説明

人造大理石

【課題】 汚れが生じ難く、また、付着した汚れを除去しやすい。
【解決手段】 合成樹脂と無機充填材からなる人造大理石に撥水成分としてシロキサン系撥水剤を含有したアクリルウレタン系塗料を塗布して成る人造大理石である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂からなる人造大理石に関し、特に、水回り部分に使用し、防汚機能をもった人造大理石に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、優れた物性及び高級感から、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂の合成樹脂を主体とする人造大理石が知られており、この人造大理石は壁材や台所用天板として広く用いられている。
【0003】
人造大理石としては、上記樹脂に水酸化アルミニウムなどの無機充填材を添加した樹脂組成物がよく使用されており、この樹脂組成物を所定の厚みに形成し、用途に合わせて所定の大きさに切断した後、化粧面にあたる部分を必要に応じて研磨加工して用いられている。
【0004】
このように製造された人造大理石は、洗面カウンター、キッチンカウンター、浴槽、洗面ボールなどに商品化されて広く利用されている。
【0005】
ここで、人造大理石製品がトイレ、浴槽、キッチン回りなどの水回りと呼ばれる分野で使用される場合、使用による汚れ、あるいは洗剤による汚染、食品や油、化粧品等による汚れなどが付着し易く、清掃しても汚れが取れ難い、あるいは、清掃しても汚れが取れないという状況が発生していた。これらのために、汚れが付き難く、また、汚れが取れ易いという防汚性能の高い人造大理石の出現が切望されているのが現状である。
【0006】
ところで、天然の大理石は通常、表面に適度な光沢のある石材として用いられており、このため人造大理石も天然の大理石に似せるため、その表面を適度な光沢のあるように、又は、柄表現のために、研磨して使用している。人造大理石の表面を研磨すると、樹脂マトリックス中に含まれている無機充填材が表面に露出し、この表面に露出した無機充填材は、親水性と共に親油性をも有していることが多く、人造大理石製の化粧板の表面に種々の液状汚染物質が付着すると、樹脂と無機充填材との界面にこの液状汚染物質が浸透して落ち難い汚れが付着するという問題があった。また、この無機充填材は、漂白剤などの薬品に侵されやすいという欠点もあった。
【0007】
なお、人造大理石の表面の耐汚染性を向上させるため、人造大理石の表面にフッ化炭素基を含むシラン系界面活性剤を化学結合させたものが特許文献1により知られている。
【特許文献1】特開2001−190344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、汚れが生じ難く、また、付着した汚れを除去しやすい人造大理石を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る人造大理石は、合成樹脂と無機充填材からなる人造大理石に撥水成分としてシロキサン系撥水剤を含有したアクリルウレタン系塗料を塗布して成ることを特徴とするものである。
【0010】
このような構成とすることで、撥水成分としてシロキサン系撥水剤を含有したアクリルウレタン系塗料よりなる防汚コート膜により、無機充填材が表面に露出しないことになって、酸やアルカリに強く、調味料や洗剤に対して侵されなく、また、撥水性が向上するため、優れた耐汚染性を有し、汚れが生じ難く、また、付着した汚れも拭き取るだけで簡単に除去することが可能である。これらの理由により長期の防汚性能を保持できるものである。
【0011】
また、人造大理石に塗布するシロキサン系撥水剤を含有したアクリルウレタン系塗料にフッ素パウダーを配合することが好ましい。
【0012】
このような構成とすることで、上記の効果に加えて撥油性が向上し、更に防汚性能が向上するものである。
【0013】
また、人造大理石に塗布するシロキサン系撥水剤を含有したアクリルウレタン系塗料にシリカパウダーを配合することが好ましい。
【0014】
このような構成とすることで、シリカパウダーの配合量を調整することで、簡単に表面艶の調整ができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、人造大理石の表面が汚れ難く、また、酸やアルカリにも強く、調味料や洗剤に対して侵されず、また、付着した汚れが除去しやすくなり、水回り部分に使用しても長期の防汚性能を保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0017】
本発明における人造大理石は合成樹脂(熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂)と無機粉体とで形成される。合成樹脂としてはビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂から選ばれる一種以上のものが好ましく、また、無機粉体としては、珪酸カルシウム、タルク、カオリン、クレー、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどが挙げられるが特にこれらに限定されるものではないが、上記例示したものの中では水酸化アルミニウムが好適であり、水酸化アルミニウム三水和物即ちギブサイトがより好適に用いられる。ギブサイトは、メタクリル酸メチル重合体の屈曲率に近いため、優れた透明感が得られ、且つ、水和物の特性として形成される人造大理石への耐熱性・難燃性付与にも貢献する。無機粉体の平均粒径は、0.1〜100μmであることが好ましく、0.5〜80μmであることがより好ましい。
【0018】
人造大理石のマトリックスにおける重合体と無機粉体との比率、つまり、合成樹脂と無機粉体との比率は、合成樹脂100質量部:無機粉体50〜500質量部であることが好ましい。上記合成樹脂には必要に応じて着色剤、柄材等の添加剤を加えることができる。着色剤としては、染料、有機顔料、無機顔料等、通常、人造大理石との無機粉体含有樹脂成形物に用いられる着色剤であればどのようなものも用いることができる。柄材としては、有機樹脂からなる粒子、あるいは無機質の粒子を例示でき、有機樹脂としては、メタクリル酸メチル系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール等を例示でき、無機質粒子としては大理石粒子、シリカ、雲母等を例示できる。これらの粒子の最大寸法は、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。
【0019】
本発明の人造大理石(人造大理石化粧板)は、成形後必要に応じて表面研磨を行う。その後、少なくとも一方の面に撥水剤を含有したアクリルウレタン系塗料を塗布した塗装層を有している。このように撥水性を向上させるため撥水剤を含有させるが、撥水剤としてはシロキサン系撥水剤が用いられる。
【0020】
また、人造大理石に塗布するシロキサン系撥水剤を含有したアクリルウレタン系塗料に更に撥油性能のためにフッ素系樹脂やフッ素系パウダーを配合することもできる。
【0021】
更にまた、表面艶の調整のために、塗膜に粉体成分としてシリカなどの無機質パウダーや、フッ素系パウダーなどを配合することもできる。これらのパウダー成分は、塗料中の樹脂成分100重量部に対して、5〜70重量部が好ましい。シリカパウダー成分が少なければ、光沢が大きくなり、フッ素系パウダーが少なければ、撥油効果が小さく且つ光沢が大きくなる。シリカパウダー成分及びフッ素系パウダーが多過ぎると、樹脂成分の結合が不足して、塗膜密着強度が下がる原因となる。これらパウダーは、平均粒径0.1〜50μm程度が好ましく、平均粒径0.1μmに満たないと小さ過ぎて分散性に欠け、50μmを超えると大きすぎて塗膜の形成が難しくなる。
【0022】
塗膜に意匠性を加える場合には、塗膜に顔料等の着色剤、柄材をいれても良く、人造大理石マトリックスの素地を生かした意匠を重視する場合には、着色剤や柄材を入れずにクリアーな塗膜にすることもできる。
【0023】
塗膜の厚さは1〜100μm程度が好ましく、塗膜厚さが1μmに満たないと薄過ぎて塗膜欠陥が生じる恐れがあり、塗膜厚さが100μmを超えると厚過ぎて人道大理石の質感を損ねる場合がある。
【0024】
上記のような構成の本発明の人造大理石は、人造大理石に撥水成分としてシロキサン系撥水剤を含有したアクリルウレタン系塗料を塗布してあるので、汚れが付着し難く、また、汚れが付着した場合も、拭き取るだけで簡単に除去できる。
【0025】
特に、アクリルウレタン系塗料に、撥水成分としてシロキサン系撥水剤を配合し且つ撥油成分としてフッ素パウダーを配合したものは、水性及び油性汚れが付着し難く、また、汚れが付着した場合も、拭き取るだけで簡単に除去できる。
【実施例】
【0026】
以下本発明の実施例と比較例につき述べる。
【0027】
(実施例1)
ビニルエステル樹脂(武田薬品(株)製「プロミネートP−311」)100質量部に対して、水酸化アルミニウム(住友化学(株)製「CW−308B」)を200質量部配合し、硬化剤(日本油脂(株)製「パーキュアWO」)を適量添加して、攪拌機で混合することにより樹脂組成物を調製した。
【0028】
この樹脂組成物を2666Pa(20Torr)の減圧下で30分間減圧脱泡処理し、これを金型内に注入して金型を90℃で70分間加熱することによって樹脂組成物を硬化させ、10mm厚の平板状の人造大理石を得た。
【0029】
この平板状の人造大理石の表面研磨をした後、スプレーにより、撥水成分としてシロキサン系撥水剤を含有したアクリルウレタン塗料を平均塗膜20μmになるように塗布し、常温により乾燥させた後、70℃で20分間硬化させた。
【0030】
(実施例2)
実施例1と同様に成形・研磨した平板状の人造大理石に、スプレーで、撥水成分としてシロキサン系撥水剤を含有したアクリルウレタン塗料に撥油成分としてフッ素パウダーを配合した塗料を平均塗膜20μmになるように塗布し、常温により乾燥させた後、70℃で20分間硬化させた。
【0031】
(実施例3)
実施例1と同様に成形・研磨した平板状の人造大理石に、スプレーで、撥水成分としてシロキサン系撥水剤を含有したアクリルウレタン塗料に艶調整剤としてシリカパウダーを配合した塗料を平均塗膜20μmになるように塗布し、常温により乾燥させた後、70℃で20分間硬化させた。
【0032】
(比較例1)
実施例1と同様に成形・研磨した平板状の人造大理石を準備し、そのままの素地で塗装しないものを比較例1とした。
【0033】
上記のようにして得た実施例1〜3及び比較例1の人造大理石について、汚染物質としてカレーと青色インキをその表面に塗布した後、一日放置した。そしてこのものを、水道水で水洗いした時の水洗い性と、中性洗剤で洗浄したときの洗浄性を評価し、汚染物質の残り具合を目視で次の5段階による点数付けをして防汚性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0034】
5=汚染物質が完全に取れている。4=汚染物質がごく僅かに残っている。3=汚染物質が残っていてやや目立つ。2=汚染物質が残っていて目立つ。1=汚染物質が殆ど取れない。
【0035】
【表1】

【0036】
表1から明らかなように、実施例1、実施例2、実施例3のものは比較例1に比べて水洗い性と洗浄性のいずれもが高く、撥水成分としてシロキサン系撥水剤を含有したアクリルウレタン系塗料を塗装した実施例1、実施例2、実施例3における人造大理石は水洗い性と洗浄性のいずれもが高く、防汚性能が優れていることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂と無機充填材からなる人造大理石に撥水成分としてシロキサン系撥水剤を含有したアクリルウレタン系塗料を塗布して成ることを特徴とする人造大理石。
【請求項2】
人造大理石に塗布するシロキサン系撥水剤を含有したアクリルウレタン系塗料にフッ素パウダーを配合して成ることを特徴とする請求項1記載の人造大理石。
【請求項3】
人造大理石に塗布するシロキサン系撥水剤を含有したアクリルウレタン系塗料にシリカパウダーを配合して成ることを特徴とする請求項1記載の人造大理石。

【公開番号】特開2006−88122(P2006−88122A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280386(P2004−280386)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】