説明

人形の脚部構造及び該脚部構造を備える人形

【課題】 胡座のポーズをはじめとするより多様なポーズを再現でき、かつ、いずれのポーズをとった際にも見栄えが美しい人形の脚部構造を提供する。
【解決手段】 人形の脚を構成する脚部が複数の部材に分割されており、爪先側先端に位置付けられる部材以外の他の部材には互いに連通する中空が設けられており、爪先側先端に位置付けられる部材から伸びる弾性体を他の部材の中空へ通して牽引することによって各部材を圧接状態にて連結してなる人形の脚部構造において、前記他の部材における人形の大腿を構成する部材が脚幅方向に切断し、切断面を対面させて隣り合う両部材を該切断面から垂直に伸びる軸を回転軸として回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人形の脚部構造及び該脚部構造を備える人形に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、人形の脚部を複数の部材に分割し、各部材に設けられた中空へゴム紐やコイルスプリングなどの長尺状の弾性体を通して牽引することにより該各部材を連結する構造を備えた人形が種々開発されている。
【0003】
例えば、後出特許文献1には、人形における胴部に対して合成樹脂、金属などで成形される脚部を、実物関節数に適合させ或は適合させないで数部材に分割形成し、その各部材を、その先端部材を除き、各連接面で開口し、かつ内部を縦慣する空洞に形成し、一端を脚部の先端部材に、他端を胴部に夫々掛着される引張りコイルばねを串差状に各部材を縦慣し、各部材を弾支して連結すると共に、脚部の各先端部材に連結可能のフックを設け、脚部に縦慣する引張りコイルばねを、一方の脚部から他方の脚部に、同じく間に胴部を通過し、一連に連続して縦慣する人形における脚部の関節連結装置が開示されている。
【0004】
また、後出特許文献2には、空洞状の胴体部における下部底面左右に形成したほぼ球面状の脚体連結凹面に嵌め入れられる筒状の腿部分、球筒状の膝部分、足首・足指を一体化してある脛部分を弾性紐材によって弾発的に連繋してなる人形が開示されている。
【0005】
しかし、前記特許文献1に開示された人形における脚部の関節連結装置においては、各部材が平らな連接面を対面させた状態で連結されているため、屈曲させた際に、隣り合う部材間に隙間が生じてその隙間から引張りコイルばねが露出し、非常に見栄えが悪いという問題点があった。
【0006】
また、近年、需要者は人形を購入する際に人形の容姿以外にとどまらず、その人形が再現できるポーズの多様性をも判断の基準しているが、前記特許文献1に開示された人形における脚部の関節連結装置においては、脚部の各先端部材に設けられたフックを連結させることによってポーズが決定するため、限られたポーズしかできなかった。また、前記特許文献2に開示された人形においては、腿部分に設けられたスリット穴や球筒状の膝部分によってポーズの自由度は広いが、前方へ屈曲させた状態で腿部分を捻ろうとするとスリット穴に嵌り込んだ弾性紐材が引っ掛かり、例えば、胡座のポーズ、正座を崩したポーズ、脚を組むポーズなどをさせることができなかった。
【特許文献1】実開昭63−166295号
【特許文献2】実用新案登録第3068703号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、胡座のポーズをはじめとするより多様なポーズを再現でき、かつ、いずれのポーズをとった際にも見栄えが美しい人形の脚部構造を得ることを技術的課題として、その具現化をはかるべく、試作・実験を繰り返した結果、人形の脚を構成する脚部が複数の部材に分割されており、爪先側先端に位置付けられる部材以外の他の部材には互いに連通する中空が設けられており、爪先側先端に位置付けられる部材から伸びる弾性体を他の部材の中空へ通して牽引することによって各部材を圧接状態にて連結してなる人形の脚部構造において、前記他の部材における人形の大腿を構成する部材が脚幅方向に切断し、切断面を対面させて隣り合う両部材を該切断面から垂直に伸びる軸を回転軸として回転させれば、人体と同様に太股を捻る動作を行うことができるという刮目すべき知見を得、前記技術的課題を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって解決できる。
【0009】
即ち、本発明に係る人形の脚部構造は、人形の脚を構成する脚部が複数の部材に分割されており、爪先側先端に位置付けられる部材以外の他の部材には互いに連通する中空が設けられており、爪先側先端に位置付けられる部材から伸びる弾性体を他の部材の中空へ通して牽引することによって各部材を圧接状態にて連結してなる人形の脚部構造において、前記他の部材における人形の大腿を構成する部材が脚幅方向に切断されており、切断面を対面させて隣り合う両部材が該切断面から垂直に伸びる軸を回転軸として回転するものである。
【0010】
また、本発明は、前記人形の脚部構造において、切断面を対面させて隣り合う両部材が一方の部材の切断面から垂直に突出する軸部を他方の部材の切断面から垂直に窪んだ軸受け部に嵌め込んだ状態で該軸部を回転軸として回転するものである。
【0011】
また、本発明は、前記いずれかの人形の脚部構造において、一方の部材には、回転軸から変心した位置に凸部が設けられており、他方の部材には、回転軸を中心として放射状に広がるように切り込まれた凹部が設けられているものである。
【0012】
また、本発明に係る人形の脚部構造は、人形の脚を構成する脚部が複数の部材に分割されており、爪先側先端に位置付けられる部材以外の他の部材には互いに連通する中空が設けられており、爪先側先端に位置付けられる部材から伸びる弾性体を他の部材の中空へ通して牽引することによって各部材を圧接状態にて連結してなる人形の脚部構造において、前記他の部材における人形の大腿を構成する部材と人形の下腿を構成する部材とが人形の膝関節を構成する部材を介して連結されており、人形の膝関節を構成する部材の上部には膝皿部の上面を前側縁端から両側縁端に渡って細幅状に残してなる上面裾部と該上面から突出した上膝嵌合凸部とが形成されており、下部には膝皿部の下面を前側縁端から両側縁端に渡って細幅状に残してなる下面裾部と該下面から突出した下膝嵌合凸部とが形成されており、人形の大腿を構成する部材の下端部には上膝嵌合凸部が嵌る上膝嵌合凹部が形成されていると共に該上膝嵌合凹部は後側縁部が切り欠かれて二股状になっており、上膝嵌合凹部の両二股縁部は上面裾部に接触して該両二股縁部を支点として屈曲・伸展できるようになっており、人形の下腿を構成する部材の上端部には下膝嵌合凸部が嵌る下膝嵌合凹部が形成されていると共に該下膝嵌合凹部は後側縁部が切り欠かれて二股状になっており、該下膝嵌合凹部の両二股縁部は下面裾部に接触して該両二股縁部を支点として屈曲・伸展できるようになっているものである。
【0013】
また、本発明は、前記人形の脚部構造において、上・下膝嵌合凹部の底面に前後方向に対して直交するように走る段溝が少なくとも一つ形成されており、上・下膝嵌合凸部の頂面に前後方向に対して直交するように走る隆起部が形成されており、関節の伸展状態において上膝嵌合凸部の隆起部が上膝嵌合凹部の最後方側の段溝に嵌り込むと共に、下膝嵌合凸部の隆起部が下膝嵌合凹部の最後方側の段溝に嵌り込み、関節の最大屈曲状態において上膝嵌合凸部の隆起部が上膝嵌合凹部のいずれの段溝にも嵌り込まず、下膝嵌合凸部の隆起部が下膝嵌合凹部のいずれの段溝にも嵌り込まないものである。
【0014】
また、本発明に係る人形は、前記脚部構造を備えるものである。
【0015】
