説明

人工関節手術支援装置

【課題】 骨に人工関節を設置手術する際に、術中の位置決め操作が容易で術者及び患者に対する術中の被爆量を少なくできる人工関節手術支援装置を提供する。
【解決手段】 骨に人工関節を設置手術する際に使用する人工関節手術支援装置であって、人工関節を設置手術する際の目印となるモニター点(P)を形成するモニター点形成手段(10、11)と、モニター点を含む領域を3方向(7a、8a、9a)から撮像可能であり撮像した画像をコンピュータへ転送可能な3個の撮像手段7、8、9)と、モニター点形成手段と3個の撮像手段を一体的に保持する枠体(4、5、6)と、を備えことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、人工関節手術支援装置に係り、特にに人工関節を設置手術する際に使用する人工関節手術支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人工膝関節等の人工関節の設置手術においては、人工関節の設置位置が的確であるか否かはその機能の良否に大きく影響する。このため、予定された人工膝関節の設置位置を術野において再現し骨切り操作を近年発達した工学的手法により管理するコンピュータ支援手術(conputer assited surgery)が世界的に広がり始めている。
【0003】
人工関節を施工する場合に、人工関節の設置位置を特定するために骨の骨切り位置を特定し、位置決め操作を行う必要があり、この工学的手法としては、2方向からのX線撮影や磁気や光を用いた計測装置を使用し骨位置等を3次元的に計測することが行われる。
【0004】
に関する。
【0005】
以下の特許文献には、X線照射機と専用カセッテ台を用いて患者の骨を撮影し、標本骨3次元データを参照し、標本骨3次元データの表示画像を、患者の骨が撮影されたX線画像に変形させることにより患者の骨近似3次元データを作成し、関節手術支援を行うことが開示されている。
【特許文献1】特開2003−144454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
人工関節の設置手術において、骨の骨切り位置の特定や骨の切断及び人工関節の設置の施工操作の大部分をX線撮影に依存することは、X線の被爆量が無視できなくなり、術者や患者に悪影響を与える問題がある。
【0007】
また、磁気や光を用いた計測装置を使用する場合には、計測装置が大型になり手術装置が高価になるという問題があった。
【0008】
また、特定された骨切り位置に従って切断操作を実行する場合に、特定された骨切り位置に従って骨切り治具を正確に位置設定し簡易に切断操作を実行することが容易でないという問題があった。
【0009】
そこで、本願発明の目的は、上記従来技術の有する問題を解消し、骨に人工関節を置換手術をする際に、術中の位置決め操作が容易であり、術者及び患者に対する術中の被爆量を少なくできる人工関節手術支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本願発明に係る人工関節手術支援装置は、 骨に人工関節を設置手術する際に使用する人工関節手術支援装置であって、人工関節を設置手術する際の目印となるモニター点を形成するモニター点形成手段と、前記モニター点を含む領域を3方向から撮像可能であり撮像した画像をコンピュータへ転送可能な3個の撮像手段と、前記モニター点形成手段と前記3個の撮像手段を一体的に保持する枠体と、を備えことを特徴とする。
【0011】
また、前記モニター点形成手段は、前記モニター点に交差するように方向指示可能な複数の方向指示手段を有することを特徴とする。
【0012】
また、前記方向指示手段は、前記モニター点に向かって光線を照射する複数の照射源であることを特徴とする。
【0013】
また、前記方向指示手段は、前記モニター点に向かって延出可能な複数の鋼鉄線であることを特徴とする。
【0014】
また、前記3方向は前記モニター点で交差することを特徴とする。
【0015】
また、前記3方向は前記モニター点を原点とする直交3軸を構成する方向であることを特徴とする。
【0016】
また、前記枠体は骨を切除するための骨切り治具と一体的に保持可能であることを特徴とする。
【0017】
また、前記枠体は基部に立設された軸部と前記軸部の上部で分岐する2個のアームとを有し、前記3個の撮像手段は前記軸部と前記2個のアームに取り付けられており、前記複数の方向指示手段は、少なくとも、前記軸部と前記2個のアームのいずれかのアームとに取り付けられていることを特徴とする。
【0018】
また、前記3個の撮像手段はデジタルカメラあるいはビデオカメラであり、前記コンピュータはパーソナルコンピュータであることを特徴とする。
【0019】
また、術前計画において手術対象となる患者の骨3次元データと施工すべき人工関節のデータを予め得ておき、前記3個の撮像手段で得た3個の画像と前記骨3次元データとを前記モニター点を介して前記コンピュータの表示画面上で対応付けることを特徴とする。
【0020】
また、前記骨3次元データは、標本骨3次元データを参照して作成された患者の骨近似3次元データであることを特徴とする。
【0021】
また、前記骨3次元データは、CTの手法またはMRIの手法により得た複数のスライス画像を合成して得られる患者の合成3次元データであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本願発明の構成によれば、手術対象となる患者の執刀した患部の着目点にモニター点を位置させ、3個の撮像手段により3方向から撮像し撮像した3個のデータをコンピュータでデータ処理できるので、術前計画において予め得た患者の骨3次元データと施工すべき人工関節のデータを活用して、的確な人工関節の設置手術を迅速に行うことが可能になる。
【0023】
また、骨切り治具の正確な位置決めを行おうとする際に、手術中においてはX線照射装置に依存する必要がないので、術者及び患者に対するX線の被爆量を極力少なくすることができる。
【0024】
また、パーソナルコンピュータや、デジタルカメラあるいはビデオカメラや、レーザポインタ等の汎用性のある部材を利用することが可能であるので、簡易な構成で安価な人工関節手術支援装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に図面を参照して、本願発明に係る人工関節手術支援装置1の実施形態について説明する。
図1は人工関節手術支援装置1の斜視図を表し、図2の(a)、(b)、(c)は各々上面図、平面図及び側面図を表す。人工関節手術支援装置1は、基台2と、基台2の下部に取り付けられ図示しない手術台に取り付け可能な取り付け部3と、基台2より垂直に延設された直線棒状の軸部4と、軸部4の先端部から分離して延設されたアーム5及びアーム6とを備えている。アーム5とアーム6は各々の基端部で軸部4に平行な平面内で互いに90度の角度をなす方向に分岐しており、またアーム5とアーム6は各々の中間部5a、6aで軸部4に直交する方向に互いに平行になるように折り曲げられている。
【0026】
軸部4とアーム5とアーム6との各々の先端部には、撮像装置としてデジタルカメラ7、8、9が設置されている。
【0027】
また、デジタルカメラ7、8の近傍には、可視光のレーザダイオードあるいはLEDからなる2個の方向指示手段(モニター点形成手段)としてのレーザポインタ10、11が取り付けられている。レーザポインタ10、11から照射された光線10a、11aは、人工関節を設置手術する際の目印となるモニター点Pで一点で交差する。図2(d)は、保持部材上にデジタルカメラ7、8とレーザポインタ10、11とが互いに近傍に取り付けられていることを模式的に示す図である。
【0028】
デジタルカメラ7、8、9の各々の光軸7a、8a、9aは一点の交差点で交差している。光軸7a、8a、9aは請求項1に記載の「3方向」を形成する。この交差点はモニター点Pの近傍にあればよいが、ここでは、光軸7a、8a、9aの交差点はモニター点Pと一致しており、データ処理の簡易化を図っている。また、光軸7a、8a、9aは互いに直交し、従ってモニター点Pを原点とする直交座表系の3軸を構成している。なお、光軸7a、8a、9aは、モニター点Pの近傍の一点の交差点で交差していさえすれば、必ずしも直交3軸を構成する必要はないが、直交座表系の3軸を構成することによりデータ処理の簡易化を図ることができる。
【0029】
なお、光軸7a、8a、9aは実質的に一点で交差していればよいのであり、データ処理上で許容可能な範囲であれば多少のずれがあってもよい。また、デジタルカメラ7、8、9等を軸部4とアーム5とアーム6に固定的に設定しておくことでもよいが、光軸7a、8a、9aが一点で交差可能なように軸部4とアーム5とアーム6に取り付けられた微調具を用いてデジタルカメラ7、8、9の姿勢をアライメント可能にし、光線10a、11aがモニター点Pで交差可能なように軸部4とアーム5に取り付けられた微調具を用いてレーザポインタ10、11の姿勢をアライメント可能にしておくことも可能である。
【0030】
また、デジタルカメラ7、8、9の代わりに3個のビデオカメラを用い、3個のビデオカメラの対応する3個の静止画像を合成して用いたり、あるいはこれらの合成画像を組み合わせて得られる動画像を用いることも可能である。
【0031】
また、モニター点形成手段を2個のレーザポインタ10、11で構成した例を示したが、図11に示すように、デジタルカメラ9の近傍にもレーザポインタ12を取り付けてモニター点形成手段を3個のレーザポインタ10、11、12で構成するようにしてもよい。ここで、レーザポインタ10、11、12から照射された光線10a、11a、12aは、モニター点Pで交差する。この場合、後述するように手術台上の執刀された患者の関節部52にモニター点Pを投影させるときに、光線10a、11a、12aのうちの例えば光線11aが患者の関節部52や術者の手等によって遮蔽されるような状態においても、関節部52にモニター点Pを投影させた状態を維持させることができ、関節部52にモニター点Pを投影させる確実性を確保することができる。
【0032】
また、複数の方向指示手段としてのレーザポインタ10、11、12の代わりに、デジタルカメラ7、8、9の近傍で保持されモニター点Pに向かって出し入れ可能な複数の鋼鉄線を用いることも可能である。この場合、複数の方向指示手段を簡易に構成することができる。
【0033】
また、モニター点形成手段としてモニター点Pに交差するように方向指示可能なレーザポインタ10、11、12のような複数の方向指示手段を示したが、これに限らず、所望するモニター点Pを視認できるようにしさえすればよいのであり、複数の方向指示手段に代えて、所望するモニター点Pに位置に例えば赤色の小球を配置するようにしてもよい。
【0034】
また、取り付け部3は手術台に固定されてもよく、あるいは手術台の脇部に固定されてもよい。
【0035】
次に、人工関節手術支援装置1の使用形態について説明する。
人工関節手術支援装置1は、例えば人工膝関節の設置手術に使用される。図3または図5に示す人工関節手術支援装置1は、模式的に表示されたものであり、図1に示すものとは細部において同一には表示されていない。図3に示されるように、人工関節手術支援装置1は、モニター点Pが大腿骨50の遠位端と脛骨51の近位端との間にある露出した関節部52に位置するように位置決めされ、位置決めされた後に取り付け部3を手術台に固定して使用される。
【0036】
まず、図4を参照して、人工関節手術支援装置1を使用に至るまでの術前計画の一例として骨近似3次元データ62を用いる場合について説明する。図4(a)〜(d)は、概念を模式的に説明するものであり、実際の形状を表現したものではない。以下に説明することは、前出した特許公報(特開2003−144454号公報)に従うものである。
【0037】
図4(a)は、X線照射機と専用カセッテ台を用いて大腿骨50及び脛骨51に係る立ち姿勢にある患者の骨を撮影した骨写真データ60を示す。骨写真データ60は、図10に示すような2枚の所定の角度をなすX線用フレーム101、102を有する専用カセッテ台を用いて方向103、104の2方向、例えば60の成す方向より患者の骨のX線撮影し、得られた2枚のX線写真データを合成して得られたものである。骨写真データ60は異なる方向から撮像された2枚のX線写真データから合成されるので、3次元データには及ばないにしても、かなり正確に患者の患部の骨データを表すことができる。骨写真データ60は患者が立ち姿勢状態において撮像されたものであるから、患者の軟骨は通常の抗力が負荷された自然な状態として撮像される。骨写真データ60は、表示画面上に表示され、図4(e)に示す骨モデル61と比較される。
