説明

人検出装置および人検出方法

【課題】人の部位の状態を画像から推定することができる人検出装置を提供すること。
【解決手段】人検出装置100は、評価画像から人の所定の外形を取得する評価部430と、人の所定の外形と人の所定の部位の状態との関係を示す推定モデルに基づいて、評価画像から取得された所定の外形から、評価画像に含まれる人の所定の部位の状態を推定する肩位置計算部440および向き推定部500とを有する。所定の外形は、例えば、人の頭部および肩部の外形の全部または一部の形状および位置であり、所定の部位の状態は、例えば、肩部の位置および向きである、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像から人を検出する人検出装置および人検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラの撮影画像を利用した人の検出に関する研究が行われている。特に、人の頭部と肩部の外形が人に特徴的な形状であることから、この外形のエッジベースの特徴量を用いて人検出を行うことが注目されている。人の頭部と肩部の外形は、ギリシャ文字のオメガ(Ω)記号に似ていることから、オメガ図形あるいはオメガ形状等と呼ばれる。
【0003】
非特許文献記載の技術(以下「従来技術」という)は、オメガ形状に着目して画像からの人検出を行う。従来技術は、Real AdaBoost等のBoosting手法を用いて、数千枚から数万枚のサンプル画像からオメガ形状を含む画像の特徴量の傾向を学習する。そして、従来技術は、この学習により、オメガ形状を含む画像と含まない画像とを分類する検出器を生成する。特徴量としては、例えば、HoG(histogram of gradient)特徴量、Sparse特徴量、およびHaar特徴量が用いられる。学習方法としては、例えば、Boosting手法、SVM(サポートベクタマシン)、およびニューラルネットワーク等が用いられる。このような従来技術によれば、低次元の情報に基づき、少ない処理負荷で、画像のどこに人の頭部および肩部の画像が位置するかを判定することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】三井相和、山内悠嗣、藤吉弘宣著、「Joint Hog特徴を用いた2段階Adaboostによる人検出」、第14回画像センシングシンポジウム、2008年、SSII08、IN1−06
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、監視カメラの画像から不審者を検出したり、工場の撮影画像から作業者の動作を解析しようとする場合、人の姿勢や動作等を画像から自動で検出可能であることが望ましい。このような自動検出を行うためには、肩部の位置および向きや、肩部に対する頭部の傾き等、人の身体の部位の状態を画像から推定する必要がある。
【0006】
しかしながら、従来技術では、人の頭部および肩部の位置は推測することができても、上述の部位の状態を推定することはできない。
【0007】
本発明の目的は、人の部位の状態を画像から推定することができる人検出装置および人検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の人検出装置は、評価画像から人の所定の外形を取得する評価部と、人の前記所定の外形と前記人の所定の部位の状態との関係を示す推定モデルに基づいて、前記評価画像から取得された前記所定の外形から、前記評価画像に含まれる人の前記所定の部位の状態を推定する推定部とを有する。
【0009】
本発明の人検出方法は、評価画像から人の所定の外形を取得するステップと、人の前記所定の外形と前記人の所定の部位の状態との関係を示す推定モデルに基づいて、前記評価画像から取得された前記所定の外形から、前記評価画像に含まれる人の前記所定の部位の状態を推定するステップとを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、人の部位の状態を画像から推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態に係る人検出装置の構成を示すブロック図
【図2】本実施の形態に係る人検出装置の動作の一例を示すフローチャート
【図3】本実施の形態における操作画面の一例を示す図
【図4】本実施の形態における全オメガ特徴量生成処理の一例を示すフローチャート
【図5】本実施の形態におけるオメガ形状のイメージの一例を示す図
【図6】本実施の形態におけるオメガ候補点に設定される識別番号の一例を示す図
【図7】本実施の形態におけるオメガ形状のイメージの他の例を示す図
【図8】本実施の形態における処理内容表示領域の状態の変化の一例を示す図
【図9】本実施の形態におけるオメガ候補点および画像座標系の一例を示す図
【図10】本実施の形態におけるオメガ候補点情報の構成の一例を示す図
【図11】本実施の形態におけるオメガ特徴量の構成の一例を示す図
【図12】本実施の形態における肩候補点情報の構成の一例を示す図
【図13】本実施の形態における肩位置特徴量の構成の一例を示す図
【図14】本実施の形態における全オメガ特徴量の構成の一例を示す図
【図15】本実施の形態における主成分一覧表の構成の一例を示す図
【図16】本実施の形態における主成分スコア一覧表の構成の一例を示す図
【図17】本実施の形態における主成分スコア指定範囲一覧表の構成の一例を示す図
【図18】画像マッチング処理の一例を示すフローチャート
【図19】本実施の形態におけるサンプルオメガ画像の生成の様子の一例を示す図
【図20】本実施の形態におけるサンプルオメガ画像一覧表の構成の一例を示す図
【図21】本実施の形態における検出窓の走査の様子の一例を示す図
【図22】本実施の形態におけるマッチング結果一覧表の構成の一例を示す図
【図23】本実施の形態における影響度一覧表の構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態は、本発明を、画像から、オメガ形状を用いて人の肩部の位置および向きを推定する装置に適用した例である。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る人検出装置の構成を示すブロック図である。
【0014】
図1において、人検出装置100は、操作制御部200、肩位置推定モデル生成部300、肩位置推定部400、および向き推定部500を有する。
【0015】
操作制御部200は、人検出装置100をユーザが操作するための操作画面を提供し、ユーザの操作内容を他の各部へ通知すると共に、向き推定部500から入力される後述の評価結果画像を表示して、推定結果をユーザに提示する。
【0016】
