説明

人検知装置および人検知方法

【課題】より信頼性の高い人検知装置および人検知方法を提供する。
【解決手段】 親機11は信号をアンテナ102から送出し、信号を同軸ケーブル13に送出する。子機12は、同軸ケーブル13から信号を受信し、アンテナ102から送出された信号を受信する。子機12の検波部202は、各信号を電圧に変換する。A/D変換部203は各電圧をデジタル化する。アンテナ201で受信された信号から変換された電圧がデジタル化されて電圧値Vaが得られる。同軸ケーブル13から受信された信号から変換された電圧がデジタル化されて電圧値Vcが得られる。演算部204は、電圧値Vaと電圧値Vcとの差分の絶対値Vdを演算する。判定部206は絶対値Vdが閾値Vthを超えているか否かを判定する。絶対値Vdが閾値Vthを超えていると判定された場合、検知信号送出部207は、人が検知されたことを示す検知信号を通信ネットワーク2に送出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人検知装置および人検知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅やオフィス等の屋内への侵入犯罪が増加している。一方、少子高齢化社会が到来し、独居高齢者の増加に伴って孤独死などの新たな社会問題が生じている。このような状況の中で、安心・安全に対する社会の要求の増大に伴い、防犯や見守りといったサービスの需要が増えている。これらのサービスの要となるのが人を検知するセンサであり、現在は赤外線や画像による人の検知が主流である。赤外線センサは主に2種類あり、1つは送信機と受信機間で赤外線を送受信し、物体によって赤外線がさえぎられて送受信が出来ない場合に人がいることを検知するものである。もう1つは、人や動物が発する赤外線を検知し、人を検知するものである。
【0003】
画像センサは、カメラが撮影した画像(現画像と前画像)の差分を解析し、その差分値に変化があった場合に人を検知する。画像センサは、近年の画像処理や画像認識技術の向上により、人を精度良く検出する手段として注目を集めている。
【0004】
また、最近では、電波を利用した人の検地方法が研究されている。電波センサは、センサ自体が電波を発信するアクティブ型と、携帯電話基地局の電波など、空間中に既存の電波を利用するパッシブ型がある。アクティブ型については、ドップラー効果による周波数差分または振幅差分から人を検知するセンサや、FM−CW方式を利用したセンサが開発されている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−338231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
赤外線センサは、検知感度が高いため多用されているが、直進性が強いという特性を有するため、屋内の障害物(壁、柱など)によって死角が生じる場合がある。このため、複数の赤外線センサを設置しなければならず、コストが高くなってしまう。また、人が発する赤外線を感知する場合では、ペットなどの動物を人と誤検知してしまう場合がある。
【0006】
また、画像センサは、屋内を撮影することから、一般住居などのプライバシーにかかわる場所では適用に心理的な抵抗感がある。また、画像センサは、赤外線センサと同様に、壁などに遮られた死角については画像を撮影できない。このため、複数の画像センサを設置しなければならず、コストが高くなってしまう。
【0007】
アクティブ型の電波センサは、電波を自ら発信するため、機器の消費電力が増大し、周囲の電磁環境に影響を及ぼす可能性がある。また、パッシブ型はテレビ放送波や携帯電話基地局の電波を利用することが考えられるが、室外から電波が到来するため、送信アンテナと建物の間との伝搬経路の状態に変化が生じた場合、誤検知する恐れがあった。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、より信頼性の高い人検知装置および人検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1の人検知装置は、無線LAN装置の親機および子機を備え、前記子機は通信ネットワークに接続され、前記親機は、信号を生成する手段と、前記信号を送出するアンテナとを有し、前記子機は、前記アンテナから送出された信号を受信するアンテナと、前記受信された信号を電圧に変換する手段と、前記電圧を示す値を得る手段と、当該値が予め設定された閾値を超えているか否かを判定する手段と、当該値が閾値を超えていると判定された場合、人が検知されたことを示す検知信号を前記通信ネットワークに送出する手段とを有することを特徴とする。