【0038】
図4(e)は、骨モデルサンプル61(1)・・・61(n)の集合からなる標本骨3次元データ61を模式的に示す図である。骨モデルサンプル61(1)・・・61(n)の各々は、種々のタイプの人の骨を表すコンピュータ処理可能な3次元のデジタル情報からなる。
【0039】
表示画面上に表示された骨写真データ60に対し骨モデルサンプル61(1)・・・61(n)の各々を重ね合わせ、コンピュ表示画面上で比較し、最も骨写真データ60に近似すると判断される骨モデルサンプル61(k)を選択し、骨モデルサンプル61(k)をコンピュータ処理によって患者の骨が撮影された骨写真データ60に変形させることにより患者の骨近似3次元データ62を作成する。骨近似3次元データ62はコンピュータ処理可能な3次元のデジタル情報である。
【0040】
図4(b)は、最も骨写真データ60に近似すると判断された骨モデルサンプル61(k)を変形してなる骨近似3次元データ62を模式的に示す図である。骨近似3次元データ62は患者の3次元の骨情報を表す。このように、骨写真データ60を標本骨3次元データ61と比較することによって、骨近似3次元データ62はコンピュータ処理可能な3次元のデジタル情報に昇華されたことになる。骨近似3次元データ62は、表示画面上に表示され、図4(f)に示す関節モデル63と比較される。
【0041】
図4(f)は、関節モデルサンプル63(1)・・・63(m)の集合からなる関節モデル63を模式的に示す図である。関節モデルサンプル63(1)・・・63(m)の各々は、種々のタイプの膝関節を表すコンピュータ処理可能な3次元のデジタル情報からなる。
【0042】
次に、図4(c)に示すように、骨近似3次元データ62の情報を参照し、採用すべき人工関節を選択する。このために、表示画面上に表示された骨近似3次元データ62に対し表示画面上で関節モデルサンプル63(1)・・・63(m)の各々を重ね合わせて比較し、最も適切であると判断される関節モデルサンプル63(j)を選択する。
【0043】
次に、骨近似3次元データ62と関節モデルサンプル63(j)のデータ情報より、関節モデルサンプル63(j)を施工するために骨の骨切り位置64、65を決める。
【0044】
図4(d)は、骨近似3次元データ62に関節モデルサンプル63(j)を施工することを想定することを示す図である。後述するようにモニター点Pを介して骨近似3次元データ62と実際の執刀した骨の画像との対応付けが行われる。
【0045】
以上のようにして、本願発明に係る人工関節手術支援装置1を使用する前の術前計画が完了することになる。
【0046】
なお、人工関節手術支援装置1を使用に至るまでの術前計画において図4を参照し患者の骨近似3次元データ62を用いる場合について説明したが、術前計画においては骨近似3次元データ62を用いる場合に限らず、骨近似3次元データ62の代わりに他の方式で得られた患者の骨3次元データを用いることも可能である。他の方式で得られた患者の骨3次元データとしては、CTの手法またはMRIの手法により得た複数のスライス画像を合成して得られる患者の合成3次元データである。この場合、合成3次元データは次のようにして得られる。まず、図10に示すような2枚の所定の角度をなすX線用フレーム101、102を有する専用カセッテ台を用いて方向103、104の2方向より立ち姿勢にある患者の骨のX線撮影し、2枚のX線写真データより図4(a)に示す骨写真データ60を得る。前述したように、骨写真データ60は通常の抗力が負荷された自然な状態にある患者の膝の軟骨を示す。次に、CTの手法またはMRIの手法により、横たわった姿勢にある患者の複数のスライス画像を得る。このスライス画像は、患者が横姿勢にあるので、患者の膝の軟骨は通常の抗力が負荷されていない特殊な状態を示す。そこで、通常の抗力が負荷された自然な状態にある患者の膝の軟骨に係る骨3次元データを得るために、骨写真データ60の情報を参照しながら、得られたスライス画像を合成する。このようにして得られた骨3次元データは、患者の骨を直接的に撮像して得られたスライス画像を用いているので、患者の骨状態を正確に反映するものであり、骨近似3次元データ62の場合と同様に術前計画に用いることができる。
【0047】
次に、図5乃至図9を参照して、人工関節手術支援装置1の作用について説明する。以下では、患者の骨3次元データとして骨近似3次元データ62を用いる場合を例にとり説明する。
【0048】
手術台上の患者に対し執刀され、大腿骨50の遠位端と脛骨51の近位端との間にある関節部52が露出している。関節部52にレーザポインタ10、11の光線10a、11aを照射し、モニター点Pの位置が関節部52の中央部に位置するように人工関節手術支援装置1の位置調整を行いその後に手術台に固定する。
【0049】
次に、デジタルカメラ7、8、9を用いて直交するxyzの3方向から撮像する。デジタルカメラ7、8、9で撮像された情報はパーソナルコンピュータに送られる。図6に示すように、撮像した3個の実骨画像71、72、73がパーソナルコンピュータの分割画面上に表示される。実骨画像71、72、73には腿骨50及び脛骨51とともにモニター点Pが表示されている。
【0050】
次に、実骨画像70、71、72と術前計画で得た骨近似3次元データ62の結合を次のようにして行う。
【0051】
大腿骨50の遠位端と脛骨51の近位端との間に人工関節の設置する手術は、大腿骨50の遠位端部の骨を切除して行われる。図12は、大腿骨50の遠位端部を示す図である。大腿骨50の遠位端部は左右に位置する顆部50a、50bと軸部50cとから構成されている。図12においては、大腿骨50の遠位端部にある関節と脛骨51の近位端との間にある露出した関節部52は顆部50aと顆部50bの境界下部の部位として表示されており、後述するようにモニター点Pはこの露出した関節部52に位置するように患者の骨と人工関節手術支援装置1との間の位置調整が行われる。
【0052】
図7において、符合80は骨近似3次元データ62をパーソナルコンピュータで画像表示したものである。符合81、82、83は、骨近似3次元データ62を直交するxyzの3方向からパーソナルコンピュータの分割画面上に表示された骨近似画像である。図7において、図12に示した大腿骨50の遠位端部を構成するは左右に位置する顆部50a、50bと軸部50cとは、図7乃至図9においては模式的に示されている。図3について前述したように関節部52は大腿骨50の遠位端と脛骨51の近位端との間にある部位ではあるが、実際的には顆部50aと顆部50bの境界下部の部位として表示される。
【0053】
符合64、65は図4(d)に示した骨切り位置である。骨切り位置64、65を表示する代わりに、採用された関節モデルサンプル63(j)のペグ位置を表示することも可能である。ペグ位置は骨切り位置と一定の位置関係にあるからである。なお、図7〜図9において図形的に表示されているものはペグ位置であるが、表示されたペグ位置を便宜的に骨切り位置としてみなすことにする。図7にはモニター点Pに合わすべき関節部52が表示されている。
【0054】
次に、図8に示すように、図6に示した実骨画像71、72、73と図7に示した骨近似画像81、82、83の各々を重ね合わせる。この場合、図6に示すモニター点Pと図7に示す関節部52とを画面上で位置合わせする。これによって、術前計画で得た骨近似3次元データ62は実骨画像70、71、72に近似的に対応付けられる。
【0055】
次に、さらに骨近似画像81、82、83をコンピュータ上が回転操作等を行い、骨近似3次元データ62は実骨画像70、71、72に完全に対応付けられる。その結果を図9に示す。
【0056】
図9に示すように、実骨画像70、71、72上に、術前計画で得た関節モデルサンプル63(j)を施工するために骨切り位置64、65をモニター点Pとともに表示することができている。モニター点Pは手術台に固定された人工関節手術支援装置1と既知の位置関係にあるので、手術台と既知の位置関係にある骨切り治具を骨切り位置64、65に正確に位置決めすることが可能になる。
【0057】
以上のように、本実施形態によれば、手術台上に執刀され露出された関節部52上にレーザポインタ10、11でモニター点Pを形成するように位置調整し、デジタルカメラ7、8、9を用いて3方向から撮像し、撮像した3個の実骨画像71、72、73と術前計画で得た骨近似3次元データ62及び関節モデルサンプル63(j)の情報とをパーソナルコンピュータ上で操作するだけで、骨切り位置64、65を実骨画像70、71、72上に表示することができるので、骨切り治具を骨切り位置64、65に正確に位置決めすることができる。このように、術前計画で予め骨近似3次元データ62及び関節モデルサンプル63(j)の情報を得ておくだけで、簡易なパーソナルコンピュータの操作を行うだけで、骨に人工関節を設置手術する際にの術中の位置決め操作を容易に行うことができる。この結果、患者の患部に最適な人工関節と骨近似3次元データ62とを予め得ておきさえすれば、施工対象の骨に対し正確に設置手術を行うことが可能になる。
【0058】
また、骨切り治具の正確な位置決めを行おうとする際に、手術中においてはX線照射装置を用いてデータを収集する必要がないので、術者及び患者に対するX線の被爆量を極力少なくすることができる。
【0059】
また、コンピュータとしてパーソナルコンピュータや撮像手段としてデジタルカメラや方向指示手段としてレーザポインタというように、安価で入手容易である汎用性のある部材を利用することが可能であるので、簡易な構成で安価な人工関節手術支援装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本願発明に係る人工関節手術支援装置の一実施形態を表す斜視図である。
【図2】(a)、(b)、(c)は各々図1に示す人工関節手術支援装置を示す上面図、平面図及び側面図である。(d)は、保持部材上のデジタルカメラの近傍にレーザポインタが取り付けられていることを模式的に示す図。
【図3】人工関節手術支援装置のモニター点Pが大腿骨の遠位端と脛骨の近位端との間にある露出した関節部に位置するように位置決めされることを示す図。
【図4】人工関節手術支援装置を使用に至るまでの術前計画について説明する図であり、(a)は患者の骨を撮影した骨写真データ60を示す図であり、(b)は骨モデルサンプル61(k)を変形してなる骨近似3次元データ62を模式的に示す図であり、(c)は採用すべき関節モデルサンプル63(j)を選択したことを示す図であり、(d)は骨近似3次元データ62に関節モデルサンプル63(j)を施工することを想定することを示す図であり、(e)は骨モデルサンプル61(1)・・・61(n)の集合からなる標本骨3次元データ61を模式的に示す図であり、(f)は関節モデルサンプル63(1)・・・63(m)の集合からなる関節モデル63を模式的に示す図である。
【図5】模式的に表した大腿骨50の遠位端部の顆部50aと顆部50bとの境界下部にある露出した関節部52にモニター点Pを位置合わせすることを説明するための図。
【図6】デジタルカメラで撮像された3個の実骨画像をパーソナルコンピュータの分割画面で表示した図。
【図7】骨近似3次元データ62をパーソナルコンピュータの分割画面で表示した図。
【図8】図6に示す実骨画像と図7に示す骨近似画像の各々を重ね合わせ調整し、両者の対応付けを行うことを説明する図。
【図9】実骨画像と骨近似画像の重ね合わせが完了し、術前計画で得た骨切り位置64、65とモニター点P等をパーソナルコンピュータの分割画面で表示した図。
【図10】術前計画で骨写真データを得るために専用カセッテ台を用いてX線照射することを示す図。
【図11】本願発明に係る人工関節手術支援装置の他の実施形態を表す斜視図である。
【図12】モニター点Pが位置すべき関節部52の位置を示す図であり、(a)は大腿骨の遠位端部を示す斜視図であり、(b)は大腿骨の遠位端部を上方から見た図であり、(c)は大腿骨の遠位端部を前方から見た図であり、(d)は大腿骨の遠位端部を側方から見た図である。
【符号の説明】
【0061】
1 人工関節手術支援装置
2 基台
4 軸部
5、6 アーム
7、8、9 デジタルカメラ
7a、8a、9a 光軸
10、11、12 レーザポインタ
