説明

付着物除去具及び付着物除去装置

【課題】搬送状態にある材料の振動に追従して材料表面の付着物を除去することができ、付着物の回収・再利用が行いやすく、構造が簡単である付着物除去具及び付着物除去装置を提供する。
【解決手段】付着物除去具20は、上記材料Wが接触して通る接触貫通穴21aが形成される又は形成された材料接触面部21と、上記材料Wが通る円形の貫通穴が形成された四角形状の固定用板部22と、上記材料接触面部21と上記固定用板部22とを連結する筒状連結部23と、を有して成る。上記付着物除去具20は、上記材料接触面部21と上記連結部22と上記固定用板部23とがゴム材にて一体成形されたものであり、上記材料接触面部21は弾性を有し、上記筒状連結部23は上記材料接触面部21を弾性支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、棒材などの材料の表面に付着した塵埃や液体などの付着物を除去する付着物除去具及び付着物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、棒材の表面に付着した塵埃や液体などの付着物を除去するために、上記棒材の断面形状と同寸法あるいは幾分小さい形状の貫通穴をゴム板に形成し、このゴム板を上記棒材の通過経路上に固定配置し、上記貫通穴に上記棒材を通す方法が採られている。また、空気噴射ノズルから噴出させた圧搾空気を上記材料の表面に吹きつけて付着物を除去する方法もある。更に、特許文献1は、材料のサイズ替えに迅速に対応できる付着物除去装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−184776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記ゴム板を固定配置して用いる技術では、このゴム板を通過する棒材の振動が当該ゴム板の引っ張りや圧縮を生じさせることになり、この振動に上記ゴム板が追従できずに上記貫通穴と上記棒材との間に隙間が断続的に発生して十分に付着物を除去できないことが生じる。また、上記圧搾空気を用いる方法では、付着物の回収・再利用が行いにくい。また、特許文献1の付着物除去装置は、その構造が複雑であり割高になる。
【0005】
この発明は、搬送状態にある材料の振動に追従して表面の付着物を除去することができ、付着物の回収・再利用が行いやすく、構造が簡単である付着物除去具及び付着物除去装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の付着物除去具は、上記の課題を解決するために、搬送状態にある材料の表面に付着した付着物を除去する付着物除去具であって、上記材料が接触して通る接触貫通穴が形成される又は形成された材料接触面部と、上記材料が通る貫通穴が形成された固定用板部と、上記材料接触面部と上記固定用板部とを連結する筒状連結部と、を有して成り、上記材料接触面部は弾性を有し、上記筒状連結部は上記材料接触面部を弾性支持することを特徴とする。
【0007】
上記構成であれば、上記筒状連結部は上記材料接触面部を弾性支持するので、上記材料接触面部を通過する材料の振動に上記材料接触面部が追従でき、当該材料接触面部の面内での引っ張りや圧縮は生じにくくなり、付着物を除去する能力が向上する。また、材料表面から除去された付着物は上記の筒状連結部内に一旦溜まるので付着物の回収・再利用が行いやすい。また、この付着物除去具は上記材料接触面部と上記筒状連結部と上記固定用板部とからなる簡単な構造を有するので価格を抑えることができる。
【0008】
上記の付着物除去具において、上記材料接触面部と上記連結部と上記固定用板部とがゴム材料にて一体成形されているのがよい。これによれば、ゴム材料の成形処理によって付着物除去具を得ることができ、更に価格を抑えることができる。
【0009】
上記の付着物除去具において、上記筒状連結部は円錐台形状を有しており、上記筒状連結部の内側の底面は、上記付着物を除去するように配置された状態で、上記材料接触面部の側から上記固定用板部に向かって下り勾配をなすのがよい。これによれば、上記付着物が上記の筒状連結部内に滞留してしまうのを防止できる。
【0010】
また、この発明の付着物除去装置は、上記のいずれかに記載の付着物除去具と、この付着物除去具における上記固定用板部を固定する固定部と、上記固定用板部の下方に位置し上記筒状連結部内を伝って落ちてくる付着物を受け止めて所定箇所に導く樋部と、を有することを特徴とする。
【0011】
上記構成であれば、上記付着物除去具の取り付けや取り外しが容易であるとともに、上記取付状態において上記樋部に付着物が導かれるので、この樋部を用いて適切に付着物の回収を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明であれば、上記材料接触面部を通過する材料の振動に上記材料接触面部が追従できるので、付着物を除去する能力が向上する。また、材料表面から除去された付着物は上記の筒状連結部内に一旦溜まるので付着物の回収・再利用が行いやすい。また、上記材料接触面部と上記筒状連結部と上記固定用板部とからなる簡単な構造を有するので低価格を実現できるなどの諸効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る付着物除去装置を示した正面図(一部断面図)である。
【図2】図1の付着物除去装置を材料搬送の上流側からみた側面図(一部断面図)である。
【図3】図1の付着物除去装置を材料搬送の下流側からみた側面図(一部断面図)である。
【図4】図1の付着物除去装置を棒材搬出ラインに設けた矯正機を示した正面図である。
【図5】図4に示した矯正機の平面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る付着物除去具を示した断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、この発明の実施形態に係る付着物除去具及び付着物除去装置を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る付着物除去具及び付着物除去装置は、下記の実施形態に示したものに限定されず、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0015】
図1、図2及び図3に示すように、付着物除去装置1には付着物除去具20が交換可能に設けられる。この付着物除去具20は、搬送状態にある材料W(丸棒、丸管、角棒、角管等)からその表面に付着した付着物(塵埃、潤滑油等)を除去する。具体的には、この付着物除去具20は、上記材料Wが接触して通る接触貫通穴21aが形成される又は形成された材料接触面部21と、上記材料接触面部21よりも材料Wの搬送方向(図1の矢印参照)の上流側に位置し中央部に上記材料Wが通る円形の貫通穴が形成された四角形状の固定用板部22と、上記材料接触面部21と上記固定用板部22とを連結する筒状連結部23と、を有して成る。
【0016】
上記の筒状連結部23は、その一端側(上記材料接触面部21の側)の直径よりも他端側(上記固定用板部22の円形の貫通穴の側)の直径の方が大きい円錐台形状を有している。これにより、この付着物除去具20が水平に取り付けられて付着物を除去する状態においては、上記円錐台形状を有する筒状連結部23内の底をなす箇所は、上記材料接触面部21の側から上記固定用板部22に向かって下り勾配をなす。
【0017】
上記の付着物除去具20は、上記材料接触面部21と上記連結部22と上記固定用板部23とがゴム材にて一体成形されたものである。このため、上記材料接触面部21は弾性を有し、上記筒状連結部23は上記材料接触面部21を弾性支持することになる。上記ゴム材としては、例えばニトリルゴム(NBR)を用いることができる。
【0018】
上記の付着物除去具20は、上記材料接触面部21に接触貫通穴21aが形成されていない状態で利用者に提供され、利用者側で上記材料接触面部21に上記材料Wの断面形状に対応した接触貫通穴21aを穴あけポンチを用いて形成するが、接触貫通穴21aを形成した状態で利用者に提供することも可能である。接触貫通穴21aは例えば材料Wが丸棒である場合には円形に形成されるが、その大きさは上記丸棒の直径と同寸か幾分(例えば1mm〜5mm程度)小さくされる。
【0019】
上記の付着物除去装置1は上記四角形状の固定用板部22を収容し固定する取付固定部2を有する。この取付固定部2は上記固定用板部22の厚みよりも広い隙間を設けて前側板2aと後側板2bとを配置している。上記の前側板2aには付着物除去具20の固定用板部22と同様に上記材料Wが通る円形の貫通穴2cが形成されている。また、上記の後側板2bには、上記付着物除去具20の筒状連結部23における大径側の部分(固定用板部22の側の部分)を上側から収容するU字状の切欠き2dが形成されているので、上記固定用板部22を前側板2aと後側板2bとの間に上から差し込むことができる。そして、上記固定用板部22と前側板2aとの間には押さえ板2が介在する。この押さえ板2eは上記固定用板部22と同様の円形の貫通穴を有した四角形状板である。上記前側板2aの四隅近傍には、螺子穴が前側板2aを貫通して形成されており、この螺子穴にそれぞれ蝶螺子3が螺合されている。これら蝶螺子3を締めていくと、この蝶螺子3の先端によって上記の押さえ板2eが押され、この押さえ板2eによって上記付着物除去具20の固定用板部22が後側板2bの側へと押される。すると、上記押さえ板2eと後側板2bとの間に上記固定用板部22がクランプされ、付着物除去具20の固定が行われたことになる。
【0020】
上記前側板2aの根元部には、材料Wの搬送方向上流側及び下流側に張り出す樋部4が設けられている。この樋部4は傾斜配置されており、この樋部4の傾斜最下端となる箇所の下面に落とし口4aが設けられている。
【0021】
上記前側板2aは昇降台5により支持されている。この昇降台5の中央部には貫通穴が形成されており、更に昇降台5の下面側であって上記貫通穴に一致する箇所に螺子穴部材5aが固定されている。この螺子穴部材5aに昇降用スクリュー6が螺合されている。この昇降用スクリュー6の略中央箇所に形成されている鍔部6aは、支持台7上に配置されているスラストベアリング8によって支持されている。そして、上記鍔部6a上には押さえ具9が配置されているため、上記昇降用スクリュー6の上下方向の移動が規制されている。上記の昇降用スクリュー6には上記昇降台5及びこれに支持される部材や付着物除去具20の荷重が加わるが、この荷重は上記鍔部6aから上記スラストベアリング8へと加わるので、上記昇降用スクリュー6を円滑に回動させることができる。また、昇降台5の下面にはガイド軸5b,5bが形成されており、これらガイド軸5b,5bは支持台7上に設けられたガイド筒7a,7aに嵌め込まれているので、上記昇降用スクリュー6を回転させても昇降台5は回らずに昇降することになる。
【0022】
上記昇降用スクリュー6の下側端には傘歯車6bが固定されている。この傘歯車6bは上記支持台7の下方に形成されている空間内に位置している。また、この空間内には傘歯車10が上記の傘歯車6bに歯合して設けられている。傘歯車10は水平に設けられた操作軸11の一端側に設けられており、この操作軸11の他端側にはハンドル12が設けられている。このハンドル12を操作することによって上記昇降用スクリュー6を回転させ、上記の昇降台5を昇降させて上記付着物除去具20の上下位置調節が行えることになる。また、ロックレバー13を操作することによって上記ハンドル12の回動をロックできるようになっている。そして、上記の付着物除去装置1のベース14に形成された貫通穴にボルト15を挿入し、このボルト15を取付箇所に形成されている螺子穴に螺合させることで付着物除去装置1の取り付けが行えることになる。
【0023】
図4及び図5は材料Wの曲がりを矯正する矯正機30における搬出ライン31上に上記の付着物除去装置1を配置した例を示しており、上記の付着物除去装置1は上記材料Wの表面に付着している潤滑油を除去・回収するのに用いられる。この付着物除去装置1における上記の樋部4は回収配管40に接続されている。この回収配管40及び別経路上の回収配管41はオイルパン42に接続されており、回収された潤滑油はこのオイルパン42に溜められる。また、回収配管43,44は、上記オイルパン42内の潤滑油をオイルタンク45へと導く。オイルタンク45内の潤滑油はポンプ46によってくみ上げられ、このくみ上げられた潤滑油は供給管47によって矯正機30における矯正ロール部へと導かれる。
【0024】
以上説明したように、上記付着物除去具20の筒状連結部23は上記材料接触面部21を弾性支持するので、上記材料接触面部21を通過する材料Wの振動に上記材料接触面部21が追従することができ、当該材料接触面部21の面内での引っ張りや圧縮は生じにくくなり、潤滑油を除去する能力が向上する。また、材料Wの表面から除去された潤滑油は上記の筒状連結部23内に一旦溜まるので、図4及び図5に示したように、潤滑油の回収・再利用する構成を簡単に実現できる。また、上記の付着物除去具20は上記材料接触面部21と上記筒状連結部23と上記固定用板部22とからなる簡単な構造を有する。また、ゴム材料の成形処理によって付着物除去具20を得ているので、価格を抑えることができる。更に、上記筒状連結部23は円錐台形状を有しており、潤滑油を除去する水平配置状態で上記筒状連結部23の内側の底は上記材料接触面部21の側から上記固定用板部22に向かって下り勾配をなすので、上記潤滑油が上記の筒状連結部23内に長く滞留してしまうのを防止できる。
【0025】
図6は、他の実施例の付着物除去具50を示した図である。この付着物除去具50は、上記材料Wが接触して通る接触貫通穴51aが形成される又は形成された材料接触面部51と、上記材料接触面部51よりも材料Wの搬送方向の上流側に位置し中央部に上記材料Wが通る円形の貫通穴が形成された四角形状の固定用板部52と、上記材料接触面部51と上記固定用板部52とを連結する円筒状の筒状連結部53と、を有して成る。
【0026】
上記の材料接触面部51は交換可能に設けられるゴム板から成る。このゴム板は上記筒状連結部53のフランジ部53aと挟み板54との間に挟まれており、ボルト55とナット56とによる締めつけで固定される。上記固定用板部52及び筒状連結部53は、樹脂や金属などの硬質の材料から成るが、これら固定用板部52と筒状連結部53とを連結する弾性連結部53bについてはバネやゴムなどから成り弾性を有している。この弾性連結部53bを有することで、上記筒状連結部53は上記材料接触面部51(ゴム板)を弾性支持することになる。このような構成の付着物除去具50においても、材料Wの振動に当該材料接触面部51(ゴム板)が追従でき、当該材料接触面部21(ゴム板)の面内での引っ張りや圧縮は生じにくくなり、潤滑油を除去する能力が向上する。また、材料接触面部51(ゴム板)の破れなども生じにくくなる。
【0027】
先述したゴム材からなる付着物除去具20はそれ全体が交換品となるが、上記付着物除去具50では上記材料接触面部51をなすゴム板だけを交換品とすることが可能である。このように、ゴム板だけを交換品とする場合、上記固定用板部52が上記付着物除去装置1の昇降台5に直に固定される構造を採用することもできる。
【0028】
また、以上の説明では付着物除去装置1を矯正機30に取り付けることを示したが、このような矯正機30に用いることに限るものではなく、棒材や管材などを扱う他の機械において用いることが可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 付着物除去装置
2 取付固定部
3 蝶螺子
4 樋部
5 昇降台
7 支持台
20 付着物除去具
21 材料接触面部
21a 接触貫通穴
22 固定用板部
23 筒状連結部
30 矯正機
40 回収配管
42 オイルパン
45 オイルタンク
47 供給管
50 付着物除去具
51 材料接触面部
51a 接触貫通穴
52 固定用板部
53 筒状連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送状態にある材料の表面に付着した付着物を除去する付着物除去具であって、上記材料が接触して通る接触貫通穴が形成される又は形成された材料接触面部と、上記材料が通る貫通穴が形成された固定用板部と、上記材料接触面部と上記固定用板部とを連結する筒状連結部と、を有して成り、上記材料接触面部は弾性を有し、上記筒状連結部は上記材料接触面部を弾性支持することを特徴とする付着物除去具。
【請求項2】
請求項1に記載の付着物除去具において、上記材料接触面部と上記連結部と上記固定用板部とがゴム材料にて一体成形されていることを特徴とする付着物除去具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の付着物除去具において、上記筒状連結部は円錐台形状を有しており、上記筒状連結部の内側の底面は、上記付着物を除去するように配置された状態で、上記材料接触面部の側から上記固定用板部に向かって下り勾配をなすことを特徴とする付着物除去具。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の付着物除去具と、この付着物除去具における上記固定用板部を固定する固定部と、上記固定用板部の下方に位置し上記筒状連結部内を伝って落ちてくる付着物を受け止めて所定箇所に導く樋部と、を有することを特徴とする付着物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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