【0010】
請求項2の人検知装置は、無線LAN装置の親機および子機を備え、前記子機は通信ネットワークに接続され、前記親機と前記子機は互いに同軸ケーブルで接続され、前記親機は、信号を生成する手段と、前記信号を送出するアンテナとを有するとともに、当該信号を前記同軸ケーブルに送出し、前記子機は、前記アンテナから送出された信号を受信するアンテナと、当該アンテナで受信された信号と前記同軸ケーブルから受信された信号を電圧に変換する手段と、当該アンテナで受信された信号から変換された電圧を示す電圧値と前記同軸ケーブルから受信された信号から変換された電圧を示す電圧値との差分の絶対値を計算する手段と、当該絶対値が予め設定された閾値を超えているか否かを判定する手段と、当該絶対値が閾値を超えていると判定された場合、人が検知されたことを示す検知信号を前記通信ネットワークに送出する手段とを有することを特徴とする。
【0011】
請求項3の人検知装置は、請求項2記載の人検知装置において、前記子機は、前記アンテナで受信された信号から変換された電圧と前記同軸ケーブルから受信された信号から変換された電圧の一方を他方に対して予め定められた長さの遅延時間だけ遅延させる手段を有する、ことを特徴とする。
【0012】
請求項4の人検知方法は、無線LAN装置の親機および子機を備え、前記子機は通信ネットワークに接続される人検知装置が行う人検知方法であって、前記親機は、信号を生成し、前記信号をアンテナから送出し、前記子機は、前記アンテナから送出された信号をアンテナで受信し、前記受信された信号を電圧に変換し、前記電圧を示す値を得て、当該値が予め設定された閾値を超えているか否かを判定し、当該値が閾値を超えていると判定された場合、人が検知されたことを示す検知信号を前記通信ネットワークに送出する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項5の人検知方法は、無線LAN装置の親機および子機を備え、前記子機は通信ネットワークに接続され、前記親機と前記子機は互いに同軸ケーブルで接続されされる人検知装置が行う人検知方法であって、前記親機は、信号を生成し、前記信号をアンテナから送出し、当該信号を前記同軸ケーブルに送出し、前記子機は、前記アンテナから送出された信号をアンテナで受信し、前記同軸ケーブルから信号を受信し、当該アンテナで受信された信号と前記同軸ケーブルから受信された信号を電圧に変換し、当該アンテナで受信された信号から変換された電圧を示す電圧値と前記同軸ケーブルから受信された信号から変換された電圧を示す電圧値との差分の絶対値を計算し、当該絶対値が予め設定された閾値を超えているか否かを判定し、当該絶対値が閾値を超えていると判定された場合、人が検知されたことを示す検知信号を前記通信ネットワークに送出する、ことを特徴とする。
【0014】
請求項6の人検知方法は、請求項5の人検知方法において、前記子機は、前記アンテナで受信された信号から変換された電圧と前記同軸ケーブルから受信された信号から変換された電圧の一方を他方に対して予め定められた長さの遅延時間だけ遅延させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、無線LAN装置の親機から子機への電波を用いることにより、周囲の電波環境の変化に影響されず、より安定した人検知装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る人検知装置1の概略構成図である。
【0018】
人検知装置1は、例えば、屋内(室内など)に設置され、屋内において人(例えば侵入者)を検知し、これをその部屋のユーザが遠隔で知ることができるようにするものである。人検知装置は、無線LAN装置の親機11および子機12を備え、子機12は通信ネットワーク2に接続され、親機11と子機12は互いに同軸ケーブル13で接続されている。
【0019】
親機11は、信号を生成する信号生成部101と、信号を空中に送出するアンテナ102とを有する。
【0020】
親機11は、生成された信号を同軸ケーブル13に送出し、子機12は、同軸ケーブル13から信号を受信するようになっている。
【0021】
生成される信号は、特別なものでなくてよく、無線LANで必要なものを流用すればよい。
【0022】
