説明

付箋紙プリンタおよび付箋紙プリンタの制御方法

【課題】付箋紙を引抜き可能な状態で印刷待機させる付箋紙プリンタおよび付箋紙プリンタの制御方法を提供すること。
【解決手段】付箋紙束12から送られてゆく付箋紙12hに印刷を行う付箋紙印刷手段22と、付箋紙12hを、引剥がし位置から引抜き可能位置まで送る空送り動作、引抜き可能位置から印刷可能な後退位置まで送る送り戻し動作および後退位置から引抜き可能位置まで送る送り直し動作、を行う付箋紙送り手段23と、を備え、付箋紙12hが引抜き可能位置に送られた状態において制御手段105は、印刷指示が無いことを前提に付箋紙12hが「無」と検出された場合には空送り動作を行わせ、付箋紙12hの「有」の検出を前提に印刷指示がされた場合には、送り戻し動作および送り直し動作を行わせると共に、送り戻し動作および送り直し動作の一方の動作に同期して付箋紙印刷手段22を印刷駆動するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付箋紙束から付箋紙を1枚ずつ引き剥がして印刷を行う付箋紙プリンタおよび付箋紙プリンタの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の付箋紙プリンタとして、付箋紙プリンタの内部に収容した付箋紙束の上面から付箋紙を一枚ずつ引き剥がし、送りながらその記入面に印刷を行い、送り方向先方に設けられた排紙口から付箋紙を装置外部に排紙するものが知られている。この付箋紙プリンタでは、付箋紙を印刷無しで手書用に使用したい場合には、データ未入力のまま印刷実行キーを押し、未記入のままの付箋紙を排紙させるようにしている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−11437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この付箋紙プリンタでは印刷無しの状態で付箋紙を使用したい場合にも、印刷有りの場合と同様にキー操作を行う必要がある。特に、未記入の複数枚の付箋紙を必要とする場合には、枚数分のキー操作を行う必要があり、使用したい時に直ぐに使用することができず煩わしい作業となっていた。
【0004】
そこで、本発明は、付箋紙を引抜き可能な状態で印刷待機させておくことができる付箋紙プリンタおよび付箋紙プリンタの制御方法を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の付箋紙プリンタは、セットした付箋紙束から1枚ずつ引き剥がされ送られてゆく付箋紙に臨んで、付箋紙に印刷を行う付箋紙印刷手段と、付箋紙を、引剥がし位置から付箋紙排出口を介して装置外部に突出させる引抜き可能位置まで正送りする空送り動作、引抜き可能位置から付箋紙印刷手段により印刷可能な後退位置まで逆送りする送り戻し動作および後退位置から引抜き可能位置まで正送りする送り直し動作、を行う付箋紙送り手段と、付箋紙への印刷を指示する印刷指示手段と、引抜き可能位置における付箋紙の有無を検出する付箋紙検出手段と、付箋紙印刷手段および付箋紙送り手段を制御する制御手段と、を備え、付箋紙が引抜き可能位置に送られた状態において制御手段は、印刷指示手段の指示が無いことを前提として付箋紙検出手段が「無」の検出をした場合には空送り動作を行わせ、付箋紙検出手段が「有」の検出を前提として印刷指示手段の指示がされた場合には、送り戻し動作および送直し動作を行わせると共に、送り戻し動作および送り直し動作の一方の動作に同期して付箋紙印刷手段を印刷駆動することを特徴とする。
【0006】
付箋紙プリンタの制御方法は、セットした付箋紙束から1枚ずつ引き剥がされ送られてゆく付箋紙に臨んで、付箋紙に印刷を行う付箋紙印刷手段と、付箋紙を、引剥がし位置から付箋紙排出口を介して装置外部に突出させる引抜き可能位置まで正送りする空送り動作、引抜き可能位置から付箋紙印刷手段により印刷可能な後退位置まで逆送りする送り戻し動作および後退位置から引抜き可能位置まで正送りする送り直し動作、を行う付箋紙送り手段と、を備えた付箋紙プリンタの制御方法において、付箋紙が引抜き可能位置に送られた状態から、付箋紙が引き抜かれた場合には空送り動作を行う一方、印刷が指令された場合には、送り戻し動作および送り直し動作を行う共に、送り戻し動作および送り直し動作の一方の動作に同期して付箋紙印刷手段を印刷駆動することを特徴とする。