肩位置推定モデル生成部300は、サンプル画像におけるオメガ形状(人の所定の外形)および肩部の位置(人の所定の部位の状態)を取得し、オメガ形状と肩部の位置との関係を示す肩位置推定モデルを生成する。肩位置推定モデル生成部300は、サンプル画像格納部310、オメガ特徴生成部320、オメガ特徴格納部330、および肩位置推定モデル格納部340を有する。
【0017】
サンプル画像格納部310は、肩位置推定モデルを生成するための、オメガ形状を含むサンプル画像(N枚)を格納する。
【0018】
オメガ特徴生成部320は、サンプル画像格納部310に格納されたサンプル画像から全オメガ特徴量を抽出し、抽出した全オメガ特徴量を肩位置推定モデル格納部340へ出力する。全オメガ特徴量とは、サンプル画像毎にオメガ特徴量と肩位置特徴量とを対応付けた情報である。オメガ特徴量とは、オメガ形状の特徴を表す情報である。肩位置特徴量とは、オメガ形状の位置に対する肩部の相対的な位置(以下「肩位置」という)を表す情報である。
【0019】
オメガ特徴格納部330は、入力された全オメガ特徴量に対して主成分分析を行い、主成分一覧表および主成分スコア一覧表を生成して保持する。主成分一覧表とは、全オメガ特徴量の主成分を記述する情報である。主成分スコア一覧表とは、サンプル画像毎に、各主成分のスコアを記述する情報である。また、オメガ特徴格納部330は、主成分スコア指定一覧表を生成して保持する。主成分スコア指定一覧表とは、主成分毎に、指定されたスコアの範囲を記述する情報である。また、オメガ特徴格納部330は、入力された全オメガ特徴量を、肩位置推定モデル格納部340へ出力する。また、主成分一覧表、主成分スコア一覧表、および主成分スコア指定一覧表は、以下、「オメガ生成情報」と総称する。
【0020】
肩位置推定モデル格納部340は、入力された全オメガ特徴量から、オメガ形状と肩部の位置との関係を示す肩位置推定モデルを生成して保持する。具体的には、肩位置推定モデル格納部340は、肩位置特徴量(N行)を目的変数に、オメガ特徴量(N行)を説明変数にした重回帰分析を行って得られる回帰係数行列を、肩位置推定モデルとして保持する。
【0021】
肩位置推定部400は、評価画像からオメガ形状(人の外形)を取得し、取得したオメガ形状から、肩位置推定モデルに基づいて、評価画像に含まれる人の肩部の位置(人の部位の状態)を推定する。肩位置推定部400は、評価画像格納部410、オメガ生成部420、評価部430、および肩位置計算部440を有する。
【0022】
評価画像格納部410は、人を検出する対象となる評価画像を格納する。本実施の形態では、評価画像は、カメラ等により撮影された画像のエッジ部分を抽出した、エッジ画像であるものとする。
【0023】
オメガ生成部420は、オメガ特徴格納部330が保持するオメガ生成情報から、オメガ画像を生成し、生成したオメガ画像を評価部430へ出力する。オメガ画像とは、オメガ形状を画像として復元した画像である。本実施の形態では、オメガ生成部420は、オメガ生成情報のうち採用する値の組み合わせを変えることにより、複数の異なるタイプのオメガ形状を復元するものとする。以下、オメガ生成情報から復元されたオメガ形状は「サンプルオメガ形状」といい、サンプルオメガ形状を含む画像は「サンプルオメガ画像」といい、サンプルオメガ形状の特徴を示すオメガ特徴量は「サンプルオメガ特徴量」という。
【0024】
評価部430は、入力されるサンプルオメガ画像と評価画像とのエッジマッチングにより、評価画像と各サンプルオメガ画像との類似度を評価する。そして、評価部430は、評価画像に類似するサンプルオメガ画像のサンプルオメガ特徴量を、評価画像に含まれるオメガ形状のオメガ特徴量として取得し、取得したオメガ特徴量を肩位置計算部440へ出力する。以下、評価画像から得られたオメガ形状は「評価オメガ形状」といい、評価画像から得られたオメガ特徴量は「評価オメガ特徴量」という。
【0025】
肩位置計算部440は、肩位置推定モデル格納部340が保持する肩位置推定モデルを用いて、入力された評価オメガ特徴量から肩位置特徴量を推定し、推定した肩位置特徴量を、向き推定部500へ出力する。以下、評価オメガ特徴量から推定される肩位置特徴量は、「評価肩位置特徴量」という。評価肩位置特徴量は、評価画像に含まれる人の肩位置を示す情報となる。
【0026】
向き推定部500は、入力された評価肩位置特徴量から、評価画像に含まれる人の肩部の向き(以下「肩向き」という)を推定する。そして、向き推定部500は、評価画像格納部410から評価画像を取得し、肩位置および肩向き(人の部位の状態)を示す画像を評価画像に重畳した評価結果画像を生成し、操作制御部200へ出力する。
【0027】
なお、人検出装置100は、例えば、通信機能を有するコンピュータシステム(パーソナルコンピュータやワークステーション等)により構成されている。このコンピュータシステムは、図示しないが、大別して、入力装置、コンピュータ本体、出力装置、および通信装置を有する。入力装置は、例えば、キーボードやマウス等である。出力装置は、例えば、ディスプレイやプリンタ等である。通信装置は、例えば、IPネットワークと接続可能な通信インタフェース等である。コンピュータ本体は、例えば、主に、CPU(central processing unit)と記憶装置で構成されている。CPUは、制御機能と演算機能を有する。記憶装置は、例えば、プログラムやデータを記憶するROM(read only memory)と、データを一時的に記憶するRAM(random access memory)とを有する。ROMは、電気的に内容の書き直しが可能なフラッシュメモリであってもよい。
【0028】
このような人検出装置100は、オメガ形状と肩位置との関係を示す肩位置推定モデルを用いるので、評価画像に含まれる人の肩位置および肩向きを、評価画像から推定することができる。
【0029】
次に、人検出装置100の動作について説明する。
【0030】
図2は、人検出装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0031】
ステップS1000において、操作制御部200は、操作画面を生成し、液晶ディスプレイ等の出力装置に表示する。
【0032】
図3は、操作画面の一例を示す図である。
【0033】
図3に示すように、操作画面610は、「モデル生成準備」ボタン611、「モデル生成」ボタン612、「評価」ボタン613、「終了」ボタン614、モデル生成準備ボタン配置領域615、および、処理内容表示領域616を有する。また、モデル生成準備ボタン配置領域615は、「サンプル画像選択」ボタン617、「オメガ形状生成」ボタン618、「基準点設定」ボタン619、「右肩位置設定」ボタン620、「左肩位置設定」ボタン621、「オメガ形状生成完了」ボタン622を有する。
【0034】
「モデル生成準備」ボタン611、「モデル生成」ボタン612、「評価」ボタン613、および「終了」ボタン614は、常に押下が可能となっている。但し、「モデル生成準備」ボタン611は、サンプル画像が用意されていない場合には押下できないようになっていても良い。また、「モデル生成」ボタン612は、オメガ生成情報が用意されていない場合には押下できないようになっていても良い。また、「評価」ボタン613は、肩位置推定モデルおよび評価画像が用意されていない場合には押下できないようになっていても良い。