子機12は、アンテナ102から送出された信号(電波)を受信するアンテナ201と、アンテナ201で受信された信号と同軸ケーブル13から受信された信号とを検波により電圧に変換する検波部202と、各電圧をデジタル化するアナログデジタル(以下、「A/D」と略記する)変換部203と、アンテナ201で受信された信号から変換された電圧がデジタル化されて得られた電圧値Vaと同軸ケーブル13から受信された信号から変換された電圧がデジタル化されて得られた電圧値Vcとの差分の絶対値Vdを計算する演算部204と、絶対値Vdについての閾値Vth(正値)が記憶された閾値記憶部205と、絶対値Vdが閾値Vthを超えているか否かを判定する判定部206と、絶対値Vdが閾値Vthを超えていると判定された場合、人が検知されたことを示す検知信号を通信ネットワーク2に送出する検知信号送出部207とを有する。
【0023】
次に、人検知装置1が行う人検知方法を説明する。
【0024】
親機11では、信号生成部101が信号を生成し、アンテナ102が信号を屋内に送出する。また、親機11は、生成された信号を同軸ケーブル13に送出し、子機12は、同軸ケーブル13から信号を受信する。また、子機12のアンテナ201は、アンテナ102から送出された信号(電波)を受信する。
【0025】
図2は、子機12の動作を示すフローチャートである。
【0026】
検波部202は、アンテナ201で受信された信号と同軸ケーブル13から受信された信号とを検波により電圧に変換する(ステップS1)。次に、A/D変換部203が各電圧をデジタル化する(ステップS3)。これにより、アンテナ201で受信された信号から変換された電圧がデジタル化されて電圧値Vaが得られる。また、同軸ケーブル13から受信された信号から変換された電圧がデジタル化されて電圧値Vcが得られる。次に、演算部204が、電圧値Vaと電圧値Vcとの差分の絶対値Vd=|Va−Vc|を演算する(ステップS5)。次に、判定部206が閾値記憶部205から閾値Vthを読み出し、絶対値Vdが閾値Vthを超えているか否かを判定する(ステップS7)。絶対値Vdが閾値Vthを超えている(YES)と判定された場合、検知信号送出部207は、人が検知されたことを示す検知信号を通信ネットワーク2に送出する(ステップS9)。絶対値Vdが閾値Vthを超えていない(NO)と判定された場合、または、ステップS9の次においては、その時点から予め定められた時間が経過したかを判定する(ステップS11)。NOと判定された場合、ステップS11を繰り返し、YESと判定された場合、ステップS1に戻る。
【0027】
図3は、絶対値Vdの変化を例示した図である。
【0028】
電圧値Vcは、同軸ケーブル13から受信された信号により得れらるため、人の有無によらず、安定している。
【0029】
一方、電圧値Vaは、アンテナ201で受信された信号により得られるため、人がいない場合は安定しているが、人がいる場合は不安定になる。電圧値Vcが安定しているため、絶対値Vdは電圧値Vcと同様の傾向を示す。
【0030】
よって、図3に示すように、室内に人がいない時間帯Tnにおいて、絶対値Vdは例えば0になっている。一方、室内に人がいる時間帯Tyにおいては、例えば絶対値Vdが0より大きくなり、かつ、変動する。これにより、絶対値Vdが閾値Vthを超え、検知信号が送出される。検知信号は、例えば、通信ネットワーク2に接続されたコンピュータにより受信され、これにより、コンピュータを使用する部屋のユーザが、室内に人(例えば侵入者)がいるのを知ることとなる。
【0031】
次に、上記の人検知に先立ってなされる閾値Vthの決定方法を説明する。
【0032】
まず、例えば子機12がユーザに音や光でタイミングを指示し、そのタイミングに従って静止と移動を行わせる。また、子機12は、図3に示したように、絶対値Vdの変化を得る。ユーザが静止している時間帯では、時間帯Tnのように、絶対値Vdは例えば0になっている。一方、ユーザが移動してる時間帯では、時間帯Tyのように、絶対値Vdが0より大きくなり、かつ、変動する。子機12は、例えば、変動している絶対値Vdのピーク値Vdmaxの70%を計算し、これを閾値Vthとして閾値記憶部205に記憶させる。
【0033】
こうした上で、上記の人検知を行えば、室内に人(例えば侵入者)がいるときは、絶対値Vdは少なくともピーク値Vdmaxの70%以下にはならないだろうから、人を検知することができる。
【0034】
なお、閾値Vthは、ユーザにより可変できるようにし、これにより、例えば、誤検知を防止できるようにするのが好ましい。
【0035】
以上の通り、第1の実施の形態の人検知装置1によれば、無線LAN装置の親機11から子機12への電波を用いることにより、周囲の電波環境の変化に影響されず、より安定した人検知が行える。
【0036】
