説明

介護用浴槽装置

【課題】被介護者を少ない手間と少ない肉体的負担とによって入浴させることができる介護用浴槽装置を提供する。
【解決手段】槽底壁3及び槽側壁4で形成された浴槽2と、該浴槽2内に昇降自在に配設され、被介護者を横移動によりベッドから移乗させたりベッドに戻したりする移乗位置及び被介護者を入浴させるための入湯位置に変位する台板5と、上記台板5と槽底壁3との間に介設されて上記台板5を上記移乗位置と入湯位置とに昇降させる台板昇降装置6と、上記浴槽2の高さをベッドに合わせて調整するために上記槽底壁3の下面に取り付けられた浴槽昇降装置7とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被介護者を入浴させるのに適した介護用浴槽装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、病院や介護施設等において、寝た切り状態にある被介護者を入浴させる場合、介護者が被介護者をベッドから抱き抱えて浴室まで運び、入浴介護を行ったあと、再び抱き抱えてベッドに戻すようにしていた。
しかし、これは介護者にとって大変な重労働であって、肉体的かつ精神的な負担は非常に大きいものであった。
【0003】
一方、特許文献1には、ベッドに組み込まれた車椅子ユニットをベッドから切り離し、これに浴槽ユニットを合体させて浴槽を形成することにより、被介護者が車椅子に乗ったまま入浴介護を受けられるようにしたものが開示されている。
しかしながら、前記特許文献1に記載のものは、確かに入浴時に被介護者を抱き抱える必要はないものの、構造が非常に複雑で、入浴の際の各種作業工程も複雑である。即ち、入浴の際に、ベッドから車椅子ユニットを分離させる作業と、車椅子ユニットと浴槽ユニットとを合体させる作業と、入浴終了後に車椅子ユニットと浴槽ユニットとを分離させる作業と、車椅子ユニットをベッドに合体させる作業とを必要とし、作業工数が多いために手間がかかるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−299699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の技術的課題は、被介護者を少ない手間と少ない肉体的負担とによって入浴させることができる介護用浴槽装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の介護用浴槽装置は、槽底壁と槽側壁とで形成されて内部に温湯が張られる浴槽と、上記浴槽内に昇降自在に配設され、被介護者を横移動させてベッドから移乗させたりベッドに戻したりするための移乗位置と被介護者を入湯させるための入湯位置とに変位する台板と、上記台板を上記移乗位置と入湯位置とに昇降させるために上記台板と槽底壁との間に介設された台板昇降装置と、上記浴槽の高さをベッドに合わせて調整するために上記槽底壁の下面に設けられた浴槽昇降装置とを有することを特徴とするものである。
【0007】
本発明において好ましくは、上記台板昇降装置が、エア給排装置からのエアの給排により上下方向に伸縮する第1エア袋で形成されていて、2つの第1エア袋が台板の長さ方向の一端寄りの位置と他端寄りの位置とに配設され、また、上記浴槽昇降装置が、エア給排装置からのエアの給排により上下方向に伸縮する第2エア袋で形成されていて、2つの第2エア袋が浴槽の長さ方向の一端寄りの位置と他端寄りの位置とに配設されていることである。
【0008】
また、本発明においては、上記浴槽の槽底壁が硬質材により形成され、上記槽側壁は、エア給排装置からのエアの給排により伸縮自在なるように形成されていて、エアが供給されると伸長して浴槽を形作り、エアが排出されると縮小して折り畳まれるようになっていることが望ましい。