【0035】
また、モデル生成準備ボタン配置領域615に配置されたボタン617〜622は、「モデル生成準備」ボタン611が押下されてから、ボタン612〜614のいずれかが押下されるまでの間のみ、押下可能となっている。
【0036】
「モデル生成準備」ボタン611は、ユーザがオメガ生成情報の生成を指示するためのボタンである。操作制御部200は、「モデル生成準備」ボタン611が押下される毎に、肩位置推定モデル生成部300に対して、「モデル生成準備依頼」を通知する。
【0037】
「モデル生成」ボタン612は、ユーザが肩位置推定モデルの生成を指示するためのボタンである。操作制御部200は、「モデル生成」ボタン612が押下される毎に、肩位置推定モデル生成部300に対して、「モデル生成依頼」を通知する。
【0038】
「評価」ボタン613は、ユーザが評価画像に対する評価とその評価結果(肩位置および肩向き)の出力とを指示するためのボタンである。操作制御部200は、「評価」ボタン613が押下される毎に、肩位置推定部400に対して、「評価依頼」を通知する。
【0039】
「終了」ボタン614は、ユーザが一連の処理の終了を指示するためのボタンである。操作制御部200は、「終了」ボタン614が押下されると、肩位置推定モデル生成部300および肩位置推定部400に対して、「終了」を通知する。
【0040】
処理内容表示領域616は、処理の進捗あるいは処理結果を示す文字列や図形、肩位置推定モデル生成部300および向き推定部500から入力される画像等を、処理内容表示領域616に表示する。そして、操作制御部200は、処理内容表示領域616の各位置に対するポインティング操作を、ポインタ操作等により受け付ける。また、操作制御部200は、モデル生成準備ボタン配置領域615の各ボタン617〜622が押下される毎に、どのボタンが押下されたかを示す情報を、肩位置推定モデル生成部300および肩位置推定部400へ通知する。この際、操作制御部200は、必要な場合には、どの位置にポインティングがされているかを示す情報についても、肩位置推定モデル生成部300および肩位置推定部400へ通知する。
【0041】
そして、図2のステップS2000において、オメガ特徴生成部320は、「モデル生成準備」ボタン611が押下されたか否か、つまり、「モデル生成準備依頼」が通知されたか否かを判断する。オメガ特徴生成部320は、「モデル生成準備」ボタン611が押下された場合には(S2000:YES)、ステップS3000へ進む。また、オメガ特徴生成部320は、「モデル生成準備」ボタン611が押下されていない場合には(S2000:NO)、ステップS4000へ進む。
【0042】
ステップS3000において、人検出装置100は、全オメガ特徴量生成処理を行う。
【0043】
図4は、全オメガ特徴量生成処理の一例を示すフローチャートである。
【0044】
まず、ステップS3010において、オメガ特徴生成部320は、「サンプル画像選択」ボタン617の押下が操作制御部200から通知されるのを待機する。オメガ特徴生成部320は、「サンプル画像選択」ボタン617の押下が通知されると(S3010:YES)、ステップS3020へ進む。
【0045】
ステップS3020において、オメガ特徴生成部320は、サンプル画像選択画面のデータを操作制御部200へ出力し、サンプル画像選択画面を処理内容表示領域616に表示させる。サンプル画像選択画面は、サンプル画像格納部310に格納されたサンプル画像の中から、オメガ生成情報の生成に用いるサンプル画像の選択をユーザから受け付ける画面である。サンプル画像選択画面は、例えば、各サンプル画像のサムネイルやファイル名等の属性を選択肢として表示する。
【0046】
そして、ステップS3030において、オメガ特徴生成部320は、「オメガ形状生成」ボタン618の押下および選択されたサンプル画像を示す情報が操作制御部200から通知されるのを待機する。オメガ特徴生成部320は、「オメガ形状生成」ボタン618の押下および選択されたサンプル画像を示す情報が通知されると(S3030:YES)、ステップS3040へ進む。
【0047】
ステップS3040において、オメガ特徴生成部320は、選択されたサンプル画像を含むオメガ形状生成画面のデータを操作制御部200へ出力し、オメガ形状生成画面を処理内容表示領域616に表示させる。オメガ形状生成画面は、サンプル画像に対するオメガ形状の設定をユーザから受け付ける画面である。本実施の形態では、オメガ形状の設定は、オメガ形状を構成するオメガ候補点の位置を設定することにより行われるものとする。
【0048】
図5は、オメガ形状のイメージの一例を示す図である。
【0049】
図5に示すように、人検出装置100は、人の頭部および肩部の外形を示すオメガ形状630を、複数の点631の位置として取り扱うものとする。隣り合う点631の間を直線632により接続したとき、全体の直線632は、人の頭部および肩部の外形に近似する。
【0050】
オメガ形状630は、主に頭部の外形を表現する部分(以下「球部」という)633と、主に肩部の外形を表現する部分(以下「翼部」という)634から構成される。また、多くの場合、球部633と翼部634の境界にはくびれ部635が存在することが多い。すなわち、オメガ形状630は、特徴的な形状をしている。
【0051】
オメガ特徴生成部320は、オメガ形状630を構成する点631に、隣り合う順序に対応した識別番号を設定する。以下、サンプル画像に対してユーザから設定を受け付けるオメガ形状630を構成する点は、「オメガ候補点」という。すなわち、オメガ候補点とは、ユーザによって設定される、人の頭部から肩部にかけてのエッジライン上に点在する点のことである。
【0052】
図6は、オメガ候補点に設定される識別番号の一例を示す図である。図6では、人が手前側を向いており、人の右肩が紙面の左側に位置している場合の例を示す。
【0053】
図6に示すように、オメガ特徴生成部320は、人の右肩側の端部に位置するオメガ候補点から順に、1から昇順の整数を、識別番号として設定する。オメガ候補点の個数はm個(固定)とする。本実施の形態では、説明の便宜上、m=20とする。
【0054】
なお、オメガ形状630は、頭部および肩部の外形の一部でも良く、例えば、図7に示すように、図5で説明した翼部634とくびれ部635に対応する部分のみをオメガ形状630として取り扱っても良い。
【0055】
オメガ形状生成画面は、選択されたサンプル画像に移動および変形可能な標準の形状を有するオメガ図形を表示し、ユーザから、ユーザが目視で標準のオメガ図形をサンプル画像に含まれる実際のオメガ形状に合わせる操作を受け付ける。
【0056】