人検知装置1によれば、無線LAN装置の親機11および子機12を備え、子機12は通信ネットワーク2に接続され、親機11と子機12は互いに同軸ケーブル13で接続され、親機11は、信号を生成する手段(信号生成部101)と、信号を送出するアンテナ102とを有するとともに、当該信号を同軸ケーブル13に送出し、子機12は、アンテナ102から送出された信号を受信するアンテナ201と、アンテナ201で受信された信号と同軸ケーブル13から受信された信号を電圧に変換する手段(検波部202)と、アンテナ201で受信された信号から変換された電圧を示す電圧値Vaと同軸ケーブル13から受信された信号から変換された電圧を示す電圧値Vcとの差分の絶対値Vdを計算する手段(演算部204)と、絶対値Vdが予め設定された閾値Vthを超えているか否かを判定する手段(判定部206)と、絶対値Vdが閾値Vthを超えていると判定された場合、人が検知されたことを示す検知信号を通信ネットワークに送出する手段(検知信号送出部207)とを有することで、周囲の電波環境の変化に影響されず、より安定した人検知が行える。
【0037】
人検知装置1が行う人検知方法によれば、親機11は、信号を生成し、信号をアンテナ102から送出し、当該信号を同軸ケーブル13に送出し、子機12は、アンテナ102から送出された信号をアンテナ201で受信し、同軸ケーブル13から信号を受信し、アンテナ201で受信された信号と同軸ケーブル13から受信された信号を電圧に変換し、アンテナ201で受信された信号から変換された電圧を示す電圧値と同軸ケーブル13から受信された信号から変換された電圧を示す電圧値との差分の絶対値Vdを計算し、絶対値Vdが予め設定された閾値Vthを超えているか否かを判定し、絶対値Vdが閾値Vthを超えていると判定された場合、人が検知されたことを示す検知信号を通信ネットワーク2に送出する、ことで、周囲の電波環境の変化に影響されず、より安定した人検知が行える。
【0038】
なお、第1の実施の形態は、これに限らず、例えば、閾値記憶部205に電圧値Vaについての閾値を記憶させ、判定部206が、電圧値Vaが閾値を超えているか否かを判定し、電圧値Vaが閾値を超えていると判定された場合、検知信号送出部207が検知信号を送出するようにしてもよい。
【0039】
このような人検知装置によれば、無線LAN装置の親機11および子機12を備え、子機12は通信ネットワーク2に接続され、親機11は、信号を生成する手段(信号生成部101)と、信号を送出するアンテナ102とを有し、子機12は、アンテナ102から送出された信号を受信するアンテナ201と、受信された信号を電圧に変換する手段(検波部202)と、電圧を示す値Vaを得る手段(A/D変換部203)と、当該値が予め設定された閾値を超えているか否かを判定する手段(判定部206)と、当該値が閾値を超えていると判定された場合、人が検知されたことを示す検知信号を通信ネットワーク2に送出する手段(検知信号送出部207)とを有することで、周囲の電波環境の変化に影響されず、より安定した人検知が行える。
【0040】
このような人検知装置が行う人検知方法によれば、親機11は、信号を生成し、信号をアンテナ102から送出し、子機12は、アンテナ102から送出された信号をアンテナ201で受信し、受信された信号を電圧に変換し、電圧を示す値Vaを得て、値Vaが予め設定された閾値を超えているか否かを判定し、値Vaが閾値を超えていると判定された場合、人が検知されたことを示す検知信号を通信ネットワーク2に送出する、ことで、周囲の電波環境の変化に影響されず、より安定した人検知が行える。
【0041】
[第2の実施の形態]
図4は、第2の実施の形態に係る人検知装置1Aの概略構成図である。人検知装置1Aは、第1の実施の形態に係る人検知装置1とほぼ同様の構成なので、同一部分には同一符号を付与し、重複説明を省略する。
【0042】
人検知装置1Aは、無線LAN装置の親機11および子機12を備え、子機12は通信ネットワーク2に接続され、親機11と子機12は互いに同軸ケーブル13で接続されている。
【0043】
親機11は、信号生成部101とアンテナ102とを有する。
【0044】
親機11は、生成された信号を同軸ケーブル13に送出し、子機12は、同軸ケーブル13から信号を受信するようになっている。
【0045】
子機12は、アンテナ201、検波部202、A/D変換部203、演算部204、閾値記憶部205、判定部206および検知信号送出部207とを有し、さらに、アンテナ201で受信された信号から変換された電圧を同軸ケーブル13から受信された信号から変換された電圧に対して予め定められた長さの遅延時間Dtだけ遅延させる遅延部208を有する。
【0046】
次に、第2の実施の形態の人検知装置1Aが行う人検知方法を説明する。
【0047】