上記槽底壁及び台板は、エアが排出された槽側壁を内側にして折曲可能であることが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の介護用浴槽装置は、台板をベッドと同じ高さである移乗位置に上昇させた状態で、被介護者をベッドから横移動させてこの台板状に移乗させ、そのあと該台板を入湯位置まで下降させることにより被介護者を入湯させ、体や髪を洗うなどの入浴介護を行い、それが終了すると、上記台板を再び移乗位置まで上昇させ、被介護者の体を拭いて衣服を着せたあと、被介護者を台板から横移動させてベッドに戻すことができるので、従来のように介護者が被介護者を抱き抱えて入浴介護を行う必要がなく、少ない手間と少ない肉体的負担とによって被介護者を入浴させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る介護用浴槽装置の第1実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】本発明に係る介護用浴槽装置の1つの使用過程を示す部分断面図である。
【図5】本発明に係る介護用浴槽装置の他の使用過程を示す断面図である。
【図6】本発明に係る介護用浴槽装置の不使用状態の断面図である。
【図7】槽側壁と第1及び第2エア袋の他の構成態様を示す断面図である。
【図8】槽側壁と第1及び第2エア袋の更に他の構成態様を示す断面図である。
【図9】槽側壁と第1及び第2エア袋とをエア給排装置に接続した状態を概略的に示す接続図である。
【図10】本発明に係る介護用浴槽装置の第2実施形態を示す断面図である。
【図11】図10の介護用浴槽装置を折り畳んだ状態の断面図である。
【図12】浴槽及び台板のための揺れ止め機構の他例を示す部分断面図である。
【図13】台板昇降装置の他の構成態様を示す要部断面図である。
【図14】浴槽の他の構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を参照しながら本発明に係る介護用浴槽装置について詳述する。図1−図3に示す第1実施形態の浴槽装置1Aは、槽底壁3及び槽側壁4からなる浴槽2と、被介護者Aを寝かせた姿勢で載せるために上記浴槽2内に昇降可能に配設された台板5と、上記台板5を昇降させるために該台板5と上記槽底壁3との間に介設された台板昇降装置6と、上記浴槽2を昇降させるために上記槽底壁3の下面に取り付けられた浴槽昇降装置7と、上記浴槽2を必要な場所に移動させるために上記浴槽昇降装置7の下面に取り付けられたキャスター8とを有している。
【0012】
上記浴槽2の槽底壁3は、合成樹脂や金属等の硬質素材で平板状に形成され、その上面に上記槽側壁4が取り付けられている。この槽底壁3は、浴槽2内に張られた温湯Wの重さと台板5に載せられた被介護者Aの体重とが作用しても、下方に湾曲するなどの変形を生じない強度を有している。
【0013】
上記槽側壁4は、エアの給排により上下方向に伸縮する中空部材によって平面視形状が長円形あるいは矩形の枠状に形成され、下端部が上記槽底壁3の上面に液密に固定されている。そして、該槽側壁4の内部にエアが充填されると、該槽側壁4が図2及び図3のように立ち上がって浴槽2を形作り、該槽側壁4の内部のエアが排出されると、該槽側壁4が図6のように圧縮された状態に折り畳まれるようになっている。
【0014】
上記中空部材は、合成ゴムやビニールあるいは気密処理を施した布等からなるもので、エアを充填した状態で槽側壁4として必要な強度を保ち得るような剛性と弾性とを有している。この中空部材は、図2及び図3に示す例では、断面形状が上下に細長い矩形あるいは長円形状をしているが、エアの給排によって上下方向に伸縮し易いように、図7に示すように、襞9を上下に複数段有する蛇腹状の断面形状に形成することも、あるいは、図8に示すように、小さな円形断面又は楕円形断面の小室10を上下に複数段積み重ねたような断面形状に形成することもできる。
なお、図示した実施形態において、上記槽側壁4は、上端側が外側に向けて少し傾斜しているが、上下方向に真っ直ぐに延びていても良い。
