説明

付着のための結合剤を含む塗工液組成物で一層又は多層塗工された基体の製造方法

本発明は、カーテン塗工法による塗布のために被覆されうる基材、例えば原紙又は厚紙上に塗工可能である塗工液組成物に関する。原紙において厚紙であってよい基材は、1つ又はそれ以上の自由落下する液体カーテンで被覆され、その場合に被覆液体に結合剤が添加されている。結合剤は、スチレン−ブタジエン−ラテックス結合剤、スチレン−アクリラート−ラテックス結合剤、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル−ラテックス結合剤、スチレン−無水マレイン酸−結合剤並びにスチレン−アクリラート−無水マレイン酸−結合剤を有する群から選択されており、その場合に結合剤は<130nmの粒度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印画紙及び自己接着性ラベル紙を除く、印刷、包装及び筆記に特別に適している、一層及び/又は多層塗工された基材、例えば、紙又は板紙を製造する方法に関するものであり、その場合に前記基材は特に一つ又は複数の自由落下する液体カーテンで被覆され、その場合に自由落下する液体カーテンは、特に高い結合力を有する結合剤を含有する塗工液組成物により形成される。
【0002】
技術水準
写真産業において、カーテン塗工法(Curtain Coating)は、基材を被覆するための公知の方法である。しかしながら、これまで被覆として使用されてきた乳濁液もしくは液体は、低い固体含量及び低い粘度を有し;さらにまた、塗布速度は、極めて低い値であり、これらの値は目下のところ600m/min未満である。これに反して、グラフィックペーパーの製造の場合に、写真産業において使用される懸濁液とは異なり、高い固体含量及び高い粘度を有する顔料着色された懸濁液が使用される。さらに、グラフィックペーパーは、たいてい、ブレード塗工又はフィルムプレスを用いて1000m/minを明らかに上回る速度で製造される。
【0003】
ブレード塗布法並びにフィルムプレス塗布法はその都度、得られる塗工された基材、例えば原紙又は板紙の品質に影響を及ぼす特有の欠点を有する。ブレード塗布法の場合に、ブレードの下での高いせん断速度により誘導される粒子の凝集は、紙塗被上の縞をまねきうるものであり、これらは得られる紙もしくは厚紙の表面品質を劣悪にする。さらに、グラフィック産業において使用される塗工液は、ブレードを激しく酷使するので、これは、変わらない塗工品質を保証するために頻繁に交換されなければならない。
【0004】
さらにまた、紙表面もしくは厚紙表面上の塗被分布は、前記基材のむらにより影響を受ける。紙表面もしくは基材表面上の不均一な塗被分布は、劣悪な印刷結果、例えばモットリング(Mottling)現象(ぼやけた印刷)をまねく。
【0005】
これまでグラフィックペーパーの製造に使用されてきたフィルムプレス塗布法は、本質的には基材表面特性、基材多孔度(吸収挙動)並びに塗工液固体含量のファクターによって決定される、狭く算定された操作ウインドウを必要とする。この狭く限定された操作ウインドウは、各々のウェブ速度、すなわち各々の塗布速度及び各々の塗工質量のために、改めて決定されるべきである。最適化されていない、フィルムプレス塗布法の範囲内で使用される塗工液レセプターの場合に、紙にせよ厚紙にせよ、基材の表面上で不均一なフィルム−分裂パターンとなりうるものであり、これはそしてまた劣悪な印刷適性を生じる。フィルムプレス塗布法において、さらに小さな液滴が塗工の際に溶解されうるものであり、ひいては品質損失をまねきうる。ブレード塗布法とは異なり、フィルム塗布法を用いて最大で達成可能な塗布質量は明らかにより少ない。最大の塗布質量のこの制限は、高い塗布速度の場合に特に際立つ。
【0006】
説明した2つの塗布法、すなわちフィルムプレス塗布法並びにブレード塗布法には、紙基材の表面が有する凸部及び凹部(山及び谷)の間の塗布質量が不均一に分布されているので、印刷インキ受け入れが同様に不均一に分布されて経過し、このことは既に前記されたモットリング効果(印刷の曇り)をまねきうるという欠点が内在している。
【0007】
しかしながら双方の方法を用いて、明らかに600m/minを上回る相対的に高い塗布速度が達成されることができるので、フィルムプレス塗布法並びにブレード塗布法は、グラフィックペーパーの製造の際に極めて広く普及している。
【0008】
日本国特許出願明細書JP 94-89437、JP 93-311931、JP 03-177816、JP 93-131718、JP 92-298683、JP 92-51933、JP 01-298229、JP 90-217327、JP 8-310110並びに欧州特許出願公開(EP-A)第517 223号明細書及び欧州特許出願公開(EP-A)第1 249 533号明細書には既に、基材を1つ又はそれ以上の顔料着色された塗工液で被覆するためのカーテン塗工法の使用が開示されている。
【0009】
基材、例えば紙及び厚紙の加工(Veredelung)のためのカーテン塗工法(Curtain Coating)の使用は、前記の明細書に既に開示されたように、フィルムプレス法又はブレード塗布法のようなこれまで使用されてきた塗布法と比較して、塗工された表面構造の品質の改善をもたらす。しかしながらカーテン塗工法は不利である、それというのも、適用される液体カーテンの高められた塗布速度及び少ない塗布質量の場合に不安定になる傾向があるからである。カーテン塗工法により塗布される塗工液組成物が紙基材の表面上に衝突する際に、塗工液は自由落下から約90゜だけ向きを変えられ、かつその場合に基材速度が促進される状況となり、このことは、塗工液流体中の局所的に極めて高いせん断速度及び伸長速度をまねく。その場合に前記流体は極端な場合には激し過ぎるほど応力を受けうるので、キャビテーションバブルによるフィルムの裂けが生じうる。適用される塗工液カーテンが裂ける危険は、基材の速度が増すにつれて増大し、かつカーテン塗布法の操作上限を表す。
【0010】
基材表面上に塗布すべき塗工液組成物のカーテン塗工法による別の重要なパラメーターは、紙基材の表面上へのコピー塗被の固着である。事情によっては、基材の表面上の紙塗被の不十分な固着は、輪転オフセットの場合又は枚葉オフセット印刷法の場合に不足した印刷品質をまねきうる。
【0011】
技術水準からの解決手段の欠点を考慮して、カーテン塗布法により塗布されることができ、かつ顔料着色された塗工液組成物のかなり改善された結合力を有する塗工液組成物を提供するという課題が本発明の基礎となっている。
【0012】
発明の説明
本発明に従えば、カーテン塗工法(Curtain Coating)により塗布されることができる塗工液組成物に、スチレン−ブタジエンをベースとする結合剤が添加される。前記結合剤は、粒度<130nmを有する、スチレン−ブタジエン−ラテックス結合剤、スチレン−アクリラート−ラテックス結合剤、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル−ラテックス結合剤、スチレン−無水マレイン酸−結合剤並びにスチレン−アクリラート無水マレイン酸−結合剤をベースとして選択されている。
【0013】
本発明によれば、塗工液組成物に混合される結合剤として、もちろん合成ポリマーが適している。天然ポリマーとして、デンプンを挙げることができ、合成ポリマーとして、特に、エチレン系不飽和化合物(モノマー)のラジカル重合により得られるそのようなポリマーが考慮の対象になる。
【0014】
好ましくは、結合剤は、少なくとも40質量%、好ましくは少なくとも60質量%、及び特に好ましくは少なくとも80質量%が主モノマーからなるポリマーである。主モノマーは、C1〜C20−アルキル(メタ)アクリラート、20個までの炭素原子が含まれているカルボン酸のビニルエステル、20個までの炭素原子を有するビニル芳香族化合物、エチレン系不飽和ニトリル、ビニルハロゲン化物、炭素原子1〜10個を有しているアルコールのビニルエーテル、炭素原子2〜8個及び1又は2つの二重結合を有する脂肪族炭化水素又はこれらのモノマーからなる混合物から選択されている。例えば、C1〜C10−アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えばメタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、n−ブチルアクリラート、アクリル酸エチル及び2−エチルヘキシルアクリラートを挙げることができる。特に(メタ)アクリル酸アルキルエステルの混合物も好適でありうる。さらに、炭素原子1〜20個を有するカルボン酸のビニルエステル、例えばビニルラウレース(Vinyllaurath)、ステアリン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルエステル(Versatiksaeurevinylester)及び酢酸ビニル。
【0015】
ビニル芳香族化合物として、ビニルトルエン、α−及びp−メチルスチレン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレン及び好ましくはスチレンが考慮の対象になる。ニトリルの例として、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを挙げることができる。
【0016】
ビニルハロゲン化物は、塩素、フッ素又は臭素で置換されたエチレン系不飽和化合物であり、その場合に特に塩化ビニル及び塩化ビニリデンを挙げることができる。
