説明

人骨組織を生産することが可能な、乳歯又は永久歯の及び歯胚の歯髄から得られた幹細胞

MBP−SHED(ヒトの脱落した乳歯からの幹細胞由来間葉骨生成細胞)と称される、ヒト歯髄乳歯から選別及び単離によって得られる、あるいは、MBP−DPSC(歯髄幹細胞由来間葉骨生成細胞)と称される、永久歯又は歯胚のヒト歯髄から単離によって得られる幹細胞個体群。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳歯又は永久歯の及び歯胚の歯髄から得られ、人骨組織を生産することが可能な幹細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科医業(例えば、麻酔学、顕微手術及び薬理学等)に関連した全ての鍛練の進歩のために、口顎顔の領域の美的、形態的及び機能的再生が、ここ数十年間に高水準に達している。
しかし、良好に修復するために、骨損失は、まだ制約のある段階である。骨損失は、部位(すなわち、歯周組織、あご、頭蓋顎顔面領域等に関連する)、特質、発生学的起源、機械的骨特性(海綿骨質の強度に関連がある; Trisi P. And Rao W. Bone classification: clinical-histomorphometric comparison. Clin. Oral Implants Res. 1999, 10: 1-7)及び量(それは、損失した骨の総量と定義することができる)に関連して分類することができる。
【0003】
失われた骨は、歯周領域、あご、頭蓋及び顔面の骨格ならびに体の異なる部位に影響を及ぼすかもしれない。いくつかは、以下に関係する原因である。
1−歯をあごに固定する解剖学的構造の欠損
歯は、歯肉、セメント、歯周靭帯及び歯槽骨からなる歯周組織によって歯槽骨に固定されている。歯周病は、遺伝子及び環境要因による多様な病気である。臨床症状は、歯槽骨吸収及び歯吸着の損失である。病気の程度は、含まれる縦骨損失及び関連する歯槽壁の数として評価される。歯根の最大長が、約20mmであれば、適所にまだある歯の最大縦骨損失は高くないかもしれない(Lindhe J., Parodontologia, Edi-Ermes, Milano, 1991)。歯周病は、流行性である。若干の地理的地域では、人口の10%以上は、5mm以上探ることができる歯周ポケットをもっている(Orozco A.H.ら、Periodontal treatment needs in a native island community in Columbia. Int. Dent. J. 2004, 54: 73-76)。これら全ての患者は、失われた歯槽骨を元に戻すために、特定の治療を必要とする。
【0004】
2−あご骨の欠損
これらの欠損には、例えば、部分的又は全体的な無歯顎(それは、歯槽骨吸収を引き起こす)、トラウマ及び腫瘍のようないくつかの原因がある。腫瘍のうち、口腔扁平上皮癌は、米国において、約30000の新しい症例を伴い、1年につき8000人が死亡する最も頻繁な口の悪性疾患である(Greenlee R.,ら、Cancer statistic. Cancer J. Clin. 2001, 51 : 15-36)。顔面のトラウマについて、ナショナルレポートはまだ入手されていないが、1つのセンターが1年につき1000人以上の患者に手術を施すことができると考えるならば、治療をうけている患者の数は非常に多い(Gassner R.ら、Cranio-maxillo-facial trauma: a 10 year review of 9,543 cases with 21,067 injures. J Craniomaxillofacial Surg. 2003, 31: 51-61)。
【0005】
3−頭蓋及び顔面領域における骨の欠損
骨損失を決定するいくつかの原因がある。それらは、トラウマ後後遺症、腫瘍除去のための頭蓋及び顔面の切除ならびに奇形である。自己組織の骨移植を必要とする先天性奇形の例は、唇及び口蓋(この症例では、自己組織の骨移植は、歯槽頂裂に挿入される)ならびにトリーチャーコリンズ症候群(この症例では、肋骨が下顎骨を修復するために用いられる)である。
【0006】
4−頭部領域外側の骨組織の欠損
骨損失を測定するいくつかの要因がある。トラウマ後後遺症、腫瘍除去のための骨切除及び奇形である。これらの全ての症例では、欠損を修復するための自己組織の骨の有用性は、整形外科が日常の処理において克服しなければならない制約段階がある。
上述したように、骨量欠損が、側面において、約2、3mmであれば、骨欠損は軽症(歯周病でのように)、骨損失がより大きいならば、重症として分類されるかもしれない。
【0007】
今日、骨欠損を修復するために、いくつかの生体適合物質及び種々の外科技術がある。それらの全てには、利点及び欠点がある。
軽症の骨欠損において、歯周病を予防し、修復するためにいくつかの医療及び外科的方法がある。しかし、歯周病が重篤な場合、我々は骨欠損を修復することが必要である。これは、無生物材料又は非相同/異種移植材料を用いて達成することができる。両方とも、骨誘導及び/又は骨伝導をもたらすことができる。同じ症例において、歯科医は、上皮及びアンダーライン骨の間で物理的な分離を決定する膜を使うことができる。
【0008】
重篤な骨欠損において、3つの治療的可能性がある。1)無生物材料(例えば、下顎骨又は腰人工器官を再構築するマッシュ)、2)自己組織の骨移植片(例えば、顎弓又は腓骨、前腕、腸骨から採取された遊離皮弁等)、3)伸延骨形成。
いずれにせよ、将来有望な基準は、自己組織の骨の使用である。非相同/異種移植骨の使用は非自己反応及び未知の病気の伝染を招くかもしれず、一方、無生物材料の使用は欠損を修復することができず、さらに、感染症及び異物生体反応を誘発しやすい。
【0009】
今日、自己組織による骨移植の広範囲な実施に対するいくつかの制約がある。1)時に移植片が機能しなかったことを考慮する場合、供与部位(すなわち腓骨、前腕、腸骨稜等)における移動(morbility)は全体的に必ずしも許容できない、2)外科的対策は、器具及び装備のトレーニングに関して相当の経費がかかる、3)供与部位からの移植片の収集は、手術時間を長期化する、4)供与部位から多量の骨を収集することは、それがそれの中で後遺症を引き起こすことがあるかもしれないので、可能でない。
【0010】
上記を考慮して、以下のことが結論づけられる。1)骨欠損は、歯、顎顔及び整形外科的な再構築においては制約のあるステップである、2)自己組織の骨は将来有望な基準である、3)同じ患者の異なる部位から自己組織の骨を収集することは、患者自身にさらなるリスクをもたらし、特別な装備トレーニングを必要とし、生物学的及び経済的コストをもたらす。
【0011】
これらの不都合な要因の潜在的解決は、特定のサイトタイプを用いることによって、インビトロで産生する自己組織の骨を使用することである。この観点から、幹細胞(それは、インビトロで骨を産生する骨芽細胞に分化することが可能である)の使用は、良好な方策となり得る。
【0012】
幹細胞は、1)自己再生(すなわち、細胞分裂の潜在数に対する制約がない)、2)異なる細胞系への関与及び分化によって特徴付けられる細胞である。文献では、骨髄に由来し、骨芽細胞に分化することができる幹細胞の確認が報告されている(Kuznetsov S.A.ら、Single-colony derived strains of human marrow fibroblasts from bone after transplantation in vivo. J. Bone Min. Res. 1997; 12, 1335-47; Pittenger M.Fら、Multilineage potential of adult human mesenchymal stem cells. Science 1999, 284, 143-147)が、インビトロにおける三次元構造での骨を産生するそれら細胞(骨髄ストロマ幹細胞:BMSSCと称する)の能力は記載されていない。最近、ヒトの歯髄に由来する幹細胞の単離及び特徴化が報告されている(Gronthos S.ら、PNAS 2000, 97, 13625-13630; Gronthos S.ら、JDR 2002, 81, 531-535; Batouli S.ら、JDR 2003, 82, 976- 981; US n. 20040058442 di Shiら)。特に、歯髄幹細胞(DPSC)系は、骨芽細胞の前駆体であり、1)特定の象牙質シャロタンパクの存在、2)インビトロにおける骨産生の欠如、3)細胞が免疫不全マウスに移植されたとき、インビボにおける象牙質様構造の産生によって特徴付けられている。
【0013】
ミウラMら(PNAS 2003; 100, 5807-5812)は、ヒトの剥離乳歯由来幹細胞(Stem Cells from Human Exfoliated Deciduous teeth:SHED)と称される乳歯性歯髄から得られた幹細胞のさらなる分類を述べている。SHED細胞は、インビトロで骨芽細胞に分化することができるが、それらはBMP−4のメディウムへの添加を必要とする。さらに、免疫不全マウスに移植されたとき、SHED細胞は、骨芽細胞に分化しない。SHED及びDPSC細胞の双方は、インビトロにおいて骨組織を産生することができない。
【0014】
そのうえ、SHED及びDPSC双方は、動物に移植して三次元組織を得るために、セラミックベクターを必要とする。
本発明の技術水準に関連するさらなる特許は、US n. 20020119180 (Yelicら)及びUS n. 20030068305 (Sramekら)である。US n. 20020119180は、動物モデルにおける歯胚を産生する方法を記載している。これらの歯胚は、失われた歯を修復するために、ヒトの歯肉に潜在的に挿入することができる。US n. 20030068305は、歯髄を収集するための方法及び特別なツールを記載している。
【発明の開示】
【0015】
本発明は、
1)ヒト歯髄に由来し、間葉及び造血起源でない2種の幹細胞系を分離する方法を示す。これらの細胞系は、永久歯又は歯胚の歯髄に由来するとき、歯髄幹細胞由来間葉骨産生細胞(Mesenchymal Bone Producing cells derived from Dental Pulp Stem Cells:MBP− DPSC)と称し、乳歯の歯髄に由来するとき、ヒト剥離乳歯幹細胞由来間葉骨産生細胞(Mesenchymal Bone Producing cells derived from Stem cell of Human Exfoliated Deciduous teeth:MBP−SHED)と称する。それらは、選別機及び幹抗原を選択する特定のマーカーを用いた細胞蛍光メータ(cytofluorimeter)によって得ることができる、
2)骨を産生することができる骨芽細胞における幹細胞系双方の培養、伸張及び分化。生活(vital)生物学的材料のこの新たな種類は、生存自己組織骨(Living Autologous Bone:LAB)と称される。それは、MBP−DPSC及びMBP−SHEDに由来する生活骨芽細胞を含む線維性非層状骨である。これらの細胞は、ヒトの乳歯及び永久歯ならびに歯胚の歯髄に属する。双方のMBPはメディウム中へのいかなる骨形成薬の添加なしでも、骨芽細胞に分化することができ、派生骨芽細胞は、インビトロ及びインビボにおいて骨を産生する、
3)歯、顎顔面及び整形外科診療におけるLABの臨床応用のための方法、
4)LABの広範囲な生成法を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、自己組織の骨移植のために用いることができる生物学的、生活材料及びヒトの乳歯及び永久歯のならびに歯胚の歯髄に由来し、骨芽細胞に分化することができ、インビトロで繊維性骨を産生する、幹細胞からそれを製造する方法に関する。この生活組織は、骨欠損修復のためのドナー患者における自己組織材料として移植することができる。
【0017】
特に、本発明は、
1)乳歯及び永久歯のならびに歯胚のヒト歯髄(それぞれMBP−SHED及びMBP−DPSCと称される)由来の幹細胞の単離、
2)それらの伸張(つまり、クローン数の増加)、
3)それらの骨芽細胞への分化、
4)生存自己組織の骨(LAB)と称されるこれらの骨芽細胞によって産生された繊維性骨組織のインビトロにおける産生、
5)高い細胞活力を保証する特定の条件下でのLABの保存、
6)骨欠損を修復するためのドナー患者におけるLABの移植の方法を示す。
【0018】
本発明は、骨髄幹細胞に由来する骨芽細胞を用いる先行技術(Kuznetsov SAら、Single colony derived strains of human marrow stromal fibroblasts from bone after transplantation in vivo. J. Bone Min. Res. 1997, 12, 1335-1347; Pittenger M.F.ら、Multilineage potential of adult human mesenchymal stem cells. Science, 1999, 284, 143-147)に関して、以下の利点を示す。
1)低減した侵入性、実際、抜髄を実行することによる抜歯を避けることが可能である、
2)サンプル収集が、前に用いられたスターン(stern)又は腸骨稜髄に対する歯で実行されるため、高い安全性、
3)サンプルが血液生成細胞を有さないため、多くのコロニーによって特徴付けれる一次培養、
4)いかなる骨形成薬又はスカホールドを添加することなく、LABの三次元組織化、これは、髄幹細胞に由来する骨芽細胞を用いて得られることができない。
【0019】
さらに、本発明は、ヒト歯髄から単離された、すでに知られたDPSC細胞(Gronthos S.ら、PNAS 2000, 97, 13625-13630; Gronthos S.ら、JDR 2002, 81, 531-535; Batouli S. ら、JDR 2003, 82, 976-981; US n. 20040058442 by Shiら)及びSHED細胞(Miura M et al., PNAS 2003, 100, 5807-5812)に関する従来技術に対するいくつかの他の利点を示す。MBP−DPSCは、本発明で示すが、造血組織ではなく、間葉組織由来である(先に報告したDPSCに対するケースとして)。さらに、MBP−DPSCは、インビトロにおいて骨を産生することができる骨芽細胞に分化し、一方、DPSCは分化しない、DPSCは、免疫不全マウスに移植された時のみ骨様構造を産生することができる。
【0020】
MBP−SHED細胞は、1)インビトロにおいて骨芽細胞に分化するために、メディウムへのBMP−4の添加を必要とし、2)インビトロにおいて骨様組織を産生することができず、3)免疫不全マウスに移植された場合、骨芽細胞に分化することができないが、象牙質様組織の形成を誘発するため、SHEDと異なる。
【0021】
本発明と従来技術とのさらなる違いは、乳歯及び永久歯のならびに歯胚のヒト歯髄からの幹細胞の分離のために使用される方法(つまり、FAC選別機使用)に関することである。
さらに、DPSC及びSHED細胞は、動物モデルに移植するためにセラミックベクターの使用を必要とするが、LABは単独で移植することができる。
同様に、本発明とUS n. 20020119180(Yelicらによる)及びUS Patent n. 20030068305(Sramekら)とに多くの違いがある。US n. 20020119180は、動物モデルで歯胚を産生するための方法を示す。これらの歯胚は、失われた歯を修復するために、ヒトの歯肉に潜在的に移植することができる。US n. 20030068305は、本発明において示されるものとは完全に異なる、歯髄を収集し、支持された幹細胞を単離するための方法及び特別のツールを示す。
【0022】
乳歯及び永久歯のならびに歯胚のヒト歯髄からMBP−SHED及びMBP−DPSCを得る方法の説明
幹細胞を、神経隆線から産生される間葉細胞由来のヒト歯髄から単離する。
ヒトの歯髄から幹細胞を単離するために、歯を健康に、歯髄と口腔との間になんらの伝達がないことが必要である。患者は、抜歯(又は抜髄)の一週間前に専門の口腔予防措置を受けていなければならず、1日に2回、0.12%クロルヘキシジン溶液の口内洗浄によって抗菌予防を始めなければならない。サンプリングの直前の歯についての準備について種々の方法がある。歯冠を、数分間0.2%クロルヘキシジンジェルで覆う。次いで、歯を、無菌の鉗子で徐々に取り出し、鉗子で歯を維持することによって、歯髄をグレーシィ(Gracey)キューレットを用いて取り出す。その直後、歯髄を、消化溶液(下記参照)中に載置する。
【0023】
永久歯が用いられる場合、2つの方法がある。第1の方法は、抜歯である。歯冠を、数分間0.2%クロルヘキシジンジェルで覆う。次いで、歯を、無菌の鉗子で徐々に取り出し、無菌布上に載置し、0.12%クロルヘキシジン溶液で洗浄し、灌注下、キゼル又はドリルで2分割する。歯髄を、グレーシィキューレットを用いて収集する。その直後、歯髄を、消化溶液(下記参照)中に載置する。
【0024】
第2の方法は抜髄であり、歯を所定の位置に残す。ドリルは歯髄にダメージを与えるかもしれないため、この方法では、歯髄腔を露出させるためにドリルを使うべきではない。歯髄をグレーシィキューレットを用いて収集する。次いで、歯髄を消化溶液(下記参照)中に載置する。
【0025】
歯胚からの歯髄の収集について、永久歯の抜歯の場合で示したのと同様の方法が挙げられる。
いずれにせよ、歯髄は、4mlのPBS(0.1M、pH7.4)中に100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、500μg/mlクラリトロマイシンを含有し、3mg/mlのタイプIコラゲナーゼ、4mg/mlジスパーゼを添加した消化溶液中に載置される。溶液量は、消化される歯髄の量に依存しており、乳歯では2から4ml、永久歯又は歯胚では2から5mlで変動する。組織解離を促進するために、歯髄を、穏やかな振れで、37℃にて1時間消化溶液中で維持する。消化した時点で、溶液を、20%FBS、100μMの2P−アスコルビン酸、2mMのL−グルタミン、100U/mlのペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン(インビトロゲン、ミラノ、イタリア)が添加された10倍量のα−MEM培地に浸漬する。次いで、細胞懸濁液を、遠心処理し(140gで10分間)、試験管の底を、12mlの同じ培地で再懸濁し、70μmファルコン濾過器(ベクトン&ディキンソン、サニーヴェール、CA、USA)で濾過する。濾過後、細胞を25cm2のフラスコ中にいれる。フラスコを5%の二酸化炭素中、37℃でインキュベートし、メディウムを週に2回交換する。
【0026】
顕微鏡観察により、培養1日目までに、2つのサイトタイプを観察することができることが示される。a)小さくて丸い細胞(10〜30の細胞(小コロニー)の凝集体を形成する)、b)クモ形、細長く、粘着性の細胞(30〜80の細胞(より大きなコロニー)の凝集体を形成する)。培養5日目まで、細胞は顕著な増殖を示さず、存在する壊死材料が、培地の交換で失われる。培養の10〜15日間後に、最高40のコロニーが各歯髄において観察されたとき、以下の操作を行う。メディウムをフラスコ内に除去し;細胞を、無菌の0.1MのPBSで2回洗浄し;細胞を、37℃で1分間、0.3mlの0.1Mトリプシンでフラスコから分離し;細胞を、培地(先に述べた)3ml中に懸濁し;この懸濁液の1.5mlを第2のフラスコに移し;両方のフラスコ中に、最終的に6ml量となるまで培地を添加する。この最終工程は、細胞増殖を促進するために重要である。
【0027】
20〜21日目、細胞の総数がFAC選別を実行するのに十分な場合、細胞をペレット化し(140gで10分間)、4℃にて0.1MのPBS中の0.1%BSAで洗浄し、PBS中に1μl抗体母液及び0.1%BSAの9μlを含有する溶液中で、抗体攻撃のために4℃にて10分間インキュベートする。抗体母液は、0.1MのPBSの1ml中の200μgの抗体からなる。インキュベートの後、細胞をPBS中の0.1%BSAで洗浄し、反応しないか、特異的に反応しない抗体を除去し、以下のc−キット、CD34、STRO−1、CD45(サンタクルス)に対するモノクローナル抗体(標識されたFITC、PE及びシクローム(Cychrome)に対する陽性(positivity)を分析する。細胞は、c−キットに対して11%の陽性、CD34に対して8%の陽性、STRO−1に対して30%の陽性を示した。特に、c−キットに対して陽性であった細胞は、また、CD34及びSTRO−1に対しても陽性であり、一方、それらは、常にCD45に対して陰性であった。従って、これらの細胞は、非造血起源であることを強調することができる。我々は、骨形成分化を得るために、これらのc−キット、CD34及びSTRO−1陽性細胞のみを収集している。c−キットは、選択的に幹細胞要因(SCF)を認識する膜チロシン−キナーゼである。これは、乳歯及び歯胚から得られる幹細胞がむしろ多数で連続的に得られ、一方、永久歯から得られるそれらは十分であるが、連続的ではないことが唯一の違いで、乳歯及び永久歯のならびに歯胚の歯髄から幹細胞を単離することにより行われる。これらの細胞(MBP−SHED及びMBP−DPSCと称する)は、乳歯(SHED)及び永久歯(DPSC)の萌出歯又は歯胚の双方の幹細胞部分母集団である。MBP−SHED及びMBP−DPSCは、特別な培養条件下、骨形成の前駆体、次いで、骨芽細胞において、以下のように分化する。
【0028】
幹細胞 (c−キット、CD34及びSTRO−1陽性細胞として同定)→原種/前駆体細胞(RUNX−2陽性によって同定)→最終分化細胞(オステオカルシン(osteocalcin)及びCD44陽性によって同定)。
【0029】
この分化について、以下に説明する。
c−キット、CD34及びSTRO−1陽性幹細胞を、培地に塗布する。それらは、各々のフラスコで増殖する。単離からの30日目までに、細胞は、40日目までにフラスコ内で線維性骨(LAB)を産生する細胞外有機マトリックスを産生し始め、そこでは、その形成の原因である同じ細胞が観察される。
【0030】
LAB形成は、これらの工程によって特徴づけられる。1)最初に、細胞群は丸い中心領域を形成し、そこでそれらは無機結晶、コラーゲン繊維及び糖タンパクを分泌し、2)次いで、この構造は、新しいマトリックス付加成長のために3D組織を得、3)40日目までに、マトリックスは3D鉱化組織になり、それは繊維性骨(非薄板状骨)である、4)50日目までに、フラスコ内で、骨組織の小さな立方体を観察することができ、それらの外径寸法は、メディウム高さに依存している。また、この方法は、1cmの厚み及び1cm3の容積を有する繊維性骨の小立方体を得ることを可能にし、それは、外科的移植に適しており、生きた骨芽細胞に富んでいるため、合成活性において骨堆積が可能である。
【0031】
細胞が融合したとき、それらはさらに増殖しないが、もし、それらのいくつかが取り出され、他のフラスコに入れられた場合、それらは増殖を再開し、LABを産生する。従って、開発されたシステムは、制限されることなく、LABを産生することができるバイオリアクターを実現することができる。次いで、細胞分化の後、それらの単離から35日目までに、モノクローナル抗体:HLA−1、CD14、CD44、CD45、CD54、SSEA−1、RUNX−2、CD34、OSTEOCALCINA(OC)及びflklを用いることにより、細胞の特徴づけが行われる。本発明で得られた細胞は、HLA−1及びCD44に対して100%陽性、RUNX−2に対して70%陽性、OC、CD54及びflklに対して30%陽性であり、一方、用いられた他の抗体に対して完全に陰性であることを示す。RUNX−2は転写因子であり、それは前骨芽細胞サイトタイプを同定し、一方、OCは骨芽細胞を同定する。幹細胞は、分化プロセスの間にflk−1(VEGFレセプター又は血管内皮成長因子)を発現し、血管形成の原因となり、それはLABの中心部の範囲内で起こるかもしれない。実際、再生組織形成されたLAB内にある細胞は退化せず、無期限に繊維性骨を生産し、それを自己組織の移植のために使うことができる。LABは、長期にわたり、+4℃での保存の後、その特性及び生活を維持する。さらに、LABは、細胞及び組織の従来の低温保存法を用いて、低温保存することができ、長期にわたって0℃未満の温度で保存することができ、骨生成のその能力を維持する。
【0032】
要約すると、LABを得る方法は以下のとおりである。1)乳歯及び永久歯又は歯胚からの歯髄の無菌抽出、消化及び培養、2)初代培養物のトリプシン処理及び増幅、3)FAC選別及び培養の再開、4)組織形成を伴う細胞分化及び新しい培地を用いていくつかのフラスコでその播種によって組織形成を増加させるためのそれらの使用。
【0033】
以下の表に、(患者の処置によって)連続的にLAB産生を得ることができる全プロセスのタイミングを示す。
【0034】
【表1】

【0035】
LAB特徴づけ
インビトロで得られた鉱化生存自己繊維性骨(LAB)は、鉱化作用の間、ヒトの骨のそれらと同様の特徴を示し、実際、イメージは直接又は膜の骨化作用において、ヒトの骨のそれらに、全く非常に組み込む(imposable)ことができる。
【0036】
LAB産生の特徴
1)特徴的及び特異的な幹細胞発現は、ヒトの乳歯及び永久歯又は歯胚の歯髄から、クレームされた方法によって得られる。永久歯の場合、幹細胞は、若年でない個人から得ている。2)幹細胞は、適切な処置によって、骨形成性サイトタイプに分化し、鉱化マトリックス、その後、自己鉱化生存骨を産生し始め、骨形成の間、ヒトの骨と同じ特徴を示す、3)組織学的、組織化学的(アリザリンレッドS、ALP、シュモール、H&E)、免疫蛍光的検査法(カルセイン及びオステオネクチン、オステオポンチン、フィブロネクチン、コラーゲンタイプIII及び骨アルカリホスファターゼに攻撃する抗体に陽性)及びX線回折観察は、鉱化作用の間、LABとヒトの骨とは類似であることを明確に示す。4)LABに存在する細胞は成長し、細胞学的修飾なしで骨を産生する、5)インビトロで得られた生活骨(LAB)は他のフラスコに容易に移すことができ、それは培地で成長し続ける、6)トリプシン処理の後、得られた骨細胞を、第二の培養フラスコで産生させることができる、7)24〜36時間、+4℃に維持した場合、その中のLAB及び細胞は、生きたままである、8)その中のLAB及び細胞を、細胞材料の従来技術の低温保存法を用いて、長期間、80℃未満の温度で、低温保存することができる。
【0037】
結論として、本発明は、以下に対して、従来技術、特にミウラ及びGronthosのそれと異なる。1)永久及び乳歯歯双方からの歯髄の抽出の技術が異なる、2)幹細胞を分離するための歯胚の歯髄の使用、3)FAC選別機に基づく細胞タイプの選択、4)分離した幹集団はc−キット、CD34及びSTRO−1陽性であるが、CD45に常に、絶えず陰性であり、これは、細胞が造血細胞でないことを示し、Gronthos及びミウラによって報告されたものと異なる。5)陽性の割合及び入手可能な細胞の数は、先行技術に対してより高い関心である、6)単離された細胞は、インビトロにおいて生存自己鉱化骨(LAB)を生成する一方、ミウラ及びGronthosの仕事では、この能力を示さず、単離された細胞は、免疫抑制されたラットに注入した場合、象牙質様材料の繊維性産生を刺激するという事実のみである、7)Gronthos及びミウラから単離された細胞は「異質な」集団であり、一方、本発明で示された方法では、同質の細胞集団の選択が同時に起こる、8)Gronthosによって報告されたのに反して、その方法は、32歳より高齢の個人の永久歯の場合でも、十分な数で幹細胞の単離が同時に起こる、9)その表面及び入手可能な培地のためのそれらとまではいかないが、LABは制限なく成長する、10)本発明で示される細胞は、非常に安定して骨を産生し、それは、Gronthos及びミウラで示されたように、単に結晶だけでなく、鉱化作用の間にヒトにおいて認められたものにすばらしく組み込むことができる(imposable)、11)本発明の細胞は骨芽細胞であり、Gronthos及びミウラによって報告されたように、象牙芽細胞様細胞でない。
【0038】
MBP−SHED及びMBP−DPSCの透過電子顕微鏡検査によって、細胞からの及び細胞への、明白な小胞状のトラフィックを示し、多数の非常に構造的な特性が、核構造のレベルで観察されている。実際、多核化(plurinucleated)された細胞が存在し、場合によっては、核は核小体より上回って不規則になる。全ての核の共通の特徴は、フィラメントの又はおそらく葉核への伸張の存在である。これらの特徴は、未分化幹細胞に特有である。得られた分化骨芽細胞及び繊維性骨のTEM分析は、細胞が、ヒトの骨芽細胞に特有な、特に大量のRER、核小体を有する核、活性なタンパク質合成の徴候の全てに特有な、小胞に富む細胞質を有することを示している。細胞外マトリクスは、繊維及びプロテオグリカンのならびにエソイトチックな(esoytotic)小胞に富んでいるようである。これらの特徴は、分化細胞分泌マトリクスに特有であり、形成におけるヒト骨で観察された特徴と類似する。
【0039】
再生繊維性骨の形状を3Dにより良好にアドレス指定するために、細胞を、再吸収性ポリ乳酸−共グリコール酸(85:15p/p)ポリマー上で成長させる。このポリマーマトリクスは、その処置の容易さ及び吸収時間に対して試験されており、それは、繊維性骨の形態アドレスを可能にするが、同時に、成長を阻害しない。このポリマーは、CAD/CAMテクニックで設計されると、表面に、100〜140μmの直径の孔(そこを、細胞が貫通する)及び直径約15μmの孔を有し、それは、MBP−SHED又はMBP−DPSCが、細胞とポリマーとの間の完全な接着によって、完全に結合する。
【0040】
これらの細胞が、表面がエッチングされたチタン上に成長する場合、MBP−SHED又はMBP−DPSCの挙動は類似している。
細胞−ポリマー又は細胞−チタンの相互作用の効果は、組織学的、組織化学的(アリザリンレッドS、ALP、シュモール、H&E)、免疫蛍光的検査法(カルセインに、オステオネクチン、オステオポンチン、フィブロネクチン、コラーゲンタイプIII及びアルカリホスファターゼ骨に攻撃する抗体に陽性)、X線回折及び顕微鏡検査法(共焦、TEM及びSEM)研究で証明されている。
【0041】
本発明の独特の記載を以下の実施例に示す。
実施例1
乳歯からのLABの産生
a)外科段階
1)患者の選定−全ての被験者は、全身及び口腔疾患に対して健康であった。LAB生産を、2、6及び8歳の男性3人の患者の乳歯から得た。
2)研究への患者の準備−3人の患者(抜歯の1週間前)に、0.12%クロロヘキシジンで、専門衛生及び処置を施した。抜歯時の歯の処置に関して、抜歯前の数分間、臨床歯冠を0.2%クロルヘキシジンジェルで覆った。
【0042】
3)歯髄抽出手順−乳歯の抜歯のために、抜歯用無菌クランプを用いてデリケートな引き抜きを行った。クランプのブランチ間に歯を維持し、口外で(ex-oris)、抜歯する前に、0.12%のクロルヘキシジン溶液で歯を洗浄した。次いで、歯髄を露出させ、歯髄をグラシーキューレットを用いて抽出した。続いて、歯髄を、3mg/mlタイプIコラゲナーゼ、4mg/mlジスパーゼ、100U/mlペニシリン、100mg/mlストレプトマイシン、500mg/mlクラリトロマイシン(claritromycin)を含有する5mlのPBS消化溶液が入った試験管に入れた。歯髄を、その溶液に浸漬し、緩やかな攪拌下、37℃で1時間維持し、歯髄の分離を促進した。最後に、消化された混合物を、培地(α-MEMタイプ、20%のウシ胎児血清、100mMのアスコルビン酸2P、2mMのL−グルタミン、100U/Lのペニシリン、100mg/mlのストレプトマイシンが添加されている)で10倍希釈し、140gで10分間遠心分離した。遠心分離後、試験管の底から、懸濁液12mlを取り出し、70μファルコン・ストレーナーを用いて濾過した。
【0043】
b)実験段階
1)初代培養の準備−濾過した溶液をフラスコに入れ、インキュベータ(37℃、5%二酸化炭素)に載置し、週に2回培地を交換した。
2)培養物の伸張−細胞をフラスコ内で増殖させ、少なくとも15日間培地中でそれらを放置した。
3)種々のクローンの特徴づけ−細胞数が十分である(約500000の細胞)と考えられたとき、細胞を、CD34、STRO−1及びc−キットを含む幹細胞のマーカーを用いて、FAC選別機によって選別した。
【0044】
4)MBP−SHEDと称されている特定株の分離−培地から、CD34、STRO−1及びc−キットに対して陽性の細胞を選別し、以降の伸張及び分化のために用いた。
5)インビトロでの特定のMBP−SHEDクローンの伸張−細胞を、培地(aの3)で先に述べた)中で成長させた。
6)LABの産生−数度の継代の後、骨芽細胞(LAB)からクローン化された生存自己繊維性骨を得た。骨芽細胞への幹細胞の完全な分化のために、この段階を、約40日継続した。
【0045】
7)LABの伸張−100000のMBP−SHEDから開始するLAB産生は、それぞれ6mlのメディウムを含む25mlフラスコ中で10から15継代を必要とする。そのような継代は、約8週間かかり、約2cm3容積の骨を得た。
8)組織学的研究のためのLABの使用。
【0046】
実施例2
永久歯からのLABの産生
a)外科段階
1)患者の選定−患者の選定を臨床パラメータ及び病理学的症状を考慮して行った。全被験者は、全身及び口腔疾患に対して健康であった。LAB生産を、30、32、34、35及び37歳の男性5人の患者の永久歯から得た。この段階で、歯のドナー部位を確認した。全ての第3臼歯、上2本、下3本。
【0047】
2)患者の準備−抜歯の1週間前、患者に対して、抜歯を行う週の全ての日に、1日に2回、0.12%クロロヘキシジン溶液で、専門衛生及び処置を施した。
3)歯髄抽出手順−局所麻酔の後、抜歯を、レーバー及び/又はクランプを用いて行った。下歯のために、この方法を、粘膜骨膜クラップの実行による外科的アクセスによって行った。クランプのブランチ間に摘出成分を維持し、口外で、歯成分を無菌外科布の上に載置し、0.12%のクロルヘキシジン溶液で洗浄した。従って、歯冠及び解剖歯根との間の分離によって、無菌水を灌注しながら、外科用マイクロモータに搭載された無菌カッターを用いて、歯髄腔を露出させた。歯髄を、グラシーキュベット及び/又は歯内ツール(やすりのような)を用いて収集し、5mlの1M消化溶液(4mlのPBS中、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、500μg/mlクラリトロマイシン(claritromycin)、3mg/mlタイプIコラゲナーゼ、4mg/mlジスパーゼを含有する)に、37℃で1時間、浸漬した。歯髄を、歯髄の分離を促進するために、消化の間、緩やかな攪拌下に維持した。消化の最後に、50mlの容積に、培地(α-MEMタイプ、20%のFCS、100μMの2Pアスコルビン酸、2mMのL−グルタミン、100U/Lのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンが添加されている)を添加し、サンプルを140gで10分間遠心分離した。試験管の底から、溶液12mlを取り出し、70μファルコン・ストレーナーを用いて濾過した。
【0048】
b)実験段階
1)初代培養の準備−濾過溶液をフラスコに入れ、37℃、5%二酸化炭素でインキュベートした。
2)細胞培養物の増殖−培地を、少なくとも15日間、1週間に2回交換した。
3)細胞の特徴づけ−細胞数が十分である(約500000の細胞)と考えられたとき、細胞を、CD34、STRO−1及びc−キットを含む幹細胞のマーカーを用いて、FAC選別機によって選別した。
【0049】
4)MBP−DPSCの単離−FAC選別陽性細胞を集めた後、培養した。
5)インビトロでのMBP−DPSCの増殖−細胞を先の培地で培養した。
6)LABの産生−数度の継代を、幹細胞から分化骨芽細胞LAB産生を行った。この実験段階を、約40日継続した。
【0050】
7)LAB発現−分化した骨芽細胞の10から15の継代の後、十分な細胞を得るために、LABを、6mlの培地で各々25mlフラスコ中にて100000の細胞のプレート・サンプルを得た。この段階は、各フラスコで骨片を得えるまで、約8週間行った。骨片は、約1cm3容積である。
8)組織学的分析のため、フラスコからLABの収集。
【0051】
実施例3
歯胚からのLABの産生
a)外科段階
1)患者の選定−患者の選定を臨床パラメータ及び病理学的症状を考慮して行った。全被験者は、全身及び口腔疾患に対して健康であった。LAB生産を、15、16、17、17、18、20、20及び22歳の男女8人の患者の歯胚から得た。この段階で、歯のドナー部位(全ての歯胚はまだ萌出していない)を確認した。全ての第3臼歯、上3本、下5本。
2)患者の準備−抜歯の1週間前、患者に対して、抜歯を行う週の全ての日に、1日に2回、0.12%クロロヘキシジンで、専門衛生及び洗浄を施した。
【0052】
3)抜髄手順−局所麻酔の後、抜歯を、レーバー及び/又はクランプを用いて行った。下歯のために、この方法を、粘膜骨膜クラップの実行による外科的アクセスによって行った。クランプのブランチ間に摘出成分を維持し、口外で、歯成分を無菌外科布の上に載置し、0.12%のクロルヘキシジン溶液で洗浄した。従って、歯冠及び解剖歯根との間の分離によって、無菌水を灌注しながら、外科用マイクロモータに搭載された無菌カッターを用いて、歯髄腔を露出させた。歯髄を、グラシーキュベット及び/又は歯内ツール(やすりのような)を用いて収集し、5mlの消化溶液(4mlの1MPBS中に含有する:3mg/mlタイプIコラゲナーゼ、4mg/mlジスパーゼを添加した、100U/ml、100μg/mlストレプトマイシン、500μg/mlクラリトロマイシン(claritromycin)を含有する4mlの1MのPBS)に、37℃で1時間浸漬した。消化の間、歯髄を、緩やかな攪拌下に維持し、組織の分離を促進した。消化の最後に、培地(α-MEMタイプ、20%のFSC、100μMのアスコルビン酸2P、2mMのL−グルタミン、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンが添加されている)を、50ml容量に加え、140gで10分間遠心分離した。次いで、12mlの溶液を試験管の底から取り出し、70μストレーナーで濾過した。
【0053】
b)実験段階
1)初代培養の準備−濾過溶液をフラスコに入れ、37℃、5%二酸化炭素でインキュベートした。
2)細胞培養物の増殖−培地を、少なくとも15日間、1週間に2回交換した。
3)細胞の特徴づけ−細胞数が十分である(約500000の細胞)と考えられたとき、細胞を、CD34、STRO−I及びc−キットを含む幹細胞のマーカーを用いて、FAC選別機によって選別した。
【0054】
4)MBP−DPSCの単離−FAC選別陽性細胞を集めた後、培養した。
5)インビトロでのMBP−DPSCの増殖−細胞を先の培地で培養した。
6)LABの産生−数度の継代を、幹細胞から分化した骨芽細胞LAB産生に行った。この実験段階は、約40日間必要とする。
【0055】
7)LAB発現−分化骨芽細胞の10から15継代の後、十分な細胞を得、LABを、6mlの培地にて各々25mlフラスコ中で100000の細胞のプレート・サンプルを得た。この段階は、各フラスコで骨片を得えるまで、約8週間かかった。骨片は、約1cm3容積である。
8)組織学的分析のため、フラスコからLABの収集。
【0056】
実施例4
LAB特徴づけ
実施例1〜3から得られたLABサンプルを以下の分析に付した。
1)LAB数評価−生存自己組織骨形成を評価した。フラスコごとに石灰化された小塊の数を数え、若い及び老いた被験者の間で比較した。データを、平均±SDとして得た。
2)組織学的、組織化学的、免疫蛍光額的検査法−分化細胞及び石灰化マトリクスを、50/50の1Mトリプシン及び0.5%EDTAの溶液を用いてフラスコから取り出し、ついで、0.1MPBS中の4%ホルムアルデヒド中で、pH7.4、4℃にて48時間固定し、4℃で、pH7.4の0.1MのPBS中で洗浄し、次いで、脱水し、パラフィンに埋没し、薄片を作った(厚さ5μm)。スライドを、ヘマトキシリン−エオシン、アリザリンレッド及びシュモール硝酸銀で染色した。
【0057】
組織化学及び免疫蛍光検査法のために、細胞を、0.1MのPBSで洗浄し、4℃にて30分間、0.2%トリトンX100を含有した0.1MのPBS中の4%ホルムアルデヒドで固定し、次いで、それぞれ、室温にて10分間、0.1MのPBS中の0.1%BSAで2回洗浄した。細胞を、アルカリホスホターゼ(ALP)標準溶液を用いてカバーし、8時間暗所でインキュベートした。ALP活性を、100000細胞サンプルを用いて行い、PBS/0.02%EDTAによって剥離し、140gで10分間遠心処理した。ペレットを、暗所で、8時間、1mlのBMパープル溶液(ロシュ、セグレート、ミラノ、イタリア)でインキュベートした。上澄みを、615nmにて、分光光度計で読んだ。対照として、c−キット-/CD34-細胞を用いた。値を、サンプル及びBMパープル保存液との間の比として表した。BMパープル溶液をブランクとして用いた。
【0058】
免疫蛍光検査法のために、細胞を10分間、室温で2回、0.1MのPBSで洗浄し、4℃にて、pH7.4で、48時間、0.1MのPBS中の4%ホルムアルデヒドで固定し、4℃でpH7.4の0.1MのPBS中で洗浄し、次いで、抗体とともに、4℃で一晩インキュベートした。LABサンプルを、TBS(組織冷凍メディウム、トライアングル・バイオメディカル・サイエンス、ダラム、N.C.、米国)中に埋設し、低温切開し(低温保持装置1720デジタルMGWラウダ、レイカ、ドイツ)、4℃にて30分間、100%エタノール中で固定し、0.1MのPBSで洗浄し、次いで、PBS/6%ミルク中で60分間放置し、4℃にて一晩抗体とともにインキュベートした。
【0059】
細胞又はLABに対する抗体は以下のとおりであった。オステオネクチン、フィブロネクチン(ノボ・カストラ、ニューカースル、英国)、BSP(骨シャロタンパク)(バイオデザイン・インターナショナル、米国)、BAP(骨アルカリホスファターゼ)(USバイオロジカル、米国)、全マウス抗ヒト; オステオカルシン及びコラーゲンIII(サンタクルス、CA、米国)は、ヤギ抗ヒトであった。二次抗体は、ヤギ抗マウス(FITC)及びマウス抗ヤギ(PE結合)(サンタクルス、CA、米国)であった。細胞及びLABを蛍光顕微鏡(蛍光顕微鏡Axiovert 100、ツァイス、ドイツ)で観察した。
【0060】
3)逆転写酵素ポリメラーゼ鎖反応分析−総RNAを、供給者の指示に従って、約1000000細胞から、異なる時間(非分化細胞に対して22日、分化細胞に対して40及び60日)に、TRI試薬(シグマ、ミラノ、イタリア)中でのホモジナイズによって抽出し、分析まで−70℃で保存した。cDNA合成を、スーパースクリプトII逆転写酵素(インビトロゲン・セルビオ、イタリア、サン・ジュリアーノ・ミラノ、ミラノ、イタリア)を用い、42℃にて50分間、20μl中のオリゴ (dT)12-18及びモロニー・マウス白血病ウィルス逆転写酵素(10U/μl)を用いて、総RNAから行った。
【0061】
PCR分析を、TC−312熱サイクラー(テクネ、バーリントン、NJ、米国)を用いて三つ組で行い、サンプルを94℃への2分間変性工程に付し、続いて、94℃、30秒間及び54℃、45秒間、72℃、1分間及び72℃での最終伸張工程の35サイクルを行った。PCR混合物は、各dNTP0.2mM、1.5mMのMgCl2、各プライマー0.2μMを含んでいた。
【0062】
プライマー配列は:正RUNX-2 5’−CAC TCA CTA CCA CAC CTA CC−3’;逆RUNX−2 5’− TTC CAT CAG CGT CAA CAC C−3’;正β−アクチン 5’−TGT GAT GGT GGG AAT GGG TCA G−3’;逆β−アクチン 5’−TTT GAT GTC ACG CAC GAT TTC C−3’であった。増幅生成物を、トリス酢酸EDTA(TAE)バッファ中の2%アガロースゲルで分離した。PCRをRT−陰性サンプルで行い、DNA汚染物質を除去した。
【0063】
免疫蛍光検査法によれば、LABは、フィブロネクチン、コラーゲンI及びIIIのような繊維骨組織、BSP(骨シャロタンパク)及びBAP、オステオネクチン及びオステオカルシンのためのマーカーに概して陽性であり、特に、LABの新しく形成された小柱を囲んでいる単分子層を形成する骨芽細胞は、オステオカルシンに対して、強い陽性を示し、さらに、これらの細胞が骨化プロセスに関係する骨芽細胞であったことを示した。結果は、選別及び培養された細胞が、たとえ50日まで幹細胞マーカーに対してより陽性でないとしても、CD44に対して(100%)陽性、RUNX−2に対して(68.65%±2.0)及びオステオカルシンに対して(28.45%±1.7)陽性であったことを示す。RUNX−2に対するRT−PCR分析は、この転写因子のmRNA転写が、22日目には選別されず、まだ分化していない細胞であっても、40及び60日目に分化細胞中に存在したことを証明した。
【0064】
実施例5
スカホールドポリマーへのLABの形成及び発達
実施例1〜3の細胞サンプルを、85:15のp/p乳酸−共グリコール酸ポリマーの予備形成フラグメントが導入された円筒形の容器の内部に入れた(臨床診療において選択された形は、対象ドナーを修正するために骨格の骨欠損をたどるであろう)。予備形成されたスカホールドの三次元細胞コロニー化を、6回転/分の速度で回転するインキュベータ(ローラー・アパラタス・ウィートン)を用いて得る。約7日後に、細胞は全スカホールドにコロニー化し、同じポリマーの形状の3DLABを生じ、ポリマーマトリクスの一部で消化する。この時点で、スカホールドと細胞とのコンプレックスをインビボに移植することができ、それは骨格体の解剖学的−機能的連続性を回復させるであろう。インビボで、ポリマーマトリックス生物分解性のプロセスが継続し、徐々にコロニー化する細胞から分泌される新たに形成された骨マトリクスから置き換えられる。ポリマーマトリクスが消失し、システムの中央において、徐々にリモデル化に向かい、古い骨格の骨近傍から区別がつかなくなる生活骨を観察することができる。新たな骨の形成を、共焦顕微鏡検査(PBSで洗浄されたサンプルを、4℃にて30分間、0.2%のトリトンX100を含有する4%のホルムアルデヒド/PBS溶液で固定する)によって、実施例4に従って評価する。サンプルを10分間、室温にて、PBS中の0.1%のBSAで2回洗浄する。細胞サンプルを、ファロイジン(phaloidin)−FITC及び核彩色のためにブルーヘキストで分析し、次いで、+4℃で1時間インキュベートした。
【0065】
実施例6
チタンインプラント上の繊維性LABの形成及び発達
実施例5で示したのと同様に、LABは、チタン歯科用インプラント又は大腿部の人工装具のような非再吸収性の表面をコロニー化させることができる。実施例5と同様のプロトコールを用いて、人工装具材料表面を、7日以内に細胞によって被覆する。生体材料とヒト繊維性骨との間の骨同化がインビトロで起こり、治癒期、合併症及び失敗の危険を制限する。骨形成プロセスの効果は、実施例5でのように評価する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MBP−SHED(ヒトの脱落した乳歯からの幹細胞由来間葉骨生成細胞)と称される、ヒト歯髄乳歯から選別及び単離によって得られる幹細胞個体群。
【請求項2】
MBP−DPSC(歯髄幹細胞由来間葉骨生成細胞)と称される、永久歯又は歯胚のヒト歯髄から単離によって得られる幹細胞個体群。
【請求項3】
c−キット、STRO−1及びCD34を発現する請求項1又は2の幹細胞個体群。
【請求項4】
特定の因子なく、RUNX2を発現する骨形成前駆体、続いて、HLA1、CD44、RUNX2、CD54及びオステオカルシンを発現する骨芽細胞を誘発する骨形成前駆体に分化する請求項1〜3のいずれかに記載の幹細胞個体群。