【0015】
上記台板5は、合成樹脂等の硬質素材によって上記浴槽2の平面視形状より小形の矩形形状に形成され、該台板5を上下に貫通する複数の孔11を開けることによって多孔状とされている。図示の例で上記孔11は、台板5の長手方向に細長い長孔であるが、台板5の幅方向に細長い長孔であっても良く、円形の孔であっても良い。
【0016】
上記台板5は、図4に示すように、被介護者AをベッドBから横移動させてこの台板5上に載せたり、この台板5から横移動させてベッドBに戻したりするものであるため、上面を平滑な滑り易い面にしておくことが望ましい。あるいは、該台板5の複数箇所に、図1に鎖線で示すような小さなローラ12を該台板5の長手方向の支軸12aを中心に回転自在なるように取り付け、このローラ12で被介護者Aの横移動を補助させるように構成することもできる。
【0017】
上記台板昇降装置6は、上記台板5の長手方向両端寄りの位置に互いに平行に配設された2つの第1エア袋6aを有している。この第1エア袋6aは、上記槽側壁4を形成する中空部材と同様の素材により、台板5の幅方向に細長い矩形のブロック形をしてエアの給排により上下に伸縮自在なるように形成され、その上端が上記台板5に固定され、下端が槽底壁3に固定されている。なお、該第1エア袋6aの長さは、上記台板5の幅と同じかそれより僅かに小さい。
【0018】
そして、上記2つの第1エア袋6aに対してエアが給排されると、該第1エア袋6aが上下方向に伸縮して上記台板5を昇降させる。即ち、上記第1エア袋6aに十分な量のエアが供給されると、図2及び図3に示すように、該第1エア袋6aが大きく膨張して立ち上がり、台板5を槽側壁4の上端とほぼ同じ高さ(上昇位置)まで上昇させ、上記第1エア袋6a内のエアの一部が排出されると、図5に示すように、該第1エア袋6aがその分だけ収縮して下降し、台板5及び被介護者Aを温湯W中に浸漬させる高さ(入湯位置)まで下降させる。
【0019】
また、上記第1エア袋6a内のエアが全て排出されると、図6に示すように、該第1エア袋6aは完全に収縮した状態に折り畳まれ、台板5を最下段の位置まで下降させる。
従って、上記台板昇降装置6は、上記第1エア袋6aに対するエアの給排量を調整することにより、台板5を必要な高さに無段階に昇降させることができるものである。
【0020】
なお、上記第1エア袋6aは、図2及び図3に示す例では、矩形の断面形状を有しているが、その断面形状は円形や長円形であっても良く、あるいは、エアの給排によって上下方向に伸縮し易いように、図7に示すように、襞9を上下に複数段有する蛇腹状の断面形状や、図8に示すように、小さな円形断面又は楕円形断面の小室10を上下に複数段積み重ねたような断面形状に形成することもできる。
【0021】
上記台板5が入湯位置にあるとき、上記第1エア袋6a内のエアの一部は排出されているため、該第1エア袋6aはやや柔軟性が増した状態にある。そこで、被介護者Aの入浴時に台板5が傾いたりぐらついたりするのを防止して安定性を高めるため、揺れ止め機構として、図2に鎖線で示すように、上記2つの第1エア袋6aの互いに相対する内側面又は互いに相反する外側面あるいは内外両側面に沿った位置に、台板5の下面から下向きに延びる板状の支持部材14を取り付け、台板5が上記入湯位置まで下降したときこの支持部材14が槽底壁3に当接するようにすることができる。この支持部材14は、槽底壁3に上向きに設置しても良く、複数の棒状の部材であっても良い。あるいは、上記支持部材14を起倒自在として必要時に起立させるようにすることもできる。更には、伸縮自在とすることによって高さを調整できるようにすることもできる。
なお、上記支持部材14を固定的に設けた場合には、第1エア袋6aを上記入湯位置以下に折り畳んで台板5をそれ以下に下降させることはできない。
【0022】