【0017】
ビニルエーテルとして、例えばビニルエチルエーテル及びビニルイソブチルエーテルを挙げることができる。好ましくは、炭素原子1〜4個を有しているアルコールとのビニルエーテルが使用される。
【0018】
炭素原子2〜8個及び1又は2つのオレフィン系二重結合を有する炭化水素として、エチレンプロピレンブタジエンイソプロペン並びにクロロプロペンを挙げることができる。
【0019】
好ましい主モノマーは、C1〜C10−アルキル(メタ)アクリラート及びアルキル(メタ)アクリラートとビニル芳香族化合物、特にスチレンとの混合物又は二重結合を有する炭化水素、特にブタジエン又はそのような炭化水素とビニル芳香族化合物、特にスチレンとの混合物である。
【0020】
脂肪族炭化水素(特にブタジエン)とビニル芳香族化合物(特にスチレン)との混合物の場合に、この比は例えば10:90〜90:10、特に20:80〜80:20であってよい。
【0021】
好ましくは使用される主モノマーは、ブタジエン及びブタジエンとスチレンとの前記の混合物(ポリスチレンブタジエンと略す)又はC1〜C10−アルキル(メタ)アクリラート又はそれらとスチレンとの混合物(ポリアクリラートと略す)である。
【0022】
主モノマーに加えて、ポリマーは、別のモノマー、例えば、カルボン酸、スルホン酸又はホスホン酸基を有するモノマーを含有していてよい。好ましくは、カルボン酸基が使用される。例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸又はフマル酸を挙げることができる。エマルションポリマー中のエチレン系不飽和酸含量は、一般的に5質量%未満である。
【0023】
別のモノマーは、例えばヒドロキシル基を有しているモノマー、特にC1〜C10−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリラート並びに(メタ)アクリルアミドである。
【0024】
ポリマーの製造は、好ましい一実施態様によれば乳化重合により行われ、故に、エマルションポリマーが重要である。しかしながら、製造は、溶液重合及び引き続き水中への分散によっても行われることができる。
【0025】
乳化重合の際に、イオン性及び/又は非イオン性の乳化剤及び/又は保護コロイドもしくは安定剤が、界面活性化合物として使用される。この界面活性物質は重合されうるモノマーを基準として、通常、0.1〜10質量%の量で使用される。乳化重合のための水溶性開始剤は、ペルオキソ二硫酸の2つのアンモニウム塩及びアルカリ金属塩、例えばナトリウムペルオキシジスルファート過酸化水素又は有機過酸化物、例えばt−ブチルヒドロペルオキシドである。いわゆる還元−酸化(レドックス)−開始剤系も適している。
【0026】
開始剤の量は重合されうるモノマーを基準として、一般的に0.1〜10%、好ましくは0.5〜5質量%である。乳化重合の際に異なる複数の開始剤が使用されることもできる。
重合の際に、調節剤は、例えば、重合されうるモノマー100質量部を基準として0〜0.8質量部の量で使用されることができ、これによりモル質量は低下される。例えば、チオール基を有する化合物、例えばt−ブチルメルカプタン、チオグリコール酸エチルアクリルエステル、メルカプトエチノール、メルカプトプロピルトリメトキシラン又はt−ドデシルメルカプタンが適している。
【0027】
乳化重合は、通例30℃〜130℃、好ましくは50℃〜90℃で行われる。重合媒体は、水のみから、並びに水及びそれと混和性の液体、例えばメタノールからなる混合物からなっていてよい。しかしながら好ましくは水のみが使用される。乳化重合は、バッチ法として並びに供給法の形で、段階運転方式又は勾配運転方式を含めて、実施されることができる。しかしながら、重合バッチの一部が装入され、重合温度に加熱され、部分重合され、引き続いて重合バッチの残りが、通常、複数の空間的に別個の供給を経て、これらのうち1つ又はそれ以上がモノマーを又は乳化された形で含有し、連続的に段階的に又は濃度勾配を包囲しながら、重合を維持しながら重合帯域に供給されることによる供給法が好ましい。重合の際に、例えば、粒度のより良好な調節のために、ポリマーが装入されることもできる。
【0028】
開始剤が、水性ラジカル乳化重合の過程で重合容器に添加される方法は知られている。これは、完全に重合容器中へ装入されることができ、並びにその消費に応じて、水性ラジカル乳化重合の過程で連続的に又は段階的に使用されることができる。詳細には、これは、開始剤系の化学的性質並びに重合温度に依存する。好ましくは、一部が装入され、かつ残りが消費に応じて重合帯域へ供給される。
【0029】
残存モノマーの除去のためには、通常、実際の乳化重合の終了後にも、すなわち少なくとも95%のモノマーの転化後に、開始剤が添加される。個々の成分は、供給法の場合に反応器に、上から、側部から又は反応器底部を経て下から、添加されることができる。乳化重合の際に、通例、15質量%〜75質量%、好ましくは40質量%〜75質量%の固体含量を有するポリマーの水性分散液が得られる。
【0030】
スチレン−ブタジエンラテックス−結合剤、スチレン−アクリラートラテックス−結合剤、スチレン−ブタジエンアクリロニトリル−ラテックス結合剤、スチレン無水マレイン酸−結合剤、スチレン−アクリラート無水マレイン酸−結合剤、ポリ酢酸ビニルをベースとし、塗工液組成物に添加される結合剤は、<130nmの粒度を有する。
【0031】
実施例
塗工液組成物
本発明により提案された塗工液組成物(%の記載並びに質量割合)は、77%の乾燥質量割合を有し、スラリーの95%を構成する2μmの粒度を有する炭酸カルシウムCaCO3のスラリー(例えばHydrocarb 95 ME、OMYA、Oftringen、スイス国から入手可能)、並びに74.6%の乾燥質量割合を有し、スラリーの98%を構成する2μmの粒度を有するAmazon Premiumのクレイスラリー(例えばAmazon Premium、Kaolin Internationalから入手可能)を含む。
【0032】
以下の例において、塗工液組成物には、異なる結合剤A、B、C、D、E、F、G、H、Iが混合されている。
【0033】
これらは、詳細には次のものであった:
結合剤Aは、130nmの粒度、Tg 0℃及び水中50%を有するスチレン−ブタジエン−ラテックス(BASF AGのStyronal D 536)であった。Tgはガラス転移温度を表し、ゲル含量は83%であった。
【0034】
結合剤Bは、140nmの粒度、Tg 13℃、水中50%を有するスチレン−ブタジエン−アクリロニトリル−ラテックス(BASF AGのStyronal D 627)であった。Tgはガラス転移温度を表し、ゲル含量は80%であった。
【0035】
結合剤Cとして、160nmの粒度、Tg 22℃及び水中50%を有するスチレン−ブタジエン−ラテックス(BASF AGのStyronal D 808)を使用した。Tgはガラス転移温度を表し、ゲル含量は72%であった。
【0036】
別の結合剤、すなわち結合剤Dとして、130nmの粒度、Tg 0℃、水中50%を有するスチレン−ブタジエン−ラテックスを使用し、カセイソーダ液中で中和した。Tgはガラス転移温度を表し、ゲル含量は82%であった。
【0037】
結合剤Eとして、165nmの粒度、16℃のTg、水中50%を有するスチレン−ブタジエン−ラテックスを使用した。Tgはガラス転移温度を表す。
【0038】
別の結合剤である、結合剤Fを、スチレン−ブチルアクリラート−ラテックスにより製造し、これは175nmの粒度、20℃のTg及び水中50%であった。
【0039】
別の結合剤である、結合剤Gを、スチレン−ブタジエン−ラテックスにより製造し、これは115nmの粒度、Tg 0℃、50%の固体含量を有し、ゲル含量は85%であった。
【0040】
別の結合剤である、結合剤Hを、スチレン−ブタジエン−ラテックスにより製造し、これは100nmの粒度、Tg 0℃、50%の固体含量を有し、ゲル含量は76%であった。
【0041】
別の塗工液組成物は結合剤Iを含有し、すなわち80nmの粒度、−12℃のガラス転移温度Tg及び水中50%を有するスチレンブタジエンアクリロニトリル−ラテックスが含まれており、その場合にゲル含量は86%であった。
【0042】
異なる結合剤A〜Iを有する全ての塗工液組成物は、添加剤Aとしてポリアクリルアミド増粘剤(組成 アクリル酸40mol%、アクリルアミド60mol%、44 000 000の分子量Mn)が添加されており、並びに界面活性剤、すなわちジアルキルスルホコハク酸ナトリウムの水溶液(Lumiten I-DS 3525)、BASF AGから入手可能、並びに蛍光増白剤、例えばBlancophor P、Bayer AG、Leverkusenから入手可能、が添加されていた。
【0043】
顔料着色された塗工液組成物のpH値を、10%NaOHの添加により8.7に調節した。塗工液処方物の固体含量を、水での希釈により調節した。
【0044】
以下の第1表に、処方物の概要が与えられている。
【0045】
【表1】

【0046】
第1表からは、塗工液組成物の処方物1〜9が、添加される結合剤A、B、C、D、E、F、G、H、Iによりその都度互いに相違することがわかる。
【0047】
処方物1〜9のブルックフィールド粘度を、ブルックフィールドRVT粘度計(Brookfiled Engineering Laboratories、米国から入手可能)を用いて25℃の室温で測定した。測定のためには、分散液600mlを1 lビーカーに入れ、粘度をスピンドル番号4で100n-1の回転数で測定した。
【0048】
処方物1〜9による塗工液組成物を、以下に与えられた例により基材上に被覆した。紙にせよ又は厚紙にせよ、含まれている基材の性質を、次の試験プロトコルに基づいて決定した。
【0049】
紙光沢
紙光沢を、DIN 54 502に従い75゜の入射角で測定した。
【0050】
粒度
分散液の粒度を、DIN ISO 13321に従い決定した。
【0051】
ガラス転移温度Tg
分散フィルムのガラス転移温度を、DIN ISO 53765に従い決定した。
【0052】
Pruefbauオフセット(PB)
試験装置は、Pruefbau印刷適性試験機MZ II、Pruefbauインキ着けロール、その都度40mm幅の金属印刷ディスク、0.01mlを計量供給することができる塗布ピペット並びに0.001mlを計量供給することができる別の塗布ピペット並びに縦印刷試料キャリヤー(Langdruckprobentraeger)並びにストップウォッチを含む。
【0053】
印刷インキとして、Novavit 4F 713 Cyan (Kast & Ehinger)を使用した。試験すべき紙から、長軸方向で240ml×46mlの大きさを有する試料を切り抜いた。試料を、試験の前に少なくとも15時間、互いに別個に調湿室中に保存した。
【0054】
試験の実施のためには、装置のスイッチを入れ、その場合にインキ着けロールの1つの上に印刷インキ0.3mlを添加し、引き続いて1分の期間の運転を行った。ついで、このために設けられたホルダーへ印刷ディスクをはめこみ、30秒間インキ着けした。別の各々の印刷ディスクについては、インキ着けロール上に印刷インキ0.03mlを塗布し、その後30秒の継続運転が続いてから、インキ着けを行った。インキ着けされたインキ着けロールは、特定の期間にわたってのみ使用されることができる。線圧を800N(=200N/cm)に調節し、印刷速度は1m/sであった。紙片を印刷試料キャリヤー上に張り、右側の印刷ユニットの前へストッパーまでの溝中へ置いた。右側の印刷ユニットコアに、インキ付した印刷ディスクを取り付け、開始ボタンの操作と共に印刷過程を開始した。前記の印刷インキ量で隠蔽点(Deckungspunkt)に達しなかった場合に、前記の印刷インキ量並びにそれらの追加を0.4及び0.04mlもしくは0.5及び0.05mlから高めなければならなかった。紙片の場合に隠蔽点に達した場合にはじめて、試験の続きを行った。印刷試料キャリヤーを、印刷された紙片と共に開始位置に持って行った。その場合に、紙片が指又はその他の対象物と触らないように配慮すべきである。規定された期間、通例10s後に、印刷過程を印刷ディスクを交換せずに再度開始した。これを全部で5回繰り返した。
【0055】
各パス後に、紙片の印刷された側のピッキング(Rupfen)を視覚的に評価した。6回の印刷過程後にピッキングが生じなかった場合には、ピッキング傾向の決定は、より長い時間間隔で例えば20s又は30s継続した。使用した印刷ディスク及びインキ着けロールを、次の使用の前に、その都度重ベンジンで清浄化し、引き続いて木綿布を用いて乾燥させた。得られる結果(passes to fail)は、最初のピッキングの発生までの印刷過程の数、インキ塗布[ml]並びに個々のパスの間の時間間隔[秒]で表現した。
【0056】
基材粗さ
塗工された基材の粗さを、Parker PrintSurf粗さ試験機を用いて決定した。その場合に、試料の塗工された紙を、Cork-Melinexプレートと測定ヘッドとの間に1,000kPaの圧力ではさみ込んだ。圧縮された空気を、400kPaの定義された圧力を用いて基材上へ適用し、引き続いて測定ヘッドと紙表面との間の空気の漏れを測定した。高い空気漏れは、紙にせよ厚紙にせよ、塗工された基材の高い紙粗さを示す。
【0057】
塗被均一性
試験すべき基材試料を1分間、ネオカルミン溶液MS "FesagO"(Merck、Darmstadtから入手可能)中へ完全に浸漬させた。引き続いて、試験すべき基材試料を、着色がもはや識別できなくなるまで、飲用水を流しながらすすいだ。引き続いて試料を2枚のろ紙の間に挟み込み(abgegautscht)、引き続いて実験室用乾燥器中で90℃の温度で乾燥させた。着色された塗被表面の外観を視覚的に評価した。
【0058】
塗布質量調節
紙にせよ厚紙にせよ、塗工すべき基材上に、塗工カーテン法を用いて塗布されうる塗工液の塗布質量を、各塗布試験の場合にカーテン塗工−装置ノズルによる塗工液カーテンの体積流量、紙ウェブ速度、塗工液組成物の密度及び塗工される基材の幅に基づいて決定した。
【0059】
塗工された基材を、引き続いてJanusカレンダー(Voith社)を用いて次の条件下にカレンダーがけした:
速度:710m/min
線荷重:138N/mm
表面温度:120℃。
【0060】
ゲル含量決定
分散液から、約1〜2mmのフィルム厚さを有するフィルムをキャスティングした。このフィルムを室温で72h乾燥させた。引き続いて得られたフィルムから、一辺が1cmの長さを有する3つの正方形を切り抜き、秤量した。各片を、THF 30mlを有する密閉容器中へ貯蔵した。フィルムから、48h後に、秤量した金属ふるい上で、溶剤を取り除いた。引き続いて、ポリマーフィルムを有するふるいを乾燥させ、これを80℃で2hにわたって行い、個々のフィルムを再秤量した。質量の商(洗浄後の質量/当初質量)から、ゲル含量を決定した。
【0061】
色濃度/吸収挙動
この評価は、色濃度測定によっても行われることができる。カウンターストリップ上への色移りが、曇った構造を有しない場合に、個々のセグメントの色濃度をそのセグメント上で、濃度計を用いてその都度10箇所で測定する。場合により、印刷後にカウンターストリップに印刷された時点までの吸収時間に対する色濃度のグラフによるプロットを行うことができる。濃度計を用いた評価の結果として、相対色濃度RF[%]が得られる。次の関係による
RF=100・DM/DV、ここで
RF=相対色濃度%
DM=双方の試験片のセグメント上の色濃度の測定値の平均値
DV=印刷されたカウンターストリップの色濃度の測定値の平均値。
結果は、吸収時間(時間間隔[s])に対する、2つのカンマ位置(Kommastellen)を有する印刷されたカウンターストリップ上の色濃度により表現される。
【0062】
例1
結合剤Aを有する処方物1を質量58g/m2の上質系原紙上に、この基材上への単純なカーテン塗工を用いて塗布した。塗布質量は、1,000m/minの基材ウェブ速度で15g/m2であった。
【0063】
例2
結合剤Bを有する塗工液組成物の処方物2を質量58g/m2の上質系基材上に、15g/m2の塗布質量で1,000m/minの紙ウェブ速度でのその表面上への単純なカーテン塗工を用いて適用した。
【0064】
例3
結合剤Cを有する処方物3による塗工液組成物を同様に質量58g/m2の上質系基材上に、その表面上への単純なカーテン塗工を用いて塗布した。塗布質量は同様に1,000m/minの紙速度で15g/m2であった。
【0065】
例4
この例によれば、処方物Dによる塗工液組成物を、質量58g/m2の上質系原基材上に15g/m2の塗布質量で単純なカーテン塗工により塗布し、その場合に基材ウェブ速度は同様に1,000m/minであった。
【0066】
例5
この例によれば、結合剤Eを有する第1表による処方物Fによる塗工液組成物を質量58g/m2の上質系原基材上に、その表面上への単純なカーテン塗工を用いて塗布し、その場合に15g/m2の塗布質量に調節されており、かつ基材ウェブ速度は1,000m/minであった。
【0067】
例6
例7において、結合剤Fを有する処方物7による塗工液組成物を質量58g/m2の上質系原基材上に、その表面上への単純なカーテン塗工を用いて塗布し、その場合に15g/m2の塗布質量に調節されており、かつ基材ウェブ速度は同様に1,000m/minであった。
【0068】
例7
この例によれば、結合剤Gを有する処方物8による塗工液組成物を、質量58g/m2の上質系原基材上に、その表面上への単純なカーテン塗工を用いて塗布し、その場合に塗布質量は1,000m/minの基材ウェブ速度で15g/m2に調節されていた。
【0069】
例8
この例によれば、結合剤Hを有する処方物9による塗工液組成物を、質量58g/m2の上質系原基材上に、15g/m2の塗布質量での基材表面上への単純なカーテン塗工を用いて塗布し、その場合に1,000m/minの基材ウェブ速度に調節されていた。
【0070】
例9
この例によれば、結合剤Iを有する処方物10による塗工液組成物を、1平方メートルあたり58gの質量の上質系原基材上に、基材表面上への単純なカーテン塗工法を用いて1平方メートルあたり15gの塗布質量で塗布し、その場合に1分あたり1000mの基材ウェブ速度に調節されていた。
【0071】
例1〜9により塗工された基材を、引き続いてJanusカレンダー(Voith社)を用いて次の条件下にカレンダーがけした:
速度:710m/min
線荷重:138N/mm
表面温度:120℃。
【0072】
カレンダーがけ後に、例1〜9により塗工され、引き続いて前記の操作パラメーター下でカレンダーがけされ、塗工された基材は、次の性質を有していた:
【表2】

【0073】
第3表 例1〜9の結果の概要
第2及び3表による結果は、カーテン塗工法により被覆すべき基材、例えば紙又は板紙の上面と、その上面に塗布される塗工液組成物との間の高い結合力を達成するために、<130nmの粒度を有する特に微粒状の結合剤が使用される場合に高い結合力が得られることを説明する。
【0074】
【表3】

【0075】
比較例 ブレード塗布法の場合の結合力
次の第4表からは、ブレード塗布法を用いて基材上に適用された処方物の概要が得られる。
【0076】
【表4】

【0077】
比較例1
番号1を有する処方物を58g/m2の上質系原紙上に、15g/mの塗布質量で1200m/minの紙ウェブ速度での基材上への常用のブレード塗布法を用いて適用した。
【0078】
参考例1により塗工された基材を、引き続いてJanusカレンダー(Voith社)を用いて次の条件下にカレンダーがけした:
速度:710m/min
線荷重:138N/mm
表面温度:120℃。
【0079】
カレンダーがけ後に、参考例1により塗工された基材を、引き続いて前記の操作パラメーター下にカレンダーがけし、塗工された紙は、次の紙特性を有していた。
【0080】
生じる結果は、次に示される第5表にまとめられている。
【0081】
【表5】

【0082】
第5表から得られる結果は、ブレード紙の場合の結合力が、それ以外は良好な紙特性の場合に、カーテンコーティング法により塗工された紙よりも著しく高いことを示している。
【0083】
図1からは、塗工液組成物の粒度と生じる結合力との間の関係が明らかとなるグラフが得られる。
【0084】
縦座標上は、最初のピッキングが起こるまでの、前記のPruefbauオフセットによる紙試料のパスの数が得られる。X軸(横座標)に、多様な結合剤粒度がプロットされている。図1によるグラフから、塗工液組成物の結合力が、粒度が増大すると共に低下することがわかる。こうして、例えば、80nmの粒度を有し、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル(SBAN)をベースとする結合剤を含有する塗工液組成物が、ピッキングが生じる前により高い数のパス(6回を上回るパス)を達成するのに対し、140nmの粒度を有する結合剤(SBAN)を有する塗工液組成物は、単に4回のパス(10s)を達成するに過ぎず、ついでピッキングが始まる。図1において、さらにまた、スチレン−ブタジエンをベースとする結合剤が含まれていた塗工液組成物のパスの数が得られる。100nm及び115nmの粒度で、ピッキングが生じる前に6回のパスが可能であったのに対し、130nmの粒度の場合に4.5回のパスのみが達成されることができるに過ぎなかった。
結合剤Aを有する処方物1を含有していた塗工液組成物の場合に、ピッキングはカーテンコーティング塗工された紙の場合に既に4回のパス(10秒値)で開始したのに対し、ブレード塗工された紙の場合に5回のパスが30秒で達成された。
【0085】
カーテンコーティングの場合に、130nmを下回る小さな粒度を有する結合剤が使用されることができる、それというのも、カーテンコーティング法の場合に、原紙への移行をまねき、ひいてはより劣悪な結合力及びより僅かな結合となる、圧力パルスが基材に作用を与えないからである。カーテンコーティング法の場合に欠けている圧力パルスに基づいて、塗工液組成物は原紙へ印刷されない。
【0086】
図2によるグラフからは、色濃度への結合剤の影響がわかる。
【0087】
Y軸(縦座標)には、120sの吸収時間後の色濃度がプロットされているのに対し、X軸(横座標)には使用される結合剤の粒度がプロットされている。図2によるグラフからは、120sの吸収時間後の色濃度は、140nmの粒度を有し、スチレンブタジエン−アクリロニトリル(SBAN)をベースとする結合剤を有する塗工液組成物の場合に、80nmの粒度を有する結合剤(SBAN)を有する塗工液組成物を用いて達成されることができる色濃度をかなり下回ったままであることが得られる。100nmもしくは130nmの粒度を有し、スチレン−ブタジエン(SB)をベースとする結合剤を含有する塗工液組成物の場合に、120s後に達成可能な色濃度は100nmの粒度を有する塗工液組成物については約0.3であるのに対し、130nmの粒度を有するSB結合剤を有する塗工液組成物は、これをかなり下回っている。
【0088】
図2によるグラフからは、80nmの粒度を有するSBAN結合剤が、参考試験による色濃度をかなり上回る極めて高い色濃度となり、かつ100nmの粒度を有するSB結合剤が同様に、参考試験において達成される色濃度を依然として上回る良好な色濃度となることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】粒度への結合力の依存性を示すグラフ。