親機11では、信号生成部101が信号を生成し、アンテナ102が信号を屋内に送出する。また、親機11は、生成された信号を同軸ケーブル13に送出し、子機12は、同軸ケーブル13から信号を受信する。また、子機12のアンテナ201は、アンテナ102から送出された信号(電波)を受信する。
【0048】
図5は、子機12の動作を示すフローチャートである。
【0049】
検波部202は、アンテナ201で受信された信号と同軸ケーブル13から受信された信号とを検波により電圧に変換する(ステップS101)。次に、遅延部208が、アンテナ201で受信された信号から変換された電圧を同軸ケーブル13から受信された信号から変換された電圧に対して遅延時間Dtだけ遅延させる(ステップS102)。次に、A/D変換部203が、遅延後の電圧と同軸ケーブル13から受信された信号から変換された電圧の各電圧をデジタル化する(ステップS103)。これにより、遅延後の電圧がデジタル化されて電圧値Va’が得られる。また、同軸ケーブル13から受信された信号から変換された電圧がデジタル化されて電圧値Vcが得られる。次に、演算部204が、電圧値Va’と電圧値Vcとの差分の絶対値Vd’=|Va’−Vc|を演算する(ステップS105)。次に、判定部206が閾値記憶部205から閾値Vthを読み出し、絶対値Vd’が閾値Vthを超えているか否かを判定する(ステップS107)。絶対値Vd’が閾値Vthを超えている(YES)と判定された場合、検知信号送出部207は、人が検知されたことを示す検知信号を通信ネットワーク2に送出する(ステップS109)。絶対値Vd’が閾値Vthを超えていない(NO)と判定された場合、または、ステップS109の次においては、その時点から予め定められた時間が経過したかを判定する(ステップS111)。NOと判定された場合、ステップS111を繰り返し、YESと判定された場合、ステップS101に戻る。
【0050】
図6は、アンテナ201で受信された信号から変換された電圧が遅延されずにデジタル化されて得られた電圧値Vaと同軸ケーブル13から受信された信号から変換された電圧がデジタル化されて得られた電圧値Vcの変化を例示した図である。すなわち、図6は、第1の実施の形態における電圧値Vaと電圧値Vcの変化を示す図である。
【0051】
電圧値Vaは、アンテナ201で受信された信号により得られ、一方、電圧値Vcは、同軸ケーブル13から受信された信号により得れら、つまり、伝搬経路が相違するため、電圧値Vaと電圧値Vcの間には、時間差が生じ、例えば、電圧値Vaが電圧値Vcに対して進む場合がある。この場合、絶対値Vdが図3に示すような変化を示さず、例えば、室内に人がいない時間帯Tnにおいて、絶対値Vdが閾値Vthを超え、つまり誤検知がなされてしまう虞がある。
【0052】
そこで、第2の実施の形態では、電圧値Vaにデジタル化される前の、アンテナ201で受信された信号から変換された電圧を遅延させることで、電圧値Vaと電圧値Vcの間に時間差を生じさせなくしているのである。その結果、絶対値Vdが図3に示すような変化を示し、これにより、誤検知を防止することができる。
【0053】
次に、上記の人検知に先立ってなされる遅延時間Dtの決定方法を説明する。
【0054】
まず、子機12は、遅延部208を停止させることにより、図6に示したような電圧値Vaと電圧値Vcの変化を得る。次に、子機12は、電圧値Vaと電圧値Vcの時間差を演算し、得た時間差を遅延時間Dtとして、これを遅延部208が記憶する。
【0055】
こうした上で、上記の人検知を行えば、時間差が生じた場合であっても、人を検知することができる。
【0056】
なお、第2の実施の形態にあっては、電圧値Vaが電圧値Vcに対して進む場合について説明したが、逆に、電圧値Vcが電圧値Vaに対して進む場合、遅延部208が、同軸ケーブル13から受信された信号から変換された電圧をアンテナ201で受信された信号から変換された電圧に対して遅延させ、A/D変換部203が、遅延後の電圧とアンテナ201で受信された信号から変換された電圧の各電圧をデジタル化し、その他については、第2の実施の形態で説明したとおりとすればよい。
【0057】
以上の通り、第2の実施の形態の人検知装置1Aによれば、子機12は、アンテナ201で受信された信号から変換された電圧を同軸ケーブル13から受信された信号から変換された電圧に対して予め定められた長さの遅延時間Dtだけ遅延させる手段(遅延部208)を有することで、両信号の間の伝搬経路の違いにより生じる時間差をなくせ、もって、誤検知を防止することができる。
【0058】
