説明

人工関節の動作面とそれに対応して構成された体内移植部品の最適な相対位置を決定及び調整するための装置及び方法

【課題】人間の膝関節用内臓式人工器官で使用するために規定された、人間の関節又は人工的な関節の関節頭又は関節窩の複数の動作面の最適な相対位置を決定及び調整するための装置及び方法に関する。
【解決手段】この装置1は、スライド式操作部3を用いて、人間の関節又は骨格領域に固定可能な収容部2に対して相対的に動かせる区画4を備えている。この場合、操作の間に、膝関節の前方と後方間の動き及び/又は内側と外側間の動きによって規定される、収容部2に対する区画4の基準位置は、目盛5を備えた標識6を用いて検出することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特に、人間の膝関節用内蔵式人工器官を使用するために規定された、人工関節の少なくとも一つの動作面の最適な相対位置を決定及び調整するための装置に関する。更に、この発明は、この装置の使用方法及び最適な姿勢と相対位置に置かれている体内移植部品の使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工的な関節、特に、膝関節は、既に、多くの公開文献の対象となっている。例えば、特許文献1は、人間の膝関節用内臓式人工器官としての人工関節を記載しており、その人工関節は、第一の関節頭と第一の関節窩から構成される第一の関節区画と第二の関節頭と第二の関節窩から構成される第二の関節区画とを有し、その際関節頭には、その外側に関して、脛骨上に矢状の主動作面に凸部が、その横方向に関して、凹部が向き合っているとともに、各関節区画の両接触面が主動作面においてずれている。こうすることによって、患者に対して良好な動きの推移が、自然な動きの推移に近似させる形で実現されている。
【0003】
特許文献2は、関節面の曲がった少なくとも二つの人工関節部分から成る人工関節に関し、その際関節面の各々には、曲がった接触面が形成されている。
【0004】
これらから周知の人工関節により、自然な動きの推移に対する最適な近似を達成することができる。
【0005】
しかし、実際には、それによって達成可能な動きの推移のためには、人工的な動作面のその残りの動作面に対する相対的な位置と向き、又は人工的な動作面の上下に重なり合った位置と向きが決定的に重要であるので、人間の関節の個々の接触面を人工的な関節部品の動作面と置き換えられるかが問題であることが分かっている。しかし、そのことは、実際には、執刀医の器用さではなく、偶然に依存している。
【0006】
更に、従来技術では、特許文献3〜7が周知である。
【特許文献1】ドイツ特許第10231538号明細書
【特許文献2】国際特許公開第98/20816号明細書
【特許文献3】米国特許公開第2005/0101966号明細書
【特許文献4】国際特許公開第98/41152号明細書
【特許文献5】国際特許公開第2004/041097号明細書
【特許文献6】欧州特許第1402855号明細書
【特許文献7】米国特許公開第6002859号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の課題は、複数の動作面の最適な相対位置を決定するための装置を実現することである。更に、この装置の使用方法を提示することである。この方法は、最適に調整された体内移植部品を使用するための役割も果たす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題は、この発明にもとづき、請求項1の特徴による装置によって解決される。この発明の別の実施形態は、従属請求項から明らかにすることができる。
【0009】
即ち、この発明にもとづき、特に、人間の膝関節用内蔵式人工器官を使用するために規定された、人間の関節及び/又は人工的な関節の関節頭及び/又は関節窩の複数の動作面の最適な相対位置を決定するための装置であって、この装置は、人間の関節又は骨格領域に取り外し可能な形で固定することができる収容部に対して相対的に動ける区画を備えており、その結果膝関節の動きによって規定される、収容部に対する区画の基準位置を検出することが可能である装置が定められる。
【0010】
この場合、この発明は、先ずは、継続して使用する前に、この装置を調整用補助手段として取り外し可能な形で固定して、当該の区画を動かせるようにすることによって、高い確度と少ない負担で相対位置の決定を実現することができるという知見を出発点としている。それにより、その後に行われる関節の動きは、最適な相対位置において行われることとなる。この相対位置は、この装置において、基準位置として検知することが可能であり、その結果この基準位置にもとづき、人工的な関節を選定又は調整することが可能となる。規定された相対位置は、任意選択によりロック可能とすることもできる。
【0011】
人間の膝関節に関して、この課題を満たすことができるためには、正中線の方の、即ち、内側の関節区画を関節窩と関節頭とから構成し、外側の関節区画を矢状の方向(主機能方向)に向けて凸と凸の形状に形成するが、横方向に対しては、関節頭を凸状に、脛骨の面を凹状に構成するのが有利である。このように構成した面は、四つの関節関係において、靭帯構造に対して最適に調整することができる。
【0012】
有利には、横方向部分において、接触構造は、それぞれ内側の斜面(Abhaengen )上に有る。
【0013】
この場合、垂直方向の調整は、例えば、様々な高さの詰め物を差し込むことによって、或いはねじ機構又は同等のものによっても実現可能である。
【0014】
この区画は、例えば、球関節を用いて、複数の自由度で動かせる形に配置することができる。しかし、区画を二つの空間軸の方向に動かせる形に配置して、そうすることによって、基準位置をX及びY座標として簡単に読み取ることができるようにするのが特に有利である。
【0015】
そのために、スライド式操作部を用いて、区画を収容部と連結し、スライド式操作部の動く領域において、相対位置を直接読み取れるようにするのも特に有利である。このことは、ロック機構と組み合わせることができる。スライド式操作部は、摩擦抵抗に打ち勝つために、より大きな力を入れる必要があるようにして、区画をうっかり解除してしまう動きを防止した形に実現することもできる。更に、構成部品を、緩んでも脱落しない形で配置することができる。
【0016】
そのためには、例えば、区画が、構造上の負担を軽減するために、特に、収容部の突起が嵌合する溝状の凹部を備えている変化形態が好適である。
【0017】
更に、基準位置が、標識によって識別可能であり、その標識が、目盛を備えており、その目盛にもとづき、好適な人工関節又は個々の構成要素の選定を直ちに行うことができるようにするのが、特に有望な効果があることが分かっている。
【0018】
この発明の同じく特に目的に適った別の変化形態は、標識を、電子的な信号処理用のセンサーに対応させて、そのようにして検出した基準位置を電子データ処理部に供給することができるようにし、それにより人工関節の選定及び調整を簡単化することによって実現される。
【0019】
更に、この発明による装置が、膝関節が動いている間に、収容部に対する区画の相対的な動きを検出するためのセンサーを備えており、動きの推移に関する情報とそれによって関節の角度設定に依存した基準位置を入手するようにするのが特に有利である。
【0020】
基本的には、この発明による装置を用いて、人間の関節の残存する表面領域に対する個々の人工的な動作面の相対位置を決定することができる。それに対して、この発明による装置が少なくとも二つの互いに相対的に動く区画を有する変化形態も、特に目的に適っている。この場合、相対位置の決定は、隣接する区画に限定されず、更に互いに対向する区画に生じる作用結合における相対位置も決定することができる。
【0021】
この場合、この発明による装置は、任意の関節で用いることができる。それに対して、この発明による装置が、内側において脛骨に対応する関節窩を調整する役割を果たすか、或いは大腿骨の関節頭に対して、外の脛骨側において、主動作面には矢状に凸部を、横方向には凹部を対応させるのが特に有利である。
【0022】
二番目に挙げた課題は、先ずは、少なくとも一つの区画を取り除いて、調整補助手段としての役割を果たす装置を取り外し可能な形で固定し、その次に膝関節を動かして、調整補助手段の相対的な動きから得られる基準位置を検出して、この位置を、使用する人工的な関節部品の選定及び/又は調整のベースとし、最終的に、人工的な膝関節を使用するために、この装置を取り外すことの、特に、人間の膝関節用内蔵式人工器官として実現された人工的な関節部品の相対的な目標位置を決定する方法によって解決される。
【0023】
こうすることによって、この装置において、簡単な手法で基準位置を読み取ることができるとともに、人工的な関節部品の調整及び選定に直ちに活用することができるので、好適な人工関節を調整及び選定するための人間の関節の関節パラメータの測定技術的な検出が不要となる。
【0024】
補助者により行われる関節の簡単な動きだけが必要であり、それによって、基準位置が自動的に規定されることとなる。この場合、特に、この操作の間に基準位置を取得するために、膝関節を完全に曲げるのが、特に目的に適っている。
【0025】
この場合、関節頭又は関節窩の複数の区画の相対的な目標位置を決定するために、この方法を繰り返す形の別の特に有利な変化形態にもとづき、複数又はすべての関節区画の相対位置を問題無く調整することができる。
【0026】
例えば、好適な区画を決定するために、基準位置を補正用の変数として検出して、その基準位置にもとづき、代用関節の関節区画を決定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
この発明は、様々な実施構成を許容している。この発明の基本原理の更なる明確化のために、その中の二つを図面に図示して、以下において記述する。
【実施例1】
【0028】
図1と2は、全体的に図示されたすべての構成要素を符号1で表示した、人工関節とそれに対応して構成された人工関節の体内移植部品の図示されていない動作面の最適な位置を決定及び調整するための装置の側面図と正面図を示している。この装置1は、スライド式操作部3を用いて、人間の関節又は骨格領域に固定可能な収容部2に対して相対的に動ける区画4を備えている。この場合、操作の間に膝関節の後方と前方間の動きによって規定される、区画4に対する収容部2の基準位置は、目盛5を備えた標識6を用いて検出することが可能である。こうすることによって、最適な位置を読み取って、体内移植部品と体内移植位置の評価に活用する方策が実現される。更に、外側の区画4が、内側の区画7に対しても相対的に動けるようにして、調整の可能性を改善している。
【実施例2】
【0029】
それに対して、図3と4は、全体的に図示されたすべての構成要素を符号8で表示した別の装置の側面図と正面図を示しており、この場合、外側の区画4及び/又は内側の区画7は、それぞれ図1と2に図示されたスライド式操作部3と別のスライド式操作部9を用いて、クロステーブルの形式により、後方と前方間と外側と内側間の二つの空間軸の方向に対して動かせる形に配置されている。この装置8は、調整補助手段として取り外し可能な形で固定されており、この場合外側及び/又は内側の区画4,7は、収容部2に対して相対的に動かせる。そのため、関節の動きを実行すると、この装置8において、基準位置として検知することが可能、或いはロックすることが可能である最適な相対位置に動くこととなり、その結果この基準位置にもとづき、人工関節を選定又は調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明による一つの自由度に関する調整装置の側面図であり、破線を引い た側は、動く区画を任意選択により外側又は内側に配置することを示す。
【図2】図1に図示した調整装置の正面図
【図3】二つの自由度に関する別の調整装置の側面図
【図4】図3に図示した調整装置の正面図
【符号の説明】
【0031】
1 この発明による装置
2 収容部
3 スライド式操作部
4 区画
5 目盛
6 標識
7 区画
8 この発明による装置
9 スライド式操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に、人間の膝関節用内蔵式人工器官で使用するために規定された、人間の関節及び/又は人工の関節、特に、それに対応して構成された体内移植部品の関節頭及び/又は関節窩の複数の動作面の最適な相対位置を決定及び/又は調整するための装置(1,8)であって、この装置(1,8)は、人間の関節又は骨格領域に取り外し可能な形で固定された収容部(2)に対して相対的に動ける区画(4,7)を備えており、その結果膝関節の動きによって規定される、収容部(2)に対する区画(4,7)の基準位置を検出することが可能である装置。
【請求項2】
内側の関節区画が、関節窩と関節頭とから構成されており、外側の関節区画が、矢状の方向に凸と凸の形状に形成されており、この関節頭が、横方向に凸状に、この関節窩が凹状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の装置(8)。
【請求項3】
区画(4,7)の接触線が、横方向部分において、それぞれ関節頭及び/又は関節窩の内側の斜面上に有ることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置(1,8)。
【請求項4】
区画(4,7)の相対的な動きに対して垂直方向に調整することが可能であることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の装置(1,8)。
【請求項5】
区画(4,7)が、二つの空間軸の方向(前方と後方間、外側と内側間)に動ける形に配置されていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の装置(1,8)。
【請求項6】
区画(4,7)が、スライド式操作部(3,9)を用いて、収容部(2)と連結されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の装置(1,8)。
【請求項7】
区画(4,7)が、収容部(2)の突起に嵌合する、特に、溝状の凹部を有することを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載の装置(1,8)。
【請求項8】
当該の基準位置が、標識(6)によって識別することが可能であることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一つに記載の装置(1,8)。
【請求項9】
標識(6)が、目盛(5)を備えていることを特徴とする請求項8に記載の装置(1,8)。
【請求項10】
標識(6)が、電子的に信号処理するためのセンサーに対応していることを特徴とする請求項8又は9に記載の装置(1,8)。
【請求項11】
この装置(1,8)が、膝関節が動いている間に、収容部(2)に対する区画(4,7)の相対的な動きを検出するためのセンサーを有することを特徴とする請求項1から10までのいずれか一つに記載の装置(1,8)。
【請求項12】
膝関節の動きによって規定される基準位置を、それに続いてロックすることが可能であることを特徴とする請求項1から11までのいずれか一つに記載の装置(1,8)。
【請求項13】
この装置(1,8)が、少なくとも二つの互いに相対的に動く区画(4,7)を有することを特徴とする請求項1から12までのいずれか一つに記載の装置(1,8)。
【請求項14】
この装置(1,8)が、脛骨に対応する関節窩を調整する役割を果たすことを特徴とする請求項1から13までのいずれか一つに記載の装置(1,8)。
【請求項15】
この装置(1,8)が、脛骨に対応する関節頭(矢状部分)を調整する役割を果たすことを特徴とする請求項1から14までのいずれか一つに記載の装置(1,8)。
【請求項16】
特に、人間の膝関節用内蔵式人工器官として実現された人工的な関節部品の相対的な目標位置を決定するための方法であって、
先ずは、少なくとも一つの区画を取り外して、調整補助手段としての役割を果たす請求項1〜15までのいずれか一つに記載の装置を取り外し可能な形で固定し、
その次に、膝関節を動かして、
調整補助手段の相対的な動きから得られる基準位置を検出し、
この基準位置を、調整対象の人工関節部品の選定及び/又は調整のベースとし、
最後に、人工関節を使用するために、この装置を取り外す方法。
【請求項17】
当該の基準位置を取得するために、膝関節を完全に曲げることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
関節頭及び/又は関節窩の複数の区画の相対的な目標位置を決定するために、当該の方法を繰り返すことを特徴とする請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
当該の基準位置を、補正用の変数として検出することを特徴とする請求項16から18までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項20】
当該の基準位置にもとづき、代用関節の関節区画を決定することを特徴とする請求項16から19までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項21】
請求項1から15までのいずれか一つに記載の装置の動作方法にもとづき構成され、最適な姿勢で移植された体内移植部分。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−75614(P2007−75614A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246207(P2006−246207)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(300005068)ハー・ヨット・エス・ゲレンク・ジステム・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (2)
【Fターム(参考)】