また、本発明の他の形態としては、人体の脚部における関節部位を模した人形における関節の一方側接合部(膝関節部の上部又は下部)と他方側接合部(大腿部の下端部又は下腿部の上端部)とが圧接状態で連結されて一方向(後方向)へ屈曲できるようになっている関節構造であって、一方側接合部は切断面の周縁端を該切断面の他方向側縁端から両側縁端に渡って細幅状に残した裾部と該切断面から突出した嵌合凸部とからなると共に該嵌合凸部には嵌合凸部の頂面に一方向を横切るように隆起して走る隆起部が形成されており、他方側接合部は一方側接合部の嵌合凸部が摺動可能に嵌る一方向側縁端が切り欠かれて二股状になった嵌合凹部となっており、該嵌合凹部の両二股縁部はそれぞれ裾部の両側縁端に接触して当該両二股縁部を支点として屈曲・伸展できるようになっていると共に嵌合凹部の内面には嵌合凸部の隆起部が嵌るように所望間隔で少なくとも一つ段溝が形成されており、関節の伸展状態においては嵌合凸部の隆起部が嵌合凹部の一方向側の段溝に嵌り込み、関節の最大屈曲状態においては嵌合凸部の隆起部が嵌合凹部のいずれの段溝にも嵌り込まないようにしてもよい。
【0016】
なお、この形態の関節構造は、膝関節部の上部を一方側接合部として大腿部の下端部を他方側接合部とすると共に、膝関節部の下部を他方側接合部として下腿部の上端部を他方側接合部とする場合に限らず、大腿部の下端部を一方側接合部又は他方側接合部として下腿部の上端部を他方側接合部又は一方側接合部とする場合にも適用することができる。
【0017】
また、この形態の関節構造は、膝関節に限らず、人形のあらゆる関節において、例えば、肘関節、手関節、足関節、腰関節、首関節などにおいても適用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、人体の大腿を構成する部材を脚幅方向に切断して分割し、切断面を対面させて隣り合う一方の部材と他方の部材とを該切断面から垂直に伸びる軸を回転軸として回転可能に連結したので、人体の大腿を構成する部材を人体の太股を捻る動作を再現することができ、膝関節の動作と組み合わせることによって多様なポーズをとらせることができる。
【0019】
従って、本発明の産業上利用性は非常に高いといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0021】
実施の形態1.
【0022】
図1は本実施の形態に係る人形の脚部構造を備えた人形を示した正面視部分断面図である。図2は本実施の形態に係る人形の脚部構造を示した分解斜視図である。図3は図2に示す人形の脚部構造における股関節を示した分解斜視図である。図4は図2に示す人形の脚部構造における膝関節を示した分解斜視図である。図5は図2に示す人形の脚部構造における股関節の動作を示した斜視図である。図6は図2に示す人形の脚部構造における膝関節の動作を示した断面図である。これらの図において、1は、人形の頭を構成する頭部2と、人形の胴体を構成する三分割された胴体部3と、人形の腕を構成する腕部4と、人形の脚を構成する脚部5とからなる人形である。頭部2は、空洞状であって首付け根に当たる位置に開口6が形成されている。胴体部3は、人形の胸を構成する胸部7と、人形の腹を構成する腹部8と、人形の腰を構成する腰部9とからなっており、胸部7には、上端から下端へと貫通すると共に両腕付け根に当たる位置へと分岐する中空10が形成されており、腹部8には、上端から下端へと貫通する中空11が形成されており、腰部9には、上端の中央を挟む両側から両脚付け根に当たる位置へとそれぞれ貫通する一対の中空12が形成されている。腕部4は、人形の上腕を構成する上腕部13と、人形の肘関節を構成する肘関節部14と、人形の前腕を構成する前腕部15と、人形の手関節を構成する手関節部16と、人形の手を構成する手部17とからなっており、上腕部13、肘関節部14、下腕部15及び手関節部16には、両端へと貫通する中空が形成されており、手部17には、掛け具18が設けられている。脚部5は、人形の大腿を構成する大腿部19と、人形の膝関節を構成する膝関節部20と、人形の下腿を構成する下腿部21と、人形の足関節を構成する足関節部22と、人形の足を構成する足部23(爪先側先端に位置付けられる部材)とからなっており、大腿部19は、股に当たる位置にて脚幅方向に切断されて上大腿部24(一方の部材)と下大腿部25(他方の部材)とに二分割されており、上・下大腿部24,25、膝関節部20、下腿部21及び足関節部22には、両端へと貫通する中空26,27,28,29,30が形成されており、足部23には、掛け具31が設けられている。そして、左・右手部17に設けられた掛け具18に引っ掛けられるS字状連結具32に固定されて胸部7を介して左・右腕部4内を通るように掛け渡された腕用弾性体33により、左・右腕部4が胸部7の腕付け根に当たる位置に形成された横向きお椀状凹部に半球殻状の摺動体34を介在させて摺動可能に嵌め込まれた状態で腕付け根側へ牽引されて圧接状態で連結されている。また、左・右足部23に設けられた掛け具31に引っ掛けられるS字状連結具35に固定されて頭部2内に設けられたS字状連結具36を介して胴体部3内と左・右脚部5内とを通して掛け渡された脚用弾性体37により、左・右脚部5が腰部9の脚付け根に当たる位置に形成された下向きお椀状凹部38に摺動可能に嵌め込まれた状態で脚付け根側へ牽引されて圧接状態で連結されている。
【0023】
図3に示すように、上大腿部24と下大腿部25とが脚用弾性体37によって牽引されて圧接状態で連結される上大腿部24の下端部38と下大腿部25の上端部39とからなる股関節において、上大腿部24の下端部38には、切断面40の周縁を細幅状に残してなる裾部41と、切断面40から中空26を含めて該切断面40に対して垂直方向に盛り上がる先丸円柱状の軸部42とが形成されている。また、下大腿部25の上端部39には、切断面43の周縁を上大腿部24の裾部41の幅に合わせて細幅状に残してなる縁部44と、切断面43から上大腿部24の軸部42が摺動可能に嵌るように中空27を含めて該切断面43に対して垂直方向に窪んだ軸受け部45とが形成されている。
【0024】
図4に示すように、大腿部19と膝関節部20とが脚用弾性体37によって牽引されて圧接状態で連結される大腿部19の下端部46と膝関節部20の上部47とからなる上膝関節において、膝関節部20の上部47には、人体の膝皿を構成する略菱形状膝皿48と該略菱形状膝皿48の裏面から突出した突起部49とからなる膝皿部50の上面51における前側縁端から両側縁端を細幅状に残してなる上面裾部52と、該上面51から中空28の軸方向に突出する略半楕円球状の上膝嵌合凸部53とが形成されており、上膝嵌合凸部53には、中空28から後方向へ切り欠かれたスリット溝54が形成されていると共に、頂面にスリット溝54を横切るように走る隆起部55が形成されている。また、大腿部19の下端部46には、膝関節部20の上膝嵌合凸部53が摺動可能に嵌るように中空27を含めて該中空27の軸方向に窪んだ上膝嵌合凹部56が形成されており、上膝嵌合凹部56の縁部57は、前側縁部57a及び後側縁部57bに形成された逆U字状の切り込みによって正面視二股状に形成されている。また、上膝嵌合凹部56の内面には、中空27に対して後側に位置付けて上膝嵌合凹部56の後側縁部57bに沿わせて段溝58が形成されており、上膝嵌合凹部56に対して上膝嵌合凸部53を嵌め込んだ際に段溝58に隆起部55が嵌るようになっている。
【0025】
また、膝関節部20と下腿部21とが脚用弾性体37によって牽引されて圧接状態で連結される膝関節部20の下部59と下腿部21の上端部60とからなる下膝関節において、膝関節部20の下部59には、膝皿部48の下面61における前側縁端から両側縁端を細幅状に残してなる下面裾部62と、該下面61から中空28の軸方向に突出する略指先状の下膝嵌合凸部63とが形成されており、下側嵌合凸部63には、中空28から後方向へ切り欠かれたスリット溝64が形成されていると共に、頂面にスリット溝64を横切るように走る隆起部65が形成されている。また、下腿部21の上端部60には、膝関節部20の下膝嵌合凸部63が摺動可能に嵌るように中空29を含めて該中空29の軸方向に窪んだ下膝嵌合凹部66が形成されており、下膝嵌合凹部66の縁部67は、前側縁部67a及び後側縁部67bに形成されたU字状の切り込みによって正面視二股状に形成されている。また、下膝嵌合凹部66の内面には、中空29を横切るように位置付けて下膝嵌合凹部66の後側縁部67bに沿わせて段溝68が形成されており、下膝嵌合凹部66に対して下膝嵌合凸部63を嵌め込んだ際に段溝68に隆起部65が嵌り合うようになっている。