【図2】定義された期間後の色濃度への結合剤の粒度の影響を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印画紙及び自己接着性ラベル紙を除く、印刷、包装及び筆記に適しており、一層及び/又は多層塗工された基材を製造するための塗工液組成物であって、かつ前記基材、特に原紙又は厚紙が1つ又はそれ以上の自由落下する液体カーテンで被覆されており、かつ前記液体カーテンが、結合剤を含有する被覆液体から形成されている、塗工液組成物において、
前記結合剤が、スチレン−ブタジエン−ラテックス結合剤、スチレン−アクリラート−ラテックス結合剤、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル−ラテックス結合剤、スチレン−無水マレイン酸−結合剤、スチレン−アクリラート−マレイン酸−無水物−結合剤を含む群から選択されており、かつ粒度≦130nmを含むことを特徴とする、塗工液組成物。
【請求項2】
スチレンブタジエン及びスチレンブタジエンアクリロニトリルを含有している結合剤系が、10%〜95%のゲル含量値を有している、請求項1記載の塗工液組成物。
【請求項3】
スチレンブタジエン及びスチレンブタジエンアクリロニトリルを含有している結合剤系が70〜90%のゲル含量値を有している、請求項2記載の塗工液組成物。
【請求項4】
有機又は無機の顔料を含有している、請求項1記載の塗工液組成物。
【請求項5】
1000000〜50000000の分子量Mwを有するポリアクリルアミドを含有している、請求項1記載の塗工液組成物。
【請求項6】
20mPas〜5,000mPas、特に好ましくは20mPas〜2,000mPas、特に好ましくは20〜1,300mPasのブルックフィールド粘度を有する、請求項1記載の塗工液組成物。
【請求項7】
塗工液組成物の塗布質量が、基材上の前記組成物の乾燥質量を基準として0.1〜50g/m2である、請求項1記載の塗工液組成物。
【請求項8】
1つ又は複数の顔料が、粘土、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、二酸化チタン、サチン白、合成ポリマー顔料、酸化亜鉛、硫酸バリウム、セッコウ、シリカ、アルミニウム、三水和物を含む群から選択されている、請求項4記載の塗工液組成物。
【請求項9】
結合剤が、スチレン−ブタジエン−ラテックス結合剤、スチレン−アクリラート−ラテックス結合剤、スチレン−ブタジエンアクリロニトリル−ラテックス結合剤、スチレン−無水マレイン酸−結合剤、スチレン−アクリラート無水マレイン酸−結合剤、多糖類、タンパク質、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、セルロース及びセルロース誘導体を含む群から選択されている、請求項1記載の塗工液組成物。
【請求項10】
カーテンコーティングの範囲内で塗布される塗工液組成物が、基材の印刷適性を改善し、拡散に対するバリヤー特性を有し、塗工される基材の光学的性質を改善し、並びにリリース特性又は接着特性のいずれかを有する、請求項1記載の塗工液組成物。
【請求項11】
カーテンコーティング塗工法により塗布される塗工液組成物が、エチレン−アクリル酸ろう、ポリエチレンポリエステルスチレン−ブタジエン−ラテックス結合剤、スチレン−アクリラート−ラテックス結合剤、スチレン−ブタジエンアルコールニトリル−ラテックス結合剤、スチレン−無水マレイン酸−結合剤、スチレン−アクリラート無水マレイン酸−結合剤、多糖類、タンパク質、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、セルロース及びセルロース誘導体、シリコーンをベースとする1つ又はそれ以上のポリマーを含有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の塗工液組成物。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれか1項に従って製造されている塗工液組成物を用いて製造される基材。
【請求項13】
カーテンコーティング塗布法により基材、原紙又は厚紙を被覆するための、請求項1から11までのいずれか1項記載の塗工液組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−513617(P2008−513617A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531691(P2007−531691)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【国際出願番号】PCT/EP2005/009980
【国際公開番号】WO2006/029883
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】