上記浴槽昇降装置7は、槽底壁3の長手方向両端寄りの位置に互いに平行に配設された2つの第2エア袋7aで形成されている。この第2エア袋7aは、上記台板昇降装置6を形成する第1エア袋6aと同様の素材により、浴槽2の幅方向に細長い矩形のブロック形をしてエアの給排により上下に伸縮自在なるように形成され、その上端が上記槽底壁3の下面に固定され、下端には硬質の基板15が固定され、この基板15に上記キャスター8が取り付けられている。なお、該第2エア袋7aの長さは上記槽底壁3の幅と同じかそれより僅かに小さい。
また、上記2つの第2エア袋7a,7aの下端に取り付けられている上記基板15,15は、必ずしも2つに分かれている必要はなく、図2に鎖線で示すように1枚の板15Aで形成されていても良い。
【0023】
そして、上記2つの第2エア袋7aに対してエアが給排されることにより、該第2エア袋7aが上下方向に伸縮し、図4に示すように、槽側壁4の上端がベッドBの上面とほぼ同じ高さ(移乗位置)になるように上記浴槽2の高さが調整される。
また、上記キャスター8により、浴槽2をベッドBに隣接する位置やその他の必要な位置まで運ぶことができる。
【0024】
なお、上記第2エア袋7aは、図2及び図3に示す例では、矩形の断面形状を有しているが、その断面形状は円形や長円形であっても良く、あるいは、エアの給排によって上下方向に伸縮し易いように、図7に示すように、襞9を上下に複数段有する蛇腹状の断面形状や、図8に示すように、小さな円形断面又は楕円形断面の小室10を上下に複数段積み重ねたような断面形状に形成することもできる。
【0025】
また、上記移乗位置において被介護者AをベッドBから台板5上に移乗させるとき、上記第2エア袋7aの変形によって浴槽2が傾いたりぐらついたりして不安定になるのを防止するため、揺れ止め機構として、図2に鎖線で示すように、上記槽底壁3の2つの第2エア袋7aの近くに、高さを調整可能な板状又は棒状の支持部材16をそれぞれ起倒自在に取り付け、この支持部材16を上記移乗位置で床面に当接させることによって安定性を保つように構成することもできる。上記基板15,15が1枚の板15Aで形成されている場合には、上記支持部材16を該基板に当接させるようにすることもできる。
【0026】
上記槽側壁4と2つの第1エア袋6aと2つの第2エア袋7aとは、図9から分かるように、ビニールチューブからなる配管17a,17b,17cにより切換弁18a,18b,18cを介して圧力エア源19に接続され、各切換弁18a,18b,18cの切換動作によって圧力エア源19と大気とに接続されることにより、エアが選択的に給排されるようになっている。上記配管17a,17b,17cと切換弁18a,18b,18cと圧力エア源19とは、エア給排装置20を形成するものである。
【0027】
上記配管17a,17b,17cは、上記槽側壁4と2つの第1エア袋6aと2つの第2エア袋7aとにそれぞれ形成された接続ポート21a,21b,21cに着脱自在に接続され、それによって浴槽装置1Aの不使用時に、エア給排装置20を上記槽側壁4と第1エア袋6a及び第2エア袋7aから切り離すことができるようになっている。
上記切換弁18a,18b,18cは、電磁操作式の切換弁であっても、手動操作式の切換弁であっても良い。
【0028】
上記構成を有する介護用浴槽装置1Aは、次のようにして使用する。
先ず、この浴槽装置1Aが図6のように折り畳まれているときは、槽側壁4にエア給排装置20からエアを供給することにより、図2及び図3に示すように、該槽側壁4を伸長させて浴槽2を形成する。また、上記第1エア袋6a及び第2エア袋7aにもエアを供給することにより、台板5を槽側壁4と同じ高さになる移乗位置まで上昇させると共に、浴槽2を上記台板5がベッドBの上面とほぼ同じ高さになる上昇位置まで上昇させる。
【0029】