人検知装置1が行う人検知方法によれば、子機12は、アンテナ201で受信された信号から変換された電圧と同軸ケーブル13から受信された信号から変換された電圧の一方を他方に対して予め定められた長さの遅延時間だけ遅延させる、ことで、両信号の間の伝搬経路の違いにより生じる時間差をなくせ、もって、誤検知を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第1の実施の形態に係る人検知装置1の概略構成図である。
【図2】子機12の動作を示すフローチャートである。
【図3】絶対値Vdの変化を例示した図である。
【図4】第2の実施の形態に係る人検知装置1Aの概略構成図である。
【図5】子機12の動作を示すフローチャートである。
【図6】電圧値Vaと電圧値Vcの変化を例示した図である。
【符号の説明】
【0060】
1、1A…人検知装置
2…通信ネットワーク
11…親機
12…子機
13…同軸ケーブル
101…信号生成部
102、201…アンテナ
202…検波部
203…A/D変換部
204…演算部
205…閾値記憶部
206…判定部
207…検知信号送出部
208…遅延部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線LAN装置の親機および子機を備え、前記子機は通信ネットワークに接続され、
前記親機は、
信号を生成する手段と、前記信号を送出するアンテナとを有し、
前記子機は、
前記アンテナから送出された信号を受信するアンテナと、前記受信された信号を電圧に変換する手段と、前記電圧を示す値を得る手段と、当該値が予め設定された閾値を超えているか否かを判定する手段と、当該値が閾値を超えていると判定された場合、人が検知されたことを示す検知信号を前記通信ネットワークに送出する手段とを有する、
ことを特徴とする人検知装置。
【請求項2】
無線LAN装置の親機および子機を備え、前記子機は通信ネットワークに接続され、前記親機と前記子機は互いに同軸ケーブルで接続され、
前記親機は、
信号を生成する手段と、前記信号を送出するアンテナとを有するとともに、当該信号を前記同軸ケーブルに送出し、
前記子機は、
前記アンテナから送出された信号を受信するアンテナと、当該アンテナで受信された信号と前記同軸ケーブルから受信された信号を電圧に変換する手段と、当該アンテナで受信された信号から変換された電圧を示す電圧値と前記同軸ケーブルから受信された信号から変換された電圧を示す電圧値との差分の絶対値を計算する手段と、当該絶対値が予め設定された閾値を超えているか否かを判定する手段と、当該絶対値が閾値を超えていると判定された場合、人が検知されたことを示す検知信号を前記通信ネットワークに送出する手段とを有する、
ことを特徴とする人検知装置。
【請求項3】
前記子機は、
前記アンテナで受信された信号から変換された電圧と前記同軸ケーブルから受信された信号から変換された電圧の一方を他方に対して予め定められた長さの遅延時間だけ遅延させる手段を有する、
ことを特徴とする請求項2記載の人検知装置。
【請求項4】
無線LAN装置の親機および子機を備え、前記子機は通信ネットワークに接続される人検知装置が行う人検知方法であって、
前記親機は、
信号を生成し、前記信号をアンテナから送出し、
前記子機は、
前記アンテナから送出された信号をアンテナで受信し、前記受信された信号を電圧に変換し、前記電圧を示す値を得て、当該値が予め設定された閾値を超えているか否かを判定し、当該値が閾値を超えていると判定された場合、人が検知されたことを示す検知信号を前記通信ネットワークに送出する、
ことを特徴とする人検知方法。
【請求項5】
無線LAN装置の親機および子機を備え、前記子機は通信ネットワークに接続され、前記親機と前記子機は互いに同軸ケーブルで接続されされる人検知装置が行う人検知方法であって、
前記親機は、
信号を生成し、前記信号をアンテナから送出し、当該信号を前記同軸ケーブルに送出し、
前記子機は、
前記アンテナから送出された信号をアンテナで受信し、前記同軸ケーブルから信号を受信し、当該アンテナで受信された信号と前記同軸ケーブルから受信された信号を電圧に変換し、当該アンテナで受信された信号から変換された電圧を示す電圧値と前記同軸ケーブルから受信された信号から変換された電圧を示す電圧値との差分の絶対値を計算し、当該絶対値が予め設定された閾値を超えているか否かを判定し、当該絶対値が閾値を超えていると判定された場合、人が検知されたことを示す検知信号を前記通信ネットワークに送出する、
ことを特徴とする人検知方法。
【請求項6】
前記子機は、
前記アンテナで受信された信号から変換された電圧と前記同軸ケーブルから受信された信号から変換された電圧の一方を他方に対して予め定められた長さの遅延時間だけ遅延させる、
ことを特徴とする請求項5記載の人検知方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate