説明

代用乳供給装置

【課題】定量、且つ衛生的に代用乳をミルクホッパーからミルク調合機に供給する代用乳供給装置を提供することを課題とする。
【解決手段】子牛育成用の自動哺乳装置の代用乳供給装置において、ミルクホッパー面開口23および調合タンク面開口を備える供給装置筐体21と、計量ホールを有する計量スライダー30とからなり、計量スライダーの往復運動により、定量の代用乳をミルクホッパーから調合タンクへ移送することを特徴とする代用乳供給装置であり、前記計量ホールにサイズの異なるスリーブを挿入することにより、計量ホールの容積を調整することが好ましく、前記計量ホール周囲に防水パッキングを有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、代用乳を正確、且つ衛生的に供給する代用乳供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来子牛の育成において、代用乳を与えるには大型哺乳瓶に代用乳を溶かして直接与えていたが、子牛毎の給乳量、授乳時間の制御は困難で、労働面からも過重であった。自動哺乳装置は、前記問題の解決を計ったもので、代用乳を蓄えるミルクホッパー、代用乳を定量に取り出す代用乳定量供給部、代用乳をお湯に溶かすミルク調合機、調合したミルクを人工の乳首に供給するドリンクステーション、子牛を固定する給餌柵等により構成され、更に各機能を満足する制御装置が組まれていた(特許文献1、及び非特許文献1を参照。)。
【0003】
前記自動哺乳装置の代用乳定量供給部は、ミルクホッパー下部に水平に付設されたスクリューコンベアの回転により、代用乳がミルクホッパーからミルク調合機に供給され、該供給量の管理はスクリューコンベアの回転数によるものであった。しかし該スクリューコンベアは、前記ミルク調合機の上部に開放状態で設置されているために、ミルク調合機内の熱湯の蒸気により代用乳が固結して、計量および定量供給に支障をきたし、子牛の成育管理、および衛生管理において問題となっていた。
【0004】
【特許文献1】特開2004−113170号公報
【非特許文献1】寒河江洋一郎、他執筆「哺乳ロボット導入の手引き」平成16年3月、社団法人畜産技術協会。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、定量、且つ衛生的に代用乳をミルクホッパーからミルク調合機に供給する代用乳供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1> 本発明は、子牛育成用の自動哺乳装置の代用乳供給装置において、ミルクホッパー面開口および調合タンク面開口を備える供給装置筐体と、計量ホールを有する計量スライダーとからなり、計量スライダーの往復運動により、定量の代用乳をミルクホッパーから調合タンクへ移送することを特徴とする代用乳供給装置である。
<2> 更に本発明は、前記計量ホールにサイズの異なるスリーブを挿入することにより、計量ホールの容積を調整することが好ましく、前記計量ホール周囲に防水パッキングを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安定して定量の代用乳を衛生的に、ミルクホッパーからミルク調合機に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の一実施形態を、図面に基づき説明する。なお本明細書において、代用乳とは子牛用の粉ミルクのことをいい、ミルクとは代用乳を水あるいは湯に溶かしたものをいう。
【0009】
図1は、自動哺乳装置の全体模式図である。図1において、1はミルクホッパー、3は代用乳供給装置、5はミルク調合機、7は給湯器、9はドリンクステーションをそれぞれ示す。
【0010】
図2は、本発明の代用乳供給装置3の一部を切り欠いた斜視図で、計量スライダーが供給装置筐体に挿入された状態を示す。また図3は代用乳供給装置3の長手方向の中心縦断面図である。図2、及び3において21は供給装置筐体、23は筐体のミルクホッパー面開口、25は調合タンク面開口、27は筐体の計量スライダー面開口、29は筐体の奥壁面、30は計量スライダーをそれぞれ示し、図3における11はミルクホッパーの排出口、51はミルク調合機投入口をそれぞれ示す。
【0011】
前記供給装置筐体21は直方体で、長手方向の一側面には奥壁面29が形成され、他側面は計量スライダー面開口27となっている。また該筐体上面にミルクホッパー面開口23が形成され、筐体下面に調合タンク面開口25が形成される。前記ミルクホッパー面開口23は、ミルクホッパー内の代用乳と直接接触しており、調合タンク面開口25は、調合タンクの上部に位置して、代用乳が調合タンクの投入口に落下する。
【0012】
前記供給装置筐体21は、良好な滑りと磨耗に強い樹脂からなることが好ましく、中でもポリアセタール樹脂がより好ましく、特にアセタールコポリマー樹脂が好ましい。前記ミルクホッパー面開口23と調合タンク面開口25とは、同一直径の円形形状よりなることが好ましい。前記奥壁面29は空気抜きの空隙を有することが好ましい。
【0013】
図4は前記計量スライダー30の斜視図である。該計量スライダーは計量スライダー本体31とピストン33からなり、計量スライダー本体31には、計量ホール35が形成される。前記計量ホール35の平面は、ミルクホッパー面開口23及び調合タンク面開口25と同一又は直径のより小さい円形形状であることが好ましい。計量ホール35は、該計量ホールに嵌合し、計量スライダー本体31と同一の厚みを有する、各種内径の管状体(以下挿入スリーブという。)を挿入することにより、計量ホールの容積を変更できることが好ましい。
【0014】
前記計量スライダー本体31は、供給装置筐体20に嵌挿され、計量ホール35が筐体のミルクホッパー面開口23と調合タンク面開口25との間を往復運動をする。該計量スライダー本体は、供給装置筐体と同様の素材からなることが好ましい。
【0015】
前記計量スライダー本体31の上下面には、計量スライダー本体の周縁に防水パッキング37を設けることが好ましい。該防水パッキングは、計量スライダー本体の周縁にOリングを埋設することによるのが好ましい。該Oリングは弾性を有するゴム、又は樹脂よりなることが好ましい。該防水パッキングを有することにより、液体に対するシールができ、蒸気等の侵入を防ぐのみならず、直接ミルク等の液体を扱うことも可能となる。
【0016】
前記ピストン33の一端は、前記計量スライダー本体31に固定され、他端は図に示さない動力部と結合されて、該動力部の動力により、計量スライダー31が前記往復運動をする。前記動力部はピストンの往復運動を動作させるものであれば、いずれの動力でも良いが、ほこり等の混入防止等の観点からは、往復動型ペンシリンダータイプが好ましく、中でもロングストローク型がより好ましい。前記往復運動のスピードは、湿分の侵入を防止するために、250〜350mm/秒が好ましく、280〜320mm/秒がより好ましい。
【0017】
前記計量スライダー本体31が、供給装置筐体20の内部を往復運動することにより、前記供給装置筐体のミルクホッパー面開口23から計量ホール35へ移送された代用乳は、計量ホールの容積を超える代用乳が、前記往復運動の間に排除されて定量化されたうえで、調合タンク面開口25へと運ばれ、調合タンクへ移送される。代用乳の供給量の調整は、前記スリーブを挿入、交換することにより行うが、該計量ホール35のサイズは、1回あたりの代用乳の供給が100〜200ml(60〜120g)の範囲で対応可能であることが好ましく、50〜250ml(30〜150g)が対応可能であることがより好ましい。又該スリーブは、供給量を20〜40mlごとに調整できることが好ましい。
【0018】
前記代用乳のミルクホッパー1からミルクホッパー面開口23を経由して計量ホール35への移送、及び計量ホール35から調合タンク面開口25を経由して調合タンクへの移送は、いずれも自然落下により行われるが、計量ホールが調合タンク面開口、及び調合タンクに対し開放される時間は極めて短時間のために、調合タンクからの蒸気等の影響は極めて小さい。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の更に具体的内容を実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例の供給装置筐体21は、縦41cm、横15cm、高さ9cmの直方体で、アセタールコポリマー樹脂(ポリプラスチック社製、商品名:ジュラコン)よりなる。該筐体の奥壁面29は有孔壁面よりなり、他側面27は開口している。また該筐体上面右側部23に直径7.5cmの円形のミルクホッパー面開口が形成され、筐体下面左側部25にはミルクホッパー面開口と同様の、直径7.5cmの円形の調合タンク面開口が形成される。
【0020】
本実施例の計量スライダーは、計量スライダー本体31と、ピストン33とからなるが、計量スライダー本体31の断面は、横15.5cm、高さ7.2cmと、計量スライダー面開口27よりわずかに小さく、供給装置筐体と同様にアセタールコポリマー樹脂(ポリプラスチック社製、商品名:ジュラコン)よりなる。
【0021】
前記計量スライダー本体には、計量ホール35が形成されている。該計量ホールのホール径は7.4cm(代用乳量として215ml、125g)とした。又計量ホールに嵌合するスリーブは、その内径が5cm(100ml、60g)まで、0.5cm単位に6段階を用意した。
【0022】
前記計量スライダー本体31の上下面には、計量スライダー本体周縁に合成ゴム製Oリング(武蔵オイルシール(株)製)が防水パッキング37として埋設されている。
【0023】
前記ピストン33は、アセタールコポリマー樹脂(ポリプラスチック社製、商品名:ジュラコン)よりなり、その一端は前記計量スライダー本体31に固定され、他端は図に示さない動力部と結合されている。前記動力部は、ロングストローク型往復動型ペンシリンダー(SMC社製、商品名:エアアクチュエーター)を用いた。前記計量スライダーの往復運動のスピードは、300mm/秒に設定した。
【0024】
前記計量スライダー本体の往復運動により、ミルクホッパーからの代用乳は、調合タンクからの蒸気等の影響を受けることが極めて小さく、精確に定量が調合タンクへ移送された。すなわち従来の装置における代用乳供給装置は、約5cmほどの管に挿入されたオーガにより代用乳を直接押し出すが、代用乳供給装置出口は調合タンクに直接暴露し、蒸気遮断が全くできない。本装置ではスライダーの隙間が、3〜5/100mmであるため蒸気浸入が95%程度遮断できた。
【0025】
従来装置の代用乳供給装置出口は、代用乳が蒸気により固形化し、1分の運転で出口周縁に長さ3〜4cm、幅2〜3cm、厚さ1〜2cm程度の固結が生じる。該固結量は5〜10gと予定摂取量の10%に近く、固結した代用乳はオーガの押し出しのタイミングにより調合タンクに落下する。このため従来装置の予定摂取量は10%程度の変動を生じるが、本発明の代用乳供給装置は、筐体の計量スライダー面に僅かに代用乳が付着する程度で、付着量も全く問題にならなかった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の代用乳供給装置によれば、衛生的に定量の代用乳を供給することができ、計画的な子牛育成を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の哺乳装置の全体模式図である。
【図2】代用乳供給装置3の一部を切り欠いた斜視図である。
【図3】代用乳供給装置3の長手方向の中心縦断面図である
【図4】計量スライダーの斜視図である
【符号の説明】
【0028】
1 ミルクホッパー
3 代用乳供給装置
5 ミルク調合機
7 給湯器
9 ドリンクステーション
21 供給装置筐体
23 ミルクホッパー面開口
25 調合タンク面開口
27 計量スライダー面開口
30 計量スライダー
31 計量スライダー本体
33 ピストン
35 計量ホール
37 防水パッキング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
子牛育成用の自動哺乳装置の代用乳供給装置において、ミルクホッパー面開口および調合タンク面開口を備える供給装置筐体と、計量ホールを有する計量スライダーとからなり、計量スライダーの往復運動により、定量の代用乳をミルクホッパーから調合タンクへ移送することを特徴とする代用乳供給装置。
【請求項2】
前記計量ホールにサイズの異なるスリーブを挿入することにより、計量ホールの容積を調整する請求項1に記載の代用乳供給装置。
【請求項3】
前記計量ホールの周囲に防水パッキングを設備する請求項1又は請求項2に記載の代用乳供給装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−267604(P2007−267604A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−93487(P2006−93487)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(306017162)株式会社アスペン (2)
【Fターム(参考)】