説明

人工股関節用コンポーネント及び人工股関節用ユニット

【課題】人工股関節再置換術において、骨頭ボール部材の交換を容易に行うことを可能とする。
【解決手段】人工股関節用コンポーネント11は、人工股関節において用いられ、骨頭ボール部材12とステム部材13の端部13aとの間に配置される。スリーブ状の本体部14は、骨頭ボール部材12に形成された嵌合用穴12aに嵌合するとともに、ステム部材13の端部13aが挿入される挿入穴18が形成される。接触規制部16は、本体部14における挿入穴18を区画する内周の少なくとも一部とステム部材13の端部13aの外周との接触を阻止するように規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工股関節において用いられ、大腿骨の臼蓋側に配置されてボール状に形成された骨頭ボール部材と、大腿骨に一端側が埋植される棒状に形成されたステム部材の他端側の端部と、の間に配置される人工股関節用コンポーネント、及び、その人工股関節用コンポーネントを備える人工股関節用ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、変形性股関節症や慢性関節リウマチなどの疾患によって股関節における大腿骨の摺動部分に異常が認められた患者に対して、人工股関節が適用される手術が行われている。このような手術として、大腿骨の臼蓋側に配置されてボール状に形成されたセラミックス製の骨頭ボール部材と、大腿骨に一端側が埋植される棒状に形成された金属製のステム部材とを有する人工股関節で置換する人工股関節置換術(THA:Total Hip Arthroplasty)が行われている。セラミックス製の骨頭ボール部材の場合、摩擦係数が小さいために臼蓋側の部材に磨耗が生じ難いという利点がある。
【0003】
ステム部材とこのステム部材の端部に嵌合するセラミックス製の骨頭ボール部材とで構成される人工股関節に置換する人工股関節置換術が行われた後、骨頭ボール部材が破損してしまうことがある。このような場合には、破損した部材を交換する人工股関節再置換術が行われる。骨頭ボール部材が破損するとステム部材にも傷が生じてしまい易く、セラミックス製の骨頭ボール部材で交換すると、ステム部材に生じた傷の部分で局部的な応力集中が生じ、再度破損してしまう可能性が高くなる。このため、セラミックス製の骨頭ボール部材で交換する場合には、ステム部材の傷の程度が軽微であっても、ステム部材も含めて交換する必要性が高くなり、手術の手間や負担の増大を招いてしまうことになる。また、ステム部材の傷の影響に加え、骨頭ボール部材の破損時に生じた破損片等の微小な残材がステム部材に付着していた場合にも、交換したセラミックス製の骨頭ボール部材にその残材の介在によって局部的な応力集中が生じて骨頭ボール部材が再度破損してしまう可能性が高くなる。尚、ステム部材を交換せずに人工股関節再置換術を行う場合には、ステム部材における傷の部分での応力集中の発生による破損が生じ易いセラミックス製の骨頭ボール部材に代え、金属製の骨頭ボール部材が多く用いられる。しかし、金属製の骨頭ボール部材を用いると、セラミックスの破片の残留があった場合、この金属製の骨頭ボール部材が磨耗するメタローシスと呼ばれる現象が生じ易いという問題がある。メタローシスが生じた場合、最終的には、人工股関節再々置換術が必要となってしまう。
【0004】
一方、ステム部材との間でセラミックス製の骨頭ボール部材に局部的な応力集中が生じて破損することを抑制する観点から、人工股関節置換術において、ステム部材と骨頭ボール部材との間に人工股関節用コンポーネントとしてのスリーブ部材が配置された人工股関節を用いることが知られている(特許文献1、2参照)。特許文献1及び特許文献2においては、骨頭ボール部材に形成された円錐曲面状の穴に対して嵌合するとともにステム部材の端部が内側に摺接するように挿入される穴が形成されたスリーブ部材が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平2−13452号公報
【特許文献2】米国特許第5362311号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
人工股関節再置換術において、特許文献1や特許文献2に開示されたスリーブ部材を用いることで、ステム部材を交換せずにセラミックス製の骨頭ボール部材で交換することが考えられる。しかし、骨頭ボール部材の破損でステム部材の端部に傷が生じたり、破損片等の微小な残材がステム部材に付着したりしていると、スリーブ部材の穴に対して摺接するようにステム部材の端部を挿入することが難しくなり、スリーブ部材をステム部材に対して適正に取り付けることができなくなってしまう。このため、人工股関節再置換術において、ステム部材を交換せずに、スリーブ部材を用いて骨頭ボール部材を交換することが困難となってしまう。尚、当初の人工股関節置換術において上記のスリーブ部材を有する人工股関節が適用されている場合には、セラミックス製の骨頭ボール部材の破損に伴う傷の発生や残材の付着のため、人工股関節再置換術に際しては、スリーブ部材も交換することが必要となる。そして、骨頭ボール部材の破損に伴い、ステム部材においても傷が生じたり微小な残材が付着したりしていると、スリーブ部材の穴にステム部材の端部を摺接させて挿入させるようにスリーブ部材をステム部材に適正に取り付けることができなくなってしまう。このため、ステム部材を交換せずにスリーブ部材とともに骨頭ボール部材を交換することが困難になってしまう。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、人工股関節再置換術において骨頭ボール部材の交換を容易に行うことを可能とする人工股関節用コンポーネントを提供し、また、その人工股関節用コンポーネントを備える人工股関節用ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1発明に係る人工股関節用コンポーネントは、人工股関節において用いられ、大腿骨の臼蓋側に配置されてボール状に形成された骨頭ボール部材と、大腿骨に一端側が埋植される棒状に形成されたステム部材の他端側の端部と、の間に配置される人工股関節用コンポーネントに関する。そして、第1発明に係る人工股関節用コンポーネントは、前記骨頭ボール部材に形成された嵌合用穴に嵌合するとともに、前記ステム部材の他端側の端部が挿入される挿入穴が形成されたスリーブ状の本体部と、前記本体部における前記挿入穴を区画する内周の少なくとも一部と前記ステム部材の他端側の端部の外周との接触を阻止するように規制する接触規制部と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
この発明によると、セラミックス製の骨頭ボール部材の破損により人工股関節再置換術を行う場合には、術者は、スリーブ状の本体部を有する人工股関節用コンポーネントをその挿入穴にステム部材の他端側の端部を挿入させるように配置し、新たなセラミックス製の骨頭ボール部材を人工股関節用コンポーネントに嵌合させるように配置することができる。このとき、本体部の内周とステム部材の端部の外周とが接触規制部によって接触が阻止されているため、本体部の内周とステム部材の端部の外周との干渉が防止されることになる。このため、骨頭ボール部材の破損によって、ステム部材の端部に傷が生じていたり破損片等の微小な残材が付着していたりしても、その傷の部分や残材と本体部の内周とが干渉して人工股関節用コンポーネントをステム部材の端部に取り付ける際に影響を受けてしまうことが抑制される。これにより、術者は、人工股関節再置換術の際に、ステム部材を交換することなく、大腿骨に一端側が埋植されたステム部材に対して人工股関節用コンポーネントを適正に取り付けることを容易に行うことができる。そして、ステム部材に取り付けた人工股関節用コンポーネントに対してセラミックス製の新たな骨頭ボール部材を容易に取り付けることができる。
【0010】
従って、本発明によると、人工股関節再置換術において、骨頭ボール部材の交換を容易に行うことを可能とする、人工股関節用コンポーネントを提供することができる。
【0011】
第2発明に係る人工股関節用コンポーネントは、第1発明の人工股関節用コンポーネントにおいて、前記本体部の内側に向かって突出するように設けられ、前記ステム部材の他端側の端部と当接することで前記本体部を前記ステム部材に対して支持する支持部を更に備えていることを特徴とする。
【0012】
この発明によると、本体部をステム部材に対して支持する支持部が、本体部の内部に突出してステム部材の端部と当接するように設けられている。このため、本体部の内周とステム部材の端部の外周との干渉が防止される領域が、支持部によって占有されてしまうことが抑制される。これにより、支持部を設けることで上記の干渉が防止される領域の機能が損なわれてしまうことが抑制されることになる。従って、本体部の内周とステム部材の端部の外周との干渉が防止された状態で、本体部をステム部材に対して安定して支持することができる。
【0013】
第3発明に係る人工股関節用コンポーネントは、第2発明の人工股関節用コンポーネントにおいて、前記接触規制部が前記支持部として設けられていることを特徴とする。
【0014】
この発明によると、接触規制部が支持部の機能を兼ねて設けられるため、接触規制部と支持部とを別々に設ける場合に比して、接触規制部及び支持部の機能を少ない構成要素で効率よく実現することができる。
【0015】
第4発明に係る人工股関節用コンポーネントは、第2発明又は第3発明の人工股関節用コンポーネントにおいて、前記支持部として、前記本体部において前記挿入穴の開口を区画する縁部分の周方向に沿って延びるとともに内側に突出して前記ステム部材に当接するように形成された開口縁支持部が設けられていることを特徴とする。
【0016】
この発明によると、支持部が、挿入穴の開口の縁部分の周方向に沿って設けられるため、本体部の内周とステム部材の端部の外周との干渉が防止される領域が、支持部によって占有されてしまうことが防止される。このため、支持部を設けることで上記の干渉が防止される領域の機能が損なわれることがない。また、開口縁支持部は挿入穴の開口の縁部分において支持するため、本体部をより安定してステム部材に対して容易に支持することができる。従って、本体部の内周とステム部材の端部の外周との干渉が確実に防止された状態で、本体部をステム部材に対してより安定して容易に支持することができる。
【0017】
第5発明に係る人工股関節用コンポーネントは、第2発明乃至第4発明のいずれかの人工股関節用コンポーネントにおいて、前記本体部と一体に形成され、前記本体部における前記挿入穴の開口とは反対側の端部を塞ぐように設けられた蓋部を更に備え、前記支持部として、前記蓋部から前記本体部の内側に突出して前記ステム部材の他端側の端部に形成された穴に嵌合するように形成された嵌合支持部が設けられていることを特徴とする。
【0018】
この発明によると、支持部が、蓋部から突出してステム部材の端部に嵌合する嵌合支持部として設けられるため、本体部の内周とステム部材の端部の外周との干渉が防止される領域が、支持部によって占有されてしまうことが防止される。このため、支持部を設けることで上記の干渉が防止される領域の機能が損なわれることがない。また、嵌合支持部はステム部材の端部に嵌合して支持するため、本体部をより安定してステム部材に対して容易に支持することができる。従って、本体部の内周とステム部材の端部の外周との干渉が確実に防止された状態で、本体部をステム部材に対してより安定して容易に支持することができる。
【0019】
第6発明に係る人工股関節用コンポーネントは、第2発明乃至第5発明のいずれかの人工股関節用コンポーネントにおいて、前記支持部として、前記本体部における前記挿入穴の開口とは反対側で周方向に沿って延びるとともに内側に突出して前記ステム部材に当接するように形成され、前記ステム部材の他端側の端部の先端に嵌合するステム先端支持部が設けられていることを特徴とする。
【0020】
この発明によると、支持部が、ステム部材の端部の先端に嵌合するステム先端支持部として設けられるため、本体部の内周とステム部材の端部の外周との干渉が防止される領域が、支持部によって占有されてしまうことが防止される。このため、支持部を設けることで上記の干渉が防止される領域の機能が損なわれることがない。また、ステム先端支持部はステム部材の端部の先端に嵌合して支持するため、本体部をより安定してステム部材に対して容易に支持することができる。従って、本体部の内周とステム部材の端部の外周との干渉が確実に防止された状態で、本体部をステム部材に対してより安定して容易に支持することができる。
【0021】
第7発明に係る人工股関節用コンポーネントは、第1発明乃至第6発明のいずれかの人工股関節用コンポーネントにおいて、前記接触規制部は、前記本体部の内周と前記ステム部材の他端側の端部の外周とが空間を隔てて対向するように、前記本体部の内周と前記ステム部材の他端側の端部の外周との接触を規制することを特徴とする。
【0022】
この発明によると、接触規制部によって本体部の内周とステム部材の端部の外周との間に空間を形成するという簡易な構成によって、本体部の内周とステム部材の端部の外周との干渉を確実に防止することができる。
【0023】
第8発明に係る人工股関節用コンポーネントは、第1発明乃至第6発明のいずれかの人工股関節用コンポーネントにおいて、前記接触規制部によって前記本体部の内周と前記ステム部材の他端側の端部の外周との間で接触が阻止された領域には、骨セメントが充填されることを特徴とする。
【0024】
この発明によると、接触規制部によって本体部の内周とステム部材の端部の外周との干渉が防止される領域に骨セメントが充填されるため、本体部とステム部材との結合状態をより安定化させることができる。
【0025】
また、前述の目的を達成するための他の観点の発明として、上述したいずれかの人工股関節用コンポーネントを備える人工股関節用ユニットの発明を構成することもできる。即ち、第9発明に係る人工股関節用ユニットは、第1発明乃至第8発明のいずれかの人工股関節用コンポーネントと、大腿骨の臼蓋側に配置されてボール状に形成された骨頭ボール部材、及び、大腿骨に一端側が埋植される棒状に形成されたステム部材、のうちの少なくともいずれかと、備えていることを特徴とする。
【0026】
この発明によると、人工股関節再置換術において骨頭ボール部材の交換を容易に行うことを可能とする人工股関節用コンポーネントと、骨頭ボール部材及びステム部材のうちの少なくともいずれかと、を備える人工股関節用ユニットを構成することができる。このため、骨頭ボール部材と人工股関節用コンポーネントとで構成される人工股関節用ユニットであれば、この人工股関節用ユニットに交換することで、人工股関節再置換術を容易に行うことができる。また、ステム部材を含んで構成される人工股関節用ユニットであれば、当初の人工股関節置換術の際にこの人工股関節用ユニットを適用しておくことで、人工股関節再置換術が必要となった場合にも容易に対応することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、人工股関節再置換術において骨頭ボール部材の交換を容易に行うことを可能とする人工股関節用コンポーネントを提供することができ、また、その人工股関節用コンポーネントを備える人工股関節用ユニットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、人工股関節において用いられ、大腿骨の臼蓋側に配置されてボール状に形成された骨頭ボール部材と、大腿骨に一端側が埋植される棒状に形成されたステム部材の他端側の端部と、の間に配置される人工股関節用コンポーネント、及び、その人工股関節用コンポーネントを備える人工股関節用ユニットとして広く適用することができるものである。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る人工股関節用ユニット1を示す断面図であり、大腿骨100及び骨盤101の断面の一部とともに示している。人工股関節用ユニット1は、スリーブ部材11、骨頭ボール部材12、及びステム部材13を備えて構成されている。図1では、スリーブ部材11、骨頭ボール部材12、及びステム部材13が組み合わされた状態の人工股関節用ユニット1が、人工股関節として適用された状態を示している。尚、図1は、人工股関節置換術によって、人工股関節用ユニット1が人工股関節において適用された場合を例示したものである。また、後述するように、スリーブ部材11は、本発明の第1実施形態に係る人工股関節用コンポーネントを構成している。そして、骨頭ボール部材12の破損が生じた場合には、人工股関節再置換術が行われ、ステム部材13及び後述の臼蓋カップ102は温存され、スリーブ部材11及び骨頭ボール部材12が新たなものに交換されることになる。
【0030】
図2は、人工股関節用ユニット1におけるスリーブ部材11、骨頭ボール部材12、及びステム部材13の一部を拡大して示す断面図である(尚、ステム部材13については一部断面を示している)。図1及び図2に示すように、骨頭ボール部材12は、その外形が球面部分を構成するボール状に形成されており、大腿骨100において骨盤101の臼蓋101a側に配置される。そして、この骨頭ボール部材12は、臼蓋101aに配置されるとともに外側半球殻部材102a及び内側半球殻部材102bを有する二層構造の臼蓋カップ102に対して、外形の球面部分において摺動するように配置されている。また、骨頭ボール部材12には、一方に向かって開口形成されてスリーブ部材11が嵌合する嵌合用穴12aが設けられている。この嵌合用穴12aは、開口側から奥側に向かって緩やかにテーパ状にすぼまる円錐曲面の一部を成すように形成されている。尚、骨頭ボール部材12は、セラミックス材料により形成されている。
【0031】
図1及び図2に示すステム部材13は、棒状に形成されており、その一端側が大腿骨100の髄腔部100aに対して埋植される。ステム部材13の他端側の端部13aには、後述するスリーブ部材11が取り付けられる。そして、この端部13aには、取り付けられるスリーブ部材11を支持するための支持穴13bが形成されている。尚、ステム部材13は、生体埋植用に医療機器としての認可承認を得たチタン合金、コバルトクロム合金、ステンレス鋼などの金属により形成されている。
【0032】
図3は、スリーブ部材11の断面図である。図1乃至図3に示すスリーブ部材11は、人工股関節において用いられ、骨頭ボール部材12とステム部材13の他端側の端部13aとの間に配置される人工股関節用コンポーネントを構成している。従って、スリーブ部材11は、人工股関節用ユニット1の構成部材としてだけでなく、人工股関節再置換術において、人工股関節用コンポーネントとして単独で適用することもできる。尚、スリーブ部材11は、生体埋植用に医療機器としての認可承認を得たチタン合金、コバルトクロム合金、ステンレス鋼などの金属により形成されている。
【0033】
図2及び図3によく示すように、スリーブ部材11は、本体部14と、蓋部15と、開口縁支持部16と、嵌合支持部17とを備えて構成されている。本体部14は、スリーブ部材11において、外周が緩やかにすぼむ円錐曲面の一部を成す円錐筒状の部分として設けられている。そして、この本体部14は、骨頭ボール部材12においてテーパ状の穴として形成された嵌合用穴12aにその外周部分で摺接して嵌合するように構成されている。また、本体部14には、ステム部材13の他端側の端部13aが挿入される挿入穴18が形成されている。
【0034】
スリーブ部材11の蓋部15は、本体部14と一体に形成されており、本体部14における挿入穴18の開口とは反対側の端部を塞ぐ蓋状の部分として設けられている。即ち、この蓋部15は、挿入穴18の底部分を構成している。また、蓋部15には、空気の通過を許容するための空気通路穴20が複数形成されている。スリーブ部材11が骨頭ボール部材12の嵌合用孔12aに本体部14の外周部分で摺接して嵌合するときに、スリーブ部材11と骨頭ボール部材12との間の空気が蓋部15に設けられた空気通路穴20を介して逃がされ、スリーブ部材11と骨頭ボール部材12との精密な嵌合が行われることになる。
【0035】
図2及び図3によく示す開口縁支持部16及び嵌合支持部17は、本体部14の内側に向かって突出するように設けられて、ステム部材13の端部13aと当接することで本体部11をステム部材13に対して支持する本実施形態の支持部として設けられている。
【0036】
開口縁支持部16は、本体部14において挿入穴18の開口を区画する縁部分の周方向に沿って延びるとともに内側に突出してステム部材13の端部13aの周囲に当接するように形成されている。この開口縁支持部16においてステム部材13と当接する部分は、挿入穴18の開口側から奥側に向かって緩やかにすぼまる円錐曲面の一部を成すように形成されている。これにより、開口縁支持部16は、円錐曲面の一部を成すようにテーパ状に緩やかにすぼまるステム部材13の端部13aの外周に対して、くさび効果による荷重が生じた状態で確実に嵌合するように構成されている。
【0037】
また、開口縁支持部16は、挿入穴18の開口の縁部分から突出してステム部材13の端部13aに当接する構成となっており、これにより、本体部14における挿入穴18を区画する内周とステム部材13の端部13aの外周との接触を阻止するように規制する本実施形態の接触規制部を構成している。即ち、本実施形態では、接触規制部が、開口縁支持部16として設けられ、支持部の機能を兼ねている。そして、接触規制部である開口縁支持部16は、本体部14の内周とステム部材13の端部13aの外周とが空間を隔てて対向するように、本体部14の内周とステム部材13の端部13aの外周との接触を規制している。このように、本実施形態では、本体部14の内周とステム部材13の端部13aの外周との間の空間領域として、本体部14の内周とステム部材13の端部13aの外周との干渉が防止される干渉防止領域19が形成されている(図2参照)。
【0038】
嵌合支持部17は、蓋部15から本体部14の内側に突出してステム部材13の端部13aに形成された支持穴13bに嵌合するように形成されている。この嵌合支持部17の外周は、蓋部15から突出する方向に向かって緩やかにすぼまる円錐曲面の一部を成すテーパ状に形成されている。そして、支持穴13bも同様に、穴の奥側に向かって緩やかにすぼまる円錐曲面の一部を成すテーパ穴状に形成されている。これにより、嵌合支持部17は、支持穴13bに対して、くさび効果による荷重が生じた状態で確実に嵌合するように構成されている。尚、嵌合支持部17及び支持穴13bは、必ずしも円錐曲面の一部を成す形状に形成されていなくてもよく、円柱曲面同士で嵌合するものや円柱曲面と円錐曲面で嵌合するものなど、種々変更して実施してもよい。
【0039】
次に、本実施形態の構成が、人工股関節置換術及び人工股関節再置換術において適用される場合について説明する。人工股関節置換術においては、図1に示すように、骨盤101の臼蓋101aに対して臼蓋カップ102が配置され、大腿骨100に対して人工股関節用ユニット1が配置される。そして、ステム部材13の一端側が大腿骨100の髄腔部100aに埋植され、ステム部材13の他端側の端部13aには、スリーブ部材11及び骨頭ボール部材12が取り付けられる。スリーブ部材11は、その挿入穴18にステム部材13の端部13aが挿入された状態で、開口縁支持部16でステム部材13の端部13aの外周に嵌合するとともに嵌合支持部17で支持穴13bに嵌合することで、ステム部材13に対して支持される。また、骨頭ボール部材12は、嵌合用穴12aでスリーブ部材11と嵌合するとともに、外形の球面部分が臼蓋カップ102に摺接するように配置される。
【0040】
上記のように人工股関節置換術が行われた後、経年劣化等の各種の要因によって骨頭ボール部材12が破損した場合には、人工股関節再置換術が行われる。この場合には、ステム部材13の端部13aに傷が発生していたり破損片等の微小な残材の付着が想定される場合であっても、ステム部材13は交換されずに、人工股関節用コンポーネントとしてのスリーブ部材11と、骨頭ボール部材12とについては、新たなものに交換される。新たなスリーブ部材11は、交換が行われなかったステム部材13に対して、上記と同様に支持部(16、17)にて支持されるように取り付けられる。そして、そのスリーブ部材11に対して、新たな骨頭ボール部材12が、上記と同様に嵌合により取り付けられる。
【0041】
以上説明した人工股関節用コンポーネントであるスリーブ部材11によると、セラミックス製の骨頭ボール部材12の破損により人工股関節再置換術を行う場合には、術者は、スリーブ部材11をその挿入穴18にステム部材13の他端側の端部13aを挿入させるように配置し、新たなセラミックス製の骨頭ボール部材12をスリーブ部材11に嵌合させるように配置することができる。このとき、本体部14の内周とステム部材13の端部13aの外周とが接触規制部である開口縁支持部16によって接触が阻止されているため、本体部14の内周とステム部材13の端部13aの外周との干渉が防止されることになる。このため、骨頭ボール部材12の破損によって、ステム部材13の端部13aに傷が生じていたり破損片等の微小な残材が付着していたりしても、その傷の部分や残材と本体部14の内周とが干渉してスリーブ部材11をステム部材13の端部13aに取り付ける際に影響を受けてしまうことが抑制される。これにより、術者は、人工股関節再置換術の際に、ステム部材13を交換することなく、大腿骨100に一端側が埋植されたステム部材13に対してスリーブ部材11を適正に取り付けることを容易に行うことができる。そして、ステム部材13に取り付けたスリーブ部材11に対してセラミックス製の新たな骨頭ボール部材12を容易に取り付けることができる。
【0042】
従って、本実施形態によると、人工股関節再置換術において、骨頭ボール部材12の交換を容易に行うことを可能とする、人工股関節用コンポーネントであるスリーブ部材11を提供することができる。
【0043】
また、スリーブ部材11によると、本体部14をステム部材13に対して支持する支持部(16、17)が、本体部14の内部に突出してステム部材13の端部13aと当接するように設けられている。このため、本体部14の内周とステム部材13の端部13aの外周との干渉が防止される干渉防止領域19が、支持部(16、17)によって占有されてしまうことが抑制される。これにより、支持部(16、17)を設けることで干渉防止領域19の機能が損なわれてしまうことが抑制されることになる。従って、本体部14の内周とステム部材13の端部13aの外周との干渉が防止された状態で、本体部14をステム部材13に対して安定して支持することができる。
【0044】
また、スリーブ部材11によると、接触規制部である開口縁支持部16が支持部の機能を兼ねて設けられるため、接触規制部と支持部とを別々に設ける場合に比して、接触規制部及び支持部の機能を少ない構成要素で効率よく実現することができる。
【0045】
また、スリーブ部材11によると、開口縁支持部16が、挿入穴18の開口の縁部分の周方向に沿って設けられるため、干渉防止領域19が、支持部である開口縁支持部16によって占有されてしまうことが防止される。このため、開口縁支持部16を設けることで干渉防止領域19の機能が損なわれることがない。また、開口縁支持部16は挿入穴18の開口の縁部分において支持するため、本体部14をより安定してステム部材13に対して容易に支持することができる。従って、本体部14の内周とステム部材13の端部13aの外周との干渉が確実に防止された状態で、本体部14をステム部材13に対してより安定して容易に支持することができる。
【0046】
また、スリーブ部材11によると、嵌合支持部17が、蓋部15から突出してステム部材13の端部13aに嵌合するように設けられるため、干渉防止領域19が、支持部である嵌合支持部17によって占有されてしまうことが防止される。このため、嵌合支持部17を設けることで干渉防止領域19の機能が損なわれることがない。また、嵌合支持部17はステム部材13の端部13aに嵌合して支持するため、本体部14をより安定してステム部材13に対して容易に支持することができる。従って、本体部14の内周とステム部材13の端部13aの外周との干渉が確実に防止された状態で、本体部14をステム部材13に対してより安定して容易に支持することができる。
【0047】
また、スリーブ部材11によると、接触規制部である開口縁支持部16によって本体部14の内周とステム部材13の端部13aの外周との間に空間を形成するという簡易な構成によって、本体部14の内周とステム部材13の端部13aの外周との干渉を確実に防止することができる。
【0048】
また、本実施形態の人工股関節用ユニット1によると、当初の人工股関節置換術の際にこの人工股関節用ユニット1を適用しておくことで、人工股関節再置換術が必要となった場合にも容易に対応することができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図4は、本発明の第2実施形態に係る人工股関節用ユニット2を示す一部断面を含む図である。人工股関節用ユニット2は、スリーブ部材21、骨頭ボール部材12、及びステム部材23を備えて構成されている。尚、図4では、ステム部材23については、大腿骨に埋植される一端側の図示を省略し、他端側のみを図示している。人工股関節用ユニット2は、第1実施形態の人工股関節用ユニット1と同様に用いられ、人工股関節置換術によって人工股関節において適用される。また、スリーブ部材21は、本発明の第2実施形態に係る人工股関節用コンポーネントを構成している。そして、骨頭ボール部材12の破損が生じた場合には、人工股関節再置換術が行われ、ステム部材23及び臼蓋カップ(図示せず)は温存され、スリーブ部材21及び骨頭ボール部材12が新たなものと交換されることになる。
【0050】
図4に示す骨頭ボール部材12は、第1実施形態の骨頭ボール部材12と同様の構成であり、嵌合用穴12aも含めて図面において同一の符号を付して説明を省略する。ステム部材23は、第1実施形態のステム部材13と同様に、チタン合金やコバルトクロム合金等の金属にて棒状に形成されており、その一端側(図示せず)が大腿骨の髄腔部に対して埋植され、その他端側の端部23aにはスリーブ部材21が取り付けられる。尚、ステム部材23の端部23aには、第1実施形態のステム部材13とは異なり、支持穴は形成されていない。
【0051】
図4に示すスリーブ部材21は、人工股関節において用いられ、骨頭ボール部材12とステム部材23の他端側の端部23aとの間に配置される人工股関節用コンポーネントを構成している。従って、スリーブ部材21は、人工股関節用ユニット2の構成部材としてだけでなく、人工股関節再置換術において、人工股関節用コンポーネントとして単独で適用することもできる。尚、スリーブ部材21は、第1実施形態のスリーブ部材11と同様に、チタン合金やコバルトクロム合金などの金属により形成されている。
【0052】
スリーブ部材21は、本体部24と、蓋部25と、開口縁支持部26と、ステム先端支持部27とを備えて構成されている。本体部24は、スリーブ部材21において、外周が緩やかにすぼむ円錐曲面の一部を成す円錐筒状の部分として設けられている。そして、この本体部24は、骨頭ボール部材12においてテーパ状の穴として形成された嵌合用穴12aにその外周部分で摺接して嵌合するように構成されている。また、本体部24には、ステム部材23の端部23aが挿入される挿入穴28が形成されている。
【0053】
スリーブ部材21の蓋部25は、本体部24と一体に形成されており、本体部24における挿入穴28の開口とは反対側の端部を塞ぐ蓋状の部分として設けられ、挿入穴18の底部分を構成している。また、蓋部25には、空気の通過を許容するための空気通路穴30が中央に形成されている。第1実施形態と同様に、スリーブ部材21が骨頭ボール部材12の嵌合用孔12aに嵌合するときに、空気通路穴30を介して空気が逃がされ、スリーブ部材21と骨頭ボール部材12との精密な嵌合が行われることになる。
【0054】
図5は、図4において破線の円Aで囲んだ部分を拡大して示す拡大断面図である。図4及び図5に示す開口縁支持部26及びステム先端支持部27は、本体部24の内側に向かって突出するように設けられて、ステム部材23の端部23aと当接することで本体部21をステム部材23に対して支持する本実施形態の支持部として設けられている。
【0055】
図4に示す開口縁支持部26は、本体部24において挿入穴28の開口を区画する縁部分の周方向に沿って延びるとともに内側に突出してステム部材23の端部23aの周囲に当接するように形成されている。この開口縁支持部26においてステム部材23と当接する部分は、挿入穴28の開口側から奥側に向かって緩やかにすぼまる円錐曲面の一部を成すように形成されている。これにより、開口縁支持部26は、円錐曲面の一部を成すようにテーパ状に緩やかにすぼまるステム部材23の端部23aの外周に対して、くさび効果による荷重が生じた状態で確実に嵌合するように構成されている。
【0056】
図4及び図5に示すステム先端支持部27は、本体部24における挿入穴28の開口とは反対側で周方向に沿って延びるように形成されている。そして、ステム先端支持部27は、ステム部材23の端部23aの先端に嵌合するように、本体部24の内側に突出してステム部材23の端部23aの先端の周囲に当接するよう形成されている。このステム先端支持部27においてステム部材23と当接する部分は、開口縁支持部26と同様に、挿入穴28の奥側に向かって緩やかにすぼまる円錐曲面の一部を成すように形成されている。これにより、ステム先端支持部27は、円錐曲面の一部を成すようにテーパ状に緩やかにすぼまるステム部材23の端部23aの先端の外周に対して、くさび効果による荷重が生じた状態で確実に嵌合するように構成されている。尚、ステム先端支持部27及びステム部材23の端部23aの先端は、必ずしも円錐曲面の一部を成す形状に形成されていなくてもよく、円柱曲面同士で嵌合するものや円柱曲面と円錐曲面で嵌合するものなど、種々変更して実施してもよい。
【0057】
また、開口縁支持部26及びステム先端支持部27は、上述のように、挿入穴28の開口の縁部分とその縁部分の反対側とにおいてそれぞれ突出してステム部材23の端部23aに当接する構成となっている。これにより、開口縁支持部26及びステム先端支持部27は、本体部24における挿入穴28を区画する内周とステム部材23の端部23aの外周との接触を阻止するように規制する本実施形態の接触規制部を構成している。即ち、第2実施形態では、接触規制部が、開口縁支持部26及びステム先端支持部27として設けられ、支持部の機能を兼ねている。そして、接触規制部である開口縁支持部26及びステム先端支持部27は、本体部24の内周とステム部材23の端部23aの外周とが空間を隔てて対向するように、本体部24の内周とステム部材23の端部23aの外周との接触を規制している。このように、第2実施形態では、本体部24の内周とステム部材23の端部23aの外周との間の空間領域として、本体部24の内周とステム部材23の端部23aの外周との干渉が防止される干渉防止領域29が形成されている(図4参照)。
【0058】
次に、本実施形態の構成が、人工股関節置換術及び人工股関節再置換術において適用される場合について説明する。人工股関節置換術においては、第1実施形態と同様に、ステム部23の一端側が大腿骨の髄腔部に埋植され、ステム部材23の他端側の端部23aには、スリーブ部材21及び骨頭ボール部材12が取り付けられる。スリーブ部材21は、その挿入穴28にステム部材23の端部23aが挿入された状態で、開口縁支持部26及びステム先端支持部27でステム部材23の端部23aの根元側及び先端側の2箇所で嵌合することで、ステム部材23に対して支持される。また、骨頭ボール部材12は、嵌合用穴12aでスリーブ部材21と嵌合するとともに、外形の球面部分が臼蓋に配置された臼蓋カップに摺接するように配置される。
【0059】
上記のように人工股関節置換術が行われた後、経年劣化等の各種の要因によって骨頭ボール部材12が破損した場合には、人工股関節再置換術が行われる。この場合には、第1実施形態と同様に、ステム部材23の端部23aに傷が発生していたり破損片等の微小な残材の付着が想定される場合であっても、ステム部材23は交換されずに、人工股関節用コンポーネントとしてのスリーブ部材21と、骨頭ボール部材12とについては、新たなものに交換される。新たなスリーブ部材21は、交換が行われなかったステム部材23に対して、上記と同様に支持部(26、27)にて支持されるように取り付けられる。そして、そのスリーブ部材21に対して、新たな骨頭ボール部材12が、上記と同様に嵌合により取り付けられる。
【0060】
尚、本実施形態の構成では、当初の人工股関節置換術において人工股関節用ユニット2が適用されていなかった場合であっても、人工股関節用コンポーネントとしてのスリーブ部材21を用いることで、人工股関節再置換術において、ステム部材を交換せずに容易に骨頭ボール部材の交換を行うことができる。当初の人工股関節置換術においてステム部材に骨頭ボール部材が直接に嵌合した形式のものが用いられており、骨頭ボール部材が破損した場合、ステム部材の端部に傷や微小な残材の付着が発生することになる。この場合、人工股関節再置換術において、術者は、傷や微小な残材の付着が発生したステム部材の他端側の端部が挿入穴28に挿入されるようにスリーブ部材21を配置し、支持部(26、27)にてスリーブ部材21の本体部24をステム部材の端部に支持させることができる。このとき、接触規制部である支持部(26、27)によって干渉防止領域29が形成されているため、ステム部材の端部に生じた傷や微小な残材の付着の影響を受けることなく、スリーブ部材21を容易にステム部材に対して取り付けることができる。そして、新たに取り付けたスリーブ部材21に対して新たな骨頭ボール部材12を嵌合させて取り付けることができる。従って、スリーブ部材21と骨頭ボール部材12とで構成される人工股関節用ユニットを用いて、人工股関節再置換術を容易に行うことができる。
【0061】
以上説明した人工股関節用コンポーネントであるスリーブ部材21によると、人工股関節再置換術において、このスリーブ部材21をステム部材23の端部23aに取り付け、新たなセラミックス製の骨頭ボール部材12をスリーブ部材21に嵌合させて配置することができる。このとき、本体部24の内周とステム部材23の端部23aの外周とが接触規制部である開口縁支持部26及びステム先端支持部27によって接触が阻止されているため、本体部24の内周とステム部材23の端部23aの外周との干渉が防止されることになる。このため、骨頭ボール部材12の破損によって、ステム部材23の端部23aに傷が生じていたり微小な残材が付着していたりしても、その傷の部分や残材と本体部24の内周とが干渉してスリーブ部材21をステム部材23の端部23aに取り付ける際に影響を受けてしまうことが抑制される。これにより、術者は、人工股関節再置換術の際に、ステム部材23を交換することなく、大腿骨に一端側が埋植されたステム部材23に対してスリーブ部材21を適正に取り付けることを容易に行うことができる。そして、ステム部材23に取り付けたスリーブ部材21に対してセラミックス製の新たな骨頭ボール部材12を容易に取り付けることができる。
【0062】
従って、第2実施形態によると、第1実施形態と同様に、人工股関節再置換術において、骨頭ボール部材12の交換を容易に行うことを可能とする、人工股関節用コンポーネントであるスリーブ部材21を提供することができる。
【0063】
また、スリーブ部材21によると、ステム先端支持部27が、ステム部材23の端部23aの先端に嵌合するように設けられるため、干渉防止領域29がステム先端支持部29によって占有されてしまうことが防止される。このため、ステム先端支持部29を設けることで干渉防止領域29の機能が損なわれることがない。また、ステム先端支持部29はステム部材23の端部23aの先端に嵌合して支持するため、本体部24をより安定してステム部材23に対して容易に支持することができる。従って、本体部24の内周とステム部材23の端部23aの外周との干渉が確実に防止された状態で、本体部24をステム部材23に対してより安定して容易に支持することができる。尚、開口縁支持部26においても、第1実施形態と同様に、本体部24の内周とステム部材23の端部23aの外周との干渉が確実に防止された状態で、本体部24をステム部材23に対してより安定して容易に支持することができる。
【0064】
また、スリーブ部材21によると、接触規制部である開口縁支持部16及びステム先端支持部27が支持部の機能を兼ねて設けられるため、接触規制部と支持部とを別々に設ける場合に比して、接触規制部及び支持部の機能を少ない構成要素で効率よく実現することができる。そして、接触規制部である開口縁支持部26及びステム先端支持部27によって本体部24の内周とステム部材23の端部23aの外周との間に空間を形成するという簡易な構成によって、本体部24の内周とステム部材23の端部23aの外周との干渉を確実に防止することができる。
【0065】
また、本実施形態の人工股関節用ユニット2によると、当初の人工股関節置換術の際にこの人工股関節用ユニット2を適用しておくことで、人工股関節再置換術が必要となった場合にも容易に対応することができる。また、当初の人工股関節置換術において人工股関節用ユニット2が適用されていなかった場合であっても、人工股関節再置換術において、スリーブ部材21と骨頭ボール部材12とで構成される人工股関節用ユニットに交換することで、ステム部材を交換することなく容易に人工股関節再置換術を行うことができる。
【0066】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図6は、本発明の第3実施形態に係る人工股関節用ユニット3を示す一部断面を含む図である。人工股関節用ユニット3は、スリーブ部材31、骨頭ボール部材12、及びステム部材23を備えて構成されている。尚、図6では、ステム部材23については、大腿骨に埋植される一端側の図示を省略し、他端側のみを図示している。人工股関節用ユニット3は、第1実施形態の人工股関節用ユニット1と同様に用いられ、人工股関節置換術によって人工股関節において適用される。また、スリーブ部材31は、本発明の第3実施形態に係る人工股関節用コンポーネントを構成している。そして、骨頭ボール部材12の破損が生じた場合には、人工股関節再置換術が行われ、ステム部材23及び臼蓋カップ(図示せず)は温存され、スリーブ部材31及び骨頭ボール部材12が新たなものと交換されることになる。
【0067】
図6に示す骨頭ボール部材12は、第1実施形態の骨頭ボール部材12と同様の構成であり、嵌合用穴12aも含めて図面において同一の符号を付して説明を省略する。また、ステム部材23は、第2実施形態のステム部材23と同様の構成であり、その他端側の端部23aも含めて図面において同一の符号を付して説明を省略する。
【0068】
図6に示すスリーブ部材31は、人工股関節において用いられ、骨頭ボール部材12とステム部材23の他端側の端部23aとの間に配置される人工股関節用コンポーネントを構成している。従って、スリーブ部材31は、人工股関節用ユニット3の構成部材としてだけでなく、人工股関節再置換術において、人工股関節用コンポーネントとして単独で適用することもできる。尚、スリーブ部材31は、第1実施形態のスリーブ部材11と同様に、チタン合金やコバルトクロム合金などの金属により形成されている。
【0069】
スリーブ部材31は、本体部34と、蓋部35と、開口縁支持部36とを備えて構成されている。本体部34は、スリーブ部材31において、外周が緩やかにすぼむ円錐曲面の一部を成す円錐筒状の部分として設けられている。そして、この本体部34は、骨頭ボール部材12においてテーパ状の穴として形成された嵌合用穴12aにその外周部分で摺接して嵌合するように構成されている。また、本体部34には、ステム部材23の他端側の端部23aが挿入される挿入穴38が形成されている。
【0070】
図7は、スリーブ部材31のみを挿入穴38の開口側から見た図である。図6及び図7に示すように、スリーブ部材31の蓋部35は、本体部34と一体に形成されており、本体部34における挿入穴38の開口とは反対側の端部を塞ぐ蓋状の部分として設けられ、挿入穴38の底部分を構成している。また、蓋部35には、後述する骨セメントの通過を許容するためのセメント逃がし穴40aが中央に形成されている。
【0071】
図6及び図7に示す開口縁支持部36は、本体部34の内側に向かって突出するように設けられて、ステム部材23の端部23aと当接することで本体部31をステム部材23に対して支持する本実施形態の支持部として設けられている。この開口縁支持部36は、本体部34において挿入穴38の開口を区画する縁部分の周方向に沿って延びるとともに内側に突出してステム部材23の端部23aの周囲に当接するように形成されている。また、開口縁支持部36は、挿入穴38の開口の縁部分の周方向に沿って複数に分散して配置されており、隣り合う開口縁支持部36の間には、骨セメントの通過を許容するためのセメント逃がし溝40bがそれぞれ形成されている。また、開口縁支持部36においてステム部材23と当接する部分は、挿入穴38の開口側に向かって広がる曲面を成すように形成されている。これにより、開口縁支持部36は、円錐曲面の一部を成すようにテーパ状に緩やかにすぼまるステム部材23の端部23aの外周に対して、くさび効果による荷重が生じた状態で確実に嵌合するように構成されている。
【0072】
また、開口縁支持部36は、上述のように、挿入穴38の開口の縁部分で突出してステム部材23の端部23aに当接する構成となっている。これにより、開口縁支持部36は、本体部34における挿入穴38を区画する内周とステム部材23の端部23aの外周との接触を阻止するように規制する本実施形態の接触規制部を構成している。即ち、第3実施形態では、接触規制部が、開口縁支持部36として設けられ、支持部の機能を兼ねている。尚、人工股関節用ユニット3が用いられる場合においては、接触規制部である開口縁支持部36によって本体部34の内周とステム部材23の端部23aの外周との間で接触が阻止された領域には、骨セメント37が充填される。このように、第3実施形態では、骨セメント37が充填された領域として、本体部34の内周とステム部材23の端部23aの外周との干渉が防止される干渉防止領域39が形成されている(図6参照)。
【0073】
次に、本実施形態の構成が、人工股関節置換術及び人工股関節再置換術において適用される場合について説明する。人工股関節置換術においては、第1実施形態と同様に、ステム部23の一端側が大腿骨の髄腔部に埋植され、ステム部材23の他端側の端部23aには、スリーブ部材31及び骨頭ボール部材12が取り付けられる。スリーブ部材31は、その挿入穴38にステム部材23の端部23aが挿入された状態で、開口縁支持部36でステム部材23の端部23aに嵌合することで、ステム部材23に対して支持される。そして、本体部34の内周とステム部材23の端部23aの外周との間の干渉防止領域39には、骨セメント37が充填される。尚、このとき、充填された骨セメント37の一部は、セメント逃がし穴40a及び複数のセメント逃がし溝40bから排出されることになる。また、骨頭ボール部材12は、嵌合用穴12aでスリーブ部材31と嵌合するとともに、外形の球面部分が臼蓋に配置された臼蓋カップに摺接するように配置される。
【0074】
上記のように人工股関節置換術が行われた後、経年劣化等の各種の要因によって骨頭ボール部材12が破損した場合には、人工股関節再置換術が行われる。この場合には、第1実施形態と同様に、ステム部材23の端部23aに傷が発生していたり破損片等の微小な残材の付着が想定される場合であっても、ステム部材23は交換されずに、人工股関節用コンポーネントとしてのスリーブ部材31と、骨頭ボール部材12とについては、新たなものに交換される。新たなスリーブ部材31は、交換が行われなかったステム部材23に対して、上記と同様に開口縁支持部36にて支持されるように取り付けられる。そして、そのスリーブ部材31に対して、新たな骨頭ボール部材12が、上記と同様に嵌合により取り付けられる。尚、干渉防止領域39には、骨セメント37も新たに充填されることになる。
【0075】
尚、本実施形態の構成では、当初の人工股関節置換術において人工股関節用ユニット3が適用されていなかった場合であっても、人工股関節用コンポーネントとしてのスリーブ部材31を用いることで、人工股関節再置換術において、ステム部材を交換せずに容易に骨頭ボール部材の交換を行うことができる。当初の人工股関節置換術においてステム部材に骨頭ボール部材が直接に嵌合した形式のものが用いられており、骨頭ボール部材が破損した場合、ステム部材の端部に傷や微小な残材の付着が発生することになる。この場合、人工股関節再置換術において、術者は、傷や微小な残材の付着が発生したステム部材の他端側の端部が挿入穴38に挿入されるようにスリーブ部材31を配置し、開口縁支持部36にてスリーブ部材31の本体部34をステム部材の端部に支持させることができる。このとき、接触規制部である開口縁支持部36によって干渉防止領域39が形成されているため、ステム部材の端部に生じた傷や微小な残材の付着の影響を受けることなく、スリーブ部材31を容易にステム部材に対して取り付けることができる。そして、干渉防止領域39に骨セメントを充填し、更に、新たに取り付けたスリーブ部材31に対して新たな骨頭ボール部材12を嵌合させて取り付けることができる。従って、スリーブ部材31と骨頭ボール部材12とで構成される人工股関節用ユニットを用いて、人工股関節再置換術を容易に行うことができる。
【0076】
以上説明した人工股関節用コンポーネントであるスリーブ部材31によると、人工股関節再置換術において、このスリーブ部材31をステム部材23の端部23aに取り付け、新たなセラミックス製の骨頭ボール部材12をスリーブ部材31に嵌合させて配置することができる。このとき、本体部34の内周とステム部材23の端部23aの外周とが接触規制部である開口縁支持部36によって接触が阻止されているため、本体部34の内周とステム部材23の端部23aの外周との干渉が防止されることになる。このため、骨頭ボール部材12の破損によって、ステム部材23の端部23aに傷が生じていたり微小な残材が付着していたりしても、その傷の部分や残材と本体部34の内周とが干渉してスリーブ部材31をステム部材23の端部23aに取り付ける際に影響を受けてしまうことが抑制される。これにより、術者は、人工股関節再置換術の際に、ステム部材23を交換することなく、大腿骨に一端側が埋植されたステム部材23に対してスリーブ部材31を適正に取り付けることを容易に行うことができる。そして、ステム部材23に取り付けたスリーブ部材31に対してセラミックス製の新たな骨頭ボール部材12を容易に取り付けることができる。
【0077】
従って、第3実施形態によると、第1実施形態と同様に、人工股関節再置換術において、骨頭ボール部材12の交換を容易に行うことを可能とする、人工股関節用コンポーネントであるスリーブ部材31を提供することができる。
【0078】
また、スリーブ部材31によると、開口縁支持部36が設けられているため、第1実施形態と同様に、本体部34の内周とステム部材23の端部23aの外周との干渉が確実に防止された状態で、本体部34をステム部材23に対してより安定して容易に支持することができる。また、接触規制部である開口縁支持部36が支持部の機能を兼ねて設けられるため、接触規制部と支持部とを別々に設ける場合に比して、接触規制部及び支持部の機能を少ない構成要素で効率よく実現することができる。また、接触規制部である開口縁支持部36によって形成される干渉防止領域39に骨セメント37を充填することにより、本体部34とステム部材23との結合状態をより安定化させることができる。
【0079】
また、本実施形態の人工股関節用ユニット3によると、当初の人工股関節置換術の際にこの人工股関節用ユニット3を適用しておくことで、人工股関節再置換術が必要となった場合にも容易に対応することができる。また、当初の人工股関節置換術において人工股関節用ユニット3が適用されていなかった場合であっても、人工股関節再置換術において、スリーブ部材31と骨頭ボール部材12とで構成される人工股関節用ユニットに交換することで、ステム部材を交換することなく容易に人工股関節再置換術を行うことができる。
【0080】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図8は、本発明の第4実施形態に係る人工股関節用ユニット4を示す一部断面を含む図である。人工股関節用ユニット4は、スリーブ部材41、骨頭ボール部材12、及びステム部材23を備えて構成されている。尚、図8では、ステム部材23については、大腿骨に埋植される一端側の図示を省略し、他端側のみを図示している。人工股関節用ユニット4は、第1実施形態の人工股関節用ユニット1と同様に用いられ、人工股関節置換術によって人工股関節において適用される。また、スリーブ部材31は、本発明の第4実施形態に係る人工股関節用コンポーネントを構成している。そして、骨頭ボール部材12の破損が生じた場合には、人工股関節再置換術が行われ、ステム部材23及び臼蓋カップ(図示せず)は温存され、スリーブ部材41及び骨頭ボール部材12が新たなものと交換されることになる。
【0081】
図8に示す骨頭ボール部材12は、第1実施形態の骨頭ボール部材12と同様の構成であり、嵌合用穴12aも含めて図面において同一の符号を付して説明を省略する。また、ステム部材23は、第2実施形態のステム部材23と同様の構成であり、その他端側の端部23aも含めて図面において同一の符号を付して説明を省略する。
【0082】
図8に示すスリーブ部材41は、人工股関節において用いられ、骨頭ボール部材12とステム部材23の他端側の端部23aとの間に配置される人工股関節用コンポーネントを構成している。従って、スリーブ部材41は、人工股関節用ユニット4の構成部材としてだけでなく、人工股関節再置換術において、人工股関節用コンポーネントとして単独で適用することもできる。尚、スリーブ部材41は、第1実施形態のスリーブ部材11と同様に、チタン合金やコバルトクロム合金などの金属により形成されている。
【0083】
スリーブ部材41は、本体部44と、蓋部45と、開口縁支持部46とを備えて構成されている。本体部44は、スリーブ部材41において、外周が緩やかにすぼむ円錐曲面の一部を成す円錐筒状の部分として設けられている。そして、この本体部44は、骨頭ボール部材12においてテーパ状の穴として形成された嵌合用穴12aにその外周部分で摺接して嵌合するように構成されている。また、本体部44には、ステム部材23の他端側の端部23aが挿入される挿入穴48が形成されている。また、蓋部45は、本体部44と一体に形成されており、本体部44における挿入穴48の開口とは反対側の端部を塞ぐ蓋状の部分として設けられ、挿入穴48の底部分を構成している。また、蓋部45には、骨セメントの通過を許容するためのセメント逃がし穴50が中央に形成されている。
【0084】
開口縁支持部46は、本体部34の内側に向かって突出するように設けられて、ステム部材23の端部23aと当接することで本体部41をステム部材23に対して支持する本実施形態の支持部として設けられている。この開口縁支持部46は、本体部44において挿入穴48の開口を区画する縁部分の周方向に沿って延びるとともに内側に突出してステム部材23の端部23aの周囲に当接するように形成されている。また、開口縁支持部46においてステム部材23と当接する部分は、挿入穴48の開口側から奥側に向かって緩やかにすぼまる円錐曲面の一部を成すように形成されている。これにより、開口縁支持部46は、円錐曲面の一部を成すようにテーパ状に緩やかにすぼまるステム部材23の端部23aの外周に対して、くさび効果による荷重が生じた状態で確実に嵌合するように構成されている。
【0085】
また、開口縁支持部46は、上述のように、挿入穴48の開口の縁部分で突出してステム部材23の端部23aに当接する構成となっている。これにより、開口縁支持部46は、本体部44における挿入穴48を区画する内周とステム部材23の端部23aの外周との接触を阻止するように規制する本実施形態の接触規制部を構成している。即ち、第4実施形態では、接触規制部が、開口縁支持部46として設けられ、支持部の機能を兼ねている。尚、人工股関節用ユニット4が用いられる場合においては、接触規制部である開口縁支持部46によって本体部44の内周とステム部材23の端部23aの外周との間で接触が阻止された領域には、骨セメント47が充填される。このように、第4実施形態では、骨セメント47が充填された領域として、本体部44の内周とステム部材23の端部23aの外周との干渉が防止される干渉防止領域49が形成されている。
【0086】
次に、本実施形態の構成が、人工股関節置換術及び人工股関節再置換術において適用される場合について説明する。人工股関節置換術においては、第1実施形態と同様に、ステム部23の一端側が大腿骨の髄腔部に埋植され、ステム部材23の他端側の端部23aには、スリーブ部材41及び骨頭ボール部材12が取り付けられる。スリーブ部材41は、その挿入穴48にステム部材23の端部23aが挿入された状態で、開口縁支持部46でステム部材23の端部23aに嵌合することで、ステム部材23に対して支持される。そして、本体部44の内周とステム部材23の端部23aの外周との間の干渉防止領域49には、骨セメント47が充填される。尚、このとき、充填された骨セメント47の一部は、セメント逃がし穴50から排出されることになる。また、骨頭ボール部材12は、嵌合用穴12aでスリーブ部材31と嵌合するとともに、外形の球面部分が臼蓋に配置された臼蓋カップに摺接するように配置される。
【0087】
上記のように人工股関節置換術が行われた後、経年劣化等の各種の要因によって骨頭ボール部材12が破損した場合には、人工股関節再置換術が行われる。この場合には、第1実施形態と同様に、ステム部材23の端部23aに傷が発生していたり破損片等の微小な残材の付着が想定される場合であっても、ステム部材23は交換されずに、人工股関節用コンポーネントとしてのスリーブ部材41と、骨頭ボール部材12とについては、新たなものに交換される。新たなスリーブ部材41は、交換が行われなかったステム部材23に対して、上記と同様に開口縁支持部46にて支持されるように取り付けられる。そして、そのスリーブ部材41に対して、新たな骨頭ボール部材12が、上記と同様に嵌合により取り付けられる。尚、干渉防止領域49には、骨セメント47も新たに充填されることになる。
【0088】
尚、本実施形態の構成では、当初の人工股関節置換術において人工股関節用ユニット4が適用されていなかった場合であっても、人工股関節用コンポーネントとしてのスリーブ部材41を用いることで、人工股関節再置換術において、ステム部材を交換せずに容易に骨頭ボール部材の交換を行うことができる。当初の人工股関節置換術においてステム部材に骨頭ボール部材が直接に嵌合した形式のものが用いられており、骨頭ボール部材が破損した場合、ステム部材の端部に傷や微小な残材の付着が発生することになる。この場合、人工股関節再置換術において、術者は、傷や微小な残材の付着が発生したステム部材の他端側の端部が挿入穴48に挿入されるようにスリーブ部材41を配置し、開口縁支持部46にてスリーブ部材41の本体部44をステム部材の端部に支持させることができる。このとき、接触規制部である開口縁支持部46によって干渉防止領域49が形成されているため、ステム部材の端部に生じた傷や微小な残材の付着の影響を受けることなく、スリーブ部材41を容易にステム部材に対して取り付けることができる。そして、干渉防止領域49に骨セメントを充填し、更に、新たに取り付けたスリーブ部材41に対して新たな骨頭ボール部材12を嵌合させて取り付けることができる。従って、スリーブ部材41と骨頭ボール部材12とで構成される人工股関節用ユニットを用いて、人工股関節再置換術を容易に行うことができる。
【0089】
以上説明した人工股関節用コンポーネントであるスリーブ部材41によると、人工股関節再置換術において、このスリーブ部材41をステム部材23の端部23aに取り付け、新たなセラミックス製の骨頭ボール部材12をスリーブ部材41に嵌合させて配置することができる。このとき、本体部44の内周とステム部材23の端部23aの外周とが接触規制部である開口縁支持部46によって接触が阻止されているため、本体部44の内周とステム部材23の端部23aの外周との干渉が防止されることになる。このため、骨頭ボール部材12の破損によって、ステム部材23の端部23aに傷が生じていたり微小な残材が付着していたりしても、その傷の部分や残材と本体部44の内周とが干渉してスリーブ部材41をステム部材23の端部23aに取り付ける際に影響を受けてしまうことが抑制される。これにより、術者は、人工股関節再置換術の際に、ステム部材23を交換することなく、大腿骨に一端側が埋植されたステム部材23に対してスリーブ部材41を適正に取り付けることを容易に行うことができる。そして、ステム部材23に取り付けたスリーブ部材41に対してセラミックス製の新たな骨頭ボール部材12を容易に取り付けることができる。
【0090】
従って、第4実施形態によると、第1実施形態と同様に、人工股関節再置換術において、骨頭ボール部材12の交換を容易に行うことを可能とする、人工股関節用コンポーネントであるスリーブ部材41を提供することができる。