図8は、処理内容表示領域616の状態の変化の一例を示す図である。
【0057】
まず、オメガ形状生成画面640は、図8(A)に示すように、オメガ形状(人の頭部および肩部の外形のエッジライン)641が含まれるエッジ画像であるサンプル画像を表示する。そして、オメガ形状生成画面640は、図8(B)に示すように、オメガ図形642をサンプル画像に重畳させて表示する。ユーザは、ポインタ操作等により、オメガ図形642を構成する丸点を、サンプル画像のオメガ形状641上に移動させて、図8(C)に示すように、オメガ図形642の形状をオメガ形状に合わせる。
【0058】
本実施の形態では、肩部の外形のエッジライン上にa個のオメガ候補点が設定され、頭部の外形のエッジライン上にb個のオメガ候補点が設定される場合、オメガ候補点の総数mは、以下の式(1)で表される。
【数1】

【0059】
例えば、オメガ図形642の設定ルールとして、a=5、b=10が規定される。この設定ルールは、最も左の点(識別番号1の点)を右肩の端部に、左から5番目の点(識別番号5の点)を首の右側に、最も右の点(識別番号20の点)を左肩の端部に、右から5番目の点(識別番号16の点)を首の左側に合わせる内容である。また、オメガ図形642の設定ルールとして、更に、これらの4つの点の間の点は、オメガ形状641上に等間隔で配置することが、予め定められているものとする。
【0060】
そして、図4のステップS3050において、オメガ特徴生成部320は、「基準点設定」ボタン619の押下を示す情報が操作制御部200から通知されるのを待機する。基準点とは、オメガ形状の各点の位置や肩位置の基準となる点である。オメガ特徴生成部320は、「基準点設定」ボタン619の押下を示す情報が通知されると(S3050:YES)、ステップS3060へ進む。
【0061】
本実施の形態では、基準点の設定ルールとして、基準点が頭部の重心であることが予め定められているものとする。したがって、ユーザは、サンプル画像から人の頭部の重心を推定し、図8(D)に示すように、推定した位置に基準点643を設定する。基準点643は、例えば、ポインタを任意の位置に移動させて右クリック操作を行うことにより設定される。後述の肩位置の設定等も同様である。
【0062】
ステップS3060において、オメガ特徴生成部320は、設定されたオメガ候補点および基準点の位置から、ユーザが設定したオメガ候補点の位置を示すオメガ候補点情報Cを生成する。そして、オメガ特徴生成部320は、基準点に対する各オメガ候補点の位置によりオメガ形状の特徴を表すオメガ特徴量Kを生成する。
【0063】
図9は、オメガ候補点および基準点の位置を定義するために用いられる画像座標系の一例を示す図である。
【0064】
図9に示すように、人検出装置100は、例えば、サンプル画像646の画像上の左上を原点、横方向をx軸、縦方向をy軸とする座標系を用いて、オメガ候補点および基準点の位置を定義する。また、人検出装置100は、点の方向を、y軸に対する時計周りの角度θ(−π≦θ≦π)により定義する。
【0065】
図10は、オメガ候補点情報Cの構成の一例を示す図である。
【0066】
図10に示すように、オメガ候補点情報650(C)は、基準点およびオメガ候補点毎に、その点の識別情報651に対応付けて、位置652を記述する。
【0067】
図11は、オメガ特徴量Kの構成の一例を示す図である。
【0068】
図11に示すように、オメガ特徴量660(K)は、オメガ候補点毎に、その点の識別情報661に対応付けて、基準点からの距離(基準点を中心とする半径)662と、基準点からみた方向(基準点とオメガ候補点とを結ぶ線のy軸に対する角度)663とを記述する。これらの値は、オメガ候補点情報Cから算出することができる。
【0069】
すなわち、オメガ特徴量Kは、オメガ候補点を2次元データk=(R,θ)で表現したものの集合であり、2m次元のデータK=(k,k,・・・,k)である。なお、オメガ特徴量Kの内容はこれに限定されるものではなく、例えば、基準点からのx軸方向の距離およびy軸方向の距離の集合であっても良い。
【0070】
ここまでの処理により、サンプル画像1枚に対して、1つのオメガ特徴量Kが得られる。
【0071】
そして、図4のステップS3070において、オメガ特徴生成部320は、「右肩位置設定」ボタン620の押下を示す情報が操作制御部200から通知されるのを待機する。オメガ特徴生成部320は、「右肩位置設定」ボタン620の押下を示す情報が通知されると(S3070:YES)、ステップS3080へ進む。
【0072】
ステップS3080において、オメガ特徴生成部320は、肩位置指定画面のデータを操作制御部200へ出力し、肩位置指定画面を処理内容表示領域616に表示させる。肩位置指定画面は、サンプル画像に対する肩位置の設定をユーザから受け付ける画面である。
【0073】
本実施の形態では、肩位置の設定ルールとして、肩位置を肩の関節の中心位置とすることが予め定められているものとする。したがって、ユーザは、サンプル画像から右肩の関節の中心位置を推定し、図8(E)に示すように、推定した位置に右肩位置644を設定する。
【0074】
そして、図4のステップS3090において、オメガ特徴生成部320は、「左肩位置設定」ボタン621の押下を示す情報が操作制御部200から通知されるのを待機する。オメガ特徴生成部320は、「左肩位置設定」ボタン621の押下を示す情報が通知されると(S3090:YES)、ステップS3100へ進む。ユーザは、サンプル画像から左肩の関節の位置を推定し、図8(F)に示すように、推定した位置に左肩位置645を設定する。
【0075】
そして、ステップS3100において、オメガ特徴生成部320は、設定された右肩位置および左肩位置から、ユーザが設定した肩位置を示す肩候補点情報Rを生成する。そして、オメガ特徴生成部320は、基準点に対する各肩位置により肩位置の特徴を表す肩位置特徴量Qを生成する。
【0076】
図12は、肩候補点情報Rの構成の一例を示す図である。
【0077】
図12に示すように、肩候補点情報670(R)は、基準点および肩位置毎に、その点の識別情報671に対応付けて、位置672を記述する。
【0078】
図13は、肩位置特徴量Qの構成の一例を示す図である。
【0079】
図13に示すように、肩位置特徴量680(Q)は、肩位置毎に、その点の識別情報681に対応付けて、基準点からの距離(基準点を中心とする半径)682と、基準点からみた方向(基準点と肩位置とを結ぶ線のy軸に対する角度)683とを記述する。これらの値は、肩候補点情報Rから算出することができる。
【0080】
すなわち、肩位置特徴量Qは、肩位置を2次元データq=(R,θ)で表現したものの集合であり、4次元のデータQ=(q,q)である。なお、肩位置特徴量Qの内容はこれに限定されるものではなく、例えば、基準点からのx軸方向の距離およびy軸方向の距離の集合であっても良い。
【0081】