【0007】
この場合、付箋紙が引抜き可能位置に送られた状態が、少なくとも電源ON状態における定常状態であることが、好ましい。
【0008】
この構成によれば、ユーザが付箋紙排出口から付箋紙を抜き出すと、付箋紙検出手段が抜き出しを検出し、装置内部の印刷されていない付箋紙を送って付箋紙排出口から突出させるため、ユーザは所定のキー操作を必要とすることなく印刷されていない付箋紙を次々と得ることができる。一方、付箋紙に印刷を行いたい場合には、印刷指示を出すことにより、上記の状態にある付箋紙は装置内部に引き込まれて印刷が行われ、再び送って付箋紙排出口から突出させる。これにより、印刷済みの付箋紙を抜き出して使用することができる。このように、付箋紙を引抜き可能な状態で印刷待機させておくことができる。また、この状態を定常状態とすることで、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0009】
この場合、付箋紙送り手段は、空送り動作および送り直し動作において付箋紙の自由端を先頭に送ることが、好ましい。
【0010】
この構成によれば、自由端を先頭として排紙されるため付箋紙排出口付近でのジャミングを防止し、付箋紙を引抜きやすくすることができる。
【0011】
この場合、付箋紙送り手段は、付箋紙の糊付け部側の面に転接して付箋紙を正逆送りするローラを有し、ローラの周長は、付箋紙の送り方向の長さよりも長いことが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、糊付け部によりローラに巻き付いた付箋紙の巻癖を和らげると共に、付箋紙が重なり合わないので、付箋紙の重なり合う部分が滑ることにより生ずるジャミングを防止することができる。
【0013】
この場合、ローラは、付箋紙排出口の近傍に配設されており、引抜き可能位置において、付箋紙の糊付け部がローラに接触していることが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、付箋紙は基端部を除き大部分が付箋紙排出口から外部に露出するため、ユーザは、付箋紙を引抜くために容易にこれを摘むことができる。また、糊付け部がローラに軽く貼着された状態となるため、振動等により付箋紙が付箋紙排出口から落下することがない。
【0015】
この場合、付箋紙印刷手段は、サーマルヘッドを有し、ローラは、サーマルヘッドに対峙するプラテンを兼ねていることが、好ましい。
【0016】
この構成によれば、プラテンローラを別途設ける必要が無いため、部品点数および組立て工数を削減することができる。また装置をコンパクトに構成することができる。
【0017】
この場合、付箋紙印刷手段は、印刷駆動時にのみ、印刷駆動に同期してインクリボンを付箋紙と併走させるリボン送り機構を有していることが、好ましい。
【0018】
この構成によれば、インクリボンの無駄な消費を防止すると共に、印刷駆動時以外はインクリボンが繰出されないため、インクリボンの無用なたるみが生ずることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付の図面に基づいて、本発明の一実施形態に係る付箋紙プリンタおよび付箋紙プリンタの制御方法について説明する。この付箋紙プリンタは、パーソナルコンピュータ(以下、パソコン)と接続して、パソコンで作成し選択した文字、図形等の各種データを付箋紙に印刷するものである。
【0020】
図1は、付箋紙印刷システム1の模式図であり、付箋紙プリンタ2と、付箋紙プリンタ2の外部に設けられ、付箋紙プリンタ2に印刷データを供給するパソコン3と、これらを接続(リンク)するケーブル4と、から構成されている。なお、ケーブル4に代えて無線接続とする構成でもよい。
パソコン3には、データ入力用のキーボード101およびマウス102が接続されており、キーボード101およびマウス102からの入力結果がディスプレイ103に表示されるようになっている。また、付箋紙プリンタ2の印刷データを作成するアプリケーションソフト(プログラム)はCD−ROM104等の外部記憶媒体から起動される構成となっている。
【0021】
そして、各種検出信号、各種指令、各種データ等が入力されると、CPUやメモリ等で構成された制御部105(図3参照)は、アプリケーションソフトに従って、メモリ内のデータを処理し、付箋紙プリンタ2を制御する構成となっている。なお、付箋紙プリンタ2に印刷データの作成機能、編集機能や制御機能を設け、付箋紙プリンタ2を単体として、付箋紙12hに対する印刷を行うようにしてもよい。なお、請求項に記載の印刷指示手段は上記のキーボード101やマウス102から制御部105に各種検出信号、各種指令、各種データ等が入力されることにより実現されている。
【0022】
図2に示すように、付箋紙プリンタ2は、アッセンブリ化された内部装置を装置ケース13によりカバーリングして構成されており、装置ケース13の下側から付箋紙束12(図3参照)を投入セットできるようになっている。なお、付箋紙束を用紙カセットに装着して、前方から引き出し式に装着するよう構成してもよい。この付箋紙プリンタ2では、セットした付箋紙束12の最上位の付箋紙12hから1枚ずつ引き剥がし、印刷を行わない状態で装置ケース13に形成した付箋紙排出口15から突出させて印刷待機させておき、パソコン3から出力された印刷データおよび印刷指示に基づいて、この付箋紙を装置内部に向かって印刷送りし、印刷を行った後、これを再び付箋紙排出口15に向かって送り直すようにしている。
【0023】
付箋紙束12は、多数枚の同一形状の付箋紙12hの基端部裏側を部分糊付けして積層したものであり、付箋紙12hは、付箋紙束12から一枚ずつ剥離可能に構成されると共に、剥離後に糊付け部分を介して被着体に再貼着可能に構成されている。
【0024】
装置ケース13には、その下面に付箋紙束12を装置ケース13内部に下方から投入セットするための付箋紙導入開口14が形成されると共に、前面中央には印刷済みの付箋紙12hを装置ケース13外部に送り出し、あるいは印刷を行っていない付箋紙12hを装置ケース13外部に突出させるための水平スリット状の付箋紙排出口15が形成されている。また、装置ケース13の前面上部には、内部装置に対しリボンカートリッジCを着脱するための開閉蓋16が形成されている。
【0025】
図3に示すように、装置ケース13の内部には、下側に位置して付箋紙導入開口14に臨み付箋紙束12を着脱自在に保持する付箋紙ホルダ21と、付箋紙ホルダ21の上方に位置し付箋紙12hに印刷を行う付箋紙印刷手段22と、付箋紙12hを付箋紙束12から一枚ずつ引き剥すと共に、これを付箋紙排出口15との間で正逆送りする付箋紙送り手段23と、付箋紙排出口15の近傍において付箋紙12hの有無を検出する付箋紙検出センサ24と、から構成されている。付箋紙送り手段23の正逆送り動作を具体的に説明すると、引剥がし位置から付箋紙排出口15を介して装置外部に突出させる引抜き可能位置まで正送りする空送り動作と、引抜き可能位置から付箋紙印刷手段により印刷可能な後退位置まで逆送りする送り戻し動作と、後退位置から引抜き可能位置まで正送りする送り直し動作と、を行うようになっている(詳細は後述する)。
【0026】
付箋紙ホルダ21は、付箋紙束12を水平に載置する方形状のセットステージ31と、セットステージ31を上下方向にスライド自在に案内する枠状の導入ガイド32と、導入ガイド32の下部に固定され、且つこの状態で付箋紙導入開口14を閉鎖する蓋体33と、セットステージ31と蓋体33との間であって、これらの四隅に配設した4つの加圧ばね34と、で構成されている。4つの加圧ばね34は、セットステージ31の下面部および蓋体33の上面部にそれぞれ係止されており、この4つの加圧ばね34により、蓋体33を受けとしてセットステージ31が上方においてバランスよく付勢されている。
【0027】
導入ガイド32は、付箋紙12hの形状に対応して形成されており、その内面が付箋紙導入開口14に連通し、セットステージ31に載置された付箋紙束12を位置決めしながら案内する。導入ガイド32の上側開口の前後には、付箋紙束12の前端部(自由端部側)および後端部(糊付け部側)を水平に押える一対の位置規制部35,35が内向きに突設されている。すなわち、一対の位置規制部35、35は、セットステージ31との間で付箋紙束12を挟持し、最上位の付箋紙12hを水平に且つ定位置に位置規制している。
【0028】
蓋体33は、外形がセットステージ31とほぼ同形状に形成され、導入ガイド32の下側開口に嵌合するようになっており、導入ガイド32の下面に固定されている。また、この状態で蓋体33は付箋紙導入開口14を閉塞し、その下面は装置ケース13の下面と面一になる。
【0029】
以上の構成により、セットステージ31を介して付箋紙束12は、均一な力でセット位置(導入ガイド32の位置規制部35)に押し付けられる。このため、付箋紙束12は、付箋紙12hが1枚ずつ送り出され目減りしても、その最上位に位置する付箋紙12hの高さレベルは、常に定位置を維持するようになっている。
【0030】
付箋紙送り手段23は、駆動源となる駆動モータ51と、後述するサーマルヘッド41との間に捲り上げた付箋紙12hを挟持して回転送りするピックアップローラ52と、駆動モータ51の駆動力をピックアップローラ52に伝達する減速ギア列53と、その先端部にピックアップローラ52を両持ちで回転自在に保持し、付箋紙12hに転接しる転接位置とサーマルヘッド41に当接する送り位置との間で、これを回動(揺動)させるローラ回動手段54と、を備え付箋紙12hを送るようにしたものである。
【0031】
駆動モータ51は、整流子型のDCモータで構成され、その出力軸にはパルス円板が固定されている。また、パルス円板に臨む位置にフォトインタラプタが組み込まれており、このパルス円板とフォトインタラプタによりエンコーダ61が構成されている。そして、エンコーダ61の出力するパルス信号に基づいて、サーマルヘッド41の発熱駆動や付箋紙送り手段23による送り量を制御している。
【0032】
ピックアップローラ52は、付箋紙12hに転接してこれを捲り上げるローラ本体72と、ローラ本体72を回転自在に装着したローラ軸71と、ローラ本体72と一体回転するローラギア(図示省略)と、で構成されている。ローラ軸71は、サーマルヘッド41と平行に延在し、ローラ本体72は、ローラ軸71の一方の半部に寄せて配設されている。ローラギアは、ローラ本体72に隣接しこれと一体として形成されている。ピックアップローラ52は、このローラギアに減速ギア列53を介して駆動モータ51の駆動力が伝達されることで回転する構成となっている。
【0033】
ローラ本体72の表面はシリコンゴムなどの耐熱性を有する高摩擦材料で構成されており、ピックアップローラ52は、付箋紙12hに転接してこれを捲り上げる機能と、サーマルヘッド41と協働するプラテンローラの機能とを併せ持っている。このため、プラテンローラを別途、設ける必要がないため部品点数および組立工数を削減することができる。また、ローラ本体72の周長は、付箋紙12hの送り方向の長さより長くなっている。これにより、糊付け部によりローラに巻き付いた付箋紙12hの巻癖を和らげると共に、付箋紙12hが重なり合わないので、付箋紙12hの重なり合う部分が滑ることにより生ずるジャミングが防止される。
【0034】
ローラ回動手段54は、先端部でローラ軸71を回転自在に両持ちで支持すると共に、基端部を中心に回動する一対の回動アーム81、81と、上記減速ギア列53を構成する一部のギアを利用した遊星歯車列(図示省略)と、そのギアの回転を回動アーム81の回動動作に変換するカム機構(図示省略)と、により構成されている。すなわち、遊星歯車機構による円運動が、カム機構により回動アーム81の往復回動運動に変換されるようになっている。この回動アーム81の往復回動運動により、ピックアップローラ52が、転接位置と送り位置との間で回動する。
【0035】
付箋紙印刷手段22は、付箋紙排出口15の近傍に配設されたサーマルヘッド41と、上記リボンカードリッジCに回転自在に収容され、インクリボンRを繰り出し自在に巻回したリボン繰出しリール42およびインクリボンRを巻き取るリボン巻取りリール43と、を備えている。リボン繰出しリール42は自由回転可能に構成され、リボン巻取りリール43は、リボン巻取り軸44に係合して駆動回転し、リボン繰出しリール42から繰出されたインクリボンRを巻取り走行させる。なお、インクリボンRの送り方向は、付箋紙12hの逆送り方向と同一である(詳細は後述する)。
【0036】
インクリボンRは、リボン繰出しリール42から繰り出され、サーマルヘッド41の位置で付箋紙12hと重なって併走した後、リボン巻取リール43に巻き取られる。すなわち、ピックアップローラ52とサーマルヘッド41との間で、付箋紙12hとインクリボンRとを挟み込み、これらを同方向に送りつつ発熱素子の発熱駆動により付箋紙12hに印刷が行われる。
【0037】
リボン巻取り軸44は、ピックアップローラ52が送り位置に上動し、ワンウェイクラッチを介して上記のローラギアから動力が伝達されるリボン巻取り機構の一部を構成している。そして、送り位置においてピックアップローラ52が装置内部に向かって付箋紙12hを逆送り(送り戻し動作)するように逆回転(図示矢印と逆方向)すると、クラッチがリボン巻取り軸44に係合し、リボン巻取りリール43を回転させる。一方、ピックアップローラ52が付箋紙排出口15に向かって付箋紙12hを正送りする(空送り動作、送り直し動作)ように正回転(図示矢印方向)した場合、クラッチはリボン巻取り軸44から外れて空転する。すなわち、リボン巻取り機構は、リボン巻取りリール43を付箋紙12hが印刷送りされるときのみ回転させ、インクリボンRを付箋紙12hに併走させる構成となっている。これによりインクリボンRが無駄に繰り出されることを防止すると共に、インクリボンRの無用なたるみを防止することができる。
【0038】
付箋紙検出センサ24は、ピックアップローラ52と付箋紙排出口15との間に配設され、付箋紙12hの有無を検出するものであり、付箋紙12h(送り経路)を間に挟んで対向する発光素子および受光素子が組み込まれた透過式又は反射式の光センサで構成されている。
【0039】
付箋紙検出センサ24による検出信号は、パソコン3に出力され、その検出結果に基づいて、付箋紙12hが付箋紙排出口15から引き抜かれたか否かが検出される。すなわち、ユーザがパソコン3から印刷開始を指示しておらず、引抜き可能位置から付箋紙12hが引抜かれ、付箋紙検出センサ24が「無」を検出した場合には、制御部105は「引抜かれた」と判断し、付箋紙ホルダ21から新たな付箋紙12hを送り出すように付箋紙プリンタ2を制御する。なお、引抜き可能位置では、付箋紙12hは基端部を除き大部分が付箋紙排出口15から外部に露出することになる。
【0040】
ここで、図4を参照して付箋紙12hの捲り上げから排出に至るまでの一連の動作について説明する。ユーザが付箋紙ホルダ21に付箋紙束12をセットし、ケーブル4に接続した付箋紙プリンタ2の電源をONにすると、付箋紙検出センサ24が付箋紙12hの「無」を検出する。すると、ピックアップローラ52は転接位置に移動し、付箋紙ホルダ21にセットされた付箋紙束12の最上位の付箋紙12hの表面に転接する(図4(a)参照)。なお、付箋紙プリンタ2は、パソコン3からケーブル4(USBケーブル等)を介して電力が供給されるようにしてもよい。
【0041】
続いて、ピックアップローラ52が回転を開始し、付箋紙12hの捲り上げ動作を開始する。すなわち、ピックアップローラ52が最上位の付箋紙12hに対し、表面の自由端側に転接することで、その長手方向の中間部が次第に上方へと湾曲するように撓んでいく(図4(b)参照)。
【0042】
捲り上がっていく付箋紙12hの先端がピックアップローラ52の下側を通過した直後に、ピックアップローラ52が回転しながら上動して付箋紙束12から離間すると、付箋紙12hは、ピックアップローラ52の回転力により、ピックアップローラ52の上側に撥ね上げられ、自由端部がピックアップローラ52に乗り上げる(図4(c)参照)。
【0043】
付箋紙12hを乗せたピックアップローラ52は、続いて、回転(自転)しながら移動(公転)し、送り位置に達するとサーマルヘッド41との間に付箋紙12hを挟持する(図4(d)参照)。ピックアップローラ52は、大きく傾動した付箋紙12hに対して、裏面に対し自由端側から転接し、これを付箋紙束12から引き剥がし、自由端側を先頭にして付箋紙排出口15に向けて回転送りする(空送り動作)。この回転送りは、上記のエンコーダ出力に基づいて所定のステップ数送る。これにより、付箋紙12hの糊付け部がピックアップローラ52に達した(付着した)ところで、ピックアップローラ52の回転が停止する。この状態で付箋紙12hは上記引抜き可能位置に待機している。したがって、ユーザは、付箋紙12hを引抜くために、容易にこれを摘むことができる。また、糊付け部がピックアップローラ52に軽く貼着される状態のため付箋紙12hが落下することがない。本発明ではこの状態を定常状態としている。なお、空送り動作の停止制御は、上記の付箋紙検出センサ24を用いて行うようにしてもよい。すなわち、付箋紙検出センサ24が付箋紙12hの先端を検出した後、所定のステップ数送って停止させる。
【0044】
この定常状態において、ユーザが付箋紙排出口15から付箋紙12hを引抜くと、付箋紙検出センサ24が付箋紙12hの「無」を検出し、自動的に付箋紙束12から新たに付箋紙12hが上記と同様の動作で引抜き可能位置に送られる(図4(a)〜(d)参照:空送り動作)。これにより、付箋紙12hの空送りを指示することなく何も印刷されていない付箋紙12hを次々と得ることができ、付箋紙プリンタ2を付箋紙ディスペンサーとして使用することができる。
【0045】
一方、ユーザが付箋紙排出口15から付箋紙12hを引抜かず(付箋紙検出センサ24が「有」を検出している状態で)、ユーザがパソコン3により入力したデータに基づいて印刷開始を指示すると、ピックアップローラ52が逆回転し、付箋紙12hが装置内部に引き込まれ(送り戻し動作)、これに併せてインクリボンRの送りが開始される(図4(e)参照)。
【0046】
そしてピックアップローラ52は、サーマルヘッド41と協働して、付箋紙12hの表面に糊付け部側から印刷を行う(図4(f)参照:送り戻し動作)。このようにして、この印刷動作時の送り戻し動作では、付箋紙12hの糊付け部がピックアップローラ52の表面に軽く貼着され、付箋紙12hはピックアップローラ52の周囲に巻き付けられるようにして逆送りされる。そして、この印刷を伴う送り戻し動作も、上記のエンコーダ出力により制御され、付箋紙12hの自由端側の余白部がピックアップローラ52に接触したところでピックアップローラ52の回転が停止する(後退位置)。なおユーザが印刷開始を指示した場合には、付箋紙検出センサ24において付箋紙12hの「無」を検出しても、付箋紙束12から新たに付箋紙12hが送られないようになっている。
【0047】
印刷を終了すると、ピックアップローラ52は、自由端側を先頭にして印刷済みの付箋紙12hを後退位置から付箋紙排出口15に向けて再び回転送りする(図4(g)参照:送り直し動作)。この送り直し動作も上記のエンコーダ出力により制御され、印刷済みの付箋紙12を上記の引抜き可能位置まで正送りする。言うまでもないが、空送り動作および送り直し動作において付箋紙12hの自由端を先頭に送っている。これにより、付箋紙排出口15においてジャミングを防止し、ユーザが付箋紙12hを引抜きやすいようにしている。
【0048】
このようにして、ユーザにより付箋紙12hが引き抜かれた後、ユーザが次の印刷開始を指示すると、ピックアップローラ52が回転を再開すると共に、サーマルヘッド41から離間し、転接位置に戻る(図4(h)参照)。
【0049】
なお、本実施形態では、定常状態から付箋紙12hを装置内部に引き込みながら印刷送りしているが、これに代えて、定常状態から付箋紙12hを装置内部に空送りし、後退位置から付箋紙排出口15に向かって印刷送りする構成でもよい。この場合には、図3に示すリボン繰出しリール42とリボン巻取りリール43とを左右逆に取り付け、駆動モータ51の駆動力がピックアップローラ52から伝達される構成ではなく、インクリボンRを繰出す専用のモータを設け、駆動モータ51と専用モータとを同期させて動かすことにより印刷送りを行う。
【0050】
以上のように、本実施形態の付箋紙プリンタ2によれば、付箋紙12hを引抜き可能な状態で印刷待機させておくことができる。この状態を定常状態とすることで、ユーザの利便性を向上することができる。また、電源OFF時に付箋紙12hを送り戻し状態にしておくことが好ましい。もっとも、電源ON・OFFに関わらず、常に付箋紙排出口15から突出させておくようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】付箋紙印刷システムの模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る付箋紙プリンタの全体斜視図である。
【図3】付箋紙プリンタの断面の模式図である。
【図4】付箋紙プリンタによる一連の動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0052】
2…付箋紙プリンタ 12…付箋紙束 12h…付箋紙 15…付箋紙排出口 22…付箋紙印刷手段 23…付箋紙送り手段 24…付箋紙検出手段 41…サーマルヘッド 52…ピックアップローラ(ローラ) 105…制御手段(制御部) R…インクリボン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セットした付箋紙束から1枚ずつ引き剥がされ送られてゆく付箋紙に臨んで、前記付箋紙に印刷を行う付箋紙印刷手段と、
前記付箋紙を、引剥がし位置から付箋紙排出口を介して装置外部に突出させる引抜き可能位置まで正送りする空送り動作、前記引抜き可能位置から前記付箋紙印刷手段により印刷可能な後退位置まで逆送りする送り戻し動作および前記後退位置から前記引抜き可能位置まで正送りする送り直し動作、を行う付箋紙送り手段と、
前記付箋紙への印刷を指示する印刷指示手段と、
前記引抜き可能位置における前記付箋紙の有無を検出する付箋紙検出手段と、
前記付箋紙印刷手段および前記付箋紙送り手段を制御する制御手段と、を備え、
前記付箋紙が前記引抜き可能位置に送られた状態において前記制御手段は、前記印刷指示手段の指示が無いことを前提として前記付箋紙検出手段が「無」の検出をした場合には前記空送り動作を行わせ、
前記付箋紙検出手段が「有」の検出を前提として前記印刷指示手段の指示がされた場合には、前記送戻し動作および送り直し動作を行わせると共に、前記送戻し動作および前記送り直し動作の一方の動作に同期して前記付箋紙印刷手段を印刷駆動することを特徴とする付箋紙プリンタ。
【請求項2】
前記付箋紙が前記引抜き可能位置に送られた状態が、少なくとも電源ON状態における定常状態であることを特徴とする請求項1に記載の付箋紙プリンタ。
【請求項3】
前記付箋紙送り手段は、前記空送り動作および前記送り直し動作において前記付箋紙の自由端を先頭に送ることを特徴とする請求項1または2に記載の付箋紙プリンタ。
【請求項4】
前記付箋紙送り手段は、前記付箋紙の糊付け部側の面に転接して前記付箋紙を正逆送りするローラを有し、
前記ローラの周長は、前記付箋紙の送り方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の付箋紙プリンタ。
【請求項5】
前記ローラは、前記付箋紙排出口の近傍に配設されており、
前記引抜き可能位置において、前記付箋紙の糊付け部が前記ローラに接触していることを特徴とする請求項4に記載の付箋紙プリンタ。
【請求項6】
前記付箋紙印刷手段は、サーマルヘッドを有し、
前記ローラは、前記サーマルヘッドに対峙するプラテンを兼ねていることを特徴とする請求項4または5に記載の付箋紙プリンタ。
【請求項7】
前記付箋紙印刷手段は、前記印刷駆動時にのみ、前記印刷駆動に同期してインクリボンを前記付箋紙と併走させるリボン送り機構を有していることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の付箋紙プリンタ。
【請求項8】
セットした付箋紙束から1枚ずつ引き剥がされ送られてゆく付箋紙に臨んで、前記付箋紙に印刷を行う付箋紙印刷手段と、
前記付箋紙を、引剥がし位置から付箋紙排出口を介して装置外部に突出させる引抜き可能位置まで正送りする空送り動作、前記引抜き可能位置から前記付箋紙印刷手段により印刷可能な後退位置まで逆送りする送り戻し動作および前記後退位置から前記引抜き可能位置まで正送りする送り直し動作、を行う付箋紙送り手段と、を備えた付箋紙プリンタの制御方法において、
前記付箋紙が前記引抜き可能位置に送られた状態から、前記付箋紙が引き抜かれた場合には前記空送り動作を行う一方、印刷が指令された場合には、前記送り戻し動作および送り直し動作を行う共に、前記送り戻し動作および前記送り直し動作の一方の動作に同期して前記付箋紙印刷手段を印刷駆動することを特徴とする付箋紙プリンタの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−203706(P2007−203706A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28603(P2006−28603)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】