次に、組み立てた浴槽装置1AをベッドBに隣接する位置まで移動させ、上記浴槽2内に温湯Wを張る。この温湯Wを張る作業は、図示しない給湯源に接続した給湯ホースで温湯Wを浴槽2内に導くことにより行われるが、その際、図2に鎖線で示すように、上記槽底壁3の下面やその他の適宜位置に上記浴槽2内に通じる温湯給排口22を形成し、この温湯給排口22に上記給湯ホースを接続して温湯Wを浴槽2内に供給するようにするのが好ましい。この温湯給排口22は、コックで開閉できるように構成される。
【0030】
続いて、図4に示すように、ベッドBに寝ている被介護者Aを横移動させて上記台板5上に移し、その後、図5に示すように、上記第1エア袋6a内のエアを少し排出して台板5を温湯W中に浸漬する入湯位置まで下降させることにより、被介護者Aを入湯させ、体洗いなどの入浴介護を行う。このとき、2つの第1エア袋6a内のエア量を別々に調整できるようにしておくか、上記支持部材14(図2参照)の高さを頭部側と足部側とで互いに違えておくことにより、上記台板5を頭部側が足部側より若干高くなるように傾斜させることができる。
【0031】
入浴が終わると、図4に示すように、上記第1エア袋6a内にエアを供給することにより台板5を湯面より高い移乗位置まで持ち上げ、被介護者Aの体を拭いたり衣服を着せるなどの作業を行ったあと、被介護者Aを横移動させてベッドBに戻す。
【0032】
そして、浴槽2内の温湯を排出する。その際、上記温湯給排口22が設けられているときは、この温湯給排口22に排水ホースを接続し、コックを開いて浴槽2内の温湯Wを排出する。
温湯の排出が終わると、切換弁18a,18b,18cを切り換えて上記槽側壁4と第1エア袋6a及び第2エア袋7a内のエアを排出することにより、これらの槽側壁4と第1エア袋6a及び第2エア袋7aを収縮させて図6のように低く折り畳んだ状態にし、その状態で浴槽装置1Aを適宜位置に収納するか、別の使用場所に搬送する。
【0033】
図10及び図11は本発明の第2実施形態を示すもので、この第2実施形態の浴槽装置1Bが上記第1実施形態の浴槽装置1Aと相違する点は、収納時に浴槽2が実質的に2つに折曲可能であるという点である。
【0034】
このため、この浴槽装置1Bにおいては、槽底壁3に浴槽2の幅方向に延びる互いに平行な2つの折線25,25を形成することにより、該槽底壁3が、上記2つの折線25,25間に位置する幅狭の中央壁部3aと、上記折線25を介して該中央壁部3aの一方側と他方側とに位置する幅広の2つの本体壁部3b,3bとに区分されている。
上記台板5も同様に、長さ方向の中央部において、幅方向に延びる折線26で2つに折曲できるように形成されている。この折線26は、上記槽底壁3と同様に2つ設けることもできる。
【0035】
また、浴槽装置の使用時に上記槽底壁3及び台板5が上記折線25及び26の位置で折れ曲がるのを防止するため、上記槽底壁3には、折曲防止装置として、上記2つの本体壁部3b,3bにおける折線25,25に近接する位置の下面に、上記浴槽昇降装置7としての機能を併せ持つ第3エア袋7bがそれぞれ設けられ、該第3エア袋7bの底部に基板15とキャスター8とが取り付けられている。この第3エア袋7bは、上記第2エア袋7aと同様の素材によって同様の構成を有するように形成され、上記エア給排装置20によってエアが給排されるようになっている。
【0036】
上記台板5にも、折曲防止装置として、上記折線26に近接する位置の下面と上記槽底壁3の上面との間に、上記台板昇降装置6としての機能を併せ持つ第4エア袋6bが設けられ、上記エア給排装置20によってエアが給排されるように構成されている。この第4エア袋6bは、上記第1エア袋6aと同様の素材によって同様の構成を有するように形成されたものである。
なお、図示の例では、上記折線26の片側だけに上記第4エア袋6bが設けられているが、折線26の両側に該第4エア袋6bを設けることもできる。
【0037】
しかし、上記折曲防止装置としては、必ずしも上述したようなエア袋6b,7bを用いる必要はなく、上記槽底壁3及び台板5を折れ曲がらないように支持することができるその他の適宜手段を用いることができる。