そして、図4のステップS3110において、オメガ特徴生成部320は、「オメガ形状生成完了」ボタン622の押下を示す情報が操作制御部200から通知されるのを待機する。オメガ特徴生成部320は、「オメガ形状生成完了」ボタン622の押下を示す情報が通知されると(S3110:YES)、ステップS3120へ進む。
【0082】
ステップS3120において、オメガ特徴生成部320は、オメガ特徴量Kと肩位置特徴量Qとを統合して、全オメガ特徴量を生成する。但し、オメガ特徴生成部320は、既に全オメガ特徴量が生成されている場合には、新たに生成したオメガ特徴量Kおよび肩位置特徴量Qを追記する形で、全オメガ特徴量を更新する。
【0083】
そして、ステップS3130において、オメガ特徴生成部320は、N個のオメガ特徴量Kおよび肩位置特徴量Qの生成を完了し、全オメガ特徴量に記述したか否かを判断する。
【0084】
オメガ特徴生成部320は、N個のオメガ特徴量Kおよび肩位置特徴量Qの生成をまだ完了していない場合には(S3130:NO)、ステップS3010へ戻り、未処理のサンプル画像に対する処理を行う。すなわち、ユーザは、サンプル画像格納部310に格納されたサンプル画像に対して、「サンプル画像選択」ボタン617の押下から、「オメガ形状生成完了」ボタン622の押下までの動作を、N回繰り返すことになる。
【0085】
また、オメガ特徴生成部320は、N個のオメガ特徴量Kおよび肩位置特徴量Qの生成を完了した場合には(S3130:YES)、全オメガ特徴量をオメガ特徴格納部330へ出力して、図2の処理へ戻る。全オメガ特徴量は、オメガ特徴格納部330に保持される。
【0086】
図14は、オメガ特徴格納部330が保持する全オメガ特徴量の構成の一例を示す図である。
【0087】
図14に示すように、全オメガ特徴量690は、サンプル画像毎に、サンプル画像の識別情報691と、そのサンプル画像から生成されたオメガ特徴量692および肩位置特徴量693とを対応付けて記述する。また、オメガ特徴格納部330が保持する全オメガ特徴量690の行数は、Nとなる。
【0088】
図2のステップS4000において、オメガ特徴格納部330は、「モデル生成」ボタン612が押下されたか否か、つまり、「モデル生成依頼」が通知されたか否かを判断する。また、オメガ特徴格納部330は、保持する全オメガ特徴量があるか否かを判断する。全オメガ特徴量があるか否かは、例えば、過去に「モデル生成準備依頼」が通知されたか否かに基づいて判断することができる。
【0089】
オメガ特徴格納部330は、「モデル生成」ボタン612が押下され、かつ、全オメガ特徴量がある場合には(S4000:YES)、ステップS5000へ進む。また、オメガ特徴格納部330は、「モデル生成」ボタン612が押下されていない、または、全オメガ特徴量がない場合には(S4000:NO)、ステップS6000へ進む。
【0090】
ステップS5000において、オメガ特徴格納部330は、オメガ生成情報を生成して保持しつつ、「肩位置推定モデル生成依頼」と全オメガ特徴量とを肩位置推定モデル格納部340へ出力する。肩位置推定モデル格納部340は、これを受けて、入力された全オメガ特徴量から肩位置推定モデルを生成して保持する。
【0091】
具体的には、オメガ特徴格納部330は、全オメガ特徴量に対して主成分分析を適用し、第m'主成分までの主成分ベクトルP=(p,p,・・・,pm')を算出する。また、オメガ特徴格納部330は、主成分ベクトルPに対応した、第m'主成分までの主成分スコアS=(s,s,・・・,sm')を算出する。m'の値は、累積寄与率がa%以上となる数に設定する。aの値は、実験等により、処理負荷と推定精度とを考慮して定められる。
【0092】
そして、オメガ特徴格納部330は、主成分Pを記述した主成分一覧表と、主成分スコアSを記述した主成分スコア一覧表とを生成する。
【0093】
図15は、主成分一覧表の構成の一例を示す図である。
【0094】
図15に示すように、主成分一覧表710は、主成分711毎に、主成分値712(p,p,・・・,pm')を記述する。
【0095】
図16は、主成分スコア一覧表の構成の一例を示す図である。
【0096】
図16に示すように、主成分スコア一覧表720は、画像ファイル721毎に、第1主成分のスコア722〜第m'主成分のスコア722m'を記述する。
【0097】
そして、オメガ特徴格納部330は、更に、主成分スコア一覧表720の列に相当する、第i主成分(1≦i≦m')に対する主成分スコアのうち、最大値と最小値を抽出する。そして、オメガ特徴格納部330は、各主成分のスコアの最大値および最小値、つまりスコアの範囲を記述した、主成分スコア指定範囲一覧表を生成して保持する。
【0098】
図17は、主成分スコア指定範囲一覧表の構成の一例を示す図である。
【0099】
図17に示すように、主成分スコア指定範囲一覧表730は、主成分731毎に、その主成分スコアの最大値732と最小値733とを記述する。
【0100】
なお、オメガ特徴格納部330は、実際の最小値から最大値までの範囲ではなく、これよりも狭い範囲をスコアの範囲として、主成分スコア指定範囲一覧表730を作成しても良い。
【0101】
肩位置推定モデル格納部340は、全オメガ特徴量に含まれる肩位置特徴量Q(N行)を目的変数とし、N行のオメガ特徴量K(N行)を説明変数として重回帰分析を行う。そして、肩位置推定モデル格納部340は、以下の式(2)を満たす回帰係数行列Aを算出し、保持する。
【数2】

【0102】
そして、肩位置推定モデル格納部340は、算出した回帰係数行列Aを、肩位置推定モデルとして保持する。なお、この際、肩位置推定モデル格納部340は、「モデル生成完了通知」を操作制御部200へ出力して、処理内容表示領域616に「肩位置推定モデル生成完了」等の文字列を出力させるようにしても良い。
【0103】
そして、図2のステップS6000において、評価部430は、「評価」ボタン613が押下されたか否か、つまり、「評価依頼」が通知されたか否かを判断する。また、評価部430は、肩位置推定モデル生成部300に、保持されたオメガ生成情報および肩位置推定モデルがあるか否かを判断する。オメガ生成情報および肩位置推定モデルがあるか否かは、例えば、過去に「モデル生成依頼」が通知されたか否かに基づいて判断することができる。
【0104】
評価部430は、「評価」ボタン613が押下され、かつ、オメガ生成情報および肩位置推定モデルがある場合には(S6000:YES)、ステップS7000へ進む。また、評価部430は、「評価」ボタン613が押下されていない、または、オメガ生成情報および肩位置推定モデルがない場合には(S6000:NO)、ステップS9000へ進む。
【0105】
ステップS7000において、人検出装置100は、画像マッチング処理を行う。
【0106】
図18は、画像マッチング処理の一例を示すフローチャートである。
【0107】
