説明

人工股関節用ステム

【課題】ステム本体部材に対してネック部材が傾くことを防止でき、かつネック部材とステム本体部材との嵌合部間に生じる微動を防止できる構造を備えた、ネック部を変更可能な人工股関節用ステムを提供すること。
【解決手段】大腿骨に埋入されるステム本体部材2と、ステム本体部材2の上端部に形成された凹部5に嵌合されるネック部材3と、を具備してなる人工股関節用ステム(ステム1)である。対向する面が平行な平行嵌合部4bをテーパ嵌合部4aとは別に有する嵌合部4をネック部材3の端部に設けている。同様に、ステム本体部材2の凹部5(被嵌合部)を、対向する面が平行な平行被嵌合部5bをテーパ被嵌合部5aとは別に有する凹部としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大腿骨の近位部に埋入される人工股関節用ステムに関する。
【背景技術】
【0002】
股関節の疾患や怪我などによって保存的な治療ができない状態までダメージを受けてしまった股関節を人工股関節に置き換える手術(人工股関節置換術(THA:Total Hip Arthroplasty))が従来から行われている。人工股関節は、主に、ステム・骨頭ボール・臼蓋カップという3つのコンポーネント(部品)で構成されている。
【0003】
ここで、下肢の長さの微調整やコンポーネント間などの干渉(インピンジ)防止を行いやすくするために、大腿骨に埋入されるステム本体部材と骨頭ボールが取り付けられるネック部材とに分かれてなるステムが開発されている(例えば、特許文献1〜8)。複数の寸法・形状のネック部材を用意し、これらから患者に最適なネック部材を選択してステム本体部材と嵌合させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4957510号明細書
【特許文献2】米国特許第4822370号明細書
【特許文献3】米国特許第6383225号明細書
【特許文献4】米国特許第5653764号明細書
【特許文献5】米国特許第5135529号明細書
【特許文献6】米国特許第6464728号明細書
【特許文献7】特許第4328911号公報
【特許文献8】特表平10−502284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2〜6に記載されたステムでは、ステム本体部材とネック部材との嵌合部がテーパ形状とされている。ここで、ステム本体部材とネック部材との嵌合部は全面当たりすることが望ましい。しかしながら、ステム本体部材およびネック部材の製作においてテーパ形状の寸法管理は難しい(加工の難易度が高い)。そのため、ステム本体部材とネック部材との嵌合部が全面当たりするように設計したとしても、製作誤差が原因で、ステム本体部材とネック部材との組合せにより当たり状態(嵌合箇所)が変化してしまうことがある。
【0006】
ここで、設計者の意図した当たり状態(嵌合箇所)を実現するには、例えば、図7に示すように、ステム本体部材102の先端部に形成されたテーパ形状の凹部105の奥側(底部)で、ネック部材103のテーパ部104が当たるように(嵌合箇所P)、ステム本体部材102とネック部材103との嵌合部を設計したり、図8に示すように、ステム本体部材202の先端部に形成されたテーパ形状の凹部205の手前側(開口部近く)で、ネック部材203のテーパ部204が当たるように(嵌合箇所P)、ステム本体部材202とネック部材203との嵌合部を設計したりする方法が考えられる。これにより、ステム本体部材とネック部材との嵌合箇所Pが変化することを回避できる。なお、ステム本体部材とネック部材との嵌合箇所Pを、テーパ部の中途位置としてもよい。
【0007】
しかしながら、この方法にも問題がある。図7、図8に示したように、嵌合箇所Pの反対側では、ステム本体部材とネック部材との間に隙間Gが生じてしまう。図7に示した奥当たりタイプのステム本体部材102・ネック部材103を例にとって、図9を参照しつつ隙間Gによる問題点について説明する。ステム本体部材102へのネック部材103の嵌合は、通常、ネック部材103のテーパ部104をステム本体部材102の凹部105へハンマーで打ち込むことによって行われる。ネック部材103をステム本体部材102にハンマーで打ち込み嵌合させたとき、ステム本体部材102に対するネック部材103の角度を調整することが難しい。図9に示したように、B1部、B2部の隙間の大きさがその都度異なってしまうことが多いからである。ほぼセンターでネック部材103が固定される場合もあるが、上方側(点線で示す)または下方側(実線で示す)に片寄ってネック部材103が固定されることが多い。