【0038】
また、上記槽底壁3の長さ方向の両端部には、下向きに折り曲げられた折曲部3cが形成され、この折曲部3cにキャスター27が取り付けられている。
【0039】
そして、上記槽側壁4、第1エア袋6a及び第4エア袋6b、第2エア袋7a及び第3エア袋7b内のエアを排出してそれらを収縮させた状態で、上記槽底壁3を2本の折線25,25の位置で上記槽側壁4を内側にして折曲すると共に、台板5を折線26の位置で折曲することにより、図11に示すように、上記槽底壁3の2つの本体壁部3b,3b間に上記槽側壁4を挟み込んだ状態で折り畳むことができるものである。
折り畳んだ浴槽装置1Bは、図11の状態と上下逆向きにし、上記キャスター27で必要な場所に移動させることができる。
【0040】
この場合、浴槽装置1Bの使用時に浴槽2内の温湯が上記折線25を通じて外部に漏れ出さないようにするため、上記槽底壁3の上面には、合成ゴムやビニールあるいは液密処理を施した布等からなる柔軟な防漏シート28が張設され、この防漏シート28が上記槽側壁4に一体に連結されている。この防漏シート28は、上記折線25の位置で繰り返し折り曲げられても簡単には破れないような強度を有するものであることが望ましい。
なお、上記第1実施形態の浴槽装置1Bにおいてもこのような防漏シートを槽底壁3の上面に設けることができる。
【0041】
第2実施形態の上記以外の構成は実質的に第1実施形態と同じであるから、第1実施形態と同一の主要構成部分に第1実施形態と同一の符号を付し、その具体的な説明は省略する。
【0042】
なお、上記実施形態では、上記台板5及び浴槽2が傾いたりぐらついたりするのを防止するための揺れ止め機構として、支持部材14及び支持部材16を用いているが、図12に示すような揺れ止め機構を用いることもできる。
【0043】
このうち、台板5のための第1揺れ止め機構34は、長孔35aを有する2本のレバー35を交差させ、上記長孔35aに挿通した螺子36で必要な傾斜角度に固定可能としたもので、2本のレバー35の上端は台板5の側面に取付軸37で回動自在に連結され、該レバー35の下端はフリーの状態のまま槽底壁3の上面に当接している。このような揺れ止め機構34が台板5の両端に2組設けられている。
そして、図12に実線で示すように台板5が上昇位置にあるときは、2本のレバー35は特に固定する必要がないので螺子36は緩められており、同図に鎖線で示すように台板5が入湯位置まで下降したとき、上記螺子36が締められて2本のレバー35はその傾斜角度に相互固定される。これにより台板5は安定し、被介護者の入浴時に傾いたりぐらついたりすることがない。
【0044】
また、浴槽のための第2揺れ止め機構44は、上記第1揺れ止め機構34と同様に、長孔45aを有する2本のレバー45を交差させ、長孔45aに挿通した螺子46で必要な傾斜角度に固定できるようにしたもので、2本のレバー45の上端は槽底壁3の側面に取付軸47で回動自在に連結され、該レバー45の下端はフリーの状態のまま床面に当接している。このような揺れ止め機構44が槽底壁3の両端に2組設けられている。
そして、図12に実線で示すように浴槽2が移乗位置に上昇しているとき、上記螺子46が締められて2本のレバー45はその傾斜角度に相互固定される。これにより浴槽2は安定し、被介護者がベッドから台板5状に移乗するときや台板5からベッドに移乗するとき傾いたりぐらついたりすることがない。
【0045】
なお、図12において、上記揺れ止め機構34、44を除いた構成は上記第1実施形態と同様であるから、主要な同一構成部分に同一符号を付してその説明は省略する。
【0046】