まず、ステップS7010において、評価部430は、評価画像格納部410から評価画像を取得し、オメガ生成部420へ「オメガ生成依頼」を通知する。オメガ生成部420は、これを受けて、オメガ特徴格納部330が保持するオメガ生成情報に基づいて、サンプルオメガ画像を生成し、保持する。
【0108】
但し、オメガ生成部420は、オメガ生成情報のうち、各主成分の主成分スコアとして採用する値の組み合わせを変えることにより、H個の異なるタイプのオメガ形状を復元する。Hの値は、実験等により、処理負荷と推定精度とを考慮して定められる。
【0109】
具体的には、オメガ生成部420は、主成分毎に主成分スコア指定範囲一覧表730(図17参照)に記述された範囲内の値から成る主成分スコアS(j=1〜H)を生成する。なお、主成分スコアSは、必ずしも、基のいずれかのサンプル画像の主成分スコアSに一致するとは限らない。そして、オメガ生成部420は、選択した主成分スコアS毎に、例えば、以下の式(3)により、サンプルオメガ特徴量V(j=1〜H)を復元する。ここで、Vバーは、オメガ特徴量Kの平均(N次元)である。
【数3】

【0110】
なお、第f主成分の主成分スコアSの個数をUと置くと、オメガ生成情報から復元し得るサンプルオメガ形状の総数Numは、以下の式(4)で表される。
【数4】

【0111】
そして、オメガ生成部420は、サンプルオメガ特徴量Vが示すサンプルオメガ形状を生成し、サンプルオメガ形状を含むサンプルオメガ画像を生成する。サンプルオメガ画像のサイズは、例えば基のサンプル画像と同一のサイズであり、ここでは、横w画素×縦h画素であるものとする。また、サンプルオメガ画像は、画像の左上端を原点とし、基準点を画像の中心(w/2、h/2)に置いて、サンプルオメガ特徴量Vが示す形状を描画した画像である。
【0112】
図19は、サンプルオメガ画像の生成の様子の一例を示す図である。
【0113】
主成分スコアSの値の組み合わせが変わると、図19の矢印741に示すように、サンプルオメガ特徴量Vが示すサンプルオメガ形状742の形状が変わる。したがって、H個の異の異なる主成分スコアSからは、図19に示すように、H個のサンプルオメガ形状742〜742が生成される。これらのサンプルオメガ形状742〜742は、後述の処理により、1つずつ、評価画像743に含まれる評価オメガ形状744と比較されることになる。
【0114】
また、オメガ生成部420は、生成したサンプルオメガ画像と基のサンプルオメガ特徴量Vとを対応付けて記述するサンプルオメガ画像一覧表を生成し、保持する。
【0115】
図20は、サンプルオメガ画像一覧表の構成の一例を示す図である。
【0116】
図20に示すように、サンプルオメガ画像一覧表750は、サンプルオメガ画像の識別情報751に対応付けて、サンプルオメガ特徴量752を記述する。
【0117】
そして、オメガ生成部420は、サンプルオメガ画像一覧表750の作成を完了すると、「オメガ生成完了」を評価部430へ通知する。
【0118】
この通知を受けて、図18のステップS7020において、評価部430は、オメガ生成部420が保持するサンプルオメガ画像のうち未選択のものを1つ選択する。
【0119】
そして、ステップS7030において、評価部430は、評価画像で検出窓を走査し、ある位置の検出窓によって切り出される切出し画像とサンプルオメガ画像とのエッジマッチングを評価する。
【0120】
図21は、検出窓の走査の様子の一例を示す図である。
【0121】
図21に示すように、評価部430は、サンプルオメガ画像と同じサイズ(横w画素×縦h画素)の検出窓761を、例えば、評価画像743の左上から右下にかけて走査する。そして、各位置において、検出窓761に囲まれた部分を切り出して得られる画像を、切出し画像762として取得する。ここでは、評価部430は、L個の切出し画像762を取得するものとする。
【0122】
そして、評価部430は、切出し画像762に含まれる評価オメガ形状に選択中のサンプルオメガ画像を重ねたときに、切出し画像762において、サンプルオメガ形状に対応する画素に、エッジを示す特徴が見られるか否かを判断する。すなわち、評価部430は、切出し画像762に、そのサンプルオメガ形状に近似する形状が同一の位置で含まれているか否かを判断する。
【0123】
具体的には、評価部430は、例えば、サンプルオメガ形状に対応する各画素について、切出し画像762の対応する部分におけるエッジの有無を判断する。そして、評価部430は、エッジ有りと判断された画素数をサンプルオメガ形状の総画素数で除した値を、マッチングスコアとして算出する。以下、このマッチングスコアを算出する処理は、エッジマッチング処理という。
【0124】
なお、例えば、人の肩関節の位置との相関は、肩の端部と頭頂部とでは異なる。そこで、肩位置計算部440は、最尤オメガ特徴量K'が示すオメガ形状の位置毎に、その位置が肩位置の推定に与える影響が異なるようにしても良い。この場合、肩位置計算部440は、例えば、最尤オメガ特徴量K'を定義する各点(以下「オメガ点という」)毎に、その点の肩位置推定への影響度を重みγとして記述した影響度一覧表を予め作成しておく。
【0125】
具体的には、以下の通りである。説明の便宜のため、まず、回帰係数行列Aの1行目に{α、α、α、α}、2行目に{β、β、β、β}が格納されている場合を想定する。
【0126】
このとき、αは、識別番号1のオメガ点の半径が右肩の半径の推定に与える影響度を意味している。αは、識別番号1のオメガ点の半径が右肩の角度の推定に与える影響度を意味している。αは、識別番号1のオメガ点の半径が左肩の半径の推定に与える影響度を意味している。そして、αは、識別番号1のオメガ点の半径が左肩の角度の推定に与える影響度を意味している。
【0127】
同様に、βは、識別番号1のオメガ点の角度が右肩の半径の推定に与える影響度を意味している。βは、識別番号1のオメガ点の角度が右肩の角度の推定に与える影響度を意味している。βは、識別番号1のオメガ点の角度が左肩の半径の推定に与える影響度を意味している。そして、βは、識別番号1のオメガ点の角度が左肩の角度の推定に与える影響度を意味している。
【0128】
識別番号1のオメガ点の位置は、評価基準点に対する半径と角度との組によって表現される。したがって、肩位置推定モデル格納部340は、識別番号1のオメガ点が、右肩の半径の推定に与える影響度E1→RR、右肩の角度の推定に与える影響度E1→Rθ、左肩の半径の推定に与える影響度E1→LR、および左肩の角度の推定に与える影響度E1→Lθを、例えば、以下の式(5)〜(8)を用いて数値化する。
【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

【0129】
肩位置推定モデル格納部340は、全てのオメガ点について、上述のように影響度を数値化し、影響度一覧表780を生成する。これにより、影響度の大きい点の選別が可能となる。
【0130】
肩位置推定モデル格納部340は、影響度一覧表に、各オメガ点の各影響度を格納する。そして、肩位置推定モデル格納部340は、右肩の半径の推定に与える影響度E1→RR〜E20→RRが中から、値が大きい上位F個のオメガ点を選択し、影響度一覧表において、そのオメガ点の重みスコアを1増やす。同様に、肩位置推定モデル格納部340は、右肩の角度、左肩の半径、および左肩の角度についても、影響度が大きいオメガ点の重みスコアを増加させる。そして、肩位置推定モデル格納部340は、各オメガ点の最終的な重みスコアの値を、両肩の推定に与える影響度(以下「重みγ」という)として決定する。なお、Fの値は、実験等により、処理負荷と推定精度とを考慮して定められる。
【0131】
図23は、影響度一覧表の構成の一例を示す図である。
【0132】
図23に示すように、影響度一覧表780は、オメガ点識別情報781に対応付けて、右肩半径への影響度782、右肩角度への影響度783、左肩半径への影響度784、左肩角度への影響度785、および重み786を記述する。
【0133】
そして、評価部430は、エッジマッチングを評価する際に、影響度一覧表780の重みγを、重み付け計算のパラメータとして活用する。具体的には、評価部430は、オメガ点毎に、そのオメガ点の近傍のエッジの有無を数値化した値に対してそのオメガ点の重みγを乗じて、マッチングスコアの計算を行う。
【0134】
このような重み付けを行うことにより、特に肩推定に相関の高い部分を重視したマッチングを行うことが可能となり、推定精度を向上させることができる。
【0135】
図18のステップS7040において、評価部430は、L個の切出し画像に対するエッジマッチング処理が完了したか否かを判断する。評価部430は、L個の切出し画像に対するエッジマッチング処理がまだ完了していない場合には(S7040:NO)、ステップS7030へ戻り、次の検出窓761の位置における切出し画像に対するエッジマッチング処理を行う。
【0136】
また、L個の切出し画像に対するエッジマッチング処理が完了した場合には(S7040:YES)、得られたL個のマッチングスコアの最大値MSを取得する。そして、評価部430は、サンプルオメガ画像毎に、マッチングスコアの最大値MSと、その最大値MSが得られた切出し画像の切出し位置Cとを記述した、マッチング結果一覧表を作成する。但し、評価部430は、既にマッチング結果一覧表が生成されている場合には、新たに得られたマッチングスコアの最大値MSを追記する形で、マッチング結果一覧表を更新する。
【0137】
図22は、マッチング結果一覧表の構成の一例を示す図である。
【0138】
図22に示すように、マッチング結果一覧表770は、サンプルオメガ画像毎に、サンプルオメガ画像の識別情報771に対応付けて、マッチングスコアが最大値となった切出し画像の切出し位置772およびそのマッチングスコア773を記述する。切出し位置772は、例えば、検出窓の左上端部の評価画像における位置を示す情報である。
【0139】
そして、図18のステップS7050において、評価部430は、H個のサンプルオメガ画像に対して処理を完了したか否かを判断する。すなわち、評価部430は、H個のサンプルオメガ画像について、マッチングスコアが最大値となった切出し位置772とそのマッチングスコア773とを、マッチング結果一覧表770に記述したか否か(図22参照)を判断する。
【0140】
評価部430は、H個のサンプルオメガ画像に対して処理をまだ完了していない場合には(S7050:NO)、ステップS7020へ戻り、次のサンプルオメガ画像を選択して処理を行う。
【0141】
また、評価部430は、H個のサンプルオメガ画像に対して処理を完了した場合には(S7050:YES)、マッチング結果一覧表770からマッチングスコアが最大値となったサンプルオメガ画像を特定する。そして、評価部430は、マッチングスコアが最大値となったサンプルオメガ画像のサンプルオメガ特徴量(以下「最尤オメガ特徴量」という)を肩位置計算部440へ出力し、「肩位置計算依頼」を肩位置計算部440へ通知して、図2の処理へ戻る。
【0142】
この通知を受けた肩位置計算部440は、図2のステップS8000において、入力された最尤オメガ特徴量から、肩位置推定モデル格納部340が保持する肩位置推定モデルを用いて、評価画像に含まれる人の肩位置を推定する。そして、肩位置計算部440は、推定結果を、向き推定部500へ出力する。向き推定部500は、これを受けて、肩位置から評価画像に含まれる人の肩向きを推定する。
【0143】
具体的には、肩位置計算部440は、評価画像における最尤オメガ特徴量の基準点(以下「評価基準点」という)の位置を特定する。ここでは、上述の通り、サンプルオメガ形状は切出し位置の中心を基準点として描画されたので、評価基準点の位置は、切出し位置Cが(Xc,Yc)であるとき、(Xc+w/2、Yc+h/2)となる。
【0144】
また、肩位置計算部440は、肩位置推定モデルである回帰係数行列Aを肩位置推定モデル格納部340から取得する。そして、肩位置計算部440は、例えば以下の式(9)のように、最尤オメガ特徴量K'を説明変数として回帰係数行列Aを適用することにより、評価画像の評価肩位置特徴量Q'を算出する。
【0145】
【数9】

【0146】
但し、「[u][v]」がu行×v列の2次元配列を意味するものとし、上述の通りオメガ形状がm=20個の点により定義されるものとすると、各値の構成は、Q':[1][4]、K':[1][40]、A:[40][4]となる。また、算出された評価肩位置特徴量Q'と評価基準点との組は、評価画像に含まれる人の右肩位置および左肩位置を示す情報となる。
【0147】
このようにして、右肩位置および左肩位置を算出すると、肩位置計算部440は、右肩位置(Shx1、Shy1)および左肩位置(Shx2、Shy2)を向き推定部500へ出力して、「向き推定依頼」を向き推定部500へ通知する。
【0148】
この通知を受けて、向き推定部500は、右肩位置から左肩位置へと向かうベクトルに直交する水平なベクトルのうち、上方から見て時計回りに90度回転の方向に相当するベクトルを、評価画像に含まれる人の肩向きVdとして算出する。更に、向き推定部500は、右肩位置と左肩位置とを結ぶ線分の中点((Shx1+Shx2)/2、(Shy1+Shy2)/2)を、肩中心位置Dとして算出する。
【0149】
向き推定部500は、評価画像を評価画像格納部410から取得し、算出した右肩位置、左肩位置、肩中心位置、および向きベクトルを示す記号等を、評価画像に重畳して描画した評価結果画像の画像データを生成する。そして、向き推定部500は、操作制御部200に「向き推定完了通知」を通知すると共に、生成した評価結果画像の画像データを操作制御部200へ出力して、評価結果画像を処理内容表示領域616に表示させる。
【0150】
そして、ステップS9000において、操作制御部200は、「終了」ボタン614が押下されたか否かを判断する。操作制御部200は、「終了」ボタン614が押下されていない場合には、ステップS2000へ戻る。また、操作制御部200は、「終了」ボタン614が押下された場合には、操作画面610を消去すると共に、「終了」を肩位置推定モデル生成部300および肩位置推定部400へ通知する。この通知を受けて、肩位置推定モデル生成部300および肩位置推定部400は、動作を停止する。
【0151】
このような動作により、人検出装置100は、肩位置推定モデルおよびオメガ生成情報を生成し、これらに基づいて、評価画像に含まれる人の肩位置および肩向きを、評価画像から推定することができる。
【0152】
以上説明したように、本実施の形態に係る人検出装置100は、オメガ形状と肩位置との関係を示す肩位置推定モデルを用いるので、評価画像に含まれる人の肩位置および肩向きを、評価画像から推定することができる。また、人検出装置100は、肩位置を推定することができるので、右肩下がりや左肩下がり等の姿勢の判定も可能となり、人の姿勢状態を推定する技術の発展に寄与することができる。
【0153】
すなわち、人検出装置100は、従来技術のような局所特徴の共起性によってのみでは抽出することができないオメガ形状の全体特徴の抽出を可能とすることができる。したがって、人検出装置100は、全体特徴が表現されなければ実現が難しい、オメガ形状と肩位置との相関性の活用を可能にすることができる。
【0154】
このような人検出装置100は、例えば、動画像を記録し、記録した動画像から人の身体が向いている方向を解析するシステムに適用することができる。したがって、人検出装置100は、街頭での異常行動検知や、店舗での購買行動分析、ドライバのわき見運転検知等に応用することができる。
【0155】
なお、以上説明した実施の形態では、人検出装置100は、肩位置推定モデルの生成を、肩位置推定モデル格納部340において行ったが、オメガ特徴格納部330において行っても良い。
【0156】
また、人検出装置100は、肩位置推定モデルを、重回帰分析ではなく全オメガ特徴量に対する主成分分析により生成しても良い。
【0157】
また、オメガ特徴格納部330は、オメガ特徴量K(40次元×Nサンプル画像数)ではなく、全オメガ特徴量に含まれるオメガ特徴量Kと肩位置特徴量Qとをまとめたデータ(44次元×Nサンプル画像数)に対して主成分分析を適用して、オメガ生成情報を生成しても良い。この場合には、オメガ生成情報から、オメガ形状に加えて両肩位置も復元可能となり、オメガ生成部420は、オメガ形状と両肩位置とを含んだサンプルオメガ画像を生成することができる。なお、評価部430は、マッチング評価時には、両肩位置を無視すれば良い。また、この場合、評価部430は、肩位置計算部440の機能を備えることができる。すなわち、評価部430は、マッチング評価が高いと判断したサンプルオメガ画像における両肩位置を、求めるべき両肩位置と推定することができる。
【0158】
また、人検出装置100は、人の外形として、オメガ形状の全部または一部ではなく、手や足等、他の身体部位の外形を推定しても良い。また、人検出装置100は、人の部位の状態として、肩位置および肩向きではなく、これらの一方のみや、手首の位置や前腕の伸びている方向等、他の状態を推定しても良い。すなわち、本発明は、人の外形と高い相関を有する各種の部位状態を推定する装置に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明に係る人検出装置および人検出方法は、人の部位の状態を画像から推定することができる人検出装置および人検出方法として有用である。
【符号の説明】
【0160】
100 人検出装置
200 操作制御部
300 肩位置推定モデル生成部
310 サンプル画像格納部
320 オメガ特徴生成部
330 オメガ特徴格納部
340 肩位置推定モデル格納部
400 肩位置推定部
410 評価画像格納部
420 オメガ生成部
430 評価部
440 肩位置計算部
500 向き推定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価画像から人の所定の外形を取得する評価部と、
人の前記所定の外形と前記人の所定の部位の状態との関係を示す推定モデルに基づいて、前記評価画像から取得された前記所定の外形から、前記評価画像に含まれる人の前記所定の部位の状態を推定する推定部と、を有する、
人検出装置。
【請求項2】
前記所定の外形は、人の頭部および肩部の外形の全部または一部の形状および位置であり、前記所定の部位の状態は、前記肩部の位置および向きである、
請求項1記載の人検出装置。
【請求項3】
前記所定の外形は、前記頭部および肩部の外形の全部としてのオメガ形状である、
請求項1記載の人検出装置。
【請求項4】
前記オメガ形状は、前記オメガ形状を構成する各点の位置関係により定義される、
請求項3記載の人検出装置。
【請求項5】
サンプル画像に含まれる人の前記オメガ形状および前記人の前記肩部の位置および向きを取得する特徴生成部と、
前記特徴生成部が取得した前記オメガ形状および前記肩部の位置および向きに基づいて、前記推定モデルを生成する前記推定モデル生成部と、を更に有する、
請求項4記載の人検出装置。
【請求項6】
前記特徴生成部は、
前記サンプル画像を表示し、前記サンプル画像毎に、ユーザから前記オメガ形状の設定と前記肩部の位置および向きの設定とを受け付ける、
請求項5記載の人検出装置。
【請求項7】
前記推定モデル生成部は、
前記オメガ形状を示す情報を説明変数とし、前記肩部の位置および向きを示す情報を目的変数とした重回帰分析を行うことにより、前記推定モデルを生成する、
請求項6記載の人検出装置。
【請求項8】
前記推定モデルの生成に用いられた前記オメガ形状が複数であるとき、前記複数のオメガ形状から、1つまたは複数のサンプルオメガ形状を生成するオメガ生成部、を更に有し、
前記評価部は、
前記サンプルオメガ形状と前記評価画像のエッジ部分とのマッチングにより前記オメガ形状を取得する、
請求項7記載の人検出装置。
【請求項9】
前記オメガ生成部は、
前記複数のオメガ形状を示す情報に対する主成分分析の結果に基づいて、前記複数のサンプルオメガ形状を生成する、
請求項8記載の人検出装置。
【請求項10】
評価画像から人の所定の外形を取得するステップと、
人の前記所定の外形と前記人の所定の部位の状態との関係を示す推定モデルに基づいて、前記評価画像から取得された前記所定の外形から、前記評価画像に含まれる人の前記所定の部位の状態を推定するステップと、を有する、
人検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−123668(P2012−123668A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274675(P2010−274675)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】