッ化エチレンを素地としたホースを使用する。これらは十分に有機体と共存するし、殺菌できるからである。
【0056】
図2は、各患者の心臓の移植場所に到達したのを境として、手術の第一段階に行われる処置を示している。カートリッジユニット4のこの部品/スリーブ状部7は、動作部材2及び/又は3のうちの遠端の動きによって、遠端の方向に引き返せる。それによってアンカーサポート10のいくつかのフープは、例えば、好ましくは、国際公開第2004/019825号パンフレットに開示された既知の人工心臓弁に設けたサポートフープのように、展開し、半径方向外側にテンションがかかるようになっている。
【0057】
ガイドシステム1とカートリッジユニット4を備えたカテーテル全体は、それによって近くに押し込まれ、それらのフープ(サポートフープ)は患者の古い心臓弁の嚢に挿入される。執刀医がはっきり判る抵抗を感じたら、古い心臓弁の嚢へのアンカーサポート10のサポートフープの挿入過程は完了である。
【0058】
カートリッジユニット4のこの部分及び/又はスリーブ状部5は、先端で前方に動く。それによってアンカーサポートのほかのフープは解除され、その結果人工心臓弁は自己拡張し、広がる。
【0059】
この準備段階を、図3に示す。ここでは人工心臓弁はまだ完全に展開されておらず、また、アンカーサポート10は完全に固定出来ていない。
【0060】
図3で示すように、アンカーサポート10の先端部はまだカートリッジユニット4の中に収容されている。そして、カートリッジユニット4の下部には部分/スリーブ状部7がある。人工心臓弁が開き、位置決めされて機能を検査される段階に入るまでアンカーサポートはこの状態のままである。
【0061】
もしこの検査により、間違った機能や間違った位置取りが明らかになれば、2つの動作部材2又は3は、その部分/スリーブ状部7を近くにもう一度押し込めることが出来る。それにより、人工心臓弁と一体となったアンカーサポート10は、カートリッジユニット4の中に部分的に収容されていて、カテーテル全部を、血管壁を傷つけることなく大動脈の外へ引き抜くことが出来るように患者の体から除去できる。
【0062】
もし、機能検査において、人工心臓弁がその機能を少なくとも十分な能力を発揮することを示せば、図4で示す通り、その部分/スリーブ状部7を後ろに戻すことが出来る。もしくはカートリッジユニット4の他の部分/スリーブ状部6を近端方向へ動かすことが出来る。それによりアンカーサポート10の遠端部を解除し完全に広げることが出来る。
【0063】
また、図4に示す通り、アンカーサポート10の遠端部には輪もしくはその他の適切な部材が備えられている。アンカーサポート10は、その部分/スリーブ状部6上に設けられたアンカー部8にあらかじめ嵌合されている。これらの輪とアンカー部8によって、人工心臓弁を組み込んだアンカーサポート10が不正確に、或いは劣悪に移植されたことが確認された場合、信頼性をもって収縮、又は抜き取りを行えるようになっており、アンカーサポート10と人工心臓弁を患者の体から取り外せるようにしている。
【0064】
アンカー部8と、必要な場合は、カートリッジユニット4の部分/スリーブ状部6に設けた他のガイド部16によって、半径方向に回転させて、アンカーサポート10のフープを古い人工心臓弁の嚢に正確な角度位置で挿入できる。例えば、移植中、執刀医によってカテーテル全体をその長手軸を中心として僅かに回転させることができる。
【0065】
図面4の詳細部Aはまた、長手軸に沿ったカートリッジユニット4を通して送られるカニューレ12を具体的に示している。このカニューレ12によって、記述の広範な部分で記載しているガイドワイヤがカートリッジユニット4を通って提供される。
【0066】
図5は、他の操作部材によってなされる付加的操作部13を備えたカテーテルの一例を示している。他の操作部材は操作を可能にするために設けられる。
【0067】
本実施例では、図1から図4を参照して説明したカートリッジユニット4を装着したガイドシステム1を用いる。
【0068】
しかし、詳細図Aに、リンクのチェーンからなる屈曲可能部分9を備えた一例を示す。
【0069】
個々のリンク部9.1はほぼ同一の形状及び寸法である。
【0070】
この点において、個々のリンク部9.1において対向して位置する端面は、隣接する他のリンク部9.1と係合する接合部9.2を形成する形状になっている。このため、ほぼ50mmの半径で前記のように少なくとも180度屈曲する屈曲可能な領域を確保するため、個々のリンク部9.1間には十分な幅の間隙が設けられている。
【0071】
個々の接合部9.2は、個々のリンク部9.1において対向する端面に設けた切り欠きによって形成されている。個々のリンク部9.1において一つの端面の切り欠きと、他の端面の、面取りし、補完するように突出した、相対する部分が、個々のリンク部9.1において個々の接合部9.2を形成している。
【0072】
図示してはいないが、流体密封を作り出すプラスチックホースによって屈曲可能部分9を封入出来る。
【0073】
図5はまた、本発明が提示するカテーテルを挿入し、操作するための操作部13の構成を示す。
【0074】
ハンドル13.1は、ガイドシステム1とカートリッジユニット4を備えたカテーテルを挿入し、展開するために設けられる。
【0075】