10a、11a、12a 光線
P モニター点
50 大腿骨
50a、50b 大腿骨の遠位端部の顆部
50c 大腿骨の遠位端部の軸部
51 脛骨
52 関節部
60 骨写真データ
61 標本骨3次元データ
61(1)、61(k)、61(n) 骨モデルサンプル
63 関節モデル
63(1)、63(j)、63(m) 関節モデルサンプル
64、65 骨切り位置
71、72、73 実骨画像
81、82、83 骨近似画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨に人工関節を設置手術する際に使用する人工関節手術支援装置であって、
人工関節を設置手術する際の目印となるモニター点を形成するモニター点形成手段と、
前記モニター点を含む領域を3方向から撮像可能であり撮像した画像をコンピュータへ転送可能な3個の撮像手段と、
前記モニター点形成手段と前記3個の撮像手段を一体的に保持する枠体と、
を備えことを特徴とする人工関節手術支援装置。
【請求項2】
前記モニター点形成手段は、前記モニター点に交差するように方向指示可能な複数の方向指示手段を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の人工関節手術支援装置。
【請求項3】
前記方向指示手段は、前記モニター点に向かって光線を照射する複数の照射源である
ことを特徴とする請求項2に記載の人工関節手術支援装置。
【請求項4】
前記方向指示手段は、前記モニター点に向かって延出可能な複数の鋼鉄線である
ことを特徴とする請求項2に記載の人工関節手術支援装置。
【請求項5】
前記3方向は前記モニター点で交差する
ことを特徴とする請求項1に記載の人工関節手術支援装置。
【請求項6】
前記3方向は前記モニター点を原点とする直交3軸を構成する方向である
ことを特徴とする請求項5に記載の人工関節手術支援装置。
【請求項7】
前記枠体は骨を切除するための骨切り治具と一体的に保持可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の人工関節手術支援装置。
【請求項8】
前記枠体は基部に立設された軸部と前記軸部の上部で分岐する2個のアームとを有し、 前記3個の撮像手段は前記軸部と前記2個のアームに取り付けられており、
前記複数の方向指示手段は、少なくとも、前記軸部と前記2個のアームのいずれかのアームとに取り付けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の人工関節手術支援装置。
【請求項9】
前記3個の撮像手段はデジタルカメラあるいはビデオカメラであり、前記コンピュータはパーソナルコンピュータである
ことを特徴とする請求項1に記載の人工関節手術支援装置。
【請求項10】
術前計画において手術対象となる患者の骨3次元データと施工すべき人工関節のデータとを予め得ておき、前記3個の撮像手段で得た3個の画像と前記骨3次元データとを前記モニター点を介して前記コンピュータの表示画面上で対応付ける
ことを特徴とする請求項1に記載の人工関節手術支援装置。
【請求項11】
前記骨3次元データは、標本骨3次元データを参照して作成された患者の骨近似3次元データである
ことを特徴とする請求項10に記載の人工関節手術支援装置。
【請求項12】
前記骨3次元データは、CTの手法またはMRIの手法により得た複数のスライス画像を合成して得られる患者の合成3次元データである
ことを特徴とする請求項10に記載の人工関節手術支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−122591(P2006−122591A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−318443(P2004−318443)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(596053415)
【出願人】(000193612)瑞穂医科工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】