【0008】
仮に、ネック部材103が上方側に固定されたとすると、ネック部材103には鉛直下方向に荷重が加わるため、最終的には下方側にネック部材103は移動する。一方、ネック部材103が下方側に固定された場合は、上方側に固定された場合に比してネック部材103は安定している。しかしながら、ネック部材103に加わる荷重が歩行などで変動すると、ネック部材103とステム本体部材102との嵌合部間に微動が生じ、ネック部材103とステム本体部材102との嵌合力が低下したり、ネック部材103とステム本体部材102と間で金属摩耗が生じたりすることがある。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ステム本体部材に対してネック部材が傾くことを防止でき、かつネック部材とステム本体部材との嵌合部間に生じる微動を防止できる構造を備えた、ネック部を変更可能な人工股関節用ステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、テーパ形状のテーパ嵌合部とは別に、対向する面が平行な平行嵌合部を設けることで、ネック部材が傾くことを防止できるとともに、ネック部材とステム本体部材との嵌合部間に生じる微動も防止できることを見出した。この知見に基づき本発明が完成するに至ったのである。
【0011】
すなわち、本発明は、大腿骨に埋入されるステム本体部材と、当該ステム本体部材の上端部に形成された凹部に嵌合されるネック部材と、を具備してなる人工股関節用ステムであって、前記ネック部材の端部に形成された嵌合部は、テーパ形状のテーパ嵌合部と、対向する面が平行な平行嵌合部と、を有し、前記ステム本体部材の凹部は、前記テーパ嵌合部が嵌合するテーパ形状のテーパ被嵌合部と、前記平行嵌合部が嵌合する平行被嵌合部と、を有する人工股関節用ステムである。
【0012】
テーパ形状のテーパ嵌合部は、嵌合力確保の役割を担う。これに対して、製作誤差が生じにくい(高い製作精度を得ることができる)平行嵌合部は、ネック部材のガイドの役割を担うとともに、テーパ嵌合部との複合嵌合効果として嵌合部間に生じる微動を抑制する。すなわち、上記構成によると、テーパ嵌合部とは別に、対向する面が平行な平行嵌合部があることで、ネック部材をステム本体部材に嵌合する際に平行嵌合部がガイドとなり、ネック部材が傾くことを防止できる。また、テーパ嵌合部および製作誤差が生じにくい平行嵌合部により、ステム本体部材に対してネック部材がほどよい程度に拘束されネック部材の微動を防止することができる。
【0013】
また本発明において、前記テーパ嵌合部と前記テーパ被嵌合部とが、前記平行嵌合部および前記平行被嵌合部に対して離れた側の端部で当接するように形成されていることが好ましい。
【0014】
この構成によると、テーパ嵌合部における嵌合箇所(当接箇所)の反対側(離れた側)に製作誤差が生じにくい平行嵌合部が設けられることになる。テーパ嵌合部における嵌合箇所と平行嵌合部との間の距離をとることで、ステム本体部材に対してネック部材が傾くこと、およびネック部材とステム本体部材との嵌合部間に生じる微動をより抑えることができる。
【0015】
さらに本発明において、前記ネック部材の前記嵌合部は、当該ネック部材の端から順に、前記平行嵌合部と前記テーパ嵌合部とを有し、前記ステム本体部材の前記凹部は、当該凹部の底側から順に、前記平行被嵌合部と前記テーパ被嵌合部とを有し、前記テーパ嵌合部および前記テーパ被嵌合部の断面が、大腿骨に埋入された状態で内外側方向に長い小判形状とされ、前記平行嵌合部および前記平行被嵌合部の断面が円形とされていることが好ましい。
【0016】
この構成によると、テーパ嵌合部の断面を、大腿骨に埋入された状態で内外側方向に長い小判形状とすることで、同面積の円形形態とする場合に比してテーパ嵌合部の断面係数が大きくなり、ネック部材とステム本体部材との嵌合部の強度が向上する。嵌合部の強度の向上は、ネック部材とステム本体部材との嵌合部間に生じる微動の抑制に寄与する。また、平行嵌合部および平行被嵌合部の断面を円形とすることで加工が行いやすくなり、平行嵌合部および平行被嵌合部の製作精度が向上する。これらにより、ステム本体部材に対してネック部材が傾くこと、およびネック部材とステム本体部材との嵌合部間に生じる微動をさらに抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ステム本体部材に対してネック部材が傾くことを防止できるとともに、ネック部材とステム本体部材との嵌合部間に生じる微動も防止することができる。また、従来品のテーパ嵌合のようにステム本体部材とネック部材との嵌合部の精度を厳しくする必要がないので、製造コストを下げることができる。ステム本体部材とネック部材との嵌合維持力は従来品と同程度であるが、平行部によりネック部材の微動を防止しているので、ネック部材の脱落・破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る嵌合構造を備えた人工股関節用ステムを示す正面図および側面図である。
【図2】図1に示した人工股関節用ステムの嵌合部を示す詳細図である。
【図3】図2に示した嵌合構造の変形例を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る嵌合構造を示す図である。
【図5】図4に示した嵌合構造の変形例を示す図である。
【図6】図4に示した嵌合構造の変形例を示す図である。
【図7】本発明が完成するまでの途中段階に考案した嵌合構造を示す図である。
【図8】本発明が完成するまでの途中段階に考案した嵌合構造を示す図である。
【図9】図7に示した嵌合構造の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、人工股関節は、主に、ステム・骨頭ボール・臼蓋カップという3つのコンポーネント(部品)で構成される。ステムは、大腿骨の髄膣部に一端側が埋入される金属製の部品である。骨頭ボールは、ステムの端部に取り付けられる部品である。臼蓋カップは、磨耗性に優れた内側半球殻部材を有する二層構造の部品であって骨盤の臼蓋に取り付けられる。骨頭ボールは、その球面部分において臼蓋カップの内側半球殻部材の内面と摺動する。本発明は、人工股関節用のこれらコンポーネントのうちステムに関する発明である。
【0020】
(第1実施形態)
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る嵌合構造を備えた人工股関節用ステム1(以下、「ステム1」と呼ぶ)の正面図であり、図1(b)は、その側面図である。
【0021】
図1に示すように、ステム1は、大腿骨に埋入されるステム本体部材2と、ステム本体部材2の上端部に形成された凹部5に嵌合されるネック部材3とからなる。ステム本体部材2およびネック部材3は、生体埋植用に認可承認を得たチタン合金、コバルトクロム合金、ステンレス鋼などの金属により形成されている。ステム本体部材2は、大腿骨に埋入された状態において、近位部側から遠位部側にかけて徐々に細くなる形状となっている。ネック部材3におけるステム本体部材2とは反対側の端部には骨頭ボール(不図示)が取り付けられる。
【0022】
ネック部材3とステム本体部材2との嵌合構造について図2を参照しつつ説明する。図2(a)は、図1(a)のX部拡大断面図であり、図2(b)は、図2(a)のA−A断面図である。
【0023】
(ネック部材)
図2に示すように、ネック部材3の端部には、ステム本体部材2の凹部5に嵌合させるための嵌合部4が形成されている。この嵌合部4は、テーパ形状のテーパ嵌合部4aと、対向する面が平行な平行嵌合部4bとからなる。テーパ嵌合部4aは、ネック部材3の一端に設けられ、平行嵌合部4bは、テーパ嵌合部4aに連続してネック部材3の他端側(骨頭ボール取付側)に向けて設けられている。なお、テーパ嵌合部4aと平行嵌合部4bとの境目を角度変化点Qとして図2(a)に示した(なお、テーパ嵌合部4aと平行嵌合部4bとの境目は、嵌合部4の周方向全体にわたって存在する)。テーパ嵌合部4aの中心線Cと平行嵌合部4bの中心線Cとは一致している。
【0024】
テーパ嵌合部4aおよび平行嵌合部4bの断面は、図2(b)に示したように、ステム本体部材2が大腿骨に埋入された状態で内外側方向に長い小判形状となるように形成されている。小判形状とは、平行する1組の線と、この1組の線の両側に位置し当該1組の線同士を結ぶ2つの半円状の線とからなる形状のことをいう。なお、テーパ嵌合部4aおよび平行嵌合部4bの断面は、楕円形状であってもよいし円形であってもよい(後述するテーパ被嵌合部5aおよび平行被嵌合部5bの断面形状についても同様)。
【0025】
(ステム本体部材)
ステム本体部材2の上端部に形成された凹部5は、ネック部材3のテーパ嵌合部4aが嵌合するテーパ形状のテーパ被嵌合部5aと、ネック部材3の平行嵌合部4bが嵌合する平行被嵌合部5bとからなる。テーパ被嵌合部5aは、凹部5の底側に設けられ、平行被嵌合部5bは、テーパ被嵌合部5aに連続して凹部5の開口側に設けられている。なお、テーパ被嵌合部5aと平行被嵌合部5bとの境目を角度変化点Rとして図2(a)に示した(なお、テーパ被嵌合部5aと平行被嵌合部5bとの境目は、嵌合部4の周方向全体にわたって存在する)。テーパ被嵌合部5aの中心線Cと平行被嵌合部5bの中心線Cとは一致している。
【0026】
テーパ被嵌合部5aおよび平行被嵌合部5bの断面は、ステム本体部材2が大腿骨に埋入された状態で内外側方向に長い小判形状となるように形成されている。
【0027】
ここで、テーパ被嵌合部5aの内壁面の傾斜角度を、テーパ嵌合部4aの外面の傾斜角度よりも僅かに大きくし、ネック部材3のテーパ嵌合部4aとステム本体部材2のテーパ被嵌合部5aとが、テーパ嵌合部4aの端部(凹部5の底側)で嵌合する(嵌合箇所P)ようにネック部材3およびステム本体部材2は設計されている(なお、図2(a)は断面図であるので嵌合箇所を図示すると点のようになるが、テーパ嵌合部4aとテーパ被嵌合部5aとの嵌合は、嵌合部の周方向全体にわたる(他の実施形態および変形例においても同様))。また、この嵌合箇所P(当接箇所)の反対側(離れた側)に平行嵌合部4bおよび平行被嵌合部5bが設けられている。平行嵌合部4bと平行被嵌合部5bとは中間ばめとされる。なお、平行嵌合部4bおよび平行被嵌合部5bは、対向する面が平行なので寸法管理が行いやすい、言い換えれば、製作誤差が生じにくい(高い製作精度を得ることができる)。
【0028】
(手術手技)
大腿骨の骨頭を切断した後、手術用のやすりなどを用いて大腿骨髄膣を開孔する。そして、大腿骨の髄膣部を整えた後、手術用のハンマーで適度に叩きながらステム本体部材2を大腿骨の髄膣部に設置する。その後、ネックトライアルを用いて、適切なネック部材3や骨頭ボールを選定し、ステム本体部材2の凹部5にネック部材3を挿入する。そして、ネック部材3の頭部に専用器具をセットし、専用器具を手術用ハンマーで適度に叩きながらネック部材3をステム本体部材2に嵌合する。
【0029】
本実施形態のステム1(人工股関節用ステム)によると、テーパ嵌合部4aとは別に、対向する面が平行な平行嵌合部4bがあることで、ネック部材3をステム本体部材2にハンマーで嵌合する際に平行嵌合部4bがガイドとなり、ネック部材3が傾くことを防止できる。また、テーパ嵌合部4aおよび製作誤差が生じにくい(高い製作精度を得ることができる)平行嵌合部4bにより、ステム本体部材2に対してネック部材3がほどよい程度に拘束されネック部材3の微動を防止することができる。すなわち、ステム本体部材2に対するネック部材3の嵌合が安定する。
【0030】
また、ステム1では、テーパ嵌合部4aにおける嵌合箇所P(当接箇所)の反対側(離れた側)に製作誤差が生じにくい平行嵌合部4bを設けている。このようにしてテーパ嵌合部4aにおける嵌合箇所Pと平行嵌合部4bとの間の距離をとることで、ステム本体部材2に対してネック部材3が傾くこと、およびネック部材3とステム本体部材2との嵌合部間に生じる微動をより抑えることができる。
【0031】
また、嵌合部には主に内外側方向に人の体重がかかる。嵌合部4の断面を、大腿骨に埋入された状態で内外側方向に長い小判形状とすることで、同面積の円形形態とする場合に比して嵌合部4の断面係数が大きくなり、ネック部材3とステム本体部材2との嵌合部の強度が向上する。嵌合部の強度の向上は、ネック部材3とステム本体部材2との嵌合部間に生じる微動の抑制に寄与する。
【0032】
(第1実施形態の変形例)
図3は、第1実施形態の変形例に係るステム本体部材22およびネック部材23を示す。