【0091】
また、スリーブ部材41によると、開口縁支持部46が設けられているため、第1実施形態と同様に、本体部44の内周とステム部材23の端部23aの外周との干渉が確実に防止された状態で、本体部44をステム部材23に対してより安定して容易に支持することができる。また、接触規制部である開口縁支持部46が支持部の機能を兼ねて設けられるため、接触規制部と支持部とを別々に設ける場合に比して、接触規制部及び支持部の機能を少ない構成要素で効率よく実現することができる。また、接触規制部である開口縁支持部46によって形成される干渉防止領域49に骨セメント47を充填することにより、本体部44とステム部材23との結合状態をより安定化させることができる。
【0092】
また、本実施形態の人工股関節用ユニット4によると、当初の人工股関節置換術の際にこの人工股関節用ユニット4を適用しておくことで、人工股関節再置換術が必要となった場合にも容易に対応することができる。また、当初の人工股関節置換術において人工股関節用ユニット4が適用されていなかった場合であっても、人工股関節再置換術において、スリーブ部材41と骨頭ボール部材12とで構成される人工股関節用ユニットに交換することで、ステム部材を交換することなく容易に人工股関節再置換術を行うことができる。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、接触規制部については、必ずしも支持部として設けられていなくてもよく、支持部とは独立した構成として設けられているものであってもよい。また、接触規制部は、必ずしも本体部又は蓋部と一体に形成されていなくてもよく、本体部又は蓋部とは別部材として構成されているものであってもよい。また、接触規制部及び支持部の配置や形状については、実施形態において例示したものに限らず、種々変更して実施することもできる。また、スリーブ部材の蓋部については、必ずしも設けられていなくてもよい。また、第1及び第2実施形態では、干渉防止領域が空間として構成されたものを例示したが、この干渉防止領域に骨セメントが充填されるものであってもよい。また、第3及び第4実施形態では、干渉防止領域に骨セメントが充填されたものを例示したが、この干渉防止領域が空間として構成されるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、人工股関節において用いられ、大腿骨の臼蓋側に配置されてボール状に形成された骨頭ボール部材と、大腿骨に一端側が埋植される棒状に形成されたステム部材の他端側の端部と、の間に配置される人工股関節用コンポーネント、及び、その人工股関節用コンポーネントを備える人工股関節用ユニットとして、広く適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の第1実施形態に係る人工股関節用ユニットを示す断面図であって、大腿骨及び骨盤の断面の一部とともに示した図である。
【図2】図1に示す人工股関節用ユニットにおけるスリーブ部材、骨頭ボール部材、及びステム部材の一部を拡大して示す断面図である。
【図3】図2に示す人工股関節用ユニットにおけるスリーブ部材の断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る人工股関節用ユニットにおけるスリーブ部材、骨頭ボール部材、及びステム部材の一部を拡大して示す断面図である。
【図5】図4において破線の円Aで囲んだ部分を拡大して示す拡大断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る人工股関節用ユニットにおけるスリーブ部材、骨頭ボール部材、及びステム部材の一部を拡大して示す断面図である。
【図7】図6に示すスリーブ部材のみをその挿入穴の開口側から見た図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る人工股関節用ユニットにおけるスリーブ部材、骨頭ボール部材、及びステム部材の一部を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0096】
1 人工股関節用ユニット
11 スリーブ部材(人工股関節用コンポーネント)
12 骨頭ボール部材
12a 嵌合用穴
13 ステム部材
13a ステム部材の他端側の端部
14 本体部
16 開口縁支持部(支持部、接触規制部)
17 嵌合支持部(支持部)
18 挿入穴
100 大腿骨
101a 臼蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工股関節において用いられ、大腿骨の臼蓋側に配置されてボール状に形成された骨頭ボール部材と、大腿骨に一端側が埋植される棒状に形成されたステム部材の他端側の端部と、の間に配置される、人工股関節用コンポーネントであって、
前記骨頭ボール部材に形成された嵌合用穴に嵌合するとともに、前記ステム部材の他端側の端部が挿入される挿入穴が形成されたスリーブ状の本体部と、
前記本体部における前記挿入穴を区画する内周の少なくとも一部と前記ステム部材の他端側の端部の外周との接触を阻止するように規制する接触規制部と、
を備えていることを特徴とする、人工股関節用コンポーネント。
【請求項2】
請求項1に記載の人工股関節用コンポーネントであって、
前記本体部の内側に向かって突出するように設けられ、前記ステム部材の他端側の端部と当接することで前記本体部を前記ステム部材に対して支持する支持部を更に備えていることを特徴とする、人工股関節用コンポーネント。
【請求項3】
請求項2に記載の人工股関節用コンポーネントであって、
前記接触規制部が前記支持部として設けられていることを特徴とする、人工股関節用コンポーネント。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の人工股関節用コンポーネントであって、
前記支持部として、前記本体部において前記挿入穴の開口を区画する縁部分の周方向に沿って延びるとともに内側に突出して前記ステム部材に当接するように形成された開口縁支持部が設けられていることを特徴とする、人工股関節用コンポーネント。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の人工股関節用コンポーネントであって、
前記本体部と一体に形成され、前記本体部における前記挿入穴の開口とは反対側の端部を塞ぐように設けられた蓋部を更に備え、
前記支持部として、前記蓋部から前記本体部の内側に突出して前記ステム部材の他端側の端部に形成された穴に嵌合するように形成された嵌合支持部が設けられていることを特徴とする、人工股関節用コンポーネント。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の人工股関節用コンポーネントであって、
前記支持部として、前記本体部における前記挿入穴の開口とは反対側で周方向に沿って延びるとともに内側に突出して前記ステム部材に当接するように形成され、前記ステム部材の他端側の端部の先端に嵌合するステム先端支持部が設けられていることを特徴とする、人工股関節用コンポーネント。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の人工股関節用コンポーネントであって、
前記接触規制部は、前記本体部の内周と前記ステム部材の他端側の端部の外周とが空間を隔てて対向するように、前記本体部の内周と前記ステム部材の他端側の端部の外周との接触を規制することを特徴とする、人工股関節用コンポーネント。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の人工股関節用コンポーネントであって、
前記接触規制部によって前記本体部の内周と前記ステム部材の他端側の端部の外周との間で接触が阻止された領域には、骨セメントが充填されることを特徴とする、人工股関節用コンポーネント。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の人工股関節用コンポーネントと、
大腿骨の臼蓋側に配置されてボール状に形成された骨頭ボール部材、及び、大腿骨に一端側が埋植される棒状に形成されたステム部材、のうちの少なくともいずれかと、
を備えていることを特徴とする、人工股関節用ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−35603(P2010−35603A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198537(P2008−198537)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(504418084)日本メディカルマテリアル株式会社 (106)
【Fターム(参考)】