説明

付着生物調査装置及び付着生物調査方法

【課題】 海水利用プラントの取水路や管路内への付着生物の流入状況を簡単に調査することができる付着生物調査装置及び付着生物調査方法を提供する。
【解決手段】 付着生物調査装置(8)は、海水中で岩肌や壁面等に付着するタテジマフジツボ(71)の生息状況を調査するための装置である。タテジマフジツボ(71)が存在し得る海水との接触面を有する透明なガラス板(25)と、接触面をその反対側から撮像し、その画像を生成するCCDカメラ(15)と、画像上のタテジマフジツボ(71)を数えて出力する付着生物計数手段(16)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
水中で岩肌や壁面等に付着して生息するフジツボやイガイ等の付着生物の生息状況を調査する技術に関する。更に詳細には、水が流れる取水路や管路内への付着生物の流入量を調査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、火力発電所や原子力発電所には、タービンを駆動するのに使用した蒸気を冷やすため、蒸気と海水との間で熱交換を行わせる復水器が備えられている。このように、復水器は海水を使用するため、復水器へ海水を送る取水路や配管の内面には、通常は海水中で岩肌や壁面等に付着して生息するフジツボやイガイ等の生物(以下、「付着生物」という。)が取水口から流入して付着する。これらの付着生物は、幼生の段階で取水路に流入し、離脱と付着を繰り返しながら水中を浮遊して、やがて取水路や配管内に定着して成体になる。
【0003】
一般に、復水器用の取水路や配管は、付着生物が付着することを想定し、付着代と呼ばれるあそびを持たせて大きく作られているが、取水路や配管の内面に付着した付着生物を放置すると、水路や配管が詰まり、プラントを稼動できなくなったり、定期検査時の洗浄作業の際に大量の廃棄物が出ることになる。
【0004】
従来、付着生物への対策としては、
(1)化学薬品(例えば、塩素の水溶液、塩酸、過酸化水素製剤、硫酸第一鉄、銅イオン等)の注入、
(2)清掃ロボットによる清掃、
(3)スポンジ状の球体を配管内に流すスポンジボール洗浄、
(4)付着を抑制する塗料(例えば、防汚塗料など)の配管内面への塗布、
(5)人手による清掃
等が行われている。上記の各種対策のうち、(1)化学薬品の注入、(2)清掃ロボットによる清掃、及び(3)スポンジボール洗浄については、プラント稼動中(通水中)に行うことができるという利点があり、発電所等のように海水を利用するプラント(以下「海水利用プラント」という。)の多くで行われている。
【0005】
付着生物の成長過程をみると、フジツボは、親の体内から孵出した状態では、水中を浮遊するいわゆるノープリウス幼生であり、6回脱皮した後に、岩肌等に付着するキプリス幼生へと変態する。キプリス幼生は、岩肌等の付着面との相性を探りながら付着と離脱を繰り返し、やがて定着する場所を決めて固着して成体になる。また、イガイの一種であるムラサキイガイは、卵から孵化してトロコフォア幼生(クロコフォラ幼生ともいう)となり、ベリジャー幼生、D型幼生、ウンボ期幼生の順に変態し、岩肌等に付着するペディベリジャー幼生になる。ペディベリジャー幼生は、岩肌等に付着した状態で稚貝となり、やがて成体になる。
【0006】
上記のとおり、付着生物は、幼生の段階で岩肌や壁面等に付着することがわかっており、発電所等の海水利用プラントでは、上記各種対策を効果的に行うため、取水した海水における付着生物の流入状況を調べ、前述の各種対策を行うか否かを判断しているところもある。
【0007】
従来、前述の各種対策を行うべきか否かの判断は、プランクトン及びその他の生物を捕捉可能なプランクトンネットで所定量の海水をろ過し、この際捕捉された付着生物の個体数と通水した海水の量とに基づいて行われる。或いは、励起光(例えば、紫外線)を照射すると体内の特定の部分が蛍光するフジツボのキプリス幼生の特性を利用し、下記特許文献1のように、所定量の海水から採取した各種フジツボのキプリス幼生に対して励起光(例えば、紫外線)を照射して得た各個体の蛍光分布パターンを、各種固有の蛍光分布パターンと比較してフジツボの種を特定し、単位容積の海水に含まれるその種の個体数に基づいて判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−304796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記文献の技術は、200以上あるフジツボの種のうち捕捉した任意のフジツボの種を特定できる高度な技術であるが、海水利用プラントでは、前述の各種対策を行う時期を判断するためには、付着生物の種まで特定する必要がない場合もある。即ち、海水利用プラントでは、取水路や配管の内面に付着する全ての付着生物をひとまとめにして、プラントの操業に支障を来たす生物としてその流入状況を把握できれば、対策の必要性を判断できる。そこで、多くの海水利用プラントでは、上記のような高度な知識や技術を要することなく、取水路や管路内への付着生物の流入状況を調査できる簡易な方法が望ましい。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑み、取水路や管路内への付着生物の流入状況を簡単に調査することができる付着生物調査装置及び付着生物調査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の付着生物調査装置は、水中で岩肌や壁面等に付着する付着生物の生息状況を調査するための装置であって、前記付着生物が存在し得る水との接触面を有する透明な観察部と、前記接触面をその反対側から撮像し、その画像を生成する撮像手段と、前記画像上の付着生物を数えて出力する付着生物計数手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の実施形態では、前記付着生物計数手段は、前記画像上の付着生物の色とその他の部分の色との違いに基づいて、該付着生物を特定して数える。或いは、前記付着生物計数手段は、前記付着生物を数えるとともに又はこれに代えて、前記画像上の付着生物の色とその他の部分の色との違いに基づいて該付着生物を特定し、前記画像に占める該付着生物の割合を求めて出力する。
【0013】
本発明の別の実施形態では、前記観察部は、前記水の導入部及び排出部を備えた容器の一部である。
【0014】
前記付着生物としては、フジツボ又はイガイを調査対象にすることができる。
【0015】
前記水としては、発電所その他の水を利用するプラントで取水された水を調査することができる。この場合、前記画像上の付着生物の数又は前記画像に占める付着生物の割合に基づいて、前記水が流れる経路に対し、前記付着生物の除去又は付着防止のための対策を行うか否かを判別する判定部を備えることができる。
【0016】
本発明の付着生物調査方法は、水中で岩肌や壁面等に付着する付着生物の生息状況を調査するための方法であって、前記付着生物が存在し得る水と透明な観察部の一つの面を接触させ、その面を反対側から見た画像を生成し、該画像上の付着生物を数えることを特徴とする。
【0017】
本発明の実施形態では、前記付着生物の数は、前記画像上の付着生物の色とその他の部分の色との違いに基づいて該付着生物を特定して求める。或いは、前記付着生物を数えるとともに又はこれに代えて、前記画像上の付着生物の色とその他の部分の色との違いに基づいて該付着生物を特定し、前記画像に占める該付着生物の割合を求める。
【発明の効果】
【0018】
本発明の付着生物調査装置によれば、画像上の付着生物を自動的に数えて出力することができるため、付着生物の生息状況(流入状況や付着状況など)を簡単に調べることができる。付着生物の数は、画像上の付着生物の色とその他の部分の色との違いに基づいて、付着生物を特定して求めることができる。この場合、例えば、画像の二値化処理等の一般的な画像処理技術を利用することで付着生物を特定することができる。更に、画像に占める付着生物の割合を求めることにより、付着生物の数を求める場合と同様に、付着生物の生息状況を調査することができる。
【0019】
付着生物が存在し得る水の導入部及び排出部を備えた容器の一部を観察部にすることにより、容器の一方の面にのみ付着生物を付着させることができ、観察部をその面の反対側から見た場合、付着した付着生物の底部(白色の部分)が一層見え易くなる。また、地面や作業台等の適宜の場所に容器を置いた状態で水を導入することができるため、観察部自体を手で保持する等の手間が要らず、調査を行う上で便宜である。
【0020】
また、フジツボ又はイガイの生息状況を調査することができるため、プランクトンネットを用いた従来の煩雑な調査方法に比べて格段に簡単な方法で調査することができる。この場合、発電所その他の水を利用するプラントで取水された水を調査することにより、この水が流れる経路における付着生物の生息状況(例えば、流入状況や付着状況など)を想定することができる。更に、取水された水が流れる経路に対し、付着生物の除去又は付着防止のための対策を行うか否かを判断することにより、各種対策を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例の付着生物調査方法を実施するための付着生物調査システムを示す図。
【図2】実施例の付着生物観察容器の斜視図。
【図3】図1のA−A線断面図。
【図4】付着生物観察容器及びCCDカメラの配置構成を示す図。
【図5】付着生物調査装置の構成と、付着生物調査装置内の信号の流れを示す図。
【図6】付着生物調査方法のフローチャート。
【図7】付着生物計数処理のフローチャート。
【図8】CCDカメラで撮影した付着生物観察容器のガラス板における付着生物の付着状況を示す図。
【図9】濃淡ヒストグラムと二値化処理の基準となる閾値との関係を示す図。
【図10】図8の画像を二値化処理した状態を示す図。
【図11】画像上で、付着生物観察容器を表す画素を背景化し、計数対象物である付着生物を表す領域を特定した状態を示す図。
【図12】収縮処理及び膨張処理の方法を示す図。
【図13】撮像手段にイメージスキャナを採用した状態を示す図。
【図14】イメージスキャナを付着生物観察容器の上面に接触させた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、実施例の付着生物調査方法を実施するための付着生物調査システム1を示す。
【0023】
付着生物調査システム1は、海水を利用するプラント(例えば、発電所)で取水した海水中における付着生物の生息状況(流入状況)を調査するため、例えば、取水した海水を海水利用設備(例えば、復水器)へ送る復水系統3から調査用系統4を分岐し、この調査用系統4上に設けることができる。
【0024】
具体的には、付着生物調査システム1は、
調査用系統4上に設けられ、透明な観察部を有する中空容器から成り、この容器内に導入した海水と観察部の一つの面が接触することにより、その面における付着生物の付着状況を観察部を通して反対側から観察することができる付着生物観察容器5と、
調査用系統4上で付着生物観察容器5と並列に接続され、付着生物観察容器5の内面に付着した付着生物を除去するため、付着生物観察容器5内に塩酸溶液(例えば、塩酸濃度30%)を循環させる洗浄液循環手段7と
を備えている。
【0025】
洗浄液循環手段7は、
塩酸溶液を貯留する洗浄液貯留タンク10と、
塩酸溶液を送り出すポンプ11と
で構成されている。
【0026】
また、調査用系統4には、経路を開閉する複数のバルブ13a,13b,13c,13dが設けられており、例えば、洗浄液貯留タンク10の直前及び直後に設けたバルブ13b,13cを閉じることにより、復水系統3側から分岐した海水が付着生物観察容器5内を流れて排出される。これとは逆に、バルブ13a,13dを閉じることにより、復水系統3側からの海水は遮断されるとともに、洗浄液貯留タンク10の前後のバルブ13b,13cを開いてポンプ11を作動させれば、付着生物観察容器5と洗浄液貯留タンク10との間を塩酸溶液が循環する。
【0027】
更に、付着生物調査システム1は、
付着生物観察容器5を一構成要素とし、付着生物観察容器5の内面(具体的には、観察部の一つの面)に付着した付着生物の数等のデータを求め、復水系統3において付着生物の除去のため又は付着を防止するための対策を講じる必要があるか否かを判別したり、その判別結果を画像又は音声で提示する付着生物調査装置8を備えている。
【0028】
具体的には、付着生物調査装置8は、
付着生物観察容器5のほかに、
付着生物観察容器5の海水との接触面をその反対側(外側)から撮像し、その画像を生成する撮像手段としてのCCDカメラ15と、
その画像上の付着生物の数又は当該画像に占める付着生物の割合等のデータを求め、そのデータに基づいて、復水系統3において付着生物の除去又は付着防止のための対策を講じるべきか否かを判別、上記データ及び判別結果を出力する付着生物計数手段16と、
付着生物計数手段16から出力された現在或いは過去のデータや判別結果を、画像又は音声で提示可能な出力部(例えば、モニタやスピーカなど)17と
で構成される。
【0029】
CCDカメラは、入力された光の明暗に比例した電流を発生する電荷結合素子(CCD[Charge-Coupled Device]と呼ばれる素子)を受光部として備えた撮像手段である。
【0030】
図2は、付着生物観察容器5の斜視図で、図3は、付着生物観察容器5のA−A線断面図である。
【0031】
付着生物観察容器5は、海水中で岩肌や壁面等に付着するフジツボやイガイ等の付着生物の生息状況を調査するための容器であり、透明な観察部の一方の面と海水を接触させることにより付着生物を付着させ、その面の反対側から付着状況を観察できるようになっている。
【0032】
具体的には、付着生物観察容器5は、
上記透明な観察部を少なくとも一部に含む構成であればよいが、図示の例では全体的に透明に作られた容器本体20と、
容器本体20内に付着生物を含む海水を導入する導入部22と、
導入部22から容器本体20内に導入された海水を容器本体20外へ排出する排出部23と
で構成することができる。
【0033】
容器本体20は、複数のアクリル板24を箱形に組み合わせて作られており、全体的に透明になっている。また、容器本体20の上面に位置するアクリル板24は、中央部をくり貫いて矩形環状に形成され、観察部を成す透明なガラス板25とともに容易に取り外しできるようにネジ27で固定されている。これにより、容器本体20の上面を成す部分は、観察部として一層透明度が高められている。観察部としてのガラス板25の一方の面、即ち容器本体20の内側に現れる面に付着生物が付着すれば、ガラス板25を通して容器本体20の外側から付着状況を観察することができる。
【0034】
更に、容器本体20には、導入部22から海水を導入したとき、容器本体20の内面に一層多くの付着生物を付着させるため、次のような処理が施されている。
【0035】
まず、容器本体20の観察部を成すガラス板25の一方の面(容器本体20の内側に現れる面)には、容器本体20内を流れる海水の方向に略垂直な向きでアクリル樹脂等で作られた細長い板状部材29を複数取り付ける(例えば、接着で)ことにより又は一体形成により、凹凸がつけられている。また、図3に示すように、ガラス板25と板状部材29によって作られる凹凸のうち、特に凹部には、付着生物(例えば、フジツボ)をすり潰して作ったペースト30が塗られている。
【0036】
容器本体20のガラス板25の一方の面に上記の処理を施すことにより、付着生物を含む海水を所定時間(例えば、1時間)導入したとき、上記の処理を施さない場合と比較して、処理を施した部位に付着する付着生物の個体数が格段に増加(例えば、0〜2匹から数十匹に増加)する。このように、格段に多くの付着生物を付着させることにより、導入した海水中における付着生物の生息状況(付着生物の個体数やその継時変化など)を確実に把握することができる。
【0037】
上記のように容器本体20のガラス板25に凹凸をつけた場合に、付着する付着生物の個体数が増加する理由としては、例えば、導入部22から導入される海水の一部が、各板状部材29の間にできる凹部で付着生物とともに滞留することにより、付着生物の幼生が付着に要する時間を充分に確保できたことが挙げられる。
【0038】
また、防除対象となる付着生物で作ったペースト13をガラス板8に塗った場合に、付着する付着生物の個体数が増加する理由としては、次のことが考えられる。付着生物は、基盤に固着して生活することから、容易に生息場所を移動できないため、周囲に同じ種の付着生物が存在しない場所に付着すると、繁殖行動を行うことができないおそれがある。つまり、付着生物にとっては、幼生の段階での付着場所の選定は死活問題といえる。また、幼生と同じ種の成体が付着している場所は、いわば生き残り実績のある場所であり、将来繁殖行動を行う相手が近くに存在するという意味でも好適な場所だといえる。更に、フジツボ類の場合、成体が同じ種の幼生の付着を誘引する物質を分泌することが知られており、例えば、特開平8−81496号公報では、タテジマフジツボ成体が分泌する幼生付着誘引物質を特定している。以上より、調査の際に付着生物を付着させたい場所であるガラス板25の裏面側にペースト30を塗ることにより、容器本体20内を流れる付着生物幼生には、同種付着生物成体の近くに付着しようとする本能が働くと考えられる。
【0039】
また、導入部22と排出部23は、いずれも容器本体20に接続される円筒形の管であり、互いに対向するように容器本体20の両側にそれぞれ取り付けられている。更に、導入部22と排出部23のそれぞれの端部には、図3に示すように、外周に沿って環状又は螺旋状の溝31が設けられている。これにより、導入部22と排出部23に、これらの外径より内径の若干小さい樹脂(例えば、ゴムや塩化ビニールなど)等で作られた管33,34をそれぞれ嵌め込むと、導入部22と管33、及び排出部23と管34が、互いに簡単に抜けることなく一体に連結される。
【0040】
図4は、付着生物観察容器5及び撮像手段としてのCCDカメラ15の配置構成を示す。
【0041】
実施例では、付着生物観察容器5をシステム内に設置するときは、上面を成す部分を開口させた箱37内に容器本体20を置き、箱37の側面(図では左右の面)に設けた孔39に箱37の外側から管33,34を通して導入部22及び排出部23に嵌合させる。また、CCDカメラ15は、箱37の背面(図では後方の面)に取り付けたカメラ保持具40により、容器本体20の上方で保持し、CCDカメラ15の上部に取り付けたケーブル41を付着生物計数手段16(図1)に接続しておく。
【0042】
箱37は、容器本体20が入る大きさで作られており、内面が濃色(例えば、黒色)に塗装されている。箱37の内面を濃色に塗装することにより、容器本体20のガラス板25に付着した付着生物の淡色(例えば、白色)と背景の濃色との濃淡値の差が際立ち、後述する付着生物の特定が容易になる。
【0043】
カメラ保持具40は、
金属や樹脂等の塑性材料で作られたポール43と、
箱37の内面(図では後方の面)に上下に取り付けられ、ポール43の一端を箱37に固定するポール固定部材44と、
ポール43に嵌合し、ポール43に沿って移動可能に固定されるとともに、CCDカメラ15を固定するカメラ固定部材45と
で構成される。
【0044】
ポール固定部材44は、ボルト締め又は接着等の適宜の方法で箱37に取り付けられる。また、ポール固定部材44は、ポール43が入る大きさの孔47が設けられており、この孔47にポール43を挿入した状態で側方からネジ又はボルト48を捻じ込むことにより、ポール43を箱47に一体に固定する。
【0045】
カメラ固定部材45は、両端に孔50a,50bが設けられており、一方の孔50aにCCDカメラ15を差し込んだ状態で側方からネジ又はボルト51を捻じ込むことによりCCDカメラ15を固定するとともに、他方の孔50bにポール43を差し込んだ状態で側方から調整ネジ53を捻じ込むことによりポール43の適宜の位置に固定される。調整ネジ53は、把持して容易に回すことができるように、樹脂等で作られた頭部を有している。
【0046】
図5は、付着生物計数手段16の構成と、付着生物計数手段16内の信号の流れを示す。
【0047】
付着生物計数手段16は、
CCDカメラ15が所定の時間間隔で作動するように制御する撮像制御部55と、
CCDカメラ15から送られるモノクロ画像の明るさを均一に補正するシェーディング補正部56と、
上記画像を構成する各画素の色の濃淡を表す値(以下「濃淡値」という。)及び予め決めた濃淡の閾値に基づいて、各画素の色を白又は黒に変換し、上記画像を白色(濃淡値が「0」)及び黒色(濃淡値が「1」)の二値で表す二値化処理部57と、
二値化した画像において、一画素だけ孤立して存在する白色又は黒色の画素(ノイズ)を黒色又は白色に換えることにより、ノイズを除去するノイズ除去部58と、
画像上に表れる付着生物観察容器5を背景化する、即ち付着生物観察容器5を表す画素の色(白色)を、付着生物を表す画素と異なる色(背景と同じ黒色)に変換(以下「フィルタリング処理」という)するフィルタ適用部59と、
画像上で付着生物を表す領域の輪郭を成す画素を除去して当該領域を一回り小さくする収縮処理を施した後に、収縮された領域に対し収縮処理とは逆の処理を施して当該領域を一回り大きくする膨張処理を施すことにより、互いに接触して一塊に見えていた複数の付着生物(具体的には、付着生物を表す領域)を分離し、それぞれの付着生物を特定する収縮膨張処理部60と、
各付着生物を表す一塊の領域ごとに番号を付けるラベリング処理を行うことにより、画像上に表れた付着生物の個体数を求める計数部61と、
計数部61が求めた個体数を予め決めた判定基準に照らし合わせることにより、復水系統3(図1)において付着生物の除去のため又は付着を防止するための対策を講じる必要があるか否かを判別する判定部63と、
計数部61が求めた個体数、判定部63による判定結果、及び判定基準等のデータを格納するデータ格納部65と、
データ格納部65内にある付着生物の個体数等のデータの統計又は継時変化のグラフ等の加工情報を求めるデータ加工部67と、
出力部17へ出力する情報の内容を選択し又は編集したり、判定基準を編集する等の操作を行うことができる入力部(例えば、マウスとキーボードなど)69と
で構成されている。
【0048】
フィルタ適用部59がフィルタリング処理に使用するフィルタ、即ち画像上に表れる付着生物観察容器5と同じ形状の黒色の画素領域は、例えば、付着生物観察容器5を箱37内に設置した当初の状態をCCDカメラ15で撮像し、その画像を出力部17(モニタ)に表示させ、画像上で付着生物観察容器5を表す各画素の位置をフィルタ適用部59に記憶させることで作られる。
【0049】
出力部17は、計数部61で求めた付着生物の個体数及び判定部63による判定結果を画像又は音声で提示するとともに、データ加工部67で求めた加工情報を提示(例えば、グラフを表示)する。
【0050】
図6は、実施例の付着生物調査方法のフローチャートである。
【0051】
復水系統3を流れる海水中における付着生物の流入状況を調べるには、まず、調査用系統4の最も上流側に設けたバルブ13aと、最も下流側に設けたバルブ13dとを開き、付着生物観察容器5内に海水を導入し(ステップ[以下、STと表記する]1)、付着生物観察容器5の内面に付着した付着生物の固体数を数える。具体的には、付着生物の固体数は、付着生物調査装置8が付着生物計数処理(ST2)を行うことにより求められる。
【0052】
図7は、付着生物計数処理のフローチャートである。
【0053】
まず、付着生物計数手段16の撮像制御部55は、所定の調査時期に至ったとき(ST11の判別が“YES”)、CCDカメラ15を制御して、付着生物観察容器5の海水との接触面をその反対側から撮像させ、その画像を生成させる、即ちガラス板25の一方の面における付着生物の付着状況を撮像する(ST12)。撮像制御部55が判別する調査時期は、例えば、付着生物計数手段16の電源を入れた直後又はその後所定の時間(例えば、1時間)が経過した時、及び直前の調査時期から所定の時間(例えば、1時間)が経過した時であり、これら所定の時間は、付着生物調査システム1の管理者(例えば、発電所)の都合や、付着生物の流入状況等の事情に応じて適宜決める(例えば、付着生物の流入数が多い場合は調査間隔を短くする)ことができる。
【0054】
図8は、CCDカメラ15で撮影した付着生物観察容器5のガラス板25における付着生物(例えば、タテジマフジツボ)71の付着状況を示す。CCDカメラ15は、容器本体20の上面を成すガラス板25の海水との接触面(厳密には、容器本体20の内側に現れる面)に焦点を合わせておくことにより、当該接触面に付着する付着生物を鮮明に撮像することができる。また、図示の例では、容器本体20、導入部22及び排出部23を淡色(白色)で表したが、これらは、そもそも透明に作られているため、光(日光又は照明を使用する場合にはその光)の当たり具合によっては、背景(箱37の内面)の色が影響して濃色(例えば、黒又は濃い灰色)で表れることもある。
【0055】
また、付着生物観察容器5のガラス板25の海水との接触面には、前述のとおり付着生物で作ったペースト30が塗られているため(図3)、画像上では内側の様子が若干見え難くなっているが、付着生物71はガラス板25に直接付着すること、及び付着生物71が白色であることから、図のように、付着生物71の底部が画像上に鮮明に現れる。更に、ペースト30を濃色(例えば、黒色)に着色しておけば、付着生物71の白色が際立ち、画像上で付着生物71の付着状況を一層確実に把握することができる。
【0056】
次に、シェーディング補正部56は、CCDカメラ15から送られるモノクロ画像についてシェーディング補正を行い(ST13)、明るさの不均一さを補正する。
【0057】
二値化処理部57は、シェーディング補正された画像について二値化処理を施す(ST14)。具体的には、上記画像を構成する各画素の個数(「出現頻度」とも言う)及びその色の濃淡値が、図9のような濃淡ヒストグラムで表される場合、この濃淡ヒストグラムに現れる谷の部分の濃淡値を二値化処理の基準(閾値)に決めることができる。そして、図10に示すように、閾値より高い濃淡値を示す画素は濃色(濃淡値が「1」の黒色)で表され、閾値より低い濃淡値を示す画素は淡色(濃淡値が「0」の白色)で表されることになり、計数対象物(付着生物71)及び付着生物観察容器5と背景とを分離することができる。また、例えば、閾値と同じ濃淡値を示す画素の取り扱いについては、濃色又は淡色のいずれか一方に変換すると決めておけばよい。尚、図示の例では、本来なら黒色で表れる部分(背景)を説明の都合上灰色で示している。
【0058】
そして、ノイズ除去部58が、二値化処理された画像のノイズを除去した後(ST15)、フィルタ適用部59は、画像上に表れる付着生物観察容器5と同じ形状の画素から成るフィルタを適用することにより、図11に示すように、画像上に表れる付着生物観察容器5を表す画素を背景化(黒色に変換)する(ST16)。
【0059】
この後、収縮膨張処理部60は、フィルタ適用後の画像に収縮処理(ST17)及び膨張処理(ST18)を施す。具体的には、まず、画像(図12(a))上で付着生物71を表す各領域75a,75bの輪郭画素を除去することにより、図12(b)のように一回り小さい領域76a,76bを求める(収縮処理)。一般に、コンピュータで処理される平面画像は2次元座標で表され、画像f(x,y)を収縮処理した画像g(x,y)は、次式により求めることができる。
【0060】
【数1】

【0061】
式1において、「0」は白画素であり、「1」は黒画素である。また、4近傍とは、任意の一の画素に着目した場合において、その上下左右にある4つの画素のことであり、8近傍とは、任意の一の画素に着目した場合において、その周囲にある8つの画素のことである。
【0062】
そして、収縮膨張処理部60は、収縮処理された画像(図12(b))に対し収縮処理とは逆の処理を施すことにより、図12(c)のように一回り大きい領域を求める(膨張処理)。具体的には、収縮処理後の画像g(x,y)を膨張処理した画像h(x,y)は、次式により求めることができる。
【0063】
【数2】

【0064】
上記収縮処理及び膨張処理を行うことにより、図12(a)で互いに接触して一塊に見えていた2つの白画素領域75a,75b(具体的には、付着生物を表す領域)は、図12(c)のように分離されて別個の領域77a,77bになる。
【0065】
画像に対し収縮処理及び膨張処理を施した後、計数部61は、付着生物71の個体数を数え(ST19)、求めた個体数及び当該調査時刻等のデータをデータ格納部65に格納する。具体的には、画像(図12(c))上に表れる白画素(付着生物71を表す画素)の領域77a,77bごとに番号(ラベル)を付けることにより、付着生物観察容器5のガラス板25に付着した付着生物71の個体数を求めることができる。
【0066】
再び図6のフローチャートに戻り、判定部63は、計数部61が求めた付着生物71の個体数に基づいて、復水系統3に対し、付着生物71の除去のため又は付着を防止するための対策を行うか否かを判別する(ST3)。
【0067】
この対策には、例えば、
(1)化学薬品(例えば、塩素の水溶液、塩酸、過酸化水素製剤、硫酸第一鉄、銅イオン等)の注入、
(2)清掃ロボットによる清掃、
(3)スポンジ状の球体を配管内に流すスポンジボール洗浄、
(4)付着生物の付着を抑制する塗料(例えば、有機スズ系塗料)の配管内面への塗布、
(5)人手による清掃
などがあり、上記(1)〜(3)については、プラント稼動中でも行うことができる。
【0068】
対策の必要性を判断する基準の例を以下に示す。
【0069】
最初の付着生物係数処理(ST2)で求めた付着生物71の個体数を基準にすることができる。この場合、単に付着生物71の個体数を見ただけでは対策の必要性を判断できないので、過去の実績や実験結果(具体的には、付着生物観察容器5における所定の時間経過後の付着生物71の個体数と、その後復水系統3内に実際に付着した個体数との関係等)も考慮するのがよい。或いは、後述のように、付着生物計数処理(ST2)は、繰り返し行われるため、各調査(ST2)時期に求めた付着生物71の個体数の差や変化率等も基準とすることができる。また、各プラントにおける諸事情を勘案して独自の判断基準を定めておき、これに従って判断することもできる。これらの基準は、付着生物71の個体数と対策の必要性とを関連付けたテーブルで表すことができ、データ格納部65に格納しておく。
【0070】
判定部63は、計数部61が付着生物71の個体数を求めたとき、これをデータ格納部65に格納されたテーブルと照合することにより、対策の必要性を判別することができる。また、判定部63は、判定結果をデータ格納部65へ格納するとともに、出力部17へ送る。出力部17は、判定部63から送られる判定結果を画像又は音声で提示する。
【0071】
そして、付着生物調査システム1を設置したプラントでは、判別(ST3)の結果において、対策の必要性が認められた場合には、前述の(1)〜(5)の適宜の対策を行うことができるとともに、今後の対策時期を検討することができる。
【0072】
対策の必要性の判別(ST3)を行った後、付着生物観察容器5の内部を洗浄するか否かを判別する(ST4)。洗浄が必要な場合としては、付着生物観察容器5のガラス板25が付着生物71で完全に覆われてしまった場合や、ガラス板25にその他の生物(例えば、ヒドロ虫など)が付着して視認性が悪化した場合などである。このほかにも、洗浄を行う時間間隔を予め決めておいてもよい。
【0073】
付着生物観察容器5の洗浄方法について説明する。まず、ST4の判別が“YES”、即ち付着生物観察容器5の内部を洗浄する場合には、調査用系統4の上流側のバルブ13aを閉めて海水の導入を停止し(ST5)、下流側のバルブ13dも閉めておく。そして、洗浄液循環手段7の前後に設けたバルブ13b,13cを開けた後、ポンプ11を作動させ、付着生物観察容器5と洗浄液貯留タンク10との間で塩酸溶液を循環させることにより、付着生物観察容器5の内部を洗浄する(ST6)。洗浄時間は特に決まっておらず、容器本体20の内面に付着した付着生物(タテジマフジツボなど)71及びその他の生物等が完全に除去されるまで洗浄すればよい。
【0074】
付着生物観察容器5の内部を洗浄した後、又は洗浄しなかった場合(ST4の判別結果が“NO”の場合)は、調査を終了するか否かを判別(ST7)し、終了する場合には、調査用系統4側への海水の流入を遮断するため、バルブ13aをしっかりと閉じておく。一方、調査を継続する場合には、海水の導入を開始又は継続し(ST1)、上記ST2〜ST7の手順を繰り返す。
【0075】
以上、実施例の付着生物調査方法について説明したが、前述と同じ方法で画像上に現れる付着生物71の淡色とその他の部分(背景)の濃色との違いに基づいて付着生物71を特定し(ST14〜ST18)、画像(図11)に占める付着生物71の割合を求め、この割合から復水系統3における付着生物の対策の必要性を判別することができる。具体的には、付着生物計数手段16の計数部61は、画像(図11)上で付着生物71を表す領域(例えば、図12(c)における領域77a,77b)を構成する白画素の個数を数えることにより、付着生物を表す各領域の面積の和を求め、画像全体(図11)に占める付着生物71(具体的には、付着生物を表す領域の面積)の割合を求めることができる。そして、判定部63は、予めデータ格納部65に格納したおいた基準と計数部61が求めた割合とに基づいて、復水系統3における付着生物の対策の必要性を判別する。この場合、対策の必要性の判別に用いる基準は、前述の場合と同様に、テーブル化してデータ格納部65に格納しておくのがよい。尚、画像に占める付着生物71の割合を求める場合、ガラス板25に付着した付着生物71の個体数を求める場合と異なり、図12(a)のように画像上では一塊として認識されうる複数の領域を分離させる必要がないため、収縮膨張処理部60による収縮処理(ST17)及び膨張処理(ST18)を省略することもできる。
【0076】
また、調査用系統4は、復水系統3から分岐させるのではなく、海から直接取水してもよい。この場合、任意の海域で取水するよりも、できるだけ復水系統3の取水口の近くで取水するのがよい。
【0077】
付着生物観察容器5の容器本体20(図2及び図3)の上面は、観察部としての透明なガラス板25で作られているが、このガラス板25を透明なアクリル板24に代えることも可能である。また、実施例では、容器本体20の上面を成すガラス板25が観察部を成しているが、容器本体20の側面や底面等のその他の透明な部分を観察部にすることも可能である。更に、実施例では、容器本体20は、アクリル板24を組み合わせて作られているが、容器本体20の少なくとも一部に透明な観察部を設けることができれば、アクリル樹脂に限らず、その他の任意の材料(例えば、ビニールやポリエチレン・テレフタレートなど)で作ることができる。
【0078】
また、実施例の付着生物観察容器5(図2及び図3)では、容器本体20の内面に設けた凹凸は、ガラス板25の一方の面(容器本体20の内側に現れる面)に板状部材29を複数取り付けることによって形成されるが、容器本体20の上面に位置する部材を樹脂等で作られた平板に代えて、その平板の裏面(容器本体20の内側に現れる面)側の適宜の部分を削ることにより形成されるようにしてもよい。
【0079】
更に、実施例では、各板状部材29は、容器本体20の内側の幅(流水方向に対して垂直な方向の長さ)と同じ長さのものを取り付けたが、これより短くてもよいし、太さの異なるものを取り付けてもよい。即ち、海水を導入した際に容器本体20の上面を成す部分の一方の面(容器本体20の内側に現れる面)に、ある程度の数の付着生物71が付着できる凹部を確保できれば、任意の凹凸をつけることができる。
【0080】
実施例の付着生物観察容器5の容器本体20(図2及び図3)は、上面を成すガラス板25以外の部分が透明なアクリル板24で作られているが、このアクリル板24に代えて、濃色(例えば、黒や青など)の板等の材料を用いて作ることができる。前述のとおり、付着生物71の底部(ガラス板25に付着する部分)は淡色(例えば、白色)であり、付着生物観察容器5をガラス板25の上から見た時に付着生物71の背景となる部分(容器本体20のガラス板25以外の部分)を濃色にすることにより、付着生物71の色を一層際立たせることができ、二値化処理(ST14)において付着生物71等の特定の部分(実施例では付着生物観察容器5を含む)と背景との分離を容易に行うことができる。
【0081】
実施例では、容器本体20の内側の面(ガラス板25)に付着生物で作ったペースト30を塗ることで、ガラス板25に付着する付着生物の数が増加するという効果を得ているが、このほかに、付着生物から抽出した液体をガラス板25に塗ることにより同様の効果を奏することもできる。この液体は、具体的には、付着生物をすり鉢等ですり潰し、これを布等で包んで搾り出した(例えば、濾過した)液体である。この液体は、通常は透明であり、ガラス板25に塗っても透明度を維持することができるため、フジツボ類以外の付着生物(例えば、体から糸を出して付着するイガイ類やヒドロ虫など)も確実に視認することができる。更に、容器本体20の内側の面(ガラス板25)に予め付着生物(幼生又は成体のいずれでもよい)を付着させておいてもよい。この場合、調査を開始する前に、付着生物観察容器5の導入部22から海水を導入しておき、或いは容器本体20の上面を成す部分(例えば、ガラス板25)を海水中に浸しておき、付着生物が付着したのを確認してから調査を開始すればよい。
【0082】
実施例において容器本体20の内面に塗ったペースト30は、着色料を混ぜて赤色、青色、又は黒色など、付着生物の底面の色(白色)以外の色に着色してもよい。これにより、付着生物が容器本体20の内面(ガラス板25)に付着したとき、付着生物の白色と周囲の濃色との間の明暗が一層明確になる。
【0083】
また、実施例では、容器本体20の内面に付着した付着生物を除去するため、酸性の液体として30%の塩酸溶液を循環させたが、この液体は、塩酸のほかにも、硫酸など、付着生物が分泌する接着タンパク質を変性させることができるものであれば、任意の酸性の液体を使用することができる。具体的には、無機酸(塩酸,硫酸,硝酸,リン酸など)と有機酸(酢酸,乳酸,ベンゼンスルホン酸,フェノールなど)のいずれでもよく、適宜の濃度に調整して使用するのがよい。
【0084】
容器本体20を設置する箱37を密閉可能なものに代えることができる。この場合、箱37の上面には、撮像手段を挿入可能な孔を設けるのがよい。また、撮像手段には、撮像タイミングに合わせて閃光を発する照明手段を取り付けるのがよい。これにより、容器本体20の内面に付着した付着生物の淡色(例えば、白色)とその他の部分(背景)の濃色との違いを一層際立たせることができる。
【0085】
実施例では、撮像手段としてCCDカメラ15を採用したが、撮像素子としてCMOSイメージセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor)を用いるデジタルカメラなど、任意の撮像手段を採用可能である。このほかにも、撮像手段としては、図13及び図14に示すように、イメージスキャナ81を採用することができる。この場合、図のように、蓋部82を開いた状態でイメージスキャナ81の上下を逆にして、本体83の撮像面(図では本体83の下側の面)を付着生物観察容器5の上面に接触させればよい。また、イメージスキャナ81と付着生物計数手段16を通信ケーブル85で接続し、撮像制御部55がイメージスキャナ81の動作を制御するように構成することができる。イメージスキャナで撮像された画像を処理する方法は、前述のCCDカメラ15を用いた場合と同様である。更に、イメージスキャナ81を用いる場合、付着生物観察容器5の容器本体20の側面及び下面を着色し又は濃色の紙若しくは布等の適宜の手段で覆ったり、本体83の撮像面のうち容器本体5と接触しない部分を予め適宜の手段で覆っておくことにより、前述の画像処理に適した画像を得ることができる。尚、イメージスキャナ81は、撮像対象物に光りを当て、その反射光の強弱を電流の大小に変換することにより、画像情報を生成する一般的なスキャナ装置である。
【0086】
実施例の付着生物調査装置8では、付着生物を付着させて観察するための観察部は、付着生物観察容器5の一部(実施例では上面)を成すガラス板25で構成されているが、調査用系統4を構成する管路自体に観察部を設けることができる。具体的には、その管路の一部に、観察に適した穴を設け、ガラスやアクリル等の透明な材料でその穴を覆うことにより作ることができる。この場合、観察部は、実施例のガラス板25のような平板状に限らず、管路の形状に応じて湾曲した状態で作ることができる。
【0087】
また、付着生物調査装置8の出力部17(図1及び図5)は、付着生物調査システム1から離れた場所に設置したコンピュータに接続することができる。この場合、付着生物計数手段16で求めた現在或いは過去のデータや判別結果等の演算結果を、通信ケーブルや通信回線等の適宜の通信媒体を介してコンピュータに読み込ませることができる。或いは、出力部17には、モニタ及びスピーカに代えて、プリンタ等の印字装置を採用することができる。更に、付着生物計数手段16をコンピュータ本体とし、出力部17としてモニタやスピーカを採用することも可能である。
【符号の説明】
【0088】
1…付着生物調査システム、3…復水系統、4…調査用系統、5…付着生物観察容器、7…洗浄液循環手段、8…付着生物調査装置、10…洗浄液貯留タンク、11…ポンプ、13a,13b,13c,13d…バルブ、15…CCDカメラ、16…付着生物計数手段、17…出力部、20…容器本体、22…導入部、23…排出部、24…アクリル板、25…ガラス板、27…ネジ、29…板状部材、30…ペースト、31…溝、33,34…管、37…箱、39…孔、40…カメラ保持具、41…ケーブル、43…ポール、44…ポール固定部材、45…カメラ固定部材、47,50a,50b…孔、48,51…ボルト、53…調整ネジ、55…撮像制御部、56…シェーディング補正部、57…二値化処理部、58…ノイズ除去部、59…フィルタ適用部、60…収縮膨張処理部、61…計数部、63…判定部、65…データ格納部、67…データ加工部、69…入力部、71…付着生物、75a,75b,76a,76b,77a,77b…領域、81…イメージスキャナ、82…蓋部、83…本体、85…通信ケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中で岩肌や壁面等に付する付着生物の生息状況を調査するための付着生物調査装置であって、
前記付着生物が存在し得る水との接触面を有する透明な観察部と、
前記接触面をその反対側から撮像し、その画像を生成するイメージスキャナと、
前記画像上の付着生物を数えて出力する付着生物計数手段とを備えることを特徴とする付着生物調査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の付着生物調査装置において、前記付着生物計数手段は、前記画像上の付着生物の色とその他の部分の色との違いに基づいて、該付着生物を特定して数えることを特徴とする付着生物調査装置。
【請求項3】
請求項1に記載の付着生物調査装置において、前記付着生物計数手段は、前記付着生物を数えるとともに又はこれに代えて、前記画像上の付着生物の色とその他の部分の色との違いに基づいて該付着生物を特定し、前記画像に占める該付着生物の割合を求めて出力することを特徴とする付着生物調査装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の付着生物調査装置において、前記観察部は、前記水の導入部及び排出部を備えた容器の一部であることを特徴とする付着生物調査装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか記載の付着生物調査装置において、前記付着生物は、フジツボ又はイガイであることを特徴とする付着生物調査装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか記載の付着生物調査装置において、前記水は、発電所その他の水を利用するプラントで取水された水であることを特徴とする付着生物調査装置。
【請求項7】
請求項6記載の付着生物調査装置において、前記画像上の付着生物の数又は前記画像に占める付着生物の割合に基づいて、前記水が流れる経路に対し、前記付着生物の除去又は付着防止のための対策を行うか否かを判別する判定部を備えたことを特徴とする付着生物調査装置。
【請求項8】
水中で岩肌や壁面等に付着する付着生物の生息状況を調査するための付着生物調査方法であって、
前記付着生物が存在し得る水と透明な観察部の一つの面を接触させ、その面を反対側から見た画像をイメージスキャナを用いて生成し、該画像上の付着生物を数えることを特徴とする付着生物調査方法。
【請求項9】
請求項8の付着生物調査方法において、前記付着生物の数は、前記画像上の付着生物の色とその他の部分の色との違いに基づいて該付着生物を特定して求めることを特徴とする付着生物調査方法。
【請求項10】
請求項8記載の付着生物調査方法において、前記付着生物を数えるとともに又はこれに代えて、前記画像上の付着生物の色とその他の部分の色との違いに基づいて該付着生物を特定し、前記画像に占める該付着生物の割合を求めることを特徴とする付着生物調査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−239978(P2010−239978A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173820(P2010−173820)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【分割の表示】特願2005−99487(P2005−99487)の分割
【原出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(507030863)株式会社セシルリサーチ (11)
【Fターム(参考)】