本変形例と第1実施形態との相違点は、テーパ嵌合部(またはテーパ被嵌合部)と平行嵌合部(または平行被嵌合部)との位置関係が、本変形例では第1実施形態とは反対にされている点である。以下に、本変形例と第1実施形態との相違点について詳述する。なお、本変形例に関して第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0033】
図3に示したように、ネック部材23の平行嵌合部24bは、当該ネック部材23(嵌合部24)の一端に設けられ、テーパ嵌合部24aは、平行嵌合部24bに連続してネック部材23の他端側に向けて設けられている。同様に、ステム本体部材22の平行被嵌合部25bは、凹部25の底側に設けられ、テーパ被嵌合部25aは、平行被嵌合部25bに連続して凹部25の開口側に設けられている。
【0034】
本変形例では、テーパ被嵌合部25aの内壁面の傾斜角度を、テーパ嵌合部24aの外面の傾斜角度よりも僅かに小さくし、ネック部材23のテーパ嵌合部4aとステム本体部材22のテーパ被嵌合部25aとが、テーパ嵌合部24aの端部(凹部25の開口部)で嵌合する(嵌合箇所P)ようにネック部材23およびステム本体部材22は設計されている。
【0035】
なお、図示を省略したが、テーパ嵌合部24aおよび平行嵌合部24bの断面は、第1実施形態と同じく、ステム本体部材22が大腿骨に埋入された状態で内外側方向に長い小判形状となるように形成されている(テーパ被嵌合部25aおよび平行被嵌合部25bについても同様)。
【0036】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る嵌合構造について図4を参照しつつ説明する。本実施形態においては、ネック部材33の嵌合部34(およびステム本体部材32に形成する被嵌合部である凹部35)の断面形状を小判形状と円形とに分けている。図4(a)は、嵌合構造を示す正面断面図であり、図4(b)は、図4(a)のA−A断面図である。なお、本実施形態に関して、先に説明した実施形態・変形例と同様の構成については説明を省略する(後述する変形例についても同様)。
【0037】
(ネック部材)
図4に示したように、ネック部材33の一端には、断面が円形の平行嵌合部34bが設けられている。そして、この平行嵌合部34bに連続してネック部材33の他端側(骨頭ボール取付側)に向けて断面が小判形状のテーパ嵌合部34aが設けられている。小判形状の長手方向は、ステムが大腿骨に埋入された状態で内外側方向(言い換えれば、人の体重が加わる方向)と一致する向きとされている。
【0038】
図4(b)に示したように、テーパ嵌合部34aと平行嵌合部34bとの境目における当該テーパ嵌合部34aの小判形状の断面に関しては、その短軸方向の寸法(小判形状の幅寸法)を平行嵌合部34bの直径に一致させている(後述するテーパ被嵌合部35aと平行被嵌合部35bとの境目についても同様)。
【0039】
(ステム本体部材)
ステム本体部材32の平行被嵌合部35bは、凹部35の底側に設けられ、テーパ被嵌合部35aは、平行被嵌合部35bに連続して凹部35の開口側に設けられている。平行被嵌合部35bの断面は、円形とされ、テーパ被嵌合部35aの断面は、ステムが大腿骨に埋入された状態で内外側方向に長い小判形状とされている。
【0040】
本実施形態に係る嵌合構造によると、テーパ嵌合部34aの断面を、大腿骨に埋入された状態で内外側方向に長い小判形状とすることで、同面積の円形形態とする場合に比してその断面係数が大きくなり、ネック部材33とステム本体部材32との嵌合部の強度が向上する。嵌合部の強度の向上は、ネック部材33とステム本体部材32との嵌合部間に生じる微動の抑制に寄与する。また、平行嵌合部34bおよび平行被嵌合部35bの断面を円形とすることで加工が行いやすくなり、平行嵌合部34bおよび平行被嵌合部35bの製作精度が向上する。これらの結果、ステム本体部材32に対してネック部材33が傾くこと、およびネック部材33とステム本体部材32との嵌合部間に生じる微動をさらに抑えることができる。
【0041】
(第2実施形態の第1変形例)
図5を参照しつつ第2実施形態に係る嵌合構造の第1変形例について説明する。本変形例と第2実施形態との主な相違点は、断面が小判形状のテーパ嵌合部(またはテーパ被嵌合部)と断面が円形の平行嵌合部(または平行被嵌合部)との位置関係が、本変形例では第2実施形態とは反対にされている点である。図5(a)は、嵌合構造を示す正面断面図であり、図5(b)は、図5(a)のA−A断面図である。