操作部13の近端部にプレート形17からなる流体密封栓を備え、これによりガイドシステム1をロックナット23を用いてフランジ取り付けできるようにしている。更に、ここには図示してないが、シール部材を装着している。
【0076】
標準的なルアー接続部30もまた設けられており、これを用いてクーラントが循環できる。
【0077】
屈曲可能部分9はハンドル19を使うことによって屈曲可能となる。そしてハンドル19はテンションケーブル(図示していない)を用いて軸の周りで方向転換が出来るが、それは図6の解説でより説明される。
【0078】
操作部全体13は、周辺環境と、ガイドシステム1に関して密閉するのが望ましい。よって、必要ならば流体密封と気密を出来る限り保つ。
【0079】
ハンドル13.1に作用するレバー20を用いて、管28を側方近端側に移動させることが出来る。この動きによって生じる牽引力又は圧縮力は2つの動作部材2、3、又は/2つの動作部材2、3の一方に伝達される。こうして上述の方法で、カートリッジユニット4の個々の部品/スリーブ状部5、6、及び/又は7の操作が可能となり、例えば、レバー20のポンプ動作によって極めて微妙な操作が可能になる。
【0080】
プッシュハンドル25は、カートリッジユニット4の部品5の位置をカートリッジユニット4のスリーブ状部6に対して動かし、固定フックによってスプリングの長さを超えて伸張し、アンカー部8として働く。プッシュハンドル25は圧縮スプリングによって管28のねじ状の歯28.1で留められる。この結果、プッシュハンドル25は、管28の近端側の運動に従う。そしてこの管28は、動作部材3として働く、1本のスプリングによってカートリッジの部品6に連結される。
【0081】
第1の開放段階を示すエンドストップに達すると、プッシュハンドル25は回転し、カートリッジユニット4の部品5をカートリッジユニット4の部品6に対してねじ部28.1のピッチ方向へ軸方向に正確に動かせるようになる。
【0082】
このように、プッシュハンドル25を操作することによって、更に細かい調整を要することなく、ここに図示したカートリッジユニット4の部品5を動かせる。
【0083】
この操作はアンカーサポート10を開放することを可能とする(図3参照)。この位置では、アンカーサポート10をまだ縮められる。
【0084】
例えば、留め具29が調整ねじの形で提供されるアクチュエータ部材31を用いて解放されるとき、カートリッジユニット4は、カートリッジユニット4から離れるアンカーサポート10の保定輪まで、前記の通り、レバーシステム20を操作することによってより開放され、アンカーサポート10はその開放力によってアンカー部8から飛び出すことが出来る。
【0085】
カートリッジユニット4の部材は、段階的に引き戻してもよい。この場合、プッシュハンドル25を(ロックした部分を押して)引き戻すことによって、カートリッジユニット4の部品5を、カートリッジユニット4の部品6を超えて収縮させてもよい。
【0086】
解除ボルト32を操作して、管28に接続されたカートリッジユニット4の部品6を、プッシュハンドル25をより引き戻すことによって初期の位置に戻すことができる。その結果、カートリッジユニット4は再び完全に閉じる。この状態で、カテーテルを再び患者の体から取り出せる。
【0087】
図6は、この例で使用されている操作部13を、より詳細に示した分解図である。
【0088】
図に示すように、ハンドホイール19がシャフト14を介して回転すると、互いに平行に位置する2つの歯付ラック24は移動する。一方の歯付ラック24が近端方向へ移動する際に、これと平行に位置する他方の歯付ラック24は遠端方向に動く。
【0089】
ここで図示していないが、テンションケーブルは歯付ラック24との連携に基づいて掴み具21を固定することが出来る。テンションケーブルは、屈曲可能部分9の範囲まで中空のガイドシステムを通って送られ、近端領域に固定されることが好ましい。
【0090】
ハンドホイール19を回転させることによって、牽引力が2つのテンションケーブルの少なくとも一つに働き、1回計測分で適切な屈曲を屈曲可能部分9にもたらす。その結果、ガイドシステム1を、カートリッジユニット4と一緒に規定された方法で大動脈の屈曲部を通して送り込むことができる。
【0091】
また、図6で示すように、ハンドル13.1に連結するレバー20は、管28上の細かい歯28.1を介して動作する。これによって動作部材2及び/又は3によりアンカーサポート10を操作し、アンカーサポート10を順次開放できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】移植手順での様々な起こりうる段階での、発明が提示するカテーテルの例を図解している説明図である。
【図2】移植手順での様々な起こりうる段階での、発明が提示するカテーテルの例を図解している説明図である。
【図3】移植手順での様々な起こりうる段階での、発明が提示するカテーテルの例を図解している説明図である。
【図4】移植手順での様々な起こりうる段階での、発明が提示するカテーテルの例を図解している説明図である。
【図5】操作部分と一体となったカテーテルの例を示す。
【図6】図5で説明している操作部の説明をしている説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己拡張アンカーサポートを備えた人工心臓弁の経血管移植用のカテーテルにおいて、アンカーサポートを備えた人工心臓弁が、移植時には折り畳んだ状態でカートリッジユニット内に一時的に収納され、カートリッジユニットはガイドシステムに近端で装着可能であり、ガイドシステムは、該ガイドシステムをして大動脈を通過可能とする屈曲可能部を有し、
動作部材(2、3)は中空のガイドシステム(1)を介して、カートリッジユニット(4)まで進み、
カートリッジユニット(4)の部品(5,6、7)をその長手軸を中心として半径方向、及び/又は側方近端及び遠端方向に移動させ、アンカーサポート(10)の個別の部分を、人工心臓弁とともに続けて開放可能であることを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
動作部材が、ガイドシステム(1)の屈曲可能部分(9)に設けられ、特定の方法でその曲率に影響を与えるように動作することを特徴とする、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
個別のジョイント(9.2)を有するリンク部のチェーンからなる屈曲可能部分(9)を備えたことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
個別のジョイント(9.2)が隣接するリンク部(9.1)の各々と係合することを特徴とする、請求項1から3の何れか1項に記載のカテーテル。
【請求項5】
動作部材を、屈曲可能部分(9)に作用する牽引手段として備えたことを特徴とする、請求項1から4の何れか1項に記載のカテーテル。
【請求項6】
液体のクーラントが、ガイドシステム(1)の内部を通ってカートリッジユニット(4)まで循環することを特徴とする、請求項1から5の何れか1項に記載のカテーテル。
【請求項7】
ガイドシステム(1)が不浸透性を持って設計されたことを特徴とする、請求項6に記載のカテーテル。
【請求項8】
カートリッジユニット(4)が、相互に伸縮可能に係合する複数のスリーブ状部(5、6、7)を備え、当該スリーブ状部(5、6、7)の間にアンカーサポート(10)及び人工心臓弁を移植時まで折り畳んだ状態で封入して固定する、請求項1から7の何れか1項に記載のカテーテル。
【請求項9】
アンカーサポート(10)は更に、カートリッジユニット(4)のスリーブ状部(6)に装着したアンカー部(8)によってガイドシステム(1)を組み込んだカートリッジユニット(4)の遠端で固定され、カートリッジユニット(4)の他のスリーブ状部(5、6又は7)の半径方向及び/又は横方向の動きによって、人工心臓弁を組み込んだアンカーサポート(10)の部品は開き、人工心臓弁が正確に機能していることを確実に検査可能であることを特徴とする、請求項1から8の何れか1項に記載のカテーテル。
【請求項10】
ガイドワイヤがカテーテル内部を通って挿入されることを特徴とする、請求項1から9の何れか1項に記載のカテーテル。
【請求項11】
X線照射を吸収するマーカー部をガイドシステム(1)及び/又はカートリッジユニット(4)に備えたことを特徴とする、請求項1から10の何れか1項に記載のカテーテル。
【請求項12】
スクリーンフィルターをガイドシステム(1)に取り付けて、ガイドシステム(1)半径方向において包囲することを特徴とする、請求項1から11の何れか1項に記載のカテーテル。
【請求項13】
バルーンを、カートリッジユニット(4)のガイドシステム(1)の内部に配置し、或いは、拡張するアンカーサポート(10)までガイドシステム(1)の内部を通して供給可能であることを特徴とする、請求項1から12の何れか1項に記載のカテーテル。
【請求項14】
ガイドシステム(1)の内部で構成される動作部材、牽引手段及び収縮手段が、操作部(13)によって操作可能であることを特徴とする請求項1から13の何れか1項に記載のカテーテル。
【請求項15】
操作部が制御部材を備えたハンドルで構成されることを特徴とする、請求項14に記載のカテーテル。
【請求項16】
カートリッジユニット(4)のスリーブ状部(6、7)へ進む動作部材(2、3)が圧縮スプリングであることを特徴とする、請求項1から15の何れか1項に記載のカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−528069(P2008−528069A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551539(P2007−551539)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際出願番号】PCT/DE2006/000056
【国際公開番号】WO2006/076890
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(504230110)フラウンホーファー・ゲゼルシャフト ツア フェルデルンク デア アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファウ. (4)
【出願人】(507244264)イェーナヴァルヴ テクノロジー ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】