【請求項5】
インビトロ及びインビボで繊維性骨マトリクスを生成することができる請求項4の骨芽細胞。
【請求項6】
LAB(生存自己組織の骨)と称される、繊維性骨を生成する生存骨芽細胞を含有する繊維性骨マトリクス。
【請求項7】
無限に成長することができる請求項6の繊維性骨マトリクス。
【請求項8】
骨欠損の修復のための自己組織移植の場合においてインビボで成長することができる請求項6又は7の繊維性骨マトリクス。
【請求項9】
人工装具の表面にインビトロで成長させることができ、インプラントの骨同化を促進する3D骨マトリクスを生成する請求項6の繊維性骨マトリクス。
【請求項10】
乳歯歯髄からMBP−SHED幹細胞を単離する方法であって、抜き出す第1工程、単離の第2工程を特徴とする請求項1に記載のMBP−SHED幹細胞を単離する方法。
【請求項11】
抜き出す工程が、
最終的に口腔の微生物叢を減少させる消毒前処置、
摘出前に歯を被覆するための消毒ゲルの使用、
無菌表面への歯成分の堆積及び無菌の溶液での消毒、
歯髄腔の開口及び無菌状態での歯髄の抜き出しを特徴とする請求項10のMBP−SHED幹細胞を単離する方法。
【請求項12】
単離工程が、
歯髄の酵素消化、
遠心分離及び/又は濾過による細胞フラクションの回収、
第1次培養物の入手、
それらの伸張、
CD34、STRO−1及びc−キットのような幹細胞マーカーの使用によるMBP−SHEDのFAC選別、
適切な培地中でのMBP−SHEDの伸張を特徴とする請求項10のMBP−SHED幹細胞を単離する方法。
【請求項13】
歯髄の酵素消化を、振動下、37℃にて1時間、PBS中の3mg/mlタイプIコラゲナーゼ、4 mg/mlジスパーゼ、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、500μg/mlクラリトロマイシンを用いて行う請求項12の方法。
【請求項14】
細胞伸張を、幹細胞増殖用の特定の培地を用いて得る請求項12の方法。
【請求項15】
細胞伸張のための培地が、20%のウシ胎児血清、100μMのアスコルビン酸2P、2mMのL−グルタミン、100U/Lのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンが添加されたα−MEM培地からなり、インキュベーションを、37℃、5%二酸化炭素で25cm2フラスコ中にて行い、1週間に2回培地を交換する請求項14の方法。
【請求項16】
永久歯の歯髄又は歯胚からのMBP−DPSC幹細胞を単離する方法であって、抜き出す第1工程、MBP−DPSCの単離の第2工程を特徴とする請求項2に記載のMBP−DPSC幹細胞を単離する方法。
【請求項17】
抜き出す工程を、請求項11と同様に行う、請求項16のMBP−DPSC幹細胞を単離する方法。
【請求項18】
単離の工程を、請求項12から15と同様に行う、請求項16のMBP−DPSC幹細胞を単離する方法。
【請求項19】
MBP−SHED及びMBP−DPSCからLABを産生する方法であって、幹細胞骨形成性分化及びLAB産生を特徴とする請求項10〜18の方法。
【請求項20】
繊維性骨マトリクスの製造方法であって、請求項1及び2の幹細胞を骨芽細胞系に分化し、請求項15の培地を含有するフラスコ中で、5〜10日間、細胞が融合するまで細胞増殖させることを特徴とする請求項19の方法。
【請求項21】
1)無機材料の半球体の中央領域結晶において、コラーゲン繊維及び糖タンパクを生成するクラスター形成、
2)繊維性骨マトリクスの形成を伴う、請求項6の生存骨芽細胞を含有する、新たな鉱化骨マトリクス付着のためのこの構造の3次元組織化を特徴とする請求項20の繊維性骨マトリクスの製造方法。
【請求項22】
この材料は、細胞分化及び新たな繊維性骨の引き抜きを伴って、連続的に生成され、繊維性骨の製造プロセスは、栄養分及び空間が利用できる場合には連続的である請求項21の繊維性骨の製造方法。
【請求項23】
繊維性骨マトリクスは、直接外科用インプラントに使用することができる1cmの厚みより厚く、1cm3の容積よりも大きなフラグメントによって構成される請求項19から22の繊維性骨マトリクスの製造方法。
【請求項24】
骨芽細胞は、繊維性骨マトリクスをコロニー化し、インビボで骨集積化の製造を促進する3D構造を組織化する請求項19から23の繊維性骨マトリクスの製造方法。
【請求項25】
細胞材料を保存するための従来技術を用いて、生物材料を4℃又は0℃未満の温度で保存する請求項18から24の繊維性骨マトリクスの製造方法。
【請求項26】
歯、顎顔面及び整形外科の問題に関連する骨欠損の修復に使用することができる自己組織の生物学的材料製造するための請求項1及び2の幹細胞の使用。
【請求項27】
歯、顎顔面及び整形外科の問題に関連する骨欠損の修復に使用することができる自己組織の生物学的材料製造するための請求項5の骨芽細胞の使用。
【請求項28】
歯、顎顔面及び整形外科の問題に関連する骨欠損の修復に使用することができる自己組織の生物学的材料製造するための請求項7から9の繊維性骨マトリクスの使用。

【公表番号】特表2008−507962(P2008−507962A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523008(P2007−523008)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008136
【国際公開番号】WO2006/010600
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(507025995)
【氏名又は名称原語表記】CARINCI,Francesco
【住所又は居所原語表記】Via Chiudare,2/2,I−40100 Bologna
【出願人】(507026017)
【氏名又は名称原語表記】D’AQUINO,Riccardo
【住所又は居所原語表記】Via Caio Duilio,72,I−80100 Napoli
【出願人】(507026028)
【氏名又は名称原語表記】DE ROSA,Alfredo
【住所又は居所原語表記】Via E.Nicolardi,188,I−80100 Napoli
【出願人】(507026006)
【氏名又は名称原語表記】GRAZIANO,Antonio
【住所又は居所原語表記】Via C.Bonito,23,I−80100 Napoli
【出願人】(507026039)
【氏名又は名称原語表記】LAINO,Gregorio
【住所又は居所原語表記】Via Cristoforo Colombo 12,I−80059 Torre Del Greco
【出願人】(507026051)
【氏名又は名称原語表記】PAPACCIO,Gianpaolo
【住所又は居所原語表記】Via del Parco Margherita,43,I−80100 Napoli
【Fターム(参考)】