説明

人工芝用充填材及びこれを含む人工芝

裏材及び前記裏材対面から上方に延びるパイル要素を具備するパイルファブリックと、前記パイル要素が少なくとも部分的に充填材層中に埋め込まれるようにパイルファブリックの上面に充填された充填材層と、を備え、充填材層は、弾性充填材と高硬度樹脂充填材とを含む、人工芝が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示された技術は、人工芝充填材及びこれを含む人工芝に関する。
【背景技術】
【0002】
人工芝は、米国で初めて開発され、1965年から使用されている。人工芝は、プラスチックフィラメントからなる繊維が下にある裏材(backing)から上方に延びた構造を有する。しかし、人工芝は、天然芝と比較して硬く、滑りやすい表面のために使用者が滑ってしまい、その使用が次第に減少している。1990年代後半に、人工芝は、軟質プラスチックのフィラメントからなる長い繊維を下にある裏材上に構築し、長い繊維の間の空間を小さいチップのゴム及び/または砂などの充填材で満たすことによって弾性及び低い滑り抵抗性(sliding resistance)が向上し、最近、学校運動場をはじめとしてサッカー場、野球場などに使用が拡大されている。
【0003】
人工芝用充填材は、様々な形態で使用することができ、砂のみを使用する形態、廃タイヤから作られたゴムチップのみを使用する形態、下面に砂を敷設し、上面にゴムチップを敷設した2層構造を使用する形態、ゴムチップと砂との混合物を使用する形態、及びゴムチップとゴムがコーティングされた砂との混合物を使用する形態などがある。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態において、人工芝は、裏材と該裏材から上方に延びるパイル要素(pile elements)とを具備したパイルファブリック(pile fabric)と、パイル要素が少なくとも部分的に充填材層中に埋め込まれるように裏材上に充填された充填材層とを備える。充填材層は、ショア(Shore)A40〜90の硬さを有する弾性充填材と、ショアD50〜ロックウェル(Rockwell)R120の硬さを有する高硬度樹脂充填材とを含む。高硬度樹脂充填材は、合成樹脂マトリックス(matrix)と該合成樹脂マトリックス内に分散された無機フィラーとを含む。
【0005】
他の実施形態において、人工芝の製造方法は、裏材と該裏材から上方に延びるパイルとを具備したパイルファブリックとを用意する工程と、ショアD50〜ロックウェルR120の硬さを有する高硬度樹脂充填材であって、合成樹脂マトリックスと該合成樹脂マトリックス内に分散された無機フィラーとを含む高硬度樹脂充填材を用意する工程と、高硬度樹脂充填材とショアA40〜90の硬さを有する弾性充填材を混合して充填材混合物を形成する工程と、パイル要素が少なくとも部分的に充填材層中に埋め込まれるように充填材混合物を裏材上に充填させて充填材層を形成する工程とを含む。
【0006】
さらに他の実施形態において、人工芝用充填材は、高硬度樹脂充填材と弾性充填材との混合物を含む。高硬度樹脂充填材は、合成樹脂マトリックスと合成樹脂マトリックスに分散された無機フィラーとを含み、ショアD50〜ロックウェルR120の硬さを有する。弾性充填材は、ショアA40〜90の硬さを有する。高硬度樹脂充填材及び弾性充填材は、1:9〜9:1の重量混合比で混合する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】人工芝用充填材を充填した人工芝の一実施形態を示す断面図である。
【図2】人工芝用充填材に使用される高硬度樹脂充填材の一実施形態を示す図である。
【図3】人工芝充填材を充填した人工芝の他の実施形態を示す断面図である。
【図4】人工芝充填材を充填した人工芝の他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記「背景技術」で述べたように、人工芝用充填材は、5つの形態で使用してもよいが、これらはそれぞれ欠点を有している。砂のみを使用する充填材の第1の形態(米国特許第4,044,179号)では、充填材は人工芝全体を固くし得る。したがって、滑って転んだ場合、選手が頭に深刻な負傷を負う可能性がある。また、人工芝の滑りやすい表面により、芝に衝撃を与えたときに摩擦によって擦過傷を負ったり、競技場の有用性が低下することがある。また、時間が経過するほど砂が砕けて微細な粒子となり、この微細粒子が他の粒子の間を満たす。その結果、充填材は次第に硬くなる。ゴムチップのみを使用する充填材の第2の形態(米国特許第5,976,645号)では、充填材が非常に高い弾性を有し、よって選手が足首、膝、腰などに負傷を負ったり、ふくらはぎの筋肉を傷めることがある。ゴムチップ及び砂の2層構造を用いる充填材の第3の形態(米国特許第4,337,283号)では、充填材は、第1と第2の充填材の欠点を緩和している。しかし、やはり時間が経過するにつれて砂粒子が砕けて微細粒子になり、この微細粒子が他の粒子間を満たす。その結果、充填材が固くなるのを避けることは困難である。さらに、上層で広がるゴムチップが有する全ての欠点(すなわち、ゴムチップのみ使用する第2の形態の欠点)を克服することはできない。ゴムチップ及び砂の混合物を用いる充填材の第4の形態では、充填材は上記のすべての欠点がない。しかし、ゴムチップの比重(1.15〜1.20)と砂の比重(1.90〜2.25)との間に大きな差異があり、したがって、充填材は使用中に上下に分離する。結局、充填材はゴムチップ及び砂の2層構造を使用する第三の形態に変わってしまう。砂の比重と類似する比重のゴムチップを廃タイヤから作られるゴムチップの代わりに使用した場合でも、砂は圧密し、充填材は非常に硬くなる。ゴムチップ及びゴムがコーティングされた砂の混合物を使用する充填材の第5の形態(米国特許出願第20080145574号)では、充填材は、第4の形態で記載した砂の圧密及び硬化の欠点を克服することができる。しかし、砂にコーティングする費用が高いため、充填材を用いることは経済的に不利である。さらに、コーティングの接着力が十分ではなく、時間が経過につれてコーティングは磨り減る。
【0009】
サッカー場に使用される天然芝及び人工芝の品質のうち表面の硬さが競技性(playability)と負傷の危険性に大きく影響を及ぼす。この理由により、国際サッカー連盟(FIFA)は、表面硬度測定(FIFA推奨2 STAR/1 STAR(2004.7.1)及びIRB規定(2004.4))に基づいて人工芝の品質標準を定めている。表面硬度測定は、人工芝などの競技場表面系の衝撃吸収性能を測定するASTM F355の試験方法によって最大衝撃値(peak shock of impact、Gmax)を測定するものである。Gmax値は、重力に因る通常の加速度に対する、試験を行っている表面での衝撃時に受ける最大加速度(減速度)の比率を示すものである。したがって、Gmax値が高いほど、競技表面系の衝撃吸収性能が低い。Gmax値が80〜200の範囲である場合、芝は使用可能である。その範囲を外れた場合、芝を代える必要がある。詳細には、Gmaxが80未満である場合、芝の硬度は非常に低く、弾性は非常に大きい。対照的に、Gmaxが200超の場合、芝の硬度は非常に高く、弾性は非常に小さい。特に後者の場合、倒れたときに頭に深刻な負傷を負う危険がある。
【0010】
人工芝の充填材が砂のみからなる場合、Gmax値が400超となり得る。人工芝の充填材が廃タイヤから得られるゴムチップのみから形成される場合、Gmax値は40〜70の範囲となり得る。人工芝の充填材が厚いゴムチップ層及び薄い砂層を含む場合、Gmax値が80未満となり得る。人工芝の充填材が薄いゴムチップ層及び厚い砂層を含む場合、Gmax値が200超となり得る。ゴムチップ層及び砂層の厚さを調節することによりGmaxは80〜200の範囲に調節されるが、継続的なボールのバウンド、競技者のキック、突風、暴雨などによって層の厚さの比率は若干変わり得る。したがって、人工芝は、Gmax規定を部分的に満足させる部分とGmax規定を満たさない他の部分とに分けられ、人工芝は不均一になり得る。
【0011】
砂を充填材として使用する場合、時間の経過によって砂の一部分が砕けて微細粒子となり、この微細粒子が他の粒子の間の空間を埋め得る。それにより、砂が硬い状態で凝集し、Gmax値が200超になり得る。さらに、砂はサンドペーパーの原料として使用されることが知られているように、砂は人工芝を摩耗させて、人工芝の寿命を短縮し得る。さらに、多孔質構造を有している砂は、選手の汗または血、かび、動物の排泄物などを吸収し、よってバクテリアのような様々な病源菌を含み得る。このように、砂は、選手の健康に有害な多くの要因を有する。さらに、人工芝表面の砂は、選手が倒れたり、スライディングしたりする場合、選手と激しい摩擦を引き起こし得る。
【0012】
したがって、本発明概念の実施形態は、新しい充填材を含む改善された人工芝を提供することに関する。
【0013】
以下、いくつかの実施形態について詳細に参照し、その例を添付の図面で示す。しかし、図面及びこれに関連する発明の詳細な説明は、特許請求の範囲に記載の発明対象を開示した特定の形態に限定することを意図していないと理解すべきである。むしろ、本発明は、特許請求の範囲に記載の発明対象の真意及び範囲に属する改変、等価物、及び代替物も包含する。開示した要素、すなわち、図面に一般的に説明されかつ例示される要素は、様々な異なる形態で配置し、置換し、組み合わせを行い、設計することができることは容易に理解されるであろう。したがって、当該要素はすべて当業者に明確に参照され、本開示の一部を形成する。
【0014】
図1は、人工芝用充填材を有する人工芝の一実施形態を示す断面図である。図1を参照して、人工芝は、裏材10aと裏材10aから上方に延びるパイル要素10bとを含むパイルファブリック11と;パイル要素10bが少なくとも部分的に充填材層12中に埋め込まれるように裏材10a上に充填された充填材層12と;を含む。ここで、充填材層12は、弾性充填材13と高硬度樹脂充填材14とを含む。さらに、高硬度樹脂充填材14は、合成樹脂マトリックスと、合成樹脂マトリックスに分散された無機フィラーとを含むことができる。
【0015】
充填材層12は、弾性充填材13が高硬度樹脂充填材14と均一に混合した混合物を含むことができる。例えば、充填材層12は、1:9〜9:1の重量比の弾性充填材13及び高硬度樹脂充填材14の混合物を含むことができる。該重量比は、人工芝に要求される物性によって適切に調節し得る。
【0016】
人工芝は、下記のように製造することができる。まず、パイルファブリック110を用意する。パイルファブリック110は、裏材10aと裏材10aから上方に延びるパイル要素10bとを具備する。次に、合成樹脂マトリックスと該合成樹脂マトリックスに分散した無機フィラーとを含む高硬度樹脂充填材14を用意する。次いで、高硬度樹脂充填材14と弾性充填材13を混合し、充填材混合物を形成する。次に、パイル要素10bが充填材層12に少なくとも部分的に埋まるように、充填材混合物を使用して裏材10a上に充填された充填材層12を形成する。かくして、人工芝を製造することができる。高硬度樹脂充填材14は、合成樹脂と無機フィラーを混合した後、混合物を押出成形し、ペレット化(pelletizing)して用意することができる。
【0017】
裏材10aは、パイル要素10bを固定する機能を有し、水はけをよくために目の粗い構成(loose texture)又は穴開き構造を有してもよい。裏材10aは地面と接触してもよい(図示せず)。
【0018】
パイル要素10bは裏材10aに付着され、人工芝の表面としての働きをする。各パイル要素10bは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロンなどのようなプラスチックフィラメントから形成してもよく、緑色顔料を含有して天然芝と類似な感じを有するようにすることができる。
【0019】
充填材層12は、人工芝に弾性と低い滑り抵抗性を付与するために充填材をパイル要素10bの間の空き空間に満たすことによって形成することができる。充填材層12は、人工芝の性能に大きい影響を与えるので、適切で一貫した弾性度、硬さ、排水性を有する必要がある。弾性充填材13と高硬度樹脂充填材14の混合物を充填材層12として使用することによって、人工芝用充填材に要求される特性をすべて発揮するようにすることができる。
【0020】
弾性充填材13は、人工芝に弾性を付与するため、廃タイヤの再利用用チップ、熱可塑性エラストマー(TPE)チップ、特殊ゴムチップ、またはそれらの組み合わせから構成してもよい。廃タイヤ再利用チップは、廃タイヤを粉砕して製造することができる。特殊ゴムチップは、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、イソブチレンイソプレンゴム(ブチルゴムと呼ぶ)、ハイパロン(Hypalon)ゴム、ネオプレンゴムなどのゴムを加硫剤、加硫促進剤、加硫活性剤、無機フィラー、軟化剤、加工助剤、老化防止剤(anti-aging agent)などの配合化学物質と一緒に計量し、計量した材料を混合し、混合物を加硫化して平面的なゴムとし、該平面的なゴムを粉砕機によりペレット化することによって得てもよい。さらに、TPEチップは、スチレンブタジエンブロックコポリマー(SBS)、スチレンイソプレンスチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレンエチレンブタジエンスチレンコポリマー(SEBS)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)などのTPEを無機フィラー、軟化剤などと押出機を用いて混合した後、ペレット化することにより得てもよい。弾性充填材13の直径は、0.3〜3.0mm、好ましくは、0.5〜2.0mmであることができる。弾性充填材13は、他の物性に制限を加えずに、40〜90、好ましくは50〜80、より好ましくは55〜75のショアA硬さを有することができる。弾性充填材13の硬さがショアA 40未満の場合、弾性充填材13は非常に高い弾性となり、選手が足首、膝、腰に負傷を負う可能性が高い。弾性充填材13の硬さがショアA 90を超える場合、弾性充填材13を高硬度樹脂充填材と混合したときにGmax値が200を超える可能性があり、よって選手が倒れた時、頭に致命的な負傷を負い得る。混合される無機フィラーの量は、弾性充填材13が適切な硬度と比重とを有するように適切に調節されることができる。
【0021】
弾性充填材13とともに充填材層12に含まれる高硬度樹脂充填材14は、合成樹脂と無機フィラーとの複合体であることができる。
【0022】
図2は、人工芝用充填材に使用される高硬度樹脂充填材の一実施形態を示す図である。図2に示されたように、高硬度樹脂充填材14は、合成樹脂マトリックス15と該合成樹脂マトリックス15に分散された無機フィラー16とを含むことができる。高硬度樹脂充填材14は、図1の弾性充填材13より少なくとも高い硬さを有し、よって人工芝に硬い性質を付与することができる。
【0023】
高硬度樹脂充填材14は、硬度がショアD50〜ロッククウェルR120、好ましくはショアD60〜ロッククウェルR110であることができる。高硬度樹脂充填材14の硬さがショアD50未満である場合、高硬度樹脂充填材14は、弾性充填材13との相乗作用により高い弾性を有し、よって選手に足、首、膝、腰の負傷を負う可能性がある。また、夏季には、人工芝運動場の温度が70℃以上に上昇し得る。この際、プラスチックチップが集塊状となるかまたは選手の運動靴のスパイクにくっつき、競技に差し支えることとなる。さらに、人工芝充填材の寿命が短くなり得る。高硬度樹脂充填材14の硬さがロッククウェルR120超である場合、そのプラスチックが非常に硬く、よって、高硬度樹脂充填材14を弾性充填材13と混合しても、選手は倒れたときに頭に負傷を負う可能性がある。さらに、高硬度樹脂充填材14は芝を急速に摩滅させて、人工芝の寿命を短縮させることができる。
【0024】
合成樹脂マトリックス15として使用することができる材質は、高硬度樹脂充填材14が上記硬度範囲を満足すれば、特に制限されるものではない。例えば、人工芝が運動場に使用される場合、人工芝を外部環境に長時間露出しなければならないことを考慮して、耐候性が良い高分子材料が使用することができる。例えば、合成樹脂マトリックス15として使用する高分子材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレンコポリマーを含み、これらは単独でまたは少なくとも2つを組み合わせて使用されることができる。エチレンコポリマーは、エチレンに基づくモノマー単位と3〜20個の炭素原子を有するα−オレフインに基づく他のモノマー単位を有することができる。α−オレフインは、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどを挙げることができる。他の例として、エチレンコポリマーは、エチレンに基づくモノマー単位とビニルアセテートまたはビニルアクリレートに基づくモノマー単位を具備することができる。より具体的には、エチレンコポリマーは、エチレン−1−ブテンコポリマー、エチレン−4−メチル−1−ペンテンコポリマー、エチレン−1−ヘキセンコポリマー、エチレン−1−オクテンコポリマー、エチレン−1−デセンコポリマー、エチレン−1−ブテン−4−メチル−1−ペンテンコポリマー、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセンコポリマー、エチレン−1−ブテン−1−オクテンコポリマー、エチレン−エチルアクリレート、エチレン−ブチルアクリレート、エチレン−メタクリレート、エチレン−メチルメタクリレートなどを含むことができる。エチレンコポリマーは、全モノマー単位の含量が100重量%として定義したとき、コポリマーエチレンに基づくモノマー単位を50重量%以上含有することができる。
【0025】
無機フィラー16を合成樹脂マトリックス15に分散させると、高硬度樹脂充填材14の硬度及び比重を高めることができる。無機フィラー16は、タルク、雲母(mica)、炭酸カルシウム(CaCO3)、シリカ(SiO2)、珪灰石(CaSiO3)、粘土、珪藻土、酸化チタン(TiO2)、及びゼオライトなどを含み、これらは単独または少なくとも2つを組み合わせて用いることができ、価格を考慮すると炭酸カルシウムが好ましい。無機フィラー16は、平均直径が0.1μm〜5μmの範囲であり得る粉末形態を有することができる。
【0026】
無機フィラー16の含量は、高硬度樹脂充填材14の全重量に対して20重量%〜80重量%、好ましくは30重量%〜75重量%、さらに好ましくは40重量%〜70重量%であることができる。無機フィラー16の含量が上記範囲内にあるとき、適切な硬度及び比重を有する高硬度樹脂充填材14を得ることができる。
【0027】
さらに弾性充填材13と高硬度樹脂充填材14との比重差が、弾性充填材13の比重を高硬度樹脂充填材14の比重と比較したときに低いものに対して、30%以下、好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下であることができる。比重差がこの値より大きい場合、チップは上部及び下部に分離し得る。
【0028】
高硬度樹脂充填材14は、合成樹脂マトリックス15及び無機フィラー16の種類及び含量を適切に調節することによって所望の硬さ及び比重を有するように製造することができる。
【0029】
高硬度樹脂充填材14は、当業界において通常使用される添加剤、例えば酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、及び着色剤を含むことができる。高硬度樹脂充填材14は、混合装置を用いて合成樹脂及び無機フィラーを添加剤と混合することにより製造することができる。例えば、合成樹脂、無機フィラー、及び添加剤は、バンバリーニーダー(Banbury Kneader)、ブスニーダー(Buss Kneader)、シングルスクリュー押出機またはツインスクリュー押出機などを使用して混合し、押出成形することができる。
【0030】
図2に示すように、高硬度樹脂充填材14は、楕円形のペレット形状を有することができる。ペレットの直径(D)は、0.5〜2.5mmであることができる。高硬度樹脂充填材14は、全体的に棒状、球体または楕円体の形状を有することができる。ペレットは、四角形または六角形のような多角形断面及び円形断面を有することもできる。
【0031】
適当な人工芝用充填材は、それぞれ1種類の弾性充填材13と高硬度樹脂充填材14との混合物に限定されない。したがって、好適な充填材は、それぞれ色相及び形状が異なる少なくとも2つの種類の弾性充填材13と高硬度樹脂充填材14との混合物を含むことができる。弾性充填材13と高硬度樹脂充填材14の混合比は、使用によって様々選択されることができる。一般的に、混合比は、9:1〜1:9、好ましくは8:2〜2:8、より好ましくは7:3〜3:7、最も好ましくは6:4〜4:6であることができる。混合比が9:1を超える場合、Gmax値が80未満になり得るので、選手が足、首、膝、腰を負傷する確率が高くなる。逆に、混合比が1:9未満の場合、Gmax値が200を超え得るので、選手が運動中に倒れたときに頭に致命的な負傷を負う確率が大きくなる。ここで、Gmax値とは、衝撃試験の測定値を意味し、ASTM F355−Aに基づいて測定することができる。
【0032】
図3及び図4は、人工芝充填材を有する人工芝の他の実施形態を示す断面図である。図3は、裏材30aとパイル要素30bとを具備したパイルファブリック31を充填材層32で充填した人工芝を示している。ここで、充填材層32は、弾性充填材33を含む下部層と高硬度樹脂充填材34を含む上部層とに分けられる。図4は、図3の場合とは異なり、充填材層32が高硬度樹脂充填材34を含む下部層と弾性充填材33を含む上部層とに分けられた人工芝を示している。衝撃吸収性及び運動場の競技性を考慮して、充填材層32は、弾性充填材33を含む層と高硬度樹脂充填材34を含む層がそれぞれ上部層及び下部層またはその反対に積層された形態で使用することができる。さらに、上部層及び下部層はそれぞれ、用途によって様々な厚さを有することができる。
【0033】
詳細には、人工芝用充填材は、弾性充填材と高硬度樹脂充填材とを混合した1層構造で使用することに代えて、上記のように人工芝の種類と使用目的によって上下層が互いに分離した2層構造または多層構造で使用することもできる。
【0034】
上述にしたがって、本明細書に開示された人工芝用充填材は、従来の充填材として使用される砂の代わりに新しい充填材を使用することにより、砂の圧密に起因して人工芝が硬くなる問題、及び多孔の砂構造に起因しyr各種バクテリアや細菌により汚染される問題を解決することができる。弾性充填材及び高硬度樹脂充填材の種類及び混合比を適切に選択して比重差を低減し、よって持続的な使用において様々な物性を安定的に維持することができるようにする。上述した人工芝用充填材を有する人工芝は、弾性、硬さ、及び滑り抵抗性を等しく備え、よって選手の負傷防止と競技性向上を図ることができる。
【0035】
以下、実施例を参照して本明細書に開示された技術をさらに詳しく説明する。
【実施例】
【0036】
試料の用意:表1に示されたように、様々な配合比で充填材チップを作って、硬度及び比重を測定した。
【0037】
【表1】

−含量:重量部
−SEBS:スチレンエチレンブタジエンスチレンブロックコポリマー
−HDPE:高密度ポリエチレン
−PP:ポリプロピレンホモポリマー
−M:メルカプトベンゾチアゾール
−TS:テトラメチルチウラムモノスルフィド
【0038】
上記の混合比で作った充填材チップを様々な比率で混合して製造した混合物について下記の試験を行い、その結果を表2に示す。
【0039】
1.衝撃試験:ファブリック充填材としての混合物を35mm厚さでパイルファブリックに敷設し、人工芝を造成した。ASTM F3550−A衝撃試験により人工芝の表面のGmax値を測定した。
2.分布(distribution)試験:30cmX30cmの面積を有する人工芝内で50cmの高さでサッカーボールを1000回バウンドさせた後、人工芝の中心部で充填材チップの分布状態を調査した。
【0040】
【表2】

混合比 −Gmaxの許容範囲:80〜200
【0041】
表1の結果から、無機フィラーの含量が増加するにつれて、弾性充填材及び高硬度樹脂充填材の硬度及び比重が増加することが分かる。表2の分布試験結果において、弾性充填材と高硬度樹脂充填材とを混合した人工芝用充填材の場合、弾性充填材と高硬度樹脂充填材との比重差が最も軽い比重に対して約30%を超える場合、分布状態が維持されないことが分かる。過剰な含量のフィラーを有する弾性充填材(EP−3)及び高硬度樹脂充填材(PE−3、PP−1)を使用する場合、硬さが大きく増加し、よって混合比によってGmax値が許容範囲から外れ得るが、衝撃試験の結果から、適切な弾性充填材及び高硬度樹脂充填材の種類及び混合比を適切に選択することによって、用途に好適になるように所望の物性を調節することができることが分かる。
【0042】
以上から、本明細書において例示の目的で本開示の様々な実施態様を記述を行い、また、本開示の範囲及び真意内において様々な変形を加えることができると理解するものである。したがって、本明細書で開示された様々な実施形態は、添付の特許請求範囲によって示される真の範囲及び真意を限定することを意図するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏材と該裏材から上方に延びるパイル要素とを具備したパイルファブリックと;
前記パイル要素が少なくとも部分的に充填材層に埋め込まれるように、前記裏材上に充填された充填材層と;を含み、
前記充填材層は、ショアA40〜90の硬さを有する弾性充填材と;ショアD50〜ロックウェルR120の硬さを有する高硬度樹脂充填材であって、合成樹脂マトリックスと該合成樹脂マトリックス内に分散した無機フィラーとを含む高硬度樹脂充填材と;を含む、人工芝。
【請求項2】
前記合成樹脂マトリックスは、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレンコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の人工芝。
【請求項3】
前記無機フィラーの含量は、前記高硬度樹脂充填材の重量に対して20重量%〜80重量%である、請求項1に記載の人工芝。
【請求項4】
前記充填材層は、前記弾性充填材と前記高硬度樹脂充填材との混合物を含む、請求項1に記載の人工芝。
【請求項5】
前記弾性充填材と前記高硬度樹脂充填材との混合物が、約1:9〜9:1の範囲の重量混合比を有する、請求項4に記載の人工芝。
【請求項6】
前記充填材層は、前記弾性充填材を含む層と前記高硬度樹脂充填材を含む層とがそれぞれ上部層及び下部層またはその反対に積層されるように構成される、請求項1に記載の人工芝。
【請求項7】
前記弾性充填材及び前記高硬度樹脂充填材は、比重差がそれらの比重のうちの低いものに対して30%未満であるように構成される、請求項1に記載の人工芝。
【請求項8】
裏材と前記裏材から上方に延びるパイルとを具備するパイルファブリックを用意する工程と;
ショアD50〜ロックウェルR120の硬さを有する高硬度樹脂充填材であって、合成樹脂マトリックスと前記合成樹脂マトリックス内に分散した無機フィラーとを含む高硬度樹脂充填材を用意する工程と;
前記高硬度樹脂充填材とショアA40〜90の硬さを有する弾性充填材とを混合し、充填材混合物を形成する工程と;
前記パイル要素が少なくとも部分的に充填材層に埋め込まれるように、前記充填材混合物を前記裏材上に充填させて充填材層を形成する工程と;
を含む、人工芝の製造方法。
【請求項9】
前記高硬度樹脂充填材の用意は、前記合成樹脂及び前記無機フィラーを混合し、押出成形し、及びペレット化して行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
高硬度樹脂充填材と弾性充填材との混合物を含む人工芝用充填材であって、前記高硬度樹脂充填材は、合成樹脂マトリックスと該合成樹脂マトリックス内に分散した無機フィラーとを含み、かつショアD50〜ロックウェルR120の硬さを有し、前記弾性充填材は、ショアA40〜90の硬さを有し、
前記高硬度樹脂充填材及び前記弾性充填材は、約1:9〜9:1の範囲の重量混合比で混合される、人工芝用充填材。
【請求項11】
前記合成樹脂マトリックスは、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレンコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項10に記載の人工芝用充填材。
【請求項12】
前記弾性充填材は、廃タイヤ再利用チップ、熱可塑性エラストマーチップ、及び特殊ゴムチップからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項10に記載の人工芝用充填材。
【請求項13】
前記無機フィラーは、タルク、雲母、炭酸カルシウム(CaCO)、シリカ(SiO)、珪灰石(CaSiO)、粘土、珪藻土、酸化チタン(TiO)、及びゼオライトからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項10に記載の人工芝用充填材。
【請求項14】
前記無機フィラーの含量は、前記高硬度樹脂充填材の重量に対して20重量%〜80重量%である、請求項10に記載の人工芝用充填材。
【請求項15】
前記弾性充填材及び前記高硬度樹脂充填材は、比重差がそれらの比重のうちの低いものに対して30%未満であるように構成される、請求項10に記載の人工芝用充填材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−507543(P2013−507543A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533065(P2012−533065)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/KR2010/002981
【国際公開番号】WO2011/043529
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(512091501)
【氏名又は名称原語表記】LEE,Sungyull
【住所又は居所原語表記】19−905,LUCKY APT.,707 BUNGI,ONCHEON 2−DONG,DONGNAE−GU,BUSAN 607−062,REPUBLIC OF KOREA
【Fターム(参考)】