【0042】
図5に示したように、ネック部材43のテーパ嵌合部44aは、当該ネック部材43(嵌合部44)の一端に設けられ、平行嵌合部44bは、テーパ嵌合部44aに連続してネック部材43の他端側に向けて設けられている。同様に、ステム本体部材42のテーパ被嵌合部45aは、凹部45の底側に設けられ、平行被嵌合部45bは、テーパ被嵌合部45aに連続して凹部45の開口側に設けられている。テーパ嵌合部44aの断面は、小判形状部分44a1と円形部分44a2とがあり、図5(a)中に嵌合箇所Pを示したように、テーパ嵌合部44aとテーパ被嵌合部45aとは小判形状部分で嵌合(当接)する。なお、必ずしも、テーパ嵌合部44aの断面を小判形状部分44a1と円形部分44a2とに分ける必要はなく、テーパ嵌合部44aの全ての断面を小判形状としてもよいし、あるいは円形などの形状としてもよい。
【0043】
なお、図5(b)に示したように、テーパ嵌合部44aにおいて、小判形状部分44a1と円形部分44a2との境目における当該小判形状部分44a1の断面に関しては、その長軸方向の寸法(小判形状の長さ寸法)を円形部分44a2の直径に一致させている。
【0044】
(第2実施形態の第2変形例)
図6を参照しつつ第2実施形態に係る嵌合構造の第2変形例について説明する。本変形例と第2実施形態との主な相違点は、第2実施形態におけるテーパ嵌合部34aは、その全ての断面を小判形状としているのに対して、本変形例におけるネック部材53のテーパ嵌合部54aは、小判形状の断面部分54a1と円形の断面部分54a2とからなる点である。テーパ嵌合部54aのうち円形の断面部分54a2は、ステム本体部材52の凹部55の開口部に位置し、小判形状の断面部分54a1は、その奥に位置する。
【0045】
なお、本変形例に係る嵌合部54の平行嵌合部54b、凹部55のテーパ被嵌合部55a・平行被嵌合部55bの構成は、対応する第2実施形態に係るものと同様の構成である。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
【符号の説明】
【0047】
1:人工股関節用ステム
2:ステム本体部材
3:ネック部材
4:嵌合部
4a:テーパ嵌合部
4b:平行嵌合部
5:凹部
5a:テーパ被嵌合部
5b:平行被嵌合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腿骨に埋入されるステム本体部材と、当該ステム本体部材の上端部に形成された凹部に嵌合されるネック部材と、を具備してなる人工股関節用ステムであって、
前記ネック部材の端部に形成された嵌合部は、
テーパ形状のテーパ嵌合部と、
対向する面が平行な平行嵌合部と、
を有し、
前記ステム本体部材の凹部は、
前記テーパ嵌合部が嵌合するテーパ形状のテーパ被嵌合部と、
前記平行嵌合部が嵌合する平行被嵌合部と、
を有する、人工股関節用ステム。
【請求項2】
請求項1に記載の人工股関節用ステムにおいて、
前記テーパ嵌合部と前記テーパ被嵌合部とが、前記平行嵌合部および前記平行被嵌合部に対して離れた側の端部で当接するように形成されていることを特徴とする、人工股関節用ステム。
【請求項3】
請求項2に記載の人工股関節用ステムにおいて、
前記ネック部材の前記嵌合部は、当該ネック部材の端から順に、前記平行嵌合部と前記テーパ嵌合部とを有し、
前記ステム本体部材の前記凹部は、当該凹部の底側から順に、前記平行被嵌合部と前記テーパ被嵌合部とを有し、
前記テーパ嵌合部および前記テーパ被嵌合部の断面が、大腿骨に埋入された状態で内外側方向に長い小判形状とされ、前記平行嵌合部および前記平行被嵌合部の断面が円形とされていることを特徴とする、人工股関節用ステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−65940(P2012−65940A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214797(P2010−214797)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(504418084)日本メディカルマテリアル株式会社 (106)
【Fターム(参考)】