上記実施形態では、台板昇降装置6が第1エア袋6a及び第4エア袋6bで形成されているが、この第1エア袋6a及び第4エア袋6の代わりに、図13に示すようなエアシリンダ30で形成することもできる。このエアシリンダ30は、槽底壁3の下面に取り付けられたシリンダ本体30aと、該シリンダ本体30aから槽底壁3を摺動自在に貫通して浴槽2の内部に延出するロッド30bとからなるもので、該ロッド30bの上端が台板5に連結されている。また、上記ロッド30bが温湯Wと接触するのを防止するため、上記台板5と槽底壁3との間には、上記ロッド30bを液密に取り囲むベローズ31が配設され、該ベローズ31の内部空間は、槽底壁3に設けた通孔32により大気に開放されている。
【0047】
また、基板15,15が一枚の板で形成されている場合には、上記浴槽昇降装置7を、上記台板昇降装置6と同様に、図13に示すようなエアシリンダ30で形成することできる。
【0048】
更に、上記槽側壁4は、必ずしも中空部材によって伸縮自在に形成する必要はなく、通常の浴槽のように、槽底壁3と同様の硬質素材によって最初から浴槽としての形状を有するように形成することもできる。この場合、槽側壁4と槽底壁3とは一体に形成することができる。
【0049】
また、上記第1実施形態の浴槽装置1Aのように、浴槽2の槽底壁3が折曲されない構成のものにおいては、該槽底壁3の内部に上記槽側壁4と第1エア袋6aと第2エア袋7aとにそれぞれ通じる複数のエア通孔を形成すると共に、該槽底壁3の側面に各エア通孔に通じる複数の接続ポート21a,21b,21cを形成し、この接続ポート21a,21b,21cに上記配管17a,17b,17cを着脱自在に接続することにより、該槽底壁3をエアの給排に使用することができる。
更にまた、上記浴槽2の内部は、図14に示すように、仕切壁48によって大室部分2aと小室部分2bとに区画し、小室部分2bを洗髪用として使用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1A,1B 浴槽装置
2 浴槽
3 槽底壁
3a 中央壁部
3b 本体壁部
4 槽側壁
5 台板
6 台板昇降装置
6a 第1エア袋
7 浴槽昇降装置
7a 第2エア袋
20 エア給排装置
A 被介護者
B ベッド
W 温湯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽底壁と槽側壁とで形成されて内部に温湯が張られる浴槽と、
上記浴槽内に昇降自在に配設され、被介護者を横移動させてベッドから移乗させたりベッドに戻したりするための移乗位置と被介護者を入湯させるための入湯位置とに変位する台板と、
上記台板を上記移乗位置と入湯位置とに昇降させるために上記台板と槽底壁との間に介設された台板昇降装置と、
上記浴槽の高さをベッドに合わせて調整するために上記槽底壁の下面に設けられた浴槽昇降装置と、
を有することを特徴とする介護用浴槽装置。
【請求項2】
上記台板昇降装置は、エア給排装置からのエアの給排により上下方向に伸縮する第1エア袋で形成され、2つの第1エア袋が台板の長さ方向の一端寄りの位置と他端寄りの位置とに配設されていることを特徴とする請求項1に記載の浴槽装置。
【請求項3】
上記浴槽昇降装置は、エア給排装置からのエアの給排により上下方向に伸縮する第2エア袋で形成され、2つの第2エア袋が浴槽の長さ方向の一端寄りの位置と他端寄りの位置とに配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の浴槽装置。
【請求項4】
上記浴槽の槽底壁は硬質材により形成され、上記槽側壁は、エア給排装置からのエアの給排により伸縮自在なるように形成されていて、エアが供給されると伸長して浴槽を形作り、エアが排出されると縮小して折り畳まれることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の浴槽装置。
【請求項5】
上記槽底壁及び台板は、エアが排出された上記槽側壁を内側にして折曲可能であることを特徴とする請求項4に記載の浴槽装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate