説明

人工肺

【課題】人工肺のガス流出部における温度調整、流入ガスの温度調整ができ、ウェットラング現象の発生を防止し、酸素加能が低下しない人工肺を提供する。
【解決手段】人工肺1は、ハウジング2内に挿入された中空糸膜束3と、中空糸膜束のハウジングに固定する隔壁8、9と、一方の隔壁9の外側に形成されたガス流入部26とガス流入口26aを備えるガス流入部形成部材22と、隔壁8の外側に形成されたガス流出部27とを有する。人工肺1は、ガス流出部加温機能およびガス流入部に流入するガスの加温機能を有する加温部6を有する。加温部は、ガス流出部を被包し、ガス流入部形成部材まで延びる。加温部は、加熱ヒータ61と、加熱ヒータにより加温されるガス流路7を備え、ガス流路の一端72は、ガス流入ポート71と連通し、他端73は、ガス流入部形成部材のガス流入口と連通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外血液循環において、血液中の二酸化炭素を除去し、酸素を添加するための中空糸膜型の人工肺に関する。
【背景技術】
【0002】
人工肺は大別して気泡型と膜型に分類される。最近では、気泡型人工肺に比して、溶血、蛋白質変性、血液凝固等の血液損傷が少ない膜型人工肺、例えば、多孔質合成樹脂製膜を使用した中空糸膜型人工肺が多用されている。
この中空糸膜型人工肺は、中空糸膜の片面側に酸素を供給し、他面側に血液を供給して、中空糸膜を介して酸素と二酸化炭素とのガス交換を行うものである。
しかし、この形式の人工肺では、室温が血温より低い場合、人工肺内を流れたガスは血液によって加温された状態で中空糸膜端部(隔壁端面)より流出し、端部付近にて外気と接触するため、ガス中の水蒸気が結露するいわゆるウェットラング現象が発生することがある。この結露した水は中空糸膜を部分的に閉塞し、酸素加能を低下させる。特に、この現象は、血液温度を低下させて行う低体温手術法における復温時によく発生する。
【0003】
上記のウェットラング現象を防止することを目的とする下記の人工肺を本件出願人は、提案している。
特開平8−141073(特許文献1)の人工肺では、加温装置1を中空糸膜型人工肺2のガス導出側ポート33を覆うように装着し、電源供給部より入力した電力により加熱部材12を発熱させ、加熱部材12により伝熱部材11を加熱し、伝熱部材11により中空糸膜型人工肺2のガス導出部31及び隔壁24を加温する。一方、発熱した加熱部材12の熱を断熱部材13により断熱するものとなっている。
また、特開平8−141074(特許文献2)の人工肺1では、血液流入口6と血液流出口7を有する人工肺ハウジング2と、人工肺ハウジング2内に挿入された多数のガス交換用中空糸膜からなる中空糸膜束3と、中空糸膜束3の両端部を人工肺ハウジング2の両端部に液密に固定する隔壁4a,4bと、隔壁4aの外側に形成されたガス流入部9と、隔壁4bの外側に形成されたガス流出部10と、熱媒体導入部11と熱媒体導出部12とを有し、ガス流出部10からのガスの流出を阻害することなくガス流出部10をほぼ被包する熱媒体流通部13を有するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−141073
【特許文献2】特開平8−141074
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1および2のものでも、ウェットラング現象の抑制には十分な効果を有している。しかし、より確実にウェットラング現象を防止できることが必要であり、本発明等が鋭意検討したところ、人工肺に流入させるガスの温度をコントロールすることが必要であることを知見した。
そこで、本発明の目的は、人工肺のガス流出部における温度調整のみならず人工肺に流入させるガスの温度調整ができ、ウェットラング現象の発生を確実に防止でき、長時間使用しても酸素加能が低下しない人工肺を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) ハウジングと、該ハウジング内に挿入された多数のガス交換用中空糸膜からなる中空糸膜束と、前記ハウジング内と連通する血液流入口と血液流出口と、前記中空糸膜束の両端部を前記ハウジングに液密に固定する隔壁と、前記中空糸膜内部と連通し、かつ一方の前記隔壁の外側に形成されたガス流入部と、該ガス流入部を内部に形成するとともにガス流入口を備えるガス流入部形成部材と、前記中空糸膜内部と連通し、かつ他方の前記隔壁の外側に形成されたガス流出部とを有する人工肺であって、
前記人工肺は、ガス流出部加温機能および前記ガス流入部に流入するガスを加温する流入ガス加温機能を有する加温部を有し、前記加温部は、前記ガス流出部を被包するとともに、前記ガス流入部形成部材まで延びるものとなっており、かつ、前記加温部は、加熱ヒータと、該加熱ヒータにより加温されるガス流路と、該ガス流路の一端と連通するガス流入ポートを備え、さらに、前記ガス流路の他端は、前記ガス流入部形成部材の前記ガス流入口と連通している人工肺。
【0007】
(2) 前記加温部は、前記加熱ヒータを有し、かつ前記ガス流出部側の隔壁と向かい合うように設けられたガス流出部加温部を備え、前記ガス流路は、該ガス流出部加温部の前記隔壁対向面と反対側に設けられ、かつ、曲路状となっている上記(1)に記載の人工肺。
(3) 前記加温部は、前記人工肺のハウジングの側部を前記ガス流出部側より前記ガス流入部側に延びる延出加温部を備え、該延出加温部は、延出加温部加熱ヒータと、該加熱ヒータにより加温される延出加温部ガス流路を有している上記(1)または(2)に記載の人工肺。
(4) 前記加温部は、前記人工肺の前記ハウジングに固定された加温部ハウジングと、前記加温部ハウジング内に収納されるとともに前記加熱ヒータを備えるプレート状加温体と、前記加温部ハウジングの内面と前記プレート状加温体との間に形成された曲路状の前記ガス流路と、前記加温部ハウジングに設けられ、かつ、前記ガス流路と連通するガス流入ポートとを備え、前記ガス流路の他端は、前記加温部ハウジング内にて、前記ガス流入部形成部材の前記ガス流入口と連通している上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の人工肺。
【0008】
(5) 前記加温部ハウジングは、前記人工肺の前記ガス流出部と連通するガス排出口を備えている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の人工肺。
(6) 前記人工肺は、内部に熱交換器を備え、前記熱交換器は、血液流通室と、該血液流通室と熱交換用管体を介して接触する熱媒体流通室と、前記熱媒体流通室と連通する熱媒体流入ポートおよび熱媒体流出ポートとを備え、前記血液流入口もしくは前記血液流出口は、前記血液流通室と連通しているものである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の人工肺。
(7) 前記人工肺は、前記加温部のガス流路内または前記人工肺の前記ガス流入部内にてガス温度を検知するためのガス温度検知部または/および前記ガス流出部内にて湿度を検知するための湿度検知部と、前記ガス温度検知部により検知されたガス温度または/および前記湿度検知部により検知された湿度を用いて、前記加熱ヒータの温度制御を行う制御部を備えている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の人工肺。
【発明の効果】
【0009】
本発明の人工肺は、ハウジングと、ハウジング内に挿入された多数のガス交換用中空糸膜からなる中空糸膜束と、ハウジング内と連通する血液流入口と血液流出口と、中空糸膜束の両端部をハウジングの両端部に液密に固定する隔壁と、中空糸膜内部と連通し、かつ前記一方の隔壁の外側に形成されたガス流入部と、ガス流入部を形成するとともにガス流入口を備えるガス流入部形成部材と、中空糸膜内部と連通し、かつ他方の隔壁の外側に形成されたガス流出部とを有し、さらに、ガス流出部加温機能およびガス流入部に流入するガスを加温する流入ガス加温機能を有する加温部を有する。
そして、加温部は、ガス流出部を被包するとともに、ガス流入部形成部材まで延びるものとなっており、かつ、加温部は、加熱ヒータと、加熱ヒータにより加温されるガス流路と、ガス流路の一端と連通するガス流入ポートを備え、ガス流路の他端は、ガス流入部形成部材のガス流入口と連通している。このため、人工肺のガス流出部が加温されるのみならず、人工肺のガス流入部に流入されるガスも同じ加温手段により加温されるため、人工肺のガス流出部とガス流入部間におけるガスの温度の差が少ないものとなり、ウェットラング現象の発生を確実に防止でき、長時間使用しても酸素加能が低下しないものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の人工肺の一実施例を示す正面図である。
【図2】図2は、図1に示した人工肺の左側面図である。
【図3】図3は、図1に示した人工肺の右側面図である。
【図4】図4は、図2のA−A線断面図である。
【図5】図5は、図2のB−B線断面図である。
【図6】図6は、図1のC−C線断面図である。
【図7】図7は、本発明の人工肺の一実施例の熱交換器部の内部構造を説明するための説明図である。
【図8】図8は、本発明の人工肺の一実施例の人工肺部の内部構造を説明するための説明図である。
【図9】図9は、本発明の人工肺の一実施例に使用される筒状コアの正面図である。
【図10】図10は、図9に示した筒状コアをその中心軸を中心に180度回転させた状態の図である。
【図11】図11は、図9に示した筒状コアの断面図である。
【図12】図12は、図9に示した筒状コアの左側面図である。
【図13】図13は、図9に示した筒状コアの右側面図である。
【図14】図14は、本発明の人工肺の他の実施例を説明するための説明図である。
【図15】図15は、本発明の人工肺の他の実施例を示す左側面図である。
【図16】図16は、図15に示した人工肺のD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の人工肺を図面に示す熱交換機能内蔵中空糸膜型人工肺を用いて説明する。
本発明の人工肺1は、ハウジング2と、ハウジング2内に挿入された多数のガス交換用中空糸膜からなる中空糸膜束3と、ハウジング2内と連通する血液流入口24と血液流出口25と、中空糸膜束3の両端部をハウジング2に液密に固定する隔壁8、9と、中空糸膜内部と連通し、かつ一方の隔壁9の外側に形成されたガス流入部26と、ガス流入部26を内部に形成するとともにガス流入口26aを備えるガス流入部形成部材22と、中空糸膜内部と連通し、かつ他方の隔壁8の外側に形成されたガス流出部27とを有する。そして、人工肺1は、ガス流出部加温機能およびガス流入部26に流入するガスを加温する流入ガス加温機能を有する加温部6を有する。加温部6は、ガス流出部27を被包するとともに、ガス流入部形成部材22まで延びるものとなっている。さらに、加温部6は、加熱ヒータ61と、加熱ヒータ61により加温されるガス流路7と、ガス流路7の一端72と連通するガス流入ポート71を備える。また、ガス流路7の他端73は、ガス流入部形成部材22のガス流入口26aと連通している。
【0012】
この実施例の人工肺1は、図1ないし図6に示すように、ハウジング2と、このハウジング2内に収納された人工肺部と、この人工肺部内に収納された筒状熱交換器部と、人工肺部の側部に固定された加温部6とを備える。
この実施例の人工肺1は、筒状コア5と、筒状コア5の外表面に巻き付けられた多数のガス交換用中空糸膜からなる筒状中空糸膜束3とからなる人工肺部と、筒状コア5内に収納された筒状熱交換器部と、人工肺部および筒状熱交換器部を収納するハウジング2とを備える。筒状コア5は、筒状コア5の外表面と筒状中空糸膜束3の内面間に血液流路を形成する溝51と、筒状コア5と筒状熱交換器部間に形成された第1の血液室11と溝51とを連通する血液流通用開口52を有する。人工肺1は、筒状コア5と筒状熱交換器部間に形成された第1の血液室11と連通する血液流入ポート24と、筒状中空糸膜外面とハウジング2内面間に形成された第2の血液室12と連通する血液流出ポート25と、ガス流出部加温機能およびガス流入部26に流入するガスを加温する流入ガス加温機能を有する加温部6を備えている。
【0013】
この実施例の中空糸膜型人工肺1では、図5および図6に示すように、外側から、筒状ハウジング本体21、第2の血液室12、中空糸膜束3、溝51を備える筒状コア5、第1の血液室11、筒状熱交換体31、筒状熱交換体変形規制部34,35、筒状熱媒体室形成部材32の順でほぼ同心的に配置もしくは形成されている。
ハウジング2は、図1ないし図6に示すように、血液流出ポート25を備える筒状ハウジング本体21、ガス流入口26a、熱媒体流入ポート28および熱媒体流出ポート29を備えるガス流入部形成部材22を備えている。ガス流入部形成部材22の内面には、筒状に突出する熱媒体室形成部材接続部22aとこの筒状接続部22aの内部を2分する仕切部22bが設けられている。また、図5に示すように、後述する筒状熱媒体室形成部材32は、開口端側が蓋部材65によりシールされている。
【0014】
筒状熱交換器部は、熱交換器部の内部構造を説明するための説明図である図7に示すように、筒状熱交換体31と、この熱交換体31内に収納される筒状熱媒体室形成部材32と、筒状熱交換体31と筒状熱媒体室形成部材32間に挿入される2つの筒状熱交換体変形規制部34,35を備えている。筒状熱交換体31としては、いわゆるベローズ型熱交換体が使用される。
ベローズ型熱交換体31(蛇腹管)は、図7に示すように、中央側面にほぼ平行に形成された多数の中空環状突起31aを備える蛇腹形成部31bと、その両端に形成され、蛇腹形成部31bの内径とほぼ等しい円筒部31cを備えている。熱交換体31の円筒部の一方は、図4および図5に示すように、中空筒状コア5の血液流入ポート24側端部内面と封止部材65により挟持され、熱交換体31の円筒部の他方は、中空筒状コア5の一端内に挿入されたリング状熱交換体固定用部材48とこのリング状熱交換体固定用部材48とガス流入部形成部材22間に挿入された筒状熱交換体固定用部材49とガス流入部形成部材22間により挟持されている。
【0015】
ベローズ型熱交換体31は、ステンレス、アルミ等の金属もしくはポリエチレン、ポリカーボネート等の樹脂材料によりいわゆる細かな蛇腹状に形成されている。強度、熱交換効率の面からステンレス、アルミ等の金属が好ましい。特に、筒状熱交換体31の軸方向(中心軸)に対してほぼ直交する凹凸が多数繰り返された波状となっているベローズ管からなり、その谷部と山部の高さは5.0〜15.0mm程度が最も効率が良く、好ましくは9.0〜12.0mmが好ましい。また、熱交換器部の軸方向の長さは、使用される患者によって異なるが、70.0〜150cmの範囲のものが用いられる。
【0016】
筒状熱媒体室形成部材32は、図4、図5、図6および図7に示すように、一端(ガス流入部形成部材22側)が開口した筒状体であり、内部を流入側熱媒体室41と流出側熱媒体室42に区分する区画壁32aと、流入側熱媒体室41と連通し軸方向に延びる第1の開口33aと、流入側熱媒体室42と連通し軸方向に延びる第2の開口33bと、向かい合いかつ、第1の開口33aおよび第2の開口33bと約90度ずれた位置の側面に形成され外方に突出する軸方向に延びる突起36a、36bを備えている。突起36aは、熱交換体変形規制部34の内面中央に形成された軸方向に延びる溝内に侵入することにより変形規制部34の移動を規制する。同様に、突起36bは、熱交換体変形規制部35の内面中央に形成された軸方向に延びる溝内に侵入することにより変形規制部35の移動を規制する。
【0017】
筒状熱媒体室形成部材32は、開口端側をガス流入部形成部材22の熱媒体室形成部材接続部22aに嵌合させたとき、図5に示すように、筒状熱媒体室形成部材32の区画壁32aの先端部の一方の面(この実施例では下面)に、筒状接続部22aの内部を2分する仕切部22bが密接する。これにより、筒状熱媒体室形成部材32内の流入側熱媒体室41は、熱媒体流入ポート28と連通し、流出側熱媒体室42は熱媒体流出ポート29と連通する。
また、2つの熱交換体変形規制部34,35は、付き合わされるそれぞれの端部分に軸方向に延びる切り欠き部34b,35bを備えており、2つの規制部34,35が付き合わされることにより、図6および図7に示すように、媒体流入側通路37および媒体流出側通路38が形成されている。なお、図7では、筒状熱媒体室形成部材32を省略してある。なお、2つの熱交換体変形規制部34,35は、一体に形成してもよい。
【0018】
そして、本発明の人工肺の一実施例の熱交換器部を説明するための説明図である図7に示すように、2つの熱交換体変形規制部34,35は、外面に多数の熱交換体変形規制用リブ34a,35aを備えている。この変形規制用リブ34a,35aは、熱交換体31の蛇腹の谷部(底部)もしくはその付近(内側湾曲部付近)の内面と接触する。筒状熱交換体変形規制部4,35は、熱交換体31の蛇腹の内側面に接触するとともに、変形規制用リブ34a,35aは、蛇腹管の谷内に侵入し、谷部(小径部)付近と接触することにより、熱交換体31の変形を規制する。熱交換体内部の圧力が変化したとき、熱交換体31は、蛇行し、蛇腹部の拡張もしくは収縮しようとする。しかし、この人工肺1では、熱交換体内部の圧力が変化したとき、熱交換体31が変形しようとしても蛇腹部の谷部の内面が変形規制用リブ34a,35aに当接することにより、変形が阻害される。これにより、熱交換体内部の圧力が変化しても、人工肺内部の血液室の容量の変化を規制できるので安全である。
【0019】
この実施例では、変形規制用リブ34a,35aは、筒状熱交換体変形規制部34,35の外面に平行に円弧状に複数形成されており、熱交換体31のすべての蛇腹部の谷部内部に侵入している。リブ34a,35aは、円弧状でなくても、円弧上に非連続に配置されたリブ(例えば、断面が円、楕円、多角形などのドット状、円弧状)でもよい。また、リブは、すべての蛇腹管の谷部に侵入するように設けることが好ましいが、蛇腹管の谷部のすべてではなく、適宜間引いて設けたもの、または、蛇腹管の谷部の一つおきに設けたものでもよい。リブ34a,35aの高さは、熱交換体31の谷部の深さにもよるが、0.1〜10.0mm程度が好ましく、特に、0.5〜2.0mmが好ましい。また、リブ34a,35aの高さは、熱交換体31の谷部の深さの1/20から1/1程度であることが好ましい。
【0020】
さらに、この実施例では、変形規制用リブ34a,35aは、筒状熱交換体変形規制部34,35の外面に全体に延びておらず、筒状熱交換体変形規制部34,35の外面両側端部には軸方向に延びるリブ非形成部34c,35cが設けられている。なお、熱交換体変形規制部としては、上述したような規制部34,35を用いるものに限定されるものではない。
そして、この実施例の人工肺1の熱交換器部における熱媒体の流れを図5および図6を用いて説明する。熱媒体流入ポート28より人工肺内部に流入した熱媒体は、ガス流入部形成部材22内部を通り流入側熱媒体室41内に流入する。そして、筒状熱媒体室形成部材32の流入室側開口33aおよび熱交換体変形規制部34,35の当接部により形成された媒体流入側通路37を通過して、熱交換体31と熱交換体変形規制部34,35間を流れる。この際に、熱媒体により熱交換体31は加温もしくは冷却される。そして、熱媒体は、熱交換体変形規制部34,35の当接部により形成された媒体流出側通路38および筒状熱媒体室形成部材32の流出室側開口33bを通過することにより、筒状熱媒体室形成部材32内の流出側熱媒体室42内に流出する。そして、ガス流入部形成部材22内部を通過して熱媒体流出ポート29より流出する。
【0021】
次に、人工肺部について説明する。
図8は、本発明の人工肺の一実施例の人工肺部の内部構造を説明するための説明図である。
人工肺部は、筒状コア5と、この筒状コア5の外面に巻き付けられた多数の中空糸膜からなる筒状中空糸膜束3を備える。
筒状コア5は、図4ないし図6、図8ないし図13に示すように、筒状体であり一端には、所定幅にて内側に延びる環状平板状突出部55が形成されており、この環状平板状突出部55の外面に血液流入ポート24が筒状コア5の中心軸と平行にかつ外方に突出するように形成されている。筒状コア5の外面には、筒状コア5の外表面と筒状中空糸膜束3の内面間に血液流路を形成する多数の溝51が形成されている。さらに、筒状コア5は、この溝51と筒状コア5と筒状熱交換器部間に形成された第1の血液室11とを連通する血液流通用開口52を有している。筒状コア5としては、外径が20〜100mm程度が好適であり、有効長(全長のうち隔壁に埋もれていない部分の長さ)は、10〜730mm程度が好適である。
【0022】
具体的には、筒状コア5は、その両端部分を除き、平行にかつ連続しない複数の溝51を有しており、溝51間は、環状リブ53となっている。筒状コア5の溝は、中空糸膜束のガス交換に寄与する部分(有効長,隔壁に埋もれない部分)のほぼ全域に渡るように形成されている。ここで使用する筒状コア5は、血液流入ポート24のほぼ延長線上であり、かつ筒状コア5の溝51形成部分のほぼ全体に延びる平坦面状の溝非形成部54を備えている。このため、筒状コア5の溝51およびリブ53は、始端および終端を有する環状溝51(円弧状溝51)ならびに環状リブ53(円弧状リブ)となっている。筒状コア5として、上記の筒状コア5の溝51形成部分のほぼ全体に延び平坦面状の溝非形成部54を備えることにより、筒状コア5の外面に形成される筒状中空糸膜束3の形状安定性が向上する。しかし、この溝非形成部54は必ずしも設ける必要はなく、筒状コア5の溝51およびリブ53は、無端の完全環状溝51および無端の完全環状リブ53となっていてもよい。また、溝51の深さとしては、0.5〜10.0mm程度が好適であり、特に、2.0〜4.0mmが好適である。また、溝51のピッチとしては、1.0〜10.0mm程度が好適であり、特に、3.0〜5.0mmが好適である。また、溝51の幅(最大部分の幅)としては、1.0〜10.0mm程度が好適であり、特に、2.0〜4.0mmが好適である。筒状コア5は、中空糸膜束3の有効長(隔壁に埋もれていない部分)のほぼ全域に渡る多数の溝51を備えるため、血液を中空糸膜束3の全体に分散させることができ、中空糸膜全体を有効に利用でき、ガス交換能も高いものとなる。
【0023】
さらに、筒状コア5の溝51間に形成される山部(リブ53)の頂点は平坦面となっていることが好ましい。リブ53の平坦面の幅としては、0.1〜5.0mm程度が好適であり、特に、0.8〜1.2mmが好適である。このように、リブ53の頂点を平坦面とすることにより、筒状コア5の外面に形成される筒状中空糸膜束3の形状安定性が向上する。さらに、溝51は、断面形状がリブ53の頂点に向かって広がる形状(例えば、断面台形状)となっている。このため、溝51(血液流路)は、中空糸膜束内面に向かって広がるため中空糸膜束内への血液流入を良好なものとしている。
【0024】
また、血液流入ポート24は、筒状コア5の一方の端部側に設けられており、血液流通用開口52は、血液流入ポート24の中心線を延長した領域と向かい合う領域に形成されている。このようにすることにより、筒状コアと筒状熱交換器部間に形成された第1の血液室11内における血液流通形態が均等なものとなりやすく、熱交換効率も高いものとなる。具体的には、図6および図13に示すように、筒状コア5は上述した血液流入ポート24のほぼ延長線上であり、かつ筒状コア5の溝形成部分のほぼ全体に延びる溝非形成部54を備える。この溝非形成部54は、溝を形成しないことにより可能となった肉薄部となっており、これにより、筒状コア5内部に血液流入ポート24のほぼ延長線上に位置する血液誘導部56が形成されている。血液誘導部分は、他の溝形成部より内径が大きくなっている。このような血液誘導部56を設けることにより、筒状コアと筒状熱交換器部間に形成された第1の血液室11の軸方向の全体に血液を確実に流入させることができる。
【0025】
そして、この溝非形成部54(血液誘導部56)と向かい合う領域(位置)に血液流通用開口52が形成されている。この筒状コア5では、血液流通用開口52は、複数の環状溝51の個々と連通する複数の血液流通用開口52を備えている。つまり、溝非形成部54(血液誘導部)と向かい合う位置の筒状コア5の溝51部分を欠損させることにより、開口52が形成されている。このため、隣り合う開口52間には、リブ53が存在している。さらに、この筒状コア5では、開口形成部52aにおけるリブ53の肉厚が薄くなっており、図13に示すように、開口形成部52aの内径も溝非形成部(血液誘導部)と同様に他の部分より広くなっており、第2の血液誘導部57を形成している。上記のように、開口形成部52aにリブ53の山部分を残すことにより、筒状コア5の物性低下の回避、中空糸膜との接触部確保による中空糸膜束3の形状安定化を計ることが可能となる。また、開口形成部52aの内径が他の部分より大きい肉薄部とすることにより、第1の血液室11内を流れた血液の開口形成部52aへの誘導が確実なものとなる。しかし、このようなものに限定されるものではなく、開口形成部52aにリブ53の山部分が存在せず、複数の環状溝51のすべてと連通する一つの血液流通用開口もしくは複数の環状溝51と連通する複数の血液流通用開口を備えるものであってもよい。
そして、この筒状コア5は、軸方向に対して所定幅にてほぼ直交する環状平板状突出部55を備えている。この環状平板状突出部55は、分断されることなく完全に環状となっていることが好ましい。環状平板状突出部55の幅は、リブ53の頂点の平坦面の幅よりも広く、1〜10mm程度が好適であり、特に、2〜5mmが好適である。
【0026】
そして、上述した筒状コア5の外面に中空糸膜束3が巻き付けられている。
中空糸膜としては、多孔質ガス交換膜が使用される。多孔質中空糸膜としては、内径100〜1000μm、肉厚は5〜200μm、好ましくは10〜100μm、空孔率は20〜80%、好ましくは30〜60%、また細孔径は0.01〜5μm、好ましくは0.01〜1μmのものが好ましく使用できる。また、多孔質膜に使用される材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート等の疎水性高分子材料が用いられる。好ましくは、ポリオレフィン系樹脂であり、特に好ましくは、ポリプロピレンであり、延伸法または固液相分離法により壁に微細孔が形成されたものがより好ましい。中空糸膜束3の外径は、30〜162mmが好適であり、中空糸膜束3の厚さは、10mm〜28mmであることが好ましい。さらに、筒状コア5の外面に形成された筒状中空糸膜束3は、筒状中空糸膜束3の外側面と内側面間により形成される筒状空間に対する中空糸膜の充填率が、50%〜75%であることが好ましい。より好ましくは、53%〜73%である。
【0027】
そして、中空糸膜束3は、筒状コア5に中空糸膜を巻き付けた後、両端を隔壁8,9により筒状ハウジング本体21に固定し、そして、中空糸膜束3の両端を切断される。これにより、中空糸膜の両端は、隔壁の端面において開口する。
中空糸膜束3が外面に巻き付けられた筒状コア5の両端は、隔壁8,9により、筒状ハウジング本体21の両端部に液密に固定され、筒状中空糸膜外面と筒状ハウジング本体21内面間に環状空間(筒状空間)である第2の血液室12が形成される。筒状ハウジング本体21の側面に形成された血液流出ポート25は、第2の血液室12と連通する。隔壁8,9は、ポリウレタン、シリコーンゴムなどのポッティング剤で形成される。
そして、上述のように形成された人工肺部の筒状コア5内部に、上述した熱交換器部が収納される。そして、筒状コア5と筒状熱交換器部間に環状の第1の血液室11が形成され、血液流入ポート24はこの血液室11と連通する。
【0028】
この人工肺1では、血液流入ポート24から流入した血液は、筒状コア5と筒状熱交換器部間である血液室11の一部を構成する血液誘導部57内に流入し、筒状コア5と筒状熱交換体間を流れた後、第1の血液誘導部57と向かい合う位置に形成された開口52を通り筒状コア5より流出する。コア5より流出した血液は、中空糸膜束3内面と筒状コア5間に位置する筒状コア5外面に形成された複数の溝51内に流入した後、中空糸膜束3間に流入する。この実施例の人工肺では、中空糸膜束3のガス交換に寄与する部分(有効長,隔壁に埋もれない部分)のほぼ全域に渡るように多数の溝51が形成されているため、血液を中空糸膜束3の全体に分散させることができ、中空糸膜全体を有効に利用でき、ガス交換能も高いものとなる。そして、中空糸膜に接触し、ガス交換がなされた後、筒状ハウジング本体21と中空糸膜外面(中空糸膜束3外面)間により形成された第2の血液室12に流入し、血液流出ポート25より流出する。また、ガス流入口26aより流入した酸素含有ガスは、ガス流入部形成部材22内を通り隔壁端面より中空糸膜内に流入し、加温部ハウジング23内のガス流出部27を通過してガス排出口27aより流出する。なお、なお、熱媒体流入ポート28からは、必要に応じて、温水もしくは冷水が熱交換器部内に流入され、熱交換器部内を流れた温水もしくは冷水は、熱媒体流出ポート29より流出する。
【0029】
また、筒状ハウジング本体21、筒状コア5、ガス流入部形成部材22、加温部ハウジング23などの熱交換体31を除く部材の形成材料としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、エステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、スチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン、MS樹脂、MBS樹脂)、ポリカーボネートなどが使用できる。
さらに、人工肺1の血液接触面は、抗血栓性表面となっている事が好ましい。抗血栓性表面は、抗血栓性材料を表面に被覆、さらには固定することにより形成できる。抗血栓性材料としては、ヘパリン、ウロキナーゼ、HEMA−St−HEMAコポリマー、ポリHEMAなどが使用できる。
【0030】
次に、加温部6について説明する。
本発明の人工肺1は、ガス流出部27を被包するとともに、ガス流入部形成部材22まで延びる加温部6を備えている。加温部6は、ガス流出部27の加温機能と、ガス流入部26に流入するガスを加温する流入ガス加温機能を有している。そして、この実施例の人工肺1では、図1ないし図6に示すように、加温部6は、加熱ヒータ61と、加熱ヒータ61により加温されるガス流路7と、ガス流路7の一端72と連通するガス流入ポート71を備える。また、ガス流路7の他端73は、ガス流入部形成部材22のガス流入口26aと連通している。
特に、この実施例では、加温部6は、加熱ヒータ61を有し、かつガス流出部27側の隔壁8と向かい合うように設けられたガス流出部加温部60を備えている。具体的には、ガス流出部加温部60は、人工肺の隔壁8と所定長離間して向かい、隔壁8との間にガス流出部27を形成するとともに、形成されたガス流出部27を加温可能なものとなっている。そして、この実施例では、ガス流路7は、ガス流出部加温部60の隔壁8(ガス流出部27)と対向する面と反対側に設けられ、かつ、曲路状のものとなっている。
【0031】
具体的には、加温部6は、人工肺のハウジング2の隔壁8側の端部に固定された加温部ハウジング23と、加温部ハウジング23内に収納されるとともに加熱ヒータ61を備えるプレート状加温体63により形成されたガス流出部加温部60と、加温部ハウジング23の内面とプレート状加温体63との間に形成された曲路状のガス流路7を備える。さらに、加温部6は、加温部ハウジング23に設けられ、かつ、ガス流路7の一端72と連通するガス流入ポート71とを備え、ガス流路7の他端73は、加温部ハウジング内にて、ガス流入部形成部材22のガス流入口26aと連通している。プレート状加温体63は、ある程度の熱伝導性材料により形成された硬質材料により形成されており、内部に、加熱ヒータ61(具体的には、ヒータ線)が埋設されている。この、加熱ヒータ61は、ヒータ端子62に接続されるヒータ加熱手段(図示せず、具体的には、通電手段)により、加熱される。加熱ヒータ61は、図2に示すように、ジグザグ状に蛇行しており、十分な長さを有するものとなっている。
【0032】
ガス流路7は、図2、図4に示すように、加温部ハウジング23の周縁方向に延びる幅を有しかつ、ハウジング23の厚み方向に蛇行した曲路状となっており、このガス流路をガスが通過することにより、加温されるものとなっている。
また、この実施例では、ガス流路7の一方の面は、プレート状加温体63の一方の面により形成され、ガス流路7の他方の面は、ガス流路形成部材74により形成されている。ガス流路形成部材74は、断熱性材料により形成することが好ましい。なお、ガス流路形成部材74は、ハウジング23と一体に形成してもよい。また、ハウジング23は、図1,図2および図4に示すように、血液流入ポート24を突出させるための開口を備えている。
また、この実施例の人工肺1では、加温部6は、人工肺のハウジング2の側部をガス流出部27側よりガス流入部26側に延びる延出加温部6aを備えている。延出加温部6aは、延出加温部加熱ヒータ61aと、加熱ヒータ61aにより加温される延出加温部ガス流路7aを有している。ハウジング23は、下蓋部23aを備えており、この下蓋部23aの内部およびハウジング23の下部により、延出部加温部のハウジングが形成されている。
この実施例では、延出部加温部6aは、上述した加温部6とほぼ同様の構造となっている。具体的には、延出加温部6aは、図4に示すように、内部に、加熱ヒータ61と連続する延出部加熱ヒータ61a(ヒータ線)が埋設されたプレート状加温体63aと、プレート状加温体63aの外側もしくは内側(図示する実施例では、外側)に位置し、かつ上述したガス流路7と連通する延出加温部ガス流路7aを備えている。図4に示すものでは、延出加温部の加熱ヒータは、上述した加熱ヒータ61が延出したものとなっており、その端部は、人工肺ハウジング2の隔壁9側の端部付近に位置するものとなっている。
【0033】
延出加温部ガス流路7aは、人工肺ハウジング2の周縁方向に所定長延びる幅を有しかつ、下蓋部23aの厚み方向に蛇行した曲路状となっており、このガス流路をガスが通過することにより、加温されるものとなっている。そして、延出加温部6aのガス流路7aの端部73内に、ガス流入口26aが進入しており、両者は、気密状態にて接続されている。また、ガス流路71の一方の面は、プレート状加温体63aの一方の面により形成され、ガス流路71の他方の面は、ガス流路形成部材74aにより形成されている。ガス流路形成部材74aは、断熱性材料により形成することが好ましい。なお、ガス流路形成部材74aは、下蓋部23aと一端に形成してもよい。
そして、本発明の人工肺1では、人工肺のガス流出部27が加温部6により直接加温されることにより、ガス流出部27,言い換えれば、中空糸膜束を拘束する隔壁8部分が加温され、ウェットラング現象の発生を抑制する。さらに、上記人工肺のガス流出部27を加温する加温部6を用いるとともに、人工肺のガス流入口に到達するまで冷却されない状態にて、加温されたガスを人工肺のガス流入口に到達させることができ、ガス流出部とガス流入部間におけるガス温度の差を少ないものとし、より確実に、ウェットラング現象の発生を確実に防止でき、長時間使用しても酸素加能が低下しないものとなる。
【0034】
なお、延出加温部の構成は、上述したものに限定されるものではない。
例えば、図14に示す人工肺10のようなタイプのものであってもよい。
この実施例の人工肺10では、上述した人工肺1と同様に、加温部6は、加熱ヒータ61を有し、人工肺のハウジング2の側部をガス流出部27側よりガス流入部26側に延びる延出加温部6bを備えている。ハウジング23は、下蓋部23aを備えており、この下蓋部23aの内部およびハウジング23の下部により、ハウジングの延出部を構成している。
この実施例の延出部加温部6bは、上述したガス流路7と連通する直管状の延出加温部ガス流路7bを備えており、その端部73は、ガス流入口26aと気密に連通している。また、延出加温部ガス流路7bを取り囲むように、加熱ヒータ61b(具体的には、ヒータ線)が螺旋状となるように配置されている。このようにすることにより、より確実に人工肺のガス流入口26aに流入するガスを加温することが可能となる。
【0035】
また、上述したすべての実施例の人工肺において、図15および図16に示すような制御部80を有するものであってもよい。
図15は、本発明の人工肺の一実施例を示す左側面図である。図16は、図15に示した人工肺のD−D線断面図である。
この実施例の人工肺20は、加温部6のガス流路7(7a)内または人工肺のガス流入部26内(ガス流入口26aを含む)にてガス温度を検知するためのガス温度検知部77を備えている。特に、この実施例では、ガス温度検知部77は、ガス流入口26aと連通するガス流路7の端部73もしくはその付近に設けられている。ガス温度検知部77は、ガス流路内に設ける場合には、その下流側に設けることが好ましい。なお、ガス温度検知部77は、人工肺のガス流入部26内(ガス流入口26aを含む)にて温度を検知するもの、言い換えれば、ガス流入部形成部材22に設けてもよい。温度検知部77としては、サーミスタ、熱電ついなどの公知の温度センサを用いることができる。
また、この実施例の人工肺20は、ガス流出部27内(ガス流出口27aを含む)にて湿度を検知するための湿度検知部78を備えている。特に、この実施例では、図15および図16に示すように、湿度検知部78は、外気湿度の影響を受けにくいものとするために、ガス流出口27aより離間する部位に設けられている。湿度センサとしては、2つのサーミスタを利用して、湿気と乾気との熱伝導率の差を利用して湿度を測定するもの、セラミック湿度センサ、高分子膜湿度センサなどの公知のものが使用できる。
【0036】
そして、この実施例の人工肺20は、上述したガス温度検知部77により検知されたガス温度と、上述した湿度検知部78により検知された湿度とを用いて、加熱ヒータ61の温度制御を行う制御部80を備えている。制御部80では、例えば、湿度検知部78により検知された湿度が、所定値以上もしくは所定値以上となった時間が所定時間以上となった場合に、加熱ヒータ61による加熱温度を上昇させるもの、また、湿度検知部78により検知された湿度が、所定値以下もしくは所定値以下となった時間が所定時間以上となった場合に、加熱ヒータ61による加熱を停止もしくは加熱レベルを低下させるものであることが好ましい。また、制御部80は、温度検知部77により検知された温度が、所定値以上もしくは所定値以上となった時間が所定時間以上となった場合に、加熱ヒータ61による加熱を停止もしくは加熱レベルを低下させ、また、温度検知部77により検知された湿度が、所定値以下もしくは所定値以下となった時間が所定時間以上となった場合に、加熱ヒータ61による加熱温度を上昇させるものであることが好ましい。
上述したように、この実施例の人工肺20では、ガス温度検知部77と湿度検知部78の両者を備えている。このように両者を備えることが好ましいが、ガス温度検知部77と湿度検知部78の一方のみであってもよい。一方のみの場合、制御部80は、ガス温度検知部77または湿度検知部78を用いて加熱ヒータ61の制御するものとなる。
【符号の説明】
【0037】
1 人工肺
2 ハウジング
3 中空糸膜束
5 筒状コア
6 加温部
7 ガス流路
11 第1の血液室
12 第2の血液室
21 筒状ハウジング本体
22 ガス流入部形成部材
23 加温部ハウジング
24 血液流入ポート
25 血液流出ポート
26 ガス流入部
26a ガス流入口
27 ガス流出部
27a ガス排出口
28 熱媒体流入ポート
29 熱媒体流出ポート
61 加熱ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、該ハウジング内に挿入された多数のガス交換用中空糸膜からなる中空糸膜束と、前記ハウジング内と連通する血液流入口と血液流出口と、前記中空糸膜束の両端部を前記ハウジングに液密に固定する隔壁と、前記中空糸膜内部と連通し、かつ一方の前記隔壁の外側に形成されたガス流入部と、該ガス流入部を内部に形成するとともにガス流入口を備えるガス流入部形成部材と、前記中空糸膜内部と連通し、かつ他方の前記隔壁の外側に形成されたガス流出部とを有する人工肺であって、
前記人工肺は、ガス流出部加温機能および前記ガス流入部に流入するガスを加温する流入ガス加温機能を有する加温部を有し、前記加温部は、前記ガス流出部を被包するとともに、前記ガス流入部形成部材まで延びるものとなっており、かつ、前記加温部は、加熱ヒータと、該加熱ヒータにより加温されるガス流路と、該ガス流路の一端と連通するガス流入ポートを備え、さらに、前記ガス流路の他端は、前記ガス流入部形成部材の前記ガス流入口と連通していることを特徴とする人工肺。
【請求項2】
前記加温部は、前記加熱ヒータを有し、かつ前記ガス流出部側の隔壁と向かい合うように設けられたガス流出部加温部を備え、前記ガス流路は、該ガス流出部加温部の前記隔壁対向面と反対側に設けられ、かつ、曲路状となっている請求項1に記載の人工肺。
【請求項3】
前記加温部は、前記人工肺のハウジングの側部を前記ガス流出部側より前記ガス流入部側に延びる延出加温部を備え、該延出加温部は、延出加温部加熱ヒータと、該加熱ヒータにより加温される延出加温部ガス流路を有している請求項1または2に記載の人工肺。
【請求項4】
前記加温部は、前記人工肺の前記ハウジングに固定された加温部ハウジングと、前記加温部ハウジング内に収納されるとともに前記加熱ヒータを備えるプレート状加温体と、前記加温部ハウジングの内面と前記プレート状加温体との間に形成された曲路状の前記ガス流路と、前記加温部ハウジングに設けられ、かつ、前記ガス流路と連通するガス流入ポートとを備え、前記ガス流路の他端は、前記加温部ハウジング内にて、前記ガス流入部形成部材の前記ガス流入口と連通している請求項1ないし3のいずれかに記載の人工肺。
【請求項5】
前記加温部ハウジングは、前記人工肺の前記ガス流出部と連通するガス排出口を備えている請求項1ないし4のいずれかに記載の人工肺。
【請求項6】
前記人工肺は、内部に熱交換器を備え、前記熱交換器は、血液流通室と、該血液流通室と熱交換用管体を介して接触する熱媒体流通室と、前記熱媒体流通室と連通する熱媒体流入ポートおよび熱媒体流出ポートとを備え、前記血液流入口もしくは前記血液流出口は、前記血液流通室と連通しているものである請求項1ないし5のいずれかに記載の人工肺。
【請求項7】
前記人工肺は、前記加温部のガス流路内または前記人工肺の前記ガス流入部内にてガス温度を検知するためのガス温度検知部または/および前記ガス流出部内にて湿度を検知するための湿度検知部と、前記ガス温度検知部により検知されたガス温度または/および前記湿度検知部により検知された湿度を用いて、前記加熱ヒータの温度制御を行う制御部を備えている請求項1ないし5のいずれかに記載の人工肺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−135434(P2012−135434A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289673(P2010−289673)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】