【0026】
次に、本実施の形態に係る人形の脚部構造の動作を説明する。
【0027】
股関節においては、上大腿部24の軸部42を下大腿部25の軸受け部45に嵌め込み、上大腿部24の裾部41と下大腿部25の縁部44とを密着させて上大腿部24の下端部38と下大腿部25の上端部39とを牽引させて圧接状態で連結する。これにより、図5に示すように、上大腿部24の軸部42を回転軸として下大腿部25を人体の太股を捻る方向(図5中、矢印方向)に回転させることができる。
【0028】
膝関節を伸展状態させる場合には、図6の(a)に示すように、膝関節部20の上膝嵌合凸部53を大腿部19の上膝嵌合凹部56に嵌め込み、膝関節部20の上面裾部52に大腿部19の前側縁部57a及び両二股縁部57cを合致させると共に、隆起部55を段溝58に嵌め合わせて上膝関節における大腿部19の下端部46と膝関節部20の上部47とを牽引させて圧接状態で連結する。また、膝関節部20の下膝嵌合凸部63を下腿部21の下膝嵌合凹部66に嵌め込み、膝関節部20の下面裾部62に下腿部21の前側縁部67a及び両二股縁部67cを合致させると共に、隆起部65を段溝68に嵌め合わせて下膝関節における膝関節部20の下部59と下腿部21の上端部60とを牽引させて圧接状態で連結する。
【0029】
膝関節を屈曲状態にさせる場合には、図6の(b)に示すように、大腿部19に対して屈曲方向(図6の(a)中、矢印A方向)に力を加えれば、脚用弾性体37の牽引力に抗して上膝嵌合凸部53の隆起部55が上膝嵌合凹部56の段溝58に乗り上がる。これにより、脚用弾性体37の牽引力によって大腿部19が上膝嵌合凸部53を挟む両二股縁部57cを支点として回転し、上膝嵌合凹部56の後側縁部57bが膝関節部20の裏面に接触して屈曲状態が保持される。この時、伸展状態において上側嵌合凸部53の中空28に位置付けられていた脚用弾性体37がスリット溝54に嵌り込む。
【0030】
また、図6の(c)に示すように、下腿部21に対して屈曲方向(図6の(a)中、矢印B方向)に力を加えれば、脚用弾性体37の牽引力に抗して下膝嵌合凸部63の隆起部65が下膝嵌合凹部66の段溝68に乗り上がる。これにより、脚用弾性体37の牽引力によって下腿部21が膝関節部20の下膝嵌合凸部63を挟む両二股縁部67cを支点として回転し、下膝嵌合凹部66の後側縁部67bが膝関節部20の裏面に接触して屈曲状態が保持される。この時、伸展状態において下膝嵌合凸部63の中空28に位置付けられていた脚用弾性体37がスリット溝64に嵌り込む。
【0031】
本実施の形態によれば、股関節や上・下膝関節の動作を組み合わせることによって、胡座のポーズ、正座を崩したポーズ、脚を組むポーズなど多様なポーズをとらせることができる。また、膝関節を上膝関節と下膝関節との二つの関節によって構成したので、大腿部と下腿部とを180度折り畳むことができる。さらに、上膝関節と下膝関節とは、伸展状態において嵌合凸部の隆起部が嵌合凹部の段溝に嵌り込むようにしたので、弾性体の牽引力にかかわらず安定した姿勢を保持することができる。
【0032】
なお、人体の各部位を構成する部材には、ウレタン樹脂、ポリ塩化ビニール樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、スチロール樹脂、ポリスチレン樹脂及びFRP樹脂などの樹脂材料を使用することができる。
【0033】
また、弾性体としては、ゴム紐やコイルスプリングなどを使用することができる。
【0034】
実施の形態2.
【0035】
本実施の形態は前記実施の形態1における股関節の変形例であり、図7は本実施の形態に係る股関節を示した分解斜視図である。図7において、図1〜図6と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0036】
本実施の形態における上大腿部24の下端部38と下大腿部25の上端部39とからなる股関節においては、上大腿部24の軸部42先端面に中空26を中心として外方へ向かうように突出した楔型凸部69が形成されており、下大腿部25の軸受け部45底面に中空27を中心として放射状に切り欠かれた半円型凹部70が形成されており、上大腿部24の軸部42を下大腿部25の軸受け部45に嵌め込んだ際に、楔型凸部69が半円型凹部70に嵌り込むようになっている。
【0037】
従って、本実施の形態によれば、上大腿部24の軸部42を回転軸として下大腿部25を同一方向へ一定角度回転させると、楔型凸部69が半円型凹部70のいずれかの側面に突き当たって下大腿部25の回転が規制されるため、股関節の動作範囲を人体における太股の動作範囲に合わせることができる。
【0038】
実施の形態3.
【0039】
本実施の形態は前記実施の形態1における上膝関節の変形例であり、図8は本実施の形態に係る上膝関節を示した断面図である。図8において、図1〜図6と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0040】
本実施の形態における大腿部19の下端部46と膝関節部20の上部47とからなる上膝関節においては、大腿部19の上膝嵌合凹部56に間隔を空けて二つの段溝58a,58bが形成されており、一方の段溝58aは、中空27の後側に位置付けられて後側縁部57bに沿わせて形成されており、他方の段溝58bは中空27を横切るように一方の段溝58aに沿わせて形成されている。
【0041】
従って、本実施の形態によれば、図7の(a)に示すように伸展状態の上膝関節を屈曲状態にさせる場合に、先ず、図7の(b)に示すように、大腿部19に対して屈曲方向(図7の(a)中、矢印方向)に力を加えれば、脚用弾性体37の牽引力に抗して上膝嵌合凸部53の隆起部55が上膝嵌合凹部56の一方の段溝58aに乗り上がり、脚用弾性体37の牽引力によって大腿部19が上膝嵌合凸部53を挟む両二股縁部57cを支点として回転し、隆起部55が他方の段溝58bに嵌り込んで屈曲状態が保持される。また、図7の(c)に示すように、更に大腿部19に対して屈曲方向(図7の(b)中、矢印方向)に力を加えれば、脚用弾性体37の牽引力に抗して上膝嵌合凸部53の隆起部55が上膝嵌合凹部56の他方の段溝58bに乗り上がり、脚用弾性体37の牽引力によって大腿部19が上膝嵌合凸部53を挟む両二股縁部57cを支点として回転し、上膝嵌合凹部56の後側縁部57bが膝関節部20の裏面に接触して図7の(b)に示す屈曲状態より鋭角の屈曲状態が保持される。従って、最大屈曲状態の場合には、隆起部55はいずれの段溝58にも嵌り合わない。
【0042】
なお、本実施の形態においては、上膝嵌合凹部に段溝を二つ形成したが、三つ以上形成してもよく、この場合には、更に細かく上膝関節の屈曲角度を調節することができる。また、下膝関節においても同様の構成を採用すれば、屈曲角度を調節できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施の形態1に係る人形の脚部構造を備えた人形を示した正面視部分断面図である。
【図2】実施の形態1に係る人形の脚部構造を示した分解斜視図である。
【図3】図2に示す人形の脚部構造における股関節を示した分解斜視図である。
【図4】図2に示す人形の脚部構造における膝関節を示した分解斜視図である。
【図5】図2に示す人形の脚部構造における股関節の動作を示した斜視図である。
【図6】図2に示す人形の脚部構造における膝関節の動作を示した断面図である。
【図7】実施の形態2に係る股関節を示した分解斜視図である。
【図8】実施の形態3に係る上膝関節を示した断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 人形
2 頭部
3 胴体部
4 腕部
5 脚部
6 開口
7 胸部
8 腹部
9 腰部
10,11,12 中空
13 上腕部
14 肘関節部
15 前腕部
16 手関節部
17 手部
18 掛け具
19 大腿部
20 膝関節部
21 下腿部
22 足関節部
23 足部
24 上大腿部
25 下大腿部
26,27,28,29,30 中空
31 掛け具
32 連結具
33 腕用弾性体
34 摺動体
35 連結具
36 連結具
37 脚用弾性体
38 下端部
39 上端部
40 切断面
41 裾部
42 軸部
43 切断面
44 縁部
45 軸受け部
46 下端部
47 上部
48 膝皿
49 突起部
50 膝皿部
51 上面
52 上面裾部
53 上膝嵌合凸部
54 スリット溝
55 隆起部
56 上膝嵌合凹部
57 縁部
58 段溝
59 下部
60 上端部
61 下面
62 下面裾部
63 下膝嵌合凸部
64 スリット溝
65 隆起部
66 下膝嵌合凹部
67 縁部
68 段溝
69 楔型凸部
70 半円型凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人形の脚を構成する脚部が複数の部材に分割されており、爪先側先端に位置付けられる部材以外の他の部材には互いに連通する中空が設けられており、爪先側先端に位置付けられる部材から伸びる弾性体を他の部材の中空へ通して牽引することによって各部材を圧接状態にて連結してなる人形の脚部構造において、前記他の部材における人形の大腿を構成する部材が脚幅方向に切断されており、切断面を対面させて隣り合う両部材が該切断面から垂直に伸びる軸を回転軸として回転することを特徴とする人形の脚部構造。
【請求項2】
切断面を対面させて隣り合う両部材が一方の部材の切断面から垂直に突出する軸部を他方の部材の切断面から垂直に窪んだ軸受け部に嵌め込んだ状態で該軸部を回転軸として回転する請求項1記載の人形の脚部構造。
【請求項3】
一方の部材には、回転軸から変心した位置に凸部が設けられており、他方の部材には、回転軸を中心として放射状に広がるように切り込まれた凹部が設けられている請求項1又は2記載の人形の脚部構造。
【請求項4】
人形の脚を構成する脚部が複数の部材に分割されており、爪先側先端に位置付けられる部材以外の他の部材には互いに連通する中空が設けられており、爪先側先端に位置付けられる部材から伸びる弾性体を他の部材の中空へ通して牽引することによって各部材を圧接状態にて連結してなる人形の脚部構造において、前記他の部材における人形の大腿を構成する部材と人形の下腿を構成する部材とが人形の膝関節を構成する部材を介して連結されており、人形の膝関節を構成する部材の上部には膝皿部の上面を前側縁端から両側縁端に渡って細幅状に残してなる上面裾部と該上面から突出した上膝嵌合凸部とが形成されており、下部には膝皿部の下面を前側縁端から両側縁端に渡って細幅状に残してなる下面裾部と該下面から突出した下膝嵌合凸部とが形成されており、人形の大腿を構成する部材の下端部には上膝嵌合凸部が嵌る上膝嵌合凹部が形成されていると共に該上膝嵌合凹部は後側縁部が切り欠かれて二股状になっており、上膝嵌合凹部の両二股縁部は上面裾部に接触して該両二股縁部を支点として屈曲・伸展できるようになっており、人形の下腿を構成する部材の上端部には下膝嵌合凸部が嵌る下膝嵌合凹部が形成されていると共に該下膝嵌合凹部は後側縁部が切り欠かれて二股状になっており、該下膝嵌合凹部の両二股縁部は下面裾部に接触して該両二股縁部を支点として屈曲・伸展できるようになっていることを特徴とする人形の脚部構造。
【請求項5】
上・下膝嵌合凹部の内面に前後方向に対して直交するように走る段溝が少なくとも一つ形成されており、上・下膝嵌合凸部の頂面に前後方向に対して直交するように走る隆起部が形成されており、関節の伸展状態において上膝嵌合凸部の隆起部が上膝嵌合凹部の最後方側の段溝に嵌り込むと共に下膝嵌合凸部の隆起部が下膝嵌合凹部の最後方側の段溝に嵌り込み、関節の最大屈曲状態において上膝嵌合凸部の隆起部が上膝嵌合凹部のいずれの段溝にも嵌り込まず、下膝嵌合凸部の隆起部が下膝嵌合凹部のいずれの段溝にも嵌り込まない請求項4記載の人形の脚部構造。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の脚部構造を備えた人形。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれかに記載の脚部構造と請求項4又は5のいずれかに記載の脚部構造を備えた人形。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−158542(P2006−158542A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352038(P2004−352038)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(399110362)株式会社ボークス (14)
